特許第6000355号(P6000355)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6000355ガラス質材料からなる平面基板の構造化方法及び光学素子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000355
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】ガラス質材料からなる平面基板の構造化方法及び光学素子
(51)【国際特許分類】
   C03B 23/02 20060101AFI20160915BHJP
   C03C 27/02 20060101ALI20160915BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20160915BHJP
   H01S 5/022 20060101ALI20160915BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   C03B23/02
   C03C27/02 Z
   H01L31/02 D
   H01S5/022
   G02B3/00 Z
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-525340(P2014-525340)
(86)(22)【出願日】2012年8月2日
(65)【公表番号】特表2014-529564(P2014-529564A)
(43)【公表日】2014年11月13日
(86)【国際出願番号】EP2012003332
(87)【国際公開番号】WO2013023750
(87)【国際公開日】20130221
【審査請求日】2015年7月15日
(31)【優先権主張番号】102011110166.0
(32)【優先日】2011年8月12日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500242786
【氏名又は名称】フラウンホファー ゲセルシャフト ツール フェールデルンク ダー アンゲヴァンテン フォルシュンク エー.ファオ.
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100187481
【弁理士】
【氏名又は名称】小原 淳史
(74)【代理人】
【識別番号】100125508
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 愛
(72)【発明者】
【氏名】マレンコ,ノルマン
(72)【発明者】
【氏名】クエンツァー,ハンス−ヨアヒム
【審査官】 岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−521270(JP,A)
【文献】 特表2003−514756(JP,A)
【文献】 特開昭61−040828(JP,A)
【文献】 特開2007−131475(JP,A)
【文献】 特開2008−218772(JP,A)
【文献】 特開2009−200064(JP,A)
【文献】 特表2007−516602(JP,A)
【文献】 特開2007−182372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 23/00−23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス質材料からなる平面基板(1)(以下、ガラス質平面基板)の粘性流動プロセスを介した構造化方法であって、前記ガラス質平面基板(1)を、表面(2’)にある周縁部(3’)によって画定された少なくとも1つの窪み(3)を有する別の平面基板(2)の表面(2’)上に接合し、それに続く熱処理プロセスを介して粘性流動可能な状態に変え、前記ガラス質平面基板(1)の粘性流動可能なガラス質材料の少なくとも一部が前記周縁部(3’)を経由して前記別の平面基板(2)の窪み(3)へと流入する前記構造化方法において、以下のプロセスステップ:
− 少なくとも1つの窪み(3)中に少なくとも1つの濡れ面(4)が存在するように前記別の平面基板(2)を用意するプロセスステップであって、前記濡れ面(4)は、前記別の平面基板(2)の表面(2’)に対して下方にあり、かつ少なくとも部分的に線状縁部によって画定されており、前記線状縁部は、同時に前記濡れ面(4)に対して下方にあり窪み(3)の内側に設けられた溝構造(10)の一つの縁部(3*)でもあるプロセスステップと、
− 前記熱処理プロセスを、前記ガラス質平面基板(1)の流動可能なガラス質材料が、前記濡れ面(4)と、前記線状縁部に沿って濡れ先頭部(B)が形成されるように接触されるように実施するプロセスステップと、
− 前記熱処理プロセスを、濡れ先頭部(B)と前記周縁部(3’)との間で別の平面基板(2)と接触せずに延びている、窪み(3)の部分領域とともに空隙(K)を取り囲むガラス質材料の表面(5)が形成された後に終了させるプロセスステップと、
を特徴とする、前記構造化方法。
【請求項2】
ガラス質材料からなる平面基板(1)(以下、ガラス質平面基板)の粘性流動プロセスを介した構造化方法であって、前記ガラス質平面基板(1)を、表面(2’)にある周縁部(3’)によって画定された少なくとも1つの窪み(3)を有する別の平面基板(2)の表面(2’)上に接合し、それに続く熱処理プロセスを介して粘性流動可能な状態に変え、前記ガラス質平面基板(1)の流動可能なガラス質材料の少なくとも一部が前記周縁部(3’)を経由して前記別の平面基板(2)の窪み(3)へと流入する前記構造化方法において、以下のプロセスステップ:
− 少なくとも1つの窪み(3)中に少なくとも1つの濡れ面(4)が存在するように前記別の平面基板(2)を用意するプロセスステップであって、前記濡れ面(4)は、前記別の平面基板(2)の表面(2’)に対して下方にあり、かつ少なくとも部分的に線状縁部によって画定されており、前記線状縁部は、前記濡れ面(4)に帰属できる、前記流動可能なガラス質材料についての濡れ特性の不連続な変化によって決められているプロセスステップと、
− 前記熱処理プロセスを、前記ガラス質平面基板(1)の流動可能なガラス質材料が、前記濡れ面(4)と、前記線状縁部に沿って濡れ先頭部(B)が形成されるように接触されるように実施するプロセスステップと、
− 前記熱処理プロセスを、濡れ先頭部(B)と前記周縁部(3’)との間で別の平面基板(2)と接触せずに延びている、窪み(3)の部分領域とともに空隙(K)を取り囲むガラス質材料の表面(5)が形成された後に終了させるプロセスステップと、
を特徴とし、前記濡れ面(4)の濡れ特性は、表面変性によって選定され、それにより、その濡れ面(4)が前記流動可能なガラス質材料で濡れるときに、動的に拡がる濡れ先頭部(B)を形成し、前記先頭部(B)が、表面変性されていない表面上より速やかに拡がることを特徴とする、前記構造化方法。
【請求項3】
ガラス質材料からなる平面基板(1)(以下、ガラス質平面基板)の粘性流動プロセスを介した構造化方法であって、前記ガラス質平面基板(1)を、表面(2’)にある周縁部(3’)によって画定された少なくとも1つの窪み(3)を有する別の平面基板(2)の表面(2’)上に接合し、それに続く熱処理プロセスを介して粘性流動可能な状態に変え、前記ガラス質平面基板(1)の流動可能なガラス質材料の少なくとも一部が前記周縁部(3’)を経由して前記別の平面基板(2)の窪み(3)へと流入する前記構造化方法において、以下のプロセスステップ:
− 少なくとも1つの窪み(3)中に少なくとも1つの濡れ面(4)が存在するように前記別の平面基板(2)を用意するプロセスステップであって、前記濡れ面(4)は、前記別の平面基板(2)の表面(2’)に対して下方にあり、かつ少なくとも部分的に線状縁部によって画定されており、前記線状縁部は、同時に前記濡れ面(4)に対して下方にあり窪み(3)の内側に設けられた溝構造(10)の一つの縁部(3*)でもあり、かつ前記濡れ面(4)に帰属できる、前記流動可能なガラス質材料についての濡れ特性の不連続な変化によって決められているプロセスステップと、
− 前記熱処理プロセスを、前記ガラス質平面基板(1)の流動可能なガラス質材料が、前記濡れ面(4)と、前記線状縁部に沿って濡れ先頭部(B)が形成されるように接触されるように実施するプロセスステップと、
− 前記熱処理プロセスを、濡れ先頭部(B)と前記周縁部(3’)との間で別の平面基板(2)と接触せずに延びている、窪み(3)の部分領域とともに空隙(K)を取り囲むガラス質材料の表面(5)が形成された後に終了させるプロセスステップと、
を特徴とし、前記濡れ面(4)の濡れ特性は、表面変性によって選定され、それにより、その濡れ面(4)が前記流動可能なガラス質材料で濡れるときに、動的に拡がる濡れ先頭部(B)を形成し、前記先頭部(B)が、表面変性されていない表面上より速やかに拡がることを特徴とする、前記構造化方法。
【請求項4】
前記ガラス質平面基板(1)の、前記別の平面基板(2)の表面(2’)上への接合は、陽極接合又は直接接合(融着)によって行われることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記ガラス質平面基板(1)は、少なくとも1つの窪み(3)を気密に閉じることで、閉じた空隙(K)が形成されることと、
前記ガラス質平面基板(1)の接合は、設定可能なプロセス圧を有するガス雰囲気の存在下で行われ、こうして前記接合直後に、形成された空隙(K)の内側に前記ガス雰囲気の一部が閉じ込められることと
を特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記熱処理の間に、プロセス圧を制御して変化させることにより、前記濡れ先頭部(B)と前記周縁部(3’)との間で前記別の平面基板(2)に接触せずに延びている、前記ガラス質材料の表面(5)の形状に影響が及ぼされることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記濡れ先頭部(B)と前記周縁部(3’)との間で前記別の平面基板(2)に接触せずに延びている、前記ガラス質材料の表面(5)は、プロセス圧の低減によって凹型に変形し、かつプロセス圧を高めた場合に凸型に変形することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記熱処理操作を少なくとも一回中断し、前記少なくとも1つの空隙(K)への開放通路を作製し、かつ前記熱処理操作を続けることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記熱処理操作を少なくとももう一度中断し、前記少なくとも1つの開放通路を閉じ、かつ前記熱処理操作を続けることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記熱処理プロセスの終了後に、前記ガラス質平面基板(1)と前記別の平面基板(2)とを形状を保って分離することで、前記ガラス質平面基板(1)の構造化された表面が得られ、かつ前記ガラス質平面基板(1)の構造化された表面を複製型として使用することを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記熱処理プロセスの終了後に、前記ガラス質平面基板(1)と前記別の平面基板(2)とを完全に又は部分領域で形状を保って分離することで、前記ガラス質平面基板(1)の構造化された表面を得ることと、
少なくとも、前記濡れ先頭部(B)の間で又は本来前記濡れ先頭部(B)と前記周縁部(3’)との間で前記別の平面基板(2)に接触せずに延びている、前記ガラス質材料の表面(5)を、光学エレメントの光学作用表面として使用することと、
を特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記別の平面基板(2)が、前記ガラス質平面基板(1)より高い溶融温度を有する材料からなることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
別の平面基板(2)として、半導体基板又はセラミック基板を使用することを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
求項1〜9のいずれかに記載の方法で間接的に又は直接的に製造された光学作用面(5)を使用して光学素子を製造する方法であって、前記光学作用面(5)は、前記濡れ先頭部(B)と前記周縁部(3’)との間で別の平面基板(2)に接触せずに延びている、前記ガラス質材料の表面(5)又はこの表面の複製型に相当する、方法
【請求項15】
前記のガラス質材料からなる構造化された平面基板(1)は、構造化された表面と、この表面の反対側にある前記平面基板面と一致する平坦な表面とを有することと、
前記の平坦な表面上に間接的に又は直接的に光源(9)が配置されており、前記光源は光を前記平坦な表面を経由して前記のガラス質材料からなる構造化された平面基板(1)中に、その光(L)が前記ガラス質材料からなる平面基板(1)内の光学作用面(5)で向きを変えられるように伝送することと、
を特徴とする、請求項14に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス質材料からなる平面基板の粘性流動プロセスを介した構造化方法であって、ガラス質平面基板を、表面にある周縁部によって画定された少なくとも1つの窪みを有する平面基板の、好ましくは半導体平面基板の表面上に接合し、それに続く熱処理プロセスを介して粘性流動可能な状態に変え、平面基板の流動可能なガラス質材料の少なくとも一部が周縁部上から平面基板の窪みへと流入する構造化方法に関する。前記方法によって製造可能な光学素子がさらに記載される。
【背景技術】
【0002】
シリコン技術又はウェハ加工によって光学部品を製造する加工方法は、光学システム又はマイクロ光学電気機械システム(略してMOEMS)の形成の小型化を可能にし、後者は光学部品を、いわゆる「ウェハレベルパッケージ(WLP)」でのパッケージ部品の構成要素として備える。それに加えて、かかる方法は、何百ないし何千の部品を1つのウェハ上で並行して加工できるため、コスト削減の大きな可能性を有している。とりわけその加工法は、方法に応じて機械的に非常に精密な接合メカニズムを含むので、光学部品とこの部品を支持するマイクロメカニカル固定構造とを接合するにあたり、いかなる接合工具も調節補助具もさらに省くことができる。
【0003】
これに関連する加工方法は、例えば(特許文献1)に記載されており、その方法は、光学的表面の製造のためにガラスの粘性流動を基礎としている。このために、第一の種類のガラスからなる第一のウェハと、シリコンからなるか又はより高融点の第二の種類のガラスからなる第二のウェハとは、例えば陽極接合又は直接接合(融着)によって互いに結合される。第二のウェハは、その両側の平坦な表面の一方に、三次元的に形作られた表面プロファイルを定める窪みを有し、そのプロファイルは窪みによって片側が開放した状態で構造化された空隙を含めている。平坦な表面領域が接合により第一のウェハと固着される間に、第一のウェハのガラス材料が、例えば700〜800℃の熱処理プロセスで十分に低い粘性に達すると直ちに、空隙はこのガラス材料の自由流動を可能にする。構造化された第二のウェハの空隙中へのガラスの自由流動の間に、第一のウェハの表面の形状はおおかたガラスの表面張力によって決まる。こうして深く構造化された空隙と炉室内雰囲気との間の圧力差に応じて、空隙に対向する第一のウェハの表面に凹型構造又は凸型構造が形成される。
【0004】
ガラス流動プロセスは、さらなる要因によって、例えば空隙へと流入する粘性のガラス材料の流頭の幾何学的形状と、ガラス材料の輸送により押しのけられるガス容量などによってさらに影響される。その流動プロセスは、内圧と周囲圧との間で平衡に至ると直ちに、事前に排気されていた場合に空隙が完全に充填されるか、又はガラス材料の粘度がもはや流動に足るものではなくなると停止する。後者の場合は、ガラスの加工において、一般的に、プロセス温度が臨界温度値を下回った場合のことである。
【0005】
ガラスの使用の他に、前述の粘性流動法を介した光学部品の製造のために透明ポリマーを使用することもできる。ポリマーを適切に選択することによって、その粘度は、このように流動停止に至らしめるために、例えば光誘導型の化学的硬化によっても制御しながら下げることができる。
【0006】
粘性流動法のこれまで公知の変法においては、形成される光学部品の原型を規定するために二次元構造面を使用し、その一方で、その高さプロファイルが該プロセスの実施により得られる。例えば、球面プロファイルを有する光学レンズは、このようにして良好に製造できる。何故なら、球形は円形の原型と応力平衡状態にある表面とから得られるからである。動的流動を加えることによって、いわゆる非球面補正、すなわち球形の原型の円錐成分又は双曲線成分を重ね合わせることもできる。
【0007】
粘性流動法は、従って、自由に成形可能な光学表面を有する光学素子の製造のために、又は例えばエンボシング技術による型取りに用いられる特に平坦な自由付形面の製造のためにとりわけ特に有利である。何故なら、表面の機械的研磨又は後加工が必要ないからである。そのプロセスの既知の利用は、従って、上述のように第一のウェハの型取りのための第二のウェハとして使用できるより高融点のガラスからなる複製型の製造でもある。しかし利用者は、自由粘性流動による三次元構造の成形のためには、表面濡れと表面張力の物理的効果しか利用できない。
【0008】
(特許文献2)からは、前述の光学レンズの後処理方法であって、レンズとガラス質平面基板との間の遷移領域の楕円形の過度の勾配を、成形工具の支援による熱的な後処理工程によって取り除くことができる方法を見出すことができる。
【0009】
それに対して問題点は、鏡面として又は光学プリズムとして使用できる広範囲に任意に傾いた平坦な表面の製造である。また、任意の輪郭に沿って傾いた、例えば等角又は斜角の平行平面のピラミッドセグメントの形の表面の製造は、今までの粘性流動法では不可能である。
【0010】
むしろ、前記の構造の作製のための公知の製造方法は、レンズのブランクプレスなどの複製方法を基礎としている。このガラスの型取り技術では、高い加工温度に基づき、高い温度と圧力に耐え得る型構造用の材料のみが考慮の対象となり得る。それにもかかわらず、かかる方法は、小さい工作物の複製のみを可能とし、全ウェハの複製は可能ではない。ウェハ技術の分野では、サブトラクティブ法として、ほぼ光学的品質を有する微細構造表面を作製するために高精度のデジタル装置を用いたダイヤモンド切削法が使用される。超音波加工及びレーザ直接構造化は、このためのさらなる選択肢である。化学的後処理を用いることにより、表面をおおむね十分な光学的品質にまで平滑化できる。高さプロファイルの構造化を可能にする化学的エッチング技術がさらに存在する。蒸着などのアディティブ法は、何マイクロメートルもの高さプロファイルのためにはむしろまれにしか考慮されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】欧州特許第1606223号明細書
【特許文献2】欧州特許第1572594号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、ガラス質材料からなる平面基板の粘性流動プロセスを介した構造化方法であって、ガラス質平面基板を、表面にある周縁部によって画定された少なくとも1つの窪みを有する平面基板の表面上に接合し、それに続く熱処理プロセスを介して粘性流動可能な状態に変え、平面基板の粘性流動可能なガラス質材料の少なくとも一部が周縁部上から平面基板の窪みへと流入する構造化方法を、ガラス質材料からなる広範囲に任意に傾いた平坦な表面を継続的に形成できるように具体化することである。この平坦な表面に必要に応じてポジティブな又はネガティブな湾曲を設けられることがさらに望ましい。解決手段による方法によって、高い程度の光集積度を有する光学素子を製造できることがさらに望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の基礎をなす課題の解決は請求項1に示されている。解決手段により形成される光学素子は、請求項13の対象である。発明思想を有利に具体化する特徴は、従属形式請求項及びとりわけ例示的実施形態に関するさらなる記載の対象から見出すことができる。
【0014】
解決手段によれば、請求項1の前提部の特徴による粘性流動プロセスを介したガラス質材料からなる平面基板の構造化方法は、平面基板の少なくとも1つの窪みが、平面基板の表面に対して下方にあり、かつ少なくとも部分的に線状縁部によって画定されている少なくとも1つの濡れ面を有し、その線状縁部が、同時に濡れ面に対して下方にあり窪みの内側に設けられた溝構造の一つの縁部でもあり、及び/又は濡れ面に帰属できる流動可能なガラス質材料についての濡れ特性の不連続な変化によって決められている平面基板を提供することによって形成される。熱処理プロセスの間に、流動可能なガラス質材料は、線状縁部に沿って形状安定な濡れ先頭部(Benetzungsfront)が形成されるように濡れ面と接触され、その際、熱処理プロセスは、濡れ先頭部と周縁部との間で平面基板と接触せずに延びている、窪みの部分領域とともに空隙を取り囲むガラス質材料の表面が形成されたら終了させる。
【0015】
平面基板としては、一方で半導体材料がガラスよりも高い溶融温度を有し(これは、使用される平面基板のための必須の前提条件である)、他方で半導体材料は半導体技術で公知の構造化方法の使用を可能にするので特に、半導体平面基板、例えばシリコンにさらに由来する。しかしもちろん、ガラスと比較してより高融点の他の材料を、例えばセラミックス又は選択された金属若しくは金属合金類を使用することもできる。
【0016】
本発明の基礎をなす着想は、粘性流動可能なガラス質材料と、表面構造化された半導体平面基板の窪み内に存在する濡れ面との制御された形の接触を見込むものである。濡れ面は、半導体平面基板の表面に対して下方にあり、かつ横方向の面の拡がりにおいて線状の幾何学的及び/又は仮想的な面縁部によって画定されており、その縁部は同時に粘性流動するガラス素材のための流動境界としても用いられる。
【0017】
流動操作の間に、平面基板の軟化した粘性流動可能なガラス材料は、半導体平面基板の表面にある窪みを画定する周縁部上から窪み中に拡がり、そこに設けられた濡れ面との接触に至り、その際、ガラス材料の接触領域と、半導体基板の窪みを画定する側壁との間で、半導体基板に接触せずに延びている、ガラス質材料の表面が形成され、その表面は、一方で半導体基板の表面にある窪みの周縁部によって、かつ他方で濡れ面上に形成される濡れ先頭部によって画定される。
【0018】
さらなる流動プロセスを介して濡れ面縁部の方向に拡がる、濡れ面と接触している粘性流動可能なガラスの濡れ先頭部は、濡れ縁部に達したときに濡れ面の面内のさらなる横方向の拡がりを妨げられる。従って、線状の濡れ面縁部の幾何学的な形成によって、周縁部と濡れ縁部との間で半導体基板と接触せずに形成するガラス質材料の表面の形状と寸法が決まる。例えば周縁部と濡れ面縁部の少なくとも区画が直線に形成されており、両方の縁部領域が互いに平行に走っている場合には、両方の縁部領域の間に平らに又は平坦に傾いた表面が形成される。
【0019】
濡れの停止として用いられる線状に形成された濡れ面にある縁部は、基本的に2通りの様式で実現できる。
【0020】
a)一方で、窪みの底部の局所的若しくは選択的な機械的及び/又は化学的な表面処理によって、粘性流動可能なガラスの濡れ特性は、その流動可能なガラスの濡れ先頭部が表面処理された底部領域で表面処理されていない他の底部領域におけるよりも速やかに拡がるように変化し得る。こうして製造された濡れ面は、従って表面処理がなされた窪みの底部の平面領域であり、かつその表面処理された周縁部で処理されていない底部領域とは単に仮想的な縁線によって画定されており、その線上で濡れ特性の不連続な遷移が観察されるべきである。特に好適な表面処理は、例えばシリコン平面基板上のSiO層の堆積が見込まれる。
【0021】
b)線状縁部によって囲まれた濡れ面の製造のためのもう一つの可能性は、濡れ面を少なくとも部分的に、好ましくは全面で取り囲む溝構造を設け、こうして幾何学的形状付与により線状縁部経路を作製することにあり、その経路で粘性流動可能なガラス材料の濡れ先頭部の横方向の拡がりが止められる。もちろん、2つの措置a)及びb)を、濡れ面の線状の横方向の境界の形成のために組み合わせることができる。
【0022】
濡れ面の線状縁部を超えて粘性ガラス質材料が制御不能にあふれ出ることを避けるために、流動操作は、濡れ先頭部が濡れ面の線状縁部に達したらプロセス温度を下げることによって終了させ、それにより粘度が高まり、流動性が低下する。
【0023】
濡れ面に沿った濡れ先頭部の拡がり挙動へは、熱処理操作が行われる炉室又は処理室内での圧力比の変更によって影響をさらに及ぼすことができる。
【0024】
好ましい一方法様式においては、熱処理工程の実施前に、ガラス質平面基板は、窪みが設けられた半導体平面基板の表面上に陽極接合又は直接接合(融着)によって気密に接合される。接合操作は、好ましくはガス雰囲気下で設定可能なプロセス圧又は周囲圧において行われ、その圧力は、半導体基板中に設けられた窪みをガラス質平面基板で閉じた後に、その際に形成される空隙内部で気密に保たれる。
【0025】
熱処理炉において行う熱処理プロセスの間に、粘性のガラス材料は空隙中に流入し、その際に空隙中に存在するガス容量を減らす。その際に、空隙内の減少するガス容量は、一方で空隙壁の領域と、他方で濡れ面の濡れ先頭部と半導体基板の表面に存在する周縁部との間で形成されるガラス質材料の自由表面とによって画定される。
【0026】
熱処理炉中を占めるプロセス圧を高めるか又は低めることによって、濡れ面に沿った濡れ先頭部の動的な進行に影響を及ぼすことができる。従って、例えばこのようにして濡れ面に沿った濡れ先頭部の横方向への進行は、炉室内のプロセス圧力が、空隙内に閉じ込められたガスの圧力が濡れ先頭部のさらなる横方向の拡がりに対抗するように調整されれば、完全に阻止することができる。
【0027】
解決手段による方法によって、まずは、平坦な非接触のガラス表面であって、広い範囲で調整可能なウェハ表面に対する傾きを有する、例えば10゜〜80゜の間の傾斜角を有する表面の製造が可能である。そのような平坦な非接触の表面は、2つの直線的で互いに平行に配向された縁部輪郭の間に形成され、そのうち一方は、濡れ面上でその縁部経路によって定められる粘性流動可能な材料の濡れ先頭部を表し、もう一方は半導体基板表面にある周縁部である。
【0028】
有利には、平坦なガラス表面の製造のためには、熱処理プロセスを中断し、空隙への開放通路を作製することが考えられる。例えば、このためには、半導体基板の裏側に、ガラス質平面基板で表側が閉じられた空隙への連絡通路がエッチング操作又は穿孔操作を介して作られる。引き続いての熱処理プロセスの経過において、連絡通路を通じて空隙内で、また熱処理炉内を占める圧力と同じプロセス圧力に調整される。その結果、湾曲した表面形状と比較してごく僅かな表面張力しか有していない平坦な表面が自発的に形成される。
【0029】
また、もう一度、熱処理プロセスを中断して、例えば連絡通路を閉じて、引き続き改めて続行することもさらに可能である。
【0030】
プロセス圧が熱処理操作の間に制御してさらに変更される場合には、このようにして、濡れ先頭部と周縁部との間で半導体基板に接触せずに延びている、ガラス質材料の表面の形状付与に、影響がさらに及び得る。濡れ先頭部と周縁部との間で平坦に延びている、ガラス質材料の表面の状態から出発して熱処理炉内のプロセス圧が低減される場合には、ガラス質材料の形成される非接触の表面は凹型をとる。プロセス圧がそれに対して制御して高められる場合に、非接触の凸型の自由表面、すなわち非接触のガラス質材料の表面が形成される。
【0031】
下方の濡れ先頭部の縁部経路も上方の周縁部の縁部経路も直線平行形から外れた形状で、例えば放物線形又は円形で構成されることによって、ガラス質材料の非接触に形成される表面の幾何学的形成に対して、さらなる影響がさらに及び得る。このように、相応して異なる形の表面形状を作製できる。濡れ先頭部の幾何学的形成に関する変更可能性も周縁部の幾何学的形成に関する変更可能性も殆ど制限はなく、もっぱら希望通りに製造されるべき目標となる光学表面に従う。
【0032】
熱処理操作の終了後に、半導体とガラス基板平面の複合物の場合による引き続いてのプロセシングは、解決手段により非接触に製造されるガラス質材料の表面の技術的使用目的に従う。以下の例示的実施形態に関するさらなる記載で示されるように、好ましい一実施の場合には、非接触に形成されたガラス質平面基板の表面は複製型として用いられる。このために、ガラス質平面基板は、半導体平面基板から熱処理プロセスの終了後に形状を保持したまま分離することが重要である。その分離操作は、例えば自体公知のエッチング技術によるか又は犠牲層を使用して行うことができ、その犠牲層は、ガラス質材料からなる平面基板と半導体平面基板の接触の前に両方の基板面の間に設けられている。
【0033】
さらなる一使用例には、解決手段により非接触に製造されるガラス質材料の表面は、光操作のための光学表面として光学エレメント内で用いられる。このためには、ガラス質平面基板と半導体平面基板との間の少なくとも部分領域を分離することが重要である。そのように形成された光学エレメントのための好ましい一実施形態は、半導体基板から完全に分離されたガラス質材料からなる平面基板であって、その片側が解決手段により構造化され、かつその反対側が平坦に形成されている基板が見込まれる。ガラス質材料からなる平面基板の平坦な表面上に間接的に又は直接的に光源が配置され、その光源は光を平坦な表面を経由して構造化されたガラス質材料からなる平面基板中に、その光が、ガラス質材料からなる平面基板内で光の向きを変える光学作用面で向きを変えられるように伝送する。
【0034】
ガラス質材料からなる構造化された平面基板の一部であって光軸を割り当てることができる少なくとも1つの光学作用面を有する解決手段による光学素子は、光軸が、その平面基板に割り当てることができる平面基板平面と0゜及び90゜ではない角度αを形成することを特徴とし、その際、その光学的作用を有する面は、非接触にガラス質材料から製造された表面の表面平滑性に相当する表面平滑性を有する。
【0035】
かかる光学素子は、とりわけ解決手段による方法で製造でき、とりわけウェハ平面上での高い集積能を特徴としている。ここで、このようにして、光学チップ、プリント基板、光ファイバーなどでの光導波路に結合するためのレーザ又はフォトダイオード用光学系を実現できる。
【0036】
本発明を、以下に一般的な発明思想を制限することなく、例示的実施形態をもとに図面を参照して例示的に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1a】ガラス質材料の表面の非接触製造のための解決手段による方法の説明のための連続図を示す。
図1b】ガラス質材料の表面の非接触製造のための解決手段による方法の説明のための連続図を示す。
図1c】ガラス質材料の表面の非接触製造のための解決手段による方法の説明のための連続図を示す。
図1d】ガラス質材料の表面の非接触製造のための解決手段による方法の説明のための連続図を示す。
図1e】ガラス質材料の表面の非接触製造のための解決手段による方法の説明のための連続図を示す。
図1f】ガラス質材料の表面の非接触製造のための解決手段による方法の説明のための連続図を示す。
図1g】表面構造の複製のためのプロセスステップを示す。
図1h】光学素子内における型取りされたガラス基板の使用を示す。
図2a】選択的な非接触に製造されたガラス質材料からなる表面の概説のための連続図を示す。
図2b】選択的な非接触に製造されたガラス質材料からなる表面の概説のための連続図を示す。
図2c】選択的な非接触に製造されたガラス質材料からなる表面の概説のための連続図を示す。
図2d】選択的な非接触に製造されたガラス質材料からなる表面の概説のための連続図を示す。
図2e】選択的な非接触に製造されたガラス質材料からなる表面の概説のための連続図を示す。
図2f】選択的な非接触に製造されたガラス質材料からなる表面の概説のための連続図を示す。
図2g】選択的な非接触に製造されたガラス質材料からなる表面の概説のための連続図を示す。
図2h】光学エレメントの側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1a〜図1fによる連続図においては、半導体平面基板2上に接合されているガラス質材料からなる平面基板1の横断面図がそれぞれ示されている。
【0039】
図1aにおいては、シリコンウェハとして形成される半導体平面基板2の横断面又は部分横断面が示されており、その表面2’には窪み3が設けられており、窪み3は、表面2’上に存在する周縁部3’によって取り囲まれている。窪み3は、好ましくは化学的エッチングプロセスを介して半導体平面基板2中に設けられている。窪み3は、示された例示的実施形態に示されるように、平坦な窪み底部3’’と窪み底部3’’を取り囲む側壁3’’’によって取り囲まれていると考えられる。
【0040】
その他に平坦に形成された窪み底部3’’に表面処理された領域4であって、濡れ面としてさらに用いられる領域がさらに設けられ、こうして流動可能なガラス質材料で濡れたときに、動的に拡がる濡れ先頭部が形成され、その濡れ先頭部は、濡れ面4に沿って、窪み底部3’’の表面処理されていない又は表面変性されていない表面領域上よりもより速やかに拡がる。好適な表面変性は、例えばSi平面基板上のSiOが見込まれる。
【0041】
濡れ面4は、線状縁部4’によって画定され、線状縁部4’で、濡れ面4に割り当て可能な流動可能なガラス質材料についての濡れ特性の不連続の変化が前述の意味において生ずる。
【0042】
半導体平面基板2の表面2’上で、ガラスからなる平面基板1が気密に、好ましくは陽極接合又は融着を介して接合され、このようにして窪み3をハーメチックに気密に閉じるため、窪み3は平面基板1と一緒にハーメチックに閉じた空隙Kを作り出す。
【0043】
図1bによるプロセスステップにおいては、前述のウェハ複合物は熱処理炉(図示せず)で加熱されるので、平面基板1のガラス又はガラス質材料は、空隙Kの領域へと粘性流動によって入り込む。粘性流動可能なガラス材料は、濡れ面4と接触して、濡れ面4に沿って横方向に拡がる濡れ先頭部を形成する。濡れ先頭部は、それが表面変性された濡れ面4の縁部4’に当たり、そこで濡れ先頭部が停止するまで、濡れ面4に沿ってガラス材料の連続的な後流れによって拡がる。これと時間を近くして、熱処理炉内のプロセス温度を下げ、それにより平面基板1のガラス材料の流動性は同様に低下される。これは、図1cによる連続図において概説されており、そこでは同時に非接触に形成される、平面基板1のガラス材料の表面5も見られる。その自由表面5は、窪み底部3’’に対しても、底部壁部3’’’に対しても間隔が空いており、接触することなく、垂れ下がった平面領域として、一方で濡れ面4の周縁部4’と他方で窪み3の周縁部3’との間で形成される。
【0044】
図1dにおいては、熱処理炉内の圧力比を減らすことによって、粘性のガラス材料の逆流を引き起こすことができ、それにより自由表面5の湾曲を、図1cとの比較で見て減らす方向で変更できることが例示されている。プロセス操作に応じて、熱的後処理及び熱処理炉内の圧力比の好適な調整によって、表面5の所定の表面湾曲を調整できる。ここで、例えば図1dによる狙い通りの凸形状、図1eによる平坦な表面形状及び図1fによる凹型の表面形状を作製することができる。
【0045】
表面5の所定の希望形が達成されたら、半導体平面基板2とガラス質平面基板1とからなる複合物を時間的にできるだけ速やかに熱処理炉から、より低い周囲温度を有する環境へと運ぶことが重要なので、軟化されたガラス材料の冷却は迅速に行われ、こうして表面形状は空間的に「凍結」する。普段は、基板複合物が、約800℃のプロセス温度が占めている熱処理炉から約500℃の温度の冷却領域へと運べば足りる。
【0046】
形成される非接触の表面5の形状及び寸法も、一方で濡れ面4の縁部形状4’と、周縁部3’の縁部形状によって影響を及ぼすことができる。両方の縁線(4’及び3’)の間の横方向の距離も、非接触に形成される表面5の幅へと関与をさらに示す。
【0047】
解決手段による方法の正確に再現できる実施可能性のためには、濡れ面に沿ったその画定縁部4’での幾何学的に正確に規定できる濡れの停止が決定的に重要である。
【0048】
図1fによるプロセス状態であって、ガラス質平面基板1が軽く凸型に成形された表面領域5を有する状態から始まって、さらなる示されていないプロセス工程において、半導体平面基板2は、エッチング法を介して平面基板1から取り除かれる。目下分離されて存在する片側が構造化された平面基板1は、後続の型取り操作のための複製型としてさらに用いられる。その結果は図1gに概説されている。図1fによる平面基板1上で、低温で溶融するガラスからなるさらなるガラスウェハ6は、真空条件下で平面基板1の構造化された上面に接合されていると考えられる。後続の熱処理プロセスを介して、ガラスウェハ6は、図1gに見られるように、平面基板1の表面形状へと輪郭に忠実に密着する。熱処理プロセスの実施に際して、複製型として用いられる平面基板1が形状安定のままとなるプロセス温度が選択されるので、その複製型は何度も使用できる。複製型として用いられる平面基板1を表面構造化されたガラスウェハ6から分離するために、表面構造化された平面基板1上に事前に設けられた層、例えばシリコン又はゲルマニウムからなる層が用いられ、その層は、最終的に、その場合にガラスウェハ6の表面構造も平面基板1の表面構造も損傷させずにエッチング除去することができる。
【0049】
図1hにおいて、前述の表面構造化されたガラスウェハ6を利用する光学素子の横断面図が示されている。解決手段により作製された高さプロファイルを有するガラスウェハ6は、その平坦に形成された表面上でシリコンウェハ7と接合される。好適に選択されたエッチング技術を用いて、シリコンウェハ7には、光学的に透過性の窓8が設けられている。光学的に透過性の窓8は、この場合に、解決手段により製造された平面基板1の表面5の輪郭に忠実な型取りによってもたらされる表面型5上にある。
【0050】
図1hに示されるガラスウェハ6は、表面5上で局所的に又は構造化された表面上で全面的に鏡面化される。シリコンウェハ7の表面上に発光体9、例えば垂直発光型のレーザダイオードがさらに乗っかっている。そのダイオードは、光学的に透過性の窓8に対して、発光体9から生ずる光線Lが軽く凹型に形成された鏡面化された表面5に当たるように配置されている。この表面上で、光線Lが側方へと向きを変えると同時に集束又は視準が1つ又は2つの軸で行われる。
【0051】
図2a〜図2gによる連続図においては、ガラス質材料の光学表面5の非接触の製造のための第二の解決手段による変法が概説されている。
【0052】
図2aにおいては、半導体平面基板2が、好ましくはシリコンウェハの形の基板が横断面図で概説されており、そのウェハには、好適なエッチング技術で表面2’に窪み3が設けられる。半導体平面基板2及びまた窪み3は、一点鎖線の左に好適に、好ましくは鏡像対称的に続いているとさらに考えられる。第二のエッチング工程において、窪み3の範囲において、窪み底部3’’を少なくとも部分的に周辺的に取り囲む溝構造10がもたらされる。溝構造(10)は、図2bに示される例示的実施形態において窪み壁部3’’’と同一平面で続いている。
【0053】
溝構造10を窪み底部3’’と直接隣接して設けることによって、窪み底部3’’には、この境界を決める縁線3*が得られ、その縁線3*は、粘性流動可能なガラス材料の拡がりのための濡れ先頭部の停止のためにさらに用いられる。任意に、第二のエッチング工程の範囲において、さらなる窪み11が半導体平面基板2の表面に設けられてもよいが、それらの窪みは、解決手段による方法にとって必ずしも重要なものではない。
【0054】
図2cにおいて、半導体平面基板2の表面上に、ガラス質材料からなる平面基板1を接合するプロセスステップが示されている。この場合に、再び、平面基板1は、窪み3の範囲において空隙Kを気密に閉じ込める。接合された2つの平面基板1,2が導入される熱処理炉内のプロセス温度を高めることによって、ガラス質材料の窪み3,11への粘性流動が起こり、その際、平面基板1のガラス材料は、濡れ面4として用いられる窪み底部3’’を濡らし始める(これについては図2dを参照)。ガラス材料が窪み底部3’’にまで下がることによって、濡れ先頭部Bの横方向の進行は、窪み底部3’’の溝構造10によって定められた縁線3*の方向で行われる(図2eを参照)。濡れ先頭部Bが縁線3*の位置に達したら、濡れ面として用いられる窪み底部3’’の横方向の濡れは停止して、溝構造10は満たされない。図2fによるこの濡れ状態に達したら、熱処理炉内のプロセス温度は下げられるので、溝構造10の充填は確実に抑えられる。このようにして、ガラス質材料の自由表面5が形成され、それらの表面は、下方縁部、すなわち窪み底部3’’の縁線3*から、接触せずに、窪み3の上方の周縁部3’へと延びている。熱処理炉内の作業圧と空隙K内に閉じ込められた圧力との間の占めている圧力比に応じて、凸型又は凹型又は直線型の形状の表面が形成される。熱処理炉の作業圧力と空隙Kの圧力との間の圧力比を変更することによって、またそれに加えて熱処理炉内のプロセス温度を変更することによって、メニスカスの、すなわち表面5の湾曲形状を、これが垂直方向で凸型、凹型又は直線型に形成されるように変更することができる。
【0055】
片側が構造化された半導体平面基板2と、同様に解決手段により実施された流動法を介して片側が構造化されたガラス質材料からなる平面基板1とからなる、図2gに示される平面基板組合せから出発して、図2hに概説される光学エレメントが作製される。このために、まずガラス質材料からなる平面基板1を半導体平面基板2の表面2’と同一平面上で除去するので、窪み(3及び11)内のガラス材料だけが残る。半導体平面基板は、溝構造10の領域でエッチング技術によって下方へとさらに開放される。これによって、解決手段により非接触で作製された表面5への下方の通路が作製されるので、表面5は、片側に鏡面層12を備えることができる。従って、ガラス自由表面5は、層列構造の表面上に示されるように取り付けられたレーザダイオード9の、表面に対して垂直に伝送される光線Lの集束のためのミラーエレメントとして用いられる。駆動用チップ13がさらに設けられており、そのチップは、レーザダイオード9から放出される光シグナルの高周波変調のために用いられる。このためには、駆動チップ13は、レーザダイオード9と電線14を介して接続され、その電線は、半導体平面基板2から、空隙11中に導入された平面基板1のガラスによって誘電的に切り離されている。
本発明の実施形態として例えば以下を挙げることができる。
[実施形態1]
ガラス質材料からなる平面基板の粘性流動プロセスを介した構造化方法であって、前記ガラス質平面基板を、表面にある周縁部によって画定された少なくとも1つの窪みを有する平面基板の表面上に接合し、それに続く熱処理プロセスを介して粘性流動可能な状態に変え、前記平面基板の粘性流動可能なガラス質材料の少なくとも一部が前記周縁部上から半導体平面基板の前記窪みへと流入する前記構造化方法において、
少なくとも1つの窪みが少なくとも1つの濡れ面を有する平面基板を用意することであって、前記濡れ面は、前記平面基板の表面に対して下方にあり、かつ少なくとも部分的に線状縁部によって画定されており、前記線状縁部は、同時に前記濡れ面に対して下方にあり、窪みの内側に設けられた溝構造の一つの縁部でもあり、かつ/又は前記濡れ面に帰属できる、前記流動可能なガラス質材料についての濡れ特性の不連続な変化によって決められていることと、
前記熱処理プロセスの間に前記流動可能なガラス質材料は、前記濡れ面と、前記線状縁部に沿って濡れ先頭部が形成されるように接触されることと、
前記熱処理プロセスは、濡れ先頭部と前記周縁部との間で平面基板と接触せずに延びている、窪みの部分領域とともに空隙を取り囲むガラス質材料の表面が形成されたら終了させることと、
を特徴とする、前記構造化方法。
[実施形態2]
前記濡れ面の濡れ特性は、表面変性によって選定され、それにより、その濡れ面が前記流動可能なガラス質材料で濡れるときに、動的に拡がる濡れ先頭部を形成し、前記先頭部が、表面変性されていない表面上より速やかに拡がることを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
[実施形態3]
前記ガラス質平面基板の、前記平面基板の表面上への接合は、陽極接合又は直接接合(融着)によって行われることを特徴とする、実施形態1又は2に記載の方法。
[実施形態4]
前記ガラス質平面基板は、少なくとも1つの窪みを気密に閉じることで、閉じた空隙が形成されることと、
前記ガラス質平面基板の接合は、設定可能なプロセス圧を有するガス雰囲気の存在下で行われ、こうして前記接合直後に、形成された空隙の内側に前記ガス雰囲気の一部が閉じ込められることと
を特徴とする、実施形態1〜3のいずれかに記載の方法。
[実施形態5]
前記熱処理の間に、プロセス圧を制御して変化させることにより、前記濡れ先頭部と前記周縁部との間で平面基板に接触せずに延びている、前記ガラス質材料の表面の形状に影響が及ぼされることを特徴とする、実施形態4に記載の方法。
[実施形態6]
前記濡れ先頭部と前記周縁部との間で平面基板に接触せずに延びている、前記ガラス質材料の表面は、プロセス圧の低減によって凹型に変形し、かつプロセス圧を高めた場合に凸型に変形することを特徴とする、実施形態5に記載の方法。
[実施形態7]
前記熱処理操作を少なくとも一回中断し、前記少なくとも1つの空隙への開放通路を作製し、かつ前記熱処理操作を続けることを特徴とする、実施形態4に記載の方法。
[実施形態8]
前記熱処理操作を少なくとももう一度中断し、前記少なくとも1つの開放通路を閉じ、かつ前記熱処理操作を続けることを特徴とする、実施形態7に記載の方法。
[実施形態9]
前記熱処理プロセスの終了後に、前記ガラス質平面基板と前記平面基板とを形状を保って分離することで、前記ガラス質平面基板の構造化された表面が得られ、かつ前記ガラス質平面基板の構造化された表面を複製型として使用することを特徴とする、実施形態1〜8のいずれかに記載の方法。
[実施形態10]
前記熱処理プロセスの終了後に、前記ガラス質平面基板と前記平面基板とを完全に又は部分領域で形状を保って分離することで、前記ガラス質平面基板の構造化された表面を得ることと、
少なくとも、前記濡れ先頭部の間で又は本来前記濡れ先頭部と前記周縁部との間で平面基板に接触せずに延びている、前記ガラス質材料の表面を、光学エレメントの光学作用表面として使用することと、
を特徴とする、実施形態1〜8のいずれかに記載の方法。
[実施形態11]
前記平面基板が、前記ガラス質平面基板より高い溶融温度を有する材料からなることを特徴とする、実施形態1〜10のいずれかに記載の方法。
[実施形態12]
平面基板として、半導体基板又はセラミック基板を使用することを特徴とする、実施形態1〜11のいずれかに記載の方法。
[実施形態13]
光学作用面を有する光学素子であって、前記面は、ガラス質材料からなる構造化された平面基板の一部であり、かつ前記面に光軸を割り当てることができ、前記光軸は、前記平面基板に割り当てることができる平面基板面と0゜及び90゜ではない角度αを形成し、この場合に、前記光学作用面は、ガラス質材料から非接触に製造された表面の表面平滑性に相当する表面平滑性を有する、前記光学素子。
[実施形態14]
前記のガラス質材料からなる構造化された平面基板の一部である光学作用面が、実施形態1〜8のいずれかに記載の方法で間接的に又は直接的に製造されており、その場合に、前記光学作用面は、前記濡れ先頭部と前記周縁部との間で半導体基板に接触せずに延びている、前記ガラス質材料の表面又はこの表面の複製型に相当することを特徴とする、実施形態13に記載の光学素子。
[実施形態15]
前記のガラス質材料からなる構造化された平面基板は、構造化された表面と、この表面の反対側にある前記平面基板面と一致する平坦な表面とを有することと、
前記の平坦な表面上に間接的に又は直接的に光源が配置されており、前記光源は光を前記平坦な表面を経由して前記のガラス質材料からなる構造化された平面基板中に、その光が前記ガラス質材料からなる平面基板内の光学作用面で向きを変えられるように伝送することと、
を特徴とする、実施形態13又は14に記載の光学素子。
【符号の説明】
【0056】
1 平面基板
2 半導体平面基板
2’ 半導体平面基板の表面
3 窪み
3’ 窪みの周縁部
3’’ 窪み底部
3’’’ 窪み壁部
3* 窪み底部の縁線
4 表面変性された窪み底部、つまり補助面又は濡れ面
5 非接触に延びている、ガラス質材料の表面
6 1の平面基板よりも低融点の材料からなるガラスウェハ
7 シリコンウェハ
8 透明窓
9 発光体、レーザダイオード
10 溝構造
11 第二の窪み
12 反射層
13 駆動用チップ
14 接続導線
B 濡れ先頭部
K 空隙
L レーザ線
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図1f
図1g
図1h
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図2f
図2g
図2h