【実施例】
【0047】
(実施例1)
免疫優性型ワクチン
過去の臨床試験では、ワクチン細胞株は、MBP由来の2種の免疫優性ペプチドで培養T細胞を刺激することによって産生された。最近の臨床試験では、ワクチン細胞株は、合計6種の免疫優性ペプチド(MBP由来の2種、PLP由来の2種およびMOG由来の2種)でT細胞を刺激することによって産生された。一部の患者においてこの限られたペプチドセットの使用は、ワクチンの産生に不十分な増殖培養を生じ、数週間を要した。ペプチドが患者全員のHLA表現型と完全に一致しなかったため、T細胞は適切に刺激されなかった。加えて、関与した大部分のエピトープは、予想した免疫優性エピトープのみの使用だけではまかないきれず、故に正確に個別化したワクチンは樹立できなかった。まかないきれなかったエピトープは、in vivo中、クローンの拡大および発生を刺激するかも知れないし、阻止できないかも知れない。
【0048】
(実施例2)
ミエリンエピトープ
適当な刺激を与えたペプチドの選択が改良可能かどうかを判定するため、MBP、PLPおよびMOG内の付加ペプチドエピトープを調製し、そして多発性硬化症患者でテストした。分析のため、MBP、PLPおよびMOGの全長をカバーした合計163種の異なる重複ペプチド(16個のアミノ酸(16マー)から成るペプチドそれぞれの合成を、前の配列と重複する12個のアミノ酸に4個のアミノ酸を補う)を合成した。合計44種のMBP、67種のPLPおよび52種のMOGペプチド配列を合成した。配列一覧表、それらの識別番号とアミノ酸番号、およびEAA(混合物ID)に使用するためどのように組み合わせたかを表1〜3に示す。実施例1に使用した6個の免疫優性配列を太字で示す。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2-1】
【0051】
【表2-2】
【0052】
【表3-1】
【0053】
【表3-2】
(実施例3)
ミエリン抗原レパートリーの発生
12個のアミノ酸(aa:amino acide)が重複するそれぞれ長さ16個のaaのMBPタンパク質を範囲とする重複するペプチドを発生させた。MBPペプチドすべては生産可能であるが、MBPペプチドのレパートリーは8種のペプチドを除外した。結果として36種のペプチドは、タンパク質の95.7%をカバーする。1〜8個のアミノ酸だけが、カバーされなかった。MBPペプチドの一覧表は、薄灰色で強調表示された不使用のペプチドと並んで表4中にある。
【0054】
【表4】
12個のaaが重複するそれぞれ長さ16個のaaのPLPタンパク質を範囲とする重複するペプチドを発生させた。生産可能であったすべてのPLPペプチドは、アミノ酸の61番〜72番目および245番〜248番目の配列を包含していない。加えて、PLPペプチドレパートリーは、20種のペプチドを除外した。結果として35種のペプチドが、タンパク質の83.0%をカバーする。カバーできなかった領域は、アミノ酸の21番〜24番目、61番〜80番目、117番〜128番目、165番〜168番目および237番〜248番目のみである。PLPペプチドの一覧表は、薄灰色で強調表示された不使用のペプチドと並んで表5に示され、網掛けで影をつけられた箇所は生産不能であった。
【0055】
【表5-1】
【0056】
【表5-2】
12個のaaが重複するそれぞれ長さ16個のaaのMOGタンパク質を範囲とする重複するペプチドを発生させた。生産可能であったすべてのMOGペプチドは、アミノ酸の141番〜144番目の配列を包含していない。加えて、MOGペプチドレパートリーは、8種のペプチドを除外した。結果として40種のペプチドが、タンパク質の93.6%をカバーする。カバーできなかった領域は、アミノ酸の69番〜80番目および141番〜144番目のみである。MOGペプチドの一覧表は、薄灰色で強調表示された不使用のペプチドと並んで表6に示され、網掛けで影をつけられた箇所は生産不能であった。
【0057】
【表6-1】
【0058】
【表6-2】
ペプチドを、ほとんどの場合、95%超の純度で完全長のMBP、PLPおよびMOGに対して合成した。合成可能であるすべてのペプチドは、その後の実験において評価された。合計16種のペプチドは、固相ペプチド合成法(SPPS:Solid−Phase
Peptide Synthesis)によって合成不可能である。これら16種のペプチドは、3種のタンパク質(全タンパク量の2.6%)について特異的である全長18個のアミノ酸に及んだ。生産不可能なすべてのペプチドは、実際hydrophicであった。
【0059】
(実施例4)
エピトープ分析アッセイ
実施例2のペプチドは、患者の血液中のミエリン反応性T細胞を同定するため、in vitroでのPBMC刺激アッセイでテストした。末梢血単核球(PBMCs)を、全血より分離、洗浄、カウントし、合計4枚の96穴プレートに、1穴当たり細胞250,000個を播種した。2種の重複する16マーペプチドのミエリンペプチド混合物を、プレート毎に培地のみのコントロール穴の3穴とPBMCsの3穴に加え、それからインキュベートした。インキュベーションの2日後に、インターロイキン2(IL−2:Interleukin−2)を20U/ml加えた。5日目に、プレートを放射性同位元素(放射性チミジン)で標識し、6時間後に採取した。このアッセイにおいて、放射性チミジンを取り込んだ細胞は、T細胞受容体−ペプチド−MHC複合体で急速に活性化し誘発されるT細胞の代表である。コントロールおよび実験細胞より比較的多くの放射性チミジンを取り込んでいるT細胞は、より高度に活性化されたT細胞であり、より迅速に増殖する。
【0060】
刺激指数(SI)は、4枚のプレートすべてに比例配分した培地のみのコントロール穴中の1分間あたりの(CPM)平均をペプチドで刺激した穴の平均CPMで放射性標識数で割ることによって、それぞれのペプチド混合物に対して決定された。少なくとも3枚のSIは、陽性であると見なされた。
図1は一人のMS患者由来のEAA例である。MOGm15で刺激した穴は非常に高い反応性であるのに、ペプチド混合物のうち7種は、わずかな反応性であった。
図2〜4は、患者48人中のペプチド混合物に対する反応の頻度を示す。
【0061】
(実施例5)
HLA分析
実施例2で記述したように、EAAによって同定された活性ペプチドを、患者のHLA表現型と比較した。http://www.imtech.res.in/raghava/propred/(Singh,H.およびG.P.S.Raghava,ProPred:HLA−DR結合の予測サイト)で閲覧利用可能なクラスIIの結合領域を予測するためのアルゴリズムを、患者のDRB1_0801、DRB1_1501およびDRB5_0101のHLA−DRハプロタイプに基づくMOGの結合領域を予測するため用いた。
【0062】
図5は、患者の3種のHLA対立遺伝子のためのMOGタンパク質内部のProPred結合予測を示す。黄色い残基がグルーブ内部でフィットするその他残基を表す時、赤いアミノ酸残基は、HLAグルーブ内部で結合するための予測されたアンカー残基を表す。その結果、これら残基は、この患者由来のT細胞に対する刺激性エピトープの候補であると予測される。
【0063】
明黄色の囲みは、10のSIを与えるペプチド混合物MOGm15に含められる配列を包囲する。HLA対立遺伝子のうち3種すべてと結合すると予測されるこれらペプチド内部に配列がある。2種の対立遺伝子に対して、2種の予測された結合エピトープおよびこれら配列内に3番目の部分がある。これら配列の予測した結合が、特定の範囲をEAアッセイで得られた結果と相関させるが、予測されていない刺激性ペプチドがある。
【0064】
これら結果は、EAAが患者特有の刺激性ペプチドを同定するため、優れた予測結果を提供する工程を示す。EAAの優越性は、HLA発現変異体のために強化された。HLA−AおよびB遺伝子のための血清学と分子タイピング間の比較検査は、血清学的試薬では検出されないがDNAタイピング試薬で検出される対立遺伝子を発見した。これらHLA発現変異体は、細胞表面上に発現しないか、またはごく少量発現する。HLA変異体を同定する必要がないので、EAAはソフトウェア画面より優れている。
【0065】
(実施例6)
ワクチンの産生
ワクチンに使用するため、EAAによって同定された患者−特有のペプチドを、ミエリン−反応性T細胞の産生および増大に利用可能かどうか判定するためテストした。500mlの血液袋を、ワクチンの産生培養を始めるため患者から得た。バルク培養を、最適なペプチドとともにAIM V培地で開始した。48時間のインキュベーション後、rIL−2を20U/ml加えた。7日後、培養物をPBMCsおよびペプチドで再度刺激した。培地を、X Vivo15培養液中100U/mlのrIL2と2%のAB血清へ変更した。培養物を養い、必要に応じて1〜4日おきに分割した。さらに7日後、培養物をAPCsおよびペプチドでもう一度刺激した。培養物を持続的に養い、必要に応じて1〜4日おきに分割した。さらに7〜14日後、培養物は、少なくとも100×10
6個の細胞数に増大した。その細胞を10×10
6個の細胞数の一定分量に分割し、凍結した。
【0066】
(実施例7)
TCR V
B分析
実施例6で産生したワクチンを、選択的に増大させたT細胞がT細胞の特定亜群を持っていたかどうか判定するためテストした。T細胞亜群の富化を、可変のT細胞受容体ベータ鎖の使用法(Vβ:Variable beta chain usage)で分析することによって評価した。24の異なる周知のベータ鎖可変(Vβ)領域群を、特有の蛍光で標識したモノクローナル抗体およびフローサイトメトリーを使って評価した。T細胞の特定亜群がペプチドの刺激によって選択的に増大するならば、亜群は増大し、増加はVベータ群の1つを表す細胞の割合で検出されるはずである。
【0067】
T細胞受容体(TCR:T Cell Receptor)Vベータ分析を、実施例6で記述されるように産生したワクチンの産生中の約18日後に実行した。T細胞株を、この患者に対する元のEAA中4.6のSIを産生したペプチド混合物MBPm10で患者のPBMCsを刺激することによって産生した。
図6は、ペプチド混合物MBPm10が4.6のSIを産生したことを示す。この混合物を、培養中この患者由来のPBMCsの刺激のために用いた。
【0068】
図7は、ベースライン時の細胞で、PBMCsで、およびこの同一患者のためのMBPm10ペプチドでT細胞培養の18日目に実行したVベータ分析を示す。ベースラインには、PBMCsにおけるTCR Vベータ鎖使用法の典型的に比較的均等な分布がある。しかしながら、MBPm10で培養中に刺激した18日後、培養中の細胞の現在45%を占めるVベータ5〜6陽性T細胞が、MBPm10ペプチド混合物での刺激に焦点を合わせたことを示すか、またはこの患者のPBMCs中のT細胞亜群を選択的に増大できることを示している。
【0069】
(実施例8)
成長分析
より迅速に拡大およびT細胞を刺激するため、EAAで選択されたペプチドの刺激能力をテストした。細胞増殖曲線を、異なる2つの刺激性ペプチド混合物で分析した。
図8に示されるEAA CPMデータは、4.7のSIで患者のMBPm19中、強い反応性混合物を示す。同じアッセイからの第2のプレートは、17.9の高いSIでPLPm33中、その他の反応性混合物を示す。これら2種のペプチド混合物を、その後、T細胞株の産生のためにこの患者由来のPBMCsの刺激に使用した。
【0070】
EAA−同定したペプチドの成長分析を
図9に示す。PLPm33刺激細胞を、ペプチド混合物で3回刺激することによって20日間で1500万個のPBMCsから2億個のT細胞へ増大した。それらはまた、21日目にペプチドで再度刺激を加えた後、1500万個のPBMCsから2億1700万個のT細胞まで増大したが、MBPm19刺激細胞は、迅速に増大するのにより時間がかかった。それらを培養開始日から27日目に採取した。この過程は、MBP、PLPおよびMOG由来の免疫優性ペプチドだけを使用する過去の産生方法より6倍短い過程を表す。
【0071】
その他MS患者のため、合計8.25×106個のPBMCsを、刺激状態ごとに最初にシードした。培養中21日目、ペプチド(PHAを使用していない)による合計3回の刺激の後、細胞株の1つは142×106個の細胞に増大し、一方、その他の細胞株は95×106個のT細胞に増大した。
図10は、ペプチド混合物PLPm27で刺激している間、9日目から16日目に成長した培養物として生じたことに焦点をあわせるTCR Vベータを示す。Vベータ鎖5−5を使用するT細胞亜群は、大部分のその他のVベータT細胞亜群を犠牲にして増大する。
【0072】
(実施例9)
ミエリンMRTCの観察
EAAを、T細胞ワクチン接種の後、ミエリン反応性T細胞(MRTC)特異性を評価するため用いた。拡散しているエピトープを検出し、当初生じた新規エピトープを含むミエリンタンパク質への免疫攻撃を重点とした広がりもテストした。
図11は、3種ワクチンシリーズの最初の再処置を受けた患者由来のMRTC発生頻度データの一部を示す。最初のワクチンシリーズの後52週目で、患者のMRTCsは、1000万個のPBMCsにつき合計29個のMRTCをリバウンドした。優先的T細胞頻度分析(TCFA:T Cell Frequency Analysis)は、28週目で、1000万個のPBMCs中4個のMRTCだけを示した。
【0073】
新規ワクチンを、最初のワクチンシリーズと同一手順で調製し、処置を再開した。患者は4週目および8週目に追加接種を受け、そして、MRTCs数が1000万個のPBMCs中6個に減少した。15週後、24週目に、特にMBP反応性T細胞が再発し、患者のMRTCが開始された。
【0074】
図12は、全長MBPペプチドに対する患者の24週目のT細胞反応を示す。ペプチド周辺の囲みは、TCFAで過去に使用された2種の免疫優性MBP配列を含有する。見られるように、MBPペプチド2種に対し未だ反応性があり、TCFAでも見られるように、MBPに対する反応性の増加が原因かもしれない。
【0075】
図13および14は、それぞれ、全長のPLPおよびMOGタンパク質のペプチドに対する患者の24週目のT細胞反応を示す。ペプチド周辺の囲みは、TCFAで過去に使用された2種の免疫優性PLPおよびMOG配列を含有する。示されるように、PLPの3つの領域およびMOGの2つの領域は、EAAで強い反応を示す。この分析を、6種の新しく同定した反応性ペプチド混合物を使用している患者のための新規ワクチンの産生に用いた。
【0076】
(実施例10)
EAA分析1の要約
図15〜17は、8人のMS患者の、それぞれ、MBP、PLPおよびMOGペプチド反応パターンを示す。赤い線は、3のSIカットオフで陽性を示す。過去に使用されたMBP、PLPおよびMOGの2つの免疫優性ペプチドを、囲みで同定した。
図15で示されるように、2つの免疫優性MBPペプチドを含まないMBPm19中にエピトープがある。PLPのため、
図16は、免疫優性PLPペプチドを内部に含まれていない3カ所の別の免疫反応領域があることを指す。最も高い免疫反応は、PLPタンパク質配列の末端で3領域のすべての中にあった。MOGのため、
図17は、タンパク質の膜貫通と隣接する細胞内部が過去に使用された免疫優性MOGペプチドよりはるかに免疫的活性が強いことを指す。
【0077】
図18〜20は、EAアッセイを使用してテストした合計15人のMS患者由来のサンプルに対し平均的SIsを示す。見られるように、MBPのC末端に対して、わずかに増加した反応が見られた。同じデータがPLPタンパク質を分析するとき、このタンパク質のC末端で、再び、免疫優性部分が非常に明白である。MOGタンパク質に対する反応の分析は、タンパク質のC末端領域と同様、膜貫通領域において免疫優性部分を示す。これらをもとに、データは、より効率的な手法で、より効果的なワクチンを産生するため、T細胞ワクチンの使用に対してMS患者由来のミエリン反応性T細胞を同定するのにミエリンタンパク質内部由来のその他ペプチドエピトープを含むことが重要であることを示している。
【0078】
MSにおいて、エピトープの拡散またはシフトのパターンの知識は、進行する組織破壊を防ぐペプチド−特有のT細胞ワクチン接種治療法を考案するために使用され得る。患者が分析される3つのミエリンタンパク質内部で「新しい」エピトープに対する反応を発現する時、および発現するならば、結果として起こるEAAは、判定に使用され得る。新たに同定された反応ペプチドは、後続のワクチンのためT細胞株の産生に使用され得る。
【0079】
(実施例11)
EAA分析2の要約
EAAを54人の被験体に実行した。被験体は、健常人(N=12)、Tovaxinの用量漸増臨床試験に登録されたMS患者(N=16)、Tovaxinの繰り返しワクチン接種臨床試験(拡張試験)に登録されたMS患者(N=13)および採血のみの臨床試験(方法開発)に登録されたMS患者(N=13)を含む。表4は、ミエリンペプチド混合物に対する被験体の反応を示す。それぞれ、表5〜7は、MBP、PLPおよびMOGペプチド混合物に対する被験体の反応を示す。
図21〜23は、実施例1のワクチンの産生に使用された免疫優性ペプチドの場所を示す囲みとともにミエリンペプチド混合物に対する被験体の反応を示す。
【0080】
【表7】
1テストされた13人すべての被験体は、MS治療の認証された免疫修復を受けていた。
2調製されたTovaxinは、6人の患者にのみワクチン接種された。
3陰性であった2つのサンプルは、凍結保存細胞からセットアップされた。
4Tovaxin未接種;これらの患者は、過去にMBP由来のみのペプチドで調製されたワクチンのワクチン接種を受けたことがある。
【0081】
【表8】
【0082】
【表9】
【0083】
【表10】
少なくとも1つのミエリンペプチド混合物の反応が、健常人被験体12人のうち7人を含む、テストした54人の被験体のうち42人に見られた(78%)。被験体が反応したペプチド混合物の数は、0〜11の範囲であった。陽反応性は、3.0の最小SIから21.1の最大SIの範囲であった。
【0084】
反応パターンで示すように、テストされた被験体の過半数は、実施例1でワクチンの調製に使用した6種の免疫優性ペプチドの外側にある3種のミエリンタンパク質領域のペプチド配列に対する反応T細胞を有した。テストした被験体の41パーセントは、MBP(MBP83〜99およびMBP151〜170)の免疫優性ペプチドに反応した。テストした31%の被験体だけが、PLP免疫優性ペプチド(PLP30〜49およびPLP180〜199)に反応した。テストした11%の被験体だけが、MOG免疫優性ペプチド配列(MOG1〜17およびMOG19〜39)に反応した。
【0085】
最初に現れる反応パターンは、PLPおよびMOGペプチドよりさらに反応するペプチド配列MBP83〜99を同定する過去の研究と一致する。しかしながら、一般に、MBPペプチドに対する反応は、PLPおよびMOGペプチドに対して見られる反応より低く;テストされたすべての被験体の30%は、PLPペプチドでの65%およびMOGペプチドでの61%とは対照的に、1種以上のMBPペプチドに対して反応した。下記の表11は、被験体に対して反応したタンパク質ごとの平均ペプチド数を示す。
【0086】
【表11】
MD=被験体の採血方法開発
H.S.=被験体の健常人
DES=患者の用量漸増(ワクチンを接種したおよび未接種の両方)
EXT=患者の拡張試験。
【0087】
MOGタンパク質の場合、過去の研究は、タンパク質の細胞外の一部に重点を置いた。MOGは、アミノ酸残基1〜122個を含む免疫グロブリン(Ig)様ドメイン、細胞膜部分およびアミノ酸残基123〜218個から成り立つ細胞内部分を含む。上記の結果は、アミノ酸113〜132個(MOGm15)の細胞内膣おいて、細胞膜配列の範囲内または隣接の範囲を越えてタンパク質の一部に高水準の反応を示す。興味深いことに、実施例1のワクチンで、前にワクチン接種を受けている拡張試験患者のすべて(100%)は、MOGの細胞内部分に免疫反応を示した。これはテストされたその他の被験体全員と対照的であり、49%のみがMOGペプチドに対する何らかの反応を示した。
【0088】
低刺激指数によるミエリン反応T細胞株の成長
以下は、3.0未満のSIおよび特に2.0以下で増殖するミエリン−反応性T細胞の能力を実証する。上記のアルゴリズムを使用して、1.3に限りなく低い統計的に優位なSIsを観察し、そしてそれ故、抗原に応答して増殖可能である。この能力を立証するため、2人の患者にまたがる5種の細胞株が、SI<2.0で示された。結果を、ペプチド抗原刺激およびT細胞成長因子だけで細胞株の成長を指す、表12および
図24に示す。
【0089】
被験体1042のPBMCをEAAで実行し、および1.8のSIによるPLPm18、2.5のSIによるPLPm26および2.5のSIによるPLPm28を包含する2種のペプチド混合物は、陽性だった。細胞は以下に示すように通常のプロトコルごとに抗原刺激を受け、そして14、19、26、33および35日後に採取された。被験体1014のPBMCをEAAで実行し、および1.7のSIのMBPm14、1.7のSIのPLPm17、2.2のSIのPLPm28および1.9のSIのMOGm6を包含する4種の混合物は、陽性だった。被験体1014のための細胞は、以下に示すように抗原性刺激を受け、そして14、19、26、33および35日後に採取された。
【0090】
PBMCsを、ACD−1抗凝固剤中の静脈穿刺を通して得られる末梢血から密度勾配遠心分離によって分離した。PBMCsを、24穴プレートで1穴当たり2.5E+06個の細胞を播種した。EAAで同定された16マーペプチド型の抗原を、最終濃度で20ug/mlになるように加えた。インターロイキン−2(IL−2:InterLuekin−2)を開始48時間後に最終濃度で100U/mlになるように加え、そしてIL−2をそれぞれの給餌またはウェルの分割によって同一濃度になるまで加えた。抗原提示細胞(3500ラドで放射線照射したAPCs−自家PBMCs)の存在下でペプチドの再刺激を、7、14および21日目に行った。インターロイキン−15(IL−15:InterLuekin−15)を、開始14日後に最終濃度で5ng/ml〜20ng/ml(特定ロット)になるまで加え、そして残りの培養期間続けた。細胞株を35日目ですべて採取し、そして3.0〜8.2倍の増大を達成した。
【0091】
【表12】
図24は、抗原に応答して成長できた<2.0のSIsであるミエリンペプチド混合物に反応する被験体1042および1014由来の5種のT細胞株を示す。したがって、低いSIsを提示するT細胞株は、ミエリン抗原に応答して大きくなることができる。
【0092】
(実施例12)
ミエリン反応ペプチドのEAA分析
実施例3のペプチドを、次の通り429EAAs臨床試験でテストした。分散評価法またはCPM分散法を用いて、429アッセイのうち合計162(37.8%は、SIs陽性を示した。ワクチン前のEEAsは、368アッセイのうち150陽性(40.8%)を示す再発寛容型のMS患者(RRMS:Relapse Remitting Multiple Sclerosis)、および19アッセイのうち8陽性(42.1%)を示す最初のエピソードからなる症候群(CIS:Clinically Isolated Syndrome)とともに387アッセイのうち158陽性(40.8%)を示す。
【0093】
スクリーニング受診被験体のうち、合計312のうち144アッセイは、249人の被験体で陽性だった(それぞれ46.2%および57.8%)。これらのうち、PRMS患者は、238人の被験体において301アッセイのうち136陽性を示し(それぞれ45.2%と57.1%)およびCIS患者は、11アッセイのうち8陽性を示した(72.7%)。
【0094】
達成の間、89アッセイのうち14(15.7%)は陽性であり、そのうちPRMS患者は84アッセイのうち14陽性(16.7%)を示し、およびCIS患者は、5アッセイのうち0陽性(0%)を示した。EAAsの投与開始時は、31アッセイのうち6陽性(19.4%)であり、PRMS患者は28アッセイのうち6陽性(21.4%)を示し、CIS患者は3アッセイのうち0陽性(0%)を示した。
【0095】
ワクチン後EAAsは、42アッセイのうち4陽性(9.5%)を示し、そのうちPRMS患者は37アッセイのうち3陽性(8.1%)を示し、およびCIS患者は5アッセイのうち1陽性(20.0%)を示した。
【0096】
4週目、EEAsは21アッセイのうち2陽性(9.5%)を示し、そのうちPRMS患者は19アッセイのうち1陽性(5.3%)を示し、CIS患者は、2アッセイのうち1陽性(50.0%)を示した。8週目、EAAsは16アッセイのうち2陽性(12.5%)を示し、そのうちPRMS患者は14アッセイのうち2陽性(14.3%)を示し、CIS患者は2アッセイのうち0陽性(0%)を示した。12週目、EAAsは5アッセイのうち0陽性(0%)を示し、そのうちPRMS患者は4アッセイのうち0陽性(0%)を示し、CISは1アッセイのうち0陽性(0%)を示した。
【0097】
(実施例13)
EAA臨床試験
6ヶ月にわたって、研究を臨床試験の基準値を満たしている120人の被験体に対して行った。被験体は、再発寛容型多発性硬化症(PR−MS;n=114)、または0〜5.5の総合障害度評価尺度(EDSS)による危険性の高い最初のエピソードからなる症候群(CIS;n=6)、0〜10年の疾患の診断、年齢18〜55歳、MSおよび陽性EAAを連想させるMRI基準値を有した。
【0098】
先に述べた被験体の個体群を、上記記載の分散評価方法およびCPM分散法を用いたEAAによって評価し、そしてワクチン産生にふさわしいとみなした。ワクチンを生産する120回の試みのうち、輸送失敗(血液が定まった基準値の範囲内で授受できなかった)が2回、培養の汚染による失敗が1回および収穫量当たりの低い細胞量に達した5サンプルがあった。残り112被験体のうち、89人の被験体にワクチンが無事発生し、22人がいまだ産生中(適格なサンプルの98.9%、完了されたサンプル92.5%)である。このことから、陽性EAAを、本願明細書において開示された方法による治療用量のワクチン生産能力の前兆と見なした。
【0099】
T細胞株が増殖するための従来の方法は以下を含む:
1.PBMCsの単離
2.24穴プレートに2.5E+06個の細胞/穴でPBMCsを播種すること
3.2ペプチド/穴に20ug/ml/ペプチドで抗原を添加すること
4.48時間後(および採取までを含んだ)に、IL−2(10〜200IU/ml)を添加すること
5.7、14および21日目に、3500ラド(前に記載のように1.0E+06個)の放射線照射したAPCsおよび抗原(同一抗原/同一濃度)で再刺激すること
6.14日目(および採取までを含んだ)に、IL−15(1〜50ng/ml)を添加すること
7.細胞が十分な個数に生育しなかったなら、35日目に、成長を刺激するマイトジェン、スーパー抗原または抗体を添加する可能性。
【0100】
この研究の間、免疫優性のいくつかのエピトープがMS被験体の個体群中に発見された。これらのエピトープのいくつかは、新規である。我々の試験中、スクリーニングを受診した被験体の大多数が反応を示したペプチドがある。これら免疫優性領域のいくつかは、過去の文献に記述されていない。表13〜15に興味深いエピトープを羅列した。
【0101】
【表13-1】
【0102】
【表13-2】
【0103】
【表14】
【0104】
【表15】
図25〜27は、この臨床試験の結果を示す。
図25A〜Hは429アッセイ(横列が独特なアッセイおよび縦列がペプチド)のマップを示す。アッセイは日付順に並ぶ。陽性ペプチド混合物を、薄灰色で示す。陽性と判明したペプチド混合物は、独特および予測不能であったことを示す。
【0105】
図26は65アッセイ(横列が独特なアッセイおよび縦列がペプチド)のマップを示す。アッセイは日付順に並ぶ。陽性ペプチド混合物を、薄灰色で示す。陽性と判明したペプチド混合物は、独特および予測不能であったことを示す。陽性混合物の数は、単一被験体において0〜19まで変動した。
【0106】
図27は、4人の被験体における経時的なエピトープシフトを指すEAA分析の結果を示す。被験体1は、最初、MOGm4、MOGm5とMOGm6の周りでの反応、およびMOGm21、MOGm22とMOGm23へ移動による反応で微変異を示した。これら2つが重複することに注目する。被験体2は、さらに0時間から新しいペプチドへの反応が増すが、時間の経過とともに反応する同一ペプチドを示した。被験体3は、PLPからMOGへの反応の重要な変異を示し、および被験体4は、1つの部分(C−末端PLP)からその他の部分(N−末端MOG)への段階的な変異で、反応の多数の中心点を示した。また、同一患者において、最後の2つの時点での、MOG中心部への長期かつ短期の反応、およびMBPへの最終的な反応が観察された。
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