(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000180
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】レーザ計測方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/59 20060101AFI20160915BHJP
G01N 21/15 20060101ALI20160915BHJP
G01N 21/39 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
G01N21/59 Z
G01N21/15
G01N21/39
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-72709(P2013-72709)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-196949(P2014-196949A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2014年12月17日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土橋 晋作
(72)【発明者】
【氏名】塚原 千幸人
(72)【発明者】
【氏名】杉山 友章
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 翼
【審査官】
横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−264146(JP,A)
【文献】
特開昭57−154034(JP,A)
【文献】
特開2000−111475(JP,A)
【文献】
特開2011−002232(JP,A)
【文献】
米国特許第04443072(US,A)
【文献】
特開昭50−123489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ送光部からのレーザ光を測定場に導入するレーザ導入手段と、
導入された前記レーザ光を前記測定場より、レーザ受光部側へ導出するレーザ導出手段とを具備してなり、
前記測定場内が負圧であると共に、
前記レーザ導入手段及び前記レーザ導出手段が、
前記レーザ光を透過するレーザ光透過窓と、
前記レーザ光透過窓を支持する窓枠と、
前記窓枠を所定間隔の隙間を有して前記測定場の壁面に取付ける取付フランジとを有するレーザ計測装置を用いたレーザ計測方法であって、
前記窓枠に煤塵が堆積した場合に、前記窓枠の前記隙間の間隔を前記所定間隔より大きくして外気の流入量を増大して前記煤塵を除去する工程を含むことを特徴とするレーザ計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばボイラプラント内のガス配管内のガス濃度を計測する方法として、半導体レーザ吸収法による方法が確立され、JIS化されている(JISB7993:非特許文献1)。
【0003】
この半導体レーザ吸収法によるレーザ装置では、ガス配管(主煙道)からガスの一部を分岐したガスを導入するサンプル配管に対し、レーザ装置からレーザ光を照射し、被測定ガス(例えばアンモニア)の成分・濃度等を分析している。
例えば第1の検出器では、参照光(I
0)を求め、第2の検出器ではサンプル配管内の透過した光の強度(I)を求め、透過率T=(I/I
0)を求めており、この分析手法により、様々なガス成分濃度のオンライン分析が可能となってきている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】JISB7993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、レーザ手段は、レーザ発振部とレーザ受光部とを用いているので、レーザ光を計測場に導入する場合、例えば石英等のレーザ導入及び導出用の石英窓を用いている。
【0006】
また、計測対象であるボイラプラントのガス環境が煤塵等が存在して劣悪であるので、石英窓の内側から、例えば窒素ガス等を吹き付けるパージ手段が設置されている。しかしながら、このパージ手段は、煤塵が多く堆積する箇所では、大型のコンプレッサ等の設備がさらに必要となり、また計測箇所が多くなる場合には、計測に伴う副次的なコストが嵩む、という問題がある。
【0007】
本発明は、前記問題に鑑み、パージ手段を用いることなくレーザの導入及び導出ができるレーザ計測装置
及びレーザ計測方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための本発明の第
1の発明は、レーザ走光部からのレーザ光を測定場に導入するレーザ導入手段と、導入された前記レーザ光を前記測定場より、レーザ受光部側へ導出するレーザ導出手段とを具備してなり、前記測定場内が負圧であると共に、前記レーザ導入手段及び前記レーザ導出手段が、前記レーザ光を透過するレーザ光透過窓と、前記レーザ光透過窓を支持する窓枠と、前記窓枠を所定間隔の隙間を有して前記測定場の壁面に取付ける取付フランジとを有するレーザ計測装置を用いたレーザ計測方法であって、前記窓枠に煤塵が堆積した場合に、前記窓枠の前記隙間の間隔を前記所定間隔より大きくして外気の流入量を増大して前記煤塵を除去する工程を含むことを特徴とするレーザ計測方法にある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、窓枠と取付フランジとの間に隙間を設けることにより、負圧状態の測定場内に、隙間を介して外部から外気が流入する。この結果、外気が隙間を通過する流入流れを形成し、この流入流れにより、排ガスが石英窓の内面側へ流入することが妨げられ、この結果石英窓の内面汚れが発生することが解消される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施例1に係るレーザ計測装置の概略図である。
【
図2】
図2は、実施例2に係るレーザ計測装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
【実施例1】
【0013】
図1は、実施例1に係るレーザ計測装置の概略図である。
図1に示すように、本実施例に係るレーザ計測装置10Aは、レーザ走光部11からのレーザ光12を測定場である煙道13に導入するレーザ導入手段14と、導入されたレーザ光12を煙道13より、レーザ受光部15側へ導出するレーザ導出手段16とを具備してなり、煙道13内が負圧であると共に、レーザ導入手段14及びレーザ導出手段16が、レーザ光12を透過するレーザ光透過窓である石英窓21と、該石英窓21を支持する窓枠22と、窓枠22を所定間隔の隙間23を有して測定場である煙道13の壁面に取付手段であるボルト25を用いて取付ける取付フランジ24とを有するものである。
【0014】
窓枠22と取付フランジ24との間に隙間23を設けることにより、煙道13内部が負圧状態であるので、外気26は外部から煙道13内に流入する。
この結果、外気26が隙間23を通過する流入流れを形成する。
この流入流れにより、排ガス19が石英窓21の内面側へ流入することが妨げられ、この結果石英窓21の内面汚れが発生することが解消される。
【0015】
ここで、煙道13内の内圧が負圧(例えば200mmAq)の場合における、外気が隙間23を通過する流速は、5〜30m/s程度(好適には10〜15m/s)となる。また、計測場である煙道13内の負圧の範囲として、50〜500mmAq程度とするのが好ましい。
【0016】
この結果、本発明によれば、石英窓21の窓汚れが防止される。従来は、窓汚れ防止のために、大量の窒素パージを行うために大型のコンプレッサ等を有するガスパージ手段の設置が必要であったが、この設置を省略することができ、計測コストの低減を図ることができる。
【0017】
また、長期間に亙る計測では、パージ手段による窒素パージを行っても、微細な粉塵の付着により窓の透過率の低下があったが、本発明によれば、この透過率の低下も防止することができる。
【0018】
ここで、外気26の流入量の調整は、隙間23の間隔を調整することで適宜変更することができる。
例えば隙間23の間隔を大きくすると、外気26の流入量が大となる。これに対し、隙間23の間隔を小さくすると、外気26の流入量が小となる。
特に、石英窓21の内側の窓枠22のコーナ部22aに、煤塵が堆積した場合には、隙間23の間隔を大きくして、外気26の流入量を大として、堆積した煤塵を除去するようにしてもよい。
【0019】
本発明のレーザ計測装置10Aの設置は、例えば脱硝装置の煙道の後流側において、リークアンモニアを計測する際のレーザ計測に適用することができるが、脱硝装置のみならず、負圧環境下のガス成分のレーザ計測一般に適用することができる。
【0020】
ここで、レーザ計測において、例えばアンモニア(NH
3)濃度を計測するには、半導体レーザ(半導体素子:InGaAsを例示することができる。波長:1.5μm、出力:1mW程度のものを例示することができる。)を用いることができる。
また、窒素酸化物(NOx)を計測する場合には、量子カスケードレーザ(半導体素子:InGaAs/InAlAsを例示することができる。波長:5〜6μm、出力:1mW程度のものを例示することができる。)を用いることができる。
【0021】
また、アンモニア以外のガス成分として、SO
2(酸化硫黄)を計測する場合には、量子カスケードレーザ(波長:7.0〜7.5μmを例示することができる。)を用いることができる。さらに、ガス成分として、メタン(CH
4)を計測する場合には、半導体レーザ(半導体素子:InGaAsを例示することができる。波長:1.6μm、出力:1mW程度のものを例示することができる。)を用いることができる。
【0022】
また、赤外分光領域で計測しているが、本発明はこれに限定されず、可視・紫外領域での分光計測にも適用できる。
【実施例2】
【0023】
図2は、実施例2に係るレーザ計測装置の概略図である。なお、実施例1のレーザ計測装置の構成と同一部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図2に示すように、本実施例に係るレーザ計測装置10Bは、
図1に示す実施例1のレーザ計測装置10Aにおいて、さらにレーザ導入手段14と、レーザ導出手段16とを、各々覆うと共に、一部にフィルタ31を有するカバー32を設置するようにしている。なお、図中、符号33はカバー32を固定する固定ボルトを図示する。
【0024】
このカバー32を設置し、カバー32の一部に設けたフィルタ31を介して外気26を導入するので、外気26の汚れを除去し、清浄な外気26を煙道13内に導入することができる。
【0025】
また、複数のレーザ導入手段14を一つのカバー32で覆うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0026】
10A、10B レーザ計測装置
11 レーザ走光部
12 レーザ光
13 煙道
14 レーザ導入手段
15 レーザ受光部
16 レーザ導出手段
21 石英窓
22 窓枠
23 隙間
24 取付フランジ