(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000290
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】ポリウレタン被覆剤組成物、該被覆剤組成物を使用する多工程被覆法ならびにクリヤーラッカーおよび顔料が配合された塗料としての
(51)【国際特許分類】
C09D 175/04 20060101AFI20160915BHJP
C09D 7/12 20060101ALI20160915BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20160915BHJP
B05D 7/14 20060101ALI20160915BHJP
C08G 18/22 20060101ALI20160915BHJP
C08G 18/16 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
C09D175/04
C09D7/12
B05D7/24 302T
B05D7/14 S
B05D7/14 L
C08G18/22
C08G18/16
【請求項の数】19
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2013-558348(P2013-558348)
(86)(22)【出願日】2012年2月10日
(65)【公表番号】特表2014-513165(P2014-513165A)
(43)【公表日】2014年5月29日
(86)【国際出願番号】EP2012052284
(87)【国際公開番号】WO2012123198
(87)【国際公開日】20120920
【審査請求日】2015年1月13日
(31)【優先権主張番号】61/452,177
(32)【優先日】2011年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】11158021.3
(32)【優先日】2011年3月14日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ホフマン
(72)【発明者】
【氏名】エルケ ヴェストホフ
(72)【発明者】
【氏名】ベアナデッテ メラー
(72)【発明者】
【氏名】ベネディクト シュニーア
【審査官】
村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2006/0036007(US,A1)
【文献】
特表2011−503143(JP,A)
【文献】
特開2007−063281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−10/00;
101/00−201/10
B05D 1/00−7/26
C08G 18/00−18/87;
71/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリヒドロキシル基を含む、少なくとも1つの化合物(A)、遊離イソシアネート基および/またはブロック化されたイソシアネート基を有する、ポリイソシアネート基を含む、少なくとも1つの化合物(B)および1.0モルの1つ以上の亜鉛(II)ビスカルボキシレートと2.0モルの式(I)
【化1】
〔式中、R
5は、水素であり、R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ同一かまたは異なる基であり、その際にR
1およびR
3は、水素であるまたはアルキル基もしくはアリール基であり、R
2およびR
4は、アルキル基またはアリール基である〕の1つ以上の
グアニジンとを反応させることによって製造可能である、亜鉛
グアニジン錯体をベースとする、少なくとも1つの触媒(D)を含有する被覆剤組成物であって、
前記被覆剤組成物がさらに、カルボキシル基がπ電子系と共役している、モノマーの任意に置換された、少なくとも1つの芳香族カルボン酸(S)を含有することを特徴とする、前記被覆剤組成物。
【請求項2】
基R2およびR4は、同一かまたは異なる、非環式の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基であり、または同一かまたは異なるアリール基であり、ならびに基R1およびR3は、水素であるか、または同一かまたは異なる、非環式の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基または同一かまたは異なるアリール基であることを特徴とする、請求項1記載の被覆剤組成物。
【請求項3】
亜鉛グアニジン錯体(D)のカルボキシレート基がアルキル基中に1〜12個のC原子を有する、直鎖状および/または分枝鎖状の、任意に置換された脂肪族モノカルボン酸のカルボキシレート基、およびアリール基中に6〜12個のC原子を有する、任意に置換された芳香族モノカルボン酸のカルボキシレート基の群から選択されていることを特徴とする、請求項1または2記載の被覆剤組成物。
【請求項4】
前記被覆剤組成物が成分(D)として、Zn(1,1,3,3−テトラメチルグアニジン)2(アセテート)2、Zn(1,1,3,3−テトラメチルグアニジン)2(ホルメート)2、Zn(1,1,3,3−テトラメチルグアニジン)2(ベンゾエート)2、Zn(1,1,3,3−テトラメチルグアニジン)2(2−エチルヘキサノエート)2、Zn(1,1,3,3−テトラメチルグアニジン)2(オクトエート)2、Zn(1,3−ジフェニルグアニジン)2(ホルメート)2、Zn(1,3−ジフェニルグアニジン)2(アセテート)2、Zn(1,3−ジフェニルグアニジン)2(ベンゾエート)2、Zn(1,3−ジフェニルグアニジン)2(オクトエート)2、および/またはZn(1,3−ジフェニルグアニジン)2(2−エチルヘキサノエート)2を含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物。
【請求項5】
前記被覆剤組成物が、カルボン酸(S)として、安息香酸、t−ブチル安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、サリチル酸および/またはアセチルサリチル酸を含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物。
【請求項6】
前記被覆剤組成物が、少なくとも1つの亜鉛グアニジン錯体(D)を、亜鉛グアニジン錯体の金属含量が、それぞれ前記被覆剤組成物の結合剤含量に対して、35〜2000ppmであるような量で含有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物。
【請求項7】
前記被覆剤組成物が、少なくとも1つの芳香族カルボン酸(S)を0.2〜15.0質量%含有し、この場合この質量%の記載は、前記被覆剤組成物の結合剤含量に対するものであることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物。
【請求項8】
前記被覆剤組成物が、成分(B)として、遊離イソシアネート基を有する、少なくとも1つの化合物を含有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物。
【請求項9】
前記被覆剤組成物が、成分(B)として、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、または4,4’−メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート、前記ジイソシアネートのビウレット二量体および/または前記ジイソシアネートのイソシアヌレート三量体および/または前記ジイソシアネートの不斉三量体を含有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物。
【請求項10】
ポリヒドロキシル基を含む化合物(A)がポリアクリレートポリオール、ポリメタクリレートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオールおよびポリシロキサンポリオールの群から選択されていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物。
【請求項11】
前記被覆剤組成物がさらに1つ以上の、成分(A)とは異なる、ヒドロキシル基を含む化合物(C)を含有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物。
【請求項12】
ヒドロキシル基を含む化合物(A)および任意に(C)のヒドロキシル基対成分(B)のイソシアネート基のモル当量比が、1:0.9〜1:1.5であることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物。
【請求項13】
前記被覆剤組成物が、非水性被覆剤組成物であることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物。
【請求項14】
前記被覆剤組成物が、顔料を含有することを特徴とする、請求項1から13のいずれか1項に記載の被覆剤組成物。
【請求項15】
多工程被覆法であって、任意に予め被覆された基体上に顔料が配合された下塗り塗料層を塗布し、その後に請求項1から14までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物からなる層を塗布するか、または任意に予め被覆された基体上に請求項1から14までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物からなる、顔料が配合されたかまたは顔料が配合されていない層を塗布することを特徴とする、前記多工程被覆法。
【請求項16】
顔料が配合された下塗り塗料層の塗布後に、施された下塗り塗料を最初に室温ないし80℃の温度で乾燥させ、請求項1から14までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物の塗布後に、20〜80℃の温度で硬化させることを特徴とする、請求項15記載の多工程被覆法。
【請求項17】
自動車補修用塗装のための、および/または自動車用増設部品および/またはプラスチック基体および/または輸送用車両の被覆のための、クリヤーラッカーまたは顔料が配合された塗料としての、請求項1から14までのいずれか1項に記載の被覆剤組成物の使用。
【請求項18】
自動車補修用塗装のための、および/またはプラスチック基体および/または輸送用車両の被覆のための、請求項15または16記載の方法の使用。
【請求項19】
ポリイソシアネート基を含む、少なくとも1つの成分およびポリヒドロキシル基を含む、少なくとも1つの成分を含有する被覆剤組成物におけるウレタン反応を触媒するための触媒系としての、1.0モルの1つ以上の亜鉛(II)ビスカルボキシレートと2.0モルの、式(I)
【化2】
〔式中、R5は、水素であり、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ同一かまたは異なる基であり、その際にR1およびR3は、水素であるまたはアルキル基もしくはアリール基であり、R2およびR4は、アルキル基またはアリール基である〕の1つ以上の
グアニジン、およびカルボキシル基がπ電子系と共役している、少なくとも1つのモノマーの芳香族カルボン酸(S)との反応によって製造可能である、少なくとも1つの亜鉛
グアニジン錯体(D)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリヒドロキシル基を含む、少なくとも1つの化合物(A)、ポリイソシアネート基を含む、少なくとも1つの化合物(B)および亜鉛アミジン錯体をベースとする、少なくとも1つの触媒(D)を含有する被覆剤組成物に関する。
【0002】
更に、本発明の対象は、前記被覆剤組成物を使用する多工程被覆法ならびにクリヤーラッカーとしての前記被覆剤組成物の使用、または自動車補修用塗装のための、および/またはプラスチック基体および/または輸送用車両の被覆のための前記被覆法の使用である。
【0003】
ポリウレタン被覆剤は、通常、触媒を含有し、その際に酸性化合物の他に、殊に第三級アミンおよび/または金属化合物、例えば様々な錫化合物、殊にジブチル錫ジラウレートおよびジブチル錫オキシドが使用される。
【0004】
錫含有触媒の使用は、多数の錫化合物に内在する毒性のために、被覆剤においても避けるべきである。EU委員会の「分級およびラベリングに関する作業グループ(Working Group on Classification and Labelling)」によって、ジブチル錫オキシド(DBTO)およびジブチル錫ジラウレート(DBTL)は、相応して分類された。
【0005】
従って、インターネットにおいてwww.wernerblank.comのアドレスで入手しうる、キング・インダストリーズ社(Firma King Industries Inc.)のウェルナー・ジェイ・ブランク(Werner J.Blank)、ゼット・エイ・ヒー(Z.A.He)の論説"非錫触媒によるイソシアネート・ヒドロキシル反応の触媒反応(Catalysis of the Isocyanate−Hydroxyl Reaction by Non−Tin Catalysts)"、ティー・ヘッセイル(T.Hesseil)編には、様々な金属塩および金属錯体、例えばジルコニウムキレート、アルミニウムキレートおよびビスマスカルボキシレートをベースとする、通常の錫含有触媒の代用物が記載されている。
【0006】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第102008061329号明細書A1から、金属含有触媒の使用を可能なかぎり避け、かつその代わりに触媒として、ポリウレタン被覆剤におけるブロック化されたポリイソシアネートの脱ブロック化のために1,3置換されたイミダゾリウム塩を含有する被覆剤は、公知である。
【0007】
WO 04/029121には、ポリウレタン組成物が記載されており、このポリウレタン組成物は、当該組成物の反応性に関連して2.8〜4.5のpKa範囲を有する酸の添加によって安定化されており、その際にこの酸は、同時に触媒として利用されてよい。その際に、2.8〜4.5のpKa範囲を有する酸として、例えば安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、フタル酸等が使用される。好ましくは、前記組成物は、さらなる触媒を含有しないが、しかし、さらになお通常の公知のポリウレタン触媒、例えば第三級アミンまたはアミジン、または金属有機化合物、例えば殊に錫化合物が使用されてもよい。アミンを触媒として使用する場合には、アミンのタイプおよびその量の選択に関連して十分に細心の注意を払わなければならない。それというのも、アミン触媒の一部は、添加された有機酸の安定作用を消去しうるからである。
【0008】
米国特許第5847044号明細書には、触媒としてN,N,N’−三置換アミジン、殊に二環式アミジンを含有するポリウレタン粉末塗料が記載されている。
【0009】
WO 09/135600には、触媒として金属塩と窒素含有ヘテロ環式化合物、殊に置換イミダゾールとの反応生成物を含有するポリウレタン組成物、殊にシーリング材、接着剤およびフォームが記載されている。
【0010】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第2434185号明細書には、アミジン金属錯体の製造法およびイソシアネート重付加反応のための触媒としての当該アミジン金属錯体の使用が記載されている。その際に、アミジン金属錯体は、アミジンを0.5〜4倍モル量の金属化合物と反応させることによって製造され、この場合アミジンとして、単環式化合物および/または二環式化合物、例えば殊にイミダゾールならびに非環式化合物、例えばホルムアミジン、アセトアミジン、ベンズアミジンおよびグアニジンが使用される。金属化合物として、三価鉄、二価ニッケル、二価亜鉛、二価マンガン、二価錫または四価錫の金属化合物が使用され、この場合殊に、相応するカルボキシレートが使用される。
【0011】
最後に、米国特許第7485729号明細書B2ならびに等価の刊行物WO 06/022899、米国特許第2006/0247341号明細書A1および米国特許第2009/0011124号明細書A1には、有機金属化合物および当該有機金属化合物を含有する被覆剤が記載されている。被覆剤として、ヒドロキシル基を含むポリアクリレートをベースとする粉末塗料またはポリエステルおよびウレトジオン基を含むポリイソシアネートをベースとする粉末塗料、ヒドロキシル基を含むポリアクリレートをベースとする液体塗料またはポリエステルおよびブロック化されたポリイソシアネートをベースとする液体塗料ならびにエポキシ/カルボキシ成分またはエポキシ/無水物成分をベースとする溶剤含有被覆剤が記載されている。触媒として使用される有機金属化合物は、別の金属アミジン錯体の他に、環式または非環式の亜鉛ビスカルボキシレート−ビス−アミジン錯体、例えばZn(1,1,3,3−テトラメチルグアニジン)
2(2−エチルヘキサノエート)
2である。
【0012】
課題
従って、本発明の課題は、既に極めて短時間後に良好な取付け強度を保証し、すなわち修復塗装および輸送用車両の塗装の条件下でも急速な硬化を保証し、つまり既に60℃で30分の硬化後に、最初の取付け作業または脱マスキングが被覆の損傷なしに実施されうる限り、十分に硬化されている、殊に自動車補修用塗装および輸送用車両の被覆のための被覆剤組成物を提供することであった。しかし、同時に、前記被覆剤組成物は、室温で結合剤成分とイソシアネート成分との混合後に、少なくとも2時間の良好な可使時間("ポットライフ(Potlife)")を有するべきである。その際に、可使時間とは、前記被覆剤組成物が初期粘度の2倍の値を達成した時間であると解釈される。
【0013】
更に、前記被覆剤組成物は、良好な十分な硬化および十分な最終硬度を有する被覆を生じるべきである。更に、前記被覆剤は、黄変の問題を示すべきではない。すなわち、前記触媒は、固有色を有してはならないし、通常の塗料成分との混和の際または塗料の硬化の際に変色をまねいてはならない。更に、生じる硬化された被覆は、いわゆるWOM試験(SAE(Society of Automotive Engineers)規格 J2527_04により測定した、WOM=ウェザオメーター試験(Weather−Ometer Test))における負荷後に黄変傾向を示すべきではない。その際に、前記黄変は、Xrite社のタイプMA68の比色計を用いてDIN 6174による計算により全ての色差ΔEとして測定される。その際に、前記被覆の黄変は、錫含有触媒をベースとする、相応する被覆の黄変よりも劣悪であってはならない。
【0014】
更に、前記被覆系には、前記触媒を最初から添加しうるべきである。しかし、触媒を前記被覆系に最初から混和することは、前記被覆剤の貯蔵安定性に不利な影響を及ぼしてはならない。その上、前記触媒は、加水分解非敏感性でなければならなかった。それというのも、有機的に溶解された系中であっても、通常高い濃度のヒドロキシル基は、長時間に亘って触媒活性を減少させうるからである。特に、自動車補修用塗装の範囲内で、極めて高い貯蔵安定性は、より高い温度でも有利である。
【0015】
最後に、前記被覆剤組成物は、簡単に極めて良好に再現できるように製造可能であり、かつ塗料の塗布中に生態学的問題を引き起こすべきではない。殊に、錫含有触媒は、避けるべきであるかまたは最善の場合には、完全に断念すべきである。
【0016】
課題の解決
上記に課された課題に照らしてみて、ポリヒドロキシル基を含む、少なくとも1つの化合物(A)、遊離イソシアネート基および/またはブロック化されたイソシアネート基を有する、ポリイソシアネート基を含む、少なくとも1つの化合物(B)および1.0モルの1つ以上の亜鉛(II)ビスカルボキシレートと2.0モルの式(I)
【化1】
〔式中、R
5は、水素であり、R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ同一かまたは異なる基であり、その際にR
1およびR
3は、水素であるかまたはアルキル基もしくはアリール基であり、R
2およびR
4は、アルキル基またはアリール基である〕の1つ以上のアミジンとを反応させることによって製造可能である、亜鉛アミジン錯体をベースとする、少なくとも1つの触媒(D)を含有する被覆剤組成物であって、
前記被覆剤組成物がさらに、カルボキシル基がπ電子系と共役している、モノマーの任意に置換された、少なくとも1つの芳香族カルボン酸(S)を含有することを特徴とする、前記被覆剤組成物が見い出された。
【0017】
更に、本発明の対象は、前記被覆剤組成物を使用する多工程被覆法ならびにクリヤーラッカーとしての前記被覆剤組成物の使用、または自動車補修用塗装のための、および/またはプラスチック基体および/または輸送用車両の被覆のための被覆法の使用である。
【0018】
前記被覆剤組成物が自動車補修用塗装のための条件下でも、既に極めて短時間後に良好な取付け強度を保証し、すなわち修復塗装の条件下でも急速な硬化を保証し、つまり既に60℃で15分の硬化後に非粘着性であることは、驚異的なことであり、かつ予測することができなかった。しかし、同時に、前記被覆剤組成物は、室温で結合剤成分とイソシアネート成分との混合後に少なくとも2時間の良好な可使時間("ポットライフ(Potlife)")を示す。その際に、可使時間とは、前記被覆剤組成物が初期粘度の2倍の値を達成した時間であると解釈される。
【0019】
更に、前記被覆剤組成物は、良好な十分な硬化および十分な最終硬度を有する被覆を生じる。更に、前記被覆剤は、黄変問題を示さない。すなわち、前記被覆剤は、強い固有色を示さないし、生じる硬化された被覆は、WOM試験(SAE(Society of Automotive Engineers)規格 J2527_04により測定した、WOM=ウェザオメーター試験(Weather−Ometer Test))における負荷後に黄変傾向を示さない。その際に、前記黄変は、Xrite社のタイプMA68の比色計を用いてDIN 6174による計算により全ての色差ΔEとして測定される。その際に、前記被覆の黄変は、錫含有触媒をベースとする、相応する被覆の黄変よりも劣悪ではない。
【0020】
更に、前記被覆系には、触媒が最初から添加されていてよく、それによって前記被覆剤の貯蔵安定性が不利な影響を及ぼされることはない。その上、前記触媒は、加水分解非敏感性であり、その結果、有機的に溶解された系中であっても、一般に高い濃度のヒドロキシル基は、長時間に亘って触媒活性の減少をまねかず、このことは、特に自動車補修用塗装の範囲内で有利である。
【0021】
最後に、前記被覆剤組成物は、簡単に極めて良好に再現できるように製造可能であり、かつ塗料の塗布中に生態学的問題を引き起こさない。殊に、錫含有触媒は、避けることができるかまたは最善の場合には、むしろ完全に断念することができる。
【0022】
ポリヒドロキシル基を含む化合物(A)
ポリヒドロキシル基を含む化合物(A)として、1分子当たり少なくとも2個のヒドロキシル基を有しかつオリゴマーおよび/またはポリマーである、当業者に公知の全ての化合物が使用されてよい。成分(A)として、様々なオリゴマーおよび/またはポリマーのポリオールの混合物が使用されてもよい。
【0023】
好ましいオリゴマーおよび/またはポリマーのポリオール(A)は、ポリスチレン標準に対してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した、500ダルトンを上回る、有利に800〜100000ダルトン、殊に1000〜50000ダルトンの質量平均分子量Mwを有する。
【0024】
ポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリシロキサンポリオール、ポリアクリレートポリオールおよび/またはポリメタクリレートポリオールならびにこれらのコポリマーは、特に好ましく、以下、ポリアクリレートポリオールと呼称される。
【0025】
前記ポリオールは、有利に30〜400mg KOH/g、殊に100〜300mg KOH/gのOH価を有する。ヒドロキシル価(OH価)は、アセチル化の際に物質1gによって結合される酢酸量に対して水酸化カリウムが何mg当量であるのかを定める。前記試料は、測定の際に無水酢酸ピリジンと一緒に煮沸され、生じる酸は、水酸化カリウム溶液で滴定される(DIN 53240−2)。純粋なポリ−(メタ)アクリレートの場合には、OH価は、使用されるOH官能性モノマーを基礎に算出することによって十分に正確に測定されることもできる。
【0026】
前記ポリオールの、DIN−EN−ISO 11357−2によるDSC測定により測定したガラス転移温度は、有利に−150〜100℃、特に有利に−120〜80℃である。
【0027】
適当なポリエステルポリオールは、例えば欧州特許出願公開第0994117号明細書および欧州特許出願公開第1273640号明細書中に記載されている。ポリウレタンポリオールは、特にポリエステルポリオールプレポリマーを適当なジイソシアネートもしくはポリイソシアネートと反応させることによって製造され、かつ例えば欧州特許出願公開第1273640号明細書中に記載されている。適当なポリシロキサンポリオールは、例えばWO−A−01/09260中に記載されており、その際にそこに挙げられているポリシロキサンポリオールは、有利にさらなるポリオール、殊により高いガラス転移温度を有するポリオールと組み合わせて使用されてよい。
【0028】
殊に好ましくは、成分(A)は、1つ以上のポリアクリレートポリオールおよび/またはポリメタクリレートポリオールを含有する。単数または複数のポリアクリレートポリオールおよび/またはポリメタクリレートポリオールと一緒に、さらなるオリゴマーおよび/またはポリマーの、ポリヒドロキシル基を含む化合物、例えばポリエステルポリオール、ポリウレタンポリオールおよびポリシロキサンポリオール、殊にポリエステルポリオールが使用されてよい。
【0029】
本発明によれば、特に好ましいポリ(メタ)アクリレートポリオールは、たいていコポリマーであり、特に、それぞれポリスチレン標準に対してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した、1000〜20000ダルトン、殊に1500〜10000ダルトンの質量平均分子量Mwを有する。
【0030】
前記コポリマーのガラス転移温度は、たいてい−100〜100℃、殊に−50〜80℃である(DIN−EN−ISO 11357−2によるDSC測定により測定した)。
【0031】
ポリ(メタ)アクリレートポリオールは、有利に60〜250mg KOH/g、殊に70〜200mg KOH/gのOH価ならびに0〜30mg KOH/gの酸価を有する。
【0032】
ヒドロキシル価(OH価)は、上記の記載と同様に測定される(DIN 53240−2)。これに関して、酸価は、それぞれの化合物1gを中和するために消費される水酸化カリウムのmg数を定める(DIN EN ISO 2114)。
【0033】
ヒドロキシル基を含むモノマー構成成分として、有利にヒドロキシアルキルアクリレートおよび/またはヒドロキシアルキルメタクリレート、例えば殊に2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルメタクリレートならびに殊に4−ヒドロキシブチルアクリレートおよび/または4−ヒドロキシブチルメタクリレートが使用される。
【0034】
さらなるモノマー構成成分として、ポリ(メタ)アクリレートポリオールについては、有利にアルキルアクリレートおよび/またはアルキルメタクリレート、例えば特にエチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、アミルアクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、エチルヘキシルアクリレート、エチルヘキシルメタクリレート、3,3,5−トリメチルヘキシルアクリレート、3,3,5−トリメチルヘキシルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ラウリルアクリレートもしくはラウリルメタクリレート、シクロアルキルアクリレートおよび/またはシクロアルキルメタクリレート、例えばシクロペンチルアクリレート、シクロペンチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレートまたは殊にシクロヘキシルアクリレートおよび/またはシクロヘキシルメタクリレートが使用される。
【0035】
ポリ(メタ)アクリレートポリオールについてのさらなるモノマー構成成分として、ビニル芳香族炭化水素、例えばビニルトルエン、α−メチルスチレンまたは殊にアクリル酸もしくはメタクリル酸のスチレン、アミドもしくはニトリル、ビニルエステルまたはビニルエーテル、ならびに二次的量で殊にアクリル酸および/またはメタクリル酸が使用されてよい。
【0036】
ポリイソシアネート基を含む化合物(B)
成分(B)として、自体公知の、置換されたかまたは置換されていない、芳香族、脂肪族、脂環式および/またはヘテロ環式のポリイソシアネートが適している。好ましいポリイソシアネートの例は、次のとおりである:2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニレンジイソシアネート、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、1,12−ドデカンジイソシアネート、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネート、ペルヒドロジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、4,4’−メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(例えば、Bayer AG社のDesmodur(登録商標)W)、テトラメチルキシリルジイソシアネート(例えば、American Cyanamid社のTMXDI(登録商標))および前記ポリイソシアネートの混合物。また、好ましいポリイソシアネートは、前記ジイソシアネートのビウレット二量体およびイソシアヌレート三量体である。特に好ましいポリイソシアネート(B)は、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートおよび4,4’−メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート、これらのビウレット二量体および/またはこれらのイソシアヌレート三量体および/またはこれらの不斉三量体、例えば市場でDesmodur(登録商標)XP2410の名称で入手可能な不斉HDI三量体である。
【0037】
本発明のさらなる実施態様において、前記ポリイソシアネートは、ポリオールを化学量論的過剰量の前記ポリイソシアネートと反応させることによって得られる、ウレタン構成単位を有するポリイソシアネートプレポリマーである。このようなポリイソシアネートプレポリマーは、例えば米国特許第4598131号明細書中に記載されている。
【0038】
ポリイソシアネート基を含む成分(B)は、適当な溶剤(L)中に存在していてよい。適当な溶剤(L)は、ポリイソシアネート成分の十分な可溶性を可能にしかつイソシアネートに対して反応性の基を含まない溶剤である。このような溶剤の例は、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、ジイソブチルケトン、エチルアセテート、n−ブチルアセテート、エチレングリコールジアセテート、ブチロラクトン、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、メチラール、ブチラール、1,3−ジオキソラン、グリセロールホルマール、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ソルベントナフサ(登録商標)、2−メトキシプロピルアセテート(MPA)およびエチルエトキシプロピオネートである。
【0039】
ヒドロキシル基を含む化合物(C)
本発明による被覆剤組成物は、任意にポリヒドロキシル基を含む成分(A)の他に、さらに1つ以上の、成分(A)とは異なる、ヒドロキシル基を含むモノマーの化合物(C)を含有することができる。好ましくは、前記化合物(C)は、それぞれ被覆剤組成物の結合剤含量に対して、0〜20質量%、特に有利に1〜10質量%、殊に有利に1〜5質量%の割合を占める。
【0040】
ヒドロキシル基を含む化合物(C)として、低分子ポリオールが使用される。
【0041】
低分子ポリオールとして、例えばジオール、例えば有利にエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよび1,2−シクロヘキサンジメタノール、ならびにポリオール、例えば有利にトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールヘキサン、1,2,4−ブタントリオール、ペンタエリトリットならびにジペンタエリトリットが使用される。好ましくは、このような低分子ポリオールは、ポリオール成分(A)に対して二次的割合で混和される。
【0042】
触媒(D)
前記被覆剤組成物が1.0モルの1つ以上の亜鉛(II)ビスカルボキシレートと2.0モルの式(I)
【化2】
〔式中、R
5は、水素であり、R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ同一かまたは異なる基であり、その際にR
1およびR
3は、水素であるかまたはアルキル基もしくはアリール基であり、R
2およびR
4は、アルキル基またはアリール基である〕の1つ以上のアミジンとを反応させることによって製造可能である、亜鉛アミジン錯体をベースとする、少なくとも1つの触媒(D)を含有することは、本発明にとって基本的なことである。
【0043】
基R
2およびR
4は、有利に同一かまたは異なる、非環式の直鎖状および/または分枝鎖状のアルキル基であり、および/または同一かまたは異なるアリール基である。好ましくは、基R
1およびR
3は、水素であるか、または同一かまたは異なる、非環式の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基および/または同一かまたは異なるアリール基である。前記アルキル基は、それぞれ任意に、エステル、エーテル、エーテルエステルおよびケトンとして存在することができる。前記アリール基は、脂肪族のエステル、エーテル、エーテルエステルおよびケトンで置換されていてよいか、または芳香族のエステル、エーテル、エーテルエステルおよびケトンとして存在していてよい。
【0044】
特に好ましくは、基R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ同一かまたは異なる非環式脂肪族基であり、殊に有利には、前記基R
1、R
2、R
3およびR
4は、1〜4個の炭素原子を有する。殊に好ましくは、基R
1、R
2、R
3およびR
4は、メチル基である。
【0045】
更に、好ましい亜鉛アミジン錯体(D)は、当該亜鉛アミジン錯体(D)のカルボキシレート基がアルキル基中に1〜12個のC原子を有する、直鎖状および/または分枝鎖状の、任意に置換された脂肪族モノカルボン酸および/またはアリール基中に6〜12個のC原子を有する、任意に置換された芳香族モノカルボン酸のカルボキシレート基の群から選択されている前記錯体である。カルボキシレート基は、使用された塗料成分中で生じる錯体の可溶性を広範囲に及び定める。従って、殊に好ましくは、本発明による被覆剤組成物において、1.0モルの亜鉛(II)ビス(2−エチルヘキサノエート)を2.0モルのアミジン(I)と反応させることによって得られる亜鉛アミジン錯体が使用される。
【0046】
成分(D)として、Zn(1,1,3,3−テトラメチルグアニジン)
2(アセテート)
2、Zn(1,1,3,3−テトラメチルグアニジン)
2(ホルメート)
2、Zn(1,1,3,3−テトラメチルグアニジン)
2(ベンゾエート)
2、Zn(1,1,3,3−テトラメチルグアニジン)
2(
2−エチルヘキサノエート)
2、Zn(1,1,3,3−テトラメチルグアニジン)
2(オクトエート)
2、Zn(1,3−ジフェニルグアニジン)
2(ホルメート)
2、Zn(1,3−ジフェニルグアニジン)
2(アセテート)
2、Zn(1,3−ジフェニルグアニジン)
2(ベンゾエート)
2、Zn(1,3−ジフェニルグアニジン)
2(2−エチルヘキサノエート)
2および/またはZn(1,3−ジフェニルグアニジン)
2(オクトエート)
2、有利にZn(1,1,3,3−テトラメチルグアニジン)
2(2−エチルヘキサノエート)
2および/またはZn(1,1,3,3−テトラメチルグアニジン)
2(オクトエート)
2および/またはZn(1,3−ジフェニルグアニジン)
2(2−エチルヘキサノエート)
2および/またはZn(1,3−ジフェニルグアニジン)
2(オクトエート)
2を含有する被覆剤組成物が特に好ましい。成分(D)として、Zn(1,1,3,3−テトラメチルグアニジン)
2(2−エチルヘキサノエート)
2および/またはZn(1,1,3,3−テトラメチルグアニジン)
2(オクトエート)
2を含有する被覆剤組成物が殊に好ましい。
【0047】
単数または複数の亜鉛(II)ビスカルボキシレートと単数または複数のアミジン(I)との反応は、通常、溶剤中で行なわれる。これに関して、溶剤として、殊に亜鉛(II)ビスカルボキシレートおよび亜鉛アミジンの十分な可溶性を可能にしかつイソシアネートに対して反応性の基を含まない溶剤が使用される。このような溶剤の例は、既にポリイソシアネート基を含む化合物(B)の場合に記載された溶剤(L)である。
【0048】
単数または複数の亜鉛(II)ビスカルボキシレートと単数または複数のアミジン(I)との反応は、ポリヒドロキシル基を含む成分(A)中、および/または成分(C)として記載された低分子アルコール中で、任意にさらなる溶剤、例えば殊にまさに記載された溶剤(L)との混合物で行なってもよい。
【0049】
単数または複数の亜鉛(II)ビスカルボキシレートと単数または複数のアミジン(I)との反応は、ヒドロキシル基を含む化合物(A)および任意に(C)、任意に溶剤および任意に1つ以上の下記した塗料添加剤(F)を含有する、塗料成分(K−I)の全混合物中で実施することも可能である。
【0050】
単数または複数の亜鉛(II)ビスカルボキシレートと単数または複数のアミジン(I)との反応は、通常、室温で、または100℃までの少し高められた温度で行なわれる。その際に、たいてい亜鉛(II)ビスカルボキシレートは、前記溶剤中に、またはヒドロキシル基を含む化合物(A)および/またはまさに記載されたような(C)中に予め装入され、かつ任意に、挙げられた溶剤の1つの溶剤中に溶解したアミジン化合物が徐々に滴加される。生じる熱の発生は、終了まで待ち、次に、この混合物は、少なくとも60℃でさらになお2時間攪拌される。
【0051】
更に、殊に、前記被覆剤組成物が活性の触媒化合物(D)をインサイチュー(in−situ)で製造しうる2成分系被覆剤組成物であることも可能である。そのために、相応する量の単数または複数のアミジンは、ヒドロキシル基を含む結合剤(A)および任意に(C)を含有する塗料成分(K−I)中に溶解され、および相応する量の亜鉛(II)ビスカルボキシレートは、ポリイソシアネート基を含む化合物(B)を含有する塗料成分(K−II)中に溶解される。更に、2つの塗料成分を塗布前に混合する場合には、亜鉛アミジン錯体がインサイチュー(in−situ)で被覆剤組成物中に形成される。
【0052】
モノマーの芳香族カルボン酸(S)
更に、前記被覆剤組成物が、カルボキシル基がπ電子系と共役している、モノマーの、任意に置換された、少なくとも1つの芳香族カルボン酸(S)を含有することは、本発明にとって基本的なことである。その際に、カルボキシル基の数は、変動することができ、有利には、前記カルボン酸は、1個のカルボキシル基を有する。好ましくは、モノマーの、任意に置換された芳香族カルボン酸は、500g/mol未満、特に有利に300g/mol未満の分子量を有する。好ましくは、2〜5のpKa値を有する、モノマーの、任意に置換された芳香族カルボン酸が使用される。pKa値は、半当量点でのpH値に相当し、その際に溶媒は、特に水である。酸に対して水中でのpKa値の説明が不可能である場合には、媒体として特にDMSOが選択されるか、または酸が可溶性である、別の適当な媒体が選択される。
【0053】
モノマーの芳香族モノカルボン酸およびポリカルボン酸、相応するアルキル置換およびアリール置換された芳香族モノカルボン酸および芳香族ポリカルボン酸ならびに相応する、ヒドロキシル基を含む芳香族モノカルボン酸および芳香族ポリカルボン酸、例えばフタル酸およびテレフタル酸、アルキル置換またはアリール置換されたフタル酸およびテレフタル酸、安息香酸およびアルキル置換またはアリール置換された安息香酸、さらなる官能基を有する芳香族カルボン酸、例えばサリチル酸およびアセチルサリチル酸、アルキル置換またはアリール置換されたサリチル酸またはその異性体、多核の芳香族カルボン酸、例えばナフタリンカルボン酸の異性体およびその誘導体が適している。
【0054】
好ましくは、前記被覆剤組成物は、モノマーの芳香族カルボン酸(S)として、安息香酸、t−ブチル安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、サリチル酸および/またはアセチルサリチル酸、特に有利に安息香酸を含有する。
【0055】
成分(A)、(B)、任意に(C)、(D)および(S)ならびに前記被覆剤組成物のさらなる成分の組合せ
一成分系の被覆剤組成物が重要である場合には、遊離イソシアネート基がブロック化剤でブロック化されている、ポリイソシアネート基を含む化合物(B)が選択される。例えば、前記イソシアネート基は、置換されたピラゾール、殊にアルキル置換されたピラゾール、例えば3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、4−ニトロ−3,5−ジメチルピラゾール、4−ブロモ−3,5−ジメチルピラゾール等でブロック化されていてよい。特に有利には、成分(B)のイソシアネート基は、3,5−ジメチルピラゾールでブロック化される。
【0056】
本発明によれば、特に好ましい2成分系(2K)被覆剤組成物の場合には、前記被覆剤の塗布直前に、ポリヒドロキシル基を含む化合物(A)ならびにさらなる次に記載された成分を含有する塗料成分は、ポリイソシアネート基を含む化合物(B)ならびに任意に次に記載されたさらなる成分を含有する、さらなる塗料成分と自体公知の方法で混合され、その際にたいてい、化合物(A)を含有する塗料成分は、触媒(D)ならびに溶剤の一部分を含有する。
【0057】
ポリヒドロキシ成分(A)は、適当な溶剤中に存在していてよい。適当な溶剤は、ポリヒドロキシ成分の十分な可溶性を可能にする溶剤である。このような溶剤の例は、既にポリイソシアネート基を含む化合物(B)の場合に記載された溶剤(L)である。
【0058】
ポリオール(A)および任意に(C)およびポリイソシアネート(B)の質量割合は、特に、ポリヒドロキシル基を含む化合物(A)および任意に(C)のヒドロキシル基対成分(B)のイソシアネート基のモル当量比が、1:0.9〜1:1.5、有利に1:0.9〜1:1.1、特に有利に1:0.95〜1:1.05であるように選択されている。
【0059】
好ましくは、本発明によれば、それぞれ前記被覆剤組成物の結合剤含量に対して、ポリヒドロキシル基を含む、少なくとも1つの化合物(A)、殊にポリヒドロキシル基を含む、少なくとも1つのポリアクリレート(A)および/またはポリヒドロキシル基を含む、少なくとも1つのポリメタクリレート(A)を30〜80質量%、有利に50〜70質量%含有する被覆剤組成物が使用される。
【0060】
同様に、好ましくは、本発明によれば、それぞれ前記被覆剤組成物の結合剤含量に対して、ポリイソシアネート基を含む化合物(B)を、5〜50質量%、有利に25〜40質量%含有する被覆剤組成物が使用される。
【0061】
好ましくは、本発明による被覆剤組成物は、さらに少なくとも1つの亜鉛アミジン錯体(D)を、当該亜鉛アミジン錯体の金属含量が、それぞれ前記被覆剤組成物の結合剤含量に対して、35〜2000ppm、有利に35〜1000ppm、特に有利に100〜1000ppmであるような量で含有する。
【0062】
更に、好ましくは、本発明による被覆剤組成物は、少なくとも1つの芳香族カルボン酸(S)を0.2〜15.0質量%、有利に0.5〜8.0質量%、特に有利に0.5〜5.0質量%含有し、この場合この質量%の記載は、それぞれ前記被覆剤組成物の結合剤含量に対するものである。
【0063】
結合剤含量とは、それぞれ、架橋前の、テトラヒドロフラン(THF)中で可溶性の、被覆剤組成物の割合であると解釈される。そのために、少量の試料(P)が計量され、50〜100倍の量でTHFが溶解され、不溶性成分は、ろ別され、THFは、蒸発され、それに引き続いて先にTHF中に溶解された成分の固体は、130℃で60分間乾燥され、デシケーター中で冷却され、かつ次に再び計量されることにより測定される。残留物は、試料(P)の結合剤含量に相当する。
【0064】
本発明による被覆剤組成物は、有利に非水性被覆剤であり、かつ溶剤を含有していてよいかまたは溶剤不含の系として配合されていてよい。適当な溶剤の例は、既に、ポリヒドロキシル基を含む化合物(A)および任意に(C)の場合およびポリイソシアネート基を含む化合物(B)の場合に記載された溶剤(L)である。単数または複数の溶剤は、本発明による被覆剤組成物において、有利に、前記被覆剤組成物の固体含量が少なくとも50質量%、特に有利に少なくとも60質量%であるような量で使用される。
【0065】
更に、本発明による被覆剤組成物は、それぞれ前記被覆剤組成物の結合剤含量に対して、1つ以上のアミノプラスト樹脂および/または1つ以上のトリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジン(E)を0〜30質量%、有利に0〜15質量%含有することができる。
【0066】
適当なトリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジンの例は、米国特許第4939213号明細書、米国特許第5084541号明細書および欧州特許出願公開第0624577号明細書中に記載されている。
【0067】
適当なアミノプラスト樹脂(E)の例は、塗料工業の範囲内で通常使用されるアミノプラスト樹脂であり、その際にアミノプラスト樹脂の反応性により、生じる被覆剤の性質は、制御されうる。アルデヒド、殊にホルムアルデヒドと例えば尿素、メラミン、グアナミンおよびベンゾグアナミンとからなる縮合生成物が重要である。アミノプラスト樹脂は、たいてい、部分的に、または有利に全体的にアルコールでエーテル化されているアルコール基、特にメチロール基を含む。殊に、低級アルコールでエーテル化されたアミノプラスト樹脂が使用される。好ましくは、メタノールおよび/またはエタノールおよび/またはブタノールでエーテル化されたアミノプラスト樹脂、例えば市場でCymel(登録商標)、Resimene(登録商標)、Maprenal(登録商標)およびLuwipal(登録商標)の名称で入手可能な製品が使用される。
【0068】
アミノプラスト樹脂(E)は、古くから知られている化合物であり、かつ例えば詳細は、米国特許第2005/0182189号明細書A1、第1頁、段落[0014]〜第4頁、段落[0028]中に記載されている。
【0069】
更に、本発明による結合剤混合物または本発明による被覆剤組成物は、通常の公知の、少なくとも1つの塗料添加剤(F)を、それぞれ前記被覆剤組成物の結合剤含量に対して、有効量で、即ち特に30質量%まで、特に有利に25質量%まで、殊に20質量%までの量で含有することができる。
【0070】
適当な塗料添加剤(F)の例は、次のとおりである:
− 殊に、UV吸収剤;
− 殊に、光安定剤、例えばHALS化合物、ベンズトリアゾールまたはオキサルアニリド;
− ラジカル捕捉剤;
− スリップ添加剤;
− 重合抑制剤;
− 消泡剤;
− 成分(A)および(C)とは異なる反応性希釈剤、殊に最初にさらなる成分または水との反応によって反応性になる反応性希釈剤、例えばインコゾルまたはアスパラギン酸エステル;
− 成分(A)および(C)とは異なる湿潤剤、例えばシロキサン、フッ素含有化合物、カルボン酸半エステル、燐酸エステル、ポリアクリル酸およびそのコポリマーまたはポリウレタン;
− 付着助剤;
− 均展剤;
− 被膜形成助剤、例えばセルロース誘導体;
− 充填剤、例えば二酸化ケイ素、酸化アルミニウムまたは酸化ジルコニウムをベースとするナノ粒子;補足的には、さらにRoempp Lexikon"Lacke und Druckfarben"Georg Thieme Verlag社,Stuttgart在,1998,第250〜252頁が指摘される;
− 成分(A)および(C)とは異なるレオロジー制御添加剤、例えばWO 94/22968、欧州特許出願公開第0276501号明細書、欧州特許出願公開第0249201号明細書またはWO 97/12945から公知の添加剤;例えば欧州特許出願公開第0008127号明細書中に開示されている、架橋されたポリマーミクロ粒子;無機層状ケイ酸塩、例えばアルミニウム−マグネシウムケイ酸塩、モンモリロン石タイプのナトリウム−マグネシウム層状ケイ酸およびナトリウム−マグネシウム−フッ素−リチウム層状ケイ酸塩;ケイ酸、例えばAerosile(登録商標);またはイオン性基および/または結合性相互作用を有する基(assoziativ wirkenden Gruppen)を有する合成ポリマー、例えばポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルピロリドン、スチレン−無水マレイン酸コポリマーもしくはエチレン−無水マレイン酸コポリマーおよびそれらの誘導体、または疎水性に変性されたエトキシル化ウレタンもしくはエトキシル化ポリアクリレート;
− 難燃剤。
【0071】
前記被覆剤組成物の結合剤含量に対して、ポリヒドロキシル基を含む、少なくとも1つのポリアクリレート(A)および/またはポリヒドロキシル基を含む、少なくとも1つのポリメタクリレート(A)を50〜70質量%、
前記被覆剤組成物の結合剤含量に対して、ポリイソシアネート基を含む化合物(B)を25〜40質量%、
前記被覆剤組成物の結合剤含量に対して、ヒドロキシル基を含む成分(C)を0〜10質量%、
前記被覆剤組成物の結合剤含量に対して、少なくとも1つの芳香族カルボン酸(S)を0.5〜5.0質量%、
前記被覆剤組成物の結合剤含量に対して、1つ以上のアミノプラスト樹脂および/または1つ以上のトリス(アルコキシカルボニルアミノ)トリアジン(E)を0〜15質量%、および
前記被覆剤組成物の結合剤含量に対して、通常の公知の、少なくとも1つの塗料添加剤(F)を0〜20質量%含有し、
かつ
少なくとも1つの亜鉛アミジン錯体(D)を、亜鉛アミジン錯体の金属含量が、それぞれ前記被覆剤組成物の結合剤含量に対して、100〜1000ppmであるような量で含有する被覆剤組成物は、特に好ましい。
【0072】
本発明のさらなる実施態様において、本発明による結合剤混合物または本発明による被覆剤組成物は、さらになお顔料および/または充填剤を含有することができ、かつ顔料が配合されたトップコートまたは顔料が配合されたベースコートまたはフィラー、殊に顔料が配合されたトップコートの製造に使用されうる。そのために使用される顔料および/またはフィラーは、当業者に公知である。前記顔料は、通常、それぞれ前記被覆剤組成物の結合剤含量に対して、顔料対結合剤比が0.05:1〜1.5:1であるような量で使用される。
【0073】
本発明による被覆剤から製造された、本発明による被覆は、既に硬化された、電着塗膜、フィラー塗膜、下塗り塗膜または通常の公知のクリヤラッカー塗膜上にも卓越して付着するので、前記被覆は、自動車量産(OEM)塗装への使用の他に、顕著に自動車補修用塗装にも、および/または自動車用増設部品の被覆および/または輸送用車両の被覆にも適している。
【0074】
本発明による被覆剤組成物の塗布は、通常の塗布方法、例えばスプレー、ナイフ塗布、刷毛塗り、注型、浸漬、含浸、滴下またはロール塗布によって行なうことができる。その際に、被覆すべき基体それ自体は、静止されてよく、この場合には、塗布装置または塗布プラントが可動される。その間に、被覆すべき基体、殊にコイルは、可動されてもよく、その際に塗布プラントは、基体に対して相対的に静止されるかまたは適当な方法で可動される。
【0075】
特に、スプレー塗布方法、例えば圧縮空気スプレー、エアレススプレー、高速回転、静電スプレー塗装(ESTA)が、任意にホットスプレー塗装、例えばホットエアホットスプレーと関連して使用される。
【0076】
塗布された、本発明による被覆剤は、或る程度の静止時間後に硬化することができる。この静止時間は、例えば均展のため、および塗料層の脱ガス化のため、または揮発性成分、例えば溶剤の蒸発のために使用される。静止時間は、これに関連して塗料層の損傷または変化、例えば早期の完全な架橋が生じない限り、高められた温度の使用によって、および/または減少された空気湿度によって支持されることができ、および/または短縮されることができる。
【0077】
前記被覆剤の熱硬化は、方法上の特殊性を有しないが、通常の公知の方法、例えば空気循環炉中での加熱またはIR灯での照射により行なわれる。これに関連して、熱硬化は、段階的に行なうこともできる。さらなる好ましい硬化方法は、近赤外線(NIR線)での硬化である。
【0078】
好ましくは、熱硬化は、20〜200℃の温度で1分間ないし10時間の間に行なわれ、その際に低い温度の場合には、より長い硬化時間が使用されてもよい。その際に、自動車補修用塗装のため、およびプラスチック部品の塗装のため、ならびに輸送用車両の塗装のためには、通常、有利に20〜80℃、殊に20〜60℃である、より低い温度が使用される。
【0079】
本発明による被覆剤は、移動手段(殊に、車両、例えば自転車、オートバイ、バス、トラックもしくは自家用車)の車体もしくはその部品の、装飾的な、保護的な、および/または効果を与える被覆および塗装として;インテリアの範囲内およびエクステリアの範囲内の建築物の、装飾的な、保護的な、および/または効果を与える被覆および塗装として;家具、窓およびドアの、装飾的な、保護的な、および/または効果を与える被覆および塗装として;プラスチック成形部品、殊にコンパクトディスクおよびウィンドウの、装飾的な、保護的な、および/または効果を与える被覆および塗装として;工業的小型部品、コイル、コンテナおよび包装品の、装飾的な、保護的な、および/または効果を与える被覆および塗装として;白色製品の、装飾的な、保護的な、および/または効果を与える被覆および塗装として;フィルムの、装飾的な、保護的な、および/または効果を与える被覆および塗装として;光学的素子、電気工学的素子および機械的エレメントならびにガラス中空体および生活必需品の、装飾的な、保護的な、および/または効果を与える被覆および塗装として抜群に適している。
【0080】
従って、本発明による被覆剤組成物は、例えば任意に予め被覆された基体上に施されてよく、その際に本発明による被覆剤は、顔料が配合されていてもよいし、顔料が配合されていなくともよい。殊に、本発明による被覆剤組成物および塗膜、殊にクリヤーラッカー塗膜は、自動車量産塗装(OEM)の技術的および審美的に特に要求の多い分野において、乗用車の車体、殊にハイクラスの乗用車の車体のためのプラスチック増設部品の被覆のために、例えば、ルーフ、リッド、ボンネット、ウィング、バンパー、スポイラー、シル、保護トリム、側面カバー等の製造、ならびに自動車補修用塗装および輸送用車両、例えば貨物自動車、チェーン駆動の建設車両、例えばクレーン車、ホイールローダーおよびコンクリートミキサー車、バス、鉄道車両、船舶、航空機ならびに農業用車両、例えばトラクターおよびコンバイン、ならびにこれらの部品の塗装に使用される。
【0081】
プラスチック部品は、通常、ASA、ポリカーボネート、ASAとポリカーボネートとからの配合物、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレートまたは耐衝撃変性されたポリメチルメタクリレート、殊にASAと有利にポリカーボネートの割合40%超、殊に50%超を有するポリカーボネートとからの配合物からなる。
【0082】
その際に、ASAとは、一般に、ビニル芳香族化合物、殊にスチレンとシアン化ビニル、殊にアクリルニトリルのグラフトコポリマーが殊にスチレンとアクリルニトリルとからのコポリマーマトリックス中のポリアルキルアクリレートゴム上に存在する、耐衝撃変性されたスチレン/アクリルニトリルポリマーであると解釈される。
【0083】
特に好ましくは、本発明による被覆剤組成物は、多工程被覆法において、殊に任意に予め被覆された基体上に最初に顔料が配合された下塗り塗料層を塗布し、その後に本発明による被覆剤組成物を有する層を塗布する方法の場合に使用される。従って、本発明の対象は、顔料が配合された、少なくとも1つの下塗り塗料層とその上に配置された、少なくとも1つのクリヤーラッカー層とからなる、効果付与および/または色付与する多層塗膜であり、これは、有利に、クリヤーラッカー層が本発明による被覆剤組成物から製造されていることによって特徴付けられている。
【0084】
水希釈可能な下塗り塗料ならびに有機溶剤をベースとする下塗り塗料が使用されてよい。適当な下塗り塗料は、例えば欧州特許出願公開第0692007号明細書中およびその第3欄、第50行以降に記載された適当な刊行物中に記載されている。好ましくは、施された下塗り塗料は、最初に乾燥され、すなわち下塗り塗膜から蒸発段階において有機溶剤または水の少なくとも一部分が取り去られる。この乾燥は、特に室温ないし80℃の温度で行なわれる。乾燥後に、本発明による被覆剤組成物が施される。引続き、前記二層塗装系は、有利に自動車量産塗装の際に使用される条件下で20〜200℃の温度で1分間ないし10時間の間、焼き付けられ、その際に自動車量産塗装に使用される、一般に20〜80℃、殊に20〜60℃である温度の場合に、より長い硬化時間も使用されてよい。
【0085】
本発明のさらなる好ましい実施態様において、本発明による被覆剤組成物は、透明なクリヤーラッカーとしてプラスチック基体、殊にプラスチック増設部品の被覆に使用される。前記プラスチック増設部品は、有利に同様に、任意に予め被覆されたか、または次の被覆のより良好な付着のために予め処理(例えば、基体の火炎処理、コロナ放電処理またはプラズマ放電処理)された基体上に最初に顔料が配合された下塗り塗料層を塗布し、その後に本発明による被覆剤組成物を有する層を塗布する、多工程被覆法で被覆される。
【実施例】
【0086】
例
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
ゲル浸透クロマトグラフィーを40℃で高圧液体クロマトグラフィー用ポンプおよび屈折率検出器を用いて実施した。溶離剤として、テトラヒドロフランを1ml/分の溶離速度で使用した。較正をポリスチレン標準を用いて実施した。数平均分子量Mn、質量平均分子量MwおよびMpを測定し、その際に多分散性指数Mpは、Mp=Mw/Mnから算出された。
【0087】
ヒドロキシル価
ヒドロキシル価は、OH官能性成分の使用された割合により算出され、固体の樹脂の1g当たりのKOH mg数で記載される。
【0088】
固体の測定
試料約1gを蓋付きブリキ板包装容器中に計量供給する。酢酸ブチル約3mlの添加後に、この試料を乾燥キャビネット中で130℃で60分間乾燥し、乾燥器中で冷却し、次に再び計量した。残留物は、固体含量に相当する。
【0089】
結合剤含量の測定
結合剤含量とは、それぞれ架橋前の被覆剤組成物の、テトラヒドロフラン(THF)中での可溶性含量であると解釈されうる。そのために、少量の試料(P)を計量し、その中に50〜100倍量のTHFを溶解し、不溶性の成分をろ別し、THFを蒸発させ、それに引き続いて、130℃で60分間乾燥させ、乾燥器中で冷却しかつ次に再び計量することにより、先にTHF中に溶解された成分の固体を測定する。残留物は、試料(P)の結合剤含量に相当する。
【0090】
ザポン粘着試験(Zapon−Tack Test)(ZTT)による不粘着性:
約0.5mmの厚さ、2.5cmの幅および約11cmの長さのアルミニウムストリップを、110°の角度で、2.5×2.5cmの面積が生じるように湾曲させる。このストリップの長辺を、さらに2.5cm後方で約15°だけ、このストリップが正方形の面の中心に位置付けられた5gの分銅によってまさに平衡を保つように湾曲させる。ザポン粘着試験(ZTT)による不粘着性の測定のために、湾曲されたストリップを塗膜上に位置付け、かつ30秒間100gの分銅を載せた。分銅を取り除いた後、ストリップの角度が5秒間内でひっくり返る場合には、前記塗料は、不粘着性と見なされる。この試験を15分間隔で繰り返す。この試験の開始前に、塗膜の粘着性を接触によって定性的に判断する。高められた温度での試験の場合には、試験パネルを、試験の開始前に冷却のために室温で10分間貯蔵する。
【0091】
印刷試験:
塗膜を100μmのドクターナイフを用いてガラスパネル上に塗布する。60℃で15分間の乾燥後、炉から取り出してから10分間以内にガラスパネルを市販の実験室用秤上に載せる。次に、手の親指の圧力を用いて、塗膜を2kgの分銅で20秒間負荷する。この試験を全部で10分間繰り返す。明らかになお軟質かまたは粘着性の塗膜の場合には、最初に、当該塗膜が十分な不粘着性および硬度を達成するまで待つ。試験の評価は、24時間の貯蔵時間後に行なわれる。そのために、脂肪マークを取り除く目的で、塗膜面を界面活性剤水溶液(市販の食器用洗剤)および柔らかい布で拭う。常に標準に対して測定を行なう。親指で押して付いた跡が塗膜上に目視できない場合には、塗膜は、満足な状態であると見なされる。この試験は、補修用塗装の取付け強度のための1つの基準であり、すなわち塗膜がその取付け強度を促進された乾燥後によりいっそう早期に達成すればするほど、補修される車体での取付け作業(または取り外し部分の解体作業)がより早く開始されうる。
【0092】
乾燥記録装置:
280mm×25mmの寸法のガラスパネル上に塗料を100μmのドクターナイフを用いて塗布する。Byk社の乾燥時間記録装置(Byk−Dry−time Recorder)を用いて室温(20〜23℃)および40〜60%の相対空気湿度で針を規定の速度で塗膜上に通した。その際に、この痕跡の3つの異なる段階ならびに全長(第1段階+第2段階+第3段階からなる総和)が評価される。
段階1:針の痕跡が消える。
段階2:針の痕跡は、深い溝を塗膜内に生じる。
段階3:針は、塗膜を表面だけ傷つける。
評価は、常に標準に対して行なわれる。
【0093】
ポットライフ(Potlife):
そのために、DIN4のフローカップ中で塗料試料の室温での粘度を測定する。先に、この試料をDIN4のフローカップ中で19〜20秒のフローカップ粘度(Auslaufviskositaet)に調節する。その後に、適当な時間間隔で粘度上昇を測定する。この試料が初期粘度の2倍になると同時に、ポットライフは、限界に到達している。
【0094】
振り子硬度:
前記塗膜の硬度を、DIN 53157によるケーニッヒによる振り子の減衰により測定する。振り子の振動が規定されている。
【0095】
WOM試験(黄変)
2枚の試験パネル上で、白色の常用の下塗り塗膜を試験すべきクリヤーラッカーで35〜40μmの層厚で被覆する。前記試験パネルの一方に規格SAE J2527−04(WOM試験)に従い耐候試験を行なう。先に規定された時間間隔の後に、前記パネルを耐候試験機から取出し、Xrite社のタイプMA68の比色計で測定し、DIN 6174により算出し、かつ再び耐候試験機中で負荷する。黄変を、同時進行している、錫含有触媒をベースとする被覆に対して評価し、かつ負荷されていない比較試験体に対する全色差 デルタE(ΔE)として規定する。
【0096】
下塗り塗料:
1600〜2200(Mn)および4000〜5000(Mw)の分子量、12〜16mg KOH/gの測定された酸価、約130mg KOH/gの算出されたOH価(OHZ)(固体樹脂)および回転粘度計(Brookfield CAP 2000,スピンドル3,1000rpm)を用いて測定した、200〜400mPa.sの酢酸ブチル中の60%溶液の粘度を有するスチレン含有ポリアクリレート86.4g(Solventnaphtha(登録商標)/エトキシエチルプロピオネート/メチルイソブチルケトン(20/46/34)中62%で)を、メチルイソブチルケトン6.4g、UV光安定剤とHALS光安定剤とからなる市販の光安定剤混合物2.2gならびにポリアクリレートをベースとする市販の均展剤0.15gと一緒に攪拌し、均一な混合物にする。この混合物に、上記したような相応する触媒を攪拌しながら混入する。安息香酸を使用する場合には、前記混合物を攪拌しながら固体として下塗り塗料混合物中に溶解する。粘度の調節のために、再びメチルイソブチルケトン1.0部および酢酸ブチル2.80部を添加する。
【0097】
硬化剤溶液:
キシレン6.38部、酢酸ブチル9.238部、エチルエトキシプロピオネート1.86部、メチルイソブチルケトン8.68部ならびにポリアクリレートをベースとする、市販の均展剤0.310部(Solventnaphtha(登録商標)中55%で)の混合物中に、溶剤を含まない三量化ヘキサメチレンジイソシアネートに対して、22.0%のイソシアネート含量を有する、イソシアヌレート基を有する三量化ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)34.70gを溶解する。
【0098】
触媒:
触媒K2
亜鉛(II)−ビス(2−エチルヘキサノエート)48.34g(0.137モル)を酢酸ブチル20g中に溶解する。そのために、緩徐に1,1,3,3−テトラメチルグアニジン31.656g(0.275モル)を滴下させる。発熱反応が消えた後に、さらになお室温で20分間攪拌する。
【0099】
試験の実施:
さらなる成分、例えば安息香酸および触媒溶液を下塗り塗料中に溶解する。少し攪拌した後に、澄明な溶液が得られる。試験の実施のために、下塗り塗料を予め装入し、硬化剤を添加する。この溶液を攪拌することによって均一にする。
【0100】
粘度の測定のために、溶剤の添加によって規定の粘度に調節する。ガラスの垂れ下がり(Glasaufzuege)のために、粘度の調節を断念する。乾燥試験のために、塗膜をガラスパネル上に100μmの箱形ドクターナイフで塗布し、その結果、30〜35μmの塗膜層厚が達成される。振り子硬度の試験のために、塗膜をガラスパネル上に注型し、ケーニッヒによる塗膜硬度の測定前に、塗布された塗膜の層厚を引っ掻き傷(Ritz)(DIN 50933)で測定する。乾燥記録装置による試験のために、前記試料を同様に100μmの箱形ドクターナイフで、約300mmの長さおよび約25mmの幅の適当なガラスストリップ上に塗布し、それによって達成される層厚は、30〜35μmである。
【0101】
実施例1〜3および比較例V1
最初に、実施例1〜3の被覆剤をそれぞれ同量の亜鉛アミジン錯体および様々な量の安息香酸を用いて製造した。実施例1〜3および比較例V1の前記被覆剤の組成ならびに生じる被覆の試験結果は、第1表中に示されている。
【0102】
【表1】
【0103】
第1表の説明
1)前記被覆剤組成物の結合剤含量に対して、触媒量K2が金属含量ppmで規定されている。
2)DIN4のフローカップ中で室温で測定された、前記被覆剤組成物の製造直後ならびに製造から1時間後、2時間後、3時間後および4時間後の前記被覆剤組成物の粘度が規定されている。
3)60℃で15分間の被覆の硬化後および室温で10分間の前記パネルの貯蔵後の試験開始後のザポン粘着試験による不粘着性の測定
4)室温で1日間または7日間被覆を貯蔵した後の振り子硬度の測定
5)60℃で30分間被覆を硬化させかつ引続き室温で1日間または7日間被覆を貯蔵した後の振り子硬度の測定
6)引っ掻き傷の痕跡の全長がcmで規定され、ならびにそれぞれ段階1、2および3後の引っ掻き傷の痕跡の長さがcmで規定されている。
7)印刷試験において親指で押して付いた跡が60℃で15分間の乾燥後および室温で10分間の前記パネルの引続く貯蔵後にもはや目視できない時間が分で規定されている。
【0104】
試験結果の討論
実施例1〜3と比較例V1との比較は、本発明による被覆剤組成物が錫含有触媒をベースとする従来の被覆剤組成物よりも明らかに改善された、すなわちより長いポットライフを有することを示す。実施例1〜3の印刷試験の結果と比較試験V1との比較が示しているように、本発明による被覆剤は、同時に修復塗装の条件下でも急速な硬化を示し、ひいては既に極めて短い時間後に良好な取付け強度を示し、一方で、通常は、より劣悪な、すなわちより遅い硬化、ひいては明らかにより長い時間後の初めての良好な取付け強度とともに延長されたポットライフが、可能になる。この際に、前記取付け強度は、意外なことに、添加される安息香酸の量が高まることによって、明らかにより短い時間後に達成されることができ、それによってポットライフは、重大な不利な影響を及ぼされることはない。最後に、また、実施例1〜3についての振り子減衰および乾燥記録装置の結果と比較例V1との比較が示されているように、本発明による被覆剤の硬化は、錫含有触媒をベースとする従来の被覆剤の硬化と比較可能である。
【0105】
実施例4〜6
更に、実施例4〜6の被覆剤組成物を、それぞれ同量の同じ亜鉛アミジン錯体および同量の安息香酸を用いるが、様々なOH/NCO比で製造した。前記混合物の粘度を、比3:1での酢酸ブチル/メチルイソブチルケトンからなる溶剤混合物の添加によって22秒のDIN4のフローカップにおけるフローカップ粘度に調節する。実施例4〜6の被覆剤の組成ならびに生じる被覆の試験結果は、第2表中に示されている。
【0106】
【表2】
【0107】
第2表の説明
1)前記被覆剤組成物の結合剤含量に対して、触媒量K2が金属含量ppmで規定されている。
2)OH/NCO比が規定されている。
3)DIN4のフローカップ中で室温で測定された、前記被覆剤組成物の製造直後ならびに製造から1時間後、2時間後、3時間後および4時間後の前記被覆剤組成物の粘度が規定されている。
4)60℃で15分間の被覆の硬化後および室温で10分間の前記パネルの貯蔵後の試験開始後のザポン粘着試験による不粘着性の測定ならびに室温で被覆を貯蔵した際のザポン粘着試験による不粘着性の測定
5) 室温で1日間または7日間被覆を貯蔵した後の振り子硬度の測定ならびに60℃で30分間被覆を硬化させかつ引続き室温で1日間または7日間被覆を貯蔵した後の振り子硬度の測定
6)引っ掻き傷の痕跡の全長がcmで規定され、ならびにそれぞれ段階1、2および3による引っ掻き傷の痕跡の長さがcmで規定されている。
7)印刷試験において親指で押して付いた跡が60℃で15分間の乾燥後および室温で10分間の前記パネルの引続く貯蔵後にもはや目視できない時間が分で規定されている。
【0108】
試験結果の討論
この試験結果は、本発明による実施例4〜6の被覆剤が架橋比の変動の際にも比較可能な性質を維持することを示す。振り子硬度、ZTTによる不粘着性および取付け強度は、比較可能な期間において達成される。架橋比の正確な調節は、たいてい塗布試験を大きな面で維持する、続行される試験によって最適化することができる。実施された試験は、任意に前記成分の不正確な計量供給によっても塗膜特性の重大な変化が引き起こされ得ないことを示す。
【0109】
実施例7および8
更に、実施例7および8の被覆剤を、それぞれ同量の同じ亜鉛アミジン錯体および同量の芳香族カルボン酸を用いるが、安息香酸とは異なる芳香族カルボン酸を用いて製造した。実施例7および8の被覆剤の組成ならびに生じる被覆の試験結果は、第3表中に示されている。
【0110】
【表3】
【0111】
第3表の説明
1)前記被覆剤組成物の結合剤含量に対して、触媒量K2が金属含量ppmで規定されている。
2)DIN4のフローカップ中で室温で測定された、前記被覆剤組成物の製造直後ならびに製造から1時間後、2時間後、3時間後および4時間後の前記被覆剤組成物の粘度が規定されている。
3)60℃で15分間の被覆の硬化後および室温で10分間の前記パネルの貯蔵後の試験開始後のザポン粘着試験による不粘着性の測定ならびに室温で被覆を貯蔵した際のザポン粘着試験による不粘着性の測定
4)室温で1日間または7日間被覆を貯蔵した後の振り子硬度の測定ならびに60℃で30分間被覆を硬化させかつ引続き室温で1日間または7日間被覆を貯蔵した後の振り子硬度の測定
5)印刷試験において親指で押して付いた跡が60℃で15分間の乾燥後および室温で10分間の前記パネルの引続く貯蔵後にもはや目視できない時間が分で規定されている。
【0112】
試験結果の討論
この試験結果は、カルボキシル基がπ電子系と共役している、置換されたカルボン酸が安息香酸と同様に、硬化特性に影響を及ぼすことを示す。
【0113】
更に、比較例V1の被覆ならびに本発明による実施例2の被覆によって、WOM試験(SAE(Society of Automotive Engineers)規格 J2527_04により測定した)における負荷後に黄変安定性を試験した。結果は、第4表中に示されている。
【0114】
【表4】
【0115】
第4表の説明
1)前記被覆剤組成物の結合剤含量に対して、触媒量が金属含量ppmで規定されている。
2) 前記被覆の製造直後およびWOM試験(SAE(Society of Automotive Engineers)規格 J2527_04により測定した、WOM=ウェザオメーター試験(Weather−Ometer Test))における、262時間、500時間および1001時間の負荷後にXrite社のタイプMA68の比色計で測定しかつDIN 6174により算出した、黄変値が規定されている。
【0116】
試験結果の討論
WOM試験における負荷後の本発明による実施例の、全色差ΔEとして測定した黄変値は、本発明による実施例2と比較例V1との比較が示すように、錫含有被覆をベースとする従来の被覆の黄変値と比較可能である。
【0117】
最後に、実施例9および比較例V2の被覆剤は、それぞれ同量の同じ亜鉛アミジン錯体を用いて製造されたが、しかし、実施例9においては芳香族カルボン酸を用いて製造され、および比較例V2においては芳香族カルボン酸なしに製造された。実施例9および比較例V2の被覆剤の組成ならびに生じる被覆の試験結果は、第5表中に示されている。
【0118】
【表5】
【0119】
第5表の説明
1)前記被覆剤組成物の結合剤含量に対して、触媒量K2が金属含量ppmで規定されている。
2)DIN4のフローカップ中で室温で測定された、前記被覆剤組成物の製造直後ならびに製造から1時間後、2時間後、3時間後および4時間後の前記被覆剤組成物の粘度が規定されている。
3)引っ掻き傷の痕跡の全長がcmで規定され、ならびにそれぞれ段階1、2および3後の引っ掻き傷の痕跡の長さがcmで規定されている。
4)印刷試験において親指で押して付いた跡が60℃で30分間の乾燥後および室温で10分間の前記パネルの引続く貯蔵後にもはや目視できない時間が分で規定されている。
【0120】
試験結果の討論
実施例9の印刷試験の結果と比較例V2の印刷試験の結果との比較が示されているように、本発明による被覆剤は、安息香酸の添加によって、安息香酸の添加なしの相応する被覆剤よりも、修復塗装の条件下でも急速な硬化、ひいては既により短時間後の良好な取付け強度を示す。しかし、その際に、意外なことに、安息香酸の添加は、ポットライフ(Potlife)の重大な不利な影響をまねかない。