特許第6000232号(P6000232)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6000232液体注入式圧縮機要素部の冷却方法及びこのような方法が適用される液体注入式圧縮機要素部
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000232
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】液体注入式圧縮機要素部の冷却方法及びこのような方法が適用される液体注入式圧縮機要素部
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/16 20060101AFI20160915BHJP
   F04C 29/04 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   F04C18/16 Q
   F04C29/04 B
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-251843(P2013-251843)
(22)【出願日】2013年12月5日
(62)【分割の表示】特願2011-501064(P2011-501064)の分割
【原出願日】2009年3月25日
(65)【公開番号】特開2014-88876(P2014-88876A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2013年12月5日
(31)【優先権主張番号】2008/0199
(32)【優先日】2008年3月31日
(33)【優先権主張国】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】593074329
【氏名又は名称】アトラス コプコ エアーパワー,ナームローゼ フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】ATLAS COPCO AIRPOWER,naamloze vennootschap
(74)【代理人】
【識別番号】100074192
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100121496
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 重雄
(72)【発明者】
【氏名】マルテンス クリストフ アドリーン ラウラ
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−004679(JP,A)
【文献】 特開昭58−140498(JP,A)
【文献】 実開昭52−054906(JP,U)
【文献】 特表平08−500884(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00172430(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/16
F04C 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が第1及び第2の注入弁(13及び19)から圧縮機要素部(2)の圧縮室に注入される液体注入式圧縮機要素部の冷却方法であって、該方法が、
―前記液体を前記第1及び第2注入弁を介して前記圧縮室に注入し、
―前記圧縮機要素部(2)の前記圧縮室に注入される液体の量を、他のいかなる可能な調整装置とも無関係に、特定の調整用パラメータに応じて調整し、
―前記第1の注入弁(13)が、前記圧縮機要素部(2)の前記圧縮室の長手方向の中間点よりも圧縮空気出口(6)側に寄った位置に設けられ、調整可能な弁として形成された第2の注入弁が、該第1の注入弁(13)と前記圧縮空気出口(6)との間に設けられ、
―前記注入される液体の量は、その目的のために調整可能な弁として構成された前記第2の注入弁(19)によって調整され、
―前記特定の調整用パラメータが温度測定値であり、
―前記第1及び第2注入弁(13及び19)を介して前記圧縮室に注入される液体が同一の注入パイプによって供給される
ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記調整は、前記圧縮機要素部(2)を出る圧縮気体流の温度および/または周囲温度に基づき行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記注入される液体の量を制御することによって前記圧縮空気出口における前記温度を事前に設定された所望値に調整するステップを含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記調整は、前記圧縮機要素部(2)を出る圧縮気体流の温度および周囲温度に基づき行われ、前記方法は、前記注入される液体の量を制御することによって前記圧縮空気出口における前記温度を事前に設定された所望値に調整するステップを含み、前記圧縮空気出口における前記温度の前記所望値は、前記周囲温度の関数であるアルゴリズムに基づき計算されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記注入される液体の量を制御することによって、前記圧縮機要素部(2)の前記圧縮空気出口における前記温度を事前に設定された上下限値の間で設定するステップを含むことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記上限値および/または下限値は前記周囲温度の関数であるアルゴリズムに基づき計算されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
液体が第1及び第2の注入弁(13及び19)から圧縮機要素部(2)の圧縮室に注入される液体注入式圧縮機要素部の冷却方法であって、該方法が、
―前記液体を前記第1及び第2注入弁を介して前記圧縮室に注入し、
―前記圧縮機要素部(2)の前記圧縮室に注入される液体の量を、他のいかなる可能な調整装置とも無関係に、特定の調整用パラメータに応じて調整し、
―前記第1の注入弁(13)が、前記圧縮機要素部(2)の前記圧縮室の長手方向の中間点よりも圧縮空気出口(6)側に寄った位置に設けられ、調整可能な弁として形成された第2の注入弁が、該第1の注入弁(13)と前記圧縮空気出口(6)との間に設けられ、
―前記注入される液体の量は、その目的のために調整可能な弁として構成された前記第2の注入弁(19)によって調整され、
―前記注入される液体の量は容量測定値に基づき調整され、
―前記第1及び第2注入弁(13及び19)を介して前記圧縮室に注入される液体が同一の注入パイプによって供給される
ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
前記調整は、前記圧縮機の容量および/または前記注入される液体を冷却する冷却ユニットの容量に基づき行われることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記注入される液体の量を制御することによって、前記圧縮機の前記容量および/または前記冷却ユニットの前記容量を最小値に調整するステップを含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の注入弁(19)は制御ユニット(20)によって制御されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
圧縮機要素部(2)の圧縮室に液体を注入するために注入弁(13)が前記圧縮機要素部(2)に設けられた、請求項1乃至6の何れか1項に記載の方法が適用される液体注入式圧縮機要素部において、液体を前記圧縮室に注入するための第2の注入弁(19)が前記圧縮機要素部(2)に設けられ、前記第2の注入弁(19)は調整装置(20)に接続された制御可能な弁として作られるため、前記圧縮室に注入される前記液体の量を調整でき、前記圧縮室に注入される液体の量は前記温度測定値に基づいて前記第2注入弁によって調整されるのみであり、前記第1及び第2注入弁(13及び19)を介して前記圧縮室に注入される液体は同一の注入パイプを通して供給されることを特徴とする、液体注入式圧縮機要素部。
【請求項12】
前記調整装置(20)は、前記圧縮機要素部の出口における温度を測定するための、および/または周囲温度を測定するための、少なくとも1つの温度センサ(21および/または22)に接続されることを特徴とする、請求項11に記載の液体注入式圧縮機要素部。
【請求項13】
前記調整装置(20)は、前記圧縮機の容量を測定するための、および/または前記注入される液体を冷却する冷却ユニットの容量を測定するための、少なくとも1つの容量測定に接続されることを特徴とする、請求項11に記載の液体注入式圧縮機要素部。
【請求項14】
前記第2の注入弁(19)は電気的に、または空気圧によって、制御可能な弁として作られることを特徴とする、請求項11に記載の液体注入式圧縮機要素部。
【請求項15】
前記第2の注入弁(19)は、連続的に調整可能であることを特徴とする、請求項11に記載の液体注入式圧縮機要素部。
【請求項16】
前記第2の注入弁(19)はいくつかの段階に従って調整可能であることを特徴とする、請求項11に記載の液体注入式圧縮機要素部。
【請求項17】
液体が第1及び第2注入弁(13及び19)から圧縮機要素部(2)の圧縮室に注入される液体注入式圧縮機要素部の冷却方法において、この方法が、
―前記圧縮機要素部(2)の前記圧縮室に注入される前記液体の量を、他の何れか可能な調整に関係なく、特定の調整用パラメータに応じて調整し、
―前記注入される液体の量は、この目的のために調整可能な弁として構成された前記第2の注入弁(19)によって調整され、
―前記第1及び第2注入弁(13及び19)を介して前記圧縮室に注入される液体が同一の注入パイプによって供給され、
―前記注入される液体の量はパワー測定値に基づき調整される、
ことを特徴とする方法。
【請求項18】
前記調整は、前記圧縮機のパワーおよび/または前記注入される液体を冷却する冷却ユニットのパワーに基づき行われることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記注入される液体の量を制御することによって前記圧縮機の前記パワーおよび/または前記冷却ユニットの前記パワーを最小値に調整するステップを含むことを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体注入式圧縮機要素部の冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在では、液体注入式圧縮機要素部を冷却するために、この目的のために当該圧縮機要素部に設けられた複数の注入用開口部によって当該圧縮機要素部の圧縮室に注入される水または油などの液体は同一の注入弁から供給されている。
【0003】
これにより、注入される当該液体は必ずしも単に冷却機能を有するだけではなく、可動部、例えばスクリュー圧縮機要素部のロータなど、の潤滑および/または封止をもたらすこともできる。
【0004】
注入された液体は、圧縮気体と共に、圧縮機要素部の圧縮空気出口を通って圧縮機要素部を出る。その後、圧縮気体と液体との混合物は、液体を圧縮気体流から分離するために、液体分離装置に通される。
【0005】
次に、分離された液体は冷却器を経由して注入弁に戻され、圧縮機要素部に再び注入される。
【0006】
圧縮機要素部の回転速度または使用圧力が高いほど、注入される液体の量が同じであれば、より多くの熱が発生し、圧縮機要素部を通る液体の温度上昇をより強くもたらすことが実際に分かっている。
【0007】
圧縮機を高温環境条件下で(すなわち冷却剤を高温度で)回転させると、圧縮機要素部の出口における液体/気体混合物の温度がかなり上昇しうることが実際に分かっている。
【0008】
注入液体として油を使用する場合は、温度が10℃上昇しただけで油の寿命が半分になりうるので、圧縮機要素部の出口における油/気体混合物の温度が高温になりすぎないことが重要である。
【0009】
また、他の液体、例えば水など、を使用する場合は、圧縮機要素部の圧縮空気出口における温度が過度に上昇しないことを保証すべきである。その理由は、ロータや被膜などに使われている材料は無制限の高温に耐えられるものではなく、また液体の粘度に悪影響をもたらし潤滑および封止品質にとって都合が悪いからである。
【0010】
注入される液体が達しうる最低温度は、冷却器内で用いられる冷却剤の温度によって制約される。注入液体の温度のさらなる低下は、冷却剤の温度を下げるために過剰設計された熱交換器の使用によってのみ実現可能であるが、このような熱交換器はかなり大型で高価である点で不利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記および他の欠点の1つまたはいくつかを解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的のために、本発明は、圧縮機要素部の圧縮室に注入弁から液体が注入される液体注入式圧縮機要素部の冷却方法において、圧縮機要素部の圧縮室に注入される液体の量を、他の可能な調整装置に関係なく、特定の制御パラメータに応じて制御するステップを含むことを特徴とする方法に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるこのような方法の利点の1つは、温度上昇が小さくなるように、より多くの液体を注入できることである。これにより、より高い注入温度でも最大出口温度を超えなくなるので、冷却剤の温度を下げるための冷却器の過剰設計が不要になる。
【0014】
さらに、注入される液体の量が、他の可能な調整に関係なく、調整されるため、極めて単純な調整アルゴリズムをもたらす。
【0015】
本発明による方法の好適な一特徴によると、注入される液体の量は温度測定値、例えば、圧縮機要素部を出る圧縮気体流の温度、および/または周囲温度、に基づき調整される。
【0016】
測定された温度値に応じて行われるこのような調整により、如何なる使用条件下においても圧縮機要素部の出力の最適化が可能になる。
【0017】
このように、周囲温度が低い場合は少量の油流が供給されるように圧縮室に注入される油の量を確実に調整できるため、注入される液体流と冷却ユニットのエネルギー消費とに起因する圧縮機要素部における複合損失に関して最適値が達成されるため、全体としてエネルギーが節約される。
【0018】
このように、周囲温度が高い場合はより多くの油流が供給されるように圧縮室に注入される油の量を確実に調整できるため、冷却剤の量および/または冷却ユニットの容量を著しく増やす必要がなくなるため、この場合も全体としてエネルギーを節約できる。
【0019】
本発明は、液体を圧縮機要素部の圧縮室に注入するための注入弁を備えた、上記のような方法を適用可能な液体注入式圧縮機要素部にさらに関する。この圧縮機要素部は、他の可能な調整に関係なく、特定の制御パラメータに応じて上記注入弁を調整可能であるため、および/または液体を上記圧縮室に注入するための第2の注入弁が圧縮機要素部に設けられるため、圧縮室に注入される液体の量を調整可能であることを特徴とする。
【0020】
本発明の好適な一特徴によると、上記第2の注入弁は、調整装置に接続された制御可能な弁として作られ、この調整装置は好ましくは、圧縮機要素部の圧縮空気出口において温度を測定するための、および/または周囲温度を測定するための、少なくとも1つの温度センサに接続される。
【0021】
本発明の特徴をより良く説明するために、本発明による液体注入式圧縮機要素部の冷却方法およびこのような方法が適用される圧縮機要素部の以下の好適な変形例について、添付図面を参照しながら、限定的な意図は一切無しに単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明による圧縮機要素部が設けられた圧縮機設備を模式的に表わしたものである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この場合、図中の圧縮機ユニット1は圧縮機要素部2を備えた油注入式スクリュー圧縮機として実現される。この場合、圧縮機要素部2は、電動機3によって駆動され、圧縮される気体を空気濾過器5を介して引き込む空気入口4と、公知の種類の液体分離装置9に接続された逆止め弁7を介して管8に開口する圧縮空気出口6とを備える。
【0024】
圧縮空気出口6とは、圧縮された気体と注入された液体との混合物が圧縮室から押し出される圧縮機要素部2の出口を意味する。
【0025】
圧縮空気のユーザは、例えば、圧縮空気網などに供給するために、保圧弁11を介して上記の液体分離装置9に接続された圧縮空気ライン10から一定の使用圧力の圧縮気体を取り出すことができる。
【0026】
上記の液体分離装置9は、注入管12を介して上記圧縮機要素部2に、具体的には、この圧縮機要素部2に設けられた第1の注入弁13に、接続される。
【0027】
上記の注入管12には、冷却器14が設けられる。この場合、冷却器14は空冷式熱交換器として実現されるが、必ずしもそうする必要はない。空冷式熱交換器として実現された結果として、上記注入管12は、液体分離装置9と冷却器14との間に延在する第1の部分12Aと、冷却器14と圧縮機要素部2との間に延在する第2の部分12Bとに分割される。
【0028】
この場合、上記冷却器14に向かい合わせにファン15が設けられる。ファン15は、図示されていない電動機などの駆動手段によって駆動される。
【0029】
この場合、上記注入管12の第1の部分12Aには、公知の種類のサーモスタット式バイパス弁16が設けられる。弁16は注入管12の上記第2の部分12Bに接続されるので、上記冷却器14を橋絡できる。
【0030】
この場合、注入管の上記第2の部分12Bには油濾過器17がさらに設けられる。油濾過器17を注入管12の第1の部分12Aにおいて上記サーモスタット式バイパス弁16と同じハウジング内に組み込む必要があれば、そうすることもできる。
【0031】
必要であれば、図示されていない流れ制御装置を圧縮機ユニット1にさらに設けることもできる。流れ制御装置は、圧縮機要素部2の空気入口4に設けられる入口弁18を備える。入口弁18は、公知の方法でハウジングによって構成され、気体を吸い込むための入口開口が最大になる開位置と入口開口が完全に封止される閉位置との間で弁体を切り替えることができる。
【0032】
本発明によると、この場合、注入管12の枝管、具体的には上記注入管12の第2の部分12Bの枝管、が接続される第2の注入弁19が圧縮機要素部2に設けられるため、圧縮室に注入される液体の量を調整できる。
【0033】
本発明の好適な一特徴によると、上記の第2の注入弁19は、制御ユニット20に接続された調整可能な弁として実現される。制御ユニット20は、複数の測定センサにも接続される。
【0034】
この例においては、上記測定センサは、圧縮機要素部2の圧縮空気出口6に設けられた第1の温度センサ21と、周囲温度を測定するために例えば圧縮機ユニットのハウジング上に設けることができる第2の温度センサ22とを含む。
【0035】
本発明によると、上記第2の注入弁19は多くの方法によって実現でき、好ましくは、連続的に調整可能な、言い換えると連続的に可変なフロースルー開口部を有する、電気的に制御可能な弁で構成される。
【0036】
ただし、本発明によると、これは必須条件ではない。その理由は、固定されたいくつかの段階に従ってフロースルー開口部を調整可能な弁も使用できるからである。注入弁19は空圧制御式でもよいが、サーモスタット弁として作ることもできる。
【0037】
本発明による液体注入式圧縮機要素部の冷却方法は極めて単純であり、以下のとおりである。
【0038】
圧縮機ユニット1が稼働中のとき、大気が空気濾過器5を介して入口弁18から引き込まれるように、電動機3は圧縮機要素部2を駆動する。
【0039】
本発明によると、圧縮機要素部2内の圧縮熱を排出するために、注入管12と第1および第2の注入弁13、19をそれぞれ介して、冷却器14からの冷却された液体、この場合は油、が供給される。
【0040】
第2の注入弁19の存在により、より多量の油を圧縮機要素部2の圧縮室に注入することができる。この結果として、高周囲温度および/または高圧縮機速度および/または高圧縮機圧力で使用される場合に、注入される油をさらに冷却しなくとも、圧縮空気出口6の温度を低温に保つことができるため、低周囲温度および/または低回転速度および/または低圧力で使用するための冷却器14の過剰設計が不要になる。
【0041】
このように、注入弁が1つだけの従来型圧縮機要素部に比べ、同容量の圧縮機要素部2にわたる油の加熱も確実に減少する。
【0042】
この例において、第2の注入弁19は、制御ユニット20によって制御される調整可能な弁として作られる。
【0043】
本発明によると、圧縮室に注入される液体の量は、他の可能な調整装置に関係なく、特定の制御パラメータに基づき調整される。
【0044】
本例において、これは、第2の注入弁19から注入される液体の量を少なくとも1つの温度測定値に基づき調整することによって実現される。この場合、この少なくとも1つの温度測定値は、2つの測定値である。すなわち、第1の温度センサ21によって測定される温度である圧縮機要素部を出る圧縮気体流の温度と、第2の温度センサ22によって測定される周囲温度である。
【0045】
この利点の1つは、圧縮機要素部2の圧縮室に注入される油量を周囲温度に応じて調整できるため、如何なる周囲温度においても、圧縮機要素部の駆動部と冷却ユニットとで構成される圧縮機ユニットの出力を最適化できることである。
【0046】
このように、周囲温度が低いときは、圧縮機要素部への上記油流と冷却ユニットの冷却容量とに起因する両損失間の最適値に達するように、圧縮室に注入される油の量が確実に決められるので、エネルギーが節約される。
【0047】
圧縮室へのより大きな注入流が可能であることにより、周囲温度が高くても、例えば40℃を超える温度においても、圧縮機ユニットの良好な運転が保証されるため、より低い周囲温度で稼働させるために冷却器14を著しく過剰設計する必要はなく、また油の寿命に悪影響を及ぼすこともない。
【0048】
第2の注入弁19の制御は多くの方法で実現可能であることは明らかである。例えば、圧縮空気出口6における測定温度を、周囲温度に応じて変化する、または変化しない、ある目標値に制御することによって実現可能である。
【0049】
この目標値が変化する場合は、周囲温度の関数であるアルゴリズムによって目標値を計算できる。
【0050】
圧縮空気出口における測定温度を、周囲温度に応じて変化する、または変化しない、所定の上下限値の間で調整することも可能である。
【0051】
この場合も同様に、当該上下限値は、周囲温度の関数であるアルゴリズムによって計算可能である。
【0052】
下限値を設ける利点の1つは、動作圧力が高く、周囲温度および相対湿度も高いとき、第2の注入弁19を十分に閉じることによって、注入される液体における凝縮液の形成を回避できることである。
【0053】
さらに、図中の圧縮機ユニット1の動作は公知の圧縮機ユニットの動作と同様であり、圧縮気体と油との混合物が液体分離装置9に運ばれ、そこで遠心力の影響下で油が圧縮空気から公知の方法で分離される。
【0054】
次に、精製された圧縮空気を上記保圧弁11と、圧縮空気のあらゆる種類の用途において用いられる圧縮空気ライン10とを介して取り出すことができる。
【0055】
液体分離装置9において圧縮空気からリサイクルされた油は、上記液体分離装置9の底部に集められ、上記液体分離装置9内で優勢な圧力pによって押し出されて注入管12を通って冷却器14に達し、そこで油はファン15によって冷却される。
【0056】
所与の例においては油注入式圧縮機要素部にのみ言及しているが、本発明は、例えば水潤滑式圧縮機要素部の場合など、別の液体が圧縮室に注入される圧縮機要素部にも適用可能である。
【0057】
当然、注入弁13および19から注入される液体は、必ずしも本発明による液体分離装置からのものである必要はなく、この液体を別個の容器から供給することもできる。
【0058】
冷却器14は必ずしも空冷式熱交換器として作る必要はなく、この冷却器は如何なる種類の熱交換器でもよい。
【0059】
図示されていない本発明による方法の一変形例によると、注入される液体の量は、他の可能な調整に関係なく、特定の制御パラメータに応じて、この目的のために連続的または非連続的に調整可能な単一の注入弁13によって調整することもできる。
【0060】
後者の場合、注入弁13以外の追加の注入弁を設ける必要はない。
【0061】
圧縮室に注入される液体の量は、必ずしも本発明による調整装置20によって調整する必要はない。
【0062】
したがって、本発明によると、圧縮機要素部の出口温度を測定し、油の追加注入を連続的に直接設定または調整する毛細管を用いることもできる。
【0063】
例えば圧縮機要素部の出口温度に直接反応するバイメタルを使用することもできる。
【0064】
上記の各例において、注入される液体の量を調整するための特定の制御パラメータは、必ず温度値で構成されるが、本発明によると、これは必須条件ではなく、この制御パラメータを例えば以下の要素で構成することもできる。
− プロセスの総合効率(制御パラメータとしてのパワー測定値)、
− 液体の冷却効率(制御パラメータとしての液体冷却ユニットの容量)、
− 液体の寿命(制御パラメータとしての油品質測定値)、
その他。
【0065】
本発明は、例として説明し、添付図面に示した各実施形態に限定されるものでは決してなく、本発明による液体注入式圧縮機要素部の冷却方法およびこのような方法が適用される圧縮機要素部はあらゆる種類の変形例で実現可能であり、このような変形例は依然として本発明の範囲内に留まる。
図1