(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
伝熱管の内外を流される流体相互間で熱交換を行わせる多管式の熱交換器では、伝熱管における漏洩事故を未然に防ぐために、伝熱管における漏洩の有無を検査する漏洩検査が実施される。
一般に、1つの熱交換器に組み込まれる伝熱管の漏洩検査には、専用の治具が使われる。
【0003】
このような伝熱管の漏洩検査に使う伝熱管漏洩検査治具の一例として、例えば、以下の特許文献1に開示されているものがある。
特許文献1に開示の伝熱管漏洩検査治具は、伝熱管の端部の開口に接続されて伝熱管内と連通した第一の気密室と、この第一の気密室の周囲を囲う第二の気密室とを画成するキャップと、第一の気密室及び第二の気密室に所定圧の検査ガスを供給するためのガス供給用配管と、このガス供給用配管の端部に接続されて所定圧の検査ガスを第一の気密室及び第二の気密室に圧送するガス供給装置と、各気密室に連通しているガス供給用配管を検査ガスの供給後に閉じて前記第一の気密室及び第二の気密室を互いに独立した気密空間にする開閉弁と、この開閉弁によって互いに独立した気密空間となっている第一の気密室と第二の気密室との間の差圧を検出する差圧計と、を備えている。
【0004】
特許文献1におけるキャップは、伝熱管の端部の外周を気密に支持する熱交換器の管板に取り付けられる。この管板は、その外側に気密に取り付けられるヘッドカバーとの協働で、伝熱管内に連通する気室を画成する。
【0005】
また、特許文献1におけるキャップは、管板の外面に開口する伝熱管の開口を覆うように管板に取り付けられて前記第一の気密室を画成する内側キャップと、この内側キャップとの間に第二の気密室を画成する外側キャップと、を備えた二重構造に形成されている。
【0006】
特許文献1に開示の伝熱管漏洩検査治具は、第一の気密室内と第二の気密室内とを検査ガスで同一気圧に設定したあと、差圧計を監視する。伝熱管に漏洩が発生している場合には、第一の気密室内の圧力が第二の気密室内の圧力よりも低下するため、差圧計が差圧を検知することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載されている伝熱管漏洩検査治具では、治具を構成する部品点数が多く、構成が複雑になる。また、この伝熱管漏洩検査治具の場合、漏洩検査を行う際には、治具の構成部品の組み付けや、検査中における開閉弁の開閉操作など、多くの操作が必要になる。特に、キャップを管板に取り付けるため、熱交換器からヘッドカバーを取り外す大がかりな操作も必要となる。従って、この伝熱管漏洩検査治具では、漏洩検査を行う際の操作が多く、多くの手間が掛かってしまう。
【0009】
そこで、本発明は、比較的簡易な構成で、伝熱管の漏洩検査を容易に行うことができる熱交換器の伝熱管漏洩検査治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための発明の一態様としての熱交換器の伝熱管漏洩検査治具は、
複数の伝熱管と、複数の前記伝熱管の一方の端部が嵌入している第一管板と、複数の前記伝熱管の他方の端部が嵌入している第二管板と、前記第一管板と対向する第一対向壁を有し、複数の前記伝熱管の一方の端部の開口を介して複数の該伝熱管内に連通する第一管内流体室を形成する第一ヘッドカバーと、前記第二管板と対向する第二対向壁を有し、複数の前記伝熱管の他方の端部の開口を介して複数の該伝熱管内に連通する第二管内流体室を形成する第二ヘッドカバーと、複数の前記伝熱管の一方の端部のそれぞれの延長線上で前記第一対向壁を貫通している第一アクセスネジ孔に螺合しているアクセスプラグと、複数の前記伝熱管の他方の端部のそれぞれの延長線上で前記第二対向壁を貫通している第二アクセスネジ孔に螺合しているアクセスプラグと、を備えている熱交換器の伝熱管漏洩検査治具において、
前記第一アクセスネジ孔と前記第二アクセスネジ孔とのうちの一方のアクセスネジ孔に螺合する第一栓支持プラグと、前記第一栓支持プラグが前記一方のアクセスネジ孔に螺合すると、前記一方のアクセスネジ孔と対向している前記伝熱管の開口を塞ぐ第一封止栓と、前記第一アクセスネジ孔と前記第二アクセスネジ孔とのうちの他方のアクセスネジ孔に螺合する第二栓支持プラグと、前記第二栓支持プラグが前記他方のアクセスネジ孔に螺合すると、前記他方のアクセスネジ孔と対向している前記伝熱管の開口を塞ぐ第二封止栓と、前記第一栓支持プラグ及び第一封止栓を貫通し、前記第一封止栓から前記伝熱管内に臨む一方の端部は前記伝熱管内に連通し、前記第一栓支持プラグから前記熱交換器の外部に導出された部位には圧力計及び気体供給装置が取り付けられる検査気体供給管と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
当該伝熱管漏洩検査治具は、検査する伝熱管の両端の開口を第一封止栓と第二封止栓で塞いで、伝熱管内空間を、第一封止栓を貫通する検査気体供給管のみに連通した閉空間にする。そのため、例えば、検査気体供給管を介して伝熱管内に検査ガスを圧送して、伝熱管内が所定の検査気圧に到達したら検査気体供給管を閉じて、その後、伝熱管内の気圧が低下するか否かを圧力計で監視することで、又は漏れ音の有無を確認することで、伝熱管における漏洩の有無を検知することができる。
【0012】
そして、第一封止栓や第二封止栓は、いずれも、栓支持プラグに接続されている。また、第一封止栓や第二封止栓が接続される栓支持プラグは、伝熱管の端部が嵌入している管板に対向配置されたヘッドカバーの対向壁上のアクセスネジ孔に、螺合可能である。また、各対向壁上のアクセスネジ孔は、管板上の伝熱管の延長線上に設けられていて、それぞれの栓支持プラグをアクセスネジ孔に螺合させることで、それぞれの栓支持プラグに接続されている封止栓が、アクセスネジ穴に対向している伝熱管の開口を塞いだ状態になる。
【0013】
すなわち、当該伝熱管漏洩検査治具は、第一封止栓と、この第一封止栓が接続される第一栓支持プラグと、第二封止栓と、この第二封止栓が接続される第二栓支持プラグと、第一栓支持プラグ及び第一封止栓を貫通して伝熱管内に連通する検査気体供給管と、の少ない構成部品で、伝熱管内に検査ガスを封入可能な状況を設定することができる。従って、伝熱管漏洩検査治具としての構成が比較的簡易な構成となる。
また、構成部品が少ない分、伝熱管の漏洩検査を行う際の組み付け等の操作も少なくて済む。しかも、各封止栓による伝熱管の開口の封止は、各封止栓が接続されている栓支持プラグを熱交換器のヘッドカバー上のアクセスネジ孔に、これらのヘッドカバーの外部から螺合させることで可能である。そのため、大型部品である熱交換器のヘッドカバーを取り外す操作も必要無い。従って、伝熱管の漏洩検査を行う際の作業が容易になる。
【0014】
また、前記熱交換器における伝熱管漏洩検査治具において、前記気体供給装置は、前記検査気体供給管の前記第一栓支持プラグから前記熱交換器の外部に導出された他方の端部に接続され、前記検査気体供給管を介して前記伝熱管内に検査用ガスを圧送し、前記圧力計は、前記気体供給装置と前記熱交換器との間において前記検査気体供給管に接続されて前記伝熱管内の圧力を検出してもよい。
【0015】
当該熱交換器における伝熱管漏洩検査治具の場合、伝熱管内に連通する検査気体供給管の端部に気体供給装置が接続されているため、第一封止栓及び第二封止栓により両端の開口を封止した伝熱管内に簡単に検査用ガスを供給することができ、伝熱管内を簡単に規定の検査気圧に設定することができる。
また、検査気体供給管には、伝熱管内の圧力を検出する圧力計が装備されているため、伝熱管内を規定の検査気圧に設定した後、圧力計を監視し、圧力の降下の有無を確認することで、簡単に伝熱管における漏洩の有無を検知することができる。
さらに、気体供給装置や圧力計が熱交換器の外部に導出した検査気体供給管に接続される構成のため、検査気体供給管へのこれらの気体供給装置や圧力計の接続作業も容易になる。
【0016】
また、以上のいずれかの前記熱交換器における伝熱管漏洩検査治具において、前記第一栓支持プラグ及び前記第二栓支持プラグは、前記アクセスネジ孔に螺合する雄ねじが外周に形成された筒状構造で内周には前記雄ねじと同心に雌ねじが形成された栓支持プラグ本体と、前記栓支持プラグ本体の中心軸上を進退可能に前記栓支持プラグ本体の前記雌ねじに螺合すると共に、該雌ねじへの螺合により該栓支持プラグ本体を貫通し前記熱交換器内に臨む先端面が前記第一封止栓又は前記第二封止栓に当接して、前記第一封止栓又は前記第二封止栓と前記栓支持プラグ本体との間の距離を調節する栓位置調整ネジ軸と、を備えていてもよい。
【0017】
当該熱交換器における伝熱管漏洩検査治具の場合、第一栓支持プラグ及び第二栓支持プラグに接続される第一封止栓又は第二封止栓の位置は、栓支持プラグ本体に対して栓位置調整ネジ軸を時計方向又は反時計方向に回動させることで、自由に調整することができる。そのため、組立誤差等で、ヘッドカバーのアクセスネジ孔と伝熱管の開口端との間の離間距離がばらつく場合でも、栓支持プラグをアクセスネジ孔に螺合させたときに、封止栓が伝熱管の開口を塞ぐように、簡単に封止栓の位置を修正することができ、第一封止栓及び第二封止栓によって伝熱管の両端を確実に封止することが可能になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、比較的簡易な構成で、しかも伝熱管の漏洩検査を容易に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る熱交換器における伝熱管漏洩検査治具の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態の伝熱管漏洩検査治具によって伝熱管の漏洩検査が実施される熱交換器10を示している。
【0022】
この熱交換器10は、複数の伝熱管11と、複数の伝熱管11の一方の端部(
図1では、左側の端部)が嵌入している第一管板12と、複数の伝熱管11の他方の端部(
図1では、右側の端部)が嵌入している第二管板13と、第一管板12と対向する第一対向壁14aを有して第一管板12との間に第一管内流体室15を形成する第一ヘッドカバー14と、第二管板13と対向する第二対向壁16aを有して第二管板13との間に第二管内流体室17を形成する第二ヘッドカバー16と、第一対向壁14aを貫通している第一アクセスネジ孔14bに螺合しているアクセスプラグ18と、第二対向壁16aを貫通している第二アクセスネジ孔16bに螺合しているアクセスプラグ18と、第一管板12と第二管板13とに両端を支持された複数の伝熱管11の外周を囲って管外流体室19を画成した胴筒部20と、を備えている。
【0023】
第一管板12及び第二管板13において、伝熱管11の端部が嵌入する孔は、伝熱管11の端部の外周面と気密に嵌合する。
【0024】
第一ヘッドカバー14は、前述の第一対向壁14aと、第一対向壁14aの外周部から延出して第一管板12の外周部に気密に接続される第一周壁14cと、を有している。この第一ヘッドカバー14が第一管板12との間に形成する第一管内流体室15は、複数の伝熱管11の一方の端部の開口を介して複数の伝熱管11内に連通する。
【0025】
第一対向壁14aに貫通形成される第一アクセスネジ孔14bは、第一管内流体室15内に臨む複数の伝熱管11の一方の端部のそれぞれの延長線上で、第一対向壁14aを貫通している。この第一アクセスネジ孔14bは、後述するように、第一管内流体室15に連通する伝熱管11に対して、漏洩検査等の保守作業するために使用される。
【0026】
第二ヘッドカバー16は、前述の第二対向壁16aと、第二対向壁16aの外周部から延出して第一管板12の外周部に気密に接続される第二周壁16cと、を有している。この第二ヘッドカバー16が第二管板13との間に形成する第二管内流体室17は、第二管内流体室17内を伝熱管11の延在方向に沿って横断する仕切り板22によって、入側第二管内流体室17aと出側第二管内流体室17bとに分割されている。入側第二管内流体室17aは、入側第二管内流体室17a内に臨む複数の伝熱管11の他方の端部の開口を介して、これらの複数の伝熱管11内に連通する。また、出側第二管内流体室17bは、出側第二管内流体室17b内に臨む複数の伝熱管11の他方の端部の開口を介して、これらの複数の伝熱管11内に連通する。
【0027】
第二対向壁16aに貫通形成される第二アクセスネジ孔16bは、第二管内流体室17内に臨む複数の伝熱管11の他方の端部のそれぞれの延長線上で、第二対向壁16aを貫通している。この第二アクセスネジ孔16bは、後述するように、第二管内流体室17に連通する伝熱管11に対して、漏洩検査等の保守作業するために使用される。
第一アクセスネジ孔14bと第二アクセスネジ孔16bは、同一寸法のネジ孔(テーパネジ孔)で、後述するように、伝熱管11の開口を封止する封止栓が挿通できるように、内径が伝熱管11の外径よりも大きく設定されている。
【0028】
入側第二管内流体室17aの外周壁となっている第二周壁16cには、この入側第二管内流体室17a内に第一の熱交換用ガスを供給する第一ガス供給口16eが設けられている。第一ガス供給口16eから入側第二管内流体室17aに供給された第一の熱交換用ガスは、入側第二管内流体室17aに連通している伝熱管11内を通って第一管内流体室15に流れる。そして、第一管内流体室15から出側第二管内流体室17bに連通している伝熱管11を通って、出側第二管内流体室17bに流れる。
【0029】
また、出側第二管内流体室17bの外周壁となっている第二周壁16cには、第一管内流体室15から伝熱管11を通って出側第二管内流体室17bに流入してきた第一の熱交換用ガスを排出する第一ガス排出口16fが設けられている。
【0030】
即ち、この熱交換器10において、伝熱管11内に流される第一の熱交換用ガスは、第一ガス供給口16eから入側第二管内流体室17aに流入し、入側第二管内流体室17aに連通している複数の伝熱管11を通って第一管内流体室15に流れる。そして、第一管内流体室15から出側第二管内流体室17bに連通している複数の伝熱管11を通って出側第二管内流体室17bに流れ、出側第二管内流体室17bから熱交換器10の外部に流出する。
【0031】
アクセスプラグ18は、第一アクセスネジ孔14bや第二アクセスネジ孔16bに螺合して、これらのアクセスネジ孔を気密に塞ぐ。アクセスプラグ18は、伝熱管11の漏洩検査等の保守作業を行う際に、各ネジ孔から取り外すことで、第一ヘッドカバー14や第二ヘッドカバー16の取り外しをせずに、各伝熱管11にアクセス可能になる。
【0032】
胴筒部20は、第一管板12と第二管板13との間において、これらの管板に嵌入されている複数の伝熱管11の外側を気密に囲って、管外流体室19を画成している。管外流体室19は、第二の熱交換用ガスを流す空間である。胴筒部20には、管外流体室19内に第二の熱交換用ガスを供給するための第二ガス供給口20eと、管外流体室19内の第二の熱交換用ガスを排出するための第二ガス排出口20fと、が設けられている。
第二ガス供給口20eと第二ガス排出口20fとは、管外流体室19内に第二の熱交換用ガスの滞流域ができることを避けるために、管外流体室19の略対角上に離れた位置に設けられている。
【0033】
熱交換器10において、第二ガス供給口20eから管外流体室19に供給された第二の熱交換用ガスは、管外流体室19内を第二ガス排出口20fに向かって流れる際に、伝熱管11の外周面と接触して、伝熱管11の周壁を介して、伝熱管11内を流れる第一の熱交換用ガスとの熱交換を行う。
【0034】
本実施形態における伝熱管漏洩検査治具は、
図2及び
図3に示すように、第一アクセスネジ孔14bと第二アクセスネジ孔16bとのうちの何れか一方のアクセスネジ孔に螺合により接続される第一栓支持プラグ30と、第一栓支持プラグ30に接続される第一封止栓40と、第一アクセスネジ孔14bと第二アクセスネジ孔16bとのうちの他方のアクセスネジ孔に螺合により接続される第二栓支持プラグ50と、第二栓支持プラグ50に接続される第二封止栓60と、第一栓支持プラグ30及び第一封止栓40を貫通して設けられた検査気体供給管70と、検査気体供給管70を介して伝熱管11内に検査用ガスを圧送可能な気体供給装置81と、検査気体供給管70に接続されて検査気体供給管70が連通する伝熱管11内の圧力を検出する圧力計83と、を備えている。
【0035】
本実施形態の第一栓支持プラグ30は、
図4に示すように、栓支持プラグ本体31と、この栓支持プラグ本体31の内側に螺合により接続される栓位置調整ネジ軸32と、を備えている。
【0036】
栓支持プラグ本体31は、第一アクセスネジ孔14b又は第二アクセスネジ孔16bに螺合する雄ねじ311が外周に形成された筒状構造で、内周には雄ねじ311と同心に雌ねじ312が形成されている。また、雄ねじ311の基端側には、第一対向壁14a又は第二対向壁16aに当接させる鍔部313と、当該栓支持プラグ本体31を回転操作する際の把持部314と、を備えている。把持部314は、外周面が六角形状に面取りされている。
【0037】
栓位置調整ネジ軸32は、外周面が栓支持プラグ本体31の雌ねじ312に螺合する雄ねじ322に形成された筒状の軸である。この栓位置調整ネジ軸32は、雄ねじ322と雌ねじ312との螺合によって、第一栓支持プラグ30の中心軸上を進退可能に、栓支持プラグ本体31に接続される。
【0038】
この栓位置調整ネジ軸32は、基端(
図4では、右端)側に、回転操作する際の把持部となる面取り部323が形成されている。また、栓位置調整ネジ軸32の中心軸上を貫通した中空部324は、検査気体供給管70が挿通される貫通孔である。この中空部324の内径は、該中空部324を挿通する検査気体供給管70が挿通方向(
図4の矢印X1方向)に移動可能なように、検査気体供給管70の外径よりも僅かに大きく設定されている。
【0039】
また、栓位置調整ネジ軸32は、栓支持プラグ本体31を挿通して熱交換器10内に臨む先端面326が、
図5に示すように第一封止栓40に当接して、この第一封止栓40と栓支持プラグ本体31の鍔部313との間の離間距離L1を決定する。この離間距離L1は、栓支持プラグ本体31に対して栓位置調整ネジ軸32を時計方向又は反時計方向に相対回転させることで、任意に調整することが可能である。離間距離L1は、第一栓支持プラグ30を第二アクセスネジ孔16bに螺合させたときに、栓位置調整ネジ軸32の先端に当接している第一封止栓40が伝熱管11の開口端を塞ぐように、予め栓位置調整ネジ軸32のねじ込み量が調整される。また、先端面326を第一封止栓40に当接させた状態では、第一封止栓40と栓位置調整ネジ軸32との間が気密に接続された状態になる。
【0040】
また、栓位置調整ネジ軸32は、栓支持プラグ本体31を第一アクセスネジ孔14b又は第二アクセスネジ孔16bに螺合させる際に、その先端部が第一封止栓40を伝熱管11の開口に押し込む押し込み棒としても機能する。
なお、第一封止栓40は、接着剤等により栓位置調整ネジ軸32の先端面326に気密に固着させても良い。
【0041】
第一封止栓40は、合成ゴム材料等の弾性材で截頭円錐形に形成された栓で、
図3に示すように、外周面41を伝熱管11の開口に緊密嵌合させることにより、伝熱管11の開口を塞ぐ。
第一封止栓40は、中心軸に沿って、検査気体供給管70を挿通させる管挿通孔42が貫通形成されている。管挿通孔42は、内径が、検査気体供給管70の外径よりも僅かに大きく設定されている。また、栓位置調整ネジ軸32の先端面326に対向する第一封止栓40の基端面40bは、先端面326と当接した際に弾性変形して先端面326に密着する。
【0042】
第一栓支持プラグ30は、
図2に示すように、栓位置調整ネジ軸32の先端部に第一封止栓40が当接した状態で、第二アクセスネジ孔16bに螺合させられる。第一封止栓40は、
図2及び
図3に示すように、第一栓支持プラグ30が第二アクセスネジ孔16bに螺合すると、第二アクセスネジ孔16bと対向している伝熱管11の開口に緊密嵌合して、伝熱管11の開口を塞ぐ。
【0043】
本実施形態の第二栓支持プラグ50は、
図6に示すように、第一栓支持プラグ30と共通部品である栓支持プラグ本体31と、この栓支持プラグ本体31の内側に螺合により接続される栓位置調整ネジ軸32Aと、を備えている。
【0044】
栓位置調整ネジ軸32Aは、第一栓支持プラグ30における栓位置調整ネジ軸32を中実軸に変更したもので、中実にした以外は、栓位置調整ネジ軸32と共通の構成でよい。この栓位置調整ネジ軸32Aは、雄ねじ322と雌ねじ312との螺合によって、第二栓支持プラグ50の中心軸上を進退可能に、栓支持プラグ本体31に接続される。
【0045】
また、栓位置調整ネジ軸32Aは、栓支持プラグ本体31を挿通して熱交換器10内に臨む先端面326が、
図6に示すように第二封止栓60に当接して、この第二封止栓60と栓支持プラグ本体31の鍔部313との間の離間距離L2を決定する。この離間距離L2は、栓支持プラグ本体31に対して栓位置調整ネジ軸32Aを時計方向又は反時計方向に相対回転させることで、任意に調整することが可能である。離間距離L2は、第二栓支持プラグ50を第一アクセスネジ孔14bに螺合させたときに、栓位置調整ネジ軸32Aの先端に当接している第二封止栓60が伝熱管11の開口端を塞ぐように、予め栓位置調整ネジ軸32Aのねじ込み量が調整される。また、先端面326を第二封止栓60に当接させた状態では、第二封止栓60と栓位置調整ネジ軸32Aとの間が気密に接続された状態になる。
【0046】
この栓位置調整ネジ軸32Aは、第一栓支持プラグ30における栓位置調整ネジ軸32の場合と同様に、栓支持プラグ本体31を第一アクセスネジ孔14b又は第二アクセスネジ孔16bに螺合させる際に、その先端部が第二封止栓60を伝熱管11の開口に押し込む押し込み棒としても機能する。
【0047】
第二封止栓60は、合成ゴム材料等の弾性材で截頭円錐形に形成された栓で、
図3に示すように、外周面61を伝熱管11の開口に緊密嵌合させることにより、伝熱管11の開口を塞ぐ。第二封止栓60は、第一封止栓40を中実構造に変更したもの、つまり、第一封止栓40のような管挿通孔42が形成されていないものである。
【0048】
第二栓支持プラグ50は、
図2に示すように、栓位置調整ネジ軸32Aの先端部に第二封止栓60が当接した状態で、第一アクセスネジ孔14bに螺合させられる。第二封止栓60は、
図2及び
図3に示すように、第二栓支持プラグ50が第一アクセスネジ孔14bに螺合すると、第一アクセスネジ孔14bと対向している伝熱管11の開口に緊密嵌合して、この伝熱管11の開口を塞ぐ。
【0049】
第二封止栓60は、接着剤等により栓位置調整ネジ軸32Aの先端面に気密に固着させてもよい。
【0050】
なお、本実施形態の場合、第一栓支持プラグ30が第二アクセスネジ孔16bに螺合により接続され、第二栓支持プラグ50が第一アクセスネジ孔14bに螺合により接続される場合を示している。しかし、第一栓支持プラグ30を第一アクセスネジ孔14bに螺合により接続し、第二栓支持プラグ50を第二アクセスネジ孔16bに螺合により接続するようにしても良い。
【0051】
検査気体供給管70は、合成ゴム材料等の弾性材で形成された可撓性を有する管である。この検査気体供給管70は、
図4に示すように、第一栓支持プラグ30及び第一封止栓40を貫通し、第一封止栓40から突出した一方の端部70aの外周には、抜け止めリング72が気密に固着されている。
また、検査気体供給管70は、
図3に示すように、第一封止栓40が伝熱管11の開口に嵌合した時に、一方の端部70aが伝熱管11内に臨んで、伝熱管11内に連通する。
【0052】
また、
図3に示すように、検査気体供給管70の第一栓支持プラグ30から熱交換器10の外部に導出された部位には、気体供給装置81及び圧力計83が取り付けられる。
【0053】
検査気体供給管70の一方の端部70aに固着された抜け止めリング72は、
図4に示すように、外径が、第一封止栓40の管挿通孔42よりも大きく、且つ第一封止栓40の先端面40aの外径よりも小さい範囲に設定されている。この抜け止めリング72は、検査気体供給管70を栓位置調整ネジ軸32の中空部324から引き抜く方向に引いて、
図5に示すように、第一封止栓40の先端面40aに着座すると、検査気体供給管70の引き抜き方向の移動を規制する。また、抜け止めリング72は、
図5に示すように第一封止栓40の先端面40aに着座した状態では、先端面40aの弾性変形により先端面40aに気密に密着する。
【0054】
気体供給装置81は、検査気体供給管70を介して伝熱管11内に検査用ガスを圧送する装置である。この気体供給装置81は、
図3に示すように、検査気体供給管70の第一栓支持プラグ30から熱交換器10の外部に導出された他方の端部70bに接続されている。
【0055】
本実施形態における気体供給装置81は、検査気体供給管70を介して伝熱管11内に検査用ガスを圧送し、伝熱管11内の圧力が規定の検査気圧に達すると、検査気体供給管70の流路を閉状態にする弁機能部を内蔵している。
しかし、気体供給装置81とは別体に、気体供給装置81と圧力計83との間の検査気体供給管70に流路を開閉する開閉弁を装備するようにしてもよい。
【0056】
圧力計83は、
図3に示すように、気体供給装置81と熱交換器10との間において検査気体供給管70に接続されていて、検査気体供給管70が連通している伝熱管11内の圧力を検出する。
【0057】
以上に説明した本実施形態の熱交換器における伝熱管漏洩検査治具は、
図3に示すように、漏洩検査をする伝熱管11の開口に対向する第二アクセスネジ孔16bに、第一栓支持プラグ30を螺合させることにより、第一封止栓40が漏洩検査をする伝熱管11の一方の開口を塞ぐことができる。そして、一方の開口を塞いだ伝熱管11の他方の開口に対向する第一アクセスネジ孔14bに、第二栓支持プラグ50を螺合させることにより、第二封止栓60が漏洩検査をする伝熱管11の他方の開口を塞ぐことができる。このように、漏洩検査する伝熱管11の両端の開口を第一封止栓40と第二封止栓60で塞ぐことで、伝熱管11内を第一封止栓40を貫通する検査気体供給管70のみに連通した閉空間にする。この状態において、検査気体供給管70を介して閉空間の伝熱管11内に検査用ガスを圧送して、伝熱管11内が所定の検査気圧に到達したら検査気体供給管70を閉じる。その後、伝熱管11内の気圧が低下するか否かを圧力計83で監視することで、伝熱管11における漏洩の有無を検知することができる。あるいは、伝熱管11から検査用ガスが漏洩しているときに発生する漏れ音により、伝熱管11における漏洩の有無を検知することができる。
【0058】
このように、熱交換器10における伝熱管漏洩検査治具は、第一封止栓40と、第一栓支持プラグ30と、第二封止栓60と、第二栓支持プラグ50と、第一栓支持プラグ30及び第一封止栓40を貫通して伝熱管11内に連通する検査気体供給管70と、の少ない構成部品で、伝熱管11内に検査ガスを封入可能な状況を設定することができる。従って、伝熱管漏洩検査治具としての構成が比較的簡易な構成となる。
【0059】
また、構成部品が少ない分、伝熱管11の漏洩検査を行う際の組み付け等の作業も少なくて済む。しかも、第一封止栓40及び第二封止栓60による伝熱管11の開口の封止は、第一栓支持プラグ30を熱交換器10を第二アクセスネジ孔16bに螺合させ、第二栓支持プラグ50を熱交換器10の第一アクセスネジ孔14bに螺合させること可能である。そのため、大型部品である熱交換器10の第一ヘッドカバー14や第二ヘッドカバー16を取り外す操作も必要無い。従って、伝熱管11の漏洩検査を行う際の作業が容易になる。
【0060】
また、本実施形態の伝熱管漏洩検査治具の場合、伝熱管11内に連通する検査気体供給管70の端部に気体供給装置81が接続されているため、第一封止栓40及び第二封止栓60により両端の開口を封止した伝熱管11内に検査用ガスを供給することが容易になり、伝熱管11内を簡単に規定の検査気圧に設定することができる。
更に、本実施形態の伝熱管漏洩検査治具の場合、検査気体供給管70には、伝熱管11内の圧力を検出する圧力計83が装備されているため、伝熱管11内を規定の検査気圧に設定した後、圧力計83を監視し、圧力の降下の有無や漏れ音の有無を確認することで、簡単に伝熱管11における漏洩の有無を検知することができる。
更に、本実施形態の伝熱管漏洩検査治具の場合、気体供給装置81や圧力計83が熱交換器10の外部に導出した検査気体供給管70に接続される構成のため、検査気体供給管70へのこれらの気体供給装置81や圧力計83の接続作業も容易になる。
【0061】
また、本実施形態の伝熱管漏洩検査治具の場合、第一栓支持プラグ30及び第二栓支持プラグ50の第一封止栓40又は第二封止栓60の位置は、栓支持プラグ本体31に対して栓位置調整ネジ軸32,32Aを時計方向又は反時計方向に回動させることで、自由に調整することができる。そのため、組立誤差等で、第一アクセスネジ孔14bや第二アクセスネジ孔16bと伝熱管11の開口端との間の離間距離がばらつく場合でも、栓支持プラグ30,50をアクセスネジ孔14b,16bに螺合させたときに、第一封止栓40や第二封止栓60の位置を修正することができ、第一封止栓40及び第二封止栓60によって伝熱管11の両端を確実に封止することが可能になる。
【0062】
なお、本発明の熱交換器における伝熱管漏洩検査治具は、前述した実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形,改良等が可能である。
例えば、第二栓支持プラグ50において、栓支持プラグ本体31に螺合する栓位置調整ネジ軸32Aは、中実のネジ軸であったが、第一栓支持プラグ30で使用されている筒状の栓位置調整ネジ軸32を共用することも可能である。その場合、第二栓支持プラグ50に接続される第二封止栓60を、接着剤等により栓位置調整ネジ軸32の先端面326に気密に固定するとよい。
【0063】
また、以上の実施形態では、直管を伝熱管とした多管式熱交換器に検査治具を適用した例であるが、本発明は、これに限定させず、Uチューブを伝熱管とした多管式熱交換器に適用してもよい。