特許第6000135号(P6000135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000135
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両
(51)【国際特許分類】
   B60K 6/40 20071001AFI20160915BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20160915BHJP
   B60K 6/543 20071001ALI20160915BHJP
   B60K 6/38 20071001ALI20160915BHJP
   F16H 9/18 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   B60K6/40ZHV
   B60K6/48
   B60K6/543
   B60K6/38
   F16H9/18 A
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-2885(P2013-2885)
(22)【出願日】2013年1月10日
(65)【公開番号】特開2014-133489(P2014-133489A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2015年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180507
【弁理士】
【氏名又は名称】畑山 吉孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137590
【弁理士】
【氏名又は名称】音野 太陽
(72)【発明者】
【氏名】別所 弘樹
【審査官】 増子 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−011819(JP,A)
【文献】 特開2005−059788(JP,A)
【文献】 特開平08−266012(JP,A)
【文献】 特開2000−142135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 − 6/547
B60W 10/00 − 20/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の車輪に駆動力を伝える原動部に、
エンジンと、
モータと、
駆動回転体と、従動回転体と、前記駆動回転体を一体回転可能に支持する第1軸部材と、前記従動回転体を一体回転可能に支持する第2軸部材と、前記駆動回転体および前記従動回転体に亘って巻回された無端ベルトを有するベルト式無段変速装置と、
前記エンジンおよび前記モータからの動力が前記ベルト式無段変速装置を介して伝達され、伝達された動力を左右一対の前記車輪に出力するミッションケースと、
前記エンジンから前記第1軸部材への動力伝達経路に介在された遠心クラッチと、を備え、
前記モータが、前記駆動回転体を挟んで前記エンジンの反対側に配置され、前記モータの駆動力が前記第1軸部材に入力されるように構成され
前記遠心クラッチが前記エンジンと前記駆動回転体との間に配置されると共に、前記遠心クラッチを収容するクラッチケースが前記エンジンに支持される状態で備えられており、
前記モータの駆動軸が前記第1軸部材と同軸状に配置されており、
前記駆動回転体と前記モータとの間と、前記クラッチケースとに亘って配置され、前記クラッチケースに取付けられた支持ブラケットを備え、
前記支持ブラケットのうちの前記駆動回転体と前記モータとの間に位置する端部に、前記駆動軸と前記第1軸部材とが一体回転自在に支持されており、
前記端部に前記モータが取付けられているハイブリッド車両。
【請求項2】
前記原動部は、左右一対の前記車輪の間に配備されている請求項1に記載のハイブリッド車両。
【請求項3】
前記ベルト式無段変速装置、前記支持ブラケット及び前記モータを収納するケース部材を備えており、
前記モータのケーシングにおける前記駆動軸が突出する側と反対側の端部と、前記ケース部材の内面とが空間を挟んで対向している請求項1又は2に記載のハイブリッド車両。
【請求項4】
前記ケース部材は、車体側に支持されるケース本体と、前記ケース本体に対して分離自在に支持されるカバー体とを備えている請求項3に記載のハイブリッド車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対の車輪に駆動力を伝える原動部に、エンジンと、モータと、ベルト式無段変速装置と、エンジンおよびモータからの動力が前記無段変速装置を介して伝達され、伝達された動力を左右一対の前記車輪に出力するミッションケースとを備えたハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両において、従来から、燃費の向上や排ガス量の低減等を図る目的から、ガソリンエンジンに加えて、補助動力用のモータを備えたハイブリッド車両が提案されている。
【0003】
特許文献1には、エンジン、モータ、および、ベルト式無段変速装置等を備えたスクータ用エンジンユニットが開示されている。このエンジンユニットにおいて、エンジンのクランク軸に駆動プーリが装着され、駆動プーリおよび従動プーリに亘って、ベルトが巻回されている。従動プーリは遠心クラッチを介して減速駆動機構の駆動軸に連結されている。また、遠心クラッチの従動側であるクラッチアウタの外周と伝動ケースの遠心クラッチ収容部の内周との間にモータが介装されている。
上記構成により、エンジンの駆動力がベルト式無段変速装置、減速駆動機構の駆動軸等を介して後輪に伝導される。車両の走行負荷が大きい場合には、上記に加えモータが駆動されて、モータからの駆動力が後輪に伝達される。また、減速時および制動時の回生エネルギーがモータにより回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−080956号公報(例えば、図3を参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のエンジンユニットにおいては、遠心クラッチの従動側であるクラッチアウタの外周と電動ケースの遠心クラッチ収容部の内周との間にモータが介装されていることから、この部分の径が大きくなるという問題がある。
ところで、このようなハイブリッド車両においては、従来からのエンジンにより駆動される車両の仕様を大きく変更することなく、容易にモータを配置することが可能な構成が望まれる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるハイブリッド車両は、
左右一対の車輪に駆動力を伝える原動部に、
エンジンと、
モータと、
駆動回転体と、従動回転体と、前記駆動回転体を一体回転可能に支持する第1軸部材と、前記従動回転体を一体回転可能に支持する第2軸部材と、前記駆動回転体および前記従動回転体に亘って巻回された無端ベルトを有するベルト式無段変速装置と、
前記エンジンおよび前記モータからの動力が前記ベルト式無段変速装置を介して伝達され、伝達された動力を左右一対の前記車輪に出力するミッションケースと、
前記エンジンから前記第1軸部材への動力伝達経路に介在された遠心クラッチと、を備え、
前記モータが、前記駆動回転体を挟んで前記エンジンの反対側に配置され、前記モータの駆動力が前記第1軸部材に入力されるように構成され
前記遠心クラッチが前記エンジンと前記駆動回転体との間に配置されると共に、前記遠心クラッチを収容するクラッチケースが前記エンジンに支持される状態で備えられており、
前記モータの駆動軸が前記第1軸部材と同軸状に配置されており、
前記駆動回転体と前記モータとの間と、前記クラッチケースとに亘って配置され、前記クラッチケースに取付けられた支持ブラケットを備え、
前記支持ブラケットのうちの前記駆動回転体と前記モータとの間に位置する端部に、前記駆動軸と前記第1軸部材とが一体回転自在に支持されており、
前記端部に前記モータが取付けられている。
【0007】
上記構成によれば、ベルト式無段変速装置を挟んで一方側にエンジンが配置され、他方側にモータが配置され、ベルト式無段変速装置に対して、一方側からエンジンの駆動力が入力され、他方側からモータの駆動力が入力されることになる。一般的に、ベルト式無段変速装置のエンジンとは反対の側はスペースに余裕がある場合が多く、モータを容易に配置することができる。
また、上記構成によれば、モータの動力が第1軸部材に入力されるので、モータからの駆動力についても、エンジンからの駆動力と同様に、ベルト式無段変速装置を介した変速動力としてミッションケースに伝導することができる。
【0008】
上記構成によれば、前記モータの駆動軸が前記第1軸部材と同軸状に配置され、前記駆動軸と前記第1軸部材とが一体回転する。つまり、モータからベルト式無段変速装置への動力伝達のために別途に動力伝達機構等を設ける必要がなく、構成を簡素化することができる。
【0009】
上記構成によれば、前記第1軸部材の前記モータ側の端部を回転可能に支持する支持ブラケットを備え、前記支持ブラケットに前記モータが取り付けられている。つまり、第1軸部材のための支持ブラケットを利用して、モータを確実に取り付けることができる。
本発明の好適な実施例の一つでは、前記原動部は、左右一対の前記車輪の間に配備されている。
【0010】
本発明の好適な実施例の一つでは、前記ベルト式無段変速装置、前記支持ブラケット及び前記モータを収納するケース部材を備えており、前記モータのケーシングにおける前記駆動軸が突出する側と反対側の端部と、前記ケース部材の内面とが空間を挟んで対向している。つまり、ケース部材の内部には、ベルト式無段変速装置を冷却するための冷却風が導入される場合がある。この場合、ケース部材の内部にモータが配置されることにより、この冷却風を有効に利用して、モータを冷却することができる。
本発明の好適な実施例の一つでは、前記ケース部材は、車体側に支持されるケース本体と、前記ケース本体に対して分離自在に支持されるカバー体とを備えている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のハイブリッド車両の一例であるユーティリティービークルの側面図である。
図2】ユーティリティービークルの伝動構成を示す平面図である。
図3】エンジン、モータ、ベルト式無段変速装置等の配置を示す側面図である。
図4】エンジン、モータ、ベルト式無段変速装置等の配置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ここでは、ハイブリット車両の一例として、作業車の一種であるユーティーティービークルを例に説明する。
図1図2に示すように、ユーティーティービークル(以下、作業車と称する)は、操向操作自在な左右一対の前車輪1と、左右一対の後車輪2とを車体3に備え、この車体3の中央部に運転部10を備え、車体3の後部に荷台4を備え、この荷台4の下方位置に原動部30を備える。
【0013】
この作業車は、原動部30からの駆動力を前車輪1と後車輪2とに伝える4輪駆動型に構成され、農作業や運搬作業等の多目的の作業に使用される。前記運転部10を取り囲む位置には、運転部10を保護する保護フレーム11が備えられている。
【0014】
前記荷台4は、前端側を上昇させて積載物をダンプ式に排出できる機能を有するものであり、その後端位置が軸芯を中心にして揺動自在に車体3に支持されている。また、荷台4の前端側を昇降作動させる油圧式のアクチュエータ(図示せず)が備えられている。
【0015】
前記運転部10には、運転者が着座する運転座席12と、前車輪1を操向制御するステアリングホイール13と、変速レバー14と、走行速度を制御するアクセルペダル15と、前車輪1及び後車輪2のブレーキ装置17を操作するブレーキペダル16とが備えられている。尚、運転座席12に隣接して助手席が配置されるものであるが、この運転部10には、横長の単一のシートベースと、横長の単一のシートバックとで成るベンチシートが備えられている。
【0016】
前記変速レバー14は走行速度の設定と、前進と後進との切換を単一のレバー操作で実現するものであるが、例えば、変速を行うレバーと、前進と後進との切換を行う前後進レバーとの2本のレバーを運転部10に備えても良い。
【0017】
図2および図3に示すように、原動部30には空冷式のエンジンEと、モータと、乾式のベルト無段変速装置32と、ミッションケース33とが備えられている。ミッションケース33にはギヤ変速機構(図示せず)と差動機構(図示せず)とが内蔵されている。このミッションケース33の下端部には差動機構からの駆動力を後車輪2に伝える左右一対の後輪駆動軸34と、この後輪駆動軸34を収容する後車軸ケース35とが備えられている。
【0018】
ミッションケース33の下端部で前方に突出する動力取出軸36が備えられている。車体3の下部には動力取出軸36の駆動力が伝えられる中間軸37が備えられ、車体3の前部には中間軸37の駆動力が伝えられる差動ケース38に伝えられ、この差動ケース38の駆動力を前車輪1に伝える前輪駆動軸39が備えられている。
【0019】
ミッションケース33の動力取出軸36と中間軸37との間にカルダンジョイント等の自在継手が介装され、これと同様に、前後の中間軸37の間、及び、中間軸37と差動ケース38の入力軸との間にも自在継手が備えられている。また、差動ケース38の出力軸と前輪駆動軸39との間にカルダンジョイント等の自在継手が介装され、これと同様に、前輪駆動軸39と前車輪1の車軸との間にも自在継手が介装されている。
【0020】
図面には示していないが、ミッションケース33には動力取出軸36に駆動力を伝える伝動状態と駆動力を遮断する遮断状態とに切換自在なクラッチ機構を備えている。このクラッチ機構は運転者の操作により切換が可能となるものであり、伝動状態に設定することで、後車輪2と前車輪1とを同時に駆動する4輪駆動状態が現出し、クラッチ機構を遮断状態に設定することで後車輪2のみを駆動する2輪駆動状態が現出する。
【0021】
尚、左右一対の前輪駆動軸39の軸端と、左右一対の後輪駆動軸34の軸端とにはブレーキ装置17が備えられている。これらのブレーキ装置17は、前記ブレーキペダル16の操作により前車輪1と後車輪2とに制動力を作用させるように機能する。
【0022】
前記ミッションケース33のギヤ変速機構(図示せず)は、前記変速レバー14の操作によって操作されるものである。このギヤ変速機構は、変速レバー14の操作に従い、車体3の走行速度の変更と、走行方向の切換(前進と後進との切換)を実現する。
【0023】
図2および図3に示すように、原動部30にはクランク軸31Cを横向き姿勢にしてエンジンEが配置されている。クランク軸31Cの後方に隣接する位置に入力軸33Aを横向き姿勢にしてミッションケース33が配置されている。このミッションケース33の後方に横に長い姿勢のマフラー40(図1を参照)が配置されている。エンジンEとミッションケース33との側部位置にベルト無段変速装置32が配置されている。ベルト無段変速装置32を挟んでエンジンEおよびミッションケー33とは反対側にモータMが配置されている。
【0024】
図3に示すように、ベルト無段変速装置32は、ベルト巻回径の変更が可能な駆動プーリ61(本発明の駆動回転体に相当)と、ベルト巻回径の変更が可能な従動プーリ62(本発明の従動回転体に相当)と、駆動プーリ61および従動プーリ62に亘って巻回されたゴム製の無端ベルト63を有する。これらは、変速ケース64に収容されている。尚、無端ベルト63として金属ベルトを用いても良い。
【0025】
エンジンEのクランク軸31Cから回転駆動力が伝えられる遠心クラッチ65が備えられ、この遠心クラッチ65の出力軸65A(本発明の第1軸部材に相当)に駆動プーリ61が備えられている。出力軸65Aはエンジン側の端部近傍部分がクラッチケース52に設けられた軸受103により回転自在に支持され、モータM側の端部近傍部分が支持ブラケット70に設けられた軸受102により回転自在に支持されている。ミッションケース33の入力軸33A(本発明の第2軸部材に相当)には従動プーリ62が備えられている。遠心クラッチ65の出力軸65Aがクランク軸31Cと同軸芯上に配置されている。
【0026】
前記遠心クラッチ65はクランク軸31Cの回転速度が設定値未満である場合に遮断状態にあり、クランク軸31Cの回転力を出力軸65Aに伝達しない。また、クランク軸31Cの回転速度が設定値を超える場合には連結状態に達し、クランク軸31Cの回転力を出力軸65Aに伝える作動を行う。
【0027】
駆動プーリ61は、出力軸65Aの基端側(エンジンEに近接する側)に配置される固定シーブ61Aと、出力軸65Aの先端側に配置される可動シーブ61Bとを備えている。また、出力軸65Aの突出端には可動シーブ61Bの位置を調節する巻回径調節機構66を備えている。
【0028】
この巻回径調節機構66は、出力軸65Aの回転速度が高速化するほど可動シーブ61Bを固定シーブ61Aに接近する方向に移動させて駆動プーリ61のベルト巻回径の拡大を図る。これとは逆に、出力軸65Aの回転速度が低速化するほど可動シーブ61Bを固定シーブ61Aから離間させる方向に移動させ駆動プーリ61のベルト巻回径の縮小を図る。
【0029】
従動プーリ62は、入力軸33Aの基端側(ミッションケース33に近接する側)に配置される可動シーブ62Aと、入力軸33Aの先端側に配置される固定シーブ62Bと、可動シーブ62Aを固定シーブ62Bに接近させる方向に付勢力を作用させるコイルバネ62Cとを有している。
【0030】
このコイルバネ62Cは、無端ベルト63に作用する張力に対応して従動プーリ62の可動シーブ62Aの位置を決めるための付勢力を作用させる。つまり、駆動プーリ61のベルト巻回径が変化した場合には、無端ベルト63に作用する張力が変化する。この張力が増大するほど可動シーブ62Aを固定シーブ62Bから離間させ、張力が減少するほど可動シーブ62Aを固定シーブ62Bに接近させる作動を実現する。従って、駆動プーリ61のベルト巻回径が小さい場合には、従動プーリ62のベルト巻回径が大きい値に設定され、これとは逆に、駆動プーリ61のベルト巻回径が拡大した場合には、従動プーリ62のベルト巻回径が小さい値に設定される。
【0031】
図3および図4に示すように、モータMは、駆動プーリ61を挟んでエンジンEの反対側に配置されている。モータMは、駆動軸100が横方向(駆動プーリ61側)を向くように配置されている。本実施形態では、モータMは支持ブラケット70の外側端部に、例えばボルト等により取り付けられている。また、駆動軸100は出力軸65Aと同軸芯状に配置されている。出力軸65Aが駆動軸100に延長され、駆動軸100と出力軸65Aとに亘ってカプラ101が設けられ、カプラ101と駆動軸100とおよびカプラ101と出力軸65Aとがスプライン嵌合されている。カプラ101が支持ブラケット70に設けられた軸受102に支持されることにより、駆動軸100と出力軸65Aとが一体回転自在に支持される。
【0032】
図3に示すように、変速ケース64(本発明のケース部材に相当)は、車体側(ミッションケース33とエンジンEとの少なくとも一方)に支持されるケース本体64Aと、このケース本体64Aに対して分離自在に支持されるカバー体64Bとを備えている。また、遠心クラッチ65を取り囲むクラッチケース52がエンジンEのシリンダブロックに連結され、このクラッチケース52が変速ケース64のケース本体64Aに連結されている。また、ケース本体64Aおよびクラッチケース52に対して、支持ブラケット70が、例えばボルト等により、取り付けられている。
【0033】
カバー体64Bは、モータMと、駆動プーリ61と、巻回径調節機構66と、従動プーリ62とを収容し得る形状で、外周に副フランジ面64Gを形成した構造を有している。この変速ケース64では、前記主フランジ面64Eと副フランジ面64Gとの間にゴム等のシール材(図示せず)を挟み込む形態で、ケース本体64Aとカバー体64Bとをボルト等(図示せず)によって連結されている。
【0034】
上記のとおり、エンジンの一側方から車体幅方向における外側に向かって、遠心クラッチ65、駆動プーリ61、モータMが、この順序で配置され、モータMの外側に変速ケース64(カバー体64B)が位置する。
【0035】
図3に示すように、変速ケース64の内部には、冷却風が導入される。具体的には、クラッチケースに吸気部51が形成され、エアクリーナ等を介した冷却風が吸気部51から吸引され、冷却風導入口64Cを介して変速カバー64内に導入される。
【0036】
ここで、前述した冷却風導入口64Cは、前記出力軸65Aを取り囲む領域に形成されている。また、駆動プーリ61の固定シーブ61Aのうち冷却風導入口64Cに対向する部位には多数の吸気用フィン61Cが形成されている。可動シーブ62A、固定シーブ62Bには排気用フィンとして機能し得る補強用の多数のリブ62Dが形成されている。
【0037】
このような構成から、駆動プーリ61の駆動回転に伴い吸気用フィン61Cが負圧を作り出し、この負圧により冷却風が冷却風導入口64Cから変速ケース64の内部に吸引される。このように吸引された冷却風は変速ケース64の内部を駆動プーリ61から従動プーリ62の方向に流れ、このように流れる際に、駆動プーリ61、従動プーリ62、無端ベルト63、およびモータMに接触して熱を奪い、これらを冷却する。冷却風は、ケース本体64Aにおける従動プーリ62の下方側に形成された排気部68より変速ケース64外に排気される。このように、モータMを変速ケース64内に配置することにより、ベルト無段変速装置32のための冷却風により、モータMを効果的に冷却することができる。
【0038】
以下、この作業車の駆動制御の一例を説明する。この作業車は、低速度時(低回転速度時)は、モータMにより駆動され、高速度時(高回転速度時)はエンジンE(もしくは、エンジンEおよびモータM)により駆動される。具体的には、アクセルペダル15を操作すると給電ユニット(図示しない)よりモータMに対して給電が行われ、モータMが回転駆動する。アクセルペダル15が所定の操作位置(第1所定位置)に操作されるまでは、エンジンEは駆動せず、モータMのみがアクセルペダル15の操作位置に対応した回転速度で駆動する。この際、エンジンEは駆動していないため、エンジンEの回転速度が設定
値未満であり、遠心クラッチ65は遮断状態にある。このため、モータMの回転駆動力が、ベルト式無段変速装置32を介してミッションケース33の入力軸33Aに入力され、作業車が駆動される。
【0039】
アクセルペダル15が所定の操作位置(第1所定位置)に操作されるとエンジンが起動し、アクセルペダル15の操作位置に対応した回転速度で回転駆動される。ただし、アクセルペダル15が、遠心クラッチ65が連結状態となるエンジンの回転速度の設定値に対応した操作位置(第2所定位置)に操作されるまでは、エンジンの回転速度は設定値未満であり、遠心クラッチ65は遮断状態である。このため、エンジンE(クランク軸31C)の回転駆動力は、出力軸65Aには伝達されない。このため、上記と同様に、モータMの回転駆動力が、ベルト式無段変速装置32を介してミッションケース33の入力軸33Aに入力され、作業車が駆動される。アクセルペダル15の操作位置が第2所定位置に達するとエンジンEの回転速度が設定値に達し、遠心クラッチ65が連結状態となり、エンジン(クランク軸31C)の回転駆動力が出力軸65Aに伝達される。アクセルペダル15が第2所定位置を超えて操作された状態では、エンジンEおよびモータMがアクセルペダル15の操作位置に対応した回転速度で回転駆動され、エンジンEおよびモータMの回転駆動力が、ベルト式無段変速装置32を介してミッションケース33の入力軸33Aに入力され、作業車が駆動される。
【0040】
作業車の制動時には、エンジンンEの駆動が停止され(エンジンの回転速度が設定値未満となり)、遠心クラッチ65が遮断状態となり、モータMによる回生ブレーキにより、制動や減速が行われる。この際に発生する電力が蓄電ユニットに蓄電される。
【0041】
上記において、アクセルペダル15の操作量が小さい状態では、出力軸65Aが低速で回転するため、巻回径調節機構66が、駆動プーリ61のベルト巻回径を小さい値に設定し、これと連係して従動プーリ62のベルト巻回径が大きい値に設定される。これによりモータMやエンジンEの駆動力を低速度(大きい減速比)でミッションケース33の入力
軸33Aに伝えられる。また、アクセルペダル15の操作量が大きくなると、出力軸65Aの高速回転化に伴い巻回径調節機構66が、駆動プーリ61のベルト巻回径を拡大し、これと連係して従動プーリ62のベルト巻回径が小さい値に設定される。これによりエンジンEやモータの駆動力が高速度(低い減速比)でミッションケース33の入力軸33A
に伝えられる。
【0042】
なお、上記第1所定位置および第2所定位置を同じ位置に設定してもよい。この場合、エンジンEが、上記設定値の回転速度で起動され、エンジンEおよびモータMの回転駆動力が、ベルト式無段変速装置32を介してミッションケース33入力軸33Aに入力され、作業車が駆動される。
【0043】
また、アクセルペダル15が、第2所定位置に達した時点でもしくは、第2所定位置をある程度超えた第3所定位置に達した時点で、モータMへの給電を停止してもよい。この場合、モータはエンジン(クランク軸31C)の回転駆動力により回転し、発電機として機能する。得られた、電力を蓄電ユニット(図示しない)に蓄電してもよい。
【0044】
上記のモータMおよびエンジンの起動、並びに、モータMおよびエンジンEの回転速度の制御は、例えば、コントロールユニット(図示しない)により行われる。具体的には、アクセルペダル15に例えば回転センサ等の操作位置検出手段が設けられている。コントロールユニットは、操作位置検出手段からの検出信号に基づいて上記制御を行う。なお、上記の実施形態では、単一のアクセルペダル15により操作を行う場合を例に説明したが、モータMのためのアクセルペダル15とエンジンEのためのアクセルペダル15とを位相を異ならせて設けて、上記の第1所定位置までは、モータMのためのアクセルペダル15のみが操作され、第1所定位置を超えるとモータMのためのアクセルペダル15とエンジンEのためのアクセルペダル15の両方が操作されるように構成してもよい。
【0045】
なお、エンジンEの回転速度の制御は、上記に限られず、例えば、機械式のガバナーを用いたものであってもよい。単一のアクセルペダル15を用いる場合、このアクセルペダル15にエンジンEの回転速度を制御するためのガバナーが連動されるとともに、モータMの回転速度を制御するための操作位置検出手段が設けられる。モータMのためのアクセルペダル15とエンジンEのためのアクセルペダル15とを別途に設ける場合には、エンジンEのためのアクセルペダル15にガバナーが連動され、モータMのためのアクセルペダル15に操作位置検出手段が設けられる。
【0046】
〔別実施の形態〕
上記の実施例において、本発明を、ユーティリティービークルに適用した場合を例に説明したが、これに限られるものではない。本発明は、ベルト式無段変速装置を備えた作業車等、車両全般に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、ユーティリティービークルをはじめ、ベルト式無段変速装置を備えている作業車等の車両全般に利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
車輪(後車輪)
30 原動部
32 ベルト式無段変速装置
33 ミッションケース
33A 入力軸(第2軸部材)
52 クラッチケース
61 駆動プーリ(駆動回転体)
62 従動プーリ(従動回転体)
63 無端ベルト
64 変速ケース(ケース部材)
65 遠心クラッチ
65A 出力軸(第1軸部材)
70 支持ブラケット
100 駆動軸
E エンジン
M モータ
図1
図2
図3
図4