特許第5999933号(P5999933)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5999933ヒートポンプ給湯システム及びその制御方法並びにプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5999933
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】ヒートポンプ給湯システム及びその制御方法並びにプログラム
(51)【国際特許分類】
   F24H 4/02 20060101AFI20160915BHJP
【FI】
   F24H4/02 H
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-53023(P2012-53023)
(22)【出願日】2012年3月9日
(65)【公開番号】特開2013-185786(P2013-185786A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】前野 政司
(72)【発明者】
【氏名】吉田 茂
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−308164(JP,A)
【文献】 特開2009−275958(JP,A)
【文献】 特開2011−232004(JP,A)
【文献】 特開2000−329401(JP,A)
【文献】 特開2011−075131(JP,A)
【文献】 特開2011−145041(JP,A)
【文献】 特開2010−117083(JP,A)
【文献】 特開2011−012941(JP,A)
【文献】 特開2001−317806(JP,A)
【文献】 特開2012−017965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00
F24H 1/18
F24H 4/02
F22B 33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒として二酸化炭素を用いるヒートポンプ給湯機と、前記ヒートポンプ給湯機の下流側に設けられるボイラとを備えるヒートポンプ給湯システムであって、
前記ヒートポンプ給湯機に入水される水を、前記ボイラの出口の出湯温度が要求出湯温度になるまで加熱する場合の、前記ヒートポンプ給湯機の出湯温度毎に対する前記ヒートポンプ給湯機のエネルギ消費量である第1エネルギ消費量と、前記ボイラに入水される水を、前記ボイラの出口の出湯温度が前記要求出湯温度になるまで加熱する場合の、ボイラ入水温度毎に対する前記ボイラのエネルギ消費量である第2エネルギ消費量とを算出する算出手段と、
前記ボイラの効率を勘案し、前記第1エネルギ消費量と前記第2エネルギ消費量との合計である合計エネルギ消費量が最小となる運転点を推定し、該最小となる運転点の前記ヒートポンプ出湯温度を目標温度とし、該目標温度を前記ヒートポンプ出湯温度として前記ヒートポンプ給湯機に出力する出湯温度出力手段とを具備し、
前記ボイラの効率は、前記ボイラの出力容量に対する前記第2エネルギ消費量が、所定割合より大きい場合に設定される第1ボイラ効率と、前記所定割合以下の場合に設定される、前記第1ボイラ効率より効率が低い第2ボイラ効率とを含む
ートポンプ給湯システム。
【請求項2】
前記算出手段は、前記ボイラ入水温度を、前記ヒートポンプに入水される水の温度であるヒートポンプ入水温度から前記要求出湯温度までとし、前記第2エネルギ消費量を算出する請求項1に記載のヒートポンプ給湯システム。
【請求項3】
外気温度と前記ヒートポンプに入水される水の温度であるヒートポンプ入水温度とに基づいて決定される前記ヒートポンプ給湯機の性能を示す運転特性と、
前記外気温度を検出する第1検出手段と、
前記ヒートポンプ入水温度を検出する第2検出手段とを具備し、
前記算出手段は、前記運転特性と、検出された前記外気温度及び前記ヒートポンプ入水温度とに基づいて、前記第1エネルギ消費量を算出する請求項1または請求項2に記載のヒートポンプ給湯システム。
【請求項4】
前記算出手段は、前記ヒートポンプ給湯機で加熱する場合に使用する燃料の単価である第1燃料単価データ及び前記第1エネルギ消費量に基づいて前記ヒートポンプ給湯機を使用する場合の運転費用である第1運転費用を算出し、前記ボイラで加熱する場合に使用する燃料の単価である第2燃料単価データ及び前記第2エネルギ消費量に基づいて、前記ボイラを使用する場合の運転費用である第2運転費用を算出し、
前記出湯温度出力手段は、前記第1運転費用と前記第2運転費用との合計である合計運転費用が最小となる運転点を推定し、該合計運転費用が最小となる運転点の前記ヒートポンプ出湯温度を目標温度とし、該目標温度を前記ヒートポンプ出湯温度として前記ヒートポンプ給湯機に出力する請求項1から請求項3のいずれかに記載のヒートポンプ給湯システム。
【請求項5】
前記算出手段は、前記ヒートポンプ給湯機で加熱する場合に使用する燃料によって排出される二酸化炭素の排出量単位データである第1排出量単位データ及び前記第1エネルギ消費量に基づいて前記ヒートポンプ給湯機を使用する場合の二酸化炭素排出量である第1排出量を算出し、前記ボイラで加熱する場合に使用する燃料によって排出される二酸化炭素の排出量単位データである第2排出量単位データ及び前記第2エネルギ消費量に基づいて前記ボイラを使用する場合の二酸化炭素排出量である第2排出量を算出し、
前記出湯温度出力手段は、前記第1排出量と前記第2排出量との合計である合計排出量が最小となる運転点を推定し、該合計排出量が最小となる運転点の前記ヒートポンプ出湯温度を目標温度とし、該目標温度を前記ヒートポンプ出湯温度として前記ヒートポンプ給湯機に出力する請求項1から請求項4のいずれかに記載のヒートポンプ給湯システム。
【請求項6】
前記ヒートポンプ給湯機の起動毎に、前記算出手段は前記第1エネルギ消費量及び前記第2エネルギ消費量を算出し、前記出湯温度出力手段は、前記最小となる運転点を推定する請求項1から請求項5のいずれかに記載のヒートポンプ給湯システム。
【請求項7】
前記ヒートポンプ給湯機の運転中に、前記ボイラの要求出湯温度の設定が変動した場合、前記出湯温度出力手段は、前記合計エネルギ消費量が最小となる前記運転点を推定する請求項1から請求項6のいずれかに記載のヒートポンプ給湯システム。
【請求項8】
前記第2エネルギ消費量が、前記ボイラの出力容量に対して所定割合以下である場合には、前記所定割合より大きい場合と比較して、前記ボイラの効率を低減させる請求項1から請求項7のいずれかに記載のヒートポンプ給湯システム。
【請求項9】
過渡的に給水負荷が大きくなり、前記ヒートポンプ給湯機から出湯される水が所望の温度まで上昇しない場合には、前記ヒートポンプ入水温度に関わらず、前記ボイラは、前記ボイラに入水される水を加熱させる請求項1から請求項8のいずれかに記載のヒートポンプ給湯システム。
【請求項10】
冷媒として二酸化炭素を用いるヒートポンプ給湯機と、前記ヒートポンプ給湯機の下流側に設けられるボイラとを備えるヒートポンプ給湯システムの制御方法であって、
前記ヒートポンプ給湯機に入水される水を、前記ボイラの出口の出湯温度が要求出湯温度になるまで加熱する場合の、前記ヒートポンプ給湯機の出湯温度毎に対する前記ヒートポンプ給湯機のエネルギ消費量である第1エネルギ消費量と、前記ボイラに入水される水を、前記ボイラの出口の出湯温度が前記要求出湯温度になるまで加熱する場合の、ボイラ入水温度毎に対する前記ボイラのエネルギ消費量である第2エネルギ消費量とを算出する第1過程と、
前記ボイラの効率を勘案し、前記第1エネルギ消費量と前記第2エネルギ消費量との合計である合計エネルギ消費量が最小となる運転点を推定し、該最小となる運転点の前記ヒートポンプ出湯温度を目標温度とし、該目標温度を前記ヒートポンプ出湯温度として前記ヒートポンプ給湯機に出力する第2過程と、を有し、
前記ボイラの効率は、前記ボイラの出力容量に対する前記第2エネルギ消費量が、所定割合より大きい場合に設定される第1ボイラ効率と、前記所定割合以下の場合に設定される、前記第1ボイラ効率より効率が低い第2ボイラ効率とを含む
ートポンプ給湯システムの制御方法。
【請求項11】
冷媒として二酸化炭素を用いるヒートポンプ給湯機と、前記ヒートポンプ給湯機の下流側に設けられるボイラとを備えるヒートポンプ給湯システムの制御プログラムであって、
前記ヒートポンプ給湯機に入水される水を、前記ボイラの出口の出湯温度が要求出湯温度になるまで加熱する場合の、前記ヒートポンプ給湯機の出湯温度毎に対する前記ヒートポンプ給湯機のエネルギ消費量である第1エネルギ消費量と、前記ボイラに入水される水を、前記ボイラの出口の出湯温度が前記要求出湯温度になるまで加熱する場合の、ボイラ入水温度毎に対する前記ボイラのエネルギ消費量である第2エネルギ消費量とを算出する第1処理と、
前記ボイラの効率を勘案し、前記第1エネルギ消費量と前記第2エネルギ消費量との合計である合計エネルギ消費量が最小となる運転点を推定し、該最小となる運転点の前記ヒートポンプ出湯温度を目標温度とし、該目標温度を前記ヒートポンプ出湯温度として前記ヒートポンプ給湯機に出力する第2処理と、をコンピュータに実行させるための、
前記ボイラの効率は、前記ボイラの出力容量に対する前記第2エネルギ消費量が、所定割合より大きい場合に設定される第1ボイラ効率と、前記所定割合以下の場合に設定される、前記第1ボイラ効率より効率が低い第2ボイラ効率とを含む
ートポンプ給湯システムの制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ給湯システム及びその制御方法並びにプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、給湯機器、暖房機器はオイル、ガス焚きが主流であったが、近年の環境問題への関心の高まりから地球温暖化防止のためCO2(二酸化炭素)排出量が少ない電気式ヒートポンプへの移行が注目されている。特に、CO2冷媒を用いたヒートポンプ給湯機は、従来の燃焼型ボイラと比較して、大幅にCO2が削減でき、冷媒の特性上高い出湯温度を得られランニングコストが削減できることから、家庭用では既に普及しつつある。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、ヒートポンプ給湯機と加熱ボイラとを直列に接続し、ヒートポンプで加熱された水の出湯温度が所定温度(55℃)に満たない場合には、加熱ボイラによって加熱し、昇温させる技術が開示されている。
また、下記特許文献2では、都市ガスを燃料とする内燃機関並びに内燃機関を駆動源とするヒートポンプを用いて構成される通常温度温水系統と、補助ボイラとを備え、ヒートポンプの凝縮温度を低下させて使用し、補助ボイラを作動させて所望の温水温度を得る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4437987号公報
【特許文献2】特開昭60−89651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ヒートポンプ給湯機の性能は、ヒートポンプ給湯機への入水温度、ヒートポンプ給湯機からの出湯温度、外気温度等の運転環境に応じて異なるため、給水された水を常に所定温度までヒートポンプ給湯機で加熱して昇温する上記特許文献1の方法では、全体として高効率の状態になっていないという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ヒートポンプ給湯機とボイラとを組み合わせて運転させる場合に、高効率で運転できるヒートポンプ給湯システム及びその制御方法並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の手段を採用する。
本発明は、冷媒として二酸化炭素を用いるヒートポンプ給湯機と、前記ヒートポンプ給湯機の下流側に設けられるボイラとを備えるヒートポンプ給湯システムであって、前記ヒートポンプ給湯機に入水される水を、前記ボイラの出口の出湯温度が要求出湯温度になるまで加熱する場合の、前記ヒートポンプ給湯機の出湯温度毎に対する前記ヒートポンプ給湯機のエネルギ消費量である第1エネルギ消費量と、前記ボイラに入水される水を、前記ボイラの出口の出湯温度が前記要求出湯温度になるまで加熱する場合の、ボイラ入水温度毎に対する前記ボイラのエネルギ消費量である第2エネルギ消費量とを算出する算出手段と、前記ボイラの効率を勘案し、前記第1エネルギ消費量と前記第2エネルギ消費量との合計である合計エネルギ消費量が最小となる運転点を推定し、該最小となる運転点の前記ヒートポンプ出湯温度を目標温度とし、該目標温度を前記ヒートポンプ出湯温度として前記ヒートポンプ給湯機に出力する出湯温度出力手段とを具備し、前記ボイラの効率は、前記ボイラの出力容量に対する前記第2エネルギ消費量が、所定割合より大きい場合に設定される第1ボイラ効率と、前記所定割合以下の場合に設定される、前記第1ボイラ効率より効率が低い第2ボイラ効率とを含むヒートポンプ給湯システムを提供する。
【0008】
このような構成によれば、ヒートポンプ給湯機に入水された水は、二酸化炭素を冷媒として加熱されて、ボイラのある下流側に出力され、ボイラで要求出湯温度に加熱される。ヒートポンプ給湯機に入水される水が、ボイラの出口の出湯温度が要求出湯温度となるまでヒートポンプ給湯機で加熱される場合の、ヒートポンプ給湯機の出湯温度毎に対するヒートポンプ給湯機のエネルギ消費量である第1エネルギ消費量と、ボイラに入水される水が、ボイラの出口の出湯温度が要求出湯温度となるまでボイラで加熱される場合の、ボイラの入水温度毎に対するボイラのエネルギ消費量である第2エネルギ消費量とが算出され、第1エネルギ消費量と第2エネルギ消費量との合計である合計エネルギ消費量が最小となる運転点のヒートポンプ出湯温度がヒートポンプ給湯機の出湯温度の目標温度として、ヒートポンプ給湯機に対して出力される。
このように、ヒートポンプ給湯機の消費電力を熱量換算し、ボイラと同じ単位とすることにより、ヒートポンプ給湯機とボイラとを使用する場合のエネルギ消費量を比較でき、ヒートポンプ給湯機とボイラとを組み合わせて使用した場合のエネルギ消費量が最小となる運転点を簡便に推定することができる。また、ボイラとヒートポンプとは直接使用するエネルギが異なるので、第1エネルギ消費量及び第2エネルギ消費量のエネルギ消費量とは、一次エネルギ換算で比較する。
【0009】
上記ヒートポンプ給湯システムの前記算出手段は、前記ボイラ入水温度を、前記ヒートポンプに入水される水の温度であるヒートポンプ入水温度から前記要求出湯温度までとし、前記第2エネルギ消費量を算出することとしてもよい。
【0010】
これにより、ヒートポンプ給湯機に入水される水が、ボイラのみで加熱される場合から、ヒートポンプ給湯機でのみ加熱される場合までにおける第2エネルギ消費量を簡便に算出することができる。
【0011】
上記ヒートポンプ給湯システムは、外気温度と前記ヒートポンプに入水される水の温度であるヒートポンプ入水温度とに基づいて決定される前記ヒートポンプ給湯機の性能を示す運転特性と、前記外気温度を検出する第1検出手段と、前記ヒートポンプ入水温度を検出する第2検出手段とを具備し、前記算出手段は、前記運転特性と、検出された前記外気温度及び前記ヒートポンプ入水温度とに基づいて、前記第1エネルギ消費量を算出することとしてもよい。
【0012】
このように、外気温度とヒートポンプ入水温度とに基づいて決定されるヒートポンプ給湯機の性能が運転特性として格納されているので、検出された外気温度ヒートポンプ入水温度とに基づいて、ヒートポンプからの出湯温度毎の第1エネルギ消費量を簡便に算出することができる。
【0013】
上記ヒートポンプ給湯システムにおいて、前記算出手段は、前記ヒートポンプ給湯機で加熱する場合に使用する燃料の単価である第1燃料単価データ及び前記第1エネルギ消費量に基づいて前記ヒートポンプ給湯機を使用する場合の運転費用である第1運転費用を算出し、前記ボイラで加熱する場合に使用する燃料の単価である第2燃料単価データ及び前記第2エネルギ消費量に基づいて、前記ボイラを使用する場合の運転費用である第2運転費用を算出し、前記出湯温度出力手段は、前記第1運転費用と前記第2運転費用との合計である合計運転費用が最小となる運転点を推定し、該合計運転費用が最小となる運転点の前記ヒートポンプ出湯温度を目標温度とし、該目標温度を前記ヒートポンプ出湯温度として前記ヒートポンプ給湯機に出力することとしてもよい。
【0014】
これにより、運転費用を最小にする運転条件を簡便に推定でき、その運転条件で運転させることで運転費用の削減に繋がる。
【0015】
上記ヒートポンプ給湯システムにおいて、前記算出手段は、前記ヒートポンプ給湯機で加熱する場合に使用する燃料によって排出される二酸化炭素の排出量単位データである第1排出量単位データ及び前記第1エネルギ消費量に基づいて前記ヒートポンプ給湯機を使用する場合の二酸化炭素排出量である第1排出量を算出し、前記ボイラで加熱する場合に使用する燃料によって排出される二酸化炭素の排出量単位データである第2排出量単位データ及び前記第2エネルギ消費量に基づいて前記ボイラを使用する場合の二酸化炭素排出量である第2排出量を算出し、前記出湯温度出力手段は、前記第1排出量と前記第2排出量との合計である合計排出量が最小となる運転点を推定し、該合計排出量が最小となる運転点の前記ヒートポンプ出湯温度を目標温度とし、該目標温度を前記ヒートポンプ出湯温度として前記ヒートポンプ給湯機に出力することとしてもよい。
【0016】
これにより、二酸化炭素排出量を最小にする運転条件を簡便に推定でき、その運転条件で運転させることで二酸化簡素の排出量を抑えることができる。
【0017】
上記ヒートポンプ給湯システムの前記出湯温度出力手段は、前記ヒートポンプ給湯機の起動毎に、前記算出手段は前記第1エネルギ消費量及び前記第2エネルギ消費量を算出し、前記出湯温度出力手段は、前記最小となる運転点を推定することとしてもよい。
【0018】
これにより、ヒートポンプ給湯機の起動時点で外気温度、ヒートポンプ入水温度、要求設定温度等が、前回のヒートポンプ給湯機の起動時点の設定から変動している場合であっても、合計エネルギ消費量が最小となる運転点を正確に推定できる。
【0019】
上記ヒートポンプ給湯システムにおいて、前記ヒートポンプ給湯機の運転中に、前記ボイラの要求出湯温度の設定が変動した場合、前記出湯温度出力手段は、前記合計エネルギ消費量が最小となる前記運転点を推定することとしてもよい。
【0020】
ボイラの要求出湯温度の設定が変動した場合であっても、合計エネルギ消費量が最小となる運転点を正確に推定できる。
【0021】
上記ヒートポンプ給湯システムにおいて、前記第2エネルギ消費量が、前記ボイラの出力容量に対して所定割合以下である場合には、前記所定割合より大きい場合と比較して、前記ボイラの効率を低減させることが好ましい。
【0022】
このように、ボイラのエネルギ消費量がボイラの出力容量に対して所定割合以下である場合には、ボイラ効率を低減させ、ボイラにかかる負荷を低減させることができる。
【0023】
上記ヒートポンプ給湯システムにおいて、過渡的に給水負荷が大きくなり、前記ヒートポンプ給湯機から出湯される水が所望の温度まで上昇しない場合には、前記ヒートポンプ入水温度に関わらず、前記ボイラは、前記ボイラに入水される水を加熱させることとしてもよい。
【0024】
過渡的に給水負荷が大きくなったにも関わらず、ヒートポンプ給湯機の出力容量不足により、ヒートポンプ給湯機のヒートポンプ入水温度が所定温度まで上昇しない場合には、ボイラにおいてアシスト運転(加熱補助運転)をする。
【0025】
本発明は、冷媒として二酸化炭素を用いるヒートポンプ給湯機と、前記ヒートポンプ給湯機の下流側に設けられるボイラとを備えるヒートポンプ給湯システムの制御方法であって、前記ヒートポンプ給湯機に入水される水を、前記ボイラの出口の出湯温度が要求出湯温度になるまで加熱する場合の、前記ヒートポンプ給湯機の出湯温度毎に対する前記ヒートポンプ給湯機のエネルギ消費量である第1エネルギ消費量と、前記ボイラに入水される水を、前記ボイラの出口の出湯温度が前記要求出湯温度になるまで加熱する場合の、ボイラ入水温度毎に対する前記ボイラのエネルギ消費量である第2エネルギ消費量とを算出する第1過程と、前記ボイラの効率を勘案し、前記第1エネルギ消費量と前記第2エネルギ消費量との合計である合計エネルギ消費量が最小となる運転点を推定し、該最小となる運転点の前記ヒートポンプ出湯温度を目標温度とし、該目標温度を前記ヒートポンプ出湯温度として前記ヒートポンプ給湯機に出力する第2過程と、を有し、前記ボイラの効率は、前記ボイラの出力容量に対する前記第2エネルギ消費量が、所定割合より大きい場合に設定される第1ボイラ効率と、前記所定割合以下の場合に設定される、前記第1ボイラ効率より効率が低い第2ボイラ効率とを含むヒートポンプ給湯システムの制御方法を提供する。
【0026】
本発明は、冷媒として二酸化炭素を用いるヒートポンプ給湯機と、前記ヒートポンプ給湯機の下流側に設けられるボイラとを備えるヒートポンプ給湯システムの制御プログラムであって、前記ヒートポンプ給湯機に入水される水を、前記ボイラの出口の出湯温度が要求出湯温度になるまで加熱する場合の、前記ヒートポンプ給湯機の出湯温度毎に対する前記ヒートポンプ給湯機のエネルギ消費量である第1エネルギ消費量と、前記ボイラに入水される水を、前記ボイラの出口の出湯温度が前記要求出湯温度になるまで加熱する場合の、ボイラ入水温度毎に対する前記ボイラのエネルギ消費量である第2エネルギ消費量とを算出する第1処理と、前記ボイラの効率を勘案し、前記第1エネルギ消費量と前記第2エネルギ消費量との合計である合計エネルギ消費量が最小となる運転点を推定し、該最小となる運転点の前記ヒートポンプ出湯温度を目標温度とし、該目標温度を前記ヒートポンプ出湯温度として前記ヒートポンプ給湯機に出力する第2処理と、をコンピュータに実行させるための、前記ボイラの効率は、前記ボイラの効率は、前記ボイラの出力容量に対する前記第2エネルギ消費量が、所定割合より大きい場合に設定される第1ボイラ効率と、前記所定割合以下の場合に設定される、前記第1ボイラ効率より効率が低い第2ボイラ効率とを含むヒートポンプ給湯システムの制御プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、ヒートポンプ給湯機とボイラとを組み合わせる場合に、運転環境に応じて高効率で運転できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1の実施形態に係るヒートポンプ給湯システムの概略構成を示した図である。
図2】ヒートポンプ給湯機の運転時のCOPが、外気温,入水温度,出湯温度により決定されることを示した図である。
図3】ヒートポンプ給湯機の運転特性として、所定の入水温度に対し、外気温度とヒートポンプ給湯機の性能(COP)との関係の一例を示した図である。
図4】一般的なボイラの効率と負荷率との関係の一例を示した図である。
図5】ヒートポンプ給湯システムの制御方法を説明する動作フローである。
図6】ヒートポンプ給湯機及びボイラのエネルギ消費量を比較した一例を示した図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係るヒートポンプ給湯システムの概略構成を示した図である。
図8】本発明の第3の実施形態に係るヒートポンプ給湯システムの概略構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔第1の実施形態〕
以下に、本発明に係るヒートポンプ給湯システム及びその制御方法並びにプログラムの実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るヒートポンプ給湯システム1の概略構成を示した図である。図1に示されるように、ヒートポンプ給湯システム1は、ヒートポンプ給湯機2、ボイラ3、第1温度計測器(第1検出手段)T1、第2温度計測器(第2検出手段)T2、第3温度計測器T3、及び制御装置10を備えている。
【0030】
ヒートポンプ給湯機2は、冷媒として二酸化炭素を用い、大気の熱を利用して水を加熱する電動式のヒートポンプである。ヒートポンプ給湯機2は、供給される水を導く給水配管4、及びボイラ3側に供給する水を導く配管5と接続されており、給水配管4から給水された水を加熱し、加熱後の水を配管5に排出する。
ボイラ3は、ヒートポンプ給湯機2側から供給される水を導く配管5、及び高温水を排出する高温水供給配管6と接続されており、配管5から給水された水を加熱し、加熱した高温水(例えば、60〜70℃程度)を高温水供給配管6へと導く。
【0031】
第1温度計測器T1は、ヒートポンプ給湯機2の近傍に設けられており、ヒートポンプ給湯機2の近傍の外気温度(以下「外気温」ともいう)を計測し、計測結果である外気温情報を制御装置10に出力する。ここで、ヒートポンプ給湯機2の近傍とは、ヒートポンプ給湯機2の運転特性を推定するのに好ましい位置であればよい。
第2温度計測器T2は、給水配管4に設けられており、ヒートポンプ給湯機2に給水される水の温度を計測し、計測結果であるヒートポンプ入水温度情報を制御装置10に出力する。
【0032】
第3温度計測器T3は、配管5に設けられており、配管5を流通し、ボイラ3に給水される水の温度の計測結果であるボイラ入水温度情報を制御装置10に出力する。また、本実施形態のように、ヒートポンプ給湯システム1に貯湯槽(タンク)が設けられず、ヒートポンプ給湯機2とボイラ3とが配管5によって直接接続されている場合には、第3温度計測器T3は、ヒートポンプ給湯機2による加熱後の温度であるヒートポンプ出湯温度を、ボイラ入水温度として計測する。
【0033】
制御装置10は、算出部(算出手段)11、出湯温度出力部(出湯温度出力手段)12、及び格納部13を備えている。
格納部13は、外気温度とヒートポンプ入水温度とに基づいて決定されるヒートポンプ給湯機2の性能、ヒートポンプ給湯機2で使用される電気料金単価などを含むヒートポンプ給湯機2の運転特性の情報を格納する。ヒートポンプ給湯機2の運転特性は、例えば、図2に示されるように、ヒートポンプ給湯機2のCOP(Coefficient Of Performance、成績係数)は、運転時の外気温度、入水温度、出湯温度で決定される。図3には、所定のヒートポンプ入水温度の場合における、ヒートポンプ出湯温度毎の外気温度に対するヒートポンプ給湯機2のCOPが示されている。なお、ヒートポンプ給湯機2の運転特性の情報は、予め格納部13に格納されていてもよいし、利用者によって入力され格納部13に格納したものであってもよい。
【0034】
また、格納部13は、ボイラ3の効率、燃料単価、などのボイラ基礎情報を格納する。なお、ボイラ3の効率は、ボイラ3の出力容量に対するエネルギ消費量が所定割合(例えば、50%)より大きい場合の通常ボイラ効率、及び所定割合(例えば、50%)以下となった場合に使用される低減ボイラ効率を含む。
本実施形態においては、ボイラ3の効率は、ヒートポンプ給湯機2の起動毎に利用者によって指定されることとして説明するが、ボイラ3の効率の指定方法はこれに限定されない。例えば、図4に示されるように、ボイラ負荷率(%)とボイラ効率(%)とを対応づけるテーブルを与えておき、ボイラ3の定格出力容量に対するエネルギ消費量(第2エネルギ消費量)を負荷率として算出し、ボイラ受け持分の負荷率に相当するボイラ効率が適宜読み出されることとしてもよい。
【0035】
算出部11は、ヒートポンプ給湯機2に入水される水を、ボイラ3の出口の出湯温度が要求出湯温度になるまで加熱する場合の、ヒートポンプ給湯機2の出湯温度毎に対するヒートポンプ給湯機2のエネルギ消費量である第1エネルギ消費量(熱量換算)と、ボイラ3に入水される水を、ボイラ3の出口の出湯温度が要求出湯温度になるまで加熱する場合の、ボイラ入水温度毎に対するボイラ3のエネルギ消費量である第2エネルギ消費量(熱量換算)とを算出する。
【0036】
具体的には、算出部11は、ボイラ入水温度を、ヒートポンプに入水される水の温度であるヒートポンプ入水温度から要求出湯温度までとし、第2エネルギ消費量を算出する。
また、算出部11は、運転特性と、検出された外気温度及びヒートポンプ入水温度とに基づいて、第1エネルギ消費量を算出する。
出湯温度出力部12は、第1エネルギ消費量と第2エネルギ消費量との合計である合計エネルギ消費量が最小となる運転点を推定し、該最小となる運転点のヒートポンプ出湯温度を目標温度とし、目標温度をヒートポンプ出湯温度としてヒートポンプ給湯機2に出力する。
【0037】
なお、ヒートポンプ給湯機2の起動毎に、算出部11は第1エネルギ消費量及び第2エネルギ消費量を算出し、出湯温度出力部12は、合計エネルギ消費量が最小となる運転点を推定することが好ましい。
また、ヒートポンプ給湯機の運転中に、ボイラ3の要求出湯温度の設定が変動した場合、出湯温度出力部12は、合計エネルギ消費量が最小となる運転点を推定することが好ましい。これにより、運転環境が変動している場合であっても、合計エネルギ消費量が最小となる運転点を正確に決定することができる。
【0038】
なお、過渡的に給水負荷が大きくなり、ヒートポンプ給湯機2の出力容量が不足し、ヒートポンプ給湯機2から出湯される水が所望の温度(要求出湯温度)まで上昇しないことが推定される場合には、ヒートポンプ出湯温度(ボイラ入水温度)に関わらず、ボイラ3によって、入水される水を加熱させ、アシスト運転させることとしてもよい。この場合には、制御装置10からボイラ3側に入水された水を加熱させる加熱指令が出力される。
【0039】
以下に、本実施形態に係るヒートポンプ給湯システム1の制御方法について説明する。
ヒートポンプ給湯機2の運転特性の情報は、予め格納部13に格納されている。また、目標とするボイラ出湯温度である要求出湯温度、ボイラ3で使用される燃料の種別、ボイラ効率等のボイラ3に関するボイラ基礎情報が、利用者によって入力されると、制御装置10において、ボイラ3の要求出湯温度、燃料種別、ボイラ効率の情報が取得され、格納部13に格納される(図5のステップSA1)。
【0040】
第1温度計測器T1により計測された外気温度が外気温情報として制御装置10に入力され、また、第2温度計測器T2により計測されたヒートポンプ入水温度がヒートポンプ入水温度情報として制御装置10に入力される。制御装置10において、取得した外気温度情報と、ヒートポンプ入水温度情報と、格納部13から読み出されるヒートポンプ給湯機2の運転特性とに基づいて、第1エネルギ消費量が算出される(図5のステップSA2)。例えば、第1エネルギ消費量算出の第1回目では、ヒートポンプ給湯機2では加熱をしない場合を想定し、第1エネルギ消費量が算出される。
【0041】
また、ボイラ3の出口側における高温水供給配管6から排出させる出湯温度が、要求出湯温度となるまでの、ボイラ3に給水される水を加熱する場合のボイラ3の第2エネルギ消費量が算出される(図5のステップSA3)。ここで、ボイラ3に給水される水は、ヒートポンプ給湯機2から出湯される水であることから、ボイラ入水温度はヒートポンプ出湯温度となる。例えば、第2エネルギ消費量算出の第1回目では、ヒートポンプ給湯機2では加熱されなかった水、即ち、ヒートポンプ入水温度の水をボイラ3のみで加熱した場合を想定し、第2エネルギ消費量が算出される。
【0042】
算出された第1エネルギ消費量、第2エネルギ消費量、合計エネルギ消費量、及びそれら算出結果をもたらしたヒートポンプ出湯温度(例えば、算出第1回目では、ヒートポンプ入水温度)の情報が対応づけられ、対応情報として格納部13に格納される(図5のステップSA4)。エネルギ消費量の算出に使用したヒートポンプ出湯温度が、ボイラ3の出口の目標温度である要求出湯温度より大きいか否かが判定され(図5のステップSA5)、ヒートポンプ出湯温度が要求出湯温度より小さければ、ヒートポンプ出湯温度を所定温度(例えば、α℃)大きくし(図5のステップSA8)、ステップSA2に戻り、第1エネルギ消費量及び第2エネルギ消費量の算出を繰り返す。
【0043】
図6には対応情報の一例が示されており、ヒートポンプ入水温度A℃、ボイラ出湯温度B℃の場合における、ヒートポンプ出湯温度毎の第1エネルギ消費量、第2エネルギ消費量、及び合計エネルギ消費量が対応づけられて示されている。図6に示されるように、対応情報では、ヒートポンプに給水される水をボイラ3のみで加熱する場合(ヒートポンプ出湯温度=ET1)から、ヒートポンプ給湯機2とボイラ3とを組み合わせて加熱する場合(ヒートポンプ出湯温度=ET1よりET3)を含み、ボイラ3では加熱せずヒートポンプ給湯機2のみで加熱する場合(ヒートポンプ出湯温度=ET3)までの第1エネルギ消費量と第2エネルギ消費量とを、ヒートポンプ出湯温度毎に示している。
【0044】
なお、算出される第2エネルギ消費量が、ボイラの出力容量に対して所定割合(例えば、50%)以下である場合には、図4に示すようにボイラ効率が低減するので、所定割合よりボイラ3の効率を低減させる、低減ボイラ効率(例えば、80%)を加算して、評価することが好ましい。
ヒートポンプ出湯温度が要求出湯温度より大きくなったら、格納部13に格納されている対応情報が参照され(例えば、図6)、合計エネルギ消費量が最小となる運転点を推定し、合計エネルギ消費量が最小となる運転点のヒートポンプ給湯機2の出湯温度(例えば、ET2)が読み出される(図5のステップSA6)。
読み出されたヒートポンプ給湯機2の出湯温度が、ヒートポンプ給湯機2の目標温度とされ、制御装置10からヒートポンプ給湯機2に目標温度の情報が出力され(図5のステップSA7)、本処理を終了する。
【0045】
ヒートポンプ給湯機2は、目標温度の情報を取得すると、目標温度をヒートポンプ出湯温度として設定し、入水された水を目標温度まで加熱し、加熱後の水をボイラ3側に排出する。ヒートポンプ給湯機2から排出された水は、ボイラ3に給水され、ボイラ3において、ヒートポンプ出湯温度の水が要求出湯温度まで加熱され、排出される。
【0046】
上述した実施形態に係るヒートポンプ給湯システム1においては、上記処理の全て或いは一部を別途ソフトウェアを用いて処理する構成としてもよい。この場合、制御装置10は、CPU、RAM等の主記憶装置、及び上記処理の全て或いは一部を実現させるためのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、CPUが上記記憶媒体に記録されているプログラムを読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、上述の制御装置10と同様の処理を実現させる。
ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0047】
以上説明してきたように、本実施形態に係るヒートポンプ給湯システム1及びその制御方法並びに制御プログラムによれば、ヒートポンプ給湯機2に入水された水は、二酸化炭素を冷媒として加熱されて、ボイラ3のある下流側に出力され、ボイラ3で要求出湯温度に加熱される。ヒートポンプ給湯機2に入水される水が、ボイラ3の出口の出湯温度が要求出湯温度となるまでヒートポンプ給湯機2で加熱される場合の、ヒートポンプ給湯機の出湯温度毎に対するヒートポンプ給湯機2のエネルギ消費量である第1エネルギ消費量と、ボイラ3に入水される水が、ボイラ3の出口の出湯温度が要求出湯温度となるまでボイラ3で加熱される場合の、ボイラ3の入水温度毎に対するボイラ3のエネルギ消費量である第2エネルギ消費量とが算出され、第1エネルギ消費量と第2エネルギ消費量との合計である合計エネルギ消費量が最小となる運転点のヒートポンプ出湯温度がヒートポンプ給湯機2の出湯温度の目標温度として、ヒートポンプ給湯機2に対して出力される。
【0048】
このように、ヒートポンプ給湯機2の消費電力を熱量換算し、ボイラ3と同じ単位とすることにより、ヒートポンプ給湯機2とボイラ3とを組み合わせて使用する場合のエネルギ消費量を比較でき、ヒートポンプ給湯機とボイラとを組合わせて使用した場合のエネルギ消費量が最小となる運転点を簡便に推定することができる。また、合計エネルギ消費量が最小となる運転点を算出し、合計エネルギ消費量が最小となる運転点におけるヒートポンプ給湯機2とボイラ3との組み合わせによって運転することにより、ヒートポンプ給湯システム1全体で消費される合計エネルギ消費量が最小になり、高効率で運転できる。
【0049】
〔変形例1〕
なお、本実施形態においては、図6に示されるように、エネルギ消費量を熱量(一次エネルギ)換算して、ヒートポンプ給湯機2とボイラ3とを比較することとして説明していたが、比較の方法はこれに限定されない。例えば、エネルギ消費量に基づいて燃料費に換算して比較してもよい。この場合、上記構成に加え、格納部13、算出部11、及び出湯温度出力部12は、それぞれ以下を備える。
格納部13は、ヒートポンプ給湯機2で加熱する場合に使用する燃料の単価である第1燃料単価データ、ボイラ3で加熱する場合に使用する燃料の単価である第2燃料単価データを格納する。
【0050】
算出部11は、第1燃料単価データ及び第1エネルギ消費量に基づいてヒートポンプ給湯機2を使用する場合の運転費用である第1運転費用を算出し、第2燃料単価データ及び第2エネルギ消費量に基づいて、ボイラ3を使用する場合の運転費用である第2運転費用を算出する。具体的には、算出部11は、ヒートポンプ給湯機2のエネルギ消費量から推定される必要燃料量と第1燃料単価データとに基づいて第1運転費用を算出し、ボイラ3のエネルギ消費量から推定される必要燃料量と第2燃料単価データとに基づいて第2運転費用を算出する。
【0051】
また、出湯温度出力部12は、第1運転費用と第2運転費用との合計である合計運転費用が最小となる運転点を推定し、合計運転費用が最小となる運転点のヒートポンプ出湯温度を目標温度とし、該目標温度をヒートポンプ出湯温度としてヒートポンプ給湯機2に出力する。
これにより、運転費用(運用コスト)が最小となる運転点(運転条件)を簡便に推定でき、その運転条件で運転させることで運転費用の削減に繋がる。
【0052】
〔変形例2〕
或いは、エネルギ消費量に基づいて排出する二酸化炭素量に換算して比較することとしてもよい。この場合、上記構成に加え、格納部13、算出部11、及び出湯温度出力部12は、それぞれ以下を備える。
格納部13は、ヒートポンプ給湯機2で加熱する場合に使用する燃料によって排出されるCO2の排出量単位データである第1排出量単位データ、ボイラ3で加熱する場合に使用する燃料によって排出されるCO2の排出量単位データである第2排出量単位データを格納する。
算出部11は、第1排出量単位データ及び第1エネルギ消費量に基づいてヒートポンプ給湯機2を使用する場合のCO2排出量である第1排出量を算出し、第2排出量単位データ及び第2エネルギ消費量に基づいてボイラ3を使用する場合のCO2排出量である第2排出量を算出する。
【0053】
出湯温度出力部12は、第1排出量と第2排出量との合計である合計排出量が最小となる運転点を推定し、該合計排出量が最小となる運転点のヒートポンプ出湯温度を目標温度とし、該目標温度をヒートポンプ出湯温度としてヒートポンプ給湯機2に出力する。
これにより、CO2排出量を最小にする運転点(運転条件)を簡便に推定でき、その運転条件で運転させることでCO2の排出量を抑えることができる。
【0054】
〔第2の実施形態〕
以下、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態は、ヒートポンプ給湯システム1aにおいて、貯湯槽7、ヒートポンプ給湯機2に給水する給水配管4からボイラ3側に水をバイパスさせるバイパス経路8を設ける点で第1の実施形態と異なる。本実施形態のヒートポンプ給湯システム1aについて、第1の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0055】
図7に示されるように、ヒートポンプ給湯システム1aは、貯湯槽7、ヒートポンプ給湯機2に給水する給水配管4からボイラ3側に水をバイパスさせるバイパス経路8、及びバイパス経路8に設けられるバルブ9を備えている。
貯湯槽7は、ヒートポンプ給湯機2とボイラ3との間に接続され、ヒートポンプ給湯機2から出湯された水を貯湯し、ボイラ3側から給水要求があった場合に、水をボイラ3側に排出する。ヒートポンプ給湯機2とボイラ3では必ずしも同一容量ではない。通常、ヒートポンプ給湯機2は小容量であり運転時間を長くして一旦貯湯槽7に水を溜めておき、給水要求に応じてボイラ3側に供給させる。貯湯槽7は断熱が確保されており、貯湯する水を所定温度に保つように制御されている。
バイパス経路8は、バルブ9の開度に応じた流量の水を、ボイラ3側に流通させる。
【0056】
第2温度計測器T2は、給水配管4とバイパス経路8との合流点Yよりもヒートポンプ給湯機2側の下流側の熱交換器に近い位置に設けられており、ヒートポンプ給湯機2に給水される水の温度を計測し、ヒートポンプ入水温度情報を制御装置10に出力する。
第3温度計測器T3は、ヒートポンプ給湯機2と貯湯槽7との間に接続され、ヒートポンプ給湯機2から出湯される水の温度を計測し、ヒートポンプ出湯温度情報を制御装置10に出力する。
【0057】
このような構成にすることにより、ヒートポンプ給湯機2で出湯された水を所定量貯湯させ、運用することができる。また、給水負荷が一時的に増加し、貯湯槽7に貯湯されている水量が、利用者から要求される水量である要求水量に対し不足すると想定される場合、ヒートポンプ給湯機2の加熱応力で不足する場合には、バルブ9の開度が調節されて開かれ、貯湯槽7から供給されるヒートポンプ出湯温度に関わらず、ボイラ3で加熱し、ボイラ3でアシスト運転し、ヒートポンプ給湯機2とボイラ3の全システムで運転することとしてもよい。
【0058】
〔第3の実施形態〕
以下、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態は、ヒートポンプ給湯システム1bにおいて、ヒートポンプ給湯機2の給水側と出湯側とが貯湯槽7と接続されており、ボイラ3は貯湯槽7からの給水及び給水配管4と接続されている点で第1の実施形態、第2の実施形態と異なる。本実施形態のヒートポンプ給湯システム1bについて、第1の実施形態、第2の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0059】
図8に示されるように、ヒートポンプ給湯機2の給水側と出湯側とが貯湯槽7と接続されており、ボイラ3は貯湯槽7からの給水及び給水配管4と接続されている。
貯湯槽7は、給水配管4から供給される水を蓄え、ヒートポンプ給湯機2に給水するとともに、ヒートポンプ給湯機2から出湯された水を貯湯する。また、貯湯槽7は、ボイラ3に水を給水する。
ボイラ3は、貯湯槽7から水を給水する。また、一時的に利用者からの給水要求が増加し、貯湯槽7に蓄えられた水量では給水要求に応じられない場合には、バルブ9の開度が調整されることで、給水配管4から直接水を給水させる。
【0060】
第2温度計測器T2は、貯湯槽7とヒートポンプ給湯機2との間の給水側の経路に設けられ、ヒートポンプ給湯機2に給水される水の温度を計測し、ヒートポンプ入水温度情報を制御装置10に出力する。
第3温度計測器T3は、貯湯槽7とヒートポンプ給湯機2との間の出湯側の経路に設けられ、ヒートポンプ給湯機2から出湯される水の温度を計測し、ヒートポンプ出湯温度情報を制御装置10に出力する。
【0061】
このような構成にすることにより、ヒートポンプ給湯機2で出湯された水を所定量貯湯させ、運用することができる。また、給水負荷が一時的に増加し、貯湯槽7に貯湯されている水量が、利用者から要求される水量である要求水量より少ない場合には、バルブ9の開度が調節されて開かれ、給水配管4から供給される出湯温度に関わらず、ボイラ3で加熱し、ボイラ3によるアシスト運転をすることとしてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1、1a、1b ヒートポンプ給湯システム
2 ヒートポンプ給湯機
3 ボイラ
7 貯湯槽
8 バイパス経路
9 バルブ
10 制御装置
T1 第1温度計測器(第1検出手段)
T2 第2温度計測器(第2検出手段)
T3 第3温度計測器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8