(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の潤滑油組成物は、潤滑油基油、[A]一般式(1)で示される硫黄化合物[A1]および一般式(2)および/または一般式(3)で示される硫黄化合物[A2]との混合物であって、[A1]と[A2]の質量比([A1]/[A2])が0.8〜20を満たす硫化エステル、および[B]金属比が6以上であるカルシウムスルホネートを含有する。
【化3】
(式中、nは1以上の正の数を示し、R
1およびR
2はそれぞれ個別に水素または炭素数1〜24のヒドロカルビル基を示し、a1、b1、a2、b2はそれぞれ個別に3以上の整数であり、a1とb1の和およびa2とb2の和はそれぞれ個別に8〜14である。)
【化4】
(式中、R
3およびR
4はそれぞれ個別に水素または炭素数1〜24のヒドロカルビル基を示し、a、b、c、dはそれぞれ個別に4以上の整数であり、aとbの和は10〜16、cとdの和は9〜15である。)
【0010】
本発明の潤滑油組成物の潤滑油基油としては、鉱油、合成油および油脂が用いられ、これらは混合物であってもよい。
【0011】
鉱油としては、例えば、原油を常圧蒸留及び減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理を1種又は2種以上適宜組み合わせて精製したパラフィン系鉱油又はナフテン系鉱油が挙げられる。
【0012】
合成油としては、例えば、プロピレンオリゴマー、ポリブテン、ポリイソブチレン、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー、エチレンとプロピレンとのコオリゴマー、エチレンと1−オクテンとのコオリゴマー、エチレンと1−デセンとのコオリゴマー等のポリα−オレフィン又はそれらの水素化物;イソパラフィン;モノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、ポリアルキルベンゼン等のアルキルベンゼン;モノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン、ポリアルキルナフタレン等のアルキルナフタレン;ジオクチルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、ジトリデシルグルタレート等の二塩基酸エステル;トリメリット酸等の三塩基酸エステル;トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、トリメチロールプロパンオレート、ペンタエリスリトール2−エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等のポリオールエステル;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンオキシプロピレングリコール、ポリエチレングリコールモノエーテル、ポリプロピレングリールモノエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレングリコールモノエーテル、ポリエチレングリコールジエーテル、ポリプロピレングリコールジエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレングリコールジエーテル等のポリグリコール;モノアルキルジフェニルエーテル、ジアルキルジフェニルエーテル、モノアルキルトリフェニルエーテル、ジアルキルトリフェニルエーテル、テトラフェニルエーテル、モノアルキルテトラフェニルエーテル、ジアルキルテトラフェニルエーテル、ペンタフェニルエーテル等のフェニルエーテル;シリコーン油;パーフルオロエーテル等のフルオロエーテル、等が挙げられ、これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0013】
油脂としては、例えば、牛脂、豚脂、大豆油、菜種油、米ぬか油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、これらの水素添加物もしくはこれらの2種以上の混合物などが挙げられる。
【0014】
潤滑油基油の100℃における動粘度は1〜100mm
2/sが好ましく、2〜80mm
2/sがより好ましく、3〜50mm
2/sがさらに好ましい。100℃動粘度が1mm
2/s未満だと潤滑性が低下し、またミストの発生で作業環境が悪化するため好ましくない。一方、100mm
2/sを超えると、被加工物に付着して持ち去られる油剤の量が多くなるため好ましくない。
【0015】
潤滑油基油の40℃における動粘度は1〜500mm
2/sが好ましく、3〜400mm
2/sがより好ましく、5〜50mm
2/sがさらに好ましい。1mm
2/s未満だと加工性が低下するため、500mm
2/sを超えると洗浄性が低下するためそれぞれ好ましくない。
【0016】
潤滑油基油の含有量は、組成物全量基準で40〜98.9質量%が好ましく、45〜95質量%がより好ましい。
【0017】
本発明の潤滑油組成物は、[A]成分として、下記に示す一般式(1)で示される硫黄化合物[A1]および一般式(2)および/または一般式(3)で示される硫黄化合物[A2]との混合物であって、[A1]と[A2]の質量比([A1]/[A2])が0.8〜20を満たす硫化エステルを含有する。
【0020】
上記一般式(1)におけるn(硫黄架橋数)は1以上の正の数である。
硫黄化合物[A1]は、通常、硫黄架橋数(n)が異なるものの混合物であり、n(平均硫黄架橋数)は2以上が好ましく、3〜10がより好ましく、3〜8がさらに好ましい。
【0021】
上記一般式(1)におけるR
1およびR
2は、水素または炭素数1〜24、好ましくは1〜3、特に好ましくは1のヒドロカルビル基を示す。これらは同一であっても異なっていても良い。具体的には、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などのアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基などを挙げることができる。
これらの中では加工性の向上の観点からアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基が特に好ましい。
【0022】
上記一般式(1)におけるa1、b1、a2およびb2は、それぞれ個別に3以上の整数であり、a1とb1の和およびa2とb2の和はそれぞれ8〜14、好ましくは10〜12である。
a1とb1の和、a2とb2の和が8未満だと溶解性が低下するため、一方14を超えると加工性が低下するためそれぞれ好ましくない。
【0023】
一般式(1)で示される硫黄化合物は、不飽和結合を分子内に1つ有する炭素数が16〜22の不飽和脂肪酸(例えば、オレイン酸など)のエステルを硫黄架橋することにより得られる。原料の不飽和脂肪酸エステルは精製されたものが好ましいが、不純物を含んでいても使用することができる。原料中の不純物の含有量は50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下がより好ましく、10質量%以下が最も好ましい。
前記不飽和脂肪酸エステルとしては、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸プロピル等のオレイン酸エステルが好ましく、これらの中ではオレイン酸メチルの硫黄架橋物が効果的な摩擦低減効果を示すため好ましい。
【0024】
上記一般式(2)におけるR
3、一般式(3)におけるR
4は、水素または炭素数1〜24、好ましくは1〜3のヒドロカルビル基を示す。具体的には、例えば、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などのアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基などを挙げることができる。
これらの中では加工性の向上の観点からアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基が特に好ましい。
【0025】
上記一般式(2)におけるaおよびb、一般式(3)におけるcおよびdは、それぞれ個別に4以上の整数であり、aとbの和は10〜16、好ましくは10〜14であり、cとdの和は9〜15、好ましくは9〜13である。
aとbの和が10未満だと溶解性が低下するため、一方16を超えると摩擦低減効果が低下するためそれぞれ好ましくない。またcとdの和が9未満だと溶解性が低下するため、一方15を超えると加工性が低下するためそれぞれ好ましくない。
【0026】
一般式(2)および一般式(3)で表される硫黄化合物は、それぞれ単独で用いても良く、また混合して用いても良い。混合して用いる場合の配合割合は任意である。
一般式(2)および一般式(3)で示される硫黄化合物は、不飽和結合を分子内に2つ有する炭素数が16〜22の不飽和脂肪酸(例えば、リノール酸など)のエステルを硫黄架橋することにより得られる。原料の不飽和脂肪酸エステルは精製されたものが好ましいが、不純物(例えば、リノレン酸など)を含んでいても使用することができる。原料中の不純物の含有量は50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下がより好ましく、10質量%以下が最も好ましい。
【0027】
一般式(2)および一般式(3)で示される硫黄化合物の具体例としては、3−ノナノイックメチルエステル−5−ヘキシル−チオラン、3−ノナノイックエチルエステル−5−ヘキシル−チオラン、3−ノナノイックプロピルエステル−5−ヘキシル−チオラン、3−ドデカノイックメチルエステル−5−プロピル−チオラン、3−ドデカノイックエチルエステル−5−プロピル−チオラン、3−ドデカノイックプロピルエステル−5−プロピル−チオラン、3−ヘキサノイックメチルエステル−5−ノニル−チオラン、3−ヘキサノイックエチルエステル−5−ノニル−チオラン、3−ヘキサノイックプロピルエステル−5−ノニル−チオラン、3−ノナノイックメチルエステル−5−ヘキシル−1、2−ジチオラン、3−ノナノイックエチルエステル−5−ヘキシル−1、2−ジチオラン、3−ノナノイックプロピルエステル−5−ヘキシル−1、2−ジチオラン、3−ドデカノイックメチルエステル−5−プロピル−1、2−ジチオラン、3−ドデカノイックエチルエステル−5−プロピル−1、2−ジチオラン、3−ドデカノイックプロピルエステル−5−プロピル−1、2−ジチオラン、3−ヘキサノイックメチルエステル−5−ノニル−1、2−ジチオラン、3−ヘキサノイックエチルエステル−5−ノニル−1、2−ジチオラン、3−ヘキサノイックプロピルエステル−5−ノニル−1、2−ジチオラン等が挙げられる。
これらの中では3−ノナノイックメチルエステル−5−ヘキシル−チオランや3−ノナノイックメチルエステル−5−ヘキシル−1、2−ジチオランが加工性の向上のため好ましい。
【0028】
一般式(1)で示される硫黄化合物[A1]および一般式(2)および/または一般式(3)で示される硫黄化合物[A2]の質量比([A1]/[A2])は、0.8〜20であり、好ましくは0.9〜19である。
[A1]と[A2]の質量比([A1]/[A2])が0.8未満だと溶解性が低下するため、20を超えると加工性が低下するため、それぞれ好ましくない。
【0029】
[A]成分の含有量は、組成物全量基準で1〜50質量%であり、2〜40質量%が好ましく、3〜30質量%がより好ましい。[A]成分の含有量が1質量%未満だと充分な効果を得ることができず、50質量%を超えると潤滑油組成物の酸化安定性が低下する傾向がみられるため、それぞれ好ましくない。
【0030】
本発明の潤滑油組成物は、[B]成分として、金属比が6以上のカルシウムスルホネートを含有する。
【0031】
カルシウムスルホネートは、アルキル芳香族スルホン酸のカルシウム塩であり、分子量が300〜1500、好ましくは400〜700のアルキル芳香族化合物をスルホン化することによって得られる。
【0032】
上記アルキル芳香族スルホン酸としては、具体的には、いわゆる石油スルホン酸や合成スルホン酸等が挙げられる。
上記石油スルホン酸としては、一般に鉱油の潤滑油留分のアルキル芳香族化合物をスルホン化したものや、ホワイトオイル製造時に副生する、いわゆるマホガニー酸等が用いられる。また合成スルホン酸としては、例えば、洗剤の原料となるアルキルベンゼン製造プラントから副生したり、炭素数2〜12のオレフィン(エチレン、プロピレン等)のオリゴマーをベンゼンにアルキル化することにより得られる、直鎖状や分枝状のアルキル基を有するアルキルベンゼンをスルホン化したもの、あるいはジノニルナフタレン等のアルキルナフタレンをスルホン化したもの等が用いられる。またこれらアルキル芳香族化合物をスルホン化する際のスルホン化剤としては特に制限はないが、通常発煙硫酸や無水硫酸が用いられる。
【0033】
また、カルシウムスルホネートには、上記のアルキル芳香族スルホン酸を直接、カルシウムの酸化物や水酸化物等のカルシウム塩基と反応させたり、又は一度ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩としてからカルシウム塩と置換させること等により得られる
中性(正塩)カルシウムスルホネート;あるいは中性カルシウムスルホネートと過剰のカルシウム塩やカルシウム塩基を水の存在下で加熱することにより得られる塩基性カルシウムスルホネート;更にはカルシウムスルホネートの存在下で、カルシウムの水酸化物と炭酸ガス又はホウ酸とを反応させることにより得られる過塩基性(超塩基性)カルシウムスルホネートも含まれる。
【0034】
カルシウムスルホネートの金属比は6以上であることが必要であり、好ましくは6.5以上であり、7以上がより好ましい。金属比が6未満のときは加工性が不十分となり好ましくない。
なお、金属比は、金属元素の価数×金属元素含有量(mol)/せっけん基(即ち、アルキルスルホン酸基などの基)含有量(mol)で表され、本発明においては、カルシウムスルホネート中のアルキルスルホン酸基含有量に対するカルシウム含有量を示す。
【0035】
カルシウムスルホネートの全塩基価は、特に制限はないが、好ましくは50〜500mgKOH/gであり、より好ましくは100〜450mgKOH/gである。全塩基価が50mgKOH/g未満の場合は潤滑性向上効果が不十分となる傾向にあり、他方、全塩基価が500mgKOH/gを超えるものは製造が非常に難しく入手が困難であるため、それぞれ好ましくない。
なお、ここでいう全塩基価とは、JIS K 2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験方法」の7.に準拠して測定される過塩素酸法による全塩基価[mgKOH/g]をいう。
【0036】
[B]成分の含有量は、組成物全量基準で0.1〜10質量%であり、好ましくは0.5〜8質量%であり、より好ましくは1〜6質量%である。
カルシウムスルホネートの含有量が0.1質量%未満の場合、加工効率及び工具寿命の向上効果が不十分となる傾向にあり、10質量%を超えると金属加工油組成物の安定性が低下して析出物が生じやすくなる傾向にあるため、それぞれ好ましくない。
【0037】
また、本発明の潤滑油組成物には、上記した以外の従来公知の添加剤を含有することができる。かかる添加剤としては、例えば、[A]成分以外の非塩素系極圧剤;[B]成分以外の金属系清浄剤;ジエチレングリコールモノアルキルエーテル等の湿潤剤;アクリルポリマー、パラフィンワックス、マイクロワックス、スラックワックス、ポリオレフィンワックス等の造膜剤;脂肪酸アミン塩等の水置換剤;グラファイト、フッ化黒鉛、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、ポリエチレン粉末等の固体潤滑剤;アミン、アルカノールアミン、アミド、カルボン酸、カルボン酸塩、スルホン酸塩、リン酸、リン酸塩、多価アルコールの部分エステル等の腐食防止剤;ベンゾトリアゾール、チアジアゾール等の金属不活性化剤;メチルシリコーン、フルオロシリコーン、ポリアクリレート等の消泡剤;アルケニルコハク酸イミド、ベンジルアミン、ポリアルケニルアミンアミノアミド等の無灰分散剤;等が挙げられる。これらの公知の添加剤を併用する場合の含有量は特に制限されないが、これらの公知の添加剤の合計含有量が潤滑油組成物全量基準で0.1〜10質量%となるような量で添加するのが好ましい。
【0038】
本発明の潤滑油組成物の動粘度は特に制限されないが、加工部位への供給容易性の点から、40℃における動粘度は、500mm
2/s以下であることが好ましく、450mm
2/s以下であることがより好ましく、400mm
2/s以下であることがさらに好ましく、50mm
2/s以下であることが特に好ましい。一方、40℃における動粘度は、1mm
2/s以上であることが好ましく、3mm
2/s以上であることがより好ましく、5mm
2/s以上であることがさらに好ましい。
【0039】
本発明の潤滑油組成物は、加工効率、工具寿命などの加工性能、更には取扱性に優れるものであるため、金属加工分野の広範な用途において好適に使用することができる。ここでいう金属加工とは、切削・研削加工に限定されず、広く金属加工全般を意味する。また、本発明の潤滑油組成物は、通常給油方式による金属加工の他、極微量油剤供給式切削・研削加工(MQL加工)などに適用可能である。
金属加工の種類としては、具体的には、切削加工、研削加工、転造加工、鍛造加工、プレス加工、引き抜き加工、圧延加工等が挙げられる。これらの中でも、本発明の潤滑油組成物は切削加工、研削加工、転造加工などの用途に非常に有用である。
【実施例】
【0040】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
(硫黄化合物の調製)
下記の方法により3種類の硫化エステル化合物を調製した。
【0042】
[A1−1]:式(1)で示される架橋型硫化エステル(活性型、R
1、R
2=CH
3、a1+b1=12、a2+b2=12、硫黄の架橋数(n)が4以上のものが50モル%以上を占める硫化エステル)
150gのシリカゲルをガラス管に詰めたのち、7gの硫化エステル(DOG社製M10)を充填する。ヘキサン150ml、トルエン100ml、アセトン5%とトルエン95%の混合溶媒100mlで抽出したのち、アセトン100mlで抽出した画分から[A1−1]が得られる。得られた[A1−1]はC13−NMR、FD−MSおよび元素分析にて同定した。
【0043】
[A1−2]:式(1)で示される架橋型硫化エステル(不活性型、R
1、R
2=CH
3、a1+b1=12、a2+b2=12、硫黄の架橋数(n)が3以下のものが50モル%以上を占める硫化エステル)
150gのシリカゲルをガラス管に詰めたのち、7gの硫化エステル(DOG社製MX16)を充填する。ヘキサン150ml、トルエン100ml、アセトン5%とトルエン95%の混合溶媒100mlで抽出したのち、アセトン100mlで抽出した画分から[A1−2]が得られる。得られた[A1−2]はC13−NMR、FD−MSおよび元素分析にて同定した。
【0044】
[A2−1]:式(2)、(3)で示される環状硫化エステル(R
3、R
4=CH
3、a+b=12、c+d=11、混合比は、質量比で50:50)
150gのシリカゲルをガラス管に詰めたのち、1.5gの硫化エステル(DOG社製M10)を充填する。ヘキサン150ml、トルエン100mlで抽出したのち、アセトン5%とトルエン95%の混合溶媒100mlで抽出した画分から[A2−1]が得られる。得られた[A2−1]はC13−NMR、FD−MSおよび元素分析にて同定した。
【0045】
(実施例1〜5および比較例1〜9)
表1に各種の潤滑油基油及び添加剤の配合量と性能を記載した。基油の配合量(質量%)、各添加剤の添加量(質量%)は潤滑油組成物全量基準である。
得られた各組成物について、下記の試験を行った。
【0046】
(タッピング試験)
工具摩耗に対する性能を評価するため、実施例1〜5及び比較例1〜9の潤滑油組成物について、下記の条件にて標準油に対するタッピングエネルギー効率Eを測定し、この試験による切削性能評価を行った。
・被削材:S25C
・工具径:8mm
・タップピッチ:1.25mm
・タップすくい角:10度
・タップ食いつき角:1.5度
・タップ下穴径:7.0mm
・回転数:360rpm
・加工数:1穴
・標準油:DIDA(アジピン酸ジイソデシル)
・供給油剤量:9.0ml/分
【0047】
なお、タッピングエネルギー効率Eは、タッピングエネルギー効率E(%)=(比較標準油を用いた場合のタッピングエネルギー)/(油剤組成物を用いた場合のタッピングエネルギー)により定義される。
【0048】
(濁り評価試験)
100mlスクリュー管に実施例1〜5及び比較例1〜9の潤滑油組成物80gを入れ、0℃で1週間静置して濁りの有無を確認し評価した。
【0049】
【表1】