(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000293
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】ハウジング及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 9/00 20060101AFI20160915BHJP
C23C 14/06 20060101ALI20160915BHJP
C22C 14/00 20060101ALI20160915BHJP
C23C 14/32 20060101ALI20160915BHJP
C23C 14/34 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
B32B9/00 A
C23C14/06 N
C22C14/00 Z
C23C14/32 A
C23C14/34 A
【請求項の数】13
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-7526(P2014-7526)
(22)【出願日】2014年1月20日
(65)【公開番号】特開2014-141091(P2014-141091A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2015年1月28日
(31)【優先権主張番号】201310024513.1
(32)【優先日】2013年1月23日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】505177003
【氏名又は名称】深▲セン▼富泰宏精密工業有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】508155310
【氏名又は名称】富士康(香港)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】張 春傑
【審査官】
佐藤 玲奈
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−117166(JP,A)
【文献】
特開2012−211390(JP,A)
【文献】
特開2001−288558(JP,A)
【文献】
特公平05−067707(JP,B2)
【文献】
韓国公開特許第10−2012−0026936(KR,A)
【文献】
米国特許第06040012(US,A)
【文献】
米国特許第06218295(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0052276(US,A1)
【文献】
特開平06−122959(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0102400(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0251838(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 − 43/00
C23C 14/00 − 14/58
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の表面に順次に形成された下地層、移行層及びカラー層と、を備え、前記下地層は、Ti−M層であり、前記移行層は、窒化チタンとMの窒化物との混合層であり、Mは、クロム、アルミ又はシリコンであり、前記カラー層は、窒化チタン・アルミ層であり、
前記下地層において、Tiは50〜60質量%を含有し、Mは40〜50質量%を含有することを特徴とするハウジング。
【請求項2】
基材と、前記基材の表面に順次に形成された下地層、移行層及びカラー層と、を備え、前記下地層は、Ti−M層であり、前記移行層は、窒化チタンとMの窒化物との混合層であり、Mは、クロム、アルミ又はシリコンであり、前記カラー層は、窒化チタン・アルミ層であり、
前記移行層において、窒化チタンは50〜60質量%を含有し、Mの窒化物は40〜50質量%を含有することを特徴とするハウジング。
【請求項3】
基材と、前記基材の表面に順次に形成された下地層、移行層及びカラー層と、を備え、前記下地層は、Ti−M層であり、前記移行層は、窒化チタンとMの窒化物との混合層であり、Mは、クロム、アルミ又はシリコンであり、前記カラー層は、窒化チタン・アルミ層であり、
前記カラー層において、窒化チタンは30〜40質量%で含有し、窒化アルミは60〜70質量%を含有することを特徴とするハウジング。
【請求項4】
前記基材は、アルミまたはステンレスからなることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のハウジング。
【請求項5】
前記下地層の厚さは、0.1μm〜0.2μmであり、前記移行層の厚さは、0.3μm〜0.5μmである
ことを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のハウジング。
【請求項6】
前記カラー層の厚さは、0.5μm〜0.8μmであり且つ紫色を呈することを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載のハウジング。
【請求項7】
基材を提供する工程と、
真空蒸着法を介して前記基材の上面に、Ti−M層である下地層、窒化チタンとMの窒化物との混合層である移行層及び窒化チタン・アルミ層であるカラー層を順次にコーティングする工程を備え、
前記Mは、クロム、アルミ又はシリコンであり、
前記下地層において、Tiは50〜60質量%を含有し、Mは40〜50質量%を含有することを特徴とするハウジングの製造方法。
【請求項8】
基材を提供する工程と、
真空蒸着法を介して前記基材の上面に、Ti−M層である下地層、窒化チタンとMの窒化物との混合層である移行層及び窒化チタン・アルミ層であるカラー層を順次にコーティングする工程を備え、
前記Mは、クロム、アルミ又はシリコンであり、
前記移行層において、窒化チタンは50〜60質量%を含有し、Mの窒化物は40〜50質量%を含有することを特徴とするハウジングの製造方法。
【請求項9】
基材を提供する工程と、
真空蒸着法を介して前記基材の上面に、Ti−M層である下地層、窒化チタンとMの窒化物との混合層である移行層及び窒化チタン・アルミ層であるカラー層を順次にコーティングする工程を備え、
前記Mは、クロム、アルミ又はシリコンであり、
前記カラー層において、窒化チタンは30〜40質量%で含有し、窒化アルミは60〜70質量%を含有することを特徴とするハウジングの製造方法。
【請求項10】
前記真空蒸着法は、真空蒸着装置により実現され、前記真空蒸着装置は、真空チャンバと、前記真空チャンバの中に装着された冶具、第一ターゲット、第二ターゲット及び第三ターゲットと、を備え、
前記第一ターゲットは、チタンターゲットであり、前記第二ターゲットは、クロムターゲット、アルミターゲット又はシリコンターゲットであり、前記第三ターゲットは、40〜50質量%のチタン及び50〜60質量%のアルミを含有していることを特徴とする請求項7から9の何れか一項に記載のハウジングの製造方法。
【請求項11】
前記下地層を形成する場合、前記第一ターゲット及び前記第二ターゲットに対応する電源を起動して、前記真空チャンバ内のデューティ比を45〜50%に調節し、前記基材に対して200V〜300Vのバイアス電圧を印加し、前記真空チャンバの中に流量が100sccm〜150sccmのアルゴンを注入し、コーティング時間を5分間〜10分間にすることを特徴とする請求項10に記載のハウジングの製造方法。
【請求項12】
前記移行層を形成する場合、前記第一ターゲット及び前記第二ターゲットに対応する電源をそれぞれ起動し、前記真空チャンバ内のデューティ比を40〜50%に調節し、前記基材に対して250V〜300Vのバイアス電圧を印加し、前記真空チャンバの中に流量が100sccm〜150sccmのアルゴンを不活性気体として注入し、流量が30sccm〜50sccmの窒素を反応気体として注入し、コーティング時間を25分間〜35分間にすることを特徴とする請求項10に記載のハウジングの製造方法。
【請求項13】
前記カラー層を形成する場合、前記第三ターゲットに対応する電源を起動して、前記真空チャンバ内のデューティ比を30〜45%に調節し、前記基材に対して300V〜350Vのバイアス電圧を印加し、前記真空チャンバの中に流量が60sccm〜70sccmのアルゴン及び流量が150sccm〜200sccmの窒素を持続的に注入し、コーティング時間を35分間〜45分間にすることを特徴とする請求項10に記載のハウジングの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング及びその製造方法に関し、特により高い硬度及びポーセリングエナメル外観を有するハウジング及びそのハウジングの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、通常塗装或いは電気メッキなどの方法を介して、電子製品のハウジングの表面に装飾機能を有する紫色塗膜を形成して、ハウジングに紫色外観を付与する。しかし、塗装技術自体の欠点によって、形成された装飾用膜は高い光透過性及び高光沢性を備えておらず、ハウジングはポーセリングエナメルのような白さ、繊細さ、透明、清潔感等の視覚効果或いは外観効果を表すことができない。また、塗装による装飾用膜は、硬度が低く、傷も付き易い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の問題点に鑑みて、本発明は、高硬度及びポーセリングエナメル外観を有するハウジング及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するために、本発明に係るハウジングは、基材と、前記基材の表面に順次に形成された下地層、移行層及びカラー層と、を備える。前記下地層は、Ti−M層であり、前記移行層は、窒化チタンとMの窒化物との混合層であり、Mは、クロム、アルミ又はシリコンであり、前記カラー層は、窒化チタン・アルミ層である。
【0005】
また、上記の目的を達成するために、本発明に係るハウジングの製造方法は、基材を提供する工程と、真空蒸着法を用いて前記基材の上面に、Ti−M層である下地層、窒化チタンとMの窒化物との混合層である移行層及び窒化チタン・アルミ層であるカラー層を順次にコーティングする工程と、を備え、前記Mは、クロム、アルミ又はシリコンである。
【発明の効果】
【0006】
従来の技術と異なり、本発明のハウジングは、基材の表面に下地層、移行層及びカラー層を順次にコーティングして形成し、これらの3層の協同作用によって、ハウジングの表面を滑らかにし、ポーセリングエナメル外観を表現することができる。また、本発明の方法で得られたハウジングは、強度が高く、耐擦傷性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係るハウジングの断面図である。
【
図2】本発明に係るハウジングの製造方法に使用する真空蒸着装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に示すように、本発明の実施形態に係るハウジング10は、基材11と、基材11の上面に順次に形成された下地層13、移行層15及びカラー層17と、を備える。ハウジング10は、電子装置用ハウジング、自動車用装飾部品或いは時計のケースであっても良い。
【0009】
基材11は、アルミ或いはステンレスからなる。下地層13は、基材11の表面を被覆しれているTi−M層であり、且つその厚さは0.1μm〜0.2μmである。その中で、Mはクロム、アルミ或いはシリコンである。下地層13は、基材11と移行層15との接合力を高めることができる。また、下地層13において、Tiは50〜60質量%を含有し、Mは40〜50質量%を含有する。
【0010】
移行層15は、下地層13の表面を被覆している窒化チタンとMの窒化物との混合層であり、且つその厚さは0.3μm〜0.5μmである。移行層15は、ハウジング10の硬度を高める役割を果たしている。前記Mは、クロム、アルミ或いはシリコンである。移行層15おいて、窒化チタンは50〜60質量%を含有し、Mの窒化物は40〜50質量%を含有する。
【0011】
カラー層17は、移行層15の表面を被覆している窒化チタン・アルミニウム層であり、その厚さは0.5μm〜0.8μmであり、且つ紫色を呈する。窒化チタン・アルミニウム層において、窒化チタンは30〜40質量%を含有し、窒化アルミは60〜70質量%を含有する。
【0012】
本発明の実施形態に係るハウジング10の製造方法は、以下の工程を備える。
【0013】
第一工程において、真空蒸着装置20を提供する。
図2に示すように、真空蒸着装置20は、真空チャンバ21と、真空チャンバ21内に設けられた冶具23と、第一ターゲット25と、第二ターゲット27と、第三ターゲット29と、を備える。第一ターゲット25はチタンターゲットであり、第二ターゲット27はクロムターゲット、アルミターゲット或いはシリコンターゲットである。第三ターゲット29は、チタン40〜50質量%とアルミ50〜60質量%を含んでいる。真空蒸着装置20は、中間周波数マグネトロンスパッタリング蒸着装置又はアークイオン蒸着装置であっても良い。
【0014】
第二工程において、アルミ或いはステンレスからなる基材11を提供する。
【0015】
第三工程において、基材11に対して前処理する。具体的には、無水エタノールを用いて基材11に対して超音波洗浄を行なって、基材11の表面の油或いは汚れを除去する。超音波洗浄の時間は、25分間〜35分間である。
【0016】
第四工程において、基材11を真空蒸着装置20の冶具23に装着固定して、真空チャンバ21を180℃〜220℃まで加熱し、且つ真空ポンプ(図示されない)にて真空チャンバ21を3×10
−3Paまで真空にする。その後、真空蒸着装置20の電源出力を3kw〜5kwに調節して、真空チャンバ21のデューティ比(Duty Cycle)を75〜80%に調節し、真空チャンバ21内に流量が標準状態600〜800ml/分間(sccm)の不活性ガスとするアルゴンを注入して、基材11に対して1000V〜1200Vのバイアス電圧を印加した後、基材11の表面に対してプラズマ洗浄を行って、基材11の表面の酸化層を除去する。プラズマ洗浄の時間は、15分間〜20分間である。
【0017】
第五工程において、真空蒸着法を介してプラズマ洗浄された後の基材11の上面に下地層13を形成する。具体的には、第一ターゲット25及び第二ターゲット27に対応する電源を起動して、真空チャンバ21内のデューティ比(Duty Cycle)を45〜50%に調節し、基材11に対して200V〜300Vのバイアス電圧を印加し、真空チャンバ21の中に流量が100sccm〜150sccmのアルゴンを注入し、コーティング時間を5分間〜10分間にするという条件下、下地層13を形成する。本工程で得られた下地層13は、Ti−M層であり、且つ0.1μm〜0.2μmの厚さを有する。下地層13の構成成分とするMは、クロム、アルミ或いはシリコンである。下地層13において、Tiは50〜60質量%を含有し、Mは40〜50質量%を含有する。また、下地層13は、基材11と移行層15との間の接合力を高めることができる。
【0018】
第六工程において、真空蒸着法を介して下地層13の表面に移行層15を形成する。具体的には、第一ターゲット25及び第二ターゲット27に対応する電源をそれぞれ起動し、真空チャンバ21内のデューティ比を40〜50%に調節し、基材11に対して250V〜300Vのバイアス電圧を印加し、真空チャンバ21の中に流量が100sccm〜150sccmのアルゴンを不活性気体として注入し、流量が30sccm〜50sccmの窒素を反応気体として注入し、コーティング時間を25分間〜35分間にする。以上により、0.3μm〜0.5μmの移行層15が形成される。また、本工程で得られた移行層15は、窒化チタンとMの窒化物の混合層であり、ハウジング10の硬度を高めることができる。移行層15において、窒化チタンは50〜60質量%を含有し、Mの窒化物は40〜50質量%を含有する。Mは、クロム、アルミ或いはシリコンである。
【0019】
第七工程において、真空蒸着法を介して移行層15の表面にカラー層17を形成する。具体的には、第三ターゲット29に対応する電源を起動して、真空チャンバ21内のデューティ比を30〜45%に調節し、基材11に対して300V〜350Vのバイアス電圧を印加し、真空チャンバ21の中に流量が60sccm〜70sccmのアルゴン及び流量が150sccm〜200sccmの窒素を持続的に注入し、コーティング時間を35分間〜45分間にする。本工程で得られたカラー層17は、窒化チタン・アルミニウム層であり、且つその厚さは0.5μm〜0.8μmである。カラー層17は、紫色を呈するので、ハウジング10は紫色のポーセリングエナメル外観を有する。前記窒化チタン・アルミニウム層において、窒化チタンは30〜40質量%を含有し、窒化アルミは60〜70質量%を含有する。
【0020】
以下、具体的な実施例を挙げて、本発明について説明する。
【0021】
[実施例1]
(a)中間周波数マグネトロンスパッタリング蒸着装置20及びステンレス材質の基材11を提供する。
【0022】
(b)基材11の上面に下地層13を形成する。具体的には、チタンからなる第一ターゲット25及びクロムからなる第二ターゲット27に対応する電源をそれぞれ起動し、真空チャンバ21内のデューティ比を45%に調節し、基材11に対して200Vのバイアス電圧を印加し、真空チャンバ21の中に流量が100sccmのアルゴンを持続的に注入し、コーティング時間を5分間にする。本工程で得られた下地層13は、Ti−Cr層であり、その厚さは0.1μmである。また、下地層13において、Tiは50質量%を含有し、Crも50質量%を含有する。
【0023】
(c)下地層13の上面に移行層15を形成する。具体的には、チタンからなる第一ターゲット25及びクロムからなる第二ターゲット27に対応する電源をそれぞれ起動して、真空チャンバ21内のデューティ比を40%に調節し、基材11に対して250Vのバイアス電圧を印加し、真空チャンバ21の中に流量が100sccmのアルゴン及び流量が30sccmの窒素を持続的に注入し、コーティング時間を25分間にする。本工程で得られた移行層15は、窒化チタンと窒化クロムの混合層であり、厚さが0.3μmである。また、移行層15において、窒化チタンは50質量%を含有し、窒化クロムも50質量%を含有する。
【0024】
(d)移行層15の上面にカラー層17を形成する。具体的には、チタン及びアルミからなる第三ターゲット29に対応する電源を起動し、真空チャンバ21内のデューティ比を30%に調節し、基材11に対して300Vのバイアス電圧を印加し、真空チャンバ21の中に流量が60sccmのアルゴン及び流量が150sccmの窒素を持続的に注入し、コーティング時間を35分間にする。本工程で得られたカラー層17は、窒化チタン・アルミ層であり、厚さが0.5μmであり、且つ紫色を呈する。また、窒化チタン・アルミ層において、窒化チタンは40質量%を含有し、窒化アルミは60質量%を含有する。移行層17によって、ハウジング10は紫色のポーセリングエナメル外観を有する。
【0025】
[実施例2]
(a)アークイオン蒸着装置20及びアルミ材質の基材11を提供する。
【0026】
(b)基材11の上面に下地層13を形成する。具体的には、チタンからなる第一ターゲット25及びクロムからなる第二ターゲット27に対応する電源をそれぞれ起動し、真空チャンバ21内のデューティ比を45%に調節し、基材11に対して250Vのバイアス電圧を印加し、真空チャンバ21の中に流量が120sccmのアルゴンを持続的に注入し、コーティング時間を8分間にする。本工程で得られた下地層13は、Ti−Al層であり、その厚さは0.15μmである。また、下地層13において、Tiは55質量%を含有し、Alは45質量%を含有する。
【0027】
(c)下地層13の上面に移行層15を形成する。具体的には、チタンからなる第一ターゲット25及びアルミからなる第二ターゲット27に対応する電源をそれぞれ起動して、真空チャンバ21内のデューティ比を45%に調節し、基材11に対して280Vのバイアス電圧を印加し、真空チャンバ21の中に流量が120sccmのアルゴン及び流量が40sccmの窒素を持続的に注入し、コーティング時間を30分間にする。本工程で得られた移行層15は、窒化チタンと窒化アルミの混合層であり、厚さが0.4μmである。また、移行層15において、窒化チタンは55質量%を含有し、窒化アルミは45質量%を含有する。
【0028】
(d)移行層15の上面にカラー層17を形成する。具体的には、チタン及びアルミからなる第三ターゲット29に対応する電源を起動し、真空チャンバ21内のデューティ比を40%に調節し、基材11に対して320Vのバイアス電圧を印加し、真空チャンバ21の中に流量が65sccmのアルゴン及び流量が180sccmの窒素を持続的に注入し、コーティング時間を40分間にする。本工程で得られたカラー層17は、窒化チタン・アルミ層であり、その厚さは0.6μmであり、且つ紫色を呈する。また、窒化チタン・アルミ層において、窒化アルミは65質量%を含有し、窒化チタンは35質量%を含有する。移行層17によって、ハウジング10は紫色のポーセリングエナメル外観を有する。
【0029】
[実施例3]
(a)中間周波数マグネトロンスパッタリング蒸着装置20及びステンレス材質の基材11を提供する。
【0030】
(b)基材11の上面に下地層13を形成する。具体的には、チタンからなる第一ターゲット25及びシリコンからなる第二ターゲット27に対応する電源をそれぞれ起動し、真空チャンバ21内のデューティ比を50%に調節し、基材11に対して300Vのバイアス電圧を印加し、真空チャンバ21の中に流量が150sccmのアルゴンを持続的に注入し、コーティング時間を10分間にする。本工程で得られた下地層13は、Ti−Si層であり、その厚さは0.2μmである。また、下地層13において、Tiは60質量%を含有し、Siは40質量%を含有する。
【0031】
(c)下地層13の上面に移行層15を形成する。具体的には、チタンからなる第一ターゲット25及びシリコンからなる第二ターゲット27に対応する電源をそれぞれ起動して、真空チャンバ21内のデューティ比を50%に調節し、基材11に対して300Vのバイアス電圧を印加し、真空チャンバ21の中に流量が150sccmのアルゴン及び流量が50sccmの窒素を持続的に注入し、コーティング時間を35分間にする。本工程で得られた移行層15は、窒化チタンと窒化シリコンの混合層であり、その厚さは0.5μmである。また、移行層15において、窒化チタンは60質量%を含有し、窒化シリコンは40質量%を含有する。
【0032】
(d)移行層15の上面にカラー層17を形成する。具体的には、チタン及びアルミからなる第三ターゲット29に対応する電源を起動し、真空チャンバ21内のデューティ比を45%に調節し、基材11に対して350Vのバイアス電圧を印加し、真空チャンバ21の中に流量が70sccmのアルゴン及び流量が200sccmの窒素を持続的に注入し、コーティング時間を45分間にする。本工程で得られたカラー層17は、窒化チタン・アルミ層であり、その厚さは0.8μmであり、且つ紫色を呈する。また、窒化チタン・アルミ層において、窒化アルミは70質量%を含有し、窒化チタンは30質量%を含有する。移行層17によって、ハウジング10は紫色のポーセリングエナメル外観を有する。
【0033】
[テスト結果]
ビッカース硬度計を用いて基材11及びハウジング10の硬度を測定した場合、基材11のビッカース硬度は250HV〜300HVであり、ハウジング10のビッカース硬度は700HV〜850HVに達する。
【符号の説明】
【0034】
10 ハウジング
11 基材
13 下地層
15 移行層
17 カラー層
20 真空蒸着装置
21 真空チャンバ
23 冶具
25 第一ターゲット
27 第二ターゲット
29 第三ターゲット