特許第6000088号(P6000088)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000088
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】電源制御装置および加硫システム
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20160915BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20160915BHJP
   B29K 21/00 20060101ALN20160915BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20160915BHJP
【FI】
   B29C33/02
   B29C35/02
   B29K21:00
   B29L30:00
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-256756(P2012-256756)
(22)【出願日】2012年11月22日
(65)【公開番号】特開2014-104590(P2014-104590A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】312005957
【氏名又は名称】三菱重工マシナリーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】田中 一成
(72)【発明者】
【氏名】横尾 和俊
(72)【発明者】
【氏名】新谷 幸司
【審査官】 宮本 靖史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−274110(JP,A)
【文献】 特開2005−212477(JP,A)
【文献】 特開2000−079616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00 − 33/76
B29C 35/00 − 35/18
B29C 39/26 − 39/36
B29C 41/38 − 41/44
B29C 43/36 − 43/42
B29C 43/50
B29C 45/26 − 45/44
B29C 45/64 − 45/68
B29C 45/73
B29C 49/48 − 49/56
B29C 49/70
B29C 51/30 − 51/40
B29C 51/44
B29K 21/00
B29L 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫機に設けられた少なくとも1つの加硫部で生タイヤの加硫処理を行うための電力を、常時電力を供給可能な第1電源および予め充電された充電電力を供給可能な第2電源から供給するための電源制御装置であって、
加硫部における加硫処理に含まれる工程の種類を示す工程情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部が取得した前記工程情報に基づき、予め決められた工程のときに前記加硫部に前記第2電源から充電電力を供給させる電力供給制御部と、
を備えることを特徴とする電源制御装置。
【請求項2】
前記電力供給制御部は、
前記加硫処理に含まれる工程のうち前記生タイヤを加熱する加熱工程の開始時から、前記加硫部に前記第2電源からの充電電力の供給を開始させることを特徴とする請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項3】
前記電力供給制御部は、
前記加硫処理に含まれる工程のうち前記生タイヤを加圧する加圧工程の開始時、前記第2電源からの充電電力の開始時点から予め決められた時間の経過時、あるいは、温度が予め決められた値に到達した時のうち少なくともいずれか1つの時に到達した場合、前記第2電源から前記加硫部への充電電力の供給を停止させることを特徴とする請求項1に記載の電源制御装置。
【請求項4】
前記電力供給制御部は、
前記加硫処理に含まれる工程のうち、前記加硫部に対する前記生タイヤの搬入あるいは搬出の工程、または、前記生タイヤを加熱あるいは加圧するための型の開あるいは閉の工程のうち、少なくともいずれか1つに該当するとき、前記加硫部に前記第2電源から充電電力を供給している状態であることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか一項に記載の電源制御装置。
【請求項5】
請求項1から4のうちいずれか一項に記載の電源制御装置と、前記第1電源と、前記第2電源と、複数の前記加硫機と、
を備えることを特徴とする加硫システム。
【請求項6】
前記電源制御装置は、
前記第2電源からの充電電力を前記加硫部に供給する期間を、前記複数の加硫機に含まれる前記加硫部のそれぞれにおいてずらすことを特徴とする請求項5に記載の加硫システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源制御装置および加硫システムに関する。
【背景技術】
【0002】
生タイヤを加硫成形するため、内部に生タイヤが装填されたモールド(金型)を加熱媒体により加熱するとともに、生タイヤの内部空間に高温、高圧の加熱媒体を供給することによって、生タイヤを外側および内側から加熱するものがある。例えば、建屋内に、50〜100台の複数の加硫機が設置され、各加硫機には、それぞれ、1つのタイヤに対して加硫処理を行う加硫部が複数設けられている。
ここで、加硫処理における消費エネルギーの大部分は、タイヤの加熱に要する熱エネルギーである。近年は、省エネ志向の観点から、熱ロスの大きい蒸気加熱式に代わって電気加熱式加硫機が実用化されつつある。また、加硫機では、プレス昇降やタイヤの搬送用の油圧機器をはじめ、電動モータ、制御盤、電磁弁等の多岐にわたり、電力供給が必要である。
例えば、蒸気加熱によって生タイヤを加硫成形する加硫機を複数備える加硫機システムがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−140184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、加硫機における消費電力の増大に伴ってピーク電力量が大きくなるため、電気料金が高騰するという問題がある。また、出力電力の大きい電源を用意する必要が生じる。
【0005】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、加硫機で利用される電力を効率よく供給するための電源制御装置および加硫システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、本発明の一態様による電源制御装置は、加硫機に設けられた少なくとも1つの加硫部で生タイヤの加硫処理を行うための電力を、常時電力を供給可能な第1電源および予め充電された充電電力を供給可能な第2電源から供給するための電源制御装置であって、加硫部における加硫処理に含まれる工程の種類を示す工程情報を取得する情報取得部と、前記情報取得部が取得した前記工程情報に基づき、予め決められた工程のときに前記加硫部に前記第2電源から充電電力を供給させる電力供給制御部と、を備える。
これにより、本実施形態に係る電源制御装置は、予め決められた期間、例えば、加硫処理の1サイクル内の消費電力が高くなる期間と定められた場合はその期間において、第1電源から供給される常時電力の電力量を充電電力で補うことができ、第1電源から供給される常時電力のピーク電力を抑えることができる。これにより、ピーク電力量を抑えて、ランニングコストを抑制することができる。
【0007】
(2)また、本発明の一態様による電源制御装置において、前記電力供給制御部は、前記加硫処理に含まれる工程のうち前記生タイヤを加熱する加熱工程の開始時から、前記加硫部に前記第2電源からの充電電力の供給を開始させる。
これにより、本実施形態に係る電源制御装置は、加熱工程の開始時点からのある期間において、第1電源から供給される常時電力の電力量を充電電力で補うことができ、第1電源から供給される常時電力のピーク電力を抑えることができる。
【0008】
(3)また、本発明の一態様による電源制御装置において、前記電力供給制御部は、前記加硫処理に含まれる工程のうち前記生タイヤを加圧する加圧工程の開始時、前記第2電源からの充電電力の開始時点から予め決められた時間の経過時、あるいは、温度が予め決められた値に到達した時のうち少なくともいずれか1つの時に到達した場合、前記第2電源から前記加硫部への充電電力の供給を停止させる。
これにより、本実施形態に係る電源制御装置は、予め決められた期間、例えば、加硫処理の1サイクル内の消費電力が高くなる期間と定められた場合はその期間が経過した場合、第2装置からの充電電力の補充を停止することによって、必要な期間に充電電力を使用することができる。このため、第1電源からの常時電力を効率よく利用することができる。
【0009】
(4)また、本発明の一態様による電源制御装置において、前記電力供給制御部は、前記加硫処理に含まれる工程のうち、前記加硫部に対する前記生タイヤの搬入あるいは搬出の工程、または、前記生タイヤを加熱あるいは加圧するための型の開あるいは閉の工程のうち、少なくともいずれか1つに該当するとき、前記加硫部に前記第2電源から充電電力を供給している状態である。
これにより、本実施形態に係る電源制御装置は、プレス昇降機構の動作時、および、タイヤ搬送用の油圧機器の動作時等、加硫機の電子機器の消費電力が増大する期間において、第1電源から供給される常時電力の電力量を充電電力で補うことができ、第1電源から供給される常時電力のピーク電力を抑えることができる。
【0010】
(5)また、本発明の一態様による加硫システムは、上述に記載の電源制御装置と、前記第1電源と、前記第2電源と、複数の前記加硫機と、を備える。
これにより、本実施形態に係る加硫システムは、複数の加硫機を備える工場全体として、第1電源から供給される常時電力のピーク電力を抑えることができる。
【0011】
(6)また、本発明の一態様による加硫システムにおいて、前記電源制御装置は、前記第2電源からの充電電力を前記加硫部に供給する期間を、前記複数の加硫機に含まれる前記加硫部のそれぞれにおいてずらす。
これにより、本実施形態に係る加硫システムは、複数の加硫機を備える工場全体として、第1電源から供給される常時電力のピーク電力を抑えることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、加硫機で利用される電力を効率よく供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る第1実施形態に係る加硫システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2】本発明に係る第1実施形態に係る加硫処理に含まれる処理工程と消費電力の関係の一例を示す図である。
図3】本発明に係る第1実施形態に係る加硫処理の一例について説明するためのフローチャートである。
図4】本発明に係る第1実施形態に係る電力供給制御処理の一例について説明するためのフローチャートである。
図5】本発明に係る第1実施形態に係る加熱、加圧工程におけるタイヤ加熱用の電気加熱装置の消費電力量とタイヤの平均温度との関係を示す図である。
図6】本発明に係る第2実施形態に係る加硫システムの構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る加硫システム1の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示す通り、本実施形態に係る加硫システム1は、第1電源100と、第2電源200と、3つの加硫部301,302,303を備える加硫機300と、電源制御装置401,402,403とを備える。なお、本実施形態において、加硫機300が3つの加硫部を備える例を用いて説明するが、本発明はこれに限られず、加硫機は1以上の加硫部を備える構成であればよい。
第1電源100は、加硫部301,302,303のそれぞれと接続され、加硫部301,302,303のそれぞれに常時電力を供給可能な電源である。この第1電源100は、例えば、商用電源であって、以下、商用電源100と呼称する。この商用電源100は、契約上使用できる最大電力が予め決められている電力を供給する電源である。なお、本発明はこれに限られず、第1電源100は、例えば、自家発電装置であってもよい。また、第1電源100は、複数の電源装置を含む構成であってもよく、例えば、商用電源と自家発電装置との組み合わせによって構成されるものであってもよい。
【0015】
第2電源200は、接続部501,502,503を介して加硫部301,302,303のそれぞれと接続され、加硫部301,302,303のそれぞれに、予め充電された充電電力を供給可能な電源である。この第2電源は、例えば、蓄電装置であって、以下、蓄電装置200と呼称する。なお、本発明はこれに限られず、第2電源200は、充電電力を保持できる電源であればよい。この充電電力は、例えば、商用電源100から供給される電力が夜間のうちに蓄電された電力であることが好ましい。
【0016】
加硫機300は、生タイヤに加硫処理を行う加硫部を少なくとも1つ備える装置である。本実施形態において、加硫機300は、3つの加硫部301,302,303を備える。
これら加硫部301,302,303は、それぞれ、モールド(金型)内に装填された生タイヤの内部空間に高温、高圧の加熱媒体を供給することによって、生タイヤを内側から加熱するとともに加圧する。また、加硫部301,302,303は、それぞれ、生タイヤを金型の外側から加熱する。従って、加硫部301,302,303は、生タイヤを加硫するための種々の構成部材(例えば、搬入出機構、加熱機構、加圧機構、金型開閉機構等)を備えており、一般的に用いられる部材を利用可能であるため、詳細な説明は省略する。
【0017】
電源制御装置401,402,403は、それぞれ、主に、加硫部301,302,303を制御する制御装置である。つまり、電源制御装置401,402,403は、それぞれ、加硫部301,302,303が備える搬入出機構、加熱機構、加圧機構、金型開閉機構等の構成部材の動作や、各構成部材への電力供給を制御する。なお、本発明はこれに限られず、各電源制御装置401〜403が、複数の加硫部301〜303をそれぞれ制御するものであってもよい。つまり、1つの電源制御装置が複数の加硫部を制御するものであってもよい。
【0018】
また、これら電源制御装置401,402,403は、それぞれ、加硫処理制御部411,421,431と、情報取得部412,422,432と、電力供給制御部413,423,433とを備える。なお、同一名称の各構成は、同一の機能を有するため、以下、電源制御装置401が備える各構成について説明し、他の各構成についての詳細な説明は省略する。
加硫処理制御部411は、加硫処理に含まれる工程に応じて、加硫部301(または複数の加硫部301〜302)が備える搬入出機構、加熱機構、加圧機構、金型開閉機構等の構成部材の動作を制御する。また、加硫処理制御部411は、各構成部材の動作を制御する際、新たな工程を実行するよう制御した場合、制御した工程の種類を示す情報(以下、工程情報という)を情報取得部412に出力する。
情報取得部412は、加硫処理制御部411から工程情報を入力すると、入力した情報を電力供給制御部413に出力する。
電力供給制御部413は、情報取得部412が取得した工程情報に基づき、予め決められた工程のときに、加硫部301(または複数の加硫部301〜302)に蓄電装置200から充電電力を供給させるよう制御する。この電力供給制御部413は、加硫機部301(または複数の加硫部301〜302)と蓄電装置200とを接続するように接続部501を連結することによって、加硫部301に蓄電装置200から充電電力を供給させるよう制御する。
【0019】
次に、図2を参照して、加硫部301の加硫処理に含まれる処理工程と消費電力の関係について説明する。図2は、加硫部301の加硫処理に含まれる処理工程と消費電力の関係の一例を示す図である。
図2に示す通り、加硫処理の1サイクルは、大きく分類すると、(1)タイヤの搬入、(2)プレスの閉処理、(3)加熱処理、(4)加圧処理、(5)プレスの開処理、(6)タイヤの搬出処理を含み、この順番で実行される。
図示の通り、(1)タイヤの搬入、(2)プレスの閉処理、(3)加熱処理、(5)プレスの開処理、(6)タイヤの搬出処理の初動において、消費電力が急激に上昇する。(3)加熱処理では、例えば、タイヤ加熱用の電気加熱装置を一定の温度まで上昇させるために初期において消費電力が急激に上昇し、タイヤ温度が上昇すると加硫反応(発熱)が始まり、消費電力が低下する特性がある。
【0020】
次に、図3を参照して、加硫処理制御部411による加硫処理の一例について説明する。図3は、本実施形態に係る加硫処理の一例について説明するためのフローチャートである。
(ステップST101)
加硫処理制御部411は、加硫部301に含まれるタイヤ搬送用の搬送機構(例えば、油圧機器、電気駆動機器等)を制御して、例えば、タイヤを加硫部301の下側の金型上に搬入させる。そして、加硫処理制御部411は、(1)タイヤの搬入を示す工程情報を、情報取得部412に出力する。
(ステップST102)
また、加硫処理制御部411は、加硫部301に含まれるプレス昇降機構を制御して、下側の金型と上側の金型を合わせて閉状態にさせる。そして、加硫処理制御部411は、(2)プレスの閉処理を示す工程情報を、情報取得部412に出力する。
【0021】
(ステップST103)
次いで、加硫処理制御部411は、加硫部301に含まれる加熱機構(例えば、電気加熱装置や、誘導加熱装置、あるいは蒸気ボイラー等)を制御して、金型内に位置されているタイヤを、外側あるいは内側もしくは両方から、加硫ができる温度まで加熱する。なお、加硫処理制御部411は、ここでの加熱処理において、タイヤ成型のために加熱媒体等にて、タイヤの内側に加圧も同時に行う。そして、加硫処理制御部411は、(3)加熱処理を示す工程情報を、情報取得部412に出力する。
(ステップST104)
次いで、加硫処理制御部411は、加硫部301に含まれる加圧機構を制御して、金型内に位置されているタイヤを、内側から、加硫ができる圧力まで更に加圧し、保持する、もしくはそのまま圧力を保持する。この加硫処理制御部411は、例えば、タイヤ内側ブラダーへ高圧媒体(窒素や温水等)を導入することにより加圧を保持する。なお、加圧処理時は、外側からの加熱処理も行っている。そして、加硫処理制御部411は、(4)加圧処理を示す工程情報を、情報取得部412に出力する。
【0022】
(ステップST105)
次いで、加硫処理制御部411は、加硫完了時に加圧処理を終了させ、加硫部301に含まれるプレス昇降機構を制御して、下側の金型と上側の金型を開状態にさせる。そして、加硫処理制御部411は、(5)プレスの開処理を示す工程情報を、情報取得部412に出力する。
(ステップST106)
加硫処理制御部411は、加硫部301に含まれるタイヤ搬送用の搬送機構を制御して、例えば、加硫部301の下側の金型上からタイヤを搬出させる。そして、加硫処理制御部411は、(6)タイヤの搬出を示す工程情報を、情報取得部412に出力する。
【0023】
次に、図4を参照して、電力供給制御部413による電力供給制御処理の一例について説明する。図4は、本実施形態に係る電力供給制御処理の一例について説明するためのフローチャートである。
(ステップST201)
電力供給制御部413は、情報取得部412から入力する工程情報に基づき、蓄電装置200からの充電電力を加硫機300に供給するか否かを判定する。本実施形態において、電力供給制御部413は、情報取得部412から入力する工程情報が、加熱工程を示す情報である場合、蓄電装置200からの充電電力を加硫機300に供給すると判定する。
(ステップST202)
電力供給制御部413は、加熱工程を示す工程情報を情報取得部412から入力すると、蓄電装置200からの充電電力を加硫機300に供給すると判定し、接続部501を連結して加硫機部301と蓄電装置200とを接続させる。これにより、蓄電装置200からの充電電力が加硫機部301に供給される。
【0024】
(ステップST203)
そして、電力供給制御部413は、蓄電装置200から加硫機300への充電電力の供給を停止するタイミングに到達したか否かを判定する。例えば、電力供給制御部413は、接続部501を連結して加硫機部301と蓄電装置200とを接続した時点(充電電力の供給開始時点)から予め決められた時間が経過したとき、あるいは、加圧処理を示す工程情報を情報取得部412から入力したとき(加圧工程の開始時)、蓄電装置200から加硫機300への充電電力の供給を停止するタイミングに到達したと判定する。なお、電力供給制御部413は、これに限られず、例えば、加熱処理において加熱機構あるいはタイヤが予め決められた温度以上となったときに、蓄電装置200から加硫機300への充電電力の供給を停止するタイミングに到達したと判定するものであってもよい。
(ステップST204)
蓄電装置200から加硫機300への充電電力の供給を停止するタイミングに到達したと判定した場合、電力供給制御部413は、接続部501の連結を解除し、加硫機部301と蓄電装置200との接続を切断する。これにより、蓄電装置200から加硫機300への充電電力の供給が停止する。
【0025】
上述の通り、加熱工程の開始時点から決められた期間において、商用電源100からの常時電力と、蓄電装置200からの充電電力とを、加硫部301に供給する。よって、加硫処理の1サイクル内の消費電力が高くなる期間において、商用電源100から供給される常時電力の電力量を充電電力で補うことができる。従って、図5に示す通り、加熱工程の開始時点から決められた期間において、商用電源100から供給される常時電力のピーク電力を抑えることができる。なお、図5には、加熱工程におけるタイヤ加熱用の電気加熱装置の消費電力量と、タイヤの平均温度との関係を示す。図示の通り、加熱工程の開始時点から決められた期間において、充電電力を補うことによって、商用電源100から供給される電力のピーク値をカットすることができる。
【0026】
このように、ピーク電力量を抑制することによって電気料金を低減し、ランニングコストを低下させることができる。また、第1電源100が商用電源でなく、例えば、自家発電装置である場合であっても、消費電力のピーク値を抑えることによって、発生電力の小さい自家発電装置を第1電源100として利用することができるようになる。
また、加熱工程の開始時点から決められた期間が経過した場合、蓄電装置200からの充電電力の補充を停止することによって、必要な期間に充電電力を使用することができる。このため、商用電源100からの常時電力を効率よく利用することができる。
さらに、他の電源制御装置402,403も、電源制御装置401と同様にして、加熱処理の開始時点から決められた期間において、蓄電装置200からの充電電力を補給する。これにより、他の加硫部302,303に供給する電力についても、加熱処理時に急激に上昇する消費電力のピーク値を抑えることができるため、工場全体としてピーク電力を低減することができる。
【0027】
なお、本発明は上述の実施形態に限られず、例えば、以下に説明するようなものであってもよい。
例えば、電力供給制御部413は、情報取得部412から入力する工程情報が、タイヤの搬入、プレスの閉処理、プレスの開処理、タイヤの搬出を示す情報である場合、蓄電装置200からの充電電力を加硫機300に供給することを判定するものであってもよい。
加硫機300の電気機器の消費電力は、プレス昇降機構の動作時、および、タイヤ搬送用の油圧機器や電気駆動機器の動作時で大部分が占められている場合がある。この場合、加硫(加熱および加圧)処理の開始前、(1)タイヤの搬入時と(2)プレスの閉処理時および加硫(加熱および加圧)処理の完了後、(5)プレスの開処理時と(6)タイヤの搬出時において、蓄電装置200からの充電電力を補給することによって、商用電源100の消費電力のピーク値を抑えることができる。
この場合も、電力供給制御部413は、例えば、接続部501を連結して加硫機部301と蓄電装置200とを接続した時点(充電電力の供給開始時点)から予め決められた時間が経過したとき、あるいは、別の処理を示す工程情報を情報取得部412から入力したとき、蓄電装置200から加硫機300への充電電力の供給を停止するタイミングに到達したと判定するものであってもよい。
【0028】
このように、加硫機300の電気機器の消費電力が短時間で上昇する期間において、充電電力を補給することによって、ピーク値を低減することができる。また、(1)タイヤの搬入時、(2)プレスの閉処理時、(5)プレスの開処理時、(6)タイヤの搬出時の消費電力量は、図2に示すようにタイヤの加熱工程に比べて小さく、一時的な高負荷であるため、蓄電装置200からの充電電力だけですべてまかなうことも可能となるため、商用電源100からの消費電力量を抑えることもできる。
【0029】
[第2実施形態]
次に、図6を参照して、本発明に係る第2実施形態について説明する。図6は、本実施形態に係る加硫システム2の構成の一例を示すブロック図である。なお、本実施形態に係る加硫システム2は、第1実施形態に係る加硫システム1が備える構成部を利用することが可能であり、以下に説明する制御方法で動作する制御システムを備える点、および、電源制御装置401,402,403が蓄電システム400に含まれている点で異なる。よって、各構成については、同一の名称と符号を付して、詳細な説明については省略する。
図6に示す通り、加硫部301,302,303は、加熱工程の開始タイミングがずれている。このように、各加硫部301,302,303による加熱工程の開始タイミングをずらすことによって、商用電源100からの出力電力のピーク値を、工場全体で抑えることができる。
【0030】
例えば、各加硫部301,302,303の加硫工程の開始タイミングを設計する際、各加硫部301,302,303による加熱工程がそれぞれ重複しないように各工程の運転スケジュールを設計することで、商用電源100からの出力電力のピーク値を抑えるものであってもよい。
また、蓄電システム400が、加硫部301,302,303のうち、いずれか1つにおいて充電電力の供給停止タイミングに到達した場合、次に加熱処理を実行する順番の加硫部に対して加熱工程を実行させるものであってもよい。このように、蓄電システム400には、加硫処理制御部411,421,431を纏めて1つの構成とした制御部が搭載されており、この制御部が、時事刻々と適切な補給先を選択して、加熱工程の開始タイミングを制御するとともに、蓄電装置200から各加硫部301,302,303に充電電力を供給するタイミングをずらすものであってもよい。これにより、商用電源100からの出力電力のピーク値を、工場全体で抑えることができる。
【0031】
さらに、蓄電システム400は、第1実施形態のように、電源制御装置401,402,403をそれぞれ備える構成であってもよい。この場合、電源制御装置401,402,403が、互いの工程状態を通知することによって、リレー方式で順番に加熱工程を実行するものであってもよい。例えば、電源制御装置401の電力供給制御部413は、蓄電装置200から加硫機300への充電電力の供給を停止するタイミングに到達したと判定した場合、電源制御装置402に、加熱工程の開始を許可することを示す許可情報を出力する。この電源制御装置402の加硫処理制御部421は、この許可情報を電源制御装置401から入力した場合、加熱工程を実行する。よって、加硫部301に蓄電装置200からの充電電力の供給が終了した後、加硫部302に蓄電装置200からの充電電力の供給を開始することができる。
【0032】
なお、本実施形態において、蓄電システム400と加硫部301,302,303との数の比率は、1:3である例について説明したが、本発明はこれに限られず、蓄電システム(あるいは電源制御装置)の数が、加硫部の数よりも多くてもよい。また、蓄電システム400に含まれる各電源制御装置401〜403は、複数の加硫部301〜303をそれぞれ制御するものであってもよい。つまり、1つの電源制御装置が複数の加硫部を制御するものであってもよい。
また、本実施形態に係る加硫システム2は、各加硫部301,302,303による(1)タイヤの搬入、(3)プレスの閉処理、(5)プレスの開処理、(6)タイヤの搬出の各工程の開始タイミングをずらすことによって、商用電源100からの出力電力のピーク値を、工場全体で抑えることができものであってもよい。
【0033】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。また、この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 加硫システム
100 第1電源(商用電源)
200 第2電源(蓄電装置)
300 加硫機
301 加硫部
302 加硫部
303 加硫部
401 電源制御装置
401 電源制御装置
401 電源制御装置
411 加硫処理制御部
421 加硫処理制御部
431 加硫処理制御部
412 情報取得部
422 情報取得部
432 情報取得部
413 電力供給制御部
423 電力供給制御部
433 電力供給制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6