(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガラス原料を加熱するステップにおいて、前記ガラス原料を300℃以上に加熱する、請求項1に記載のHDD用ガラス基板用のガラスブロックまたはガラスブランクスの製造方法。
前記ガラス原料を加熱するステップにおいて、前記ガラス原料を溶融させる、請求項1または請求項2に記載のHDD用ガラス基板用のガラスブロックまたはガラスブランクスの製造方法。
請求項1から請求項3のいずれかに記載のガラスブロックまたはガラスブランクスの製造方法によって製造されたHDD用ガラス基板用のガラスブロックまたはガラスブランクスを成形することによってHDD用ガラス基板を製造する、HDD用ガラス基板の製造方法。
前記HDD用ガラス基板の中に、球換算粒子径が1μm以上の白金が混入する個数は、ガラス3cc当たり1個以下である、請求項4に記載のHDD用ガラス基板の製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、HDDの記憶容量の飛躍的な増大に伴い、媒体の1ビットあたりの記録面積を小さくすることが必要不可欠となっている。媒体の記録面積の減少に比例して記録用の磁性粒子サイズも微細化しなければならず、微小領域でのリード/ライト機能を向上するために、磁気ヘッドと媒体との距離がさらに小さくなっている。その結果、媒体に記録されたデータにアクセスする際のリード/ライトエラー、磁気ヘッドが媒体表面に衝突するヘッドクラッシュなどの問題が発生しやすくなっている。そのため、表面平滑性のさらに高いガラス基板を製造することが求められている。
【0003】
磁気ヘッドと媒体との距離を小さくしたときリード/ライトエラーやヘッドクラッシュが増加する原因を追究したところ、従来は特に大きな問題となっていなかったガラス基板の表面の異物が原因であることが明らかになってきた。その異物を成分分析したところ、白金であることが判明し、ガラスの溶融工程における溶融炉であるるつぼより溶出した白金であることがわかってきた。
【0004】
そこで従来、るつぼ内でのガラス材料中への白金の混入を抑制する技術が提案されている(たとえば、特開2006−169085号公報(特許文献1)参照)。特開2006−169085号公報(特許文献1)では、溶融ガラスに接触するるつぼの表面粗さを低減することで、ガラスと白金との接触抵抗を低減して、白金の混入を防ぐ技術が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、白金または白金合金製の部材の表面を平滑にする処理には手間がかかる。さらに、るつぼを使用するにつれて表面粗さが悪化するため、白金製るつぼの表面粗さを低減した状態を長期に亘って維持することは現実的に不可能である。すなわち、特開2006−169085号公報(特許文献1)に記載の技術では、るつぼの使用開始当時は白金の混入を低減する効果が得られるものの、使用開始後すぐに溶融ガラス材料への白金の混入が増加してしまう問題があった。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、ガラス基板中への白金の混入量を抑制し高密度のHDD用ガラス基板を製造できる、HDD用ガラス基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る一の局面のHDD用ガラス基板の製造方法は、磁気ヘッドの浮上量が3nm以下であるHDD用ガラス基板の製造方法であって、白金を含む材料により形成され、溶融されたガラス融液を保持する溶融炉を加熱するステップと、ガラス原料を溶融炉に保持されたガラス融液中に投入するステップと、を備え、ガラス基板の成形後において球換算粒子径が1μm以上の白金がガラス中へ混入する個数は、ガラス3cc当たり1個以下である。ここで、球換算粒子径とは、個々の白金粒子の体積と同じ体積を有する球の直径として定義される。
【0009】
本発明に係る他の局面のHDD用ガラス基板の製造方法は、磁気ヘッドの浮上量が3nm以下であるHDD用ガラス基板の製造方法であって、白金を含む材料により形成され、溶融されたガラス融液を保持する溶融炉を加熱するステップと、ガラス原料を100℃以上に加熱するステップと、加熱されたガラス原料を溶融炉に保持されたガラス融液中に投入するステップと、を備える。
【0010】
上記製造方法において好ましくは、ガラス原料を加熱するステップにおいて、ガラス原料を300℃以上に加熱する。
【0011】
上記製造方法において好ましくは、ガラス原料を加熱するステップにおいて、ガラス原料を溶融させる。
【0012】
本発明に係るHDD用ガラス基板は、上記のいずれかの局面に従った製造方法によって製造された、熱アシスト記録方式のHDD用ガラス基板である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のHDD用ガラス基板の製造方法によると、白金の混入量を抑制できるので、高密度のHDD用ガラス基板を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に基づいた実施の形態および実施例について、以下、図面を参照しながら説明する。実施の形態および各実施例の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。実施の形態および各実施例の説明において、同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0016】
(ハードディスクドライブ30)
図1を参照して、まず、情報記録装置の一例であるハードディスクドライブ30について説明する。
図1は、ハードディスクドライブ30を示す斜視図である。ハードディスクドライブ30は、情報記録媒体10を備える。情報記録媒体10は、実施の形態におけるHDD用ガラス基板(以下、単にガラス基板ともいう)の製造方法によって製造されたガラス基板1を用いて、作製される。
【0017】
具体的には、ハードディスクドライブ30は、情報記録媒体10、筐体20、ヘッドスライダー21、サスペンション22、アーム23、垂直軸24、ボイスコイル25、ボイスコイルモーター26、クランプ部材27、および固定ネジ28を備える。筐体20の上面上には、スピンドルモーター(図示せず)が設置される。
【0018】
ガラス基板1に磁性体を塗布して形成された磁気ディスクなどの情報記録媒体10は、クランプ部材27および固定ネジ28によって、上記のスピンドルモーターに回転可能に固定される。情報記録媒体10は、このスピンドルモーターによって、たとえば数千rpmの回転数で回転駆動される。情報記録媒体10は、ガラス基板1に磁気記録層が形成されることによって製造される。
【0019】
アーム23は、垂直軸24回りに揺動可能に取り付けられる。アーム23の先端には、板バネ(片持ち梁)状に形成されたサスペンション22が取り付けられる。サスペンション22の先端には、ヘッドスライダー21が情報記録媒体10を挟み込むように取り付けられる。
【0020】
アーム23のヘッドスライダー21とは反対側には、ボイスコイル25が取り付けられる。ボイスコイル25は、筐体20上に設けられたマグネット(図示せず)によって挟持される。ボイスコイル25およびこのマグネットにより、ボイスコイルモーター26が構成される。
【0021】
ボイスコイル25には所定の電流が供給される。アーム23は、ボイスコイル25に流れる電流と上記マグネットの磁場とにより発生する電磁力の作用によって、垂直軸24回りに揺動する。アーム23の揺動によって、サスペンション22およびヘッドスライダー21も矢印AR1方向に揺動する。ヘッドスライダー21は、情報記録媒体10の表面上および裏面上を、情報記録媒体10の半径方向に往復移動する。ヘッドスライダー21に設けられた磁気ヘッド(図示せず)はシーク動作を行なう。
【0022】
当該シーク動作が行なわれる一方で、ヘッドスライダー21は、情報記録媒体10の回転に伴って発生する空気流により、浮揚力を受ける。当該浮揚力とサスペンション22の弾性力(押圧力)とのバランスによって、ヘッドスライダー21は情報記録媒体10の表面に対して一定の浮上量で走行する。当該走行によって、ヘッドスライダー21に設けられた磁気ヘッドは、情報記録媒体10内の所定のトラックに対して情報(データ)の記録および再生を行なうことが可能となる。ガラス基板1が情報記録媒体10を構成する部材の一部として搭載されるハードディスクドライブ30は、以上のように構成される。
【0023】
ヘッドスライダー21に設けられる磁気ヘッドが情報記録媒体10の表面に対して浮上する浮上量は、フライングハイトと呼称される。本実施の形態のハードディスクドライブ30では、フライングハイトは3nm以下である。すなわち、情報記録媒体10の回転時における、情報記録媒体10の厚み方向の情報記録媒体10と磁気ヘッドとの間隔は、3nm以下である。
【0024】
このようにフライングハイトが小さい場合、リード/ライトエラーまたはヘッドクラッシュなどの問題の発生を回避するために、ガラス基板1には高度の表面平滑性が要求される。そこで、本実施の形態のガラス基板1は、後述する製造方法により製造される。これにより、従来と比較してガラス基板1の表面の異物を一層抑制でき、ハードディスクドライブ30のリード/ライト特性を向上させて記録密度を向上させることが可能になっている。
【0025】
(ガラス基板1)
図2は、本実施の形態に基づくHDD用ガラス基板の製造方法によって製造されるガラス基板1を示す平面図である。
図3は、
図2中のIII−III線に沿った矢視断面図である。
【0026】
図2および
図3に示すように、情報記録媒体10にその一部として用いられるガラス基板1(HDD用ガラス基板)は、主表面2、主表面3、内周端面4、孔5、および外周端面6を有し、全体として円盤状に形成される。孔5は、一方の主表面2から他方の主表面3に向かって、ガラス基板1を貫通するように設けられる。主表面2と内周端面4との間、および、主表面3と内周端面4との間には、面取部7がそれぞれ形成される。主表面2と外周端面6との間、および、主表面3と外周端面6との間には、面取部8(チャンファー部)が形成される。
【0027】
ガラス基板1の大きさは特に限定されず、たとえば3.5インチ、2.5インチ、1.8インチ、またはそれ以下の小径ディスクであってもよい。ガラス基板1の厚さは、2mm、1mm、0.8mm、0.635mm、またはそれ以下の薄型であってもよい。なおガラス基板1の厚さとは、ガラス基板1上の点対象となる任意の複数の点で測定した厚さの値の平均によって算出される値である。
【0028】
(ガラス基板の製造方法)
次に、本実施の形態におけるガラス基板1(HDD用ガラス基板)の製造方法について説明する。
図4は、実施の形態におけるHDD用ガラス基板の製造方法の各工程を示すフローチャートである。
図4に示すように、本実施の形態のHDD用ガラス基板1の製造方法は、ガラス溶融工程(S10)、成形工程(S20)、研削・研磨工程(S30)、洗浄工程(S40)および成膜工程(S50)を備える。
【0029】
まず、ガラス溶融工程(S10)において、ガラス基板1の原料であるガラス原料が、1300〜1550℃、たとえば1400℃に加熱された溶融炉に投入されて溶融され、さらに清澄および撹拌均質化が行なわれる。次に、成形工程(S20)において、溶融ガラスが予め加熱された鋳型に鋳込まれ、徐冷してガラスブロックとされる。続いて、ガラス転移点付近の温度で1〜3時間保持された後に、徐冷して歪み取りが行なわれる。得られたガラスブロックは、円盤形状にスライスされて、内周および外周を同心円としてコアドリルを用いて切り出される。または、溶融ガラスをプレス成形して円盤状に成形されてもよい。
【0030】
このようにして得られた円盤状のガラス基板は、次に研削・研磨工程(S30)において、所定の形状まで研削され、その後表面平滑化のため粗研磨および精密研磨される。粗研磨の前、粗研磨と精密研磨との間、または精密研磨の後に、ガラス基板を硝酸カリウム(50wt%)と硝酸ナトリウム(50wt%)との混合溶液に浸漬させ、化学強化を行なってもよい。化学強化層は、いずれかの研磨過程においてガラス基板の主表面から除去されてもよいが、この場合でもガラス基板の内周側および外周側端面には引続き化学強化層が残存する。
【0031】
その後ガラス基板は、洗浄工程(S40)において、水、酸およびアルカリの少なくとも1つの液で洗浄されて、最終的なHDD用ガラス基板とされる。さらに成膜工程(S50)において、洗浄処理が完了したガラス素板の両主表面(またはいずれか一方の主表面)に対し、磁気記録層が形成される。磁気記録層は、たとえば、Cr合金からなる密着層、CoFeZr合金からなる軟磁性層、Ruからなる配向制御下地層、CoCrPt合金からなる垂直磁気記録層、C系からなる保護層、およびF系からなる潤滑層が順次成膜されることによって、形成される。磁気記録層の形成によって、
図1に示す情報記録媒体10が得られる。
【0032】
(ガラス溶融工程の詳細)
図5は、
図4中に示すガラス溶融工程(S10)の詳細を示すフローチャートである。本実施の形態における、ガラス原料を溶融するためのガラス溶融工程(S10)では、まず
図5に示すステップ(S11)において、溶融炉を加熱する。
【0033】
ステップ(S11)と並行して、ステップ(S12)においてガラス原料を準備する。ステップ(S12)で準備されるガラス原料200は、ガラス基板1を構成する各成分の原料として各々相当する酸化物、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物などが所望の割合に秤量され粉末で充分に混合された調合原料であってもよい。またはガラス材料は、調合原料が一旦融かされ板状に形成された後に、取り扱い容易な大きさに割られたガラスカレットであってもよい。続いてステップ(S13)においてガラス原料を加熱する。
【0034】
加熱されたガラス原料は、ステップ(S14)において溶融炉内に投入され、さらにステップ(S15)において溶融炉内でガラス原料が溶融される。
【0035】
図6は、溶融炉100の断面図である。溶融炉100は、1000℃以上の高温下において化学的安定性を持つ白金または白金合金により形成される。溶融炉100は、白金を含む原料により形成されている。白金合金は、たとえば酸化物分散強化白金、Pt−Rh合金などであってもよい。溶融炉100の内部に、ガラス融液を撹拌するための撹拌子が配置されてもよい。
【0036】
溶融炉100には、図示しない加熱部が設けられている。たとえば溶融炉100は、電気式のヒータが設けられた電気炉であってもよい。当該加熱部から伝達される熱を受けて、溶融炉100の内部のガラス融液110は、上述した通りたとえば1400℃に加熱されて液相の状態にある。ガラス融液110が貯留された溶融炉100内に、新たに溶融されるべきガラス原料200が投入される。投入されたガラス原料200が溶融炉100内で加熱され、ガラス原料200は融解してガラス融液110になる。
【0037】
溶融炉100に投入されるガラス原料200の温度が低く室温程度である場合、1000℃〜1500℃程度のガラス融液110とガラス原料200との温度差が大きいことになる。そのため、ガラス融液110にガラス原料200が投入されると、ガラス融液110の温度が大きく変動し、ガラス原料200の接触するガラス融液110の温度が低下する。ガラス融液110の温度変化に伴って、溶融炉100自身の温度も大きく変動する。熱応力の作用により白金が伸縮を繰り返すと、溶融炉100の内面にシワや変形が発生し、熱伸縮を繰り返す部分より白金の剥離が生じると考えられている。
【0038】
さらに、ガラス融液110と大気との界面、特に、エネルギー的に不安定であるガラス融液110と溶融炉100と大気との界面において、酸化白金が蒸発し、酸化白金の蒸気が溶融炉100の上方で凝縮し、その後落下してガラス融液110中で還元されて白金コロイドになると考えられている。
【0039】
溶融炉100の内表面から剥離した白金、または、白金コロイドとなった白金が、ガラス融液110に混入すると、ガラス融液110を凝固させて得られるガラス基板1中への白金の混入(白金インクルージョン)が発生する。ガラス基板1に混入した白金はガラス基板1の表面の異物となり表面平滑性を悪化させる原因となるので、白金インクルージョンの抑制が重要視されている。
【0040】
そのため、本実施の形態では、溶融炉100にガラス原料200を投入するステップ(S14)より前のステップ(S13)において、ガラス原料200に予め熱が加えられる。ガラス融液110の温度変動を十分に抑制するために、ガラス原料200は、100℃以上の温度に加熱されてから溶融炉100に投入される。望ましくは、ガラス原料200は予め300℃以上にまで加熱される。より望ましくは、溶融炉100に投入される前に溶融されたガラス原料200が、溶融炉100に投入される。
【0041】
このようにすれば、ガラス原料200を溶融炉100に投入した際のガラス融液110の温度変動を抑制できるので、溶融炉100自体の温度変化を抑制できる。その結果、溶融炉100に温度変動が発生して溶融炉100が熱伸縮することを抑制でき、溶融炉100の内面からの白金が剥離してガラス融液110中に融け出すことを抑制できる。したがって、ガラス融液110への白金の混入が抑制され、ガラス基板1での白金インクルージョンの発生を抑制することができる。具体的には、ガラス原料200を100℃以上の温度に加熱した後に溶融炉100に投入することで、ガラス基板1の成形後において球換算粒子径が1μm以上の白金がガラス中へ混入する個数を、ガラス3cc当たり1個以下に抑えることができる。
【0042】
本実施の形態の、ガラス原料200を加熱してから溶融炉100に投入するガラス基板1の製造方法は、熱アシスト記録方式のHDD用のガラス基板1の製造に用いられると、さらに効果的である。熱アシスト記録向けのガラス基板1では成膜時に高温アニール処理が必要になるため、耐熱性の高いガラスが要求される。耐熱性の高いガラスでは、ガラスが液体としての挙動を示すために一層の高温を必要とするので、ガラス溶融工程においても高温加熱が必要になる。そのため、本実施の形態の製造方法は、耐熱性の高いガラスにおいて、さらに有効な製造方法となる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
<実施例1−5および比較例>
ガラス原料200としてガラスカレットを準備し、ガラスカレットを加熱した。実施例1−5では、ガラスカレットをそれぞれ、100℃、300℃、500℃、700℃、1000℃に加熱した。一方、比較例では、ガラスカレットを加熱せず25℃の室温のままとした。その後、ガラスカレットを、溶融炉100へ投入し溶融させた。溶融炉100としては白金炉を使用し、各実施例および比較例に対してそれぞれ新品の溶融炉100を準備した。溶融炉の温度は1400℃とした。
【0045】
溶融したガラスを、清澄槽で泡抜きし、撹拌槽で脈理の低減のために均一化し、その後ノズルから送出させ、ガラスが一定量となったところで切断刃(ブレード)で切断することによりガラスゴブを得た。溶融炉100へのガラスカレットの投入開始時点より6時間ごとにサンプリングしたガラスから、合計10個のガラスゴブを作製した。得られたガラスゴブを研磨し、ガラス3cc中に含まれる球換算粒子径が1μm以上の白金の個数を光学顕微鏡で確認する検査を行なった。
【0046】
さらに、上記検査を行なったガラスゴブと同時刻に作製されたガラスゴブをプレス成形することによりガラスブランクスを作製し、ガラスブランクスを研削、研磨加工することでガラス基板1を製造した。そのガラス基板1の主表面2,3に磁気記録層を形成した情報記録媒体10を、磁気ヘッドと情報記録媒体10との距離が3nmであるハードディスクドライブ30に搭載し、10分間動作させた際の読取りエラー回数の確認を行なった。エラー発生後は、発生箇所について走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて欠陥解析を行ない、白金起因のエラーの発生数をカウントした。
【0047】
図7は、実施例1−5および比較例の実験条件および実験結果を示す図である。
図7に示すように、ガラスカレットを加熱せず室温のまま溶融炉100に投入した比較例では、ガラスゴブを検査した結果、10個のサンプルの全てにおいて、球換算粒子径が1μm以上の白金がガラス3cc当たり2個以上混入していた。一方、ガラスカレットを100℃以上に加熱した実施例1−5ではいずれも、球換算粒子径が1μm以上の白金がガラス中へ混入する個数は、ガラス3cc当たり1個以下であった。ガラスカレットを300℃以上に加熱した実施例2−5では、ガラス3cc中に、球換算粒子径が1μm以上の白金は観察されず、特に良好であった。
【0048】
ハードディスクドライブ30の白金起因の読取りエラーの発生回数に関しては、比較例では10個のサンプルの全てにおいて白金起因の読取りエラーが発生した。一方、実施例1−5では、10個のサンプルにおいて、白金起因の読取りエラーは発生せず良好であった。
【0049】
図7に示す結果から、溶融炉100に投入する前のガラス原料を100℃以上に加熱することにより、白金がガラス中へ混入する個数を1個以下に抑制できることが明らかになった。その結果として、ハードディスクドライブ30に用いられる情報記録媒体10の表面の異物を低減でき、白金起因のエラーの発生数を低減でき、したがって情報記録媒体10の記録密度をより大きくできることが明らかになった。
【0050】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。