特許第6000265号(P6000265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000265
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】ガラスを被覆する方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/36 20060101AFI20160915BHJP
【FI】
   C03C17/36
【請求項の数】13
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-534380(P2013-534380)
(86)(22)【出願日】2011年10月18日
(65)【公表番号】特表2013-541490(P2013-541490A)
(43)【公表日】2013年11月14日
(86)【国際出願番号】GB2011052010
(87)【国際公開番号】WO2012052749
(87)【国際公開日】20120426
【審査請求日】2014年10月14日
(31)【優先権主張番号】1017855.6
(32)【優先日】2010年10月22日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】591229107
【氏名又は名称】ピルキントン グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】ジョン アンドリュー リディアルフ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン バケット
【審査官】 山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−514770(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/029466(WO,A1)
【文献】 特表2007−512218(JP,A)
【文献】 特開平08−238710(JP,A)
【文献】 特開平09−104085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00−23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ガラス基材を準備する工程と、
b)化学蒸着(CVD)により、誘電体である被覆を前記ガラス基材の少なくとも1つの表面に堆積させて、CVD被覆ガラスを製造する工程であって、前記CVD被覆は、第一の誘電体層をもたらし、且つ
i)酸化ケイ素の第一のCVD堆積層と、これに上塗りされる
ii)酸化チタンの第二のCVD堆積層と、を具え、前記第一及び第二のCVD堆積層はそれぞれ、10〜50nmの間の厚さで堆積される、工程と、
c)さらなる強化可能な被覆を、前記CVD被覆ガラスの表面にスパッタ堆積させる工程であって、前記さらなる強化可能な被覆が、それぞれ6〜30nmの間の厚さで堆積された少なくとも3つの個々の反射金属層を具え、少なくとも1つの誘電体層が、各反射金属層の間に堆積される、工程
d)CVD被覆及びさらなる強化可能な被覆を有する前記ガラス基材を加熱処理して、容認できる鏡面ヘイズを有する強化されたガラスを得る工程と、
を具えることを特徴とする、3つ又はそれ以上の銀の金属反射層を具える強化された被覆ガラスの製造方法。
【請求項2】
各反射金属層の間の前記CVD被覆が1つ以上の層を具える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記CVD被覆が、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化スズ及び/又は酸化亜鉛の1つ以上を含むドープした又は未ドープの酸化物を含む、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記CVD被覆が、ガラス製造工程時に堆積される請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ガラス基材が、フロートガラス基材を含む請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ガラス基材は、スズ側の表面及び気体側の表面を有し、ガラス基材の前記表面が、気体側の表面である請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記さらなる強化可能な被覆を堆積させる工程が、少なくとも1つの金属保護層をスパッタ堆積させる工程を含む請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記1つの又は複数の誘電体層が、AlN、SiN、SiAl、ZnSn、ZnO、SnO、TiO、及びZnAl又はその混合物を含む請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
1つの又はそれぞれの反射金属層が、6〜30nmの間の厚さで堆積される請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第一及び第二のCVD堆積層はそれぞれ、15〜30nmの間の厚さで堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第一及び第二のCVD堆積層はそれぞれ、15〜25nmの間の厚さで堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記さらなる強化可能な被覆を堆積させる工程が、保護層を前記銀の金属反射層の上にスパッタ堆積させることを含み、前記保護層は、NiCrO/ZAO又はZAOからなる群より選択される材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ガラスの表面に最も近い前記銀の金属反射層が、第一の誘電体としての機能を果たすCVD被覆の上に直接スパッタ堆積される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆ガラスの製造方法、及び該方法により製造した被覆ガラスに関する。特に、本発明は、最大で3つ又はそれ以上の反射金属層を有するスパッタ被覆ガラスのための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低反射用及び/又は太陽光制御用のガラス被覆は、例えばスパッタリング等の物理蒸着法により堆積させることができる。スパッタした低反射及び太陽光制御の被覆積層体は、通常、基材/基盤の誘電体層の配列/(Ag/誘電体層の配列)で構成され、n個の各誘電体は、必ずしも厚さ又は組成が同一ではない。産業界においては、nを2相当又は3とさえすることが、ますます一般的になってきている。誘電体層は、金属層よりも厚く、また堆積するのがより遅いため、製品被覆設備において多数のカソードを要する。
【0003】
従前の大きく複雑な被覆積層体には、種々の材料を十分量かつ順序良く作製するための十分量のカソードを得るため、被覆設備の拡張が必要となっていた。かかる拡張には、複数の反応工程を順次行えるようにするため、追加のポンピング部分が含まれていなければならない。これを行うには、工学的据付けのため被覆ラインを長期間停止する必要があり、多大な費用と巨大な混乱が伴う。新たなカソード及びポンピング部分のそれぞれにも、付随する電源、真空ポンプ、コンベア部分、点検、計装、及び制御システムへの統合が必要となる。また、下流の物流の再構築や、場合によっては新たな土木工事又は建物の拡張さえもたらす可能性がある。三層(n=3)積層体がより一般的になるにつれて、これらの問題はより大きくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、従来技術のかかる問題に対処することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、本発明は、a)ガラス基材を準備する工程と、b)化学蒸着(CVD)被覆を前記ガラス基材の少なくとも1つの表面に堆積させて、CVD被覆ガラスを製造する工程と、c)さらなる被覆を、前記CVD被覆ガラスの表面にスパッタ堆積させる工程とを具える被覆ガラスの製造方法であって、前記さらなる被覆が、少なくとも3つの反射金属層を具えることを特徴とする、被覆ガラスの製造方法を提供する。
【0006】
この発明の大きな利点は、この発明により、多層被覆積層体の基盤被覆をスパッタ被覆の前に作製することができ、スパッタ被覆ラインで必要とされるカソードをより少なくすることができるという点にある。また、複数のスパッタ層を、CVD被覆に置き換えることもできる。多くの場合、CVD被覆を有する積層体は、強化可能である。
【0007】
もし、最初に又は最初のほとんどに、誘電体の配列を、CVDによって付与することができれば(例えば、ガラス製造時に)、多数のカソードを省くことができる。これは、以前はできなかった、設備内で完全な被覆積層体を作製し得ること、又は、既にそれを作製することができた設備内での堆積がより早くなることを確実にする。またこれによって、フィルムが、製造するのに経済的に実行可能なものとなる。
【0008】
好ましくは、スパッタ被覆における前記反射金属層の少なくとも1つ、及び好ましくはそのそれぞれが、銀を含む。
【0009】
通常は、少なくとも1つの誘電体層を、各反射金属層の間に堆積させる。
【0010】
通常、CVD被覆は、1つ以上の層を具える。かかる層は、酸化ケイ素(例えばオキシ炭化ケイ素、シリカ、又はオキシ窒化ケイ素など)、酸化チタン(ドープした、又は未ドープのもの)、酸化スズ(例えばFでドープした、又は未ドープのもの)、及び/又は酸化亜鉛(ドープした、又は未ドープのもの)の1つ以上から選択することができる。最も好適なCVD被覆は、酸化チタンの層で上塗りされた酸化ケイ素の層を具える。
【0011】
通常は、CVD堆積被覆の各層を、10〜50nmの間の厚さで堆積する。好ましくは、CVD被覆の各層の厚さは、15〜30nmの間であり、より好ましくは15及び25nmである。
【0012】
CVD被覆をガラス製造工程時に堆積させるのであれば、特に有益である。ガラス基材がフロートガラス基材を含む場合には、フロート浴、焼きなまし炉、又は焼きなまし炉のギャップのいずれかでのフロートガラスの堆積工程時に、都合よくCVD被覆を堆積させることができる。CVD被覆の方法は、任意の化学蒸着法、特に大気圧化学蒸着(例えば、フロートガラスの堆積工程時に行われるようなオンラインのCVD)である。
【0013】
通常、ガラス基材のかかる表面は、気体側の表面である。気体側の表面への堆積によって被覆の特性が改善されると考えられていることから、被覆ガラスの製造業者は、通常、(フロートガラスにおけるスズ側の表面とは反対の)気体側の表面上に被覆を堆積させることを選ぶ。
【0014】
好ましくは、CVD堆積被覆上にさらなる被覆を堆積させる工程が、少なくとも1つの金属又は(セラミックターゲットから)Arスパッタした酸化物の(例えば、NiCr、Ti、Zn、Zr、Sn、Nb、ITO、ZAO、TiOの)保護層をスパッタ堆積させる工程を含む。
【0015】
スパッタ被覆における誘電体層は、通常、TiO、ZnSn、ZnO、SnO、ZnAl、AlN、SiN又はSiAlから選択されるが、その他の多くの透明な誘電体材料から選択することもできる。
【0016】
通常、各反射金属層は、1つ以上の任意の保護的な(例えば、金属又はアルゴンスパッタした誘電体の)層を有する誘電体層の間に堆積される。スパッタ被覆は、3つを上回る(例えば、4つ、5つ、又は6つの)さらなる反射金属層を、各反射金属層が好適に誘電体層及び任意に金属保護層の間に挟まれて、1つ以上具えることができる。
【0017】
ガラス表面に最も近い反射金属層は、通常、CVD被覆上に堆積される。即ち、通常、CVD被覆は光学的に、第一の誘電体としての機能を果たす。任意の第二の誘電体層を、熱分解/CVD誘電体及びスパッタ金属層の間に、マグネトロンスパッタリングにより付与してもよい。
【0018】
通常は、反射金属層を、6〜30nmの間の厚さで堆積させる。
【0019】
本発明の第一の態様により製造した被覆ガラスは、ガラスを使用する多くの分野において、用途を見出す。
【0020】
従って、本発明は、第二の態様において、a)ガラス基材と、b)前記基材の少なくとも1つの表面上のCVD堆積被覆と、c)前記CVD堆積被覆上のさらなるスパッタ堆積被覆とを具える被覆ガラスであって、前記スパッタ堆積被覆が、少なくとも3つの反射金属層を具えることを特徴とする、被覆ガラスを提供する。
【0021】
CVD被覆したガラス上にスパッタ被覆を堆積させた以下の実施例により、本発明を説明する。
【実施例】
【0022】
2セットの実験を行った。第1の比較例のセットは、一般形態のガラス/Di/Ag/Diである「単層の銀」の被覆積層体を用い、また、第2の実施例のセットは、ガラス/Di/Ag/Di/Ag/Di/Ag/Diの形態である「三層の銀」の被覆積層体を用いた。両積層体における「Di」は、1つ又はいくつかの誘電体材料の層から構成することができる誘電体層を表す。その例としては、これらに限定されないが、Ti、Zn、Sn、Al、Si、Zrの酸化物若しくは窒化物又はこれらの混合物が挙げられる。
【0023】
全ての基材を、「Bentler」平床式洗浄機を通過させることにより、同一の方法で調製した。かかる洗浄機は、温水と、純水及びエアーナイフ乾燥機を用いて仕上げる多段洗浄工程とを用いる。
【0024】
全ての試料を、同一の運転にて、同一の被覆積層体で被覆した。被覆設備は、DC及びMFの電源に接続された3400cmのWSM及びSDMのマグネトロンを具える「Von Ardenne GC 120 V/CSE」であった。純粋なArでスパッタする場合には、DC電源を用いた。
【0025】
比較例1における被覆積層体は、以下の設計を基礎とした:
【0026】
ガラス/30ZnSnO/5 ZnO/12 Ag/1.5 NiCrO/3 ZAO/10ZnSnO/25 SiN(厚さは全てnmである)。この積層体を、プレーンガラス基板上に用いた。さらなる比較例2は、Pilkington Activ(登録商標)のガラス/25nmSiO/15nm TiOのCVD二重層のCVD被覆ガラスを用いて作製した積層体で構成された。比較例2における光学的厚さは、全てスパッタした試料のそれよりも小さかったであろうから、スパッタリングによって5nmのZnSnOを加えて、基盤誘電体を完成した。
【0027】
結果は以下の通りであった:
【0028】
【表1】
AD=堆積させたとき;HT=加熱処理後
【0029】
鏡面ヘイズ(時として、関連する特定の色の外観を表現するために、赤ヘイズ又は白ヘイズとも呼ばれる)は、被覆ガラスの表面の大部分を覆う乳状の又は微細な斑点の模様と考えてもよい。この名前が示唆するように、その本質は、大部分が、しかし完全にではないが、散乱性というよりはむしろ鏡面反射性のようである。これは、かかる模様が、その挙動に対して強力な角度成分を頻繁に有すること、即ち、照明及びオブザーバーの視野角が法線入射であれば鏡面ヘイズは顕著となり得る一方、照明が45°等の全く異なる角度に移動すればそうとはなり得ないことを意味する。加熱後、及びガラスを室温に冷却させた後、暗い背景に対する強力なランプでの照明により、被覆した試料を肉眼で評価した。鏡面ヘイズのレベルを、他の試料及び経験と対照して、数値的にランク付けした。鏡面ヘイズを全く示さない試料は、ゼロとランクした。ゼロでない鏡面ヘイズ値を得ることが一般的であるが、低い値であることは、ヘイズが均一に及びランダムに分散されている限り、問題ではない。非常に高いヘイズの模様に集中し、又はその領域を有する場合には、視覚的に気が散るものとなり、容認できない。ヘイズが局所的及び/又は不均一なこれらの模様は、斑点、汚点、又はしみとなって現れ得る。
【0030】
全てスパッタした基盤誘電体を有する積層体は、良好なシート抵抗の降下及び可視透過率の増加を有するが、鏡面ヘイズのレベルは、全体的に容認できるものではない。Activ(登録商標)のCVD被覆もまた、より高い値ではあるが、シート抵抗の降下及び透過率の増加を示す。しかしながら、Avtivベースのフィルムは、容認できないヘイズには発展せず−実際、ヘイズはとても低い。全てのPilkington Activ(登録商標)の基材は、容認できる性能を示している。同時に、25nmの基盤誘電体(積層体の全ての誘電体の厚さのおよそ30%)を堆積させる必要性を除去している。単層の銀の被覆積層体において、このことは、積層体における他の層により多くのカソードを用いることができ、また、より高いライン速度と、従ってより高い生産とを可能にし、より有益な固定資産の使用をもたらすことを意味する。
【0031】
本発明の実施例における被覆積層体は、比較例と同一の材料及びほとんど同一の配列を基礎としたが、配列を繰り返して、ガラス/Di/Ag/Di/Ag/Di/Ag/Diの形態である三層の銀の被覆積層体を作製した。この場合においては、全ての基部の誘電体層を、Pilkington Activ(登録商標)に完全に置き換えた。種々の実験において、被覆積層体の設計におけるわずかな変更を行った。これらを以下の表に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
これらの積層体は、以下の性能データとなった:
【0034】
【表3】
【0035】
ヘイズレベルは高かったが、日中に観察した場合に容認可能なものであった。CVD被覆は、設計からの3つの独立した被覆層の代わりとしての機能を果たした。これらの層のいくつかは、異なった反応性ガスを要するであろうから、ガスのポンピング部分もまた除去された。CVD基層を用いる本来の被覆設備は、おそらく少なくとも7つのカソードの配置が省かれたであろう。
【0036】
使用した堆積条件は以下の通りであり、試料の移動速度を変えて、被覆積層体の各層における適切な厚さを与えた。
【0037】
【表4】
*基材から最も離れたSiN層における第二の値である。