(54)【発明の名称】2−(アルコキシまたはアルコキシカルボニル)−4−メチル−6−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−1エニル)ヘキサ−2−エン酸化合物、その調製およびその使用
【文献】
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【文献】
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【文献】
KEMME,Susanne T.,ET AL.,"Combined Transition-Metal- and Organocatalysis: An Atom Economic C3 Homologation of Alkenes to Carbonyl and Carboxylic Compounds",CHEMISTRY - A EUROPEAN JOURNAL,2010年,VOL.16,NO.11,PP.3423-3433
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【文献】
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(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
有機触媒が、カルボン酸およびポリカルボン酸のアンモニウム塩ならびにアンモニア、第一級アミン、第二級アミン、ポリアミン、アミノ酸およびペプチドからなる群から選択されるアミン成分からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
新しいおよび刺激的なフレグランスアコードの創出において、調香師によって使用されている多くのフレグランス成分は、商品的成分であり、すなわち、それらは、非独占的であって、価格と品質が異なり得る種々の成分であり、および多くの異なるサプライヤから入手できる。調香師による、かかる成分の特別な種類の取込みは、コストの考慮ならびに性能に基づき得る。
【0003】
例えばAmbrofix(登録商標)(Givaudan), Ambroxan(登録商標)(Kao)、Cetalox(登録商標)およびFixambrene(登録商標)(ともにFirmenich)で市販されている、特定の異性体または異性体混合物からの3a,6,6,9a−テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1−b]フラン2は、かかる商品的フレグランス成分の例である。
【化1】
【0004】
新規の重要な中間体、ならびに重要なフレグランス成分を高純度、良好な収率および費用対効果の高い方法で生成することを可能にする新規な合成法を提供する必要性がある。
【0005】
本発明は、第一の側面において、式1
【化2】
式中、
Rは水素、アルキル、置換されたアルキル、アリールまたは置換されたアリールであり、特にRは水素、メチルまたはエチルである、で表される化合物を提供する。
化合物1の側鎖における二重結合は、α,β−位(共役)、またはβ,γ−位(非共役)であり得る。
【0006】
出願人は、化合物1が、3a,6,6,9a−テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1−b]フラン2などのフレグランス成分、その特定の異性体または異性体混合物が例えばAmbrofix(登録商標)(Givaudan), Ambroxan(登録商標)(Kao)、Cetalox(登録商標)およびFixambrene(登録商標)(ともにFirmenich)で市販されている、の有用な合成中間体であることを見出した。
【化3】
【0007】
化合物2の合成は、当業者に周知である。共役マロナート3(R=アルキル)のE立体配置β,γ−不飽和エステル4への変換がWO2007096791(Firmenich)に記載されている。その中で、前記変換は、化学量論量の有機酸中で、式MX
n(MはI、IIおよびIII族の金属であり、およびXは酸HXのアニオンである)で表される塩によって、以下のスキームに示すとおり触媒されるとクレームされている。エステル4は大事なフレグランス化合物2の合成における重要な中間体である。
【化4】
【0008】
しかしながら、α,β−不飽和マロン酸、そのうち式1で表される化合物は例である、は一般的に不安定であり、対応するα,β−不飽和マロナート3よりも、例えば、調製、蒸留中および/または水性ワークアップ条件下、取り扱いが難しいと考えられ、これはそれらの調製ならびにさらなる有用な化合物への変換を煩雑にし得る。これは、アルデヒド5(構造について以下を参照)とマロン酸との縮合が、低いE/Z(1:1)およびα,β/β,γ比での酸6(構造について以下を参照)を生成するにすぎないという理由で説明し得る(G.Lucius, Angew. Chem. 68, 247, 1956 または R. L. Snowdon, Siegfried Symposium, Universitat Zurich, 2006)。
【0009】
この分野における進歩が最近Breit et al.によって報告された(Chem. Eur. J. 16, 3423, 2010)。しかしながら、彼の方法により生成された不飽和マロン酸は、γ−置換基がなく、これは、脱炭酸後に、β,γ−不飽和の場合に(大きく異なるα,β/β,γ選択比とは別に)E/Z異性体を与える。さらに、このいわゆる「脱炭酸Knoevenagel反応」は、化学量論量の窒素含有塩基を必要とする(特に不飽和酸を扱う場合)。これは、多量の(しばしば高価な)N含有塩基(例えばピリジン、DMAP、ルチジンまたはDBU)を廃水から回収する必要があるので、大規模ではプロセスを不経済にする。
【0010】
よって、化合物1が貴重なフレグランス成分の調製のための有用な中間体であること、およびそれを経済的に調製できることを見出したことは驚くべきことである。
したがって、本発明はその別の側面において、式1で表される化合物の脱炭酸によるエステル4または酸6の調製における、式1で表される化合物の使用を提供する。
【0011】
化合物1から出発して、エステル4を調製することができ、これは良好なβ,γ/α,βおよびE/Z比、例えば約80:20以上を示し、上述したマロナート3のエステル4へのE−選択性変換に使用される試薬系を用いる。良好なβ,γ/α,βおよびE/Z比は、化合物1中の遊離カルボン酸基に起因している可能性があり、これはWO2007096791において必要とされるエステル交換反応工程を必要としないため、反応全体を達成するのを容易にする。
【0012】
本発明の特別な態様において、化合物1の脱炭酸は、本発明の目的に応じて、約0〜130度であり得る周囲温度、例えば25℃で行う。反応は溶媒中で、または溶媒のない系で行ってもよい。溶媒を用いる場合は、極性非プロトン溶媒、例えばDMF、N−アルキル−ピロリジノンまたはジアルキルスルホキシド、特にDMSOが好ましい。反応は、立体特異的におよびE/Z比の低下なしに進行し得る。
【0013】
この脱炭酸反応の例は以下の反応スキームにおいて示され、ここで化合物1aは、DMSO中、周囲温度で脱炭酸され、対応するメチルエステル4aを与える。該エステル4aは、このように立体特異的におよびE/Z72:28比の低下なしに調製し得る。
【化5】
【0014】
式1で表される化合物の脱炭酸の別の特別な態様において、反応は熱的に、例えば50〜350℃、流動条件下、例えばガスクロマトグラフィー(GC)カラム上で進行する。GCは気体流を使用するが、他の流動条件、例えばコイル反応器において、溶媒中に溶解してまたは溶媒なしで式1で表される化合物の連続脱炭酸が可能と考えられる。適切なフロー反応器は、流動および分析技術に熟練した化学者に知られている(例えば、Ley, S. V.; Baxendale, I. R. “New Tools for Molecule Makers: Emerging Technologies”, Proceedings of the Symposium “System Chemistry”, Bozen, Italy, Mai 26-30, 2008, Beilstein Institute参照)、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0015】
流動条件下でのこの反応の特別な例は、以下の反応スキームで示され、ここで化合物1b(ZまたはE/Z1:1)は式4aで表されるエステルに変わる。
【化6】
エステル4aは、この方法で良好なE/Z比、例えば80:20で調製することができる。
【0016】
式1で表される化合物の脱炭酸のさらにもう一つの特別な態様において、脱炭酸は、極性非プロトン性溶媒、例えばN−メチル−ピロリジン(NMP)中、金属ハロゲン化物塩MX
n(例えばLiCl)の存在下で行われ、対応する脱共役された酸を高いE/Z比で生じる。
この脱炭酸反応の特別な例は、以下の反応スキームで示され、ここで化合物1cは極性非プロトン性溶媒(例えばNMP)中、塩MX
n(例えばLiCl)の存在下で脱炭酸され、脱共役された酸6を高いE/Z比(例えば86:14)で与える。
【化7】
【0017】
したがって、本発明はその別の側面において、β,γ−不飽和−γ,γ−2置換酸、例えば酸6、の調製を提供し、約50〜約200℃、より特に約75〜約125℃の温度で、式1で表される縮合マロン酸、例えば化合物1cを塩MX
nと任意に極性溶媒の存在下で反応させる工程を含み、ここでMX
nは、無機塩または有機カチオン/ハロゲン化物アニオンペアであり、Xはハロゲン化物であり、およびnは1〜3の整数であり、およびMX
nが無機塩である場合、MはI、IIまたはIII族の金属であり、あるいはMX
nが有機カチオン/ハロゲン化物アニオンペアである場合、Mはピリジニウム、ピペリジニウム、ピロリジニウム、イミダゾリウム、アンモニウム、ホスホニウムおよびスルホニウムからなる群から選択される。MX
nはイオン性液体であることができ、かかる場合において塩と溶媒の両方として働くことができる。反応は良好な収率、および90:10まで、またはさらには95:5までの良好なE/Z選択性で進行する。
【0018】
式4で表されるエステルおよび酸6の両方が、化合物2およびその異性体への大事な中間体である。エステル4または酸6の前記側鎖二重結合が、E立体配置でβ,γ−位にある場合に、特に興味深い化合物2の異性体を達成することができる。
【0019】
式4で表されるエステルから、二環式エステル7を介し、Ambroxへ変換する3段階変換は、フレグランス化学の分野において知られており、例えばWO 2006010287を参照により本明細書に組み込む。合成経路の例は以下の反応スキームで示され、ここでRは上文で定義したとおりである。
【化8】
【0020】
変換は一連の環化および還元工程からなり、第1の環化工程、還元工程、および最後に第2の環化工程で進行する。
第1および第2の環化工程は、参照により本明細書に組み込まれるWO2006010287に、より十分に記載されているとおり、酸の存在下で進行する。好適な環化剤の例としては、鉱酸、有機酸およびルイス酸が挙げられる。好適な鉱酸の例としては、リン酸、硫酸および過塩素酸、例えばH
3[P(W
3O
1O)
4]などのヘテロポリ酸、Dowex(商標)50またはAmberlyst(商標)などの酸樹脂が挙げられる。
好適なプロトン酸の例としては、例えば塩化水素、臭化水素などのハロゲン化水素酸が挙げられる。有機酸の例としては、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、クロロスルホン酸が挙げられる。これらの指名した酸は純粋に例示的なものである。上述の酸の混合物を使用することも可能である。
好適なルイス酸の非限定的な例としては、例えばAlCl
3、TiCl
4、SnCl
4およびMeAlCl
2などの製品が挙げられる。
【0021】
環化工程は、不活性有機溶媒中で行ってもよい。好適な溶媒の選択は、当該分野の技術の範囲内で知られているが、好適な例としては、石油エーテル、例えばクロロホルム、ジクロロメタンおよびトリクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、例えばベンゼン、トルエンおよびニトロベンゼンなどの芳香族炭化水素、例えばジエチルエーテル、メチル−tert−ブチルエーテルおよびテトラヒドロフランなどのエーテル、エステル、例えばニトロメタン、ニトロプロパン、アセトニトリルなどの窒素含有炭化水素が挙げられる。
【0022】
還元工程b)は還元剤を用いて行ってもよい。所望の変換を実行することができる任意の還元剤を使用することができ、当業者は容易に好適な還元剤を見出すことができるであろう。好適な還元剤の非限定的な例としては、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素ナトリウム、Red−Alおよびシランなどの水素化物源である。還元は不活性溶媒中で行われ、その選択は当業者には明らかであろう。
【0023】
E−シクロホモファルネス酸6(エステル4の場合と同様)は、別の貴重なAmbrox2の前駆体である。6のSclareolide8への環化およびこの重要な中間体(8)のAmbrox2へのさらなる処理は、当業者に公知の多くの論文および特許に記載されており、また(化合物4の場合と同様)6の二重結合は、Sclareolide8および嗅覚的に興味深いAmbrox2の異性体を、良好な、例えば90%以上の選択性で入手するために、好ましくはE立体配置でβ,γ−位にあるべきである。
【0024】
これらの変換は、エステル4に関連して上述したように実質的に行うか、またはEP525579、EP5500889、EP165458およびDE3240054に記載の方法に従って行うことができ、その全ての引用文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【化9】
【0025】
化合物1は、対応する共役マロナート3の加水分解によって極めて簡単な方法で形成され得る。
式1で表される化合物の合成の例において、化合物1a(β,γ−位の二重結合およびR=Me)は、以下の反応スキームで示されるとおり、化合物3aから得られ、これはブタ肝臓エステラーゼ(PLE)を用いて酵素的に加水分解される。
【化10】
【0026】
式1で表される化合物の合成の別の例において、化合物1bは、プロトン性溶媒、例えば水およびアルコールROHまたは両者の混合物中(ROHとしてはモノアルコール、ジオールおよびトリオールが挙げられ、Rは分枝状または非分枝状であってもよい任意の有機残基、例えばメチルまたはエチルである)、および塩基、例えばアルカリおよび/またはアルカリ土類またはIII族金属の水酸化物などの存在下で、共役メチルマロナート3aのモノ加水分解によって調製してもよい。例えば、メルドラム酸3bをメタノール中、KOHで処理して(以下の反応スキーム参照)、ハーフマロナート1bを得る:
【化11】
【0027】
式1で表される化合物の合成のさらにもう一つの例において、化合物1cをアルデヒド5のマロン酸との縮合により調製することができる。この変換は、触媒又は化学量論量で使用される、有機触媒またはイオン性液体またはその両方の混合物を用いて行うことができるが、触媒量が好ましい。用語、有機触媒は、当該分野において周知である。本発明による好ましい有機触媒は、アミノおよび酸官能基を含む。これらの官能基は、同一分子内、例えばプロリンおよび他のアミノ酸内など、または例えばグリシルグリシン(H−Gly−Gly−OH、2−(2−アミノアセトアミド)酢酸)および他のペプチド内で共有結合することができる。
【0028】
アミン成分および酸成分は、アンモニウムカルボキシラート塩を形成するための縮合反応の前またはその間に混合することができる。これらの塩において、カルボキシラートは、例えば酢酸、マロン酸またはクエン酸などのカルボン酸またはポリカルボン酸から誘導される。アミン成分は、アンモニア、第一級、第二級アミン又はポリアミンから誘導される。第二級アミン、例えばピペリジン、ピペラジン、ピロリジンおよびモルホリンが好ましい。
【0029】
有機触媒は、例えば、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、イソプロパノールまたはtert−ブタノールなどの、水と共沸混合物を形成する溶媒または溶媒系で使用される。約70〜90℃の沸点を有する共沸混合物は、かかる共沸混合物を用いた縮合反応が進行し、マロン酸または縮合生成物1cの制御不能な脱炭酸することなく水が除去されるため好ましい。これらの条件下では、1〜1.2当量の比較的少量のマロン酸が、アルデヒド5の酸1cへの完全な変換に十分である。
【0030】
化合物1の合成のさらにもう一つの例において、化合物1cは水中、例えば18−クラウン−6またはテトラエチルアンモニウムクロリド(TEBAC)などの相間移動触媒の存在下(PTC)、還流下で無機塩基を用いた共役マロナート3の加水分解により調製することができる。
【化12】
【0031】
出発材料3a、3bおよび5は、すべて一般に入手可能な試薬であるか、または当技術分野で周知の方法に従って、一般的に入手可能な出発物質から誘導することができる。出発物質および合成のより詳細な議論を、以下の例に示す。
【0032】
化合物1cはシクロホモファルネス酸6にin−situで脱炭酸することができ、分離された1cと同様の良好な収率およびE/Z比を与えるため、マロン酸とアルデヒド5との縮合後に、ワークアップおよび化合物1cを分離する必要がないことがまた見出された。このin−situ反応の例は、以下の反応スキームに示される:
【化13】
前記プロセスは、良好な収率および純度で、再利用することができる比較的少量の安価な触媒、試薬及び溶媒を用いて、アルデヒド5からの効率的なワンポット調製を可能にするため、従前のE−シクロホモファルネス酸6の合成に対して大きな利点を表す。
【0033】
本発明を、以下の例を参照してさらに記載する。
例1
ジメチル2−(2−メチル−4−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−1−エニル)ブチリデン)マロナート3a:
【化14】
水を含まない条件下、テトラクロロメタン(120ml)中の塩化チタン(IV)(91g、0.5mol)を、テトラヒドロフランに0℃で、45分以内で滴加する。混合物をこの温度でさらに30分間撹拌し、その後テトラヒドロフラン(50ml)中の2−メチル−4−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−1−エニル)ブタナール5(50g、0.24mol)(M. Matsui et al., Agric. Biol. Chem. 50, 1475-1480, 1986)およびジメチルマロナート(31.7g、0.24mol)を0℃で、15分以内で添加し、続いてテトラヒドロフラン(240ml)中のピリジン(76g)を0℃で、90分間にわたって滴加する。橙褐色の懸濁液を25°Cで18時間撹拌し、その後、氷/水上に注ぎ、tert−ブチルメチルエーテルで抽出する。合わせた有機層を水および濃NaClで洗浄し、MgSO
4で乾燥する。ろ過および溶媒の蒸発後、粗生成物(75g)をショートパス(short-path)蒸留し、170℃/0.07mbarで62.5gの3aを得る(収率81%、純度>98%)。
【0034】
分析データ:
【化15】
【0035】
例2
2,2−ジメチル−5−(2−メチル−4−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−1−エニル)ブチリデン)−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン3b:
【化16】
撹拌および窒素下、まずL−プロリン(0.26g、2.2mmol)、次に2−メチル−4−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−1−エニル)ブタナール5(10g、45mmol)(M. Matsui et al., Agric. Biol. Chem. 50, 1475 - 1480, 1986)を、アセトニトリル(100ml)中の2,2−ジメチル−1,3−ジオキサン−4,6−ジオン(6.65g、45mmol)に25℃で添加する。この温度で90時間後、溶媒を減圧下で除去する。tert−ブチルメチルエーテルおよび2M HClを残渣に添加する。相分離し、tert−ブチルメチルエーテルで水相を抽出し、水、濃NaHCO
3および水で合わせた有機相を洗浄し、MgSO
4上で乾燥し、ろ過および減圧下で蒸発させ、16gの油状残渣を得る。シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン/tert−ブチルメチルエーテル9:1)にかけ、溶媒を蒸発させ、無色の油として0.8g(8%)のアルデヒド5および12.8g(87%)の3bが得られる。
【0036】
分析データ:
【化17】
【0037】
例3
(E)−2−(メトキシカルボニル)−4−メチル−6−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−1−エニル)ヘキサ−3−エン酸1a:
【化18】
共役マロナート3a(メタノール中5%ストック溶液から0.5g、1.5mmol)を、100mMリン酸カリウム緩衝液pH7.5中、25℃で一定に撹拌しながら375ユニットのブタ肝臓エステラーゼ(Sigma-Aldrich)を用いて培養した。20時間培養した後、反応混合物のpHを30%NaOHで9に設定し、続いて室温で一定に撹拌しながら30分間培養した。反応混合物をその後250mlのtert−ブチルメチルエーテルで3回抽出した。有機相を125mlの脱イオン水で2回および飽和NaCl溶液で1回洗浄し、Na
2SO
4上で乾燥し、および最後に減圧下、45℃で蒸発させた。0.4gの共役マロナート3aを回収した。塩基性(pH9)抽出から残った水相のpHを濃HClで3に設定した。tert−ブチルメチルエーテルで抽出し、水および飽和NaClで洗浄し、Na
2SO
4上で乾燥し、ろ過し、減圧下、45℃で蒸発させ、無色の油およびNMRによるE/Z72:28として62mg(13%)の脱共役されたハーフマロナート1aが得られた。副生成物1bの抑制は、用いたPLEの質に依存し、古いPLE(>1年)は異性体1aを排他的に与える。
【0038】
E−異性体の分析データ:
【化19】
DMSO−D
6中の新たに調製した1aの溶液に対するNMR分析:COSY、HSQC、HMBCおよびNOESY、によって決定したE/Z異性体の立体配置
【化20】
【0039】
例4
2−(メトキシカルボニル)−4−メチル−6−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−1−エニル)ヘキサ−2−エン酸1b:
【化21】
THF(130ml)中の共役マロナート3aの(10g、29.5mmol)を、水(120ml)中のNaOH(4.8g、118mmol)と共に25℃で5時間激しく撹拌する。濃NaHCO
3を添加した後、混合物をtert−ブチルメチルエーテルで抽出する。アルデヒド5を含有する有機相を捨てる。水相を濃HClでpH2に酸性化し、tert−ブチルメチルエーテルで抽出する。有機相をMgSO
4上で乾燥し、ろ過し、および減圧下で蒸発させ、放置によりE/Z1:1混合物にゆっくりと異性化する、Z−立体配置を有する7.5g(82%)の粗1bを得る。
Z−異性体の分析データ:
【化22】
DMSO−D
6中の新たに調製した1bに基づいて、
13C−NMR−(J. Med. Chem. 50, 1322 - 1334, 2007に記載された方法)、HSQC−およびHMBC−分析によって決定した立体配置
【化23】
【0040】
例5
共役ハーフマロナート1bの代替調製:乾燥メタノール(60ml)中の共役マロナート3a(10g、29mmol)およびKOH(1.9g、29mmol)を25℃で70時間撹拌する。混合物を水で希釈し、tert−ブチルメチルエーテルで抽出する。アルデヒド5、E−エステル4aおよび基質3a(溶媒の蒸発後4g)を含有する有機相を捨てる。水相をpH2に酸性化し、tert−ブチルメチルエーテルで抽出し、MgSO
4上で乾燥し、濾過し、および減圧下で蒸発させ、1:1のE/Z比および例4においてE/Z混合物について得られたものと同一の分析データ有する6.7g(76%)の粗1bを得る。
【0041】
例6
メルドラム酸誘導体3bからの共役ハーフマロナート1bの代替調製:KOH(1.9g、28.5mmol)を含有する乾燥メタノール(60ml)中の化合物3b(10g、28.5mmol)を65℃で4時間撹拌する。25℃に冷却した後、混合物を水で希釈し、tert−ブチルメチルエーテルで抽出する。有機相(溶媒の蒸発後1.5g)を捨てる。水相をpH2に酸性化し、tert−ブチルメチルエーテルで抽出し、MgSO
4上で乾燥し、濾過し、および減圧下で蒸発させ、E/Z1:1混合物として7.6g(86%)の粗1bを得る。分析データは、例4でE/Z混合物について得られたものと同一である。
【0042】
例7
2−(2−メチル−4−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−1−エニル)ブチリデン)マロン酸1c:
【化24】
ジメチルマロナート3a(10g、28mmol)、TEBAC(0.33g、1.4mmol)(または18−クラウン6)および1NNaOH(120ml)を100°Cで3日間撹拌する。25℃に冷却した混合物を、tert−ブチルメチルエーテルで抽出し、アルデヒド5を含有する有機相を捨てる。100ml2NHClを水相に添加し、これをtert−ブチルメチルエーテルで抽出する。有機相を水で洗浄し、MgSO
4上で乾燥し、濾過し、および蒸発させ、7.15gの粗ビス−酸1c(87%)を得る。
【0043】
分析データ:
【化25】
【0044】
例8
マロン酸との縮合によるアルデヒド5からの1cの代替調製:100mlイソ−プロパノール中のアルデヒド5(50g、0.24mol)、マロン酸(31g、0.3mol)、およびピペリジン(1g、12mmol)を95℃に加熱する。イソ−プロパノール/水共沸混合物を連続的に80℃で留去し、乾燥イソ−プロパノールで置換する。7時間後、溶媒を減圧下で除去する。残渣をシクロヘキサンに溶解し、および2MHCl水溶液で洗浄する。有機相を減圧下で濃縮し、75gの粘性の残渣を得て、これをヘキサン(400ml)中に溶解し、加熱還流し、ゆっくり25℃に冷却する。沈殿物を濾過し、冷ヘキサンで洗浄し、および乾燥し、白色結晶の形態で31.5g(45%)の1cを得る。融点110℃。分析データは、例7においてこの化合物について得られたものと同一である。
【0045】
例9
(E)−メチル4−メチル−6−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−1−エニル)ヘキサ−3−エノアート4a:
【化26】
N−メチルピロリドン(2.9g、29mmol)中の共役マロナート3a(0.5g、1.5mmol)、無水塩化リチウム(93mg、2.2mmol)および水(53mg、3mmol)を攪拌下で130℃に加熱する。この温度で4時間後、混合物を2MHCl上に注ぎ、tert−ブチルメチルエーテルで抽出する。合わせた有機層を濃NaHCO
3、濃NaClで洗浄し、およびMgSO
4上で乾燥する。ろ過および溶媒の蒸発後、粗生成物(0.64g)をバルブ・ツー・バルブ蒸留し、120℃/0.1mbarで0.4gの4aを得る。E/Z比82:18。
【0046】
E−異性体の分析データ:
【化27】
保持時間(GC):9.47 (Z), 9.56 (α,β), 9.62 (E) min.
E−およびZ−異性体のマススペクトルは同一である。IR (film): 2972 (m), 2865 (m), 1738 (s), 1434 (m), 1258 (m), 1199 (m), 1148 (m).
【0047】
例10
GCカラムにおける1bの脱炭酸による、E−シクロホモファルネシルエステル4aの代替調製:ハーフマロナート1bをtert−ブチルメチルエーテルに0.1%で溶解し、注入する。
【化28】
GC/MS:HP 6890 Series GC systemとAgilent 5973 MSD。非極性カラム: SGEからBPX5、5%フェニル95%ジメチルポリシロキサン0.2mm×0.25μm×12m。キャリアガス:ヘリウム。注入器温度:230℃。スプリット1:50。流速:1.0ml/min。トランスファーライン:250℃。MS-Quadrupol:106℃。MS−Source:230℃。保持時間:9.48(15%、Z−4a)、9.63(57%、E−4a)、9.87(12%,α,β−異性体)。Z−4aおよびE−4aのマススペクトルは同一である。分析データは、例9においてE/Z混合物について得られたものと同一である。
【0048】
例11
DMSO中、1aの脱炭酸によるE−シクロホモファルネシルエステル4aの代替調製:例3においてNMR分析のために調製したとおりのDMSO−D
6中の1aの溶液を含有するNMR管をそれ自体25℃で放置する。3日後、繰り返しNMR分析は、4a(E/Z比78:22)への完全な脱炭酸を示す。他の分析データは、例9からのE/Z混合物について得られたものと同一である。
【0049】
例12
(E)−4−メチル−6−(2,6,6−トリメチルシクロヘキサ−1−エニル)ヘキサ−3−エン酸6:LiCl存在下での1cの脱炭酸。
【化29】
N−メチルピロリドン(4.5g、45mmol)中の共役マロン酸1c(2g、6.7mmol)および無水塩化リチウム(0.3g、6.7mmol)を攪拌下、100℃に加熱する。この温度で2時間後、混合物を2MHClに25℃で注ぎ、tert−ブチルメチルエーテルで抽出する。合わせた有機層を水、濃NaHCO
3、濃NaClで洗浄し、およびMgSO
4で乾燥する。ろ過し、減圧下で溶媒を蒸発させ、1.9gの粗6(定量的)を得る。E/Z比86:14(
13C−NMR)。6の分析データは、EP550889(クラレ、1991)において、この化合物について記載されたものと同一である。
【0050】
例13
N−メチルピロリドン(6.6g、66mmol)中の共役マロン酸1c(3g、10mmol)および1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(EMIMCl)(1.5g、10mmol)を撹拌下および窒素下で100℃に加熱する。この温度で5時間後、混合物を2MHClに25℃で注ぎ、tert−ブチルメチルエーテルで抽出する。合わせた有機層を2MHCl、水および濃NaHCO
3で洗浄し、およびMgSO
4で乾燥する。ろ過し、減圧下で溶媒を蒸発させ、2.6gの粗6(定量的)を得る。E/Z比83:17(
13C−NMR)。6の分析データは、EP550889(クラレ、1991)において、この化合物について記載されたものと同一である。
【0051】
例14
酢酸アンモニウムによって触媒された、アルデヒド5から酸6のワンポット調製:
撹拌下および窒素下、アルデヒド5(104g、0.5mol)、酢酸アンモニウム(3.85g、50mmol)およびマロン酸(62.4g、0.6mol)をシクロヘキサン(250ml)およびtert−ブタノール(25ml)中で加熱還流する(78℃)。2時間後、5.5mlの水をディーン・スタークトラップ中に収集し、4時間後完全な転換をTLC(上記システム)によって検出する。210mlシクロヘキサンを減圧下(350mbar)で蒸留する。N−メチル−ピロリジン(100ml)中の塩化マグネシウム(24g)を5分以内に添加する。75℃で5時間後、中間体1cのモノ酸6への完全な転換がTLC(上記システム)によって検出される。
【0052】
反応混合物を25℃に冷却し、水(400ml)に注入する。ヘキサンで抽出し、MgSO
4上で乾燥し、合わせた有機相を減圧下で濾過し、および蒸発させ、123gの油性残渣が得られ、これは放置するとゆっくり固化する。内部標準ジオキサンを用いた
1H−NMRによると純度=61%(E)。収量:56%アルデヒド5に基づき、および純度によって修正された。比E/Z/conj=85:8:7(CDCl
3における
13C−NMR)。この方法により得られた酸6の他の分析データは、この化合物(例12、15、16および文献)について得られたものと同一である。
【0053】
例15
プロリンによって触媒された、アルデヒド5から酸6のワンポット調製:
撹拌下および窒素下、アルデヒド5(50g、0.24mol)、L−プロリン(2.8g、24mmol)およびマロン酸(31g、0.3mol)をシクロヘキサン(60ml)およびtert−ブタノール(40ml)中、加熱還流する(80〜85℃)。シクロヘキサン/tert−ブタノール/水共沸混合物を連続的に留去し、乾燥シクロヘキサン/tert−ブタノールで置換する。3時間後、ビス酸1cへの完全な転換が、TLCによって検出される。60mlのシクロヘキサン/tert−ブタノール/水共沸混合物を80〜85℃で留去する。乾燥N−メチル−ピロリジノン(157g、1.55mol)中の水を含まない塩化マグネシウム(11.5g、0.12mol)を添加し、混合物を80〜85℃でさらに3時間加熱する。
【0054】
溶液を25℃に冷却し、2NHCl水溶液時に注ぐ。シクロヘキサンで抽出し、有機相を2NHCl水溶液で洗浄し、合わせた水層をシクロヘキサンで抽出し、減圧下で合わせた有機相を蒸発させ、残渣を得て、これをさらに減圧下、シクロヘキサンで乾燥させ79.5%の純度を有する63gの黄色油状物を得る(E+Z、内部標準ジオキサンを用いた
1H−NMRによって決定する)。E/Z比:90:10(
13C−NMRによる)。粗生成物をヘキサンに溶解し、ゆっくりと−20℃に冷却する。沈殿物をろ過し、冷ヘキサンで洗浄し、39.5gの純粋なE−酸6(アルデヒド5から66%)を得る。純度=96%、内部標準ジオキサンを用いた
1H−NMRによる。融点=49℃。この方法により得られた酸6の他の分析データは、この化合物(例12,14,16および文献)について得られたものと同一である。
【0055】
例16
グリシニルグリシンによって触媒された、アルデヒド5から酸6のワンポット調製:
例14に記載したとおり、乾燥N−メチルピロリジノン(71g、0.71mol)中、アルデヒド5(50g、0.24mol)、H−Gly−Gly−OH(3.2g、24mmol)、マロン酸(31g、0.3mol)、塩化マグネシウム(11.5g、0.12mol)から、同量の溶媒シクロヘキサンおよびt−ブタノールを使用して、3時間(縮合のため)および4時間(脱炭酸のため)調製する。ワークアップにより、70%の純度を有する70gの租6を得る(E+Z、内部標準ジオキサンを用いた
1H−NMRによって決定される)。E/Z比:90:10(
13C−NMRによる)。収率:74%(修正されたおよびE−異性体に基づく)。この方法により得られた酸6の他の分析データは、この化合物(例12、14、15および文献)について得られたものと同一である。