(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000269
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】プリンタ内でインクで印刷された記録支持体を乾燥する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20160915BHJP
B65H 23/24 20060101ALI20160915BHJP
B65H 20/14 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
B41J2/01 125
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B65H23/24
B65H20/14
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-538157(P2013-538157)
(86)(22)【出願日】2011年11月8日
(65)【公表番号】特表2014-503378(P2014-503378A)
(43)【公表日】2014年2月13日
(86)【国際出願番号】EP2011069605
(87)【国際公開番号】WO2012062731
(87)【国際公開日】20120518
【審査請求日】2014年7月31日
(31)【優先権主張番号】102010060489.5
(32)【優先日】2010年11月11日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513267899
【氏名又は名称】オーセ プリンティング システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Oce Printing Systems GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム ザムヴェーバー
【審査官】
島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−094976(JP,A)
【文献】
特開2009−143661(JP,A)
【文献】
特開2010−228159(JP,A)
【文献】
特開2001−212955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 − 2/215
B65H 20/14
B65H 23/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリンタ内で予め印刷された移動しているウェブ状の記録支持体(10)を乾燥する装置であって、
加熱可能なボディ(20)を備え、該加熱可能なボディ(20)に搬送される前に予め新しくインクで印刷されたばかりのウェブ状の記録支持体(10)は、予め設定されたウェブ張力で、加熱可能なボディ(20)の傍を通って案内され、
該ボディ(20)は、移動している記録支持体に向いた側の接触面を有し、該ボディ(20)の、記録支持体(10)に向いた側の接触面(22)は、該記録支持体(10)が移動している間に、乾燥運転で、記録支持体(10)を乾燥するために、記録支持体(10)の新しく印刷されなかった側に、接触させることができ、
記録支持体(10)の搬送方向にみて、前記ボディ(20)の上流側に、前記予め印刷された移動している記録支持体(10)を受け取る、第1の案内要素(12)が配置されていて、かつ前記ボディ(20)の下流側に、第2の案内要素(16)が配置されており、前記第1の案内要素(12)及び前記第2の案内要素(16)は、それぞれ移動している記録支持体(10)を案内し、
前記接触面(22)は、略平らであり、かつ乾燥のために、前記第1の案内要素(12)と前記第2の案内要素(16)とにより規定された接平面(T)と略一致して延在しており、
負圧装置(30)が設けられており、該負圧装置(30)により、周囲に対して、負圧が、記録支持体(10)が移動しているときに移動している記録支持体(10)に向いた側の前記接触面(22)に形成可能であり、
記録支持体(10)の停止運転時に、負圧が遮断され、記録支持体(10)が停止していて移動していないとき、負圧が遮断されており、
遮断工程が、連続的に、調節可能な所定の時間間隔にわたって負圧を連続的に低減することにより行われる、
ことを特徴とする、インクジェットプリンタ内で予め印刷された移動しているウェブ状の記録支持体を乾燥する装置。
【請求項2】
記録支持体(10)を前記接触面(22)に押し付けることができる力が、前記負圧装置(30)の負圧の調節により変化可能である、請求項1記載の装置。
【請求項3】
略平らな前記接触面(22)は、その長さ(L)にわたって、3mmより小さな、理想的な平面からのずれである幾何偏差(a1)を有する、請求項1又は2記載の装置。
【請求項4】
前記負圧装置(30)は、通常の印刷運転時に、周囲に対して、14mbar〜30mbar、好適には14mbar〜22mbarの負圧を形成する、請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
遮断工程のための時間間隔は、記録支持体(10)の搬送速度が印刷時の速度からゼロになるまで制動される時間間隔に等しい、請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
乾燥運転時に、前記接平面(T)と、前記接触面(22)により規定されている平面との間の偏差(a2)は、3mmより小さい、請求項1から5までのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
前記案内要素は、ガイドローラ(12,16)として形成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
停止運転時に、前記接平面(T)と前記接触面(22)との間の間隔(A)を調節する旋回装置(36)が設けられている、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
インクジェットプリンタ内で移動しているウェブ状の記録支持体(10)を印刷し乾燥する方法であって、
加熱可能なボディ(20)に搬送される前に予めウェブ状の記録支持体(10)を、含水インクで印刷し、そのあとで予め設定されたウェブ張力で、加熱可能なボディ(20)の傍を通って案内し、該ボディ(20)の、記録支持体(10)に向いた側の接触面(22)を、該記録支持体(10)が移動している間に、乾燥運転で、記録支持体(10)を乾燥するために、記録支持体(10)の新しく印刷されなかった側に、接触させ、
記録支持体(10)の搬送方向にみて、前記ボディ(20)の上流側で、前記予め印刷された移動している記録支持体(10)を受け取る、第1の案内要素(12)が、かつ前記ボディ(20)の下流側で第2の案内要素(16)が、移動している記録支持体(10)を案内し、
前記接触面(22)は、略平らであり、乾燥運転時に、前記第1の案内要素(12)と前記第2の案内要素(16)とにより規定された接平面(T)と略一致して延在しており、
負圧装置(30)が、記録支持体(10)が移動しているときに移動している記録支持体(10)に向いた側の前記接触面(22)に、周囲に対して、負圧を形成し、
記録支持体(10)の停止運転時に、負圧を遮断し、記録支持体(10)が停止していて移動していないとき、負圧を遮断し、
遮断工程を、連続的に、調節可能な所定の時間間隔にわたって負圧を連続的に低減することにより行う、
ことを特徴とする、インクジェットプリンタ内で移動しているウェブ状の記録支持体(10)を印刷し乾燥する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ内でインクで印刷されたウェブ状の記録支持体を乾燥する装置に関する。さらに本発明は、乾燥装置に属する作業方法に関する。
【0002】
インクジェット原理に従って作動する高性能プリンタは、印刷時にプリントヘッドを運動させることなく含水インクを塗布することによりウェブ状の記録支持体に印刷を行う。この場合、ウェブ状の記録支持体は、例えば1.5m/sの比較的高い搬送速度で運動させることができ、その結果、湿気を帯びた印刷像を適切な装置により乾燥する必要性が生じる。その1つの可能性は、記録支持体の加熱にある。
【0003】
米国特許第5568241号明細書(国際公開第94/09410号パンフレット)において、電子写真方式の印刷機器において帯状の記録支持体上にトナー像を定着させる熱定着装置が公知である。この熱定着装置は、熱印刷定着ステーションを備え、熱印刷定着ステーションに、予熱ステーションが前置されている。この予熱ステーションは、凸状に湾曲した予熱サドルを備え、予熱サドルは、加熱ロッドにより加熱され、その滑り面の上を記録支持体が搬送される。サドル状の滑り面は、湾曲して形成されている。その湾曲及び必要なウェブ張力に基づいて、予熱サドルの長さにわたって、記録支持体を滑り面に押し付けて、そうして良好な熱接触を形成する力成分が生じる。追加的に負圧装置が設けられており、負圧装置は、滑り面と記録支持体との間に負圧を形成し、負圧により、記録支持体は、加熱サドルの滑り面に吸着され、予熱により解放される水蒸気が吸い出される。
【0004】
湾曲及び摩擦に基づいて、記録支持体のウェブ張力は、加熱サドルの長さにわたって増加する。これによりこの長さにわたって押付け力が変化し、記録支持体と加熱サドルの表面との間の熱伝達は一定でなく、このことは、記録支持体の不均等な加熱を招く恐れがある。さらに、それぞれ異なる紙種、インク種及び印刷速度に対して、必要な熱伝達を個別に調節することも困難である。加熱制御装置による補償は、技術的に面倒であり、困難である。さらに、予熱サドルの滑り面と記録支持体との間の不均等な機械摩擦に基づいて生じるスリップスティック現象が起こる。この不都合なスリップスティック現象は、特に記録支持体の搬送の接続及び遮断時に生じる。
【0005】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第2717119号明細書には、インクジェットプリントヘッドにより印刷された記録支持体用の乾燥装置が記載されている。印刷ゾーンから離間したあとで、記録支持体は、加熱されたペーパーガイド金属板の上を案内されて、乾燥される。加熱のために加熱シートが働く。
【0006】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第3642204号明細書において、インクジェット原理に従って作動するプリンタにより印刷された記録支持体用の乾燥装置が記載されている。プリントヘッドからのインクの吐出前に、記録支持体は加熱されるので、インクが記録支持体を着色したあとでも依然として十分な熱が記録支持体に蓄えられたままである。
米国特許出願公開第2010/0073450号明細書には、インクジェットプリンタにおいてウェブ状の記録支持体を乾燥する装置が記載されており、この装置では、インクヘッドが、印刷したい紙面の上を往復運動する。このために、ウェブ状の記録支持体は、直方体状で加熱可能なボディに支承され、負圧が及ぼされ、その結果、加熱可能なペーパーウェブの1つの区分が印刷のために把持され、加熱可能なボディから紙に伝達される熱がインクを乾燥する。この場合、印刷のあとで、ペーパーウェブは、次の区分で印刷を行うために、引き続き搬送される。
米国特許出願公開第2010/0245451号明細書には、インクジェットプリンタが記載されており、このインクジェットプリンタでは、複数列のプリントヘッドが、シート状の紙の搬送方向に対して横向きに配置されている。プリントヘッドに対向して加熱可能なボディが位置しており、このボディにシート状の紙が載置される。負圧により、紙が吸い込まれ、これにより一方では、インクが乾燥され、他方では、プリントヘッドが吸込まれた空気により冷却される。
【0007】
本発明の課題は、記録支持体の均等な乾燥が得られる装置及び方法を提供することである。
【0008】
この課題は、独立請求項に記載された構成により解決される。好適な態様は、従属請求項に記載されている。
【0009】
本発明によれば、加熱可能なボディの接触面は略平らであり、乾燥プロセスに際して、第1の案内要素と第2の案内要素とにより規定されている接平面に略一致して延在している。接触面に湾曲がないことに基づいて、好適には含水インクで印刷されている記録支持体との摩擦は、大幅に低減されていて、もはやウェブ張力に依存していない。つまり、それぞれ異なる記録支持体、例えばそれぞれ異なる紙種において、熱伝達に影響を及ぼすことなくウェブ張力を変化させることができる。不都合なスリップスティック現象も起こらない。加熱可能なボディの接触面と記録支持体との間の良好な熱接触のための押圧力は、概ね負圧装置の負圧により設定される。接触面が鉛直に延在する場合、記録支持体の重量は意味を成さず、押圧力は、専ら、簡単に調節可能である負圧に依存している。記録支持体と接触面との間の摩擦は、あらゆる箇所で、専ら、そこに作用する負圧に依存しており、この負圧は、接触面全体にわたって一定に作用するように調節することができる。したがって負圧と摩擦との間の直線的な関係が生じ、その結果、自己増加作用が生じ、熱的な接触における不都合な影響は生じない。
【0010】
1つの改良形態によれば、負圧装置は、通常の印刷運転時に、周囲に対して14mbar〜30mbar、好適には14mbar〜22mbarの負圧を形成する。これらの値の場合、一方では、良好な熱伝達にとって十分な押圧力が形成され、他方では、作用する摩擦力はウェブ張力に対して大き過ぎず、水蒸気を確実に吸い出すことができる。
【0011】
記録支持体を接触面に押し付ける力は、負圧の調節により変化可能である。このようにして、装置は、それぞれ異なる種類の記録支持体、例えばそれぞれ異なる紙に適合させることができる。
【0012】
別の1つの態様によれば、停止運転時に、負圧装置の負圧を遮断することができる。この場合、記録支持体と接触面との間の熱伝達が大幅に抑制され、記録支持体に負荷が掛けられない。このことは、特にポーズ機能にとって好適である。ポーズ機能では、印刷運転が短時間中断される。湾曲した加熱サドルを使用する場合、例えば、熱伝達を大幅に阻止することはできず、その結果、記録支持体は部分的に乾燥する。
【0013】
別の1つの態様によれば、負圧を遮断するための遮断工程は、連続的に、調節可能な時間間隔にわたって行われる。このようにして、押圧力は連続的に低減され、記録支持体に作用する妨害力が低減される。好適には、調節可能な時間間隔は、記録支持体の搬送速度が印刷時の速度からゼロになるまで制動される時間間隔に等しい。プリンタのポーズ運転又はエラーに起因する停止時に記録支持体の搬送速度が不意にストップされることはない。なぜならば不意のストップは、ウェブ張力を過度に高め、記録支持体に過度の負荷を掛けることになるからである。搬送速度が低下するのと同様の程度で、この態様では、記録支持体と加熱可能なボディとの間の押圧力ひいては熱伝達が低減する。
【0014】
本発明の別の思想によれば、プリンタ内でインクで印刷された記録支持体を乾燥する方法が挙げられている。この方法により、装置に関して上述した好適な効果が得られる。
【0015】
以下に、図面に基づいて本発明の実施の態様を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】平らな接触面を有する、ウェブ状の記録支持体を乾燥する装置を示す図である。
【
図2】平らな接触面に対して許容可能な形状偏差の概要を示す図である。
【
図4】加熱可能なボディの一部を上から見て示す斜視図である。
【0017】
図1には、概略断面図で、ウェブ状の記録支持体10、一般的にペーパーウェブを乾燥する装置の1つの態様を示している。記録支持体10は、搬送方向P1に、インクジェット原理に従って作動する高性能プリンタ内で搬送される。高性能プリンタ(図示していない)は、同時に印刷を行う多数のインクジェットプリントヘッドを備えるので、高い印刷速度が達成される。記録支持体10の搬送速度は2m/sまで、またそれ以上であってよい。記録支持体10は、第1の軸線14を中心に回動する第1のガイドローラ12と、第2の軸線18を中心に回動する第2のガイドローラ16とを介して、高性能プリンタの内側で相応のユニットにより形成される予め設定されたウェブ張力で案内される。ガイドローラ12,16に応じて形成される接平面Tは、記録支持体10が搬送される平面と一致する。
【0018】
加熱可能なボディ20は、記録支持体10の下側に配置されている。記録支持体10は、インクジェットプリントヘッドから、含水インクによりボディ20とは反対側で、直前に新しく印刷が行われたばかりである。ボディ20の、上側に位置する接触面22は、記録支持体10の、新しく印刷が行われなかった側に向いている。接触面22は、略平らであり、乾燥運転時に、第1のガイドローラ12と第2のガイドローラ16とにより形成されている接平面Tと略一致して延在している。図示の非乾燥運転時には、接平面Tと平らな接触面22との間に間隔Aが形成され、これについてはあとで説明する。Aがゼロである場合、プリンタは乾燥運転にある。
【0019】
ボディ20の加熱は、交換可能に配置された円柱形の加熱要素23の構成をした電気的な抵抗素子により行われる。加熱要素23は、ボディ20の孔24に配置されている。加熱要素23は、
図1において、横に給電線25と共に図示してある。故障した加熱要素は、こうして簡単に孔24から取り出して、別のものと交換することができる。ボディ20は、唯1つの金属ボディから、例えばフライス加工により、製作することができる。しかしまた、ボディ20は、結合要素により様々な部品から組み合わせてもよい。好適には、ボディは、アルミニウムから成る。加熱要素の構造及びその電気的な制御は、冒頭で述べた米国特許第5568241号明細書に記載されている通りであってよい。
【0020】
ボディ20の下側で、ボディ20は、負圧チャンバ26に接続されており、負圧チャンバ26は、負圧管路28を介して、負圧装置30に接続されている。この負圧装置30は、周囲に対して負圧を形成し、その結果、この負圧は、接触面22と記録支持体10との間に作用する。通常の印刷運転及び通常の乾燥運転に対する典型的な値は、14mbar〜30mbarであり、好適には14mbar〜22mbarである。このような値の場合、記録支持体10と接触面22との間に良好な接触が与えられるので、ボディ20の熱は、記録支持体10に伝わり、記録支持体10を乾燥する。加熱要素23により、ボディ20は、比較的薄い記録支持体に対して70℃〜80℃の温度に調節し、比較的厚い記録支持体に対して120℃〜150℃の温度に調節することができる。負圧は、同様に記録支持体10の種類に適合させることもでき、これにより乾燥のための熱伝達を変化させることができる。記録支持体10の搬送速度に対する適合もこのように行うことができる。ボディ20は、それぞれ異なる加熱要素により、それぞれ異なる温度を有する様々な加熱ゾーンに分割してよい。これについては、このような加熱ゾーンを記載している前述の米国特許第5568241号明細書を参照されたい。この特許文献は、その開示内容の援用により、本発明に含まれるものとする。
【0021】
負圧チャンバ26に作用する負圧は、負圧の吸込作用を記録支持体10に及ぼすために、スリット34(1つのスリットにしか符号34を設けていない)に通じる通路32(1つの通路にしか符号32を設けていない)を介してボディ20の表面に導かれている。スリット34は、記録支持体10の縁で僅かに側方の空気だけが吸い込まれるように構成されている。この吸込工程では、含水インクの乾燥時に生じる水蒸気も一緒に吸い出されるので、水蒸気は、記録支持体10と接触面22との間の熱伝達に影響を及ぼさない。典型的には、通常の印刷運転において、吸込時に、1時間当たり水蒸気として24リットルまでの水が生じ得る。
【0022】
図2には、2つの線図a)及びb)で長さLにわたる接触面の理想的な形状27を示してある。技術的な表面仕上げの実施において、理想的な平面度を達成することはできず、幾何偏差、特に1次の幾何偏差(形状偏差とも呼称される)が生じる。線図a)において、長さLにわたる理想的な接触面27からの実際の接触面22の実際のずれ(偏差)は、a1=3mmよりも小さくすべきである、ということが看取される。したがって、長さLにわたって長波形の凸状及び/又は凹状の形状偏差が生じ得る。この挙げられた形状偏差の場合には、良好な熱伝達及び摩擦力の低減の、達成したい技術的な効果が依然として与えられている。線図b)には、両方のガイドローラ12,16の間の区分における記録支持体10の搬送平面と一致する理想的な接平面Tからの接触面22の形状偏差が示されている。加熱可能なボディ20の全長Lにわたって、依然として3mmまでの最大のずれ(偏差)a2が許容されている。典型的には、長さLは、高性能プリンタに対して500mm〜800mmの範囲にある。
【0023】
図3には、
図1に示す態様に対する1つの変化態様を示してある。旋回装置36が、ボディ20に作用し、ボディ20を、両矢P2の方向に運動させる。このようにして、乾燥を行いたくない、又は僅かにしか行いたくない停止運転時に、接触面22と記録支持体10との間の間隔Aを調節することができる。この場合、印刷運転時に、ボディ20は、旋回装置36により運動させられ、間隔Aがゼロになり、接触面22が接平面Tと一致するようになる。ボディ20が記録支持体10から離間旋回されているとき、記録支持体10への熱の影響は略完全に中断されている。この状態で、印刷ポーズは、比較的長く継続することができる。平らな接触面22に基づいて、ボディ20の離間旋回によりガイドローラ12,16の間のウェブ長さが変化することはなく、このことは、スタート/ストップ運転時における印刷品質を大幅に改善する。
【0024】
図4には、加熱可能なボディ20の一部を上からみた斜視図で示してある。スリット34は、ボディ20の幅にわたって延在していて、凹部としてボディ20に形成されている。スリット34は、通路38に通じており、通路38は、負圧チャンバ26に接続していて、負圧チャンバ26を介して、空気及び蒸気が吸い出される。
【0025】
これらの態様に基づいて判るように、平らで加熱可能なボディの使用は好適である。なぜならば、記録支持体と接触面との間の摩擦は、もはや湾曲した接触面の場合のようにウェブ張力(ウェブ張力は正確なウェブ走行の理由から熱伝達のために必要であるよりも相当程度高くなり得る)に依存していないからである。したがって、それぞれ異なる記録支持体、例えばそれぞれ異なる紙において、プリンタ内のウェブ張力を、熱伝達に影響を及ぼすことなく変化させることができる。実際に、平らな接触面の使用により、大幅に低減された摩擦係数が得られる。測定では、実際に、その他の湾曲した案内面に生じる摩擦の3分の1への摩擦力の低減が得られた。負圧の遮断により、好適な形で、記録支持体と加熱可能なボディとの間の熱伝達は大幅に抑制することができるので、記録支持体は、もはや乾燥しない。このことはポーズ運転にとって好適である。
【符号の説明】
【0026】
10 記録支持体
P1 搬送装置
12 第1のガイドローラ
14 第1の軸線
16 第2のガイドローラ
18 第2の軸線
T 接平面
20 加熱可能なボディ
22 接触面
A 間隔
23 加熱要素
24 孔
25 給電線
26 負圧チャンバ
28 負圧管路
30 負圧装置
32 通路
34 スリット
36 旋回装置
38 通路
L 長さ
a1 形状偏差
a2 形状偏差