特許第6000279号(P6000279)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000279
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】コーミング機のカバー
(51)【国際特許分類】
   D01G 19/10 20060101AFI20160915BHJP
   D01G 19/06 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   D01G19/10 Z
   D01G19/06
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-549686(P2013-549686)
(86)(22)【出願日】2012年1月9日
(65)【公表番号】特表2014-506633(P2014-506633A)
(43)【公表日】2014年3月17日
(86)【国際出願番号】CH2012000004
(87)【国際公開番号】WO2012097461
(87)【国際公開日】20120726
【審査請求日】2015年1月6日
(31)【優先権主張番号】100/11
(32)【優先日】2011年1月20日
(33)【優先権主張国】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】590005597
【氏名又は名称】マシーネンファブリク リーター アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Maschinenfabrik Rieter AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】イューリ シュトゥッツ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ゾマー
【審査官】 山本 杏子
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許出願公開第00558948(GB,A)
【文献】 国際公開第2010/045748(WO,A1)
【文献】 特開平01−306626(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102006026841(DE,A1)
【文献】 米国特許第02373411(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相並んで配置された複数のコーミングヘッド(K1〜K8)を備えたコーミング機(1)であって、前記コーミングヘッド(K1〜K8)はそれぞれ、供給手段(22)を備えたニッパユニット(4)と、コーミングシリンダ(RK)と、デタッチングエレメント(14)と、フリースを形成する装置(ST)とを有しており、
それぞれ個別のコーミングヘッドにおいて形成されたフリース(V)は、装置を介して纏められて1つのスライバ(F)を形成し、かつ前記コーミングヘッド(K1〜K8)に沿って延びる搬送テーブル(FT)上に送出され、該搬送テーブル(FT)上で、前記コーミングヘッドから送出された前記スライバ(F)は互いに隣り合って位置して後続のドラフト装置ユニット(S)に供給され、前記コーミングヘッド(K1〜K8)の前記ニッパユニット(4)および前記フリースを形成する装置(15,ST)の上方に、旋回軸線(30)を中心として旋回可能に支持された少なくとも1つのカバー(A1〜A8)が設けられている、複数のコーミングヘッド(K1〜K8)を備えたコーミング機において、
旋回可能な前記カバーが、少なくとも1つのカバーフード(A1〜A8)から成っており、該カバーフード(A1〜A8)の旋回可能な自由端が、前記搬送テーブル(FT)を、該搬送テーブルの長手方向に対して横方向で見て、超えて突出し、かつ覆っていることを特徴とする複数のコーミングヘッド(K1〜K8)を備えたコーミング機。
【請求項2】
機械フレーム(MR)に1つの旋回軸(30)を介して旋回運動可能に取り付けられたフレーム(2)が設けられていて、該フレーム(2)は、少なくとも1つのコーミングヘッド(K1〜K8)の前記ニッパユニット(4)のための押圧装置(BZ)を有し、前記旋回可能なフレーム(2)の上方に、少なくとも1つのカバーフード(A1〜A8)が設けられており、該カバーフード(A1〜A8)は部分的に前記フレーム(2)に載置されている、請求項1記載のコーミング機。
【請求項3】
前記フレーム(2)の前記自由端は、前記搬送テーブル(FT)を、該搬送テーブル(FT)の長手方向に対して横方向で見て、超えて突出している、請求項2記載のコーミング機。
【請求項4】
前記フレーム(2)の前記自由端は、前記搬送テーブル(FT)の、前記コーミングヘッド(K1〜K8)とは反対の側に向けられた側方の画成部(B)で終わっている、請求項3記載のコーミング機。
【請求項5】
前記フレーム(2)および前記カバーフード(A1〜A8)は、前記機械フレーム(MR)に取り付けられた共通の1つの軸(30)を中心として旋回可能に支持されている、請求項2から4までのいずれか1項記載のコーミング機。
【請求項6】
各コーミングヘッド(K1〜K8)は、個別に旋回可能な1つのフレーム(2)を有し、該フレーム(2)に、旋回可能な1つのカバーフード(A1〜A8)が対応配置されている、請求項2から5までのいずれか1項記載のコーミング機。
【請求項7】
前記フレーム(2)に、前記供給手段(22)、および前記デタッチングエレメント(14)のための負荷手段(BZ,26)が取り付けられている、請求項2記載のコーミング機。
【請求項8】
前記旋回可能なフレーム(2)は、該フレーム(2)の自由端に、ロック装置(51)を有している、請求項2から6までのいずれか1項記載のコーミング機。
【請求項9】
前記カバーフード(A1〜A8)が前記フレーム(2)と共にロック位置を占めることができるようにする手段(63,65)が設けられている、請求項8記載のコーミング機。
【請求項10】
前記フレーム(2)を高く旋回された停止位置に保持するために、前記機械フレーム(MR)に保持エレメント(68,69,70)が設けられている、請求項8または9記載のコーミング機。
【請求項11】
前記カバーフード(A1〜A8)を高く旋回された停止位置に保持するために、保持手段(64,66)が設けられている、請求項9から10までのいずれか1項記載のコーミング機。
【請求項12】
前記カバーフード(A1〜A8)は、少なくとも部分的に透明な材料(W)から成っている、請求項1から11までのいずれか1項記載のコーミング機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相並んで配置された複数のコーミングヘッドを備えるコーミング機であって、コーミングヘッドはそれぞれ、フィードローラを備えるニッパユニットと、コーミングシリンダと、デタッチングローラと、フリース(綿帯)を形成する装置とを有し、それぞれ形成されたフリースは、1つの装置を介して纏められてスライバを形成し、コーミングヘッドに沿って延びる搬送テーブル上に送出され、搬送テーブル上で、複数のコーミングヘッドから送出された複数のスライバが互いに隣接して置かれて後続のドラフト装置ユニットへと供給され、コーミングヘッドのニッパユニットおよびフリースを形成する装置の上方に、旋回軸線を中心として旋回可能に支持された少なくとも1つのカバーが設けられている、相並んで配置された複数のコーミングヘッドを備えるコーミング機に関する。
【0002】
たとえばRieter社のE76型のような今日公知のコーミング機では、旋回可能なカバーが使用されている。このカバーは、一方では安全上の理由から、運転中のコーミング装置内への手の侵入を阻止し、他方ではコーミング箇所を周辺空気からの繊維浮遊物(フライ)から遮蔽する。公知のコーミング機(たとえばE76型)では、このようなカバーは、設けられた4〜8つのコーミング箇所(コーミングヘッド)にわたって延びていて、該カバーの自由端は、後続の搬送テーブルにまで延びている。つまり、後続のドラフト装置ユニットに引き渡される、搬送テーブル上に送出された、コーミングヘッドにより形成されたスライバは、周辺空気の繊維浮遊物にさらされており、手の侵入に対して保護されていない。欧州特許登録第339300号明細書の図1には、上述のようなカバーが概略的に示されている。この図面では、旋回軸線の図示は省略されている。
【0003】
公開された国際公開第2010045748号から公知の装置では、ニッパユニットの上方に旋回可能なフレームが配置されていて、このフレームにはベローズ形シリンダの形態の負荷エレメントが上側のニッパプレートおよびデタッチングローラに圧力をかけるために取り付けられている。付加的には、このフレームに、押圧装置を備えるフィードローラと固定コームとが取り付けられている。フレームが高く旋回されている場合、ニッパユニットとコーミングセグメントへの良好なアクセス性が得られ、この場合に特殊な工具は不要である。ここに示された形態は、上方に向かって開いている。これによって繊維浮遊物および周辺空気中にあるその他の汚染物質がコーミング箇所に堆積物を形成し得る。これによって、所望のコーミング品質を維持するために、コーミング箇所を頻繁に清掃することが必要である。
【0004】
本発明の根底を成す課題は、公知の形態を改良して、一方では個別のコーミング箇所(コーミングヘッド)への良好なアクセス性を保証し、他方では個別のコーミング箇所および後続の搬送テーブル上で引き続き行われるスライバ搬送が外部の影響に対して保護されている装置を提供することにある。
【0005】
この課題を解決するために提案された本発明による構成では、旋回可能なカバーが、少なくとも1つのカバーフードから成っていて、該カバーフードの自由に旋回可能な端部が、搬送テーブルを、当該搬送テーブルの長手方向に直交する横方向で見て超えて突出しかつ覆っているようにした。これは、各コーミングヘッドのために個別に旋回可能なカバーフードが設けられていてよい態様であると理解され得る。同様に、(複数の旋回可能なカバーフードのうちの)1つの旋回可能なカバーフードが、2つまたは複数のコーミングヘッドにわたって延び得る態様も含まれる。
【0006】
したがって、後続のスライバ搬送部を含む個別のコーミングヘッドのコーミング箇所は、周囲に対して完全に遮蔽されている。これによって、搬送テーブルおよびスライバを形成する装置の上方の領域を清潔に保つことが保証される。この領域で回転する全てのエレメントも、カバーの特許請求された構成によって、オペレータによる望ましくない手の侵入から保護されており、このことは同時に安全性の向上をもたらす。(たとえば搬送ベルトの形態の)搬送テーブルが駆動装置を備えている限り、この駆動部もオペレータによる望ましくない手の侵入から保護されている。
【0007】
さらに、機械フレーム(MK)に旋回軸(30)を中心として旋回運動可能に取り付けられた少なくとも1つのフレーム(2)が設けられていて、該フレーム(2)が、少なくとも1つのコーミングヘッド(K1〜K8)のニッパユニット(4)のための押圧装置(BZ)を有しており、旋回可能なフレームの上方に少なくとも1つのカバーフード(A1〜A8)が設けられており、該カバーフードが部分的にフレーム(2)に載置されていることが提案される。
【0008】
この提案された組合せにより、一方では後続の搬送テーブルを含むコーミングヘッドの完全な遮蔽が可能にされ、他方ではコーミングユニットへの良好なアクセス性が保証される。つまり、フレーム上に載置されたカバーフードにより、フレームを高く旋回した際に、各カバーフードも一緒に持ち上げられ、コーミングユニットへの自由なアクセスが保証される。しかし、カバーフードをフレームとは関係なしに上方の位置に移行させることも可能であり、これによりコーミングユニットへの制限されたアクセス性を得ることができる。旋回可能なフレームは、複数のコーミングヘッドにわたって延びていてもよく、コーミングヘッドの対応する個数に応じて複数のカバーフードを備えていてよい。
【0009】
フレームにおけるカバーフードの独立した旋回性により、繊維製品のニップ箇所を解除することなしに、比較的に小さなメンテナンス作業を実施することができる。このことは、旋回可能なフレームが1つよりも多いコーミングヘッドにわたって延びている場合に有利である。つまり、その下で相応するメンテナンス作業が必要となっているカバーフードが個別に開放され得る。したがって、このようなメンテナンス作業を、コーミング行程を妨害することなしに、迅速に問題無く実施することができる。自明ではあるが、相応して配置されたセンサが設けられている。このセンサは、カバーのうちの1つが持ち上げられるとすぐに、相応するコーミングヘッドまたは機械全体を停止させる。
【0010】
個別のコーミング箇所の操作のためには、以下でさらに提案されるように、各コーミングヘッドが、個別に機械フレームにおいて旋回運動可能に取り付けられた1つのフレームを有していて、このフレームに、旋回運動可能に支持された1つのカバーフードが対応配置されていると特に有利である。
【0011】
各個別のコーミングヘッドのためのカバーフードと旋回可能なフレームとを個別に対応配置させることによって、メンテナンスまたは検査が必要であるコーミングヘッドだけが開放され得る。隣接するコーミングヘッドの各カバーヘッドを備えた旋回可能なフレームは、搬送テーブルの上方で、ほぼ閉じられたカバー面が形成されるように配置され、かつ形成されていてよい。これによって、搬送テーブル上でのスライバ搬送は、後続のドラフト装置ユニットへの送出の直前まで最適に外部の影響から保護されている。
【0012】
さらに、フレームの自由端が、搬送テーブルを、該搬送テーブルの長手方向に対して横方向に見て、超えて突出していることが提案される。
【0013】
この場合、有利には、フレームの自由端が、搬送テーブルの、コーミングヘッドとは反対の側の側方の画成部で終わっている、すなわち側方の画成部まで延びている。これにより、搬送テーブルの上方で、閉じられた通路を得ることができる。この場合、カバーフードは搬送テーブルの上方でもフレーム上に支持され得る。
【0014】
フレームとカバーフードとが、機械フレームに取り付けられた共通の軸を中心として旋回可能に支持されていると有利である。このことは、コンパクトな構造形式をもたらし、付加的な旋回箇所は省略される。
【0015】
有利には、旋回可能なフレームに、上側のニッパプレート、供給手段およびデタッチングエレメントのための押圧装置が設けられていてよい。供給手段は、例えばニッパユニットの下側のニッパプレートと協働するフィードローラであってよい。
【0016】
この装置により、付加的な特殊工具なしに、上述のエレメントの負荷を除くことが可能であり、この場合、コーミングエレメントへの簡単かつ迅速なアクセス性が保証されている。
【0017】
さらに有利には、旋回可能なフレームが、該フレームの自由端に、ロック装置を有していることが提案される。このロック装置を介して、フレームは運転位置に保持される。たとえば、ロック装置のエレメントが、それぞれのコーミングヘッドの側方シールド(機械フレームの一部)の延長部に取り付けられた手段によりロック位置を占めることができることが考えられる。
【0018】
カバーフードを運手中にその位置に確実に保持するために、カバーフードがフレームと共にロック位置を占めることができるようにする手段を設けることが提案されている。
【0019】
フレームを高く旋回された停止位置に確実に位置固定するために、保持エレメントを設けることが提案されている。同様に、カバーフードを高く旋回された停止位置に保持する保持エレメントが設けられていてもよい。
【0020】
有利には、カバーフードは少なくとも部分的に透明な材料から成っている。これによって、個別のコーミング箇所の、オペレータによる視覚的な監視を行うことができ、この場合に機械の停止につながるようにカバーを取り除く必要はない。たとえばカバーフードは窓を備えていてよい。
【0021】
本発明の別の利点を、以下の実施の形態につき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】コーミング機を上から見た概略的な平面図である。
図1a】コーミング機を上から見た平面で示す概略的な部分図である。
図2図1に示したコーミング機のコーミングヘッドの概略的な側面図である。
図2a】カバーフードが高く旋回された状態を示す図2の別の部分図である。
図3図1に示したコーミング機のコーミングヘッドの別の実施の形態を示す概略的な側面図である。
図4図2に示したコーミング機の部分Xを示す図である。
図5】短縮されたプロセス段階の概略図である。
【0023】
図1は、コーミング機1を示している。このコーミング機1は、8つのコーミングヘッドK1〜K8を有している。例示された形態よりも遙かに多数のコーミングヘッドが設けられていてもよい。各コーミングヘッドK1〜K8には、コーミングするためのそれぞれ1つのラップ巻成体L(単に巻成体とも云う)が前置されている。巻成体Lの繰り出しのために、この巻成体Lは駆動される巻成体ローラ(図示せず)に載置されている。巻成体Lから繰り出されたラップウェブは、コーミング工程のためにニッパユニット4に供給される。このニッパユニット4は、図2に関してさらに詳しく説明される。
【0024】
巻成体Lの代わりに、個別のコーミングヘッドK1〜K8にスライバケンスが前置されていてもよい。このスライバケンスから個別のスライバが後続のニッパユニットにコーミングのために供給される。このようなケンス貯蔵物は、例示的に図5に示した概略図に示されている。これは、短縮されたプロセス段階であり、このプロセス段階では、独立したドラフト装置の使用は省略されている。この場合、カーダKAにおいて形成されたスライバは、ドラフト装置ユニットS1に供給される。ドラフト装置ユニットS1は、たとえばカーダKAのウェブ送出部の上方に取り付けられている。ドラフト装置ユニットから、延伸されたスライバが概略的に図示されたホッパ車を介して、ケンスB1にループ状に堆積される。概略的に示されているように繊維は引出しフックを備えてケンス内に堆積される。
【0025】
カーダKAにおいて充填されたケンスB1は、後続のコーミング機1に直接に前置されている。このコーミング機1において、スライバはヘッドフックにより引き出されて、このことは、スライバが大部分を開繊されるコーミングプロセスのために特に有利である。以下でさらに説明するように、コーミング機1の個別のコーミングヘッドK1〜K8において形成されたスライバFは、ドラフト装置ユニットSに供給される。この場合、ドラフトされた複数のスライバFは纏められて1つのスライバF1を形成する。概略的に示されたホッパ車を介して、スライバF1はケンスB2内にループ状に堆積される。
【0026】
第1の態様Aでは、コーミング機1において充填されたケンスB2が、後続のノズル紡績機DSに移送される。ノズル紡績機DSでは、スライバはドラフト装置ユニットにより延伸され紡績ノズルに供給される。紡績ノズルにおいて形成された糸は次いでボビンUに巻き上げられる。
【0027】
第2の態様Bでは、コーミング機1において充填されたケンスがロータ型スピニング機OEに貯え部として前置される。ロータ型スピニング機(Rotorspinnmaschine)の紡績ボックス内で形成された糸は次いでボビンUに巻き上げられる。品質向上のために、コーミング機1のドラフト装置ユニットSが制御装置を装備していてよい。
【0028】
図2は、たとえば図1に示したコーミングヘッドK2の概略的な側面図を示している。この場合、部分的に下側のニッパプレート5が示されている。この下側のニッパプレート5は、たとえば機械フレームに不動に取り付けられている。旋回軸8を中心として、旋回アーム7を介して上側のニッパプレート6が下側のニッパプレート5に対して旋回可能に取り付けられている。個別のコーミングヘッドK1〜K8の各ニッパユニット4の上方には、それぞれ1つの旋回可能なカバーフードA1〜A8が取り付けられている。個別のコーミング箇所の視覚的な監視のために、カバーA1〜A8はそれぞれ1つの窓Wを有していてよい。
【0029】
コーミング機もしくは個別のコーミングヘッドK1〜K8の駆動は、1つの駆動ユニットATにより行われる。この駆動ユニットATは、コーミング機1の一方の端部に配置されている。個別のコーミングヘッドK1〜K8において形成されたスライバFは、搬送テーブルFT上に送出されて後続のドラフト装置ユニットSに移送される。この場合、複数のスライバFは、隣接して置かれて搬送テーブルFT上でガイドされる。多数のコーミングヘッドが使用されている限り、図2に示したスライバFの第1の位置の上方には、スライバの第2の位置が存在していてよく、この第2の位置は第1の位置の上方にずらされて載置されている。
【0030】
ドラフト装置ユニットSに供給されたスライバFは、概略的に示されたローラ対WPを介して延伸される。この場合、ドラフト装置ユニットSから送出された繊維フリースは、纏められてスライバF1を形成する。スライバF1は、次いで、対応する搬送手段を介して、スライバ収容部BAに搬送される。このスライバ収容部BAでは、スライバF1がホッパ車TRを介してループ状にケンスK内に置かれる。
【0031】
図1から判るように、隣り合うカバーフードA1〜A8の間の間隔aは、小さく保たれている。この場合、カバーフードは搬送テーブルの上にも突出している。したがって、搬送テーブルFTと、該搬送テーブルFT上で搬送されるスライバFのための実質的に閉じられたカバーが、隣り合って配置されたコーミングヘッドK1〜K8の全領域にわたって得られる。コーミングヘッドK1とドラフト装置ユニットSとの間の移行領域だけにはスライバFのためのカバーが設けられていない。
【0032】
図2から判るように、ニッパユニット4の下方には、円形コームRKが軸10を介して回転可能に機械フレーム内に支持されている。円形コームRKは、コーミングセグメント11とデタッチングセグメント12とを有している。図2に示された位置では、デタッチング工程が行われていて、デタッチングセグメント12が対応して位置するデタッチングローラ14と共にニップラインKPを形成している。この場合、コーミングされた繊維タフトFBの、ニップラインKPにより捕捉された繊維が引き出され、ケージローラSTにかけられた負圧の作用によりこのケージローラSTに置かれる。このことは概略的に負圧源16により示されている。負圧源16は、ケージローラSTの内室に接続している。ケージローラSTに置かれ、引き出された繊維セット(Faserpaket)の端部は、既にケージローラST上に位置している繊維フリースVの端部に重ねられて、この端部に結合される。この結合箇所をさらに強化するために、押圧ローラ18がゲージローラSTに対応配置されている。このようにして形成された繊維フリースVは、ガイド装置(図示せず)によって纏められてスライバFを形成し、引出しローラ20の作用によりガイド管21に供給される。水平方向に調節可能に形成され得るガイド管21を介して個別のスライバFが搬送テーブルFTの表面に載置される。
【0033】
図示された作業工程では、ニッパユニット4は開放している。この場合、下側のニッパプレート5と上側のニッパプレート6との間には、ニップ箇所は存在していない。ニッパユニット4内では、ばね付勢されたフィードローラ22が回動可能に配置されている。フィードローラ22の回動可能な軸23は、駆動部(図示せず)によって間欠式に駆動されている。さらに、軸23は、保持部25のガイド24内でガイドされている。ガイド24の内側には、それぞれ1つのばねエレメント26が配置されている。このばねエレメント26を介して、フィードローラ22は下側のニッパプレート5の方向に圧力を作用させる。軸23の端部の領域にはそれぞれ保持部25が取り付けられている。この保持部25は、概略的に図示されたねじ28を介して、フレーム2の支持体2a,2bのうちの一方にそれぞれ取り付けられている。図4に示した、図2の部分図Xから概略的に判るように、支持体2a,2bは、横方向の支持体9を介して互いに結合されている。フレーム2は、軸30を中心として旋回可能に機械フレーム内に支持されていて、搬送テーブルFTの上に搬送テーブルFTを超えて突出している。
【0034】
フレーム2の各支持体2a,2bには、ベローズ形シリンダBZの形態のそれぞれ1つの圧力エレメントが取り付けられている。このベローズ形シリンダBZは、ニッパが閉じられた場合にニッパリップの領域でニップ力を形成するために、上側のニッパプレート6に圧力を作用させる。ベローズ形シリンダBZは、圧力源(図示せず)に接続されている。
【0035】
さらに、フレーム2もしくは該フレーム2の支持体2a,2bに、固定コームFKが取り付けられている。図示の形態では、固定コームFKは、堅固にフレーム2に結合されている。しかし、固定コームFKが、公開された国際公開第2010045748号明細書に示されているように、旋回運動可能にフレーム2に取り付けられていることも考えられる。
【0036】
さらに、フレーム2もしくは支持体2a,2bには、ガイド32が取り付けられている。ガイド32内に、ホルダ33が移動可能に支持されている。ホルダ33は、回動可能に支持されたデタッチングローラ14の軸35のための収容部を形成する。ガイド32の上方には、ベローズ形シリンダBZが配置されている。ベローズ形シリンダBZは、ホルダ36を介してそれぞれの支持体2a,2bに取り付けられている。ホルダ33に取り付けられたプレート37を介して、ベローズ形シリンダBZは、各ホルダ33に、ひいてはデタッチングローラ14に圧力を作用させる。ガイド32の端部は、プレート37と一緒に、円形コームシャフト10の方向へのデタッチングローラ14の移動に対する端部ストッパを形成する。したがって、コーミングセグメント11がデタッチングローラ14の範囲に位置している場合に、デタッチングローラ14と、コーミングセグメント11のコーミング針布との間で衝突が発生しないことが保証されている。それぞれ1つずつ支持体2a,2bに取り付けられた図示されたベローズ形シリンダBZは、圧力源(図示せず)に接続されている。
【0037】
フレーム2の支持体2a,2bの前側の領域には、横方向に延びるプレート40が取り付けられている。このプレート40は、特に図4図2のXから見た図)に概略的に示されているように、両支持体2a,2bを側方で超えて突出している。(フレーム2の構成部分としての)プレート40の下端部は、搬送テーブルFTの側方の画成部Bを超えて突出している。したがって、スライバの搬送領域は、外方に向かって遮蔽され、保護されている。ウェブ41を介して、ロッド42がプレート40に取り付けられている。ロッド42を介して、オペレータはフレーム2を、たとえば図2に破線で示されているように上方の位置へと旋回させることができる。プレート40のほぼ真ん中で、ロッド42の下方にボルト44が設けられている。ボルト44は、プレート40の開口45を通って突出している。ピン46およびワッシャ47を介して、ボルト44はプレート40からの脱落を阻止されている。ボルト44の端部は、横方向のウェブ50に支持されている。このウェブ50の端部には、図4に概略的に示されているようにそれぞれ1つのロック部材51が取り付けられている。それぞれ軸53を中心として旋回可能にプレート40に取り付けられているロック部材51は、それぞれ1つのカムN1,N2を有している。軸53の反対の側では、ボルト44がロック部材51の横方向ウェブ50に支持されており、ロック部材51はばね55により付勢されている。このばね55はプレート40に支持されている。図2に示された位置では、ロック部材51のカムN1は、機械フレームの側方シールド58に取り付けられたボルト56と共にロック位置を占める。図4から判るように、各コーミングヘッドK1〜K8の間にはそれぞれこのような側方シールド58が配置されている。この側方シールド58は、たとえば機械に沿ってガイドされた、たとえば円形コームのための駆動シャフトの支持エレメントとしても働く。
【0038】
カムN1の、当該カムN1がボルト56に当て付けられる側は、確実なロック位置を保証することができるように、相応した形状を有している。
【0039】
フレーム2の上方、もしくは支持体2a,2bの上方には、カバーA2が設けられている。このカバーA2は、運転位置では支持体2a,2b上に載置されている。この場合、カバーもしくはカバーフードA2は、前側の領域で縁曲げ部を備えていてよい。この縁曲げ部は、プレート40にまでガイドされている。したがって、コーミングヘッドに沿って延びる搬送テーブルFTを含む、コーミングヘッドK1〜K8のコーミング箇所の上方で、全体的に閉じられたフード形状のカバーを得ることができる。後側の領域では、カバーフードA2はウェブ60,61に結合されている。ウェブ60,61は、軸30に旋回可能に取り付けられている。前側の領域では、カバーフードA2は、ほぼ中心に配置された切欠きANを備えている。この切欠きANを介して、オペレータは、カバーフードA2(A1〜A8)を図2aに破線で示されているような上方に高く旋回された位置に移行させるために、手をかけることができる。つまり、カバーフードA2は、フレーム2から独立して、上方の位置に旋回可能であり、これによりコーミング箇所の領域におけるクリーニング作業を、繊維製品に接触しているエレメントを停止位置に旋回させることなしに実施することができる。運転位置でカバーフードA2をフレーム2にロックするために、カバーフードA2にばね弾性的なクランプ63が取り付けられている。クランプ63は、下方に旋回された位置で、各支持体2a,2bに取り付けられたボルト65を部分的に取り囲む。特に図2aから判るように、軸30の領域でもウェブ60,61にそれぞればね弾性的なクランプ64が取り付けられている。このクランプ64は、高く旋回された位置(図3)では、機械フレームMRに取り付けられたピン66を部分的に取り囲む。このロックは、カバーフードA2を破線で示された上方の位置に保持するために十分である。しかもこのロックは、大きな力をかけることなしに、再び手で解除することができる。当然ながら、多数の別のロック装置も考えられる。
【0040】
図2に破線で示された位置では、カバーフードA2を含むフレーム2は、上方の位置に旋回されている。この旋回を可能にするために、実線で記載された下側の位置を起点として、圧力(矢印の方向を参照)がボルト44に作用させられる。ロッド42およびボルト44の相応する配置により、この圧力はたとえばオペレータの片手の親指により作用される一方で、他の指は、ロッド42を掴むことができる。ボルト44への圧力により、横方向ウェブ50も円形コーム軸10の方向に移動する。これによって、ロック部材51は、軸53を中心としてばね55のばね力に抗して旋回する。これにより、軸30を中心としたフレーム2の旋回が解除されるまで、カムN1もボルト56の領域から出るように旋回する。ロック部材51の解除後に、フレーム2はカバーフードA2と共に、オペレータによりロッド42を介して破線で示された位置へと上方に向かって旋回される。この旋回工程時に、フィードローラ22とデタッチングローラ14と固定コームFKとは、繊維製品から持ち上げられる。同時に、上側のニッパプレートの上方のベローズ形シリンダBZも持ち上げられる。上方の位置へのフレーム2の旋回工程時に、1つまたは複数のロック部材51は、機械フレームに取り付けられたボルト68の領域に到達する。ボルト68は、ばね69によって機械フレームMRに支持されている。この場合、ボルト68は、レバー70において旋回可能に機械フレームMRに取り付けられている。旋回運動の間に、ロック部材51はカムN2と共にボルト68上に、該カムN2の斜めに上昇する面で乗り上げ、ボルト68への圧力を形成する。これによって、ボルト68は、ばね69のばね力に抗して変位する。カムN2がボルト68を通過するや否や、ばね69を介してボルト68は、図示されているようにロック部材51のベース面上に運動する。つまりカムN2に相応して形成された面は、ボルト68に当て付けられる。これによって、高く旋回された位置におけるカバーフードA2を備えたフレーム2のロック位置が達成される。このロック位置は、大きな力をかけることなしに、再び手でばね69のばね力に抗して解除され得る。図示されたロック装置は、単に概略的に示されており、フレーム2の旋回領域の範囲のいずれかの位置に位置していてよい。旋回工程のために、端部ストッパを備える行程シリンダを使用することも可能である。
【0041】
図4から概略的に判るように、それぞれ1つのこのようなロック部材51が、フレーム2の側方の端部もしくはフレーム2に結合されたプレート40に取り付けられていてよい。
【0042】
付加的な窓もしくは透明な区分WをフードカバーA1〜A8に設けることによって、個別のコーミング箇所の視覚的な監視が可能である。この場合に、機械の領域のカバーを外す必要はない。旋回可能なフードカバーA1〜A8ならびに旋回可能なフレーム2には、センサが対応配置されている。センサは、カバーフードA1〜A8ならびに旋回可能なフレーム2の旋回運動を監視する。この場合、種々異なるセンサが使用され得る。つまり、カバーフードA1〜A8のうちの1つ、もしくはフレーム2のうちの1つがその運転位置から出るように旋回すると、相応して配置されたセンサは、各コーミングヘッドまたは全体的なコーミング機を停止させる。このことは、各駆動設計に依存する。つまり、個別のコーミングヘッドが独立した駆動部を有している場合、カバーフードもしくはフレームが運転位置から高く旋回されるや否や、単に個別のコーミングヘッドだけを停止させることが可能である。センサの取り付けの可能な実施の形態は、図1aおよび図2に示されており、以下に詳しく説明する。
【0043】
本発明の枠内では、共通の旋回可能なフレーム2が複数のコーミングヘッドにわたって、たとえば少なくとも2つのコーミングヘッドにわたって延びていて、各コーミングヘッドのために、個別に旋回可能なカバーA1〜A8が設けられている形態が可能である。このような形態は、図1aの部分図から概略的に判る。この場合、1つの軸30を中心として旋回可能なフレーム2が、それぞれ隣接する2つのコーミングヘッドK1,K2,もしくはK3,K4等にわたって延びている。この場合、旋回可能なフレーム2毎に、それぞれ2つの、同様に軸30を中心として旋回可能なコーミングヘッドK1,K2のカバーフードA1,A2もしくはコーミングヘッドK3,K4のカバーフードA3,A4が設けられている。つまり、コーンミングヘッドK1,K2にわたって延びるフレーム2の上方への旋回時に、同時に両方のカバーフードA1,A2が一緒に旋回し、持ち上げられる。両カバーフードA1,A2はそれぞれ、コーミングヘッドK1,K2のフレーム2がロックされた運転位置にある場合に、旋回軸線30を中心として上方に向かって個別に旋回される。同様のことが残りのカバーフードA3〜A8にも当てはまる。
【0044】
カバーフードA1〜A8のうちの1つが、フレーム2と共に、またはフレーム2を伴わずに、停止位置に高く旋回されるや否や、機械もしくは個別のコーミングヘッドを停止させるために、たとえば送光機82と受光機83とを有する光バリアが設けられている(図1aを参照)。この光バリアは機械フレームMRに取り付けられている。この場合、送光機82は線路81を介して、受光機83は線路84を介してコーミング機の制御ユニットPに接続されている。旋回可能なカバーフードA1〜A8には、舌片80が取り付けられている(図2を参照)。この舌片80は、送光機82から放射された光線LSを遮る。つまり、図2に破線で示された上方の位置では、舌片80が光線LSを遮る。これによって、受光機83は、光インパルスをもはや受け取らない。このことを、受光機83が線路84を介して制御ユニットPに報知する。制御ユニットPを介して、コーミング機が停止させられる。光線LSがもはや遮られなくなるや否や、コーミング機は再び始動され得る。
【0045】
提案された装置では、比較的小さなメンテナンス動作は、単に個々のコーミングヘッドにおいて個別に取り付けられたカバーフードA1〜A8を高く旋回させることにより行うことができ、この場合に、複数のコーミングヘッドを介して延びる旋回可能なフレーム2を運転位置から取り外す必要はない。
【0046】
図3の別の実施の形態からは、カバーフードA1が搬送テーブルFTの領域の上方にまで延びていて、搬送テーブルFT上で搬送されるスライバFはコーミング機の周囲に対して遮蔽され、保護されている形態が看取れる。カバーがフリースホッパ74までしか延びていない従来公知の形態は、破線で示されている。概略的に示されたコーミング機のコーミングヘッドは、今日において一般的な形態である。この場合、ニッパユニット4から供給された、ラップウェブの形態の繊維製品WTは、円形コームRKにより梳られ、次いでデタッチングローラ対15により引き取られる。後続のローラ対17を介して、繊維フリースVの形態の繊維製品は、後続の引抜きローラ対72に引き渡される。この引抜きローラ対72から導出された繊維フリースは、後続のフリースホッパ74において纏められてスライバを形成し、カレンダローラ対75を介して搬送テーブルFTに置かれ、搬送テーブルFT上でスライバは後続のドラフト装置ユニットに搬送される。カバーフードA1は、複数のコーミングヘッドにわたって延びていてよい。概略的に示されたハンドグリップ77を介して、カバーフードA1は上側の一点破線で示された位置へと旋回され得る。図示の形態では、カバーフードの下側の付加的に旋回可能なフレームは設けられていない。
【0047】
提案された装置では、コンパクトな封入された構造形式が得られる。この場合、特に、小さな保持力を有するスライバは後続のドラフト装置ユニットへの搬送経路において外部の影響から保護される。同時に、旋回可能なフレームの上方での旋回可能なカバーフードの付加的な結合により、各コーミング箇所への干渉が、繊維製品への妨害を起こすことなしに可能である。
図1
図1a
図2
図2a
図3
図4
図5