(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000280
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】地球表面の構造体における局所的な歪み測定のためのパッシブ型電磁波反射体
(51)【国際特許分類】
H01Q 15/18 20060101AFI20160915BHJP
G01S 7/03 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
H01Q15/18
G01S7/03 200
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-549837(P2013-549837)
(86)(22)【出願日】2012年1月23日
(65)【公表番号】特表2014-509471(P2014-509471A)
(43)【公表日】2014年4月17日
(86)【国際出願番号】EP2012050927
(87)【国際公開番号】WO2012101072
(87)【国際公開日】20120802
【審査請求日】2014年11月20日
(31)【優先権主張番号】1150564
(32)【優先日】2011年1月25日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】506423291
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジィ アトミーク エ オ ゼネ ルジイ アルテアナティーフ
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ロレーウ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】クィン,ギヨーム
【審査官】
佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−309178(JP,A)
【文献】
実開平04−078815(JP,U)
【文献】
特開平05−152833(JP,A)
【文献】
特開平09−221097(JP,A)
【文献】
英国特許出願公開第01467481(GB,A)
【文献】
米国特許第04119965(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/03
G01S 13/90
H01Q 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地球表面に設置される構造体の局所的な歪みを測定するために、前記地球周回軌道の衛星に、前記衛星から受信した電磁波を反射することができるパッシブ型電磁波反射体において、
前記地球表面に設置された構造体に接すると共に地球の両極の軸に沿って配列された直線的な辺(a1)を有し、前記地球表面に対して実質垂直になるように構成されたプレート(P1)と、
前記地球表面に対して実質垂直になるように構成された前記プレート(P1)に固定され、前記地球表面に対して実質垂直になるように構成された前記プレートに挿入された第1プレート(P2)と第2プレート(P3)を有し、前記地球表面に実質垂直になるように構成された前記プレートの両側に広がる各々の直線的な辺(a3)を有する機械的構造体(P2,P3)と、を含み、
前記第1プレートの前記直線的な辺は、前記第2プレートの前記直線的な辺と接して前記地球表面に実質垂直になるように構成された前記プレートの両側に広がる前記機械的構造体の直線的な端部(a3)を形成し、
前記第1プレート(P2)と前記第2プレート(P3)と前記地球表面に実質垂直になるように構成された前記プレート(P1)とは、前記地球表面に実質垂直になるように構成された前記プレートの両側に、前記衛星から受信した前記電磁波を前記衛星の方向へ反射することができるキャビティを形成し、
前記機械的構造体の直線的な端部(a3,a3)と前記地球表面に実質垂直になるように構成された前記プレートの前記直線的な辺(a1)とは、実質的に前記地球表面に実質垂直になるように構成された前記プレートによって定義される面に垂直な面上に設置され、前記地球表面上で所定の場所に支持される手段を形成することを特徴とするパッシブ型電磁波反射体。
【請求項2】
前記地球表面に対して実質垂直になるように構成された前記プレート(P1)は、
前記直線的な辺に垂直な軸の両側の前記地球表面に実質垂直になるように構成された前記プレートの前記直線的な辺(a1)に設置され、同じポイント(M1)から形成されたスリット(f1,f2)形状の二つの開口部を含み、
各々のスリットは、前記垂直な軸に対して35度以上55度以下を含む角度をなす軸に一直線に配列し、
第1スリット(f1)は第1の長さ(l1)を有し
第2スリット(f2)は第2の長さ(l2)を有し、
前記第1プレート(P2)は、前記第1プレートの前記直線的な辺と対向する平面角区域を区切る辺を含み、
前記第2プレート(P3)は、前記第2プレートの前記直線的な辺と対向する平面角区域を区切る辺を含み、
スリット(f)形状の直線的な開口部は、各々のプレート(P2,P3)において、平面角区域を区切る辺から形成され、
各々のスリット(f)の軸は、前記プレートの前記直線的な辺に垂直な各々のプレートに形成され、
前記第1プレートに形成され、前記第1プレートの前記直線的な辺の前記スリットを分離する距離は、前記地球表面に実質垂直になるように構成された前記プレートに形成された前記第1スリットの長さに等しく、
前記第2プレートに形成され、前記第2プレートの前記直線的な辺の前記スリットを分離する距離は、前記地球表面に実質垂直になるように構成された前記プレートに形成された前記第2スリットの長さに等しく、
前記第1プレートに形成された前記スリットは、前記地球表面に実質垂直になるように構成された前記プレートの前記第1スリットに、前記第1スリットの端部まで位置し、前記第1スリットと一直線に配列され、
前記第2プレートに形成された前記スリットは、前記地球表面に実質垂直になるように構成された前記プレートの前記第2スリットに、前記第2スリットの端部まで位置し、前記第2スリットと一直線に配列されることを特徴とする請求項1に記載の反射体。
【請求項3】
前記第1スリット(f1)の前記軸と前記第2スリット(f2)の前記軸とは、前記地球表面に実質垂直になるように構成された前記プレートの直線的な辺に垂直な軸と45度の角度を形成し、第1及び第2スリットの長さ(l1,l2)は実質同じであることを特徴とする請求項2に記載の反射体。
【請求項4】
ノッチ(e)は前記各々のプレートの直線的な辺上に、実質的に前記プレートに形成された前記スリット(f)の前記軸の一列上に形成されることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の反射体。
【請求項5】
貫通穴(i1,i2)が前記反射体の固定を可能にするための前記地球表面に実質垂直になるように構成された前記プレート(P1)に供給されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載の反射体。
【請求項6】
電磁波に対して透明な構造体が前記地球表面に実質垂直になるように構成された前記プレートと環境から前記反射体を保護するための機械的構造体とを囲むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載の反射体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地球の表面に設置された構造体(structure)の局所的な歪み(local strain)を測定するためのパッシブ型電磁波反射体(Passive electromagnetic wave reflectors)に関する。
【0002】
また、レーダ反射体(radar reflectors)又は永久的散乱体(permanent scatterers)と呼ばれるパッシブ型電磁波反射体は、地球の表面上に設置された土壌(soils)や対象物(objects)の歪みを測定するために使用される。
【背景技術】
【0003】
電磁波は、衛星(satellite)から地球表面に設置されたレーダ反射体に送られる。レーダ反射体によって反射された電磁波は、その後、衛星に戻される。歪みの測定は、衛星の観察している方向において、連続する日(successive dates)に撮影された画像を用いて実行される。歪みの測定はサブミリメートルの精度を得ることができる。
【0004】
衛星の4つの異なる観察モードが歪みの測定に用いられる。
図1乃至4はこれらの4つのモードを示す:
−
図1は右側の観察における上昇モード(ascending mode)を示し、
−
図2は左側の観察における上昇モードを示し、
−
図3は右側の観察における下降モード(descending mode)を示し、
−
図4は左側の観察における下降モードを示す。
【0005】
図1−4に示すように、上昇又は下降モードは衛星Sの経路(path)が地球Tの北極−南極軸を「上昇する」か、又は「下降する」か、によって定義され、右側又は左側の観察は、衛星が衛星の経路によって定義される面に対して電波で信号を送るビームFの向きによって定義される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レーダ反射体は自然状態(natural state)または人工状態(artificial state)で存在する。自然状態において、レーダ反射体はほとんどの場合は人間のインフラストラクチャ(infrastructures)に遭遇(encounter)する。人間のインフラストラクチャが欠けた、又は、そのようなインフラストラクチャが不十分な領域では、人工状態におけるレーダ反射体は歪みを測定するために特別に設計される。
【0007】
もっともよく知られているレーダ反射体は一般的に立方体の角形状(cube corner shape)を有し、立方体の角は衛星によって撮影された画像に適合される方法で位置決めされる。この目的のために、立方体の角の主対角線(diagonal)は、好ましくは、衛星の方向に向けられる。この立方体の角の衛星に対する方向は、衛星の経路のアカウント(account)と衛星の画像撮影モードのアカウントとの両方に有用な画像の撮影を制限する。このように、これらの反射体は、一つの衛星の上昇又は下降の一方の観察モードの専用となる。
【0008】
半発明のレーダ反射体はこの欠点を有さない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実際に、地球の表面に設置され、構造体の局所的な歪みを測定するためのパッシブ型電磁波反射体に関する発明は、地球周回軌道の衛星に、衛星から受信した電磁波を反射することができる。パッシブ反射体は:
− 地球表面に設置された地球の両極の軸(地軸:Earth’s poles)と一直線に配列された構造体に接し、直線的な辺(rectilinear side)を有する地球表面に対して実質垂直の平面要素(planar element)と、
− 平面要素に固定され、平面要素の第1辺に設置された第1部と、第1辺と対向する、平面要素の第2辺に設置された第2部と、を有する機械的構造体と、を含み、機械的構造体は、平面要素の両側に直線的な端部(rectilinear edge)を形成し、直線的な端部と直線的な辺とは、実質的に平面要素によって定義される面に垂直な面上に設置され、反射体を構造体上の適切な位置に保持する手段を形成し、機械的構造体の第1部と機械的構造体の第2部とは、それぞれが衛星から受信した電磁波を衛星の方向へ反射することができる。
【発明の効果】
【0010】
既存のパッシブ型レーダ反射器とは異なり、本発明のパッシブ型レーダ反射器は、衛星の画像撮影モードによらず、すべての衛星によって観察され得る。これは衛星の観察軸に沿って垂直方向と水平方向の歪みを測定することを可能にする。
【0011】
本発明の他の特徴および利点は、添付の間の図面を参照して実施形態に照らして明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】歪みを測定するために用いられる衛星の異なる4つの観察モードを示す図である。
【
図2】歪みを測定するために用いられる衛星の異なる4つの観察モードを示す図である。
【
図3】歪みを測定するために用いられる衛星の異なる4つの観察モードを示す図である。
【
図4】歪みを測定するために用いられる衛星の異なる4つの観察モードを示す図である。
【
図5】本発明の好適な実施形態及び構成要素の結合によって得られた反射体に係る反射体の構成要素を示す図である。
【
図6】本発明の好適な実施形態及び構成要素の結合によって得られた反射体に係る反射体の構成要素を示す図である。
【
図7】本発明の好適な実施形態及び構成要素の結合によって得られた反射体に係る反射体の構成要素を示す図である。
【
図8】本発明の好適な実施形態に係る反射体の特別な実施形態を表す図である。
【
図9】本発明の好適な実施形態に係る反射体の特別な実施形態を表す図である。
【
図10】本発明の好適な実施形態に係る反射体の特別な実施形態を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好適な実施形態に係る反射体は、3つの平坦な要素又はプレートP1、P2、P3を備えている。
図5は、プレートP1と
図6プレートP2とP3を表している。
【0014】
プレートP1は直線的な辺a1と、直線的な辺a1と対向(opposite)する平面角区域(flat angular sector)を区切る任意の形状の辺a2と、を有する。二つの直線的な開口部(openings)であるスリット(slits)f1,f2は辺a1上に設置された同じポイントMからプレートP1に形成される。好適な方法において、スリットは互いに90度であり、互いに辺a1と45度の角度を形成する。しかしながら、より一般的な方法においては、スリットf1,f2がそれぞれ辺a1と形成する角度θ1,θ2は、35度と55度との間で自由に設置される(「自由に」はスリットf1,f2は、それらの間の90度の角度で結合する)。スリットf1は長さl1を有し、スリットf2は長さl2を有する。
【0015】
図6はプレートP2とP3とを示す。P2,P3は、それぞれ平面角区域を区切る任意の形状の直線的な辺a3と辺a4とを有する。一つの直線的な開口部であるスリットfは辺a4からプレートP2,P3にそれぞれ形成される。スリットfの軸は直線的な辺a3と垂直である。プレートP2に対して、直線的な辺a3からスリットfを隔てる距離d1はスリットf1の長さl1と等しい。同様に、プレートP3に対して、直線的な辺a3からスリットfを隔てる距離d2はスリットf2の長さl2と等しい。
【0016】
図7は、プレートP1,P2,P3の組み立てによって得られる本発明の反射体を示す。プレートP1,P2はプレートP1,P3と同様に互いに交互配置(interleaved)される。目的を達成するために、プレートP2のスリットfとプレートP1のスリットf1は、それらの端部まで他方が位置し、並べられ、プレートP3のスリットfとプレートP1のスリットf2も、それらの端部まで他方が位置し、並べられる。プレートP2,P3の二つの直線的な辺a3が互いに接して、辺a1と組み合わさって、地上の反射体を適切な位置に保持するための手段を形成する端部を定義する。本発明の反射体はこのように自立する点において有利である。地面に置かれた本発明の反射体は、特別なインフラストラクチャが必要ない。歪みが観察(monitored)された地面の位置は、辺a1,a3によって定義されるものと等しい表面領域を有する。反射体が地面に置かれたとき、プレートP1は実質的に垂直である。反射体は、すべての衛星から見えるようにするために、辺a1は、地理極(geographic poles)と一直線に配列している。
【0017】
プレートP1,P2,P3は、プレートP1の両側に設置された二つの、衛星から受信した電磁波をそれぞれの衛星の方向へ反射することができるキャビティ(cavities)を形成する機械的構造体を定義する。
【0018】
本発明の改良によれば、切込み(notch)eはそれぞれのプレートP2,P3の端部a3上に、実質的にはそれぞれのキャビティの下部に現れる穴(orifice)に装着された反射体のように、スリットfの一列に形成される。これは、例えば、雨水を排出することができるという効果を奏する。
【0019】
図8乃至10は、本発明の好適な実施形態に係る反射体の特別な実施形態を表す。
【0020】
この特別な実施形態によると、プレートP1は長辺と短辺を有する長方形であり、二つの長辺の一方が辺a1を形成し、プレートP1とP2とは、底部が辺a3を形成する二等辺三角形を形成する。スリットf1とf2とは同じ長さlを有する。それらは互いに90度で位置し、辺a1に対して互いに45度で位置している。三角形の底部からスリットfを隔てる距離dはスリットf1,f2の長さlと等しい。
【0021】
他の改良によると、必要性がある場合には、地面に反射体を結合することで固定することができる二つの貫通穴i1,i2がプレートP1上に供給される。他の改良によると、反射体は環境の攻撃からプレートを保護するため、プレートP1,P2,P3を囲む、電磁波に対して透明な構造体を含む。
【0022】
本発明の反射体は多くの利点を有する、すなわち:
− パッシブ型で自立しており、GPS(Global Positioning System)受信体のケースのように、いかなる電気的エネルギー源の供給も必要とせず、
− 特に維持費を必要とせず、数年間は観察するために配置されてもよく、
− 恒久的で、光学的な観察やGPSアンテナを用いた地形技術(topographic techniques)の場合のように、アクセスすることがしばしば困難で、各測定ポイントの追跡が必要なく、
− 自立しており、その結果、地形技術やGPS技術のように固有の安定した柱(pillars)の建設が必要なく、
− 雪、氷又は軟弱基盤のような柔らかい塊を観察する状況で使用されてもよく、
− アクセスが難しい場所に容易に輸送可能であり、独立して設置可能であり、
− 高価でなく、同じ地帯において多くのデバイスを設置することが可能となり、それによって、その地帯で多くの測定を実施することを可能にし、
− その頻度によらず、いかなるタイプの衛星からも見ることができ、それによって:
a)非常に正確な歪み測定(X帯(8−12GHz)衛星と共にサブミリメートルの精度を得ることができる)を実行することと、
b)歪みが急速に変化するケース(地上の同じ基準と共に解析された異なる衛星によって得られた同じ地帯の画像の全て)において有利である、重要な循環(important recurrence)を伴って動作することと、
を可能にし、
− 素朴であり、結果として、通行人によって悪意のある行為(劣化や盗難)につながる可能性の好奇心の対象とならない。
【0023】
その発明は、例えば土木と地球科学のような多数の分野に適用することができる。
【0024】
土木工学の応用は、例えば以下のものである:
− ダム、ブリッジ、建物、堤防、人工島、凸道、鉄道などのような構造の観察と、
− 海岸の崖、海岸、深い穴の安定した観察と、
− かつての採掘現場の表面進化に応用することができる。
【0025】
地球科学の応用は、例えば以下のものである:
− 地震によるその前後における歪みの測定と、
− 火山、大陸又は地殻沈下(continental or tectonic subsidence)、断層や地滑りの変化の歪みの観察と、
− 氷河や永久的な積雪と山塊上の万年雪(firns)の変化の進歩の観察と、
− ポート(ports)におけるハイドロゼロ(hydro zero)を計算するための安定した基準点の形成と、
− 海底(衛星技術によるレーダ画像の置き換え)にレーダ反射体を置くことによる海底に関する研究に応用することができる。