(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態の航空機用タイヤについて説明する。
図1は、第1実施形態の航空機用タイヤ(以下、単に「タイヤ」と記載する。)10のトレッド12の展開図を示している。なお、
図1中の矢印Sはタイヤ10の周方向(以下、適宜「タイヤ周方向」と記載する。)を示し、矢印Xはタイヤ10の軸と平行な方向(以下、適宜「タイヤ軸方向」と記載する。)を示している。なお、タイヤ軸方向についてはタイヤ幅方向と読み替えてもよい。
図2、3中の矢印Yはタイヤ10の径方向(以下、適宜「タイヤ径方向」と記載する。)を示している。また、符号CLはタイヤ10のタイヤ軸方向の中心を通りタイヤ軸方向に直角な面である赤道面(以下、適宜「タイヤ赤道面」と記載する。)を示している。なお、本実施形態では、タイヤ軸方向に沿ってタイヤ赤道面CLに近い側を「タイヤ軸方向内側」、タイヤ軸方向に沿ってタイヤ赤道面CLから遠い側を「タイヤ軸方向外側」と記載する。
【0014】
また、
図1中の符号12Eは、トレッド12の接地端を示している。なお、ここでいう「接地端」とは、TRA(The Tire and Rim Association Inc.のYear Book)またはETRTO(The European Tyre and Rim Technical OrganisationのYear Book)の規格が適用される正規リム(標準リム)にタイヤを装着し、同規格に記載されている適用サイズにおける単輪の最大荷重(標準荷重)に対応する空気圧(標準内圧)を内圧として充填し、同規格に記載されている適用サイズにおける単輪の標準荷重を負荷したときのタイヤ軸方向最外側の接地点をいう。
【0015】
本実施形態のタイヤ10は、内部構造として従来公知の航空機用タイヤの内部構造と同様のものを用いることができる。このため、タイヤ10の内部構造に関しては説明を省略する。
【0016】
図1に示すように、タイヤ10の路面との接地部位を構成するトレッド12には、タイヤ周方向に延びる周方向溝14がタイヤ赤道面CLを挟んでタイヤ軸方向両側にそれぞれ設けられており、一対の周方向溝14間にタイヤ周方向に連続するリブ状のセンター陸部16が形成されている。なお、センター陸部16は、トレッド12のタイヤ赤道面CL上に形成されている。
【0017】
また、トレッド12には、タイヤ周方向に延びる周方向溝18が周方向溝14のタイヤ軸方向外側に設けられており、周方向溝14と周方向溝18との間にタイヤ周方向に連続するリブ状の中間陸部20が形成されている。
さらに、トレッド12には、周方向溝18のタイヤ軸方向外側にタイヤ周方向に連続するリブ状のショルダー陸部22が形成されている。
【0018】
図1に示すように、センター陸部16の幅(接地面幅)W1は、中間陸部20の幅W2及びショルダー陸部22の幅W3よりも広くなっている。ここで、センター陸部16の幅W1は、タイヤ軸方向断面において、センター陸部16の表面(踏面)16Aの延長線とセンター陸部16の両側壁(周方向溝14のセンター陸部16側の溝壁と同じ)16Bの各延長線との交点間をタイヤ軸方向に沿って測定した長さのタイヤ一周分の平均値である。
中間陸部20の幅W2は、タイヤ軸方向断面において、中間陸部20の表面(踏面)20Aの延長線と中間陸部20のタイヤ赤道面CL側の側壁(周方向溝14のセンター陸部16側の溝壁と同じ)20Bの延長線との交点と、中間陸部20の表面(踏面)20Aの延長線と中間陸部20の接地端12E側の側壁(周方向溝18の中間陸部20側の溝壁と同じ)20Bの延長線との交点との間をタイヤ軸方向に沿って測定した長さのタイヤ一周分の平均値である。
ショルダー陸部22の幅W3は、タイヤ軸方向断面において、ショルダー陸部22の表面(踏面)22Aの延長線とショルダー陸部22の側壁(周方向溝18のショルダー陸部22側の溝壁と同じ)22Bの延長線との交点と、接地端12Eとの間をタイヤ軸方向に沿って測定した長さのタイヤ一周分の平均値である。
なお、本実施形態のセンター陸部16は、本発明の第2陸部の一例であり、中間陸部20は、本発明の第1陸部の一例である。
【0019】
図1〜
図3に示すように、センター陸部16の両側壁16Bには、それぞれ凹部30がタイヤ周方向に複数配設されている。具体的には、凹部30は、側壁16Bにタイヤ周方向に間隔をあけて複数配設されている。なお、本実施形態では、
図1に示すように凹部30は、タイヤ周方向に一定の間隔P1で側壁16Bに配設されている。また、両側壁16Bに配設された凹部30はタイヤ周方向の同じ位置にそれぞれ配置されている。換言すると、本実施形態の両側壁16Bに配設された凹部30はタイヤ軸方向に沿って並んでいる。なお、本発明は上記構成に限定されず、両側壁16Bに配設された凹部30は、タイヤ周方向の異なる位置にそれぞれ配置されてもよい。
【0020】
また、凹部30は、センター陸部16の陸部高さ方向の中央よりもタイヤ径方向内側(
図2では、下側)から踏面16A側(
図2では、上側)に延びて、踏面16Aに開口している。すなわち、凹部30のタイヤ径方向内側の側面である凹壁面30E(言い換えると、凹部30の周方向溝14の溝底14A側の凹壁面30E)は、センター陸部16の陸部高さ方向の中央よりもタイヤ径方向内側に配置されている。なお、以下では、凹部30の側壁16Bの開口を壁面開口30Aと記載し、凹部30の踏面16Aの開口を踏面開口30Bと記載する。なお、本実施形態の凹部30は、本発明の第2凹部の一例である。
【0021】
図2、
図3に示すように、本実施形態の凹部30は、周方向長さA1が凹底部30Dから壁面開口30Aに向かって一定、かつタイヤ径方向に沿って一定とされている。また、凹部30は、軸方向長さB1がタイヤ周方向及びタイヤ径方向に沿って一定とされ、径方向長さC1がタイヤ周方向及びタイヤ軸方向に沿って一定とされている。すなわち、本実施形態の凹部30は、側壁16Bを正面視した場合(
図3参照)に、壁面開口30Aが略矩形状となっている。なお、本発明は上記構成に限定されず、凹部30は、側壁16Bを正面視した場合に、例えば、壁面開口30Aが三角形状、逆三角形状、台形状、逆台形状、またはフラスコ形状などの形状であっても構わない。つまり、本発明としては、凹部30の周方向長さA1、軸方向長さB1、及び、径方向長さC1が一定でなくてもよい。
なお、周方向長さA1は、凹部30のタイヤ周方向の両凹壁面30C間のタイヤ周方向に沿った間隔(長さ)であり、軸方向長さB1は、凹部30の壁面開口30Aから凹底部(凹部30の最深部)30Dまでのタイヤ軸方向に沿った長さであり、径方向長さC1は、凹部30の踏面開口30Bから凹壁面30Eまでのタイヤ径方向に沿った長さである。また、凹部30の軸方向長さB1は、センター陸部16の幅W1の1/4以下に設定されることが好ましい。
【0022】
中間陸部20の両側壁20Bには、それぞれ凹部32がタイヤ周方向に複数配設されている。具体的には、凹部32は、側壁20Bにタイヤ周方向に間隔をあけて複数配設されている。なお、本実施形態では、
図1に示すように、凹部32は、タイヤ周方向に一定の間隔P2で側壁20Bに配設されている。また、両側壁20Bに配設された凹部32はタイヤ周方向の同じ位置にそれぞれ配置されている。換言すると、本実施形態の両側壁20Bに配設された凹部32はタイヤ軸方向に沿って並んでいる。なお、本発明は上記構成に限定されず、両側壁20Bに配設された凹部32は、タイヤ周方向の異なる位置にそれぞれ配置されてもよい。
【0023】
また、凹部32は、中間陸部20の陸部高さ方向の中央よりもタイヤ径方向内側(
図2では、下側)から踏面20A側(
図2では、上側)に延びて、踏面20Aに開口している。すなわち、凹部32のタイヤ径方向内側の側面である凹壁面32Eは、中間陸部20の陸部高さ方向の中央よりもタイヤ径方向内側に配置されている。なお、以下では、凹部32の側壁20Bの開口を壁面開口32Aと記載し、凹部32の踏面20Aの開口を踏面開口32Bと記載する。なお、本実施形態の凹部32は、本発明の第1凹部の一例である。
【0024】
図2、
図3に示すように、本実施形態の凹部32は、周方向長さA2が凹底部32Dから壁面開口32Aに向かって一定、かつタイヤ径方向に沿って一定とされている。また、凹部32は、軸方向長さB2がタイヤ周方向及びタイヤ径方向に沿って一定とされ、径方向長さC2がタイヤ周方向及びタイヤ軸方向に沿って一定とされている。すなわち、本実施形態の凹部32は、側壁20Bを正面視した場合に、壁面開口32Aが略矩形状となっている。なお、本発明は上記構成に限定されず、凹部32は、側壁20Bを正面視した場合に、例えば、壁面開口32Aが三角形状、逆三角形状、台形状、逆台形状、またはフラスコ状などの形状であっても構わない。つまり、本発明としては、凹部32の周方向長さA2、軸方向長さB2、及び、径方向長さC2が一定でなくても構わない。なお、周方向長さA2は、凹部32のタイヤ周方向の両凹壁面32C間のタイヤ周方向に沿った間隔(長さ)であり、軸方向長さB2は、凹部32の壁面開口32Aから凹底部(凹部32の最深部)32Dまでのタイヤ軸方向に沿った長さであり、径方向長さC2は、踏面開口32Bから凹壁面32Eまでのタイヤ径方向に沿った長さである。また、凹部32の軸方向長さB2は、中間陸部20の幅W2の1/4以下に設定されることが好ましい。
【0025】
ショルダー陸部22の周方向溝18側の側壁22Bには、凹部34がタイヤ周方向に複数配設されている。具体的には、凹部34は、側壁22Bにタイヤ周方向に間隔をあけて複数配設されている。なお、本実施形態では、
図1に示すように、凹部34は、タイヤ周方向に一定の間隔P3で側壁22Bに配設されている。
【0026】
また、凹部34は、ショルダー陸部22の陸部高さ方向の中央よりもタイヤ径方向内側(
図2では、下側)から踏面22A側(
図2では、上側)に延びて、踏面22Aに開口している。すなわち、凹部34のタイヤ径方向内側の側面である凹壁面34E(言い換えると、凹部34の周方向溝18の溝底18A側の凹壁面34E)は、ショルダー陸部22の陸部高さ方向の中央よりもタイヤ径方向内側に配置されている。なお、以下では、凹部34の側壁22Bの開口を壁面開口34Aと記載し、凹部34の踏面22Aの開口を踏面開口34Bと記載する。
【0027】
図2、
図3に示すように、本実施形態の凹部34は、周方向長さA3が凹底部34Dから壁面開口34Aに向かって一定、かつタイヤ径方向に沿って一定とされている。また、凹部34は、軸方向長さB3がタイヤ周方向及びタイヤ径方向に沿って一定とされ、径方向長さC3がタイヤ周方向及びタイヤ軸方向に沿って一定とされている。すなわち、本実施形態の凹部34は、側壁22Bを正面視した場合に、壁面開口34Aが略矩形状となっている。なお、本発明は上記構成に限定されず、凹部34は、側壁22Bを平面視した場合に、例えば、壁面開口34Aが三角形状、逆三角形状、台形状、逆台形状、またはフラスコ状などの形状であっても構わない。つまり、本発明としては、凹部34の周方向長さA3、軸方向長さB3、及び、径方向長さC3が一定でなくても構わない。
なお、周方向長さA3は、凹部34のタイヤ周方向の両凹壁面34C間のタイヤ周方向に沿った間隔(長さ)であり、軸方向長さB3は、凹部34の壁面開口34Aから凹底部(凹部34の最深部)34Dまでのタイヤ軸方向に沿った長さであり、径方向長さC3は、踏面開口34Bから凹壁面34Eまでのタイヤ径方向に沿った長さである。また、凹部34の軸方向長さB3は、ショルダー陸部22の幅W3の1/4以下に設定されることが好ましい。
【0028】
本実施形態では、凹部30、凹部32、及び凹部34の各周方向長さA1、A2、A3がそれぞれ同じ長さとなっているが、本発明はこの構成に限定されず、例えば、各周方向長さA1、A2、A3がそれぞれ異なる長さであってもよい。また、各軸方向長さB1、B2、B3についてはそれぞれ異なる長さであっても、同じ長さであってもよく、各径方向長さC1、C2、C3がそれぞれ異なる長さであっても、同じ長さであってもよい。
【0029】
図1に示すように、センター陸部16の側壁16Bに配設された凹部30の数は、センター陸部16に隣接する中間陸部20の側壁20Bに配設された凹部32の数よりも多くなっている。ここで、本実施形態では、凹部30、32の各周方向長さA1、A2を同じ長さにしていることから、凹部30の間隔P1が凹部32の間隔P2よりも狭くなっている。また、中間陸部20の側壁16Bに配設された凹部32の数は、中間陸部20に隣接するショルダー陸部22の側壁22Bに配設された凹部34の数よりも多くなっている。ここで、本実施形態では、凹部32、34の各周方向長さA2、A3を同じ長さにしていることから、凹部32の間隔P2が凹部34の間隔P3よりも狭くなっている。
【0030】
図2に示すように、凹部30及び周方向溝14側の凹部32は、周方向溝14の溝底14Aからタイヤ径方向に間隔(好ましくは、1mm以上の間隔)をあけて配置されている。また、周方向溝18側の凹部32及び凹部34は、周方向溝18の溝底18Aからタイヤ径方向に間隔(好ましくは、1mm以上の間隔)をあけて配置されている。
【0031】
また、凹部30は、トレッド12の接地領域内に少なくとも一つ存在するようにセンター陸部16の側壁16Bに設けられている。なお、凹部30は、タイヤ10の周上12個所以上、より好ましくは、タイヤ周方向に2〜3cm間隔で配置されるとよい。なお、ここでいうトレッド12の接地領域とは、TRA規格またはETRTO規格において、タイヤ10の適用サイズにおける単輪の最大荷重に対応する空気圧を内圧として充填した状態で、上記最大荷重を負荷したときの接地領域をいう。
【0032】
図1に示すように、センター陸部16に配設された凹部30の凹底部30Dとセンター陸部16に隣接する中間陸部20に配設された凹部32の凹底部32Dは、タイヤ周方向の位置が互いに異なっている。つまり、凹部30の凹底部30Dと凹部32の凹底部32Dは、タイヤ軸方向に沿って並ばない、すなわち、タイヤ周方向の異なる位置(タイヤ周方向にずれた位置)に配置されている。なお、本発明は上記構成に限定されず、凹部30の凹底部30Dと凹部32の凹底部32Dがタイヤ周方向の同じ位置に配置されても構わない。また、凹部30の凹底部30Dと凹部34の凹底部34Dも、タイヤ周方向の位置が互いに異なっている。なお、本発明は上記構成に限定されず、凹部30の凹底部30Dと凹部34の凹底部34Dがタイヤ周方向の同じ位置に配置されても構わない。またさらに、凹部32の凹底部32Dと凹部34の凹底部34Dも、タイヤ周方向の位置が互いに異なっている。なお、本発明は上記構成に限定されず、凹部32の凹底部32Dと凹部34の凹底部34Dがタイヤ周方向の同じ位置に配置されても構わない。
また、本実施形態のタイヤ10は、凹部30、凹部32、及び凹部34を含むトレッドパターンがタイヤ赤道面CLに対して左右対称とされている。
【0033】
次に、本実施形態のタイヤ10の作用効果について説明する。
タイヤ10では、センター陸部16の両側壁16Bに凹部30を複数配設し、中間陸部20の両側壁20Bに凹部32を複数配設し、ショルダー陸部22の側壁22Bに凹部34を複数配設していることから、センター陸部16、中間陸部20、ショルダー陸部22の放熱面積がそれぞれ増大している。さらに、凹部30、32、34により、センター陸部16、中間陸部20、ショルダー陸部22のそれぞれのゴムボリュームが減少していることから、センター陸部16、中間陸部20、ショルダー陸部22のそれぞれの発熱量が低下する。これらにより、トレッド12の過剰な温度上昇(過熱)が抑制される。つまり、例えば、航空機の離陸時にタイヤ10が高荷重下で高速回転しても、トレッド12の温度上昇を確実に抑制することができる。
【0034】
センター陸部16は、幅W1が中間陸部20の幅W2、及びショルダー陸部22の幅W3よりも広いため、タイヤ周方向の曲げ剛性も高く、ゴムボリュームも多いため、他の陸部(中間陸部20及びショルダー陸部22)と比べて、温度上昇しやすい傾向がある。しかし、センター陸部16の側壁16Bには、中間陸部20の側壁20Bに配設される凹部32の数及びショルダー陸部22の側壁22Bに配設される凹部34の数よりも多くの凹部30を配設していることから、センター陸部16の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0035】
また、タイヤ10では、センター陸部16の凹部30と中間陸部20の周方向溝14側(ここでは、タイヤ軸方向内側と同義)の凹部32により、周方向溝14の溝容積が増大している。これらの凹部30、32により、周方向溝14の排水容量が増え、排水性が向上する。一方、中間陸部20の周方向溝18側(ここでは、タイヤ軸方向外側と同義)の凹部32とショルダー陸部22の凹部34により、周方向溝18の溝容積が増大している。これらの凹部32、34により、周方向溝18の排水容量が増え、排水性が向上する。
【0036】
さらに、タイヤ10では、センター陸部16の両側壁16Bに凹部30を配設していることから、トレッド12の接地時には、凹部30がセンター陸部16を構成するトレッドゴムの歪みを吸収することができる。これにより、センター陸部16の発熱を抑制することができる。特に、凹部30は、センター陸部16の踏面16Aに開口していることから、トレッド12の接地面内で生じるせん断歪を吸収することができる。これにより、センター陸部16の踏面16Aのタイヤ軸方向の端部付近(センター陸部16の角部)に生じる歪を吸収して発熱を抑制することができる。また、踏面16Aの上記端部付近の接地圧の上昇を抑制できるため、踏面16Aの上記端部付近が踏面16Aの他の部分(例えば、タイヤ軸方向の中央部分)よりも早く摩耗する偏摩耗(例えば、リバーウエアなど)の発生を抑制することができる。
なお、上記作用効果は、凹部32を配設した中間陸部20及び凹部34を配設したショルダー陸部22においても同様に得られる。
【0037】
またさらに、タイヤ10では、凹部30の凹壁面30Eをセンター陸部16の陸部高さ方向の中央よりもタイヤ径方向内側に配置させ、凹部32の凹壁面32Eを中間陸部20の陸部高さ方向の中央よりもタイヤ径方向内側に配置させ、凹部34の凹壁面34Eをショルダー陸部22の陸部高さ方向の中央よりもタイヤ径方向内側に配置させていることから、周方向溝14の溝底14A側の温度上昇、及び周方向溝18の溝底18A側の温度上昇をそれぞれ効果的に抑制することができる。
【0038】
そして、タイヤ10では、凹部30をセンター陸部16の陸部高さ方向の中央よりもタイヤ径方向内側(周方向溝14の溝底14A側)から踏面16A側に延ばし、踏面16Aに開口させていることから、センター陸部16の放熱面積を十分に確保することができる。なお、上記作用効果は、凹部32を配設した中間陸部20及び凹部34を配設したショルダー陸部22においても同様に得られる。
【0039】
タイヤ10では、凹部30の凹底部30D、凹部32の凹底部32D、及び凹部34の凹底部34Dのタイヤ周方向の位置をそれぞれ異ならせている(タイヤ周方向にずらしている)ことから、センター陸部16、中間陸部20、ショルダー陸部22において、各凹部30、32、34がそれぞれ配設されて剛性が低くなり変形しやすくなる部位をタイヤ周方向に分散することができる。これにより、センター陸部16、中間陸部20、及びショルダー陸部22を含んで構成されるトレッド12のタイヤ周方向の周方向剛性を均一に近づけられる。
【0040】
第1実施形態では、
図3に示すように、凹部30は、センター陸部16の陸部高さ方向の中央よりもタイヤ径方向内側から踏面16A側へタイヤ径方向に沿って延びて踏面16Aに開口する構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、例えば、凹部30は、センター陸部16の陸部高さ方向の中央よりもタイヤ径方向内側から踏面16A側へタイヤ径方向と交差する方向に延びて踏面16Aに開口する構成としてもよい。同様に、凹部32、34もタイヤ径方向に沿って延びて各踏面20A、22Aにそれぞれ開口する代わりに、例えば、タイヤ径方向と交差する方向に延びて各踏面20A、22Aに開口する構成としてもよい。
【0041】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態の航空機用タイヤについて説明する。なお、第1実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
図4〜
図6に示すように、本実施形態のタイヤ40では、センター陸部16の側壁16Bに第1実施形態の凹部30の代わりに凹部42(本発明の第2凹部の一例)が配設されている。同様に、中間陸部20の側壁20Bに第1実施形態の凹部32の代わりに凹部44(本発明の第1凹部の一例)が配設され、ショルダー陸部22の側壁22Bに第1実施形態の凹部34の代わりに凹部46が配設されている。なお、本実施形態の凹部42、44、46は、第1実施形態の凹部30、32、34のように、各々が配設される陸部の踏面16A、20A、22Aに開口していない。換言すると、凹部42、44、46は、各々が配設される陸部の踏面16A、20A、22Aからタイヤ径方向内側へ間隔をあけて配設されている。
【0042】
次に、本実施形態のタイヤ40の作用効果について説明する。なお、第1実施形態のタイヤ10で得られる作用効果と同様の作用効果についてはその説明を省略する。
タイヤ40の新品時には、凹部42、凹部44、及び凹部46が、各々が配設される陸部の踏面16A、20A、22Aに開口していないため、踏面上の開口を起点とする摩耗の発生を抑制することができる。一方、トレッド12の摩耗が進行して各踏面16A、120A、22Aに凹部42、44、46がそれぞれ開口した後は、第1実施形態の凹部30、凹部32、及び凹部34と同様に、各々が配設される陸部の踏面16A、20A、22Aの端部付近の偏摩耗や発熱を効果的に抑制することができる。
【0043】
なお、本実施形態の凹部42、44、46を各々が配設される陸部の踏面16A、20A、22Aからタイヤ径方向内側へ間隔をあけて配設する構成については、後述する第3実施形態、第4実施形態、及び第5実施形態などに適用してもよい。
【0044】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態の航空機用タイヤについて説明する。なお、第1実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
図7に示すように、本実施形態のタイヤ50は、センター陸部16に第1実施形態の凹部30の代わりに凹部52(本発明の第2凹部の一例)が配設され、中間陸部20に第1実施形態の凹部32の代わりに凹部54(本発明の第1凹部の一例)が配設され、ショルダー陸部22に第1実施形態の凹部34の代わりに凹部56が配設されている点を除いて、第1実施形態のタイヤ10と同一の構成である。
【0045】
凹部52は、センター陸部16の陸部高さ方向の中央よりもタイヤ径方向内側から踏面16A側に延びて踏面16Aに開口している。また、凹部52は、凹底部(最深部)52Dから壁面開口52Aに向かって周方向長さA1が次第に長くなっている。また、トレッド展開平面視において、凹部52のタイヤ周方向の両凹壁面52Cの各々の延在方向の長さが同じ長さとされている。また、複数の凹部52は、タイヤ周方向に連なっている。具体的には、タイヤ周方向に隣接する凹部52の壁面開口52Aの縁部どうしが一致している。このため、タイヤ周方向に互いに隣接する凹部52の凹壁面52Cにより、センター陸部16の側壁16Bは、凹部52が配設された範囲において、ジグザグ形状となっている。
【0046】
凹部54は、中間陸部20の陸部高さ方向の中央よりもタイヤ径方向内側から踏面20A側に延びて踏面20Aに開口している。また、凹部54は、凹底部(最深部)54Dから壁面開口54Aに向かって周方向長さA2が次第に長くなっている。また、
図7に示すように、トレッド展開平面視において、凹部54のタイヤ周方向の両凹壁面54Cの各々の延在方向の長さが同じ長さとされている。また、複数の凹部54は、タイヤ周方向に連なっている。具体的には、タイヤ周方向に隣接する凹部54の壁面開口54Aの縁部どうしが一致している。このため、タイヤ周方向に互いに隣接する凹部54の凹壁面54Cにより、中間陸部20の側壁20Bは、凹部54が配設された範囲において、ジグザグ形状となっている。
【0047】
凹部56は、ショルダー陸部22の陸部高さ方向の中央よりもタイヤ径方向内側から踏面22A側に延びて踏面22Aに開口している。また、凹部56は、凹底部(最深部)56Dから壁面開口56Aに向かって周方向長さA3が次第に長くなっている。また、トレッド展開平面視において、凹部56のタイヤ周方向の両凹壁面56Cの各々の延在方向の長さが同じ長さとされている。また、複数の凹部56は、タイヤ周方向に連なっている。具体的には、タイヤ周方向に隣接する凹部56の壁面開口56Aの縁部どうしが一致している。このため、タイヤ周方向に互いに隣接する凹部56の凹壁面56Cにより、ショルダー陸部22の側壁22Bは、凹部56が配設された範囲において、ジグザグ形状となっている。
【0048】
図7に示すように、センター陸部16の側壁16Bに配設された凹部52の数は、センター陸部16に隣接する中間陸部20の側壁20Bに配設された凹部54の数よりも多くなっている。なお、凹部52の間隔P1及び壁面開口52Aでの周方向長さA1は、凹部54の間隔P2及び壁面開口54Aでの周方向長さA2より短い。
また、中間陸部20の側壁20Bに配設された凹部54の数は、中間陸部20に隣接するショルダー陸部22の側壁22Bに配設された凹部56の数よりも多くなっている。なお、凹部54の間隔P2及び壁面開口54Aでの周方向長さA2は、凹部56の間隔P3及び壁面開口56Aでの周方向長さA3より短い。
【0049】
図1に示すように、本実施形態では、センター陸部16の両側壁16Bに配設された凹部52の凹底部52Dがタイヤ周方向の同じ位置にそれぞれ配置されている。一方、中間陸部20の両側壁20Bに配設された凹部54の凹底部54Dがタイヤ周方向の同じ位置にそれぞれ配置されている。一方、凹部52の凹底部52D、凹部54の凹底部54D、及び凹部56の凹底部56Dはタイヤ周方向の異なる位置にそれぞれ配置されている。
なお、本発明は上記構成に限定されず、センター陸部16の両側壁16Bに配設された凹部52の凹底部52Dがタイヤ周方向の同じ位置にそれぞれ配置されもよく、中間陸部20の両側壁20Bに配設された凹部54の凹底部54Dがタイヤ周方向の同じ位置にそれぞれ配置されてもよい。またさらに、凹部52の凹底部52D、凹部54の凹底部54D、及び凹部56の凹底部56Dは、タイヤ周方向の同じ位置にそれぞれ配置されてもよく、凹部52の凹底部52Dと凹部56の凹底部56Dのみがタイヤ周方向の同じ位置にそれぞれ配置されてもよい。なお、本実施形態のタイヤ50は、凹部52、凹部54、及び凹部56を含むトレッドパターンがタイヤ赤道面CLに対して左右対称とされている。
【0050】
次に、本実施形態のタイヤ50の作用効果について説明する。なお、第1実施形態のタイヤ10で得られる作用効果と同様の作用効果についてはその説明を省略する。
タイヤ50では、センター陸部16に配設される凹部52の周方向長さA1を凹底部52Dから壁面開口52Aに向かって次第に長くしていることから、周方向溝内を流れる排水を凹部52内で滞留させずにスムーズに流すことができる。なお、上記作用効果は、中間陸部20に配設される凹部54及びショルダー陸部22に配設される凹部56でも同様に得られる。これにより、タイヤ50の排水性が向上する。
【0051】
また、タイヤ50では、タイヤ周方向に隣接する凹部52どうしが互いに連続していることから、センター陸部16の放熱面積を十分に確保できる。また、センター陸部16のゴムボリュームも抑えられる。これにより、センター陸部16の過剰な温度上昇を抑制することができる。なお、上記作用効果は、中間陸部20に配設される凹部54及びショルダー陸部22に配設される凹部56でも同様に得られる。結果、トレッド12の過剰な温度上昇を抑制することができる。
【0052】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態の航空機用タイヤについて説明する。なお、第3実施形態と同一構成には同一符号を付し、その説明は省略する。
図8に示すように、本実施形態のタイヤ60は、センター陸部16に第3実施形態の凹部52と形状が異なる凹部62が配設され、中間陸部20に第3実施形態の凹部54と形状が異なる凹部64が配設され、ショルダー陸部22に第3実施形態の凹部56と形状が異なる凹部66が配設されている点を除いて、第3実施形態のタイヤ60と同一の構成である。
【0053】
図8に示すように、トレッド展開平面視において、凹部62は、タイヤ周方向の両凹壁面62Cの各々の延在方向の長さが異なっている。具体的には、凹部62の一方の凹壁面62Cがタイヤ軸方向に沿って延び、他方の凹壁面62Cがタイヤ軸方向に対して傾斜している。このため、センター陸部16の側壁16Bは、タイヤ周方向に互いに隣接する凹部62の凹壁面62Cにより、凹部62が配設された範囲において、ノコギリ歯形状とされている。同様に、トレッド展開平面視において、凹部64は、タイヤ周方向の両凹壁面64Cの各々の延在方向の長さが異なる、具体的には、凹部64の一方の凹壁面64Cがタイヤ軸方向に沿って延び、他方の凹壁面64Cがタイヤ軸方向に対して傾斜している。このため、中間陸部20の側壁20Bは、タイヤ周方向に互いに隣接する凹部64の凹壁面64Cにより、凹部64が配設された範囲において、ノコギリ歯形状とされている。また、トレッド展開平面視において、凹部66は、タイヤ周方向の両凹壁面66Cの各々の延在方向の長さが異なる、具体的には、凹部66の一方の凹壁面66Cがタイヤ軸方向に沿って延び、他方の凹壁面66Cがタイヤ軸方向に対して傾斜している。このため、ショルダー陸部22の側壁22Bは、タイヤ周方向に互いに隣接する凹部66の凹壁面66Cにより、凹部66が配設された範囲において、ノコギリ歯形状とされている。なお、
図8中の符号62D、64D、66Dはそれぞれ凹部62、64、66の凹底部を示している。また、
図8に示す矢印Rは、タイヤ60の好適な回転方向である。
【0054】
タイヤ60は、
図8に示す矢印R方向が回転方向となるように、航空機に装着することで、排水性を効果的に向上させることができる。具体的には、タイヤ60を矢印Rが回転方向となるように航空機に装着すると、各凹部62、64、66により、周方向溝14、16の溝容積が踏込側から蹴りだし側に向かって次第に広くなるのを繰り返すため、排水を一方向(回転方向Rと反対方向)にスムーズに流すことができる。
【0055】
前述の第1〜第4実施形態では、トレッド12に2本の周方向溝14と2本の周方向溝18を設ける構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、トレッド12にタイヤ周方向に延びる他の周方向溝を設ける構成としてもよい。例えば、
図9に示す第5実施形態のタイヤ70のトレッド72のように、周方向溝18のタイヤ軸方向外側にタイヤ周方向に沿って延びる周方向溝74を設けてもよい。このトレッド72には、周方向溝74と周方向溝18との間にタイヤ周方向に連続する中間陸部76が形成され、周方向溝74のタイヤ軸方向外側に中間陸部76に隣接するショルダー陸部78が形成されている。中間陸部76の幅W3は、中間陸部20の幅W2よりも狭く、ショルダー陸部78の幅W4は、幅W3よりも狭くなっている。なお、
図9における中間陸部76の幅W3は、中間陸部20と同様の方法で測定されるタイヤ軸方向の長さであり、ショルダー陸部78の幅W4は、ショルダー陸部22の幅と同様の方法で測定されるタイヤ軸方向の長さである。また、中間陸部76の両側壁76Bにはそれぞれ凹部80がタイヤ周方向に間隔をあけて複数設けられ、ショルダー陸部78の側壁78Bには凹部82がタイヤ周方向に間隔をあけて複数設けられている。なお、本実施形態では、凹部30、凹部80、凹部82の各周方向長さA1、A3、A4がそれぞれ同じ長さに設定されている。また、側壁20Bに配設された凹部32の数よりも側壁76Bに配設された凹部80の数が少なく、側壁76Bに配設された凹部80の数よりも側壁78Bに配設された凹部82の数が少なくなっている。
【0056】
第1実施形態では、センター陸部16に配設される凹部30の間隔P1が一定とされているが、本発明はこの構成に限定されず、センター陸部16に配設される凹部30の間隔P1が一定でなくてもよい。同様に、中間陸部20に配設される凹部32の間隔P2が一定でなくてもよく、ショルダー陸部22に配設される凹部34の間隔P3が一定でなくてもよい。この場合には、タイヤ回転中に同一の周期でトレッド12が過剰に変形するのが繰り返されるのが抑制されるため、タイヤ10の耐久性を向上することができる。なお、上記構成は、第2〜第5実施形態のいずれの形態にも適用することができる。
【0057】
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。