特許第6000263号(P6000263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000263
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】用量設定機構及び用量を設定する方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/315 20060101AFI20160915BHJP
【FI】
   A61M5/315 550A
   A61M5/315 550P
【請求項の数】15
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2013-533174(P2013-533174)
(86)(22)【出願日】2011年10月11日
(65)【公表番号】特表2013-539700(P2013-539700A)
(43)【公表日】2013年10月28日
(86)【国際出願番号】EP2011067681
(87)【国際公開番号】WO2012049144
(87)【国際公開日】20120419
【審査請求日】2014年9月18日
(31)【優先権主張番号】11168194.6
(32)【優先日】2011年5月31日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/392,760
(32)【優先日】2010年10月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・バトラー
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・プランプトリ
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−502146(JP,A)
【文献】 特表平07−500039(JP,A)
【文献】 特表2008−529690(JP,A)
【文献】 米国特許第06221053(US,B1)
【文献】 特表2008−532581(JP,A)
【文献】 特表2007−519430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20− 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達デバイスのための用量設定機構であって:
ハウジング(120;220);
用量設定工程中に回転可能であり、少なくとも部分的にハウジング(120;220)中に位置する用量ダイヤル部材(122);
用量投与工程中に回転可能スピンドル(126;226)を駆動するように構成され、少なくとも部分的に用量ダイヤル部材(122)内に位置する駆動スリーブ(124;224);
スピンドルに繋がれるスピンドルナット(128;228);及び
駆動スリーブ(126;226)及び/又はスピンドルナット(128;228)に解除可能にカップリングされ、そしてハウジング(120;220)に回転して固定されるスプラングロックナット(130;230);
を含んでなり、
ここで、用量ダイヤル部材(122)が回転して事前選択した第1の用量より大きく、そして事前選択した第2の用量より小さい用量を選択したとき、スプラングロックナット(130;230)はスピンドルナット(128;228)からデカップルされ、かくしてスピンドルナットが回転するのを可能にし、それにより選択用量が投与されるのを防止する、上記用量設定機構。
【請求項2】
用量ダイヤル部材(122)が、回転して第2の用量より小さい用量を選択したとき、スプラングロックナット(130;230)はスピンドルナット(128;228)から係合解除し、そしてスピンドルナットが回転するのを可能にする、請求項1に記載の機構。
【請求項3】
用量ダイヤル部材(122)が、回転して第2の用量より大きい用量を選択したとき、スプラングロックナット(130;230)はスピンドルナット(128;228)と係合し、そしてスピンドルナットが回転するのを防止する、請求項1又は2に記載の機構。
【請求項4】
用量ダイヤル部材(122)が、回転して第2の用量より大きい用量を選択したとき、付勢部材(131;231)はスプラングロックナット(130;230)を強制してスピンドルナット(128;228)と係合させ、そしてスピンドルナットが回転するのを防止する、請求項3に記載の機構。
【請求項5】
用量ダイヤル部材(122)が、回転して第2の用量より小さい用量を選択したとき、スプラングロックナット(130;230)は付勢部材に抗して作動する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の機構。
【請求項6】
スプラングロックナット(130;230)が少なくとも1つのロッキングアーム(158;258)を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の機構であって、用量ダイヤル部材(122)が回転して最小用量より小さい用量を選択したとき、少なくとも1つのロッキングアームがスプラングロックナット(130;230)を駆動スリーブ(124;224)に解除可能にカップリングさせる、上記機構。
【請求項7】
スプラングロックナット(130;230)は固定部材にスプライン係合される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の機構であって、固定部材がハウジング(120;220)に取り付けられる、上記機構。
【請求項8】
用量設定機構は再設定可能な用量設定機構である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の機構。
【請求項9】
用量設定機構は薬剤を含むカートリッジを含むカートリッジホルダ(106)にカップリングされる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の機構。
【請求項10】
用量設定機構はカートリッジホルダ(106)に取り外し可能にカップリングされる、請求項9に記載の機構。
【請求項11】
事前選択した第1の用量はゼロ単位である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の機構。
【請求項12】
事前選択した第1の用量はゼロ単位より大きいプライミング用量である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の機構。
【請求項13】
第1の用量は約2単位より小さいプライミング用量である、請求項12に記載の機構。
【請求項14】
用量ダイヤル部材(122)が回転して所定の第1の用量より小さい用量を選択したとき、スプラングロックナット(130;230)がスピンドルナット(128;228)と係合し、それによりスピンドルナット(128;228)の回転を防止する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の機構。
【請求項15】
薬剤の少なくとも所定の最小用量を設定する方法であって:
用量ダイヤル部材(122)をデバイスハウジング(120;220)に対して第1の方向に回転させることにより用量を設定する工程[ここでは用量ダイヤル部材(122)は駆動スリーブ(124;224)とクラッチ係合状態にあって、用量ダイヤル部材(122)及び駆動スリーブ(124;224)を近位軸方向に移動させ、ここで駆動スリーブ(124;224)は用量投与工程中にスピンドル(126;226)を駆動させるように構成される];
強制してスプラングロックナット(130;230)をスピンドルナット(128;228)から係合解除させる工程[ここでスピンドルナット(128;228)はスピンドル(126;226)にカップリングされそして軸方向に固定される];
所定の距離で、強制してスプラングロックナット(130;230)を駆動スリーブ(124;224)から係合解除させる工程[ここで付勢部材(131;231)は強制してスプラングロックナット(130;230)をスピンドルナット(128;228)と再係合させる];
を含んでなる、上記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、最小及び/又は最大の可能な用量設定を制御する薬物送達デバイス用の用量設定機構、及び薬剤の少なくとも所定の最小用量を設定し送達する方法を対象にする。特に、本特許出願は一般に、治療法が、患者が特定の薬剤の少なくともある最小用量の投与を受けてそしてある最大用量を超えないことを治療法が要求する場合の、ペン型薬物送達デバイスなどの薬物送達デバイスを対象にする。そのようなデバイスは多回投与カートリッジからの医薬品の自己投与を備え、そして最小及び/又は最大用量を設定するための用量制限機構を含む。本出願は、使い捨て及び再使用可能型薬物送達デバイスの両方において適用性を見出し得る。しかしながら、本発明の態様は同様に他のシナリオにおいて同等に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
自己投与注射可能薬剤は多くの場合可変用量注射デバイスを用いて送達される。そのようなデバイスは、特許文献1から公知である。注射に先立って、使用者は、それらがそれらの処方用量に従って必要とする用量、及び/又はそれらの現在の又は予想されるその後の身体状況を選択する。代表例は、患者の用量がそれらの処方用量並びにそれらの予想食物摂取及び活動レベルによって決まる場合の、糖尿病患者に対するインスリン送達デバイスであり得る。通常そのようなデバイスは、デバイスが送達することができる1単位から最大単位までのいずれもの用量、通常はペン型又はシリンジ注射デバイスなどの手動デバイスに対して60単位又は80単位を使用者が選択することを可能にする。
【0003】
特許文献1の薬物送達デバイスは、用量設定機構を受けるためのハウジング、カートリッジ、取り付け用量ダイヤルグリップを備えた用量ダイヤルスリーブ、クリッカー、駆動スリーブ、駆動スリーブをカップリング及びデカップリングするためのクラッチ、回転ピストンロッド及び設定用量を注射するのに押圧されるボタンを含む。特許文献1に開示されるペン型注射デバイスの全説明は参照することにより本明細書に組み入れられる。
【0004】
用量をダイヤルするために、使用者はダイヤルグリップを回転させる。係合されたクリッカー及びクラッチ手段に関して、ドライブスリーブ、クリッカー及びクラッチ手段及び用量ダイヤルスリーブは、ハウジングに対して及びピストンロッドに対して用量ダイヤルグリップと一緒に回転する。ダイヤルされている用量の聴覚及び触覚フィードバックはクリッカー及びクラッチ手段によってもたらされる。トルクはクリッカー及びクラッチ手段間で鋸歯を通して伝達される。
【0005】
用量ダイヤルスリーブ上のラセン溝及び駆動スリーブ中のラセン溝は同じリードを有する。これは、用量ダイヤルスリーブがハウジングから伸びること、及び駆動スリーブが同じ度合でピストンロッドに上ることを可能にする。走行の限界(limit of travel)において、用量ダイヤルスリーブ上の半径方向の止め具は更なる動きを防止するためにハウジング上に備えられた止め具を係合する。ピストンロッドの回転は、ピストンロッド上の分解点検及び駆動ねじの反対方向に起因して防止される。
【0006】
使用者が所望の薬用量を超えて不注意にダイヤルした場合、ペン型注射器は、薬用量がカートリッジから医薬品の投薬なしに下方にダイヤルされることを可能にする。用量ダイヤルグリップは逆回転する。これはシステムを逆に作動するようにさせる。クラッチ手段を通して伝達されるトルクは、ダイヤルした用量減少に対応するクリック音を作り出すために、鋸歯を互いに乗り越えるようにさせる。好ましくは、鋸歯は、各鋸歯の周辺の範囲が単位用量に対応するように配列される。
【0007】
所望用量がダイヤルされるとき、使用者は次にボタンを押し下げることによりこの用量を投薬し得る。これは、クラッチ手段のドッグツースを係合解除させる用量ダイヤルスリーブに対して軸方向にクラッチ手段を変位させる。しかしながら、クラッチ手段は駆動スリーブに対してキー付きのままである(remains keyed)。用量ダイヤルスリーブ及び関連の用量ダイヤルグリップはこれで自由に回転することができる。軸運動は、投薬中鋸歯は点検されることができないことを確実にするためにクリッカーの可撓性部分を変形する。これは駆動スリーブがハウジングに対して回転することを防止するが、それはそれに対して軸方向に尚自由に動くことができる。この変形はその後、圧力がボタンから取り除かれるとき、クラッチと用量ダイヤルスリーブ間の連結を修復するように駆動スリーブに沿ってクリッカー及びクラッチを戻させるために用いられる。駆動スリーブの縦方向の軸運動は、ねじ込みピストンロッドをハウジングインサート中のねじ込み開口部を通して回転させ、それによりカートリッジ中にピストンを進むようにさせる。
【0008】
言い換えれば、駆動スリーブは注射中、縦方向、即ち軸方向だけに動く。駆動スリーブ及びピストンロッドは、ピストンロッドの外面及び駆動スリーブの内面上で対応するねじ山を介して係合することから、駆動スリーブの縦運動はピストンロッドを回転するようにさせる。対応するねじ山を介してピストンロッドと係合するねじ込み開口部を備えたハウジングインサートはハウジング内に固定され、即ち回転を防止される。このように、回転ピストンロッドはハウジングインサートにおいてねじ込み開口部を通してねじ込まれ、即ちピストンロッドは、ねじ込み開口部及びピストンロッドの対応するねじ山によって画成されるラセン経路に沿って回転及び縦方向運動の組み合わせを行う。
【0009】
一度ダイヤル用量が投薬されると、用量ダイヤルスリーブは、用量ダイヤルグリップから伸びる複数の部材をハウジング中に形成される対応する複数の止め具と接触させることによって更なる回転が防止され、このようにゼロ用量位置を決定する。
【0010】
そのようなペン型薬物送達デバイスは、正式な医学訓練なしに個人による通常の注射を実施するために設計及び開発されている。自己処置はそのような患者がその疾患の効果的な管理を実施するのを可能にするような糖尿病を有する患者の中では、これは益々一般的になっている。医療従事者ではなく、患者はそのような薬物送達デバイスを使用している可能性があることから、1つの必要条件はデバイスが堅固な構造を有することである。薬物送達デバイスはまた、薬物送達デバイス操作及びデバイス動作の理解の両方により使いやすくする必要がある。これは特にインスリン溶液を反復自己注射する必要のある糖尿病患者に当てはまり、そして注射予定のインスリン量は患者によって異なりそして注射剤によっても異なってよい。少なくともその限りでは、ある糖尿病患者は、患者がインスリン溶液の同じ又は恐らく異なる事前セット量の連続測定薬用量を、正確にそして最小の器用さの問題で注射することを可能にする薬物送達デバイスを必要とし得る。ある糖尿病患者の場合、使用者は視力を障害している可能性があり、及び/又は器用さの限られた身体虚弱であり得ることから、これは更なる設計課題を提起する。
【0011】
インスリンに加えて、他の薬剤はそれらが治療的に有効になる前に送達すべき最小用量を必要とする。患者が治療的に有効な最小用量未満の用量を送達することが可能な可変用量デバイスは、使用者が用量計算の誤りによるか又は間違った用量を誤って選択することにより無効量を送達し得る可能性をもたらす。同様に、幾つかの薬剤は最大用量が超えるべきではないことを必要とする。これは、薬剤の副作用のリスク若しくは重度増加又は過剰若しくは望ましくない作用など、安全対策のためであり得る。現在の可変用量送達デバイスは、通常送達機構が提供することができる最大用量によって制限される最大用量を有し、しかしながら、これは薬剤の最大勧奨又は所定用量に必ずしも関連していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO2004/078239A1
【0013】
本発明の目的は、注射デバイスの使用者が、特定の薬剤の事前選択最小有効量未満の用量を設定及び投与する際のリスクを減少又は排除するデバイスを提供することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
この目的は請求項1において定義される用量設定機構によって解決される。本発明は少なくとも2つのアプリケーションを有する。第1は、画成用量窓内の可変用量となる必要がある単一活性薬剤の送達であり、即ちその用量はある最小用量より多い必要があり、そしてある最大用量を超えてはいけない。第2の用途は活性薬剤の組み合わせ製剤の送達に関するもので、ここでは少なくとも1つの薬剤は好ましくは可変用量として送達され、そして少なくとも1つの他の薬剤は好ましくは固定用量として送達され、そしてここではこの固定用量は例えば±10%の公称固定用量だけ画成用量窓内で安全に変動し得る。
【0015】
我々の開示に基づく最小及び/又は最大用量制限送達デバイスは、それが治療的に有効になる前に送達しようとする最小用量を必要とする薬剤に使用し得るが、ここでは用量調節の程度が必要となり得る。この用量調節は、患者の体重又はそれらの病状の重度に応じて用量を調整することを含み、多くの理由で必要となり得る。最小及び/又は最大用量制限送達デバイス(min/maxデバイス)はまた、患者による投薬ミスの可能性を減少させるために、完全可変(即ち0〜max用量)デバイスの代わりに使用し得る。可変用量ペンよりもむしろmin/maxデバイスを用いることは、患者が規定用量窓を外れて、即ち高すぎるか又は低すぎる用量を誤って送達し得るリスクを減少させる。
【0016】
Min/maxデバイス利用の1つの例は、患者がmin/max送達デバイスを小児が自己投与することができるように小児に与えることができて、そして患者がmin/maxデバイスの最小及び最大レベルは、いずれの過量摂取又は過少摂取の可能な重大性を限定することを知り得る場合である。そのようなデバイスが適用し得る場合の別の例は、長時間作用型インスリンを服用する患者に対してである。通常可変用量ペンは、患者がその目標血中グルコースレベルに達するようにそれらの用量を「調節している(titrating)」ときに必要とされる。しかしながら、一度目標血中グルコースレベルが実現されると、長時間作用型インスリンの用量は通常比較的長時間にわたって多かれ少なかれ変わらないままである。この期間中、患者のインスリン用量が1日毎の基準で一定であるか又はほんのわずかの単位だけ変化する場合、患者の長時間作用型インスリンニーズは最小及び/又は最大用量制限送達デバイスによって効果的に満たされ得る。
【0017】
表1(下記に提供される)は、単一の1〜80単位可変用量デバイスの代わりに使用し得る、送達デバイスの実例ファミリー、「Pen1」〜「Pen4」を示す。Pen1〜4の各々はほぼ同じ基本機構で設計及び製作されるが、各ペンは異なる最小及び/又は最大用量を設定するために使用される更なる又は別の部材を含む。患者はそれらの安定な長時間作用型インスリン用量に応じて特定のPenを処方され得る。例えば、表1によれば、1日当り30単位の長時間作用型インスリンを処方された患者は、それぞれ18単位の最小用量及び42単位の最大用量を有する、Pen2を処方され得る。どのような数の機械的部材でも、軸方向及び/又は回転止め具、戻り止め、クラッチ、圧縮フィンガ、又は類似の部材を含んで、これらの所定のmin/max用量を確実にするようなペン設計に使用することができる。例では、スプラングロックナット及びスピンドルナットはこれらの所定のmin/max用量を確実にするように構成され得る。
【0018】
糖尿病患者のインスリン用量は経時的に徐々に変わり得る。それ故、用量が増加するにつれてPen間の円滑な移行を可能にするために、Pen間に少量の用量範囲の重複があってよい。例えば、表1aによれば、1日当り40単位の長時間作用型インスリンを処方された患者は、患者がその用量を経時的に減少させることを期待する場合はPen2が、又は患者がその用量を経時的に増加させることを期待する場合はPen3が投与され得る。「ファミリー」中のペンの数及び表1中に示される選択用量範囲は一例に過ぎない。本発明のmin/maxデバイスを用いることにより、用量選択のときのミスはペンの動作窓内に限定される。用量を上方にダイヤルすること又は用量をペンの用量範囲未満に送達することは可能となり得ず、そしてこれは患者にその誤りを警告し得る。
【0019】
特に用量誤り又は薬物/デバイスの取り違えをもたらし得る類似デバイスとの混同のリスクがある場合、min/maxデバイスはまた他の医薬品の送達に適用し得る。1つのそのような例は速効作用型インスリン及び長時間作用型インスリンであり得る。これらのインスリンはいずれも「単位」で計られ、しかしながら、同じ単位数の各インスリンタイプは非常に異なる効果を有する可能性があり、そして患者には1日を通じて異なる回数で服用しようとする各薬物の異なる用量が処方され得る。長時間作用型及び速効作用型インスリンの取り違えは低血糖症を引き起こし得て、そして潜在的に致死的になる。両タイプのインスリンは注射ペンデバイスによって送達され得る。ペンは異なるデザイン、色、形状から成りそして異なるラベルを持っていても、患者はそれらのインスリンペンを取り違えることが分かっている場合、「自動操縦」効果が起こり得るというようなルーチンベースで患者はそれらの注射を行う。
【0020】
今回提案のmin/maxデバイスはこの取り違え発生を防止するのに資する。例えば、速効作用型及び長時間作用型インスリンの両方が各々表1によるmin/maxデバイスのファミリーを備えると仮定する。患者には1日当り50単位の長時間作用型インスリン(長時間作用型Pen3を必要とし得る)、及び食事と一緒に15単位の速効作用型インスリン(Pen1を必要とし得る)が処方される。最も危険な取り違えは、患者が長時間作用型インスリンよりもむしろ速効作用型インスリンの50単位を誤って送達する場合に起こり得る。患者がmin/maxデバイスでこれを行うのを試みた場合、次いで患者は速効作用型インスリン(Pen1)を手に取り得て、それらが22単位を超えてダイヤルし得ないことを見出し得る。このことは、これが正しいインスリンペンではなくそれ故間違ったインスリンタイプであるという事実を患者に警告し、そしてそれ故間違ったインスリンが送達されるのを防止し得る。
【0021】
このmin/max概念は使い捨てデバイス及び再使用可能デバイスの両方に同様に提供され得る。
【0022】
ある医薬品はまた、送達デバイス又は針の正しい動作を確認するために使用者が「プライミング」用量を実施することを必要とする。これは通常2単位の「エアショット」を送達し、次いで医薬品が針から出るのが見えるのをチェックすることによって達成される。表1に示されるmin/max概念はこれを許容し得ない。プライミング機能性が必要な場合、例えば1〜2単位の範囲の第2の許容「用量窓」も各ペン機構内に導入され得る。これを適用可能にする方法の例は表2に示される。表1及び2はいずれも偶数単位だけを示すが、これは明確さのためだけに行われ、デバイスは奇数及び偶数単位又は可能な1/2単位を送達するのに構成され得る。
【0023】
記述のように、本開示デバイスはまた、活性薬剤の組み合わせ製剤の送達が必要な治療法にも有用であり得て、ここでは少なくとも1つの薬剤は好ましくは可変用量で送達され、そして少なくとも1つの他の薬剤は好ましくは固定用量で送達される。患者が医薬品の組み合わせを必要とする場合、そのときはそれらの医薬品が、一個の針を通した1つの注射において単一注射デバイスによる送達のために単一製剤(即ち両方の薬物が事前に定義された割合で混ぜ合わされそして1つの一次パックで供給される)として提供することができる場合に利点がある。しかしながら、薬物の1つが使用者選択可能可変用量の送達を必要とし、並びに第2の薬物が治療的に有効になる最小用量以上の用量を必要としそして所定の最大用量を超えてはいけない場合に、そのとき薬物送達デバイスは、それがこの範囲外の用量を送達することを防止されるように構成されることは有益である。
【0024】
例えば、患者には、長時間作用型インスリン(通常可変用量デバイスで送達される)及びGLP−1(通常固定用量として送達される)の併用療法が処方され得る。GLP−1はプログルカゴン遺伝子の転写産物から由来するグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)であり、そしてそれが消化管ホルモンとして腸管L細胞により分泌される体内に見出される。GLP−1は、それ(及びそのアナログ)を糖尿病の有力な処置法として広範囲な検討の対象とする幾つかの生理学的性質を有する。患者が2つの注射を行う必要があることを回避するために、2つの医薬品は単一製剤にプレミックスされる。両薬剤は固定比率でプレミックスされるので、GLP−1用量も変動することなしに長時間作用型インスリン用量をも変動させることが可能ではない。しかしながら、GLP−1用量が所定の許容誤差内、例えば公称固定用量前後の±10%で変動することは容認可能である。それ故、それらの間に長時間作用型インスリンの可変用量、及び所定の「固定」用量の±10%内に入るGLP−1用量の送達を可能にし得るプレミックスデバイスのファミリーを提供することは、min/max制限デバイスのファミリーを用いて可能である。
【0025】
表3は例えば、20mg±10%に「固定」されるGLP−1用量と併せた22〜76単位からいずれの長時間作用型インスリンの送達を可能にする6min/maxペン型注射デバイスのファミリーを示す。ファミリー内の各Penは異なる最小及び最大用量閾値を有してよく、そして2つの医薬品の適切な混合比で充填した薬剤の一次パック又はカートリッジを供給し得る。ペンデバイスのファミリーは、薬剤の適切な混合比カートリッジでプレフィルドした使い捨て機械デバイスとして供給され得る。あるいは、デバイスのファミリーは再使用可能機械デバイスとして供給し得る。後者の場合には、デバイスは好ましくは特定の混合比カートリッジ専用であり、即ち正しい混合比カートリッジだけが各ペンファミリー部材に装填することができる。
【0026】
第3の別の方法は、最小及び最大用量機能性でプログラミングすることができる、単一電子デバイスを介するペンデバイスの「ファミリー」を提供することである。好ましくは、min/max電子デバイスは、必要な最小及び最大閾値がその特定のカートリッジ及び混合比に対してであり得る、デバイスに装填時に自動的に伝え得るコード化カートリッジを装填し得る。
【0027】
ペン型デバイスなどの可変用量薬物送達デバイスで最小設定可能用量を実現する1つの特定の手段は、所定の最小用量が到達されるまでデバイスの投薬を防止する機構を含むことである。最大用量機構もまた最小用量機構で使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本明細書に開示された最小用量制限機能は、スピンドルナット及びスプラングロックナットを用いて実現され得る。1つの可能な例示的実施態様によれば、薬物送達デバイスのための用量設定機構は、薬物送達デバイスハウジング、少なくとも部分的にハウジング中に位置する用量ダイヤル部材、及び少なくとも部分的に用量ダイヤル部材内に位置する駆動スリーブを含んで備えられる。用量ダイヤル部材は投薬工程中に回転可能であり、そして駆動スリーブは用量投与工程中に回転可能スピンドルを駆動するように構成される。用量設定機構はまた、スピンドルにカップリングされるスピンドルナット、及び駆動スリーブに解除可能にカップリングされそしてハウジングに回転して固定されるスプラングロックナットを含む。用量ダイヤル部材が事前選択最小用量よりも小さい用量を選択するように回転し、そして用量送達を試みる場合、ピストンロッドが前進するように強制されないことから、スプラングロックナットはスピンドルナットを回転可能にし得て、それにより用量が投与されることを防止する。言い換えれば、スピンドルナットは特許文献1による上述のデバイスのハウジングインサートにおけるねじ込み開口部と類似の機能を有する。しかしながら、ハウジングインサート中のねじ込み開口部と対照的に、スピンドルナットはスプラングロックナットの位置及び/又はそれとの係合に応じて回転し得えて、それ故用量投与を可能にする(スプラングロックナットを介してハウジングに固定されたスピンドルナットで)か又は用量投与を防止(スプラングロックナットを介してハウジングに固定されないスピンドルナットで)する。
【0029】
本発明によれば、用量ダイヤル部材が事前選択した第1の用量より大きい、そして事前選択した第2の用量より小さい用量を選択するように回転するとき、スプラングロックナットがスピンドルナットからデカップルされ、それ故にスピンドルナットが回転することを可能にしそれにより選択用量が投与されることを防止するように、スピンドルナット及びスプラングロックナットを設計し配置することが好ましい。所定の第1の用量及び所定の第2の用量は、異なるグループの使用者の個々のニーズに基づいて選択され得る。例えば、所定の第1の用量はゼロ単位であってよく、それ故に事前選択した第2の用量より小さいいずれの用量(最小用量)も投与されることが防止される。別の方法として、所定の第1の用量はゼロ単位より多い、例えば1又は2単位のプライミング用量であってよい。後者の場合、プライミング工程は尚使用者により行われることができ、しかしながら事前選択した第1の用量より大きい用量(プライミング用量)及び事前選択した第2の用量より小さい用量(最小用量)の注射は防止される。
【0030】
別の例では、薬剤の少なくとも所定の最小用量を送達する方法が提供される。方法は、デバイスハウジングに対して第1の方向に用量ダイヤル部材を回転することにより用量を設定することを含み、ここでは用量ダイヤル部材は駆動スリーブとクラッチ係合しており、駆動スリーブを用量ダイヤル部材で回転するようにさせ、用量ダイヤル部材及び駆動スリーブは近位軸方向に動き、ここで駆動スリーブは用量投与工程中にスピンドルを回転駆動するように構成される。更に方法は、使用者が事前に定義された最小用量値と同じかそれより大きい用量を設定する時点で、スプラングロックナットをスピンドルナットから係合解除させることを含み、ここでスピンドルナットはスピンドルにカップリングされそしてハウジングに対して軸方向に固定される。尚更に、方法は、事前に定義された最小用量値に対応する駆動スリーブの所定の距離で、強制してスプラングロックナットを駆動スリーブから係合解除させることを含み、ここで付勢部材は、強制してスプラングロックナットをスピンドルナットと再係合するようにさせる。スプラングロックナット及びスピンドルナットが係合するとき、スプラングロックナットはスピンドルナットがハウジングに対して回転するのを防止する。スピンドルナットが回転を防止される限り、回転無しで遠位に駆動スリーブを動かし、それによりスピンドルナットを通してスピンドルを前進させることにより、用量の投与は可能である。薬剤の少なくとも所定の最小用量を送達する他の例示的方法も同様に可能である。
【0031】
min/maxデバイスの例では、使用者は必要に応じて、所定の最小用量と同じ又はそれより大きい用量をダイヤルし、そして次に必要な用量レベルに後退ダイヤルすることにより、最小用量機能を手動で無効にすることができる。加えて、最小用量未満の用量計数は、ダイヤル用量が通常の最小用量よりも少ないことを識別するために、赤色などの異なる色で色付けされ得る。
【0032】
別の例では、「エアショット」又は「プライミング用量」機能は、ある単位数がダイヤルされた後に、軸方向運動において互いから係合解除するためにだけスプラングロックナット及びスピンドルナットを設計することにより備えることができる。
【0033】
本提案薬物送達デバイスの種々態様のこれら並びに他の利点は、添付図面を適切に参照して下記の詳細な説明を読むことにより当業者に明らかになるものである。
【0034】
例示的な実施態様は以下において図面を参照して本明細書に記載される:
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1A】ペン型薬物送達デバイスの実例設計を図示する。
図1B図1Aのペン型薬物送達デバイスの透視断面図を図示する。
図2図1Bに示される用量設定機構の拡大断面図を図示する。
図3】用量設定工程中の図1Bに示される用量設定機構の拡大断面図を図示する。
図4】用量設定工程中の図1Bに示される用量設定機構の拡大断面図を図示する。
図5】用量投与工程後の図1Bに示される用量設定機構の拡大断面図を図示する。
図6】使用者がプライミング操作を行うことを可能にする別の用量設定機構の拡大断面図を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1Aを参照して、例示的なペン型設計配置に基づく薬物送達デバイス100が示される。薬物送達デバイス100の一般的設計及び機能は、主として特許文献1を参照して上記のデバイスに対応する。
【0037】
より詳細には、本発明の薬物送達デバイス100は、第1のカートリッジ保持部材102を有するハウジング、及び用量設定機構104を含む。薬物送達デバイスは、再設定可能薬物送達デバイス(即ち、再使用可能デバイス)又は代わりに再設定不可能薬物送達デバイス(即ち、再使用不可能デバイス)であってよい。カートリッジ保持部材102の第1の端部及び用量設定機構104の第2の端部は、連結機能によって合わせて固定される。再設定不可能デバイスでは、これらの連結機能は恒久的及び非可逆性であり得る。再設定可能デバイスでは、これらの連結機能は解除可能であろう。
【0038】
この図示された配置では、カートリッジ保持部材102は用量設定機構104の第2の端部内に固定される。取り外し可能キャップ(示されず)は、カートリッジ保持部材又はカートリッジハウジングの第2の端部又は遠位端の向こう側に解除可能に保持される。用量設定機構104は用量ダイヤルグリップ112及び窓又はレンズ114を含む。用量スケール配置は窓又はレンズ114を通して見える。薬物送達デバイス100内に含まれる薬剤の用量を設定するために、使用者は、ダイヤル用量が用量スケール配置を介して窓又はレンズ114中に見えるようになるように用量ダイヤルグリップ112を回転する。
【0039】
図1Aは、医療送達デバイス100のダイヤル端118から取り外されるカバーキャップを備えた医療送達デバイス(medical delivery device)100を図示する。この取り外しはカートリッジハウジング106を露出する。好ましくは、それから多くの用量の医薬品が投薬され得るカートリッジ(示されず)はカートリッジハウジング106中に備えられる。好ましくは、カートリッジは、例えば1日に一度又はそれ以上の回数、比較的頻繁に投与することができる薬剤のタイプを含む。1つのそのような薬剤は長時間作用型か又は短時間作用型インスリンか又はインスリンアナログで;しかしながら、いずれの薬剤も又は薬剤の組み合わせも可能である。カートリッジは、カートリッジの第2の端部又は近位端の近くに保持される栓又はストッパを含む。薬物送達デバイスはまた、駆動スリーブ及びスピンドルを含む(図1Aには図示されず、しかし図1Bにおいてそれぞれ要素124及び126として図示される)。
【0040】
カートリッジハウジング106は遠位端及び近位端を有する。好ましくは、カートリッジハウジング106の遠位端は、取り外し可能ニードルアセンブリを取り付けるためにハブ(hub)8を含む。しかしながら、他のニードルアセンブリ連結機構もまた使用し得る。薬物送達デバイス100が再設定可能デバイスを含む場合、カートリッジハウジング106の近位端は用量設定機構104に取り外し可能に連結される。1つの好ましい実施態様では、カートリッジハウジングの近位端はバヨネット連結を介して用量設定機構104に取り外し可能に連結される。しかしながら、当業者には当然のことながら、ねじ山、部分ねじ山、ランプ(ramp)及び戻り止め、スナップロック、スナップフィット、及びルアーロックなどの他のタイプの取り外し可能連結方法も使用し得る。
【0041】
既述のように、図1Aに図示される薬物送達デバイスの用量設定機構104は、再使用可能薬物送達デバイスとして利用され得る(即ち、再設定できる薬物送達デバイス)。薬物送達デバイス100が再使用可能薬物送達デバイスを含む場合、カートリッジはカートリッジハウジング106から取り外し可能である。カートリッジは、使用者にカートリッジハウジング106から用量設定機構104を単に連結解除させることにより、デバイス100を破壊することなしにデバイス100から取り外し得る。
【0042】
使用中、一度キャップが取り外されると、使用者はカートリッジハウジング106の遠位端に備えられるハブ108に好適なニードルアセンブリを取り付けることができる。そのようなニードルアセンブリは、例えばハウジング106の遠位端上にねじ込まれ得て、又は代わりにこの遠位端上にスナップされ得る。使用後、交換可能キャップがカートリッジハウジング106を再カバーするために使用され得る。好ましくは、交換可能キャップの外側寸法は、デバイスが使用されていないで、交換可能キャップがカートリッジハウジング106をカバーする位置にあるときに、全一体(unitary whole)の印象をもたらすように、用量設定機構104の外側寸法に類似又は同一である。
【0043】
図1Bは、薬物送達デバイス100の透視断面図を図示し、そして特に用量設定機構104の詳細断面図を示す。用量設定機構104は、ハウジング120及びハウジング120中に少なくとも部分的に位置する用量ダイヤル部材122を含む。用量ダイヤル部材は用量設定工程中に回転可能である。更に、例では、用量ダイヤル部材は数字スリーブを含む。用量設定機構104はまた、用量ダイヤル部材122中に少なくとも部分的に位置する駆動スリーブ124を含む。この駆動スリーブ124は用量投与工程中に回転可能スピンドル126を駆動するように構成される。用量設定機構はまた、スピンドルナット128及びスプラングロックナット130を含む。スピンドルナット128はスピンドル126にカップリングされ、そしてハウジング120に対して軸方向に固定される。更にスプラングロックナット130は解除可能に駆動スリーブ124にカップリングされ、そして好ましくはハウジング120に回転固定される。スプラングロックナット130は少なくとも1つの付勢部材と連通している。例えば、図1Bに描出のように、スプラングロックナット130はばね131と連通している。
【0044】
一般に、用量ダイヤル部材122が事前選択最小用量より小さい用量を選択するように回転するとき、スプラングロックナット130はスピンドルナット128が回転するのを可能にし、それにより用量が投与されることを防止する。図2を参照して、スピンドル126の遠位端150はスピンドルナット128にねじ込み連結される。注射工程中、ねじ込みスピンドルナット128がハウジング120(ハウジングに対して回転可能になっていない)に固定して保持される場合、回転可能スピンドル126が遠位方向152において駆動スリーブ124によって駆動されるとき、スピンドル126はそれがスピンドルナット128に備えられたねじ山中に通り抜けるとともに回転及び軸方向に動き得る。従ってスピンドルは前進し、そしてプランジャ127は、カートリッジアセンブリ102の遠位端に取り付けられた取付け両口針を通してカートリッジから薬剤を出させるように、薬物カートリッジ中のストッパに軸方向に向いた力を与え得る。しかしながら、スピンドルナット128が自由に回転し、そしてスピンドル126が駆動スリーブ124を用いて回転するとき、スピンドルナット128はスピンドル126とともに回転し、そしてスピンドルは従ってカートリッジに軸力をかけることが防止され又は実質的に防止され、用量を投薬することを防止する。
【0045】
上記のように、このスピンドルナット128は軸方向に拘束され、そしてハウジング120に対して自由に回転できる。ゼロ用量位置では(例えば、図2に図示されるように)、スピンドルナット128はスプラングロックナット130によって回転ロックされる。スプラングロックナット130は回転を防止するためにハウジング120に固定され(例えばスプラインされ)、しかし自由に軸方向に移動(travel)できる。ロックナット130は、ハウジング120に連結される固定部材(例えば、インサート)にスプラインされているなど他のやり方で回転固定され得る。スプラングロックナット130はまた、スピンドルナット128とスプラングロックナット130の結合状態において回転を防止するために、スピンドルナット128上の対応の類似突出部とはめ合う突出部を含んでよい。図2では、スピンドルナット128の突出部及びスプラングロックナット130の突出部は、それぞれ歯154、156として描出される。しかしながら、当業者には当然のことながら、他のタイプの突出部が可能で、並びにスピンドルナット128及びロックナット130を係合する他の手段も可能である。ほんの1つの例として、1つの別の配置では、スプラングロックは回転可能であり得て、ここでスプラングロックは第1のピッチを有するねじ山を含んでよい。この第1のピッチはそれが駆動スリーブのピッチよりも大きいように選択され得て、その結果駆動スリーブが用量を選択するように回転するとき、スプラングロック130もまた回転し、しかし非常に遅い速度で回転し、それ故小さい軸方向距離を移動する。例えば、そのような配置では、第1及び第2のピッチは選択され得て、その結果駆動スリーブが10回転だけ回転した場合、スプラングロックは一回だけ回転し得る。
【0046】
スプラングロックナット130は少なくとも1つのロッキングアームを含んでよい。例えば、ロックナット130は、ロックナット130の全円周周りに伸びるロッキングアーム158を含む。しかしながら、他の例では、ロッキングアームは円周のほんの一部分周りに伸びてよい。このロッキングアーム158は駆動スリーブ124の遠位端160を解除可能に係合する。使用者が用量を設定又はダイヤルするために用量ダイヤル部材122を回転するとき、駆動スリーブ124は用量ダイヤル部材122に沿ってラセン状に回転する、即ち駆動スリーブ124は並進及び回転運動の組み合わせを行う。従って、ロッキングアーム158は、初期の用量ダイヤリング中近位方向において軸方向に移動するためにスプラングロックナット130を備える。下記により詳細に説明するように、薬物送達デバイス100の最小用量に対応する所定の点で、少なくとも1つのロッキングアーム158は駆動スリーブ124から係合解除する。ロッキングアーム158が駆動スリーブ124から係合解除するとき、スプラングロックナット130はばね131の力を受けてその初期位置に戻り、そしてこれは回転に抗してスピンドルナット128をロックする。
【0047】
用量設定機構104の操作は、図2〜5を参照してより詳細に下記に記載される。第1に、使用者が用量設定機構104の最小用量より小さい用量をダイヤルするときに参照して操作が記載される。使用者が用量をダイヤルするために用量ダイヤル部材122を回転させると、駆動スリーブ124は回転しそして近位方向162において軸方向に移動する。図2に図示するように、スプラングロックナット130のロッキングアーム158は、駆動スリーブ124の遠位部分160上にクリップで留まる。この遠位部分160は、駆動スリーブの円周又は円周の一部分の周りに伸びる対応のアーム161を有してよい。アーム158及びアーム161は合わせてクリップされ得る。そのように、駆動スリーブ124は近位方向162に移動すると、スプラングロックナット130は駆動スリーブ124とともに軸方向に移動する。図示するように、付勢部材又はばね131のような部材は、スプラングロックナット130の近位部分163と駆動スリーブ124間に備えられる。用量設定工程中近位方向162に動いて、スプラングロックナット130はばね131を圧縮する。同時に、スプラングロックナット130の遠位端164は、スピンドルナット128の遠位端165から係合解除する。1つの例示的な配置では、設計は、少なくとも1つのロッキングアーム158の保持強度は最大ばね力よりも大きく、それ故ロッキングアーム158は、最小用量値が患者によって選択され又はダイヤルされるまで、駆動スリーブ124に係合されたままであり得るほどである。
【0048】
最小用量が設定される前に使用者が最小用量よりも小さい用量を送達することを試みる場合、次いで駆動スリーブ124は遠位方向において軸方向に移動し得る。しかしながら、スプラングロックナット130はスピンドルナット128にもはや係合されないことから、スピンドルナット128は自由に回転することができ、それにより用量が送達されるのを防止する。このように、所定の最小用量より大きい用量をダイヤルする前に、使用者が最小用量より小さい用量を投薬することはできない。
【0049】
使用者が用量設定機構104の最小用量を超えた用量をダイヤルした後だけ、使用者は用量を投与することが可能となり得る。用量がダイヤルされると、駆動スリーブ124及びスプラングロックナット130はばね131を圧縮して近位方向162に移動する。1つの実例配置では、ボディの内壁166は図3に示されるようにばね停止機能131が備わっている。図3に示されるばね停止機能のばね形状及び軸方向位置は、ばね131が完全に圧縮される点を決めるように動作する。一般に、この点の後で近位方向162におけるいずれの更なる軸方向運動も駆動スリーブ124をロックナット130から解除することから、この点は最小用量限界に対応する。
【0050】
最小用量より大きい用量がダイヤルされると、スプラングロックナット130のロッキングアーム158は駆動スリーブ124のロッキングアーム161から係合解除する。例では、スプラングロックナット130のロッキングアーム158及び/又は駆動スリーブ124の対応するロッキングアーム161は、所定の力がかけられるとき屈曲することができる可撓性ロッキングアームであってよい。ロッキングアーム158及び161は圧縮ばね131の力を受けて互いに係合解除した後、スプラングロックナット130は遠位方向152に移動するように強制される。ロックナット130は図4に図示されるその元の位置に戻る。この元の位置では、スプラングロックナット130の遠位部分164はスピンドルナット128の近位端165と再係合する。スプラングロックナット130がハウジング120にスプライン係合されると、スピンドルナット128はそれにより回転が防止される。スピンドルナットが回転を防止されるとき、使用者は用量を投与し得る。用量投与工程中、使用者は遠位方向152において駆動スリーブ124を駆動し得る用量ボタン113を圧迫し得る。駆動スリーブ124の内ねじは、スピンドルナット128を通して遠位方向152においてスピンドル126を駆動する。スピンドル126がスピンドルナット128を通して回転するにつれて、用量が送達され得る。
【0051】
用量送達中、駆動スリーブ124はスピンドル126を駆動しそして用量を送達して遠位方向152において軸方向に移動する。用量送達の最終段階中、スプラングロックナット130のロッキングアーム158は駆動スリーブ124と再係合する。これは、用量設定機構が次の用量設定操作の準備をするようにさせるために用量設定機構を再設定する。
【0052】
上記のように、用量は、スピンドルナット128が回転ロックされる場合にだけ送達することができる。本明細書に開示の例示的配置に基づき、デバイスの最小用量は、スプラングロックナット130が駆動スリーブ124から係合解除するとき変わることにより変えられ得る。従って、スプラングロックナット130が駆動スリーブ124から解除される点を変えること−それ故該スピンドルナット128の回転を防止するスピンドルナット128によりそれを再係合することは−用量を送達することが可能である前にダイヤルする必要がある最小用量を変え得る。
【0053】
本発明によるmin/maxデバイスの例では、必要に応じて最小用量より大きい用量をダイヤルすること及び次いで最小用量より小さい用量を後退ダイヤルすることにより、使用者は最小用量機能を手動で無効にすることができる。尚別の例では、最小用量未満の用量計数は、ダイヤル用量が通常の最小用量よりも小さいことを識別するために、赤色などの異なる色で色付けされ得る。あるいは、用量計数は最小用量がダイヤルされるまで見えなくてよい。
【0054】
尚別の例では、min/maxデバイスは使用者がプライミング操作を行うことができるように設計され得る。例えば、図6は、図1に図示されるデバイス100など、薬物送達デバイスで使用され得る代わりの用量設定機構204の拡大断面図を図示する。図1の用量設定機構104と図6の用量設定機構204間の1つの相違は、代わりの用量設定機構204は使用者が所定のプライミング操作を行うことを可能にすることである。好ましくは、この用量設定機構204は、図1に図示されるペン型薬物送達デバイス100など、ペン型薬物送達デバイスのような薬物送達デバイスの一部であってよい。
【0055】
用量設定機構204は用量設定機構104と同じように動作し、そして同じような部材を含む。例えば、用量設定機構204は、ハウジング220及び既述しそして非常に詳細に図示した用量ダイヤル部材122に類似した、ハウジング220に少なくとも部分的に位置する用量ダイヤル部材を含む。用量ダイヤル部材は用量設定工程中に回転可能である。用量設定機構204はまた、用量ダイヤル部材に少なくとも部分的に位置する駆動スリーブ224を含む。この駆動スリーブ224は用量投与工程中に回転可能スピンドル226を駆動するのに構成される。用量設定機構はまた、本明細書に既述されたのと同様に動作するスピンドルナット228及びスプラングロックナット230を含む。例えば、スピンドルナット228はスピンドル226にカップリングされそして軸方向に固定される。更に、スプラングロックナット230は駆動スリーブ224に取り外し可能にカップリングされ、そしてハウジング220に回転固定される。スプラングロックナット230は少なくとも1つの付勢部材と連通している。例えば、図6に描述されるように、スプラングロックナット230はばね231と連通している。
【0056】
この別の用量設定機構204では、用量ダイヤル部材が所定のプライミング用量より大きいそして所定の最小用量より小さい用量を選択するように回転するとき、スプラングロックナット228はスピンドルナット230が回転することを可能にし、それにより用量が投与されることを防止する。所定のプライミング用量は約4単位未満、及び好ましくは約2単位未満のようないずれもの好適用量であってよい。しかしながら、用量ダイヤル部材が所定のプライミング用量より小さいか等しい用量を選択するように回転するとき、スプラングロックナット228はスピンドルナット230と係合した状態であり、それによりスピンドルナット230の回転を防止する。このプライミング能力は、所定プライミング用量(例えば、2単位)がダイヤルされた後にだけ、駆動スリーブ224の遠位端260の近くに位置する駆動スリーブロッキングアーム261を係合する、解除可能ロッキングアーム258の使用を通して実現され得る。この事前に定義されたプライミング用量は、駆動スリーブ224の駆動スリーブロッキングアーム261とスピンドルナット230のロッキングアーム258間のゼロ用量位置におけるわずかな空隙によって画成され得る(及び図6に図示されるように)。
【0057】
好ましい実施態様では、多回用量、使用者選択可能デバイス内に含まれるインスリンなどの基本薬物化合物は、単回用量の二次薬剤及び単回投薬インターフェイスを含む単回使用、使用者交換可能モジュールで使用することが可能である。一次デバイスに連結したとき、二次化合物は一次化合物の投薬時にアクティブにされ/送達される。本出願は、具体的にインスリンを記載するが、2つの可能な薬物組み合わせとして、インスリンアナログ又はインスリン誘導体、及びGLP−1又はGLP−1アナログ、鎮痛薬、ホルモン、βアゴニスト又はコルチコステロイドなどの他の薬物若しくは薬物組み合わせ、又はいずれの上記薬物の組み合わせも、本発明で使用し得る。
【0058】
本明細書に開示のように、用語「インスリン」は、ヒトインスリン又はヒトインスリンアナログ若しくは誘導体を含む、インスリン、インスリンアナログ、インスリン誘導体又はその混合物を意味するものとする。インスリンアナログの例は、限定されるものではなく、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;ヒトインスリン、ここでB28位置のプロリンはAsp、Lys、Leu、Val又はAlaによって置換され、そしてここでB29位置においてLysはProによって置換されてよい;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン又はDes(B30)ヒトインスリンである。インスリン誘導体の例は、限定されるものではなく、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイル−ヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン及びB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0059】
本明細書で使用される用語「GLP−1」は、限定されるものではなく、エキセナチド(エキセンジン−4(1−39)、配列H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2)のペプチド、エキセンジン−3、リラグルチド、又はAVE0010(H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Ser−Lys−Lys−Lys−Lys−Lys−Lys−NH2)を含む、GLP−1、GLP−1アナログ、又はその混合物を意味するものとする。
【0060】
βアゴニストの例は、限定されるものではなく、サルブタモール、レボサルブタモール、テルブタリン、ピルブテロール、プロカテロール、メタプロテレノール、フェノテロール、メシル酸ビトルテロール、サルメテロール、ホルモテロール、バンブテロール、クレンブテロール、インダカテロールである。
【0061】
ホルモンは、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン (ソマトロピン)、デスモプレッシン、テルリプレッシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、例えば脳下垂体ホルモン又は視床下部ホルモン又は調節活性ペプチド及びそれらのアンタゴニストである。
【0062】
本薬物送達デバイスの例示的な実施態様が記載されている。しかしながら、当業者には当然のことながら、その変更及び修正は、特許請求の範囲によって規定される本提示薬物送達デバイスの真の範囲及び精神から逸脱することなくこれらの実施態様に対して行われ得る。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6