特許第6000266号(P6000266)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6000266光電子デバイス及び光電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000266
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】光電子デバイス及び光電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/04 20060101AFI20160915BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20160915BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20160915BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20160915BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20160915BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   H05B33/04
   H05B33/14 A
   H05B33/14 Z
   H05B33/10
   G09F9/30 365
【請求項の数】21
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-536549(P2013-536549)
(86)(22)【出願日】2011年9月27日
(65)【公表番号】特表2013-544012(P2013-544012A)
(43)【公表日】2013年12月9日
(86)【国際出願番号】NL2011050653
(87)【国際公開番号】WO2012057615
(87)【国際公開日】20120503
【審査請求日】2014年8月29日
(31)【優先権主張番号】10188765.1
(32)【優先日】2010年10月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508351406
【氏名又は名称】ネダーランゼ・オルガニサティ・フォーア・トゥーゲパスト−ナトゥールヴェテンシャッペリーク・オンデルゾエク・ティーエヌオー
(73)【特許権者】
【識別番号】504177804
【氏名又は名称】ハンツマン・アドヴァンスト・マテリアルズ・(スイッツランド)・ゲーエムベーハー
(73)【特許権者】
【識別番号】504202999
【氏名又は名称】コーニンクリク・フィリップス・ナムローゼ・フエンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】ファン モル アントニウス マリア ベルナルドゥス
(72)【発明者】
【氏名】ファン デ ワイエル ペーター
(72)【発明者】
【氏名】コッツェフ ディミテル ルボミロフ
【審査官】 横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−536169(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/117854(WO,A1)
【文献】 特開2007−186603(JP,A)
【文献】 特開2004−210879(JP,A)
【文献】 特開2010−102328(JP,A)
【文献】 特表2006−511664(JP,A)
【文献】 特開2005−216856(JP,A)
【文献】 LIU QUAN,BARRIER MEMBRANES MADE WITH LITHOGRAPHICALLY PRINTED FLAKES,JOURNAL OF MEMBRANE SCIENCE,NL,ELSEVIER SCIENTIFIC PUBLISHING COMPANY,2006年 7月15日,V285 N1-2,P56-67
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/04
G09F 9/30
H01L 27/32
H01L 51/50
H05B 33/10
H05B 33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリア構造体(20)により包囲された光電子素子(10)を含む光電子デバイスであって、前記バリア構造体は、外部から前記光電子素子への水分の伝達を阻害するためのものであり、前記バリア構造体は、無機層(22)を少なくとも含む層積層体と、前記無機層と前記光電子素子との間に配設された層内に水分ゲッタ材とを含む光電子デバイスであって、
前記層積層体は異方性粒子を含む有機層である横方向拡散層(26)を含み、前記異方性粒子は前記有機層に対して整列されており、
前記ゲッタ材は前記光電子素子(10)と前記横方向拡散層(26)との間に配設された別個のゲッタ層(24)内に存在する、光電子デバイス。
【請求項2】
前記ゲッタ材は前記横方向拡散層(26)内に存在する、請求項1に記載の光電子デバイス。
【請求項3】
前記バリア構造体は更なる層(42,46,49)積層体を含み、
前記光電子素子は前記層(22,26)積層体と、少なくとも2つの無機層(42,49)を含む前記更なる層積層体とにより包囲される、請求項1又は2に記載の光電子デバイス。
【請求項4】
前記更なる層積層体は、複数の前記更なる無機層の間に配設された更なる横方向拡散層を更に含み、
更なるゲッタ材が前記光電子素子と前記更なる横方向拡散層との間に配設された更なる別個のゲッタ層内に存在するか、及び/又は、前記更なるゲッタ材が前記更なる横方向拡散層内に存在する、請求項3に記載の光電子デバイス。
【請求項5】
前記バリア構造体(20)は金属箔(28)を含み、前記光電子素子は前記無機層(42,46,49)積層体と前記金属箔(28)とにより包囲されている、請求項1又は2に記載の光電子デバイス。
【請求項6】
(A)少なくとも1つの芳香族であるアクリレート又はメタアクリレート成分、或いは、任意のそれらの混合物と;
(B)少なくとも1つの1官能性であるアクリレート、メタアクリレート、ビニルアミド、アクリルアミド又はメタアクリルアミド成分、或いは、任意のそれらの混合物と;
(C)少なくとも1つの光開始剤、或いは、任意のそれらの混合物と;を含む光硬化性樹脂組成物を、活性光照射により硬化することにより得られた1つ以上の有機層を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光電子デバイス。
【請求項7】
前記光硬化性樹脂組成物は、当該樹脂組成物全量に対して、
(A)30〜90重量%の前記芳香族であるアクリレート又はメタアクリレート成分Aと;
(B)1〜30重量%の前記1官能性であるアクリレート、メタアクリレート、ビニルアミド、アクリルアミド又はメタアクリルアミド成分Bと;
(C)0.1〜10重量%の前記光開始剤Cと;を含む、請求項6に記載の光電子デバイス。
【請求項8】
(D)少なくとも1つのポリブタジエンアクリレート又はポリブタジエンメタアクリレート成分、或いは、任意のそれらの混合物と;
(E)ポリブタジエン基を有さない少なくとも1つのアクリレート又はメタアクリレート成分、或いは、任意のそれらの混合物と;
(C)少なくとも1つの光開始剤、或いは、任意のそれらの混合物と;を含む光硬化性樹脂組成物を、活性光照射により硬化することにより得られた1つ以上の有機層を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光電子デバイス。
【請求項9】
前記光硬化性樹脂組成物は、当該樹脂組成物全量に対して、
(D)10〜60重量%の前記ポリブタジエンアクリレート又はポリブタジエンメタアクリレート成分Dと;
(E)1〜89.9重量%の前記アクリレート又はメタアクリレート成分Eと;
(C)0.1〜10重量%の前記光開始剤Cと;を含む、請求項8に記載の光電子デバイス。
【請求項10】
(F)少なくとも1つのウレタンアクリレート又はウレタンメタアクリレート成分、或いは、任意のそれらの混合物と;
(E)ウレタン基を有さない少なくとも1つのアクリレート又はメタアクリレート成分、或いは、任意のそれらの混合物と;
(C)少なくとも1つの光開始剤、或いは、任意のそれらの混合物と;を含む光硬化性樹脂組成物を、活性光照射により硬化することに得られた1つ以上の有機層を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光電子デバイス。
【請求項11】
前記光硬化性樹脂組成物は、当該樹脂組成物全量に対して、
(F)5〜50重量%の前記ウレタンアクリレート又はウレタンメタアクリレート成分Fと;
(E)1〜94.9重量%の前記アクリレート又はメタアクリレート成分Eと;
(C)0.1〜10重量%の前記光開始剤Cと;を含む、請求項10に記載の光電子デバイス。
【請求項12】
(G)clogP値が>2である、少なくとも1つのアクリレート又はメタアクリレート成分、或いは、任意のそれらの混合物と;
(H)少なくとも1つのチオール成分、又は、任意のそれらの混合物と;
(C)少なくとも1つの光開始剤、或いは、任意のそれらの混合物と;を含む光硬化性樹脂組成物を、活性光照射により硬化することにより得られた1つ以上の有機層を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光電子デバイス。
【請求項13】
前記光硬化性樹脂組成物は、当該樹脂組成物全量に対して、
(G)20〜98.9重量%の前記アクリレート又はメタアクリレート成分Gと;
(H)1〜20重量%の前記チオール成分Hと;
(C)0.1〜10重量%の前記光開始剤Cと;を含む、請求項12に記載の光電子デバイス。
【請求項14】
(I)少なくとも1つのエポキシポリシロキサン成分と;
(J)少なくとも1つのカチオン性光開始剤、或いは、任意のそれらの混合物と;を含む光硬化性樹脂組成物を、活性光照射により硬化することにより得られた1つ以上の有機層を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光電子デバイス。
【請求項15】
前記光硬化性樹脂組成物は、当該樹脂組成物全量に対して、
(I)20〜99.9重量%の前記エポキシポリシロキサン成分Iと;
(K)0.2〜79.9重量%の、ポリシロキサン基を有さないエポキシ官能又はオキセタン官能有機成分、或いは、当該エポキシ官能又はオキセタン官能有機成分の混合物と;
(J)0.1〜10重量%の前記カチオン性光開始剤Jと;を含む、請求項14に記載の光電子デバイス。
【請求項16】
clogP値が>2である光硬化性樹脂組成物を活性光照射により硬化することにより得られた1つ以上の有機層を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光電子デバイス。
【請求項17】
−光電子素子を提供する工程と;
−ゲッタ層を設ける工程と;
−異方性粒子を含む有機層である横方向拡散層を設ける工程であって、前記異方性粒子は前記横方向拡散層に対して整列されている工程と;
−無機層を設ける工程と;をこの順又は逆順で含み、これにより、前記光電子素子、前記ゲッタ層、前記横方向拡散層、及び、前記無機層を順に有する積層体を得る、光電子デバイスの製造方法。
【請求項18】
請求項17に記載の光電子デバイスの製造方法であって、
前記横方向拡散層は水分ゲッタ粒子及び前記異方性粒子の混合物を含み、
前記光電子デバイスの製造方法は無機層を設ける工程を更に含み、これにより、前記光電子素子、前記ゲッタ層、前記横方向拡散層、及び、前記無機層を順に有する積層体を得る、光電子デバイスの製造方法。
【請求項19】
−前記異方性粒子を、有機材料の液状前駆体に分散させた分散液として提供する工程と;
−前記分散体を層に成膜する工程と;
−成膜された前記層を硬化する工程と;を含む、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記横方向拡散層を設ける工程は、
−パターン化無機層を積層する副工程と;
−有機材料の平坦化層を積層する副工程と;
−前記パターン化無機層を積層する副工程と前記平坦化層を積層する副工程とを繰り返す副工程と;を含み、これにより、前記パターン化無機層のパターンとその直前の工程において積層した前記平坦化層のパターンとを補完させる、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項21】
前記平坦化層の少なくとも1つはゲッタ材を含む、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光電子デバイス(opto-electric device)に関する。また、本発明は光電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
照明やディスプレー用の有機発光ダイオード(OLED)、薄膜バッテリー、薄膜有機太陽電池、エレクトロクロミックホイル、及び、電気泳動ディスプレーなどの次世代の有機薄膜デバイスは、電子装置における次の革命となる潜在性がある。
【0003】
OLEDは電極と対向電極との間に形成された有機発光膜を有する。有機発光膜は通常、正孔輸送層、電子ブロック層、電子輸送層、及び、発光層などの追加の層を有しうる積層体の一部である。
【0004】
OLEDや他の有機デバイスに使用される様々な材料は大気中の水分としての物質に対する影響を受ける。よって、このような物質が有機デバイスに向かって侵入するのをブロックするように保護する必要がある。
【0005】
特許文献1には、基板と、該基板上の副画素と、該副画素を覆う多層保護層とを有する有機発光ダイオード(OLED)ディスプレーが開示されている。多層保護層は、有機層及び無機層が交互に繰り返し積層され、かつ、少なくとも1つの水分吸収層が多層保護層内に挟まれた構造を有する。一実施形態において、有機発光ダイオードは水分吸収層と1つの外側の無機層との間に有機層を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/289549A1号明細書
【特許文献2】米国特許第6,277,929号明細書
【特許文献3】米国特許第3,661,744号明細書
【特許文献4】米国特許第4,119,617号明細書
【特許文献5】米国特許第3,445,419号明細書
【特許文献6】米国特許第4,289,867号明細書
【特許文献7】欧州特許出願第056922号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】“Barrier membranes made with lithographic printed flakes”, J. of Membrane Science 285 (2006) 56-67
【非特許文献2】“Polydisperse flakes in barrier films”, J. of Membrane Science 236 (2004), 29-37
【非特許文献3】“Barrier films using flakes and reactive additives”, Progress in Org. Coatings 46 (2003) 231-240
【非特許文献4】“Flake-filled reactive membranes”, J. of Membrane Science 209 (2002) 271-282,
【非特許文献5】“Reactive barrier membranes: some theoretical observations regarding the time lag and breakthrough curves”, J. of Membrane Science 229 (2004) 33-41
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、改良型光電子デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、請求項1にクレームされるように光電子デバイスが提供される。本発明の第1の態様に係る光電子デバイスは横方向拡散層を有し、ゲッタ材が光電子素子と横方向拡散層との間に配置された別個のゲッタ層に存在するか、横方向拡散層内に存在する。しかしながら、光電子デバイスはゲッタ材の更なる層を例えば横方向拡散層と無機層との間に有してもよい。
【0010】
本明細書において、ある材料の「層」には、厚さが長さ及び幅よりも小さい当該材料からなる領域が含まれる。層の例にはシート、ホイル、フィルム、ラミネーション、コーティングなどが含まれる。本明細書において、層は平坦である必要はなく;例えば、他のコンポーネントを少なくとも部分的に包むために屈曲、折曲、さもなければ輪郭成形されうる。横方向拡散層は、揮発性又は液状の物質を層貫通方向よりも横方向に比較的素早く拡散させる層である。横方向拡散層は、当該層に対して整列(アライン)された平坦状又は直線状の無機粒子などの異方性粒子を有する有機層である。等方性拡散層と比較して、この層は局所的に無機層内のピンホールを通過する前記物質をゲッタ層に到達する前に横方向の比較的大きな領域に拡散させる。拡散した物質は等方性拡散層の場合よりもゲッタ材のより大きい領域に到達するため、ゲッタ層により効率的にゲッタリングされる。
【0011】
拡散層がないと、ゲッタ層の厚さと同等の半径を有する円のサイズの領域におけるゲッタ材しか光電子素子への到達が防止されなければならない水分などの物質を「補足」することができない。この半円内のゲッタが飽和した後、水が下層構造に到達し劣化を引き起こす。無機層とゲッタ層との間に拡散層が存在するか拡散層内にゲッタ材が存在することにより、ゲッタリング・キャパシティーを実質的に大きく利用できるので、水が下層構造に到達するまでに非常に長いラグタイムを確保することができる。
【0012】
横方向拡散層は、有機層に埋設された繊維状又は小片状粒子などの異方性粒子を通常有する。繊維状及び/又は小片状粒子は層貫通方向への水分の拡散を阻害し、これらの粒子が埋設された有機層では比較的効率的な横方向への拡散が可能となる。
【0013】
そのために、異方性粒子は有機層の面に対して整列されていることが重要である。つまり、異方性粒子は有機層の面方向に延びるべきである。かかる目的に好適である整列されたフレークが設けられた有機層及びそれらの製法はCusslerらが記載している(非特許文献1及び2)。また、Cusslerらは、このようなフィルムを反応性添加物と共に設けることを提案している(例えば、非特許文献3〜5)。しかしながら、Cusslerらは横方向拡散層が無機層とゲッタ機能を有する層との間に配置された構成は開示していない。
【0014】
ゲッタ材は物理吸着性防湿剤及び化学吸着性防湿剤から選択されうる。物理吸着性防湿剤としてはゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ、及び、活性炭が挙げられる。これらの物理吸着性防湿剤の中でも、ゼオライトが好ましい。
【0015】
しかしながら、物理吸着性防湿剤よりも化学吸着性防湿剤の方が好ましい。化学吸着性防湿剤はゲッタリングする物質を実質的に不可逆的に吸着するからである。化学吸着性防湿剤は、酸化カルシウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、酸化バリウム、五酸化リン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、臭化カリウム、臭化カルシウム、硫酸銅、塩化亜鉛、硫酸カルシウム、及び、酸化マグネシウムなどの金属酸化物を含む様々な物質から選択されうる。特に、かかる目的のためには酸化カルシウムが好ましいが、他のゲッタ材も使用される。他のゲッタ材の例としては、第1族又は第2族金属から選択される金属の微粒子が挙げられる。また、分子ゲッタも使用されうる。
【0016】
一実施形態において、横方向拡散層はゲッタ材を含む。したがって、無機層内のピンホールを貫通する水分などの物質は部分的に横方向に拡散し、部分的にゲッタ材に結合する。ゲッタ材に直ちに結合されない水分は横方向拡散層内を積極的に横方向に広がるため、比較的大容量のゲッタ材に結合することが可能である。本実施形態は、水分の横方向拡散及び水分のゲッタリングの両方の機能を達成するのに単一の加工工程で十分であるという利点を有する。
【0017】
更なる実施形態において、ゲッタ材は別個のゲッタ層内に設けられ、横方向拡散層はゲッタ層と無機層との間に配設される。本実施形態において、無機層を貫通する水分などの物質がゲッタ層に到達する前にまず大きな領域内を拡散するという点で、ゲッタ材が最適利用される。
【0018】
ゲッタ層を設けるにあたっては様々なオプションが考えられる。第1のオプションによれば、当該防湿剤層は、第1族又は第2族金属或いはBaOやCaOなどのそれらの酸化物の均質層として設けられる。あるいは、防湿剤層は分子ゲッタと混合された有機層として、更にあるいは、第1族又は第2族金属或いはBaOやCaOなどのそれらの酸化物の微細分散(ナノ)粒子を含む有機層として形成されうる。
【0019】
ゲッタ層は、ゲッタ材の分散液を含むポリマー溶液の層を成膜し、次いでこの層を硬化することにより得られうる。
【0020】
同様に、横方向拡散層は、異方性粒子の分散液を含むポリマー溶液の層を成膜し、次いでこの層を硬化することにより得られうる。
【0021】
同様に、ゲッタ粒子を含む横方向拡散層は、異方性粒子及びゲッタ粒子の分散液を含むポリマー溶液の層を成膜し、次いでこの層を硬化することにより得られうる。
【0022】
横方向拡散層又は横方向拡散/ゲッタ複合層における異方性粒子の整列は、層を複数の副層として成膜し、次の副層を設ける前に各副層を硬化させることにより得られうる。
【0023】
ある実施形態において、異方性粒子は横方向拡散層の面内において完全に整列していなくてもよい。かかる場合、未整列粒子の無機層内への突出を防止するために、有機材料からなる平坦化層が横方向拡散層と無機層との間に配設されうる。
【0024】
これは、横方向拡散層が無機層内に突出しうるゲッタ粒子を含む実施形態でも同様である。平坦化膜はまた、横方向に延在する粒子から無機層を保護するために横方向拡散層を超えて横方向に延在しうる。
【0025】
本発明の第2の態様によれば、光電子デバイスの製造方法が提供される。
【0026】
第2の態様に係る方法の第1の実施形態は、
−光電子素子を提供する工程と;
−ゲッタ層を設ける工程と;
−異方性粒子を含む横方向拡散層を設ける工程であって、前記異方性粒子は前記横方向拡散層に対して整列されている工程と;
−無機層を設ける工程と;をこの順又は逆順で含み、これらの工程により前記光電子素子、前記ゲッタ層、前記横方向拡散層、及び、前記無機層を順に有する積層体が得られる。
【0027】
この一連の工程の前後、或いは、工程間に追加の工程が含まれうる。例えば、無機層を設ける工程が光電子素子を設ける工程の後であって、ゲッタ層を設ける工程の前に行われうる。あるいは、一連の工程が逆順で行われる場合、無機層を設ける工程がゲッタ層を設ける工程の後であって、光電子素子を設ける工程の前に行われうる。いずれの場合でも、これら3つの工程によりゲッタ層と光電子素子との間に配設された無機層を有する副積層体が得られる。
【0028】
第2の態様に係る方法の第2の実施形態は、
−光電子素子を提供する工程と;
−水分ゲッタ粒子及び異方性粒子の混合物を含む横方向拡散層を設ける工程であって、前記異方性粒子は前記横方向拡散層に対して整列されている工程と;
−無機層を設ける工程と;をこの順又は逆順で含み、これらの工程により前記光電子素子、前記ゲッタ層、前記横方向拡散層、及び、前記無機層を順に有する積層体が得られる。
【0029】
この一連の工程の前後、或いは、連続するこれらの工程間に追加の工程が含まれうる。例えば、無機層を設ける工程が光電子素子を設ける工程の後であって、横方向拡散層を設ける工程の前に行われうる。あるいは、一連の工程が逆順で行われる場合、無機層を設ける工程が横方向拡散層を設ける工程の後であって、光電子素子を設ける工程の前に行われうる。いずれの場合でも、これら3つの工程により横方向拡散層と光電子素子との間に配設された無機層を有する副積層体が得られる。これらの及び他の態様を、図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の第1の態様に係る光電子デバイスの第1の実施形態を示す図である。
図2A】従来の光電子デバイスにおける物理現象を示す図である。
図2B】本発明の第1の態様に係る光電子デバイスの第1の実施形態における発明手段の効果を示す図である。
図3】本発明の第1の態様に係る光電子デバイスの第2の実施形態を示す図である。
図4】本発明の第1の態様に係る光電子デバイスの第3の実施形態における発明段の効果を示す図である。
図5】本発明の第1の態様に係る光電子デバイスの第4の実施形態を示す図である。
図6】本発明の第2の態様に係る方法の第1の実施形態を示す図である。
図7A】本発明の第2の態様に係る方法の第2の実施形態を示す図である。
図7B】本発明の第2の態様に係る方法の第2の実施形態を示す図である。
図7C】本発明の第2の態様に係る方法の第2の実施形態を示す図である。
図7D】本発明の第2の態様に係る方法の第2の実施形態を示す図である。
図7E】本発明の第2の態様に係る方法の第2の実施形態を示す図である。
図8】様々な有機材料の疎水性に関する実験データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下の発明の詳細な説明において、本発明を完全に理解するための多くの具体的詳細を記載するが、これらの具体的詳細がなくても本発明が実施されうることは当業者に理解される。他の例では、周知な方法、手順及び要素は本発明の態様わかりにくくしないように詳細に説明しない。
【0032】
以下、本発明の実施形態を示した添付図面を参照して本発明をより完全に記載するが、本発明は多くの様々な形態で具現化されうり、本明細書に記載する実施形態に限定するものと解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は本開示が完璧かつ完全となり、かつ、当業者に本発明の範囲を完全に理解させるためのものである。
【0033】
図中、層及び領域のサイズ及び相対的なサイズは明確化を目的に誇張されていることがある。本明細書において、本発明の実施形態は本発明の理想的な実施形態(及び中間構造)の模式図である断面図を参照して説明される。したがって、例えば、製造技術及び/又は製造公差に起因する図示形状からの変化は予想されるものである。よって、本発明の実施形態は本明細書において図示される特定の領域形状に限定されるものではなく、例えば製造に起因する形状偏位を含む。よって、図中に示された領域は本質的に模式的なものであり、その形状はデバイスのある領域の実際の形状を図示する意図はなく、また、本発明の範囲を限定する意図はない。
【0034】
ある要素又は層が他の要素又は層の「上」、或いは、他の要素又は層に「接続」又は「連結」されると言及されている場合、他の要素又は層の直接「上」、或いは他の要素又は層に直接「接続」又は「連結」することができ、或いは介在する要素又は層が存在しうることが理解されよう。逆に、ある要素が他の要素又は層の「直接上」或いは他の要素又は層に「直接接続」又は「直接連結」されると言及されている場合、介在する要素又は層は存在しない。同様の要素には同様の符号が一貫して付される。本明細書において、「及び/又は」との語句は、1以上の列挙された関連項目のありとあらゆる組み合わせを含む。
【0035】
本明細書において、「第1の」、「第2の」、「第3の」などの語句は様々な要素、コンポーネント、領域、層及び/又はセクションを記載するために使用されうるが、これらの要素、コンポーネント、領域、層及び/又はセクションはこれらの語句に限定されるものと解釈されるべきではないことが理解されよう。これらの語句は1つの要素、コンポーネント、領域、層及び/又はセクションを他の1つの要素、コンポーネント、領域、層及び/又はセクションと区別するためだけに使用される。したがって、以下議論する第1の要素、第1のコンポーネント、第1の領域、第1の層又は第1のセクションは、本発明の教示から逸脱しない範囲で第2の要素、第2のコンポーネント、第2の領域、第2の層又は第2のセクションと命名されうる。
【0036】
「下」、「下方」、「下側」、「上方」、「上側」などの空間的な相対語は、本明細書において、図示する1つの要素又は特徴の1以上の他の要素又は特徴との関係を簡単に説明するために使用されうる。空間的な相対語は、図示するデバイスの向きだけではなく、使用中又は動作中のデバイスの様々な向きをも包含する意図であることが理解されよう。例えば、図中のデバイスが反転されると、他の要素又は特徴の「下方」又は「下」である記載された要素は当該他の要素又は特徴の「上方」に向くことになる。したがって、例示的な語句である「下方」は上方及び下方の両方の向きを包含しうる。またデバイスの向きは変更(90度回転又は他の向きに回転)されうり、本明細書における空間的な相対記述語はそれに応じて解釈される。
【0037】
別段定義のない限り、本明細書において使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する当業者が通常理解する意味と同じ意味を有する。常用辞書に定義されている用語は、関連技術の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有するものと解釈されるべきであり、本明細書で特段強調してそのように定義されない限り、理想化された意味合い又は過度に形式的な意味合いに解釈されないことが更に理解されよう。意味が対立する場合、定義を含み、本願明細書が支配する。さらに、材料、方法及び例は単に例示を目的とするものであり、限定的である意図はない。
【0038】
図1はバリア構造体20により包囲された光電子素子10を含む光電子デバイスの模式図であり、バリア構造体20は外部から光電子素子10への水分の伝達を阻害するためのものである。
【0039】
バリア構造体は少なくとも無機層22を含む層の積層体と、無機層22と光電子素子10との間に配設されたゲッタ層24及び更なる層26を含む。ゲッタ層24は更なる層26よりも光電子素子10に近く配設される。更なる層26は横方向拡散層である。図示の実施形態において、バリア構造体20は金属箔28を更に含む。金属箔28及び層22,24,26の積層体は共に光電子素子10を包囲する。図示の実施形態において、光電子素子は横方向拡散層26と無機層22との間に配設された有機平坦化層30を更に有する。更なる実施形態において、有機平坦化層30はまた、横方向拡散層26を超えて横方向に延在しうる。
【0040】
無機層22は任意のセラミックで形成されうり、例えば、酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化インジウムスズ(ITO)などの金属酸化物;窒化アルミニウム(AIN)、窒化ケイ素(SiN)などの金属窒化物;炭化ケイ素などの炭化物;窒酸化ケイ素などの金属酸窒化物;又は金属酸炭化物、金属炭窒化物、金属酸炭窒化物などの他の任意の組み合わせから形成されうるが、これらに限定されない。電子デバイスが光学機能を有する場合、少なくとも一方の面(ベース又はカバー)が実質的に透明なセラミックであることが妥当である。好適な材料としては、例えば、酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化チタン(TiO)、酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化インジウムスズ(ITO、In+SnO)、炭化シリシウム(SiC)、酸窒化ケイ素(SiON)、及び、それらの組み合わせが挙げられる。他の好適な材料としては、ZrO、AlON、Si、ZnO、及び、Taが挙げられる。
【0041】
少なくとも1つの無機層22の水蒸気透過率は最大で10−4g/m/dayである。無機層の厚さは10〜1000nmの範囲であるべきであり、100〜300nmの範囲であることが好ましい。厚さが10nm未満である無機層はバリア性が実用上不十分である。製品の品質を損なわずに製造プロセスの公差を比較的大きくとれるという点で、少なくとも100nmの厚さの無機層を成膜することが好ましい。フレキシブル製品の場合、無機層の厚さは300nmを超えないことが好ましい。厚さが1000nmを超えても無機層のバリア性はそれ以上向上せず、一方で成膜プロセスの時間が長くなり経済的に魅力的ではない。
【0042】
前述のとおり、横方向拡散層26は、有機層に埋設され、かつ、当該有機層の面に対して整列された繊維状又は小片状粒子などの異方性粒子を通常有する。繊維状及び/又は小片状粒子は層貫通方向への水分の拡散を阻害し、これらの粒子が埋設された有機層では比較的効率的な横方向への拡散が可能となる。
【0043】
異方性粒子の例には、ガラスフレークやモンモリロナイトクレイ及びベントナイトクレイなどのクレイが含まれ、中でもナノクレイが特に好ましい。好ましいガラスフレークの例には、GF001、GF002、GF003、GF005などのECRガラスフレーク(Glassflake Ltd.)が含まれる。好ましいクレイの例には、Cloisite 20A nanoclay(Rockwood)、Nanomer PGV ベントナイトが含まれる。
【0044】
異方性粒子の他の好適な材料としては、カーボンナノチューブ、ナノリボン、ナノファイバー、及び、任意の定形又は非定形カーボン粒子などのカーボン粒子、及び、カーボンナノ粒子;銅、プラチナ、金、及び、銀などの非反応性金属;珪灰石、及び、ムライトなどの鉱物;希土類元素;炭化チタン、炭化ジルコニウム、窒化ジルコニウム、炭化ケイ素又は窒化ケイ素、金属スルフィド、及び、それらの混合物又は組み合わせが含まれる。
【0045】
有機層の樹脂成分は、ゲッタ材を含む有機層においてゲッタ材の水除去作用が損なわれない限り特に限定されない。かかる目的に好適な有機材料としては、例えば、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリシロキサン樹脂、及び、ポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0046】
ポリオレフィンなどの樹脂は溶融状態で押出しして塗布されうる。エポキシ樹脂は、通常、熱硬化されるか或いは室温において2成分系で硬化される。
【0047】
これらの樹脂の中でも、少なくとも1つのラジカル硬化性化合物とラジカル光開始剤とを含む光硬化性組成物から得られるものが好ましい。光硬化性化合物を使用する利点は硬化がほぼ即座に完了することである。
【0048】
光硬化性組成物は1つ以上のラジカル重合性化合物を含む。ラジカル重合性化合物はエチレン性不飽和であることが好ましく、1つの、より好ましくは2つ以上の末端エチレン性不飽和結合を有する化合物(1官能性又は多官能性化合物)から選択されることが特に好ましい。より具体的には、光硬化産業で周知であるものから好適に選択することができ、これにはモノマー、プレポリマー(すなわち、ダイマー、トリマー、及び、オリゴマー)、それらの混合物、及び、それらのコポリマーといった化学構造を有するものが含まれる。
【0049】
ラジカル重合性化合物の例としては、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、芳香族ビニル化合物、ビニルエーテル、及び、内部二重結合を有する化合物(マレイン酸など)が含まれる。「(メタ)アクリレート)」は、アクリレート、メタクリレート又はその混合物を指し、「(メタ)アクリル」は、アクリル、メタアクリル又はその混合物を指す。
【0050】
(メタ)アクリレートの例としては、以下に示すものが含まれる。
【0051】
1官能性(メタ)アクリレートの具体例としては、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャリーオクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、4−ブロモブチル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、アルコキシメチル(メタ)アクリレート、アルコキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,3,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−メタアクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタアクリロイルオキシヘキサヒドロフタル酸、2−メタアクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、EO変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、及び、EO変性2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0052】
2官能性(メタ)アクリレートの具体例としては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化・エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、及び、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレートが含まれる。
【0053】
3官能性(メタ)アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン・トリス((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸のアルキレン変性トリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールプロピオネートトリ(メタ)アクリレート、トリス((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバリルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及び、エトキシ化グリセリントリアクリレートが含まれる。
【0054】
4官能性(メタ)アクリレートの具体例としては、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトールプロピオネートテトラ(メタ)アクリレート、及び、エトキシ化ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレートが含まれる。
【0055】
5官能性(メタ)アクリレートの具体例としては、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、及び、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレートが含まれる。
【0056】
6官能性(メタ)アクリレートの具体例としては、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、ホスファゼンのアルキレンオキシド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、及び、カプロラクトン変性ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレートが含まれる。
【0057】
不飽和(ポリ)ウレタンを使用してもよい。不飽和(ポリ)ウレタンは、分子中に少なくとも1つの重合性炭素−炭素不飽和結合を有する不飽和ウレタン化合物又は不飽和(ポリ)ウレタン化合物である。不飽和(ポリ)ウレタンは、例えば、ヒドロキシ基末端(ポリ)ウレタンと(メタ)アクリル酸とを反応させるか、または、イソシアネート末端プレポリマーとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとを反応させてウレタンメタアクリレートを得ることにより合成されうる。
【0058】
好ましい脂肪族ウレタンメタアクリレートの例としては、GenomerR 4205、GenomerR 4256、GenomerR 4297や、特許文献2に記載されるものが含まれる。
【0059】
さらに、高分岐ポリエステル型などのより多官能なメタアクリレートを使用してもよい。
【0060】
(メタ)アクリルアミドの例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、及び、(メタ)アクリロイルモルフォリンが含まれる。
【0061】
芳香族ビニル化合物の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルメチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、3−プロピルスチレン、4−プロピルスチレン、3−ブチルスチレン、4−ブチルスチレン、3−ヘキシルスチレン、4−ヘキシルスチレン、3−オクチルスチレン、4−オクチルスチレン、3−(2-エチルヘキシル)スチレン、4−(2−エチルヘキシル)スチレン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン、4−t−ブトキシカルボニルスチレン、4−メトキシスチレン、及び、4−t−ブトキシスチレンが含まれる。
【0062】
1官能性ビニルエーテルの場合のビニルエーテルの例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチル・ビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ペンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテンオキシエチルビニルエーテル、メトキシエチル・ビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシ-エチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、クロロブチルビニルエーテル、クロロエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、及び、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテルが含まれる。
【0063】
また、多官能ビニルエーテルの例としては、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジビニルエーテル、及び、ビスフェノールFアルキレンオキシドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル;及び、トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリトリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリトリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリトリトールヘキサビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテルのエチレンオキシド付加物、トリメチロールプロパントリビニルエーテルのプロピレンオキシド付加物、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテルのエチレンオキシド付加物、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテルのプロピレンオキシド付加物、ペンタエリトリトールテトラビニルエーテルのエチレンオキシド付加物、ペンタエリトリトールテトラビニルエーテルのプロピレンオキシド付加物、ジペンタエリトリトールヘキサビニルエーテルのエチレンオキシド付加物、及び、ジペンタエリトリトールヘキサビニルエーテルのプロピレンオキシド付加物などの多官能ビニルエーテルが含まれる。
【0064】
また、光硬化性組成物は少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤を含む。フリーラジカル光開始剤はラジカル光重合を開始させるために常用されるものから選択されうる。
【0065】
フリーラジカル重合開始剤の例としては、ベンゾイン類(例えば、ベンゾイン、並びに、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、及び、ベンゾイン・アセタートなどのベンゾインエーテル);アセトフェノン類(例えば、アセトフェノン、2,2−ジメトキシアセトフェノン、及び、1,1−ジクロロアセトフェノン);ベンジルケタール類(例えば、ベンジルジメチルケタール、及び、ベンジルジエチルケタール);アントラキノン類(例えば、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、及び、2−アミルアントラキノン);トリフェニルフォスフィン;ベンゾイルホスフィンオキシド類(例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルホスフィンオキシド)(Lucirin TPO);ビスアシルホスフィンオキシド類;ベンゾフェノン類(例えば、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(N,N’−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン);チオキサントン類及びキサントン類;アクリジン誘導体;フェナジン誘導体;キノキサリン誘導体;1−フェニル−1,2−プロパンジオン2−O−ベンゾイルオキシム;4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−プロピル)ケトン(Irgacure(R)2959);1−アミノフェニルケトン又は1−ヒドロキシフェニルケトン(例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシイソプロピルフェニルケトン、フェニル1−ヒドロキシイソプロピルケトン、及び、4−イソプロピルフェニル1−ヒドロキシイソプロピルケトン;及び、それらの組み合わせが含まれる。
【0066】
重合開始剤の含有量は重合性材料に対して0.01〜10%(質量)の範囲であることが好ましく、0.5〜7%(質量)であることがより好ましい。
【0067】
光硬化性組成物はチオール−エン系でありうる。よって、当該樹脂組成物は、(メタ)アクリレート成分及びフリーラジカル光開始剤に加えて、少なくとも1官能性又は多官能性チオールを含みうる。多官能性チオールは、2つ以上のチオール基を有するチオールを意味する。多官能性チオールは異なる多官能性チオールの混合物でありうる。好適な多官能性チオールは特許文献3(第8コラム第76行〜第9コラム第46行)、特許文献4(第7コラム第40〜57行)、特許文献5及び6に記載されている。特に好ましいものは、ポリオールをチオグリコール酸又はs−メルカプトプロピオン酸などのα−メルカプトカルボン酸又はs−メルカプトカルボン酸でエステル化して得られる多官能性チオールである。
【0068】
チオールの例としては、ペンタエリトリトールテトラ−(3−メルカプトプロピオネート)(PETMP)、ペンタエリトリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(PETMB)、トリメチロールプロパントリ−(3−メルカプトプロピオネート)(TMPMP)、グリコールジ−(3−メルカプトプロピオネート)(GDMP)ペンタエリトリトールテトラメルカプトアセテート(PETMA)、トリメチロールプロパントリメルカプトアセテート(TMPMA)、グリコートジメルカプトアセテート(GDMA)、エトキシ化トリメチルプロパントリ(3−メルカプト−プロピオネート700(ETTMP 700)、エトキシ化トリメチルプロパントリ(3−メルカプト-プロピオネート1300(ETTMP 1300)、プロピレングリコール3−メルカプトプロピオネート800(PPGMP 800)が含まれる。
【0069】
光硬化性組成物は1つ以上のカチオン重合性エポキシポリシロキサン化合物を含みうる。
【0070】
このようなエポキシポリシロキサン化合物の例としては、ビス[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル]テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(グリシドキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、エポキシプロポキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン、エポキシプロポキシプロピル末端ポリフェニルメチルシロキサン、(エポキシプロポキシプロピル)ジメトキシシリル末端ポリジメチルシロキサン、モノ−(2,3−エポキシ)ポリエーテル末端ポリジメチルシロキサン、エポキシシクロヘキシルエチル末端ポリジメチルシロキサンが含まれる。
【0071】
以下に示すものは市販のエポキシポリシロキサン成分の例である。DMS−E12、DMS−E21、DMS−EX21、MCR−E11、MCR−E21、DMS−EC13、SIB1115.0(Gelest);UV9200(Momentive);Silcolease UV POLY220、Silcolease UV POLY200、Silcolease UV POLY201(BLuestar);PC1000、PC1035(Polyset)。
【0072】
したがって、樹脂組成物は硬化性能、接着性、機械特性、及び、粘度を調節するためにエポキシ官能性及び/又はオキセタン官能性有機化合物を含みうる。エポキシ官能有機化合物としては、例えば、エポキシド化ポリブタジエン樹脂、リモネンオキシド、4−ビニルシクロヘキセンオキシド、アリルグリシジルエーテル、7−エポキシ−1−オクテン、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、クレジルグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。このようなエポキシド類の混合物もまた好適である。オキセタン官能性有機化合物としては、例えば、3−エチル−3−((2−エチルヘキシロキシ)メチル)オキセタン、トリメチロールプロパンオキセタンが挙げられる。
【0073】
また、光硬化性組成物は少なくとも1つのカチオン性光開始剤を含む。
【0074】
カチオン性光開始剤の例としては、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロアルセネート、及び、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどの非求核性アニオンを有する、スルホン酸のオニウム塩及びジアリールヨードニウム塩、スルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、ボロン酸のジアリールヨードニウム塩、及び、ボロン酸のトリアリールスルホニウム塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0075】
カチオン性光開始剤の塗膜組成物における添加量は、塗膜組成物全量に対して、約0.01〜10%、好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.5〜3%の量とすることができる。
【0076】
オニウム塩は、正に帯電(通常は+1)されており、負電荷のカウンターイオンが存在する。好適なオニウム塩としては、RMX、RMX、RSeMX、RMX、及び、RMX(式中、各Rは独立して炭素数1〜30のヒドロカルビル基又は置換ヒドロカルビル基であり;Mは遷移金属、希土類金属、ランタニド金属、メタロイド、リン、及び、硫黄から選択される元素であり;Xはハロゲン(塩素、臭素、ヨウ素など)であり;zは「(Xの電荷+Mの酸化数)×z=−1」となるような数値である)から選択される式を有する塩が挙げられる。ヒドロカルビル基の置換基の例としては、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜16のアルキル基、ニトロ基、塩素原子、臭素原子、シアノ基、カルボキシル基、メルカプト基、並びに、ピリジル基、チオフェニル基、及び、ピラニル基などの芳香族複素環基が含まれるが、これらに限定されない。Mで表される金属の例としては、Fe、Ti、Zr、Sc、V、Cr、及び、Mnなどの遷移金属;Pr、Ndなどのランタニド金属;Cs、Sb、Sn、Bi、Al、Ga、及び、Inなどの他の金属;B、Asなどのメタロイド;及び、Pが含まれるが、これらに限定されない。式MXは非塩基性・非求核性アニオンを表す。MXで表されるアニオンの例としては、BF、PF、AsF、SbF、SbCl、及び、SnClが含まれるが、これらに限定されない。オニウム塩の例としては、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、及び、ジアルキルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートなどのビス−ジアリールヨードニウム塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0077】
スルホン酸のジアリールヨードニウム塩の例としては、パーフルオロブタンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、パーフルオロエタンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、パーフルオロオクタンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、及び、トリフルオロメタンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩などのパーフルオロアルキルスルホン酸のジアリールヨードニウム塩;及び、p−トルエンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、ベンゼンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩、及び、3−ニトロベンゼンスルホン酸のジアリールヨードニウム塩などのアリールスルホン酸のジアリールヨードニウム塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0078】
スルホン酸のトリアリールスルホニウム塩の例としては、パーフルオロブタンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、パーフルオロエタンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、パーフルオロオクタンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、及び、トリフルオロメタンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩などのパーフルオロアルキルスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩;及び、p−トルエンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、ベンゼンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩、及び、3−ニトロベンゼンスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩などのアリールスルホン酸のトリアリールスルホニウム塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0079】
ボロン酸のジアリールヨードニウム塩の例としては、パーハロアリールボロン酸のジアリールヨードニウム塩が含まれるが、これらに限定されない。ボロン酸のトリアリールスルホニウム塩の例としては、パーハロアリールボロン酸のトリアリールスルホニウム塩が含まれるが、これらに限定されない。ボロン酸のジアリールヨードニウム塩、及び、ボロン酸のトリアリールスルホニウム塩は特許文献7に例示されているように当該技術分野において周知である。
【0080】
市販のカチオン生光開始剤の例としては、UV9390C、UV9380C(Momentive)、Irgacure 250(BASF)、Rhodorsil 2074、Rhodorsil 2076(Rhodia)、Uvacure 1592(UCB Chemicals)、Esacure 1064(Lamberti)が含まれる。中でも、UV9390C、Rhodorsil 2074が特に好ましい。
【0081】
光電子デバイスの一実施形態において、
(A)少なくとも1つの芳香族であるアクリレート又はメタアクリレート成分、或いは、任意のそれらの混合物と;
(B)好ましくは30℃における粘性が100mPa・s未満である、少なくとも1つの1官能性であるアクリレート、メタアクリレート、ビニルアミド、アクリルアミド又はメタアクリルアミド成分、或いは任意のそれらの混合物と;
(C)少なくとも1つの光開始剤、或いは、任意のそれらの混合物と;を含む光硬化性樹脂組成物を、UV照射などの活性光照射により硬化することにより1つ以上の有機層を得る。
【0082】
前記実施形態の一実施形態において、光硬化性樹脂組成物は、当該樹脂組成物全量に対して、
(A)30〜90重量%の前記芳香族であるアクリレート又はメタアクリレート成分Aと;
(B)1〜30重量%の前記1官能性であるアクリレート、メタアクリレート、ビニルアミド、アクリルアミド又はメタアクリルアミド成分Bと;
(C)0.1〜10重量%の前記光開始剤Cと;を含む。
【0083】
光電子デバイスの一実施形態において、
(D)少なくとも1つのポリブタジエンアクリレート又はポリブタジエンメタアクリレート成分、或いは、任意のそれらの混合物と;
(E)好ましくは30℃における粘性が100mPa・s未満である、ポリブタジエン基を有さない少なくとも1つのアクリレート又はメタアクリレート成分、或いは、任意のそれらの混合物と;
(C)少なくとも1つの光開始剤、或いは、任意のそれらの混合物と;を含む光硬化性樹脂組成物を、活性光照射により硬化することにより1つ以上の有機層を得る。
【0084】
前記実施形態の一実施形態において、光硬化性樹脂組成物は、当該樹脂組成物全量に対して、
(D)10〜60重量%の前記ポリブタジエンアクリレート又はポリブタジエンメタアクリレート成分Dと;
(E)1〜89.9重量%の前記アクリレート又はメタアクリレート成分Eと;
(C)0.1〜10重量%の前記光開始剤Cと;を含む。
【0085】
光電子デバイスの一実施形態において、
(F)少なくとも1つのウレタンアクリレート又はウレタンメタアクリレート成分、或いは、任意のそれらの混合物と;
(E)好ましくは30℃における粘性が100mPa・s未満である、ウレタン基を有さない少なくとも1つのアクリレート又はメタアクリレート成分、或いは、任意のそれらの混合物と;
(C)少なくとも1つの光開始剤、或いは、任意のそれらの混合物と;を含む光硬化性樹脂組成物を、活性光照射により硬化することにより1つ以上の有機層を得る。
【0086】
前記実施形態の一実施形態において、光硬化性樹脂組成物は、当該樹脂組成物全量に対して、
(F)5〜50重量%の前記ウレタンアクリレート又はウレタンメタアクリレート成分Fと;
(E)1〜94.9重量%の前記アクリレート又はメタアクリレート成分Eと;
(C)0.1〜10重量%の前記光開始剤Cと;を含む。
【0087】
光電子デバイスの一実施形態において、
(G)clogP値が>2である、少なくとも1つのアクリレート又はメタアクリレート成分、或いは、任意のそれらの混合物と;
(H)少なくとも1つのチオール成分、或いは、任意のそれらの混合物と;
(C)少なくとも1つの光開始剤、或いは、任意のそれらの混合物と;を含む光硬化性樹脂組成物を、活性光照射により硬化することにより1つ以上の有機層を得る。
【0088】
前記実施形態の一実施形態において、光硬化性樹脂組成物は、当該樹脂組成物全量に対して、
(G)20〜98.9重量%の前記アクリレート又はメタアクリレート成分Gと;
(H)1〜20%重量%の前記チオール成分Hと;
(C)0.1〜10重量%の前記光開始剤Cと;を含む。
【0089】
光電子デバイスの一実施形態において、
(I)少なくとも1つのエポキシポリシロキサン成分と;
(J)少なくとも1つのカチオン性光開始剤、或いは、任意のそれらの混合物と;を含む光硬化性樹脂組成物を、活性光照射により硬化することにより1つ以上の有機層を得る。
【0090】
前記実施形態の一実施形態において、光硬化性樹脂組成物は、当該樹脂組成物全量に対して、
(I)20〜99.9重量%の前記エポキシポリシロキサン成分Iと;
(K)0.2〜79.9重量%の、ポリシロキサン基を有さないエポキシ官能又はオキセタン官能有機成分、或いは、当該エポキシ官能又はオキセタン官能有機成分の混合物と;
(J)0.1〜10重量%の前記光開始剤Jと;を含む。
【0091】
前記1つ以上の有機層は、例えば、横方向拡散層、ゲッタ材含有層、又は、平坦化層を有しうる。
【0092】
なお、カチオン性光開始剤を含む組成物は比較的塩基性が低いゲッタ材と併用する場合のみに使用するべきである。CaOなどの比較的塩基性が高いゲッタ材はカチオン性光硬化プロセスを抑制しうる。
【0093】
第1の態様に係る多層保護層の一実施形態において、第1の有機層及び/又は第2の有機層はclogP値が>2である光硬化性樹脂組成物を活性光照射により硬化することにより得る。
【0094】
疎水性が高い化合物を有機層に使用することが好ましい。疎水性の望ましい指標はclogP、すなわち、オクタノール/水分配係数の算出対数である。clogP値が比較的大きいことは、その物質の疎水性が比較的高いことを示す。このことは、様々な有機材料の水吸収とclogP値との関係について得られた実験結果を示す図8に示される。特に、clogP値が少なくとも2である有機材料は水吸収が非常に低いことがわかる。したがって、本発明の目的に照らして、clogP値が少なくとも2である有機材料が特に好適である。clogP値は周知のパラメータであり、任意の分子についてその分子構造に関する知識から計算されうる。これを行うことが可能な市販のコンピュータ・プログラムは多数存在し、例えば、Osiris Property Explorer(http://www.organic-chemistry.org/prog/peo/)が挙げられ、アクテリオンファーマシューティカルズ社の社内用物質登録システムの不可欠な部分である。これは、全ての原子の貢献度をその原子の種類、結合性及び化学結合に基づいて加算する増加システムとして実行される。
【0095】
特に、高clogP値の観点から下記の組成物が好適であることがわかった。すなわち、シロキサンを含む組成物;70〜80重量%のシロキサンと20〜30重量%のオキセタンとの混合物を含む組成物;少なくとも5重量%のチオール又はオキシタンを含む、85〜95重量%のアクリレートの混合物を含む組成物;又は、1〜10重量%のチオールを任意で含む、40〜85重量%の1つ以上のアクリレートと10〜55重量%のポリブタジエンアクリレートとの混合物を含む組成物である。光開始剤などの更なる添加物が5重量%までの量で添加されうる。
【0096】
clogP値が少なくとも2である材料を得るためのこのような組成物の幾つかの例を下記表に示す(数値:重量%)。
【0097】
【表1】
【0098】
種類名の意味を下記表に示す。
【0099】
【表2】
【0100】
上述のとおり、ゲッタ層を設けるにあたっては様々なオプションが考えられる。第1のオプションによれば、当該防湿剤層は、第1族又は第2族金属或いはBaOやCaOなどのそれらの酸化物の均質層として設けられる。あるいは、防湿剤層は分子ゲッタと混合された有機層として、更にあるいは、第1族又は第2族金属或いはBaOやCaOなどのそれらの酸化物の微細分散(ナノ)粒子を含む有機層として形成されうる。このようなナノ粒子は市販されている。一実施形態において、CaOナノパウダーをStrem Chemicalsから購入した(カタログ#20−1400)。当該製品の仕様は下記のとおりである。BET比表面積:≧20m/g、バルク密度:0.5g/cc、結晶子サイズ:≦40nm、真密度:3.3g/cc、平均孔直径:165Å、平均凝集体サイズ:4μm、全孔体積:≧0.1cc/g、Ca含有量(金属ベース):>99.8%。他の実施形態において、MgOナノパウダーをStrem Chemicalsから入手した(カタログNo.12−1400)。当該製品の仕様は下記のとおりである。BET比表面積:≧230m/g、真密度:3.2g/cc、結晶子サイズ:≦8nm、平均凝集体サイズ:3.3μm、平均孔直径:50Å、強熱減量:≦8%、全孔体積:≧0.2cc/g、水分含有量:≦1%、バルク密度:0.6g/cc、Mg含有量(金属ベース):≧95%。
【0101】
他の実施形態において、ゲッタ層は水分及び酸化剤などの浸透物に能動的に結合してこれを中和することが可能な活性高分子バリア層から形成されうる。この結合は、例えば、浸透物の化学的又は物理的な吸着により起こりうる。通常、活性高分子バリア層は従来の無機ゲッタ材よりも格段に加工が容易であり、例えば、有機電子デバイスの機能積層体の上部電極上に液状又はペースト状に成膜可能であり、これにより有機機能領域に通常存在する段差が平坦化される。
【0102】
活性高分子バリア層は、シクロデキストリンが分散したポリマーマトリックス、環状オレフィンコポリマー、無水物含有ポリマーマトリックス、及び、それらの混合物から選択されることが好ましい。シクロデキストリンは、シクロデキストリン・グルコトランスフェラーゼなどのある種の酵素の作用により形成されるα−D−グルコースの環状オリゴマーである。シクロデキストリンは、互いにα1→4結合で連結した6個、7個又は8個のグルコースモノマーからなり、α−シクロデキストリン又はγ−シクロデキストリンとして知られている。シクロデキストリンの分子は、その結晶格子内に連続したチャネルが形成されるように互いに特殊な態様で配向している。これらのチャネルは、特定の体積を有する大型の中空内部を有するため、ガス分子などの浸透物を結合することができる。浸透物はまた、例えば、グルコース部分の6位の炭素における1級水酸基と、2位及び3位の炭素における2級水酸基とを介してシクロデキストリン分子に共有結合することが可能である。シクロデキストリンの溶解性、相溶性、及び、熱安定性を変えるためにこれらの水酸基を他の基に置き換えることも可能である。また水酸基を置換して、結合力をシクロデキストリンの結合力と潜在的な浸透物の結合力との間の値とすることも可能である。したがって、シクロデキストリンは例えば水分又は酸化剤を恒久的に中和することができる。シクロデキストリンはポリプロピレンのようなポリマーマトリックスに分散されていることが好ましい。
【0103】
環状オレフィンコポリマーは、例えば、押出ブレンドされた2つの成分を有しうる。一方の成分は、例えば、ポリ(エチレン−/メチルアクリレート/シクロヘキセニル−メタアクリレート)(EMCM)のような酸化性ポリマーでありうる。他方の成分は、例えば、光開始剤と遷移金属触媒などの触媒とからなる。
【0104】
他の実施形態において、活性高分子バリア層は加水分解されたときに酸性プロトンを発生させない有機組成物を含む。有機組成物は、オキサゾリジン及びその誘導体、シアノアクリレート、及び、イソシアネートからなる群から選択されることが好ましい。
【0105】
このような水分補足剤を選択することにより、当該補足剤が確実に有利に有機材料に溶解される。よって、無機補足剤(CaOなど)を使用する場合のような、ナノ粒子の有機材料内への分散は必要ない。補足剤が、周知の無水物系有機水分補足剤の場合のように、加水分解時に酸性プロトンを発生させないことは、高反応性な移動性プロトンが補足反応後に残存しないという利点がある。
【0106】
ゲッタ層は、ゲッタ材の分散液を含む重合性溶液の層を成膜し、次いでこの層を硬化することにより得られうる。ゲッタ粒子又は異方性粒子の有機マトリックスへの分散性を向上させるために分散剤を添加してもよい。分散剤は、低分子量有機分散剤、高分子量有機分散剤、低分子量有機/無機複合分散剤、高分子量有機/無機複合分散剤、有機/無機酸などでありうる。分散剤は、例えば凝集を防止することによりゲッタ粒子を有機層内へ良好に分散させることでゲッタ粒子のサイズを最小化し、その結果ゲッタ粒子をナノメートルオーダーの大きさで存在させて透明な水分吸収層を作製するためのものである。
【0107】
光硬化性組成物は、安定化剤、調節剤(modifier)、強靱化剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、難燃剤、酸化防止剤、顔料、色素、充填剤、及び、それらの組み合わせなどのその他の成分を更に含みうる。
【0108】
以下、本発明の効果を図2A及び図2Bを参照して説明する。無機層は一般的に水蒸気に対して効果的なバリアを形成するものの、無機層内に残留した水蒸気の拡散は均一ではなく、個々のピンポールを介して拡散する。通常、バリア層内にはこのようなピンホールが10/mの密度で分布しうる。したがって、かかる場合、ピンホール間の平均距離は1cm程度である。一例として、図2A及び図2Bに1つのこのようなピンホール22aを示す。
【0109】
図2Aは、横方向拡散層が存在しない本発明に係るものではない光電子デバイスを示す。このデバイスは横方向拡散粒子を含まない有機層27を有するに過ぎない。ピンホール22aを貫通する水蒸気は有機層内で等方的に拡散する。特に光電子デバイスでは、透明性を良好とするために、バリア構造体の一部を構成する層積層体は薄いこと(例えば、100μm以下)が望ましい。よって、有機層の厚さはピンホール間距離よりも実質的に小さい。これは、水蒸気がゲッタ層24に不均一に到達することを示唆している。ピンホールの前ではゲッタ層へ向かう水蒸気の拡散は比較的大きくなり、ピンホール間の領域では水蒸気拡散率が低くなる。その結果、ゲッタ層が局所的に飽和することによりゲッタ層の機能が損なわれ、光電子デバイスが局所的に劣化しうる。
【0110】
ここで、図2Bに示すような、横方向拡散層26がゲッタ層24と無機層22との間に存在する本発明に係る構成を考える。横方向拡散層26が存在することにより、水蒸気が横方向拡散層26に対して垂直方向よりも横方向に実質的に速く拡散する。その結果、ゲッタ層24に向かう水蒸気は、ゲッタ層24の面内において、実質的により均一に空間的に分布する。よって、ゲッタ層24のより大きな領域を水蒸気の吸収又は結合に利用でき、ゲッタ層24の局所的な飽和が防止される。上述したとおり、光電子デバイスは横方向拡散層26無機層22との間に有機平坦化層を有しうる。
【0111】
図3は本発明に係る光電子デバイスの他の実施形態を示す図である。光電子デバイスにおいて、層積層体は有機光電子素子10とゲッタ層との間に配設された少なくとも1つの更なる無機層29を含む。
【0112】
図4は本発明に係る光電子デバイスの他の実施形態を再度示す図である。ここで、横方向拡散層26はゲッタ材を含む。水分及び/又は他の物質が横方向に広がることにより、ゲッタ材がピンホール22aの前で横方向拡散層26の深さ方向全長に亘って飽和されるのを防止されることが、ピンホール22aの周りの同心円状の楕円で示されている。
【0113】
図5は本発明に係る光電子デバイスの更なる実施形態を示す図である。同図に示す実施形態において、光電子デバイスは、光電子素子10を挟む第1及び第2の層積層体20,40を含むバリア構造体を有する。第1の積層体20は無機層22,横方向拡散層26、ゲッタ層24、及び、無機層29を含む。第2の積層体40は無機層42、有機層46,及び、無機層49を含む。第1の積層体、第2の積層体、及び、これらの間に配設された光電子素子10はポリマー箔50により担持される。この時、第1の層(22,26,24,29)積層体のみが横方向拡散層26及びゲッタ層24を含む。第2の層(42,46,49)積層体は従来のバリア積層体であり、分断・平坦化層として無機層42,49の間に配設された有機層46を含む。かかる構成において、光電子素子のカソード層を第1の層積層体20に対向させることが好ましい。光電子素子はカソード側が最も脆弱であり、第1の層積層体20の蒸気ブロック力が最も高いからである。本実施形態の変形例では、有機層46は横方向拡散層とゲッタ層との組み合わせにより置換されて、横方向拡散層はゲッタ層と無機層42との間に配設される。
【0114】
一実施形態において、光電子素子はOLEDである。OLEDはカソードとアノードとの間に配設された発光層を有する。当該デバイスが金属基板を有する場合、金属基板が電極として機能しうる。機能性を向上させるために、OLEDは通常、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層などの追加の機能層を有する。
【0115】
図6A〜6Dは本発明の第2の態様に係る方法の第1の実施形態を示す図である。
【0116】
図6Aは光電子素子10を提供する第1の工程を示す図である。光電子素子10はバリア性を有する基板の表面28に提供される。あるいは、光電子素子10は製造プロセスの後段階でバリア性を有する最終基板と交換される一時的な基板に配置されうる。
【0117】
図6Bはゲッタ層24を光電子素子上に設ける第2の工程を示す図である。ゲッタ層は、ゲッタ粒子を有機前駆体に分散させた分散液として塗布されうる。スピンコーティング法又は印刷法などにより塗布した後、UV照射などによりこの有機前駆体を硬化させる。ゲッタ材を粒子分散液として塗布する代わりに、分子ゲッタを設けてもよい。一実施形態において、バリア層29を設ける追加の工程が第2の工程の前に行われる。
【0118】
図6Cは横方向拡散層26をゲッタ層24上に設ける第3の工程を示す図である。
【0119】
図6Dは無機層22を設ける第4の工程を示す図である。無機層22及び基板28が光電子素子10を包囲する。
【0120】
以下、図7A〜7Dを参照して、第3の工程の考えられる実施態様を詳細に説明する。
【0121】
図7Aは、図6Bを参照して説明した第2の工程で得られた半製品を示す図である。
【0122】
図7Bは平坦化層261をゲッタ層24上に設ける第1の副工程を示す図である。ゲッタ層24が既に十分平坦であれば、この第1の副工程は省略してもよい。例えば、上述したように活性高分子バリア層を使用した場合である。
【0123】
図7Cはパターン化無機層262を平坦化層261上に成膜する第2の副工程を示す図である。パターン化無機層262はセグメント262a・・・262nを含む。これらのセグメントの横サイズは100μm〜10cm程度であることが好ましい。得られる層貫通方向の水蒸気透過率は通常、少なくとも10−3g/m/day程度であり、層貫通方向の拡散は横方向拡散よりも実質的に遅い。パターン化無機層262は、例えば、シャドーマスクを使用した蒸着法などの標準的なリソグラフィ法により設けられうる。あるいは、リフトオフ技術が使用される。図7Cは断面図(図中上端)及び正面図(下部)の両方の中間体を示す図である。
【0124】
図7Dに示す第3の副工程において、パターン化無機層262上に有機材料の平坦化層263が成膜される。図7Eに示す第4の副工程において、パターン化無機層262のパターンを補完(オフセット)するパターンを有する平坦化層263上に、更なるパターン化無機層264が成膜される。
【0125】
第2の副工程及び第3の副工程は、任意の回数繰り替えして行われうる。これにより、各パターン化無機層が、先のパターン化無機層のパターンを補完するように設けられる。無機層22を設ける前の最後の副工程において、平坦化層を成膜して、最後のパターン化無機層が平坦化される。パターン化無機層はリソグラフィ法により設けられるため、そのセグメントは通常、当該無機層の面に対してよく整列している。したがって、比較的薄い平坦化膜(例えば、セグメントの厚さの2〜3倍程度)で十分である。例えば、セグメントの厚さは50〜200nmとされうり、平坦化層の厚さはその2〜5倍の範囲とされうる。それでもなお、より厚い平坦化層もまた使用されうる。図7A〜7Dを参照して説明した方法が、層の性質を非常に精確に制御できるという点で好都合である。なお、ゲッタ材が平坦化副層261,263の1つ以上と一体とされている場合、第2の工程を省略してもよい。
【0126】
工業プロセスへの応用に非常に好適な方法によれば、液状有機前駆体に分散させた無機異方性粒子の分散液を塗布し、次いでこの有機前駆体を硬化させる。
【0127】
OLEDに基づいて本発明を具体的に説明したが、本発明は他の光電子素子、例えば、エレクトロクロミックデバイスや光起電力デバイスを有する光電子デバイスにも同等に適用することができる。
【0128】
本明細書において、語句「含む」、「有する」(comprises, comprising, includes, including, has, having)又はそれらの全ての変形語は、非排他的な包含を意図するものである。例えば、一連の要素を含むとされるプロセス、方法、物品又は装置は必ずしもこれらの要素に限定されず、明示されていないか又は当該プロセス、方法、物品又は装置に内在する他の要素をも含みうる。さらに、断りのない限り、「又は」は包含的な「又は」であり排他的な「又は」ではない。例えば、「条件A又はB」は下記のいずれか1つにより満たされる。Aは真(又は存在)でありBは偽(又は非存在);Aは偽(又は非存在)でありBは真(又は存在);A及びBの双方が真(又は存在)。
【0129】
また、「1つ」(a, an)は本発明の要素及びコンポーネントを記述するために使用されるものである。これは単に便宜上の目的であり本発明の一般的な意義を伝えるためのものである。断りのない限り、かかる記載は1つ又は少なくとも1つを含み、かつ、単数形は複数形を含むものと解釈されるべきである。


図2A
図2B
図7A
図7B
図8
図1
図3
図4
図5
図6
図7C
図7D
図7E