特許第6000053号(P6000053)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000053
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/02 20060101AFI20160915BHJP
【FI】
   F24F11/02 102F
   F24F11/02 102A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-227664(P2012-227664)
(22)【出願日】2012年10月15日
(65)【公開番号】特開2014-81097(P2014-81097A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】515294031
【氏名又は名称】ジョンソンコントロールズ ヒタチ エア コンディショニング テクノロジー(ホンコン)リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】横関 敦彦
(72)【発明者】
【氏名】中山 進
(72)【発明者】
【氏名】坪江 宏明
【審査官】 河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−294551(JP,A)
【文献】 特開2002−327950(JP,A)
【文献】 特開2006−046692(JP,A)
【文献】 特開2008−116124(JP,A)
【文献】 特開平09−178284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外熱交換器を備えた室外機と、室内熱交換器及び室内膨張機構を備えた複数台の室内機とを、液配管及びガス配管を用いて接続して冷凍サイクルを構成している多室型の空気調和機において、
前記冷凍サイクルを循環する冷媒として、R32又はR32を70質量%以上含む混合冷媒を使用すると共に、
前記各室内機の各室内熱交換器における吸込側空気と吹出側空気の空気温度差を検知する温度差検知装置を備え、
前記温度差検知装置で検知された各室内機での空気温度差に基づいて前記各室内機の室内膨張機構を調整することで前記各室内機における冷房能力を制御し、前記室内熱交換器の出口の冷媒が液冷媒を含むように制御する
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和機において、前記各室内機における空気温度差を検知する前記温度差検知装置は、前記室内熱交換器の吸込側空気の温度を検知する吸込み空気温度センサと、前記室内熱交換器の吹出側空気の温度を検知する吹出し空気温度センサとを備え、これらの温度センサで検知された温度に基づいて、前記室内熱交換器の吸込側空気と吹出側空気の空気温度差を検知するものであることを特徴とする空気調和機。
【請求項3】
室外熱交換器を備えた室外機と、室内熱交換器及び室内膨張機構を備えた複数台の室内機とを、液配管及びガス配管を用いて接続して冷凍サイクルを構成している多室型の空気調和機において、
前記冷凍サイクルを循環する冷媒として、R32又はR32を70質量%以上含む混合冷媒を使用すると共に、
前記各室内機の各室内熱交換器における吸込側空気と吹出側空気の空気温度差を検知する温度差検知装置を備え、
前記温度差検知装置で検知された各室内機での空気温度差に基づいて前記各室内機の室内膨張機構を調整することで前記各室内機における冷房能力を制御し、
前記室外機には圧縮機が設けられ、且つ前記圧縮機から吐出される冷媒の吐出温度を検出する吐出温度検知装置と、
前記各室内熱交換器における冷媒過熱度を検出する過熱度検知装置とを備え、
前記各室内機における冷房能力は、前記吐出温度検知装置により検知された前記吐出温度に応じて、前記各室内機の前記温度差検知装置で検知された空気温度差または前記過熱度検知装置で検知された冷媒過熱度の何れかに基づいて前記室内膨張機構を調整することにより制御されるように構成されている
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項4】
請求項3に記載の空気調和機において、前記吐出温度検知装置により検知された前記吐出温度が予め定めた設定温度よりも低い場合には、前記冷房能力は、前記過熱度検知装置で検知された冷媒過熱度に基づいて前記室内膨張機構を調整することにより制御され、
前記吐出温度検知装置により検知された前記吐出温度が予め定めた設定温度よりも高い場合には、前記冷房能力は、前記温度差検知装置で検知された空気温度差に基づいて前記室内膨張機構を調整することにより制御されることを特徴とする空気調和機。
【請求項5】
請求項4に記載の空気調和機において、前記温度差検知装置で検知された空気温度差に基づいて前記室内膨張機構を調整することで前記冷房能力が制御されている場合、前記設定温度よりも予め定めた所定温度だけ低い温度になってから、前記冷房能力を、前記過熱度検知装置で検知された冷媒過熱度に基づいて前記室内膨張機構を調整する制御に切り替えることを特徴とする空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の室内機を備えている多室型の空気調和機に関し、特に、冷媒としてR32を使用している空気調和機に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
複数の室内機を備えている多室型の空気調和機としては、例えば特開平2−133760号公報(特許文献1)に記載されたものがある。この特許文献1のものでは、多室型空気調和機の冷房運転時に、複数の室内機のそれぞれの冷房能力を、各室内機における熱交換器出口の冷媒過熱度で制御することが記載されている。
【0003】
また、特許第3956589号公報(特許文献2)がある。この特許文献2のものには、冷媒としてHFC系冷媒で地球温暖化係数(GWP)が低い冷媒であるR32を使用することを前提とし、このR32の使用により、圧縮機の吐出温度が、従来から使用されている冷媒であるR410Aよりも10〜15℃高くなるので、吐出温度の上昇を抑制するため、圧縮機入口の冷媒かわき度を0.65以上かつ0.85以下にすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−133760号公報
【特許文献2】特許第3956589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に示すように、室内機を複数台備える従来の多室型空気調和機における冷房運転時には、各室内機における熱交換器出口の冷媒過熱度を制御して、各室内機に流れる冷媒流量を調整することにより各室内機の冷房能力を制御している。しかし、このような冷媒過熱度制御を行なう場合、室内機における熱交換器出口の冷媒が液冷媒を含むようにすることはできないため、R32のような冷媒を使用すると、圧縮機吐出温度が異常に上昇して信頼性が低下する課題がある。
【0006】
一方、上記特許文献2に示すものでは、冷媒R32を使用しているため、圧縮機出口の冷媒温度が従来から使用されている冷媒であるR410Aに比べて10〜15℃高くなる。このため、圧縮機入口側の冷媒かわき度を、R410Aを使用した場合よりも小さくなるように制御しているが、圧縮機入口側の冷媒かわき度を小さくするためには、室内機における熱交換器出口の冷媒は、冷媒過熱度を0にして液冷媒を含むようにしなければならない。
【0007】
しかし、室内機における熱交換器出口の冷媒が液冷媒を含むようにすると、上記特許文献1に記載されているような冷媒過熱度制御ができなくなる。特許文献2のもののように、室内機が1台のみの場合には、その冷房能力の制御は、蒸発温度制御、即ち圧縮機の吸入圧力を制御することで可能であるが、多室型空気調和機における各室内機の冷房能力を個別に制御することは困難になる。
【0008】
本発明の目的は、圧縮機吐出温度の上昇を抑制すると共に、複数台の各室内機の冷房能力を個別に制御することも可能な空気調和機を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、室外熱交換器を備えた室外機と、室内熱交換器及び室内膨張機構を備えた複数台の室内機とを、液配管及びガス配管を用いて接続して冷凍サイクルを構成している多室型の空気調和機において、前記冷凍サイクルを循環する冷媒として、R32又はR32を70質量%以上含む混合冷媒を使用すると共に、前記各室内機の各室内熱交換器における吸込側空気と吹出側空気の空気温度差を検知する温度差検知装置を備え、前記温度差検知装置で検知された各室内機での空気温度差に基づいて前記各室内機の室内膨張機構を調整することで前記各室内機における冷房能力を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、圧縮機吐出温度の上昇を抑制すると共に、複数台の各室内機の冷房能力を個別に制御することも可能な空気調和機を得ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の空気調和機の実施例1を示す冷凍サイクル構成図である。
図2】本発明の空気調和機の実施例2を示す冷凍サイクル構成図である。
図3】本発明の実施例2における冷房運転時の室内膨張弁制御の動作を説明する線図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の空気調和機の具体的実施例を、図面を用いて説明する。各図において、同一符号を付した部分は同一或いは相当する部分を示している。
【実施例1】
【0013】
図1により、本発明の空気調和機の実施例1を説明する。図1は本実施例1を示す冷凍サイクル構成図である。
【0014】
図1において、100は空気調和機を構成する室外機、200及び300はそれぞれ前記室外機100に液配管121及びガス配管122で接続されている室内機である。この図に示すように、本実施例の空気調和機は、1台の室外機100に複数台の室内機200,300が接続された多室型の空気調和機として冷凍サイクルが構成されている。そして、この冷凍サイクルを循環する冷媒として、本実施例ではR32又はR32を70質量%以上含む混合冷媒を使用している。
【0015】
前記室外機100は、室外熱交換器101、室外ファン102、室外膨張弁103、圧縮機104、アキュムレータ105、オイルセパレータ106、返油キャピラリー107、四方弁108などで構成されている。
【0016】
前記室内機200及び300は、それぞれ、室内熱交換器201,301、室内ファン202,302、電子膨張弁などで構成された開度調整可能な室内膨張弁(室内膨張機構)203,303、吸込み空気温度センサ206,306、吹出し空気温度センサ207,307などで構成されている。
【0017】
次に、動作を説明する。
冷房運転時は、冷媒は実線矢印で示すように流れる。即ち、圧縮機104から吐出された高温高圧のガス冷媒はオイルセパレータ106で冷凍機油が分離され、高温のガス冷媒は四方弁108を通って室外熱交換器101へ送られる。前記オイルセパレータ106で分離された冷凍機油は返油キャピラリー107を通ってアキュムレータ105へ送られる。前記室外熱交換器101へ入った高温高圧のガス冷媒は、この室外熱交換器101において、室外ファン102により送風された室外空気と熱交換することにより凝縮し、液冷媒になる。
【0018】
この液冷媒は、その後、室外膨張弁103(冷房運転時は全開)を通過し、前記液配管121を流れて前記室内機200及び300へと送られる。前記室内機200へ送られた冷媒は、室内膨張弁203で減圧されて室内熱交換器201へ入る。この室内熱交換器201において、冷媒は、室内ファン202によって送られた室内空気と熱交換して蒸発し、ガス冷媒になる。この時、室内機200からは冷風が室内に送風されて室内の冷房が行われる。前記室内機300へ送られた冷媒も前記室内機200と同様の変化をする。
【0019】
前記室内機200及び300を出たガス冷媒は、前記ガス配管122を介して前記室外機100へ送られる。この室外機100に戻ったガス冷媒は、前記四方弁108を通ってアキュムレータ105へ入る。このアキュムレータ105に入ったガス冷媒は、前記オイルセパレータ106から戻された冷凍機油と共に、該アキュムレータ105から前記圧縮機104へ吸入されて圧縮される。以下、同様の動作を繰り返す。
【0020】
暖房運転時は、冷媒は点線矢印で示すように流れる。即ち、前記圧縮機104から吐出された高温高圧のガス冷媒は前記オイルセパレータ106で冷凍機油が分離され、冷凍機油が分離された高温のガス冷媒は、前記四方弁108を通って前記ガス配管122へ送られる。前記オイルセパレータ106で分離された冷凍機油は前記返油キャピラリー107を通って前記アキュムレータ105へ送られる。
【0021】
前記ガス配管122へ入った高温高圧のガス冷媒は、前記室内機200及び300へ送られる。前記室内機200へ入った高温高圧のガス冷媒は、前記室内熱交換器201において前記室内ファン202により送風された室内空気と熱交換して凝縮し、液冷媒となる。室内熱交換器201で高温冷媒と室内空気とが熱交換することにより室内の暖房が行われる。前記室内熱交換器201で凝縮した液冷媒は、前記室内膨張弁203を通過後、室内機200から流出する。前記室内機300へ送られた冷媒も前記室内機200と同様の変化をする。
【0022】
前記室内機200及び300を出た液冷媒は、その後、前記液配管121を通って前記室外機100へ送られる。この室外機100に戻った液冷媒は、前記室外膨張弁103で減圧された後、前記室外熱交換器101に流入し、室外ファン102によって送風される室外空気と熱交換して蒸発し、ガス冷媒になる。このガス冷媒は、前記四方弁108を通って前記アキュムレータ105へ入る。このアキュムレータ105に入ったガス冷媒は、前記オイルセパレータ106から戻された冷凍機油と共に、該アキュムレータ105から前記圧縮機104へ吸入されて圧縮される。以下、同様の動作を繰り返す。
【0023】
前記各室内機200,300における吸込み空気(室内空気)の温度は、前記吸込み空気温度センサ206,306で検知される。また、室内熱交換器201,301で熱交換された吹出し空気の温度は、前記吹出し空気温度センサ207,307で検知される。そして、冷房運転時の各室内機200,300の吸込み空気温度と吹出し空気温度との差(以下、吸込み吹出し空気温度差という)は、前記吸込み空気温度センサ206,306と吹出し空気温度センサ207,307との差で求めることができる。この吸込み吹出し空気温度差は、温度差検知装置の演算部(図示せず)で求められ、この温度差検知装置の演算部は図示しない制御装置などに設けられている。即ち、前記温度差検知装置は、前記吸込み空気温度センサ206,306、吹出し空気温度センサ207,307及び前記演算部により構成されている。
【0024】
また、この温度差検知装置により求められた冷房運転時の各室内機200,300における前記吸込み吹出し空気温度差から、各室内機200,300での冷房能力を推定することができる。即ち、前記吸込み吹出し空気温度差に、前記室内ファン202,302の風量をそれぞれ掛けることで求めることができる。
【0025】
前記各室内機200,300の冷房能力制御は、前記吸込み吹出し空気温度差を検出し、この吸込み吹出し空気温度差が目標値になるように前記室内膨張弁203,303を制御することにより行うことができる。即ち、冷房能力を増加させる場合には、前記吸込み吹出し空気温度差の目標値を大きく設定し、この目標値に近づくように前記室内膨張弁203,303の開度を大きくする。逆に、冷房能力を減少させる場合には、前記吸込み吹出し空気温度差の目標値を小さく設定し、この目標値に近づくように前記室内膨張弁203,303の開度を小さくする。
【0026】
このように構成することにより、冷房能力の制御を、冷媒過熱度で制御するものではないから、室内機における熱交換器出口の冷媒が液冷媒を含むようにすることができ、従って圧縮機吐出温度の上昇を抑制することができる。また、冷房能力の制御を、蒸発温度制御(吸入圧力制御)するものでもないから、多室型空気調和機における複数台の各室内機の冷房能力を個別に制御することも可能な空気調和機を得ることができる。
【0027】
なお、上述した実施例では、前記室内膨張機構として開度調整が可能な電子膨張弁などで構成された室内膨張弁を使用した例について説明したが、前記室内膨張機構は電子膨張弁などで構成された前記室内膨張弁に限られるものではない。即ち、開閉弁とキャピラリチューブで構成された膨張機構を並列に複数個並べて構成し、前記開閉弁を選択的に開閉することで流量調整するような室内膨張機構であっても良い。
【実施例2】
【0028】
図2及び図3により、本発明の空気調和機の実施例2を説明する。図2は本実施例2を示す冷凍サイクル構成図、図3は本実施例2における冷房運転時の室内膨張弁制御の動作を説明する線図である。
図2において、上記図1と同一符号を付した部分は同一或いは相当する部分を示しているので、重複する部分の説明は省略する。
【0029】
室外機100については、図1で説明したものとほぼ同様の構成であるが、本実施例2では、圧縮機104から吐出される冷媒の吐出温度を検出する吐出温度検知装置111が、前記圧縮機104の出口付近(本実施例では、圧縮機104とオイルセパレータ106を接続している冷媒配管)に設けられている。
【0030】
室内機200及び300についても、図1で説明したものと基本的にはほぼ同様の構成であるが、本実施例2では、図1で説明した吸込み空気温度センサ206,306及び吹出し空気温度センサ207,307の他に、室内熱交換器201,301に流入する冷媒の温度(即ち室内膨張弁203,303出口側と室内熱交換器201,301入口側との間の冷媒温度)を検知する冷媒液側温度センサ204,304と、前記室内熱交換器201,301から流出する冷媒の温度を検知する冷媒ガス側温度センサ205,305を備えている。
【0031】
なお、前記吐出温度検知装置111や、前記冷媒液側温度センサ204,304及び前記冷媒ガス側温度センサ205,305は、それぞれ冷媒の温度を直接検知するものでも良いが、通常は冷媒配管などの温度を測定することで間接的に検知するものである。
【0032】
そして、冷房運転時の各室内機200,300における前記吸込み空気温度と吹出し空気温度との差(吸込み吹出し空気温度差)は、温度差検知装置の演算部(図示せず)により、前記吸込み空気温度センサ206,306で検知された吸込側空気温度と、前記吹出し空気温度センサ207,307で検知された吹出側空気温度との差として求めることができる。また、前記冷媒液側温度センサ204,304で検知された冷媒液側温度と、前記冷媒ガス側温度センサ205,305で検知された冷媒ガス側温度との差から、過熱度検知装置の演算部(図示せず)により、前記各室内機200,300における冷媒過熱度を求めることができる。前記温度差検知装置や過熱度検知装置の各演算部は図示しない制御装置などに設けられており、前記温度差検知装置の演算部と前記過熱度検知装置の演算部は1つの演算部で共用するようにしても良い。即ち、前記温度差検知装置は、実施例1と同様に、前記吸込み空気温度センサ206,306、吹出し空気温度センサ207,307及び前記演算部により構成され、前記過熱度検知装置は、冷媒液側温度センサ204,304、前記冷媒ガス側温度センサ205,305及び前記演算部により構成されている。
【0033】
前記室外機100と、前記室内機200及び300は、液配管121とガス配管122により接続されて、冷凍サイクルを構成し、この冷凍サイクルを循環する冷媒として、本実施例でも実施例1と同様に、R32又はR32を70質量%以上含む混合冷媒を使用している。このように本実施例2の空気調和機も、1台の室外機100に複数台の室内機200,300が接続された多室型の空気調和機として構成されている。
なお、本実施例2における冷房運転時及び暖房運転時の動作は上記実施例1で説明した動作と同様であるので、それらの説明は省略する。
【0034】
次に、本実施例2における制御について説明する。
本実施例では、前記圧縮機104から吐出される冷媒の温度は該圧縮機104の出口付近に設けた吐出温度センサ111で検出される。また、各室内機200,300における吸込み空気温度は前記吸込み空気温度センサ206,306で、吹出し空気温度は前記吹出し空気温度センサ207,307で検知され、前記温度差検知装置により各室内機における前記吸込み吹出し空気温度差が検知される。更に、前記室内熱交換器201,301に流入する冷媒の温度は前記冷媒液側温度センサ204,304で、前記室内熱交換器201,301から流出する冷媒の温度は前記冷媒ガス側温度センサ205,305で検知され、前記過熱度検知装置により各室内機における前記冷媒過熱度が検知される。
【0035】
そして、冷房運転時の各室内機における冷房能力は、前記吐出温度センサ111で検出された圧縮機104の吐出冷媒温度に応じて、前記各室内機の前記温度差検知装置で検知された空気温度差または前記過熱度検知装置で検知された冷媒過熱度の何れかに基づいて前記室内膨張弁(室内膨張機構)203,303を調整して制御されるように構成されている。
【0036】
例えば、前記吐出温度センサ(前記吐出温度検知装置)111により検知された前記吐出温度が予め定めた設定温度よりも低い場合には、前記冷房能力は、前記過熱度検知装置で検知された冷媒過熱度に基づいて前記室内膨張弁を調整することにより制御され、前記吐出温度センサ111により検知された前記吐出温度が予め定めた設定温度よりも高い場合には、前記冷房能力は、前記温度差検知装置で検知された空気温度差に基づいて前記室内膨張弁203,303を調整することにより制御される。
【0037】
なお、本実施例においても、前記温度差検知装置により求められた冷房運転時の各室内機200,300における前記吸込み吹出し空気温度差に、前記室内ファン202,302の風量をそれぞれ掛けることで、各室内機200,300での冷房能力を推定することができる。
【0038】
図3により、冷房運転時における前記室内膨張弁203,303による冷房能力制御の具体例を説明する。図3において、横軸は前記吐出温度センサ111で検出される圧縮機吐出温度、縦軸は前記室内膨張弁(室内膨張機構)203,303による冷房能力の制御について示している。
【0039】
圧縮機104の起動直後など、圧縮機の吐出温度が低い場合には、直線Aで示すように、各室内機200,300の冷房能力制御は、冷媒過熱度制御により行なわれる。即ち、前記冷媒液側温度センサ204,304で検知された冷媒液側の温度と、前記冷媒ガス側温度センサ205,305で検知された冷媒ガス側温度との差から、前記過熱度検知装置により前記各室内機200,300における冷媒過熱度が求められる。この冷媒過熱度に基づいて、前記室内膨張弁203,303の開度が調整されることにより、前記各室内機200,300における冷房能力の制御が行われる。
【0040】
その後、前記圧縮機104の吐出温度が上昇し、前記吐出温度センサ111で検出された圧縮機の吐出温度が設定温度(この例では100℃)になると、直線Bで示すように、空気温度差制御に切り替えられる。即ち、前記吸込み空気温度センサ206,306で検知された吸込み空気温度と、前記吹出し空気温度センサ207,307で検知された吹出し空気温度とから、前記温度差検知装置により、空気温度差が求められる。この空気温度差に基づいて、前記室内膨張弁203,303の開度が調整されることにより、前記各室内機200,300における冷房能力の制御が行われる。
【0041】
そして、冷房能力の制御が、前記直線Bで示す空気温度差制御が為されている場合、圧縮機吐出温度が、前記設定温度(この例では100℃)以下まで低下しても、前記冷媒過熱度制御に直ちには移行されない。即ち、本実施例では、圧縮機吐出温度が、前記設定温度よりも予め定めた所定温度(この例では20℃)だけ低い温度(この例では80℃)まで低下してから、前記冷房能力の制御は、前記直線Bで示す空気温度差制御から、前記直線Aで示す冷媒過熱度制御に切り替えられるように構成されている。
【0042】
なお、前記直線Aで示す冷媒過熱度制御から、前記直線Bで示す空気温度差制御への切り替えは、前述したように、圧縮機吐出温度が前記設定温度(この例では100℃)になってから行なわれる。このように本実施例では、前記設定温度で頻繁に、前記空気温度差制御と前記冷媒過熱度制御が切り替えられてしまうのを防止できるように、ヒステリシスが設けられている。従って、より信頼性の高い空気調和機が得られる。
【0043】
以上述べたように、本実施例2によれば、冷房運転時に、圧縮機吐出温度が設定温度以上に高くなった場合、空気温度差制御により制御が行われるので、室内機における熱交換器出口の冷媒が液冷媒を含むように制御することができる。従って、R32のような冷媒を使用する空気調和機であっても、圧縮機吐出温度が異常に上昇するのを抑制できるから、信頼性の高い空気調和機を得ることができる。また、熱交換器出口の冷媒が液冷媒を含むように制御される場合、各室内機の冷房能力制御に冷媒過熱度制御は使用できないが、この場合には前記空気温度差制御により各室内機の冷房能力を制御するので、多室型空気調和機の各室内機における冷房能力を個別に制御することが可能となる。
【0044】
また、冷房運転時に、圧縮機吐出温度が設定温度以下、或いは設定温度より所定温度以上低くなった場合には、前記冷媒過熱度制御により各室内機の冷房能力を制御するので、圧縮機吐出温度が異常に上昇するのを回避しつつ、より精度の高い制御が可能になる効果が得られる。
【0045】
このように、上述した本発明の各実施例によれば、冷媒としてR32を使用する多室型の空気調和機において、圧縮機吐出温度の上昇を抑制すると共に、複数台の各室内機の冷房能力を個別に制御することも可能な空気調和機を得ることができる。
【0046】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。
また、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。更に、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0047】
また、上記制御を実現するためのプログラム、設定温度、所定温度等の情報は、空気調和機の制御装置やリモコン等に備えられたメモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【符号の説明】
【0048】
100:室外機、101:室外熱交換器、102:室外ファン、103:室外膨張弁、
104:圧縮機、105:アキュムレータ、106:オイルセパレータ、
107:返油キャピラリー、108:四方弁、111:吐出温度センサ、
121:液配管、122:ガス配管、
200,300:室内機、
201,301:室内熱交換器、
202,302:室内ファン、
203,303:室内膨張弁、
204,304:冷媒液側温度センサ、
205,305:冷媒ガス側温度センサ、
206,306:吸込み空気温度センサ、
207,307:吹出し空気温度センサ。
図1
図2
図3