(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1
(構成)
図1は本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器の構成を示す斜視図、
図2は本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器の構成を示す天板を外した状態の斜視図、
図3は本発明の実施の形態1に係る加熱調理器の正面側から見た概略断面図、
図4は本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器全体の基本構成を示すブロック図、
図5(a)は本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器の誘導加熱コイルの一実施例を示す平面図、
図5(b)は本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器の誘導加熱コイルの他の実施例を示す平面図である。
以下、
図1〜
図5により本発明の実施の形態1の加熱調理器の構成を説明する。
なお、それぞれの図において、同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する場合がある。
【0010】
図1に示すように、本発明の実施の形態1の誘導加熱調理器100は、本体1の天面に鍋等の調理容器である被調理物10を載置可能な非磁性体、例えば結晶化ガラスからなるトッププレート2と、その外周に図示しないシリコン系接着剤等で固着された金属、例えばステンレスで構成された枠体3を備えてなる天板4を備えている。それから、天板4に各種の操作入力を行う上面操作部5を備え、本体1の前面に各種の操作入力を行う前面操作部6と、加熱調理器の電源を入切する電源スイッチ7を備えている。
【0011】
8は魚等の被調理物をその内部に載置してグリル調理やオーブン調理をする調理庫で、
図3に示すように輻射式加熱手段15a、15bが内部に配設されている。
【0012】
調理庫8は前面が開口していて、調理庫8の前面開口には、前述した輻射式加熱手段15a、15bが配設された空間の開口を閉塞するための調理庫扉9が前方に引き出し自在に設けられている。
【0013】
調理庫扉9は、その引き出しに連動して被調理物を載置する載置皿(図示せず)と焼き網(図示せず)を引き出せるようになっており、調理庫扉9を最も押し込んだ状態で調理庫8の前面開口が閉塞され調理が行える。調理の操作入力は、上面操作部5または前面操作部6から行えるようになっている。
【0014】
トッププレート2の下方の本体1内には、
図2に示すように3つの加熱手段が配設されており、それぞれ誘導加熱コイルからなる誘導加熱手段で11は左誘導加熱手段、12は右誘導加熱手段、13は中央誘導加熱手段である。このように加熱手段を3つ設けられたものは3口タイプの誘導加熱調理器と呼ばれるものである。
【0015】
ここで、誘導加熱手段とは、電磁誘導の原理を利用した加熱手段のことを言い、誘導加熱コイルに高周波交流電流を印加すると回転した磁力線が発生し誘導加熱コイル内部には一様な磁界が発生する。磁界が誘導加熱コイルを貫通すると誘導加熱コイル内部では磁束変化を妨げる磁界が発生し、被加熱物に渦電流が流れ高周波交流電流、例えば20〜90kHzの交流電流を印加することで流れ続ける。それで被加熱物の電気抵抗と渦電流によってジュール熱が発生することにより被加熱物が発熱する加熱方式のことである。
【0016】
なお、前述の説明では誘導加熱手段を3口設けた例をあげたが、加熱手段が3口設けられた誘導加熱調理器では、その内の1口を誘導加熱手段ではない加熱手段、例えばラジエントヒーターのような電熱線からなる輻射式加熱手段で構成してもよく適宜選択可能である。また、加熱手段は3口に限らず2口でもよく、その場合の加熱手段の組合せも誘導加熱手段、輻射式加熱手段から適宜選択可能である。
【0017】
さらにトッププレート2の下方には、
図2に示すように表示手段17a、表示手段17b、表示手段17cが設けられており、表示手段17aはトッププレート2に設けられた表示窓2a、表示手段17bは表示窓2b、表示手段17cは表示窓2cによって表示内容がそれぞれ視認できるようになっている。
【0018】
なお、ここでいう表示手段とは、特に明示のない限り、液晶(LCD)や各種発光素子(半導体発光素子の一例としてはLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)、LD(Laser Diode)がある)、有機電界発光(Electro Luminescence:EL)素子などによる表示手段の何れかで構成される。
【0019】
さらに、前述の表示手段における表示とは、文字や記号、イラスト、色彩や発光(あるいは点灯)有無や発光輝度等の変化により、使用者に調理器の動作条件や調理に参考となる関連情報を視覚的に知らせる動作をいう。
【0020】
左誘導加熱手段11、右誘導加熱手段12、中央誘導加熱手段13の下方で遮蔽板14の下方空間には、調理庫8の他に電子部品から構成された後述する制御手段22を内包した制御基板16bと、図示しないスイッチング素子や整流回路、その他電子部品から構成された後述する内加熱コイル用インバーター回路23や外加熱コイル用インバーター回路24を内包したインバーター基板16aが配設されている。
【0021】
なお、基板の配置は一例を示すものであって、この配置に限定されるものではなく、制御基板及びインバーター基板は本体構成によって適宜配置は変更することができる。
【0022】
図4及び
図5(a)に示すように左誘導加熱手段11には、所定の空間を隔てて設けられ直列に接続され、単独で通電することが可能な誘導加熱コイルである、主加熱コイル11cと主加熱コイル11dからなる内加熱コイル11bと、内加熱コイル11bと所定の空間を隔てて設けられ内加熱コイル11bとは独立して単独で通電することが可能な誘導加熱コイルである、外加熱コイル11aが設けられている。
【0023】
また、主加熱コイル11cと主加熱コイル11dの間の空間には複数の温度検出手段が配設されている。20a、20bは温度測定対象に接触させて伝熱で温度を検出する例えばサーミスタ等の伝熱式温度センサーである。
【0024】
温度センサー20cは、鍋等の被加熱物10から放射されトッププレート2を透過した赤外線の量を、非接触で検知して温度を測定できるフォトダイオード等から構成されている赤外線センサーである。
【0025】
赤外線センサー20cは被加熱物10から放射された赤外線を集約させ、かつリアルタイムで(時間差が殆んどなく)受信してその赤外線量から温度を検知できることから、応答性の良い点では伝熱式温度センサー20a、20bよりも優れている。
【0026】
伝熱式温度センサー20a、20bは赤外線センサー20cと比較すると急激な温度変化をリアルタイムで捕捉する点では劣るが、トッププレート2や被加熱物10からの輻射熱を受け、被加熱物10の底部やその直下にあるトッププレート2の温度を確実に検出できる点で赤外線センサー20cよりも優れている。また、伝熱を検出できるので、被加熱物10を移動させて場合でもトッププレート2の温度を検出することが可能である。
【0027】
前述のように伝熱式温度センサー20a、20bと赤外線センサー20cにそれぞれ優れた点があるので、それらを組み合わせて使用することで温度の検出精度を向上させることができる。
【0028】
伝熱式温度センサー20a、20bや赤外線センサー20cは、単独で通電することが可能な誘導加熱コイルに近接して配置されることが望ましい。高温となる誘導加熱コイルに近接して配置されることで温度検出の応答性がよくなり、検出精度をより向上させることができる。
【0029】
また、
図5(a)に示すような内加熱コイル11bと外加熱コイル11aが独立して設けられている誘導加熱コイルの構成においては、少なくとも中心寄りの誘導加熱コイルである内加熱コイル11bは単独で通電できるようにしておくことが望ましい。
【0030】
内加熱コイル11bが単独で通電可能であれば、小径の被加熱物を加熱しようとするときに、小径の被加熱物の最大径よりも外加熱コイル11aが大きければ、外加熱コイル11aに通電せず、内加熱コイル11bだけを通電することで無駄な電力消費を抑えることができる。
【0031】
なお、ここでは左誘導加熱手段11で説明したが、右誘導加熱手段12も図示していないが同様に所定の空間を隔てて設けられ直列に接続された主加熱コイル12cと主加熱コイル12dからなる内加熱コイル12bと、内加熱コイル12bと所定の空間を隔てて設けられ内加熱コイル12bとは独立して通電することが可能な外加熱コイル12aが設けられていて、20a、20bの伝熱式温度センサー、20cの赤外線センサーがそれぞれ設けられている。
【0032】
また、本発明の実施の形態1では温度検出手段を伝熱式温度センサー2つと赤外線センサー1つの計3つとしたが、これに限定されるものではなく、伝熱式温度センサー1つと赤外線センサー2つの組合せや、伝熱式温度センサーと赤外線センサーをさらに増やしたりしてもよく、これにより温度の検出精度をより向上させることができる。
【0033】
さらに、本発明の実施の形態1では主加熱コイル11cと主加熱コイル11dの間の空間に温度検出手段を配設するようにしたがこれに限定されるものではなく、主加熱コイル11cと外加熱コイル11aの間の空間に配設しても良く、その両方の空間に配設しても良い。
【0034】
本発明の実施の形態1では
図5(a)に示すように左誘導加熱手段11が、所定の空間を隔てて設けられ直列に接続された主加熱コイル11cと主加熱コイル11dからなる内加熱コイル11bと、内加熱コイル11bと所定の空間を隔てて設けられ内加熱コイル11bとは独立して通電することが可能な外加熱コイル11aにより構成された例を示したが、
図5(b)に示すように所定の空間を隔てて設けられ直列に接続された主加熱コイル11cと主加熱コイル11dからなる内加熱コイル11bと、内加熱コイル11bと所定の空間を隔てて設けられ内加熱コイル11bとはそれぞれ独立して通電することが可能な外コイル1(30a)、外コイル2(30b)、外コイル3(30c)、外コイル4(30d)のように複数の外加熱コイルで構成してもよい。
【0035】
(動作)
次に
図6〜
図9により、本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器の調理制御の一例について説明する。なお、ここでは左誘導加熱手段11を動作させた場合を例としてあげて説明する。
図6は本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器の加熱制御の基本的な動作を示す制御プログラムのフローチャート、
図7は本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器の加熱制御の基本的な動作を示す制御プログラムのフローチャートの続き、
図8は本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器の加熱制御の制御条件の一例を示す説明図、
図9は本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器の判定の一例を示す温度グラフである。
【0036】
前述の上面操作部5(
図1、
図4参照)に設けられた図示しない操作キーからの操作入力が、図示しないコンピューターを内包する制御手段22に送られ制御プログラムが起動し、入力された情報が表示手段17aに表示されて
図6に示すように加熱が開始される(S1)。
【0037】
次に伝熱式温度センサー20a、20bにより調理開始時のトッププレート2の初期温度TH0を検出し制御手段22へ信号を送る(S2)。ここでは伝熱式温度センサー20a、20bがそれぞれ検出した温度の信号から制御手段22が温度の平均値を算出し、その平均値を初期温度TH0(以下TH0と記述することがある)としている。
【0038】
しかし、必ずしもTH0を平均値で設定しなければならないということではなく、複数設けられた伝熱式温度センサーの最も高い温度、あるいは最も低い温度を初期温度として用いるようにしてもよい。
【0039】
次にS2で検出したTH0と、あらかじめ用意された所定の係数aと係数bを、あらかじめ設定された計算式「係数a×初期温度TH0+係数b」に用いて計算し、火力設定を変更するか否かの判断をするための閾値Ta(以下Taと記述する)を設定する(S3)。
【0040】
Taは検出されたTH0によって設定されるので、
図9のグラフに示すようにTH0にそれぞれ対応したTaが設定されるので、Taの値は固定された1つの値とはならない。また、初期温度が低くければ低い温度に応じて、高ければ高い温度に応じてTaが設定されるので、他の調理をした後に直ぐ使う場合でも、その状態に好適な制御ができる。
【0041】
前述の計算式「係数a×初期温度TH0+係数b」は熱容量の異なる大小様々な鍋あるいは平たいフライパンや調理用のプレート(鉄板)のような被加熱物を使い、温度検出試験を繰り返し行い設定したものである。
【0042】
図9のグラフに示す(ア)は熱容量の小さい、例えば薄板鍋のような被加熱物、(イ)は熱容量の大きい、例えば厚手のフライパンのような被加熱物、(ウ)は熱容量の大きい、例えば厚手の中華鍋のような被加熱物の測定値の一例を表している。熱容量の大きい被加熱物であっても(イ)と(ウ)のようにフライパンと中華鍋では測定結果は異なる。これら実際の測定結果から、計算式「係数a×初期温度TH0+係数b」が設定されている。
【0043】
ここで熱容量について解説すると、熱容量とは物体の温度を単位温度だけ上昇させるのに必要な熱量のことをいう。すなわち、熱容量が大きいほどその物体の温度を上昇させるために熱がより多く必要となる。
【0044】
そのため、同じ火力で温度を上昇させる場合には熱容量の大きい厚手のフライパンのほうが、熱容量の小さい薄板鍋よりも時間がかかり、同じ時間で温度を上昇させようとする場合には熱容量の大きい厚手のフライパンのほうが、高火力で加熱する必要がある。
【0045】
つまり、熱容量の異なる厚手のフライパンと薄板鍋を同じ火力で加熱すると、フライパンに適した火力では薄板鍋は過加熱の状態となり、薄板鍋に適した火力ではフライパンは加熱不足の状態となってしまう。
【0046】
よって、閾値Taにより火力の設定を変更し、
図9のグラフに示すように閾値Taよりも測定温度が低い(イ)、(ウ)で表したフライパンや中華鍋のような熱容量の大きい被加熱物は通常(高め)の火力で加熱し、測定温度が高い(ア)で表した薄板鍋のような熱容量の小さい被加熱物は通常(高め)の火力よりも低めの火力で加熱することで被加熱物に適した加熱が行えるようになる。
【0047】
S3でTaが設定されると予熱工程が開始され、制御手段22から内加熱コイル用インバーター回路23、外加熱コイル用インバーター回路24へ駆動が指示され内コイル11b、外コイル11aがそれぞれ通電されて左誘導加熱手段11が通電された状態となる(S4)。
【0048】
予熱工程は複数の設定温度が選択できるようになっており、例えば
図8に示すように160℃、190℃、220℃の3段階の設定温度が選択可能で、それぞれ設定温度に適した時間、火力の設定、電力投入コイルの選択がされている。
【0049】
また、予熱工程を更に詳細に説明すると、
図8に示すように工程中に遷移する(1)から(3)の予熱モードを備えており、工程開始時(1)からスタートし、所定時間経過すると(2)、(3)と進行し、設定温度が160℃のときは(2)で、190℃及び220℃のときは(3)で、後述するS9の予熱工程の完了を迎えるようになっている。
【0050】
左誘導加熱手段11への通電開始と同時に制御手段22から計時手段21へ計測指示が行われ、左誘導加熱手段11の通電開始からの経過時間が計測される(S5)。
【0051】
次に、あらかじめ設定された予熱工程制限温度Tb(以下Tbと記述する)と赤外線センサー20cが検出した温度TIR(以下TIRと記述する)を比較する(S6)。
【0052】
なお、本発明の実施の形態1では赤外線センサー20cが検出した温度の数値をそのまま使用しTIRとしたが、赤外線センサー20cが検出した温度の数値を所定の係数で補正したものをTIRとして使用するようにしてもよい。
【0053】
S6でTIRがTb以上であった場合、S9へ進み予熱工程を完了する。S6でTIRがTbより低かった場合はS7へ進む。S7でTIRがTa以上であった場合はS8へ進み、TIRがTaより低かった場合はS6へ戻るようになっている。
【0054】
S8では、S5で計測を開始した左誘導加熱手段11の通電開始からの経過時間とあらかじめ設定された判定時間TimeA(以下TimeAと記述する)を比較する。
【0055】
TimeAは被加熱物判定のために設定されたもので、経過時間とTimeAを比較することで、被加熱物10が熱容量の大きいものであるか、熱容量の小さいものであるかを判定している。TIRがTb未満でTa以上になるまでの経過時間がTimeA以下であれば熱容量の小さいもの、TimeAよりかかるようであれば熱容量の大きいものと判定している。
【0056】
前述のように、S8で経過時間がTimeA以下であれば、熱容量の小さいものと判定して予熱工程を完了(S9)させ、保温工程に入り加熱をONさせる(S10)。S10の加熱で入れられる火力は、熱容量が小さい被加熱物に対応した火力で、後述するS23で入れられる通常の保温火力よりも小さい火力で加熱するようになっている。
【0057】
保温工程でも、160℃、190℃、220℃の3段階の設定温度が選択可能で、それぞれ設定温度に適した時間、火力の設定、電力投入コイルの選択がされている。S10の保温工程では、
図8に示すように熱容量が小さい被加熱物に対応した火力で加熱する(6)で動作するようになっている。後述するS23の保温工程では、(6)の火力よりも大きい通常の被加熱物に対応した火力で加熱する(5)で動作するようになっている。
【0058】
前述した
図9に示す(ア)、(イ)、(ウ)は、
図8に示す予熱工程のモード(1)(時間:20秒、火力:1000W、電力投入コイル:内コイル)区間で、無負荷の被加熱物を加熱したときに、X軸をスタート時の伝熱式温度センサー20a、20bの温度、Y軸を終了時の赤外線センサー20cの温度または、被加熱物底温度が約300℃以上の高温となるときの赤外線センサー20cの温度との関係をグラフ化したものである。
【0059】
被加熱物の種類により、赤外線センサー20cの温度は異なる。熱容量の大きい被加熱物(例えば、板の厚いフライパンなど)は、赤外線センサー20cの温度が上がり難く、熱容量の小さい被加熱物(例えば、板の薄いなべ)は、赤外線センサー20cの温度が上がりやすい。
【0060】
次にS11で、TIRとあらかじめ設定された保温工程制限温度Tc(以下Tcと記述する)を比較する。TIRがTc以上であった場合はS14へ進み、加熱をOFFする。
【0061】
S11でTIRがTcより低かった場合はS12へ進み、保温工程の動作時間があらかじめ設定されている所定の保温工程時間を経過していたらS13へ進み保温工程を完了する。所定の保温工程時間を経過していない場合はS11へ戻り、S11からの動作を再度実行する。
【0062】
S11でTIRがTc以上でS14へ進み、加熱をOFFした後、保温工程の動作時間があらかじめ設定されている所定の保温工程時間を経過しているかどうか判断する(S15)。所定の保温工程時間を経過していたらS13へ進み、図示しない報知手段に保温工程完了を報知し保温工程を完了する。
【0063】
なお、報知とは表示又は電気的音声(電気的に作成又は合成された音声をいう)により、関連情報を使用者に認識させる目的で知らせる動作をいい、報知手段とは特に明示のない限り、ブザーやスピーカー等の可聴音による報知手段と、文字や記号、図形、アニメーションあるいは可視光による報知手段とを含んでいる。
【0064】
S15で所定の保温工程時間を経過していない場合は、加熱のための火力を入れるかどうかの判断を開始する(S16)。S17でTIRがTcより低かった場合は、S14で加熱OFFする前と同じ熱容量が小さい被加熱物に対応した火力で加熱をONし(S18)、S11へ戻り、S11からの動作を再度実行する。
【0065】
S17でTIRがTcより低くない場合はS14へ戻り、加熱OFFを継続しS15以降の動作を再度実行する。
【0066】
S8で経過時間がTimeA以下でない場合、被加熱物10が熱容量の大きいものと判定して予熱を継続する(S19)。
【0067】
次に、TbとTIRを比較する(S20)。S20でTIRがTb以上であった場合、S21をスキップしてS22へ進み予熱工程を完了する(S22)。
【0068】
S20でTIRがTbより低かった場合はS21へ進み、予熱工程の動作時間があらかじめ設定されている所定の予熱工程時間を経過しているかどうか判断する。所定の予熱工程時間を経過していない場合はS19へ戻り、予熱工程を継続する。
【0069】
S21で所定の予熱工程時間を経過していたらS22へ進み予熱工程が完了する。予熱工程が完了すると保温工程が開始される(S23)。この保温工程ではS10の保温工程の火力よりも高い、通常の被加熱物に対応した火力で加熱される。
【0070】
次に、TIRとTcを比較する(S24)。TIRがTc以上であった場合はS27へ進み、加熱をOFFする。
【0071】
S24でTIRがTcより低かった場合はS25へ進み、保温工程の動作時間があらかじめ設定されている所定の保温工程時間を経過していたらS26へ進み保温工程を完了する。所定の保温工程時間を経過していない場合はS24へ戻り、S24からの動作を再度実行する。
【0072】
S24でTIRがTc以上でS27へ進み、加熱をOFFした後、保温工程の動作時間があらかじめ設定されている所定の保温工程時間を経過しているかどうか判断する(S28)。所定の保温工程時間を経過していたらS26へ進み、図示しない報知手段により音や音声で保温工程完了を報知し保温工程を完了する。
【0073】
S28で所定の保温工程時間を経過していない場合は、加熱のための火力を入れるかどうかの判断を開始する(S29)。S30でTIRがTcより低かった場合は、S27で加熱OFFする前と同じ通常の被加熱物に対応した火力で加熱をONし(S31)、S24へ戻り、S24からの動作を再度実行する。
【0074】
S30でTIRがTcより低くない場合はS27へ戻り、加熱OFFを継続しS28以降の動作を再度実行する。
【0075】
なお、本発明の実施の形態1では熱容量の小さいものと判定して予熱工程を完了させ、保温工程に入り加熱をONさせるようにしたが、熱容量が小さく予熱モードに適していない被加熱物と判定し、加熱を停止または設定火力を下げてユーザーに分かるようにブザーや音声で報知するようにしても安全性が向上を図ることができる。
【0076】
以上のように、本発明の実施の形態1の誘導加熱調理器では伝熱式温度センサーが検出したトッププレートの初期温度から、その初期温度に応じて火力設定の変更可否を判断するための閾値を設定するようにしたので、初期温度が低くければ低い温度に応じて、高ければ高い温度に応じて閾値が設定され、他の調理をした後に直ぐ使う場合でもその状態に好適な制御が可能で、被加熱物が危険温度に達することがなく安全性が向上する。
【0077】
また、赤外線センサーが検出した被加熱物の温度が、設定した閾値に到達するまでの経過時間により、所定の時間内に閾値に到達しなければ火力の高い予熱工程を継続し、所定の時間内に閾値に到達したら予熱工程を完了するようにしたので、被加熱物が過剰に高い火力で加熱されることがなく安全性が向上する。
【0078】
さらに、赤外線センサーが検出した被加熱物の温度が、設定した閾値に到達するまでの経過時間により、所定の時間内に閾値に到達しなければ火力の高い予熱工程を継続し、所定の時間内に閾値に到達したら予熱工程を完了し、予熱工程よりも火力の低い保温工程に移行するようにしたので、被加熱物が過剰に高い火力で加熱されることがなく安全性が向上する。
【0079】
実施の形態2
(動作)
図10は本発明の実施の形態2に係る誘導加熱調理器の加熱制御の基本的な動作を示す制御プログラムのフローチャート、
図11は本発明の実施の形態2に係る誘導加熱調理器の加熱制御の基本的な動作を示す制御プログラムのフローチャートの続き、
図12は本発明の実施の形態2に係る誘導加熱調理器の判定の一例を示す温度グラフである。
図10〜
図12により、本発明の実施の形態2に係る誘導加熱調理器の加熱制御の一例について説明する。なお、ここでは本発明の実施の形態1と同様、左誘導加熱手段11を動作させた場合を例としてあげて説明する。
なお、本発明の実施の形態2に係る誘導加熱調理器の構成は、本発明の実施の形態1に係る誘導加熱調理器の構成と同一であるので、構成についての説明は省略する。
【0080】
前述の上面操作部5(
図1、
図4参照)に設けられた図示しない操作キーからの操作入力が、図示しないコンピューターを内包する制御手段22に送られ制御プログラムが起動し、入力された情報が表示手段17aに表示されて
図10に示すように加熱が開始される(S41)。
【0081】
次に伝熱式温度センサー20a、20bにより調理開始時のトッププレート2の初期温度TH0を検出し制御手段22へ信号を送る(S42)。ここでは実施の形態1と同様に伝熱式温度センサー20a、20bがそれぞれ検出した温度の信号から制御手段22が温度の平均値を算出し、その平均値を初期温度TH0(以下TH0と記述することがある)としている。
【0082】
しかし、本発明の実施の形態1と同様に必ずしもTH0を平均値で設定しなければならないということではなく、複数設けられた伝熱式温度センサーの最も高い温度、あるいは最も低い温度を初期温度として用いるようにしてもよい。
【0083】
次にS42で検出したTH0と、あらかじめ用意された所定の係数aと係数bを、あらかじめ設定された計算式「係数a×初期温度TH0+係数b」に用いて計算し、火力設定を変更するか否かの判断をするための閾値Ta(以下Taと記述する)を設定する(S43)。
【0084】
Taは本発明の実施の形態1と同様に検出されたTH0によって設定されるので、
図12のグラフに示すようにTH0にそれぞれ対応したTaが設定されるので、Taの値は固定された1つの値とはならない。また、初期温度が低くければ低い温度に応じて、高ければ高い温度に応じてTaが設定されるので、他の調理をした後に直ぐ使う場合でも、その状態に好適な制御ができる。
【0085】
前述の計算式「係数a×初期温度TH0+係数b」は熱容量の異なる大小様々な鍋あるいは平たいフライパンや調理用のプレート(鉄板)のような被加熱物を使い、温度検出試験を繰り返し行い設定したものである。
図12のグラフに示す(ア)は熱容量の小さい、例えば薄板鍋のような被加熱物、(イ)は熱容量の大きい、例えば厚手のフライパンのような被加熱物、(ウ)熱容量の大きい、例えば厚手の中華鍋のような被加熱物の測定値の一例を表している。熱容量の大きい被加熱物であっても(イ)と(ウ)のようにフライパンと中華鍋では測定結果は異なる。これら実際の測定結果から、計算式「係数a×初期温度TH0+係数b」が設定されている。
なお、熱容量についての解説は実施の形態1と同様の説明となるのでここでは省略する。
【0086】
S43でTaが設定されると予熱工程が開始され、制御手段22から内加熱コイル用インバーター回路23、外加熱コイル用インバーター回路24へ駆動が指示され内コイル11b、外コイル11aがそれぞれ通電されて左誘導加熱手段11が通電された状態となる(S44)。
【0087】
予熱工程は本発明の実施の形態1と同様に複数の設定温度が選択できるようになっており、例えば
図8に示すように160℃、190℃、220℃の3段階の設定温度が選択可能で、それぞれ設定温度に適した時間、火力の設定、電力投入コイルの選択がされている。
【0088】
また、予熱工程を更に詳細に説明すると、
図8に示すように工程中に遷移する(1)から(3)の予熱モードを備えており、工程開始時(1)からスタートし、所定時間経過すると(2)、(3)と進行し、設定温度が160℃のときは(2)で、190℃及び220℃のときは(3)で、後述するS49の予熱工程の完了を迎えるようになっている。
【0089】
左誘導加熱手段11への通電開始と同時に制御手段22から計時手段21へ計測指示が行われ、左誘導加熱手段11の通電開始からの経過時間が計測される(S45)。
【0090】
次に、あらかじめ設定された予熱工程制限温度Tb(以下Tbと記述する)と赤外線センサー20cが検出した温度TIRを比較する(S46)。
【0091】
S46でTIRがTb以上であった場合、S49へ進み予熱工程を完了する。S46でTIRがTbより低かった場合はS47へ進む。S47でTaと赤外線センサー20cが検出した温度TIRの所定時間における上昇値ΔTIR(以下ΔTIRと記述する)を比較し、ΔTIRがTa以上であった場合はS48へ進み、ΔTIRがTaより低かった場合はS46へ戻るようになっている。
【0092】
なお、本発明の実施の形態2では赤外線センサー20cが検出した温度TIRの所定時間における上昇値をΔTIRとしたが、赤外線センサー20cが検出した温度の数値を所定の係数で補正したものをTIRとし、その補正したTIRが所定時間において上昇した値をΔTIRとして使用するようにしてもよい。
【0093】
S48では、S45で計測を開始した左誘導加熱手段11の通電開始からの経過時間とあらかじめ設定された判定時間TimeA(以下TimeAと記述する)を比較する。
【0094】
前述のように、S48で経過時間がTimeA以下であれば、熱容量の小さいものと判定して予熱工程を完了(S49)させ、保温工程に入り加熱をONさせる(S50)。S50の加熱で入れられる火力は、熱容量が小さい被加熱物に対応した火力で、後述するS63で入れられる通常の保温火力よりも小さい火力で加熱するようになっている。
【0095】
保温工程でも、160℃、190℃、220℃の3段階の設定温度が選択可能で、それぞれ設定温度に適した時間、火力の設定、電力投入コイルの選択がされている。S50の保温工程では、
図8に示すように熱容量が小さい被加熱物に対応した火力で加熱する(6)で動作するようになっている。後述するS63の保温工程では、(6)の火力よりも大きい通常の被加熱物に対応した火力で加熱する(5)で動作するようになっている。
【0096】
前述した
図12に示す(ア)、(イ)、(ウ)は、
図8に示す予熱工程のモード(1)(時間:20秒、火力:1000W、電力投入コイル:内コイル)区間で、無負荷の被加熱物を加熱したときに、X軸をスタート時の伝熱式温度センサー20a、20bの温度、Y軸を終了時の赤外線センサー20cの温度または、被加熱物底温度が約300℃以上の高温となるときの赤外線センサー20cの温度との関係をグラフ化したものである。
【0097】
被加熱物の種類により、赤外線センサー20cの温度上昇値は異なる。熱容量の大きい被加熱物(例えば、板の厚いフライパンなど)は、赤外線センサー20cの温度上昇値が高くなり難く、熱容量の小さい被加熱物(例えば、板の薄いなべ)は、赤外線センサー20cの温度上昇値が高くなりやすい。
【0098】
次にS51で、TIRとあらかじめ設定された保温工程制限温度Tc(以下Tcと記述する)を比較する。TIRがTc以上であった場合はS54へ進み、加熱をOFFする。
【0099】
S51でTIRがTcより低かった場合はS52へ進み、保温工程の動作時間があらかじめ設定されている所定の保温工程時間を経過していたらS53へ進み保温工程を完了する。所定の保温工程時間を経過していない場合はS51へ戻り、S51からの動作を再度実行する。
【0100】
S51でTIRがTc以上でS54へ進み、加熱をOFFした後、保温工程の動作時間があらかじめ設定されている所定の保温工程時間を経過しているかどうか判断する(S55)。所定の保温工程時間を経過していたらS53へ進み、図示しない報知手段に保温工程完了を報知し保温工程を完了する。
【0101】
S55で所定の保温工程時間を経過していない場合は、加熱のための火力を入れるかどうかの判断を開始する(S56)。S57でTIRがTcより低かった場合は、S54で加熱OFFする前と同じ熱容量が小さい被加熱物に対応した火力で加熱をONし(S58)、S51へ戻り、S51からの動作を再度実行する。
【0102】
S57でTIRがTcより低くない場合はS54へ戻り、加熱OFFを継続しS55以降の動作を再度実行する。
【0103】
S48で経過時間がTimeA以下でない場合、被加熱物10が熱容量の大きいものと判定して予熱を継続する(S59)。
【0104】
次に、TbとTIRを比較する(S60)。S60でTIRがTb以上であった場合、S61をスキップしてS62へ進み予熱工程を完了する(S62)。
【0105】
S60でTIRがTbより低かった場合はS61へ進み、予熱工程の動作時間があらかじめ設定されている所定の予熱工程時間を経過しているかどうか判断する。所定の予熱工程時間を経過していない場合はS59へ戻り、予熱工程を継続する。
【0106】
S61で所定の予熱工程時間を経過していたらS62へ進み予熱工程が完了する。予熱工程が完了すると保温工程が開始される(S63)。この保温工程ではS50の保温工程の火力よりも高い、通常の被加熱物に対応した火力で加熱される。
【0107】
次に、TIRとTcを比較する(S64)。TIRがTc以上であった場合はS67へ進み、加熱をOFFする。
【0108】
S64でTIRがTcより低かった場合はS65へ進み、保温工程の動作時間があらかじめ設定されている所定の保温工程時間を経過していたらS66へ進み保温工程を完了する。所定の保温工程時間を経過していない場合はS64へ戻り、S64からの動作を再度実行する。
【0109】
S64でTIRがTc以上でS67へ進み、加熱をOFFした後、保温工程の動作時間があらかじめ設定されている所定の保温工程時間を経過しているかどうか判断する(S68)。所定の保温工程時間を経過していたらS66へ進み、図示しない報知手段により音や音声で保温工程完了を報知し保温工程を完了する。
【0110】
S68で所定の保温工程時間を経過していない場合は、加熱のための火力を入れるかどうかの判断を開始する(S69)。S70でTIRがTcより低かった場合は、S67で加熱OFFする前と同じ通常の被加熱物に対応した火力で加熱をONし(S71)、S64へ戻り、S64からの動作を再度実行する。
【0111】
S70でTIRがTcより低くない場合はS67へ戻り、加熱OFFを継続しS68以降の動作を再度実行する。
【0112】
なお、本発明の実施の形態2では熱容量の小さいものと判定して予熱工程を完了させ、保温工程に入り加熱をONさせるようにしたが、熱容量が小さく予熱モードに適していない被加熱物と判定し、加熱を停止または設定火力を下げてユーザーに分かるようにブザーや音声で報知するようにしても安全性が向上を図ることができる。
【0113】
以上のように、本発明の実施の形態2の誘導加熱調理器では伝熱式温度センサーが検出したトッププレートの初期温度から、その初期温度に応じて火力設定の変更可否を判断するための閾値を設定するようにして、赤外線センサーが検出した被加熱物の所定時間における温度上昇値が、設定した閾値に到達するまでの経過時間により、所定の時間内に閾値に到達しなければ火力の高い予熱工程を継続し、所定の時間内に閾値に到達したら予熱工程を完了するようにしたので、被加熱物が過剰に高い火力で加熱されることがなく安全性が向上する。
【0114】
また、赤外線センサーが検出した被加熱物の所定時間における温度上昇値が、設定した閾値に到達するまでの経過時間により、所定の時間内に閾値に到達しなければ火力の高い予熱工程を継続し、所定の時間内に閾値に到達したら予熱工程を完了し、予熱工程よりも火力の低い保温工程に移行するようにしたので、被加熱物が過剰に高い火力で加熱されることがなく安全性が向上する。