(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000216
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】ターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
F02B 39/00 20060101AFI20160915BHJP
【FI】
F02B39/00 D
F02B39/00 T
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-206286(P2013-206286)
(22)【出願日】2013年10月1日
(65)【公開番号】特開2014-80972(P2014-80972A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2013年10月1日
(31)【優先権主張番号】10 2012 109 807.7
(32)【優先日】2012年10月15日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507200972
【氏名又は名称】ベンテラー・アウトモビールテヒニク・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】カーリム・エルヴァン
(72)【発明者】
【氏名】アルトゥル・レシュ
【審査官】
佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−293779(JP,A)
【文献】
米国特許第03561885(US,A)
【文献】
西独国特許出願公開第03631356(DE,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0098533(US,A1)
【文献】
特開2010−163966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関において配置するためのターボチャージャ(1)であって、当該ターボチャージャ(1)がタービンケーシング(3)及び圧縮機ケーシング(2)を備えている前記ターボチャージャにおいて、
前記タービンケーシング(3)が、排ガスシステムの連結のための出口フランジ(7)と、前記圧縮機ケーシング(2)との間接的又は直接的な接続のための軸受フランジ(5)と、該軸受フランジ(5)と前記出口フランジ(7)の間に配置された二重壁状の薄板ジャケット(6)とで形成されているとともに、前記軸受フランジ(5)及び前記出口フランジ(7)が複数の連結要素(10)を介して互いに結合されており、これら連結要素(10)が前記タービンケーシング(3)の外部に配置されているとともに、前記連結要素(10)が当該ターボチャージャ(1)の振動を緩衝し、前記連結要素(10)がシェル部材として形成されており、該連結要素(10)が前記軸受フランジ(5)及び前記出口フランジ(7)に結合されていることを特徴とするターボチャージャ。
【請求項2】
前記出口フランジ(7)及び前記軸受フランジ(5)が、少なくとも1つのボルトを介して互いに離間して連結されていることを特徴とする請求項1記載のターボチャージャ。
【請求項3】
前記軸受フランジ(5)及び前記出口フランジ(7)が互いに平行に離間して配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載のターボチャージャ。
【請求項4】
前記薄板ジャケット(6)が前記軸受フランジ(5)に溶着して連結されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のターボチャージャ。
【請求項5】
前記薄板ジャケット(6)が前記出口フランジ(7)を少なくとも部分的に締め付けていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のターボチャージャ。
【請求項6】
前記薄板ジャケット(6)が前記出口フランジ(7)に溶着して連結されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のターボチャージャ。
【請求項7】
前記タービンケーシングの第1の固有振動数が、180Hzより大きく上昇されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のターボチャージャ。
【請求項8】
前記連結要素(10)及び/又は前記軸受フランジ(5)に他の部材が結合されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のターボチャージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分における特徴に基づく内燃機関において配置するためのターボチャージャに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術から、内燃機関の効率を向上させるために当該内燃機関を過給することが知られている。この内燃機関の過給のために、ここでも、例えばターボチャージャ、圧縮機又はプレッシャウェーブスーパーチャージャである、様々な過給器タイプが知られている。
【0003】
ターボチャージャにおいては、内燃プロセス中に発生する排ガスを含む残留エネルギーが、吸気交換過程へ供給される新たな空気(外気)を圧縮するために使用される。これにより、内燃機関の変化しない摩擦エネルギーにおいて吸気交換過程ごとのシリンダの充填度が上昇し、これにより効果的に準備されたエンジン出力が上昇されることになる。
【0004】
ターボチャージャ自体は、当該ターボチャージャを通って排ガスが流通し、このとき排ガスのエンタルピーの減少によって駆動されるようタービンホイールを備えている。このとき、このタービンホイールは、直接的な又は間接的な連結部(クラッチ)を介して圧縮機ホイールを駆動するようになっている。この圧縮機ホイールはここでも圧縮機ケーシング内に収容されており、吸入された新たな空気がこの圧縮機ケーシングを通して流通し、圧縮機ホイールによって圧縮される。
【0005】
このとき、上述の両ホイール及び連結部は、200000rpmまでの回転数を有している。
【0006】
さらに、ターボチャージャ全体は、その動作中に熱的な変動にさらされている。すなわち、ガソリンエンジンの場合には、1000℃より高い温度の排ガスがタービンケーシングを通って流通する。これに対して、圧縮機ケーシングを通って流れる吸入された空気は、周囲温度すなわち本質的に−10〜40℃の温度を有している。
【0007】
したがって、個々の部材は、動作中に熱的な変動を有しているとともに、これに起因して様々な熱的な伸び(熱膨張)にさらされる。このとき、タービン形状及び圧縮機形状の寸法設定は、隙間損失の回避のためにほぼ隙間のないよう形成される必要がある一方で、回転すべき固定された部材の機械的な接触を回避するために十分な安全間隔を必要とする。
【0008】
互いに異なる熱的な伸び及び高い回転数並びに多くの場合には直接的な熱機関の近傍での結合により、ターボチャージャは、その動作中に強い振動及び衝撃にさらされる。特に振動は、一方では外部の励起により、他方ではターボチャージャによってなされる自身の励起によって発生する。
【0009】
ターボチャージャケーシングの安定化のために、例えば特許文献1にはターボチャージャの固定のための装置が開示されており、この装置により、ターボチャージャの動作安全性を高めることが可能である。
【0010】
さらに、特許文献2には、ターボチャージャのためのケーシング支持部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】独国特許出願公開第4432073号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第3641478号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この従来技術を起点として、本発明の目的とするところは、個々の部材の互いの連結が特に耐久性の観点において改善され、任意にターボチャージャを内燃機関に配置するか、若しくは固定するか、又は部材をターボチャージャに固定する可能性を与えるターボチャージャを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は、本発明により、請求項1における特徴に基づくターボチャージャによって達成される。
【0014】
本発明の好ましい実施形態は、各従属請求項の対象である。
【0015】
本発明は、特に原動機付き車両内である、内燃機関において配置するためのターボチャージャに関するものであって、当該ターボチャージャがタービンケーシング及び圧縮機ケーシングを備え、前記タービンケーシングが薄板部材として形成されている前記ターボチャージャにおいて、前記タービンケーシングに、排ガスシステムの連結のための出口フランジと、前記圧縮機ケーシングとの間接的又は直接的な接続のための軸受フランジとが形成されており、該軸受フランジと前記出口フランジの間に薄板ジャケットが配置されているとともに、前記軸受フランジ及び前記出口フランジが複数の連結要素を介して互いに結合されており、これら連結要素が、前記タービンケーシングの外部に配置されているとともに、当該ターボチャージャの振動を緩衝することを特徴としている。
【0016】
本発明の範囲においては、特にタービンケーシングが組み立てられたケーシング、特に好ましくは溶接構造あるいは溶接部材として形成されている。
【0017】
出口フランジ及び/又は軸受フランジは、本発明においては、フライス部材として、又は鋳造部材自体としても形成されることが可能である。本発明の範囲においては、出口フランジ及び/又は軸受フランジは、鍛造部材として形成されることもできる。通常、鋳造部材又は鍛造部材には、所望の輪郭及び面を得るために、後に特にフライス加工である切削加工がなされる。そして、フランジ自体には、ここでも、タービンケーシングの少なくとも1つの外側ジャケット面が薄板ジャケットの形態で溶接される。特に、溶接は気密に行われる。本発明の範囲においては、例えばフランジを有する薄板ジャケットをはんだ付けすることも可能である。
【0018】
出口フランジと軸受フランジ自体の間の追加的な連結要素により、各部材をその壁厚おいて最小化することが可能であり、この結果、気密性が得られ、実際の安定性及び想定される結合部材にわたる変動特性の補償が実現される。このために、連結要素は、タービンケーシングの外部に配置されている。
【0019】
本発明の範囲においては、タービンケーシング及び特にターボチャージャ自体を連結要素に懸架するか、又は他の部材に結合することが更に可能である。このとき、連結要素自体は、例えば、フランジに螺着された中実のボルトとして形成されることが可能である。本発明の範囲においては、ボルトをフランジに溶接するか、又ははんだ付けすることも同様に可能である。また、本発明の範囲においては、連結要素を中空部材、例えばスリーブとして形成することも可能である。代替的なものは、連結要素をシェル部材、例えば半シェルとして形成することにあり、このシェル部材は、断面において本質的にL字状又はC字状の形状となっている。これとは、数量における連結要素の選択及びターボチャージャの想定される振動特性の実施形態は無関係である。このことは、一方ではタービンケーシング自体内のタービンの回転数により影響され、他方では内燃機関の振動により影響される。本発明の範囲においては、一方では結要素の機械的な支持あるいは安定化により、他方では連結要素の質量により、使用される質量の同時の最小化において高い耐久性が得られるよう振動特性、特にターボチャージャ及びターボケーシングの固有振動数に影響を与えることが可能である。好ましくは、ターボチャージャの範囲において発生する振動が減衰される。したがって、使用される構成要素の削減された材料の使用において、同様の又は高められた寿命を実用することが可能である。
【0020】
このために、特に軸受フランジ及び出口フランジは、互いに平行に離間して配置されている。薄板ジャケット自体は、壁厚を最小化しつつ軸受フランジにも、出口フランジにも、熱的に接合されている。本発明の範囲においては、ここでは特に出口フランジに押込みばめ(Schiebesitz)を使用することも考えられ、薄板ジャケットが出口フランジの範囲において気密に後続の排ガスシステムに結合される。
【0021】
本発明の範囲においては、薄板ジャケットに対して、1〜2mmの厚さの壁厚が使用される。特に排ガス側の薄板、すなわち排ガスに接触する範囲にはオーステナイト系の材料が使用され、一方、外側シェル、すなわち排ガスに接触しない薄板ジャケットにおいては、フェライト系の材料が使用される。本発明の範囲においては、薄板部材、すなわち特に薄板ジャケットを深絞りされた変形部材として形成することも更に可能である。さらに、薄板ジャケット自体をハイドロフォーム部材として形成することもできる。
【0022】
特に、押込みばめの場合には、出口フランジにおける薄板ジャケットは、少なくとも部分的にこの出口フランジを締め付けるように(durchgreifend)配置されている。この薄板ジャケットは、これが、出口フランジにおいて押込みばめ部又は溶着結合部として配置された外側の結合延長部を有するよう形成されている。したがって、本発明の範囲においては、薄板ジャケットを溶接構造として形成することが可能である。例えば、薄板ジャケットは、変形され、そして、薄板片から変形されて気密に長手継目溶接される。本発明の範囲においては、薄板ジャケットを深絞り部材として形成し、続いてフランジに結合させることも可能である。そして、部材自体の安定性は、ここでも本発明による連結要素を介して形成される。
【0023】
本発明の範囲においては、連結要素自体をボルト、スリーブ又はシェル部材として形成することが可能であり、これらは、ここでもそれぞれフランジに結合されるものである。本発明の範囲においては、連結要素をフランジに係合式に結合させることが更に可能である。
【0024】
本発明に本質的な他の利点は、タービンケーシングの固有振動数、特に第1の固有振動数、好ましくはターボチャージャ全体の固有振動数が、180Hzより大きく、特に200Hzより大きく、好ましくは214Hzよりも大きく上昇されることである。したがって、ターボチャージャが固有振動数に達することによって悪影響を及ぼす振動特性に移行する前に、タービンケーシングあるいはターボチャージャ全体の非常に高い振動数の励起が必要である。
【0025】
本発明の範囲においては、ターボチャージャの固有振動数が上昇されるのみではなく、いわばターボチャージャに結合された排ガスマニホルドの固有振動数を上昇させることも更に可能である。同様に、本発明による構造と組み合わされたターボチャージャマニホルドモジュールを形成することも可能であり、そして、その固有振動数も上昇される。
【0026】
他の好ましい実施形態においては、薄板ジャケットが二重壁状に形成されている。本発明の範囲においては、ターボチャージャケーシングがその範囲において追加的な断熱原料(Isolationsmaterial)又は追加的な断熱材料(Isolationswerkstoff)を備えることが可能である。
【0027】
同様に、連結要素及び/又は出口フランジ及び/又は軸受フランジに他の部材を結合することも可能である。これは、例えば排ガス部材
又は排ガス再循環部材であり得る。これらは、特に排ガス再循環熱交換器又はキャタライザである。本発明の範囲においては、同様に、ターボチャージャ全体が連結要素自体を介してエンジン又はターボチャージャ懸架部に結合されることが可能である。
【0028】
本発明の他の利点、特徴、特性及び観点は、以下の説明の構成要素である。好ましい実施形態は、概略的な図面に示されている。これら図面は、本発明の容易な理解に寄与するものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、個々の部材の互いの連結が特に耐久性の観点において改善され、任意にターボチャージャを内燃機関に配置するか、若しくは固定するか、又は部材をターボチャージャに固定する可能性を与えるターボチャージャを提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】ボルトの形態の連結要素を備えた本発明によるターボチャージャを示す図である。
【
図2】シェル部材の形態の連結要素を有するターボチャージャを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。繰り返しの説明が簡易化の理由から省略される場合でも、図面においては、同一又は類似の部材には同一の符号が付されている。
【0032】
図1には、圧縮機ケーシング2及びタービンケーシング3を備えた本発明によるターボチャージャ1が示されている。圧縮機ケーシング2及びタービンケーシング3は、中間ケーシング4の結合部によって間接的に互いに結合されている。圧縮機ケーシング2においては、不図示の圧縮機ホイールが回転し、タービンケーシング3においては不図示のタービンホイールが回転するようになっている。これら両ホイールは、中間ケーシング4を貫通するシャフトを介して互いに結合されている。図示のとおり、圧縮機ケーシング2及び中間ケーシング4は、鋳造部品として形成されることができる。しかし、本発明の範囲においては、特にタービンケーシング3を溶接構造として形成することができ、このタービンケーシング3は、軸受フランジ5、薄板ジャケット6及び出口フランジ7を有している。このとき、薄板ジャケット6は、薄板部材として軸受フランジ5と出口フランジ7の間で延在している。薄板ジャケット6自体は、好ましくはそれぞれ1つの溶接継目8を介して径方向へ循環するように気密に軸受フランジ5及び出口フランジ7に結合されている。薄板ジャケット6は、その下側において、例えばマニホルドである排ガスラインの連結のために排気接続部9を備えている。本発明によれば、軸受フランジ5及び出口フランジ7は、複数の連結要素10を介して互いに結合されている。これら連結要素10は、ここでの図示においては、例えばねじ技術的に軸受フランジ5及び出口フランジ7に連結された連結ボルトの形態となっている。これら連結要素10は、タービンケーシング3の外部に配置されている。
【0033】
図2には
図1に示すものと本質的に同様のものが示されているが、連結要素10が外側でフランジ5,7に結合されたシェル部材の形態となっている点で異なっている。したがって、本発明の範囲においては、例えば取付開口部11を通して、出口フランジ7において追加的に該出口フランジ7に結合される他の部材を固定するか、又は取付開口部11を介してターボチャージャ1を内燃機関若しくはエンジンルームにおける他の懸架部に固定することが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 ターボチャージャ
2 圧縮機ケーシング
3 タービンケーシング
4 中間ケーシング
5 軸受フランジ
6 薄板ジャケット
7 出口フランジ
8 溶接継目
9 排気接続部
10 連結要素
11 取付開口部