(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来のコンテナキャリアの一例が、特許文献1に開示されている。
この開示されているコンテナキャリアは、複数の車輪により支持されたフレーム(車両本体)と、このフレームの上部からワイヤを介して昇降自在に吊り下げられ、コンテナを連結するスプレッダ装置を備え、フレームに、ワイヤの巻き取りドラムとこのドラムを回転駆動する巻上げ用モータ(荷役用モータ)を設け、また左右の前記車輪をそれぞれ駆動する走行用モータを設け、これら走行用モータを正逆駆動することにより、コンテナキャリアを前進・後退し、また左右の各走行用モータの回転数を変えることにより、コンテナキャリアを左行・右行し、また巻上げ用モータを駆動することにより、スプレッダ装置を昇降している。またフレーム上に、エンジン室を設け、このエンジン室の内部に、エンジンとこのエンジンに連結された発電機を設け、発電機からこれら走行用モータと巻上げ用モータへ給電している。
【0003】
またコンテナキャリアは、埠頭などの広いコンテナヤードで使用されるため、車両構造上重心が非常に高いにもかかわらず、作業のスピードアップが求められ、そのため、走行速度を速め、さらに走行中にコンテナの昇降を実行していることから、速度超過により旋回走行中に、転倒する恐れが高くなっている。
このような旋回走行中の車両の転倒の防止を可能とした荷役車両の一例が、特許文献2に開示されている。
【0004】
特許文献2に開示されている荷役車両はバッテリフォークリフトであり、このバッテリフォークリフトでは、操舵角センサにより車輪の操舵角を検出し、揚高センサによりフォークの揚高位置を検出し、さらに負荷センサによりフォークの積載荷重を検出しており、コントローラによりアクセルペダルの操作量に応じた車両速度にすべく走行モータを制御している。そして、前記コントローラは、まず走行前に、検出された揚高位置と積載荷重を確認し、走行中に、操舵角センサにより検出されている操舵角と、確認した揚高位置と積載荷重に基づいて制御走行速度を算出し、この制御走行速度を用いて車両速度に対し必要時に走行モータを制御して、減速または速度規制を行って、旋回走行中の転倒を防止している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、バッテリフォークリフトでは、元々車両の重心位置は低く、走行中にフォークの昇降は基本的にできないため、走行中に重心位置が変動することがない。これに対して、コンテナキャリアは、車両構造上、重心が非常に高く、しかも走行中にコンテナの巻上げ・巻下げが実行されるため、重心位置が高い位置で変動し、よって走行速度が速いと旋回走行中にバッテリフォークリフトより転倒する恐れが高いという問題があった。
そこで、本発明は、走行中にコンテナの巻上げ・巻下げを実行されるコンテナキャリアであって、旋回走行中の転倒を防止できるコンテナキャリアを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、複数の車輪により支持される車体に、
この車体の上部でコンテナの巻上げ・巻下げを行う荷役装置を設け、この荷役装置によりコンテナの巻上げ・巻下げを行いながら、前記車輪の向きを操向装置により変更し、前記車輪を走行装置により回転することにより走行して荷役作業を実行するコンテナキャリアであって、
前記走行装置を、前記車輪に連結された電動モータと、この電動モータを回転駆動するインバータにより構成し、
前記操向装置による前記車輪の操向角度を検出する角度検出器と、
前記荷役装置により巻上げ・巻下げを行われている前記コンテナの高さを検出する高さ検出器と、
走行中連続して前記高さ検出器により検出されている巻上げ・巻下げを行われているコンテナの高さに基づいて
前記コンテナを吊り下げた状態での前記車体の重心高さ位置を求める
重心高さ演算部と、前記重心高さ位置を求めると同時に前記角度検出器により検出されている車輪の操向角度により前記車体の旋回半径を求め
る旋回半径演算部と、連続してこれら求めた変化する車体の重心高さ位置と車体の旋回半径により前記車体を安定して旋回可能な制限速度を求め
る速度制限出力部と、を有する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記車体の走行速度指令を前記制限速度により制限して前記インバータへ速度指令を出力し、このインバータにより前記電動モータを回転駆動させる
ように構成されたことを特徴とするものである。
【0008】
上記構成によれば、巻上げ・巻下げを行われている現在のコンテナの高さに基づいて求められる車体の重心高さ位置と、現在の車輪の操向角度により求められる車体の旋回半径により、常に連続して、車体を安定して旋回可能な走行装置による制限速度が求められ、この制限速度により、車体の走行速度指令が制限されて、インバータへ速度指令が出力され、このインバータにより電動モータを回転駆動されて、旋回走行される。よって、走行中に荷役装置によりコンテナの巻上げ・巻下げが実行される車体の旋回走行中の転倒が防止される。
【0009】
また請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明であって、前記制御装置は、前記車体の走行速度指令を前記制限速度により制限すると、コンテナキャリアのオペレータへ報知することを特徴とするものである。
【0010】
上記構成によれば、車体の走行速度指令が制限速度により制限されると、オペレータへ報知される。これにより、オペレータは、アクセルペダルにより走行速度を上げようとしても、実際に走行速度が上がらない理由、すなわち走行速度が制限されたことを認識でき、減速できる。
【0011】
また請求項3に記載の発明は、複数の車輪により支持される車体に、
この車体の上部でコンテナの巻上げ・巻下げを行う荷役装置を設け、この荷役装置によりコンテナの巻上げ・巻下げを行いながら、前記車輪の向きを操向装置により変更し、前記車輪を走行装置により回転することにより走行して荷役作業を実行するコンテナキャリアであって、
前記走行装置を、前記車輪に連結された電動モータと、この電動モータを回転駆動するインバータにより構成し、
前記操向装置による前記車輪の操向角度を検出する角度検出器と、
前記荷役装置により巻上げ・巻下げを行われている前記コンテナの高さを検出する高さ検出器と、
走行中連続して前記高さ検出器により検出されている巻上げ・巻下げを行われているコンテナの高さに基づいて前記車体の重心高さ位置を求める
重心高さ演算部と、前記重心高さ位置を求めると同時に前記角度検出器により検出されている車輪の操向角度により前記車体の旋回半径を求め
る旋回半径演算部と、連続してこれら求めた変化する車体の重心高さ位置と車体の旋回半径により前記車体を安定して旋回可能な制限速度を求め
る速度制限出力部と、を有する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、前記車体の走行速度指令が前記制限速度以上あるいは制限速度を越えると、コンテナキャリアのオペレータへ報知する
ように構成されたことを特徴とするものである。
【0012】
上記構成によれば、巻上げ・巻下げを行われている現在のコンテナの高さに基づいて求められる車体の重心高さ位置と、現在の車輪の操向角度により求められる車体の旋回半径により、常に連続して、車体を安定して旋回可能な走行装置による制限速度が求められ、車体の走行速度指令がこの制限速度以上あるいは制限速度を越えると、オペレータへ報知される。オペレータが、この報知に応答して走行速度指令を落すこと(減速すること)によって走行中に荷役装置によりコンテナの巻上げ・巻下げが実行される車体の旋回走行中の転倒が防止される。
【0013】
また請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明であって、前記車体の走行速度を検出する走行速度検出器を備え、前記制御装置は、求めた車体の旋回半径と、前記走行速度検出器により検出された前記車体の走行速度により、前記車体を安定して旋回可能な前記荷役装置による前記コンテナの高さを求め、コンテナキャリアのオペレータへ報知することを特徴とするものである。
【0014】
上記構成によれば、求めた車体の旋回半径と、フィードバックされた車体の走行速度により、車体を安定して旋回可能な荷役装置によるコンテナの高さが求められ、オペレータへ報知される。これにより、オペレータは、旋回中に車体を転倒させる恐れがなく、昇降可能なコンテナの高さを認識できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のコンテナキャリアは、連続して、車体を安定して旋回可能な制限速度を求めて、この制限速度により車体の走行速度指令を制限することにより、走行中に荷役装置によりコンテナの巻上げ・巻下げが実行される、車両構造上重心が非常に高い車体の旋回走行中の転倒を防止できる、という効果を有している。
また本発明のコンテナキャリアは、連続して、車体を安定して旋回可能な制限速度を求めて、車体の走行速度指令がこの制限速度以上あるいは制限速度を越えると、オペレータへ報知され、オペレータはこの報知に応答して車体の走行速度指令を落すこと(減速すること)によって車両構造上重心が非常に高い車体の旋回走行中の転倒を防止できる、という効果を有している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施例]
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の実施例におけるコンテナキャリア11の側面図である。コンテナキャリア11は、コンテナ(吊り荷の一例)Cを吊り下げて運搬し、移載、あるいは段積する荷役車両であり、主に埠頭などのコンテナヤードにおいて使用される。
【0018】
「車体フレーム」
図1において、12はコンテナキャリア11の車体フレーム(車両本体)であり、車体フレーム12は、その中央部にコンテナCを収納しうる空間を形成するように、前進方向(矢視P方向)に向かって左側部と右側部に、前後に延びる左右一対の下部フレーム13を有し、左右一対の下部フレーム13の上面に、左右一対の前方縦フレーム14と左右一対の中央縦フレーム15、さらにそれらの縦フレーム14,15より短い左右一対の後方縦フレーム16が立設されている。
ここで、前方とは、コンテナキャリア11が前進方向(矢視P方向)に走行する場合、後述する運転室24がコンテナキャリア11の後方に位置している方向である。
【0019】
また前方縦フレーム14と中央縦フレーム15との間には、左右一対の上方側部材17と下方側部材18、さらに、交差状に設けた左右一対の上方緊張材19と下方緊張材20などを連結している。
さらに、天井部には前方縦フレーム14の左右並びに、中央縦フレーム15の左右をそれぞれ連結する前方横渡部材21、中央横渡部材22を設けて門型構造としている。
また左右の後方縦フレーム16の上端部には平面視でほぼU字状の後方張出し部材23を連結し、その上面に運転室24を右側に偏心して固設し、後方張出し部材23の周囲には手摺り部材25を立設している。
【0020】
なお、運転室昇降用梯子として、左側部の中央縦フレーム15に沿って垂直方向に第1梯子26を設け、その第1梯子26の上端部と手摺り部材25の前端部との間に手摺り付き第2梯子27を設けている。
【0021】
「走行機構」
前記左右一対の下部フレーム13の下部にはそれぞれ、前方部に、第1車輪31と第2車輪32と第3車輪33が前方から順に配設され、後方部に、第3車輪33から後方に離れて第4車輪34が配設されている。なお、本実施例において第3車輪33が駆動輪で、その他の各車輪は被駆動輪である。
また左右一対の下部フレーム13上にそれぞれ、これら第3車輪33をそれぞれ駆動するための電動モータからなる走行用モータ35が設けられている。これら走行用モータ35が正逆駆動されることにより、コンテナキャリア11は前進・後退される。走行用モータ35と後述する走行用インバータ56により走行装置が形成されている。
【0022】
「操向機構」
左右一対の下部フレーム13の下部で、第3車輪33の後方にそれぞれ、
図1および
図2に示すように、ステアリングシリンダ36が配置され、運転室24に設けたハンドル(図示せず)の回転角度に応じてステアリングシリンダ36のロッド36Aを出し入れし、ロッド36Aに連結されたリンク機構30により各車輪31,32,33,34の車軸31A,32A,33A,34Aの向きを変えることによりコンテナキャリア11を換向(左行・右行)する構成とされ、ステアリングシリンダ36、ハンドル、およびリンク機構30により操向装置が形成されている。
またリンク機構30において、リンクを駆動する回転中心となる回転中心軸30Aに、車軸31A,32A,33A,34Aの旋回角度(直進方向を0゜とした角度)を検出するポテンショメータからなる旋回角度検出器(角度検出器の一例)30Bが連結されている。
【0023】
「荷役機構」
図3に示すように、前記前方縦フレーム14の左右内側並びに、中央縦フレーム15の左右内側の空間には、4本のワイヤ(吊り荷を支持する索体)37に吊設されてコンテナCを巻上げ・巻下げ可能(昇降可能)に吊り上げるスプレッダ装置38を配設している。なお、
図1において、一点鎖線で示すコンテナCは、45フィートコンテナを地上に3段積み重ね、4段目のコンテナCをスプレッダ装置38によって吊り上げている状態を示している。
【0024】
スプレッダ装置38は、
図3に示すように、直方体状の本体38Aと、これに対して前後方向に伸縮移動可能に設けられて平面略T型を呈する前後の伸縮体38Bと、本体38Aに対して伸縮体38Bを伸縮移動させる伸縮シリンダ(図示せず)と、各伸縮体38Bに縦軸廻りに旋動可能に設けられてコンテナCの係合孔(図示せず)に係合し得る連結具39と、これを旋動させるツイストロックシリンダ(図示せず)とを備えており、コンテナCの大きさに合わせて伸縮体38Bを伸縮できるようになっている。
また、中央縦フレーム15には、その後方位置に水平な状態で、スプレッダ装置38の駆動機構を支持する支持枠40(
図1)が配設されている。
【0025】
またスプレッダ装置38の昇降機構として、スプレッダ装置の本体38Aの前後に前後軸廻りに回転可能に設けられた左右一対の二連シーブ(二つの動シーブ)41と、前後の前方縦フレーム14と中央縦フレーム15上にそれぞれ設けられ、横軸廻りに回転可能且つ前後軸廻りに搖動可能に設けられた左右一対の搖動シーブ42と、搖動シーブ42近傍前後に前後軸廻りに回転可能に設けられた左右一対の固定シーブ43と、前側の搖動シーブ42近傍に縦軸廻りに回転可能に設けられた左右一対の反転シーブ44とが設けられ、前記4本のワイヤ37の一端はそれぞれ前後のスプレッダ装置38上に配置した止め具(図示せず)に固定され、4本のワイヤ37の他端はそれぞれ、これら二連シーブ41、固定シーブ43、搖動シーブ42あるいは反転シーブ44を介して、支持枠40上に配設された4連のドラム45に接続されている。また支持枠40上に、荷役用モータ(電動の巻上げモータの一例)46が設けられ、荷役用モータ46の回転軸がブレーキ48および減速機47を介して、4連のドラム45に連結されている。この荷役用モータ46が駆動されることにより4本のワイヤ37はドラム45から引き出され、また巻き取られ、各シーブ41,42,43,44の作用によりスプレッダ装置38が昇降される。また荷役用モータ46のブレーキ48が駆動されることにより、ワイヤ37の移動はロックされ、スプレッダ装置38の昇降はロックされる。
またドラム45とブレーキ48と荷役用モータ46と減速機47により、上記駆動機構が構成され、この駆動機構と前記昇降機構とワイヤ37とスプレッダ装置38により荷役装置が形成されている。
【0026】
「運転機構」
前記運転室24に、モニター装置28(
図4)と、ステアリング・ハンドルなど走行・荷役・コンテナCの連結に必要な操作装置29(
図4)が配設され、乗員による操作装置29の操作により走行用モータ35が駆動されて走行が行われ、荷役用モータ46が駆動されてコンテナCの巻上げ・巻下げが行われ、連結具39によりコンテナCのスプレッダ装置38への連結・離脱が行われる。またモニター装置28には、走行速度制限中を報知するランプ28A(報知手段の一例)と、後述するスプレッダ装置38の許容高さを表示するディジタル表示器28Bが設けられている。
【0027】
「駆動源」
左側の下部フレーム13上には、下方側部材18の下方位置で、且つ後方位置にエンジン室51(
図4)が設けられ、このエンジン室51の内部に、
図4に示す、エンジン49とこのエンジン49に連結された発電機50と、コンバータ54が設けられている。
【0028】
また右側の下部フレーム13上には、
図1に示すように、下方側部材18の下方位置で、且つ後方位置に制御盤52が設けられ、制御盤52の内部に、
図4に示す、各走行用モータ35を駆動する2台の走行用インバータ56、荷役用モータ46を駆動する荷役用インバータ57、電磁スイッチからなる投入・遮断スイッチ58と制動抵抗器59から構成された制動ユニット60、コンピュータからなるコントローラ(制御装置の一例)61等が収納されている。
【0029】
また
図4に示すように、上記走行用モータ35にはそれぞれ、パルスジェネレータ(PG)63が連結され、また荷役用モータ46にもパルスジェネレータ(PG)64が連結されている。これら3台のパルスジェネレータ63,64からのパルス信号はそれぞれ、コントローラ61に入力されている。
【0030】
「制御構成」
図4に示すように、発電機50により発生した交流電圧は、コンバータ54により直流電圧に変換され、この直流電圧が直流母線(直流電圧母線)70に印加される。この直流母線70に、荷役用インバータ57、2台の走行用インバータ56、および制動ユニット60の投入・遮断スイッチ58が接続されている。
【0031】
「コントローラ61」
上記コントローラ61には、
図3に示すように、次の信号・データが入力される。
・運転室24の操作装置29の荷役指令または走行速度指令の信号
・各走行用モータ35のパルスジェネレータ63のパルス信号
・荷役用モータ46のパルスジェネレータ64のパルス信号
・旋回角度検出器30Bの旋回角度信号
またコントローラ61より、次の信号・データが出力される。
・荷役用インバータ57と2台の走行用インバータ56への指令信号
・投入・遮断スイッチ58への投入指令または遮断指令
・ブレーキ48のオン指令またはオフ指令
・モニター装置28のランプ28Aとディジタル表示器28Bの表示信号
【0032】
以下、本発明の要部であるコントローラ61による走行制御を、
図5に示す制御ブロック、および
図6と
図7の説明図に基づいて説明する。なお、コントローラ61による荷役制御と回生制御については説明を省略する。
【0033】
図5に示すように、2台の走行用モータ35のパルスジェネレータ63のパルス信号をそれぞれカウントすることにより左右の第3車輪(駆動輪)33の走行速度を求める左右の速度検出部71を設け、これら左右の速度検出部71からそれぞれ出力される左右の第3車輪33の走行速度の平均値をとり、コンテナキャリア11の走行速度(車速)Vを求める走行速度演算部72を設けている。この走行速度演算部72と2台の走行用モータ35と2台の速度検出部71により、コンテナキャリア(車体)11の走行速度を検出する走行速度検出器が形成されている。
【0034】
また荷役用モータ46のパルスジェネレータ64のパルス信号をカウントすることによりスプレッダ装置38の巻上高さJを検出する巻上げ高さ演算部73を設けており、この巻上げ高さ演算部73とパルスジェネレータ64により、スプレッダ装置38の昇降位置、すなわちコンテナCの高さを検出する高さ検出器が形成されている。
そして、巻上げ高さ演算部73により検出されたスプレッダ装置38の巻上高さJ、すなわちコンテナCの高さにより、コンテナキャリア11の重心高さ位置Hを求める重心高さ演算部74を設けている。
重心高さ演算部74には、
図6に示す、コンテナCを吊り下げていない状態でのコンテナキャリア11の重心G1の高さ位置h1と重量W1が予め設定され、またコンテナCの高さ寸法fと重量(平均重量)W2が設定され、コンテナCの重心G2は、コンテナCの中心に有るとしている。重心高さ演算部74は、
図6に示すように、スプレッダ装置38の巻上高さJからf/2を減算してコンテナCの重心G2の高さ位置h2を求め、高さ位置h2と高さ位置h1の差Δhを、コンテナCの重量W2とコンテナキャリア11の重量W1の比により配分して、高さ位置h1へ加算することにより、コンテナCを吊り下げた状態でのコンテナキャリア11の重心Gの高さ位置Hを求めている。いま、W1:W2=5:1とすると、高さ位置h1へ加算するΔhは、1/6となる。
【0035】
また旋回角度検出器30Bの旋回角度信号による車輪31〜34の旋回角度、および予め設定されたコンテナキャリア11の第1車輪31と第4車輪34との間の距離により、コンテナキャリア11の旋回半径Rを求める旋回半径演算部75を設けている。
【0036】
またコンテナキャリア11の転倒速度Wは、コンテナキャリア11のトレッド幅L(固定値)、重心高さ位置H、旋回半径Rにより求められることから、予め、重心高さ位置Hと旋回半径Rにより転倒速度{コンテナキャリア(車体)を安定して旋回可能な前記走行装置による制限速度}Wを演算して記憶部76に記憶している。
図6に示すように、旋回走行中に、コンテナキャリア11の重心Gは、旋回中心方向に移動し、その重心G’は、車輪31〜34の中心位置から距離eへ移動する。この距離eは、トレッド幅L(固定値)と、走行速度V、重心高さ位置Hおよび旋回半径Rにより次の式(1)により求められる。gは重力加速度である。
e=L/2−V
2×H/(R×g) ・・・(1)
距離eがゼロとなると、コンテナキャリア11は転倒する。距離eがゼロとなるときの走行速度Vを転倒速度Wとして求めている。したがって、転倒速度Wは、トレッド幅L(固定値)、重心高さ位置H、旋回半径Rにより次の式(2)により求められる。
W=√(L×R×g/2/H) ・・・(2)
そこで、
図7に示すように、最小旋回半径R
min(例えば、5.3m)とコンテナ搬送時の最高制限速度W
max(例えば、25km/h)を設定し、最小旋回半径R
min以上で、最高制限速度W
max以下の範囲内で、重心高さ位置Hを、コンテナCを4段目として積む際に搬送するときの重心高さ位置H
4(
図6のHに相当)、コンテナCを3段目として積む際に搬送するときの重心高さ位置H
3、コンテナCを2段目として積む際に搬送するときの重心高さ位置H
2、コンテナCを1段目として置く際に搬送するときの重心高さ位置H
1毎に、旋回半径Rで転倒速度Wを演算したカーブを作成し記憶している。
【0037】
また重心高さ演算部74により求められたコンテナキャリア11の重心高さ位置H、および旋回半径演算部75により求められたコンテナキャリア11の旋回半径Rを入力し、これら旋回半径Rと重心高さ位置Hから記憶部76に記憶されたカーブを参照して転倒速度Wを求める転倒速度演算部77を設けている。このとき、入力した重心高さ位置Hが、各重心高さ位置H
1,H
2,H
3,H
4の中間にあるときは、旋回半径Rにおいて、入力した重心高さ位置Hの上方のカーブにより求められる転倒速度Wと下方のカーブにより求められる転倒速度Wとの差を、上方のカーブの重心高さ位置Hと下方のカーブの重心高さ位置Hとにおける入力した重心高さ位置Hの位置により配分し、下方のカーブにより求められる転倒速度Wに加算して求めている。
【0038】
また運転室24の操作装置29より入力した走行速度指令を、転倒速度演算部77により求めた転倒速度Wにより制限して走行用インバータ56へ出力し、且つ制限したときに(走行速度指令が転倒速度W以上となったときに)、走行速度制限中の信号をモニター装置28のランプ28Aへ出力する速度制限出力部78を設けている。
【0039】
また走行速度演算部72により求められたコンテナキャリア11の走行速度(車速)V、および旋回半径演算部75により求められたコンテナキャリア11の旋回半径Rを入力し、走行速度(車速)Vを転倒速度{コンテナキャリア(車体)を安定して旋回可能な前記走行装置による制限速度}Wと見なして、この転倒速度Wと旋回半径Rから記憶部75に記憶されたカーブを参照して、現在の走行速度(車速)Vと旋回半径Rで許容される重心高さ位置Hを求め、この重心高さ位置Hにf/2を加算してスプレッダ装置38の巻上高さJを求めてモニター装置28のディジタル表示器28Bへ出力するスプレッダ許容高さ演算部79を設けている。このとき、旋回半径Rにおいて、現在の走行速度(車速)Vの上方のカーブにより求められる重心高さ位置Hと下方のカーブにより求められる重心高さ位置Hとの差を、上方のカーブの転倒速度Wと下方のカーブの転倒速度Wとにおける現在の走行速度(車速)Vの位置により配分し、下方のカーブにより求められる重心高さ位置Hに加算して求めている。
【0040】
「走行動作」
上記構成によるコンテナキャリア11の走行動作を説明する。
コンテナキャリア11のオペレータが操作装置29を操作することにより、例えばアクセルペダルを踏み込むことにより、走行速度指令がコントローラ61へ入力されると、コントローラ61により走行速度指令は転倒速度W未満に制限されて左右の走行用インバータ56へ出力され、左右の走行用インバータ56により速度指令に応じてそれぞれ走行用モータ35が回転駆動され、第3車輪(駆動輪)33が回転駆動され、コンテナキャリア11が走行される。
【0041】
またオペレータが運転室24に設けたハンドルを回転することにより、その回転角度に応じてステアリングシリンダ36のロッド36Aが出し入れされ、ロッド36Aに連結されたリンク機構30により各車輪31,32,33,34の車軸31A,32A,33A,34Aの向きが変えられコンテナキャリア11が換向(左行・右行)される。
【0042】
前記車輪31,32,33,34の旋回角度(直進方向を0゜とした角度)は旋回角度検出器30Bにより検出されてコントローラ61へ入力され、コントローラ61によりコンテナキャリア11の旋回半径Rが求められ、また荷役用モータ46に設けたパルスジェネレータ64のパルス信号がコントローラ61へ入力され、連続して、コントローラ61により、コンテナCの巻上げ・巻下げが実行されているコンテナキャリア11の重心高さ位置Hが求められ、これら旋回半径Rと重心高さ位置Hにより、上記転倒速度Wが求められ、走行速度指令が転倒速度Wにより制限され、速度超過により、車両構造上、重心が非常に高いコンテナキャリア11が転倒する恐れが回避される。またコントローラ61により、走行速度指令が転倒速度Wにより制限されているとき、モニター装置28のランプ28Aが点灯され、オペレータへ速度が制限されていることが報知される。
【0043】
また各走行用モータ35に設けたパルスジェネレータ63のパルス信号がコントローラ61へ入力され、コントローラ61によりコンテナキャリア11の走行速度Vが求められ、この走行速度Vと旋回半径Rにより、許容するコンテナキャリア11の重心高さ位置Hが求められ、この重心高さ位置Hよりスプレッダ装置38の巻上高さJが求められてモニター装置28のディジタル表示器28Bへ出力され、オペレータへスプレッダ装置38の昇降の際に、現状の走行速度と旋回角度においてコンテナキャリア11が転倒しないスプレッダ装置38の上限高さ位置が示される。
【0044】
以上のように、本実施例によれば、現在、巻上げ・巻下げを行われているコンテナCの高さ位置により求められる重心高さ位置Hと、現在の車輪31,32,33,34の操向角度により求められる旋回中のコンテナキャリア(車体)11の旋回半径Rにより、常に連続して、コンテナキャリア11を安定して旋回可能な制限速度(転倒速度)Wが求められ、この制限速度Wにより走行速度指令が制限されることにより、加えて走行用インバータ56へ速度指令が出力されこの走行用インバータ56により電動モータ(走行用モータ)35が回転駆動されることにより、応答性良く走行速度を制限でき、よって、走行中にコンテナCの巻上げ・巻下げが実行される車両構造上重心が非常に高いコンテナキャリア(車体)11の旋回走行中の転倒を防止することができる。
【0045】
また本実施例によれば、走行速度指令が制限速度(転倒速度)Wにより制限されると、モニター装置28のランプ28Aが点灯されてオペレータへ報知されることにより、オペレータは、アクセルペダル等の操作により走行速度を上げようとしても、実際に走行速度が上がらない理由、すなわち走行速度が制限されたことを認識でき、減速できる。
【0046】
また本実施例によれば、求めたコンテナキャリア11の旋回半径Rと、フィードバックされた走行速度Vにより、コンテナキャリア11を安定して旋回走行可能なスプレッダ装置38の巻上高さJ(コンテナCの高さ)が求められ、ディジタル表示器28Bに表示され、オペレータへ報知されることにより、オペレータは、旋回走行中、コンテナキャリア11を転倒させる恐れがなく、昇降可能なスプレッダ装置38の巻上高さJを認識できる。
【0047】
なお、本実施例では、速度制限出力部78によって走行速度指令を転倒速度Wにより制限したとき、モニター装置28のランプ28Aを点灯してオペレータヘ走行速度制限中を報知しているが、この速度制限出力部78は、“走行速度制限中”だけでなく、走行速度指令が制限速度W以上となったことを、オペレータへ報知している。このような、“走行速度指令が制限速度W以上であること”の報知に基づいて、オペレータは、運転室24の操作装置29より入力した走行速度指令を落すこと(減速すること)によって車両構造上重心が非常に高い車体フレーム12の旋回走行中の転倒を防止できる。このとき、ランプ28Aは、走行速度制限中のみでなく、走行速度指令が転倒速度W以上となったことを報知する報知手段として使用される。
また速度制限出力部78によって走行速度指令が制限速度W以上となったことを検出しているが、速度制限出力部78とは別に、走行速度指令と制限速度Wを比較する比較部(比較器)を設け、走行速度指令が制限速度Wを超えたことを検出して、ランプ28Aを点灯するようにしてもよい。このような、“走行速度指令が制限速度Wを超えていること”の報知に基づいて、オペレータは、運転室24の操作装置29より入力した走行速度指令を落すこと(減速すること)によって車両構造上重心が非常に高い車体フレーム12の旋回走行中の転倒を防止できる。このとき、ランプ28Aは、走行速度制限中のみでなく、走行速度指令が転倒速度Wを超えたことを報知する報知手段として使用される。
また、走行速度指令を転倒速度Wにより制限をすることなく、走行速度指令が制限速度W以上あるいは制限速度Wを超えたことを検出してランプ28Aを点灯するだけとすることも可能である。
【0048】
また本実施例では、荷役車両として、コンテナキャリア11を説明しているが、コンテナキャリアに限ることはなく、重心位置が高く、吊り荷を持ち上げて搬送できる車両であればよい。
【0049】
また本実施例では、走行速度を検出する検出器としてパルスジェネレータ63を備えているが、走行用インバータ56に走行速度をフィードバックする機能を持たせるようにしてもよい。
また本実施例では、速度制限中、走行速度指令が転倒速度W以上あるいは制限速度Wを超えたことを報知する報知手段としてモニター装置28にランプ28Aを備え、ランプ28Aを点灯することによりオペレータへ報知しているが、報知手段はランプ28Aに限ることはなく、チャイムやブザーを備え、これらチャイムやブザーを鳴らすことにより報知するようにしてもよい。また昇降可能なスプレッダ装置38の巻上高さJの表示手段として、ディジタル表示器28Bを備え、このディジタル表示器28Bへ表示しているが、表示手段として、メータ(アナログ表示)を備え、メータへ表示するようにしてもよく、また昇降可能なスプレッダ装置38の巻上高さJをコンテナCの段積みの段数で表示することも可能である。