(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ロータヘッドと共に回転して発電機を駆動する駆動系に設けられてブレーキディスクを備えているブレーキ機構と、前記ブレーキディスクに設けたピン穴に軸方向へ動作するロックピンを挿入して前記ロータヘッドの回転を固定するロック機構と、前記ロータヘッドを必要に応じて回転させるターニング機構と、前記ブレーキ機構、前記ロック機構及び前記ターニング機構の動作を含む風力発電装置の各種制御を行う制御部と、前記制御部に前記ロック機構によるロータヘッドロック指令を出力する遠隔操作部と、前記ロックピンの挿入可否判断用となる前記ロックピン穴の現状位置を検出して前記制御部に入力するロックピン穴位置モニタリング装置とを備え、
前記ロータヘッドロック指令を受けた前記制御部のロック操作が、
ピッチフェザリング後に前記ブレーキ機構を作動させ、前記ロータヘッドの回転を固定すると共に固定位置のアジマス角を計測する第1操作段階と、
前記ブレーキ機構の作動を解除して所望のアジマス角直前近傍まで前記ロータヘッドをターニングさせる第2操作段階と、
前記ブレーキ機構を作動させて前記ロータヘッドを前記アジマス角直前近傍位置に固定する第3操作段階と、
前記ブレーキ機構のブレーキ力を低減した状態で、前記ロックピンを、前記ブレーキディスク表面から離間した非ロック位置から前記ロックピン穴のターニング回転方向直前近傍位置で前記ブレーキディスク表面に押圧される挿入準備位置へ移動させる第4操作段階と、
前記ターニング機構を動作させて所定の挿入位置まで回転移動した前記ロックピン穴の挿入可否を前記ロックピン穴位置モニタリング装置で判断し、挿入可能と判断された場合にのみ前記ロックピンを挿入して固定すると共に前記ブレーキ機構を作動させて前記ロータヘッドを固定する第5操作段階と、
を備えていることを特徴とする風力発電装置のロータヘッド回転ロック方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、たとえば洋上風車のような風力発電装置においては、通常メンテナンスに加えて、救難・緊急メンテナンスを目的としたヘリコプター等によるアクセスが必要となる。
このとき、風力発電装置に接近したヘリコプターが風車回転翼に衝突することを避けるためには、遠隔操作により風車ロータの回転を停止して確実にロックする必要がある。この場合の遠隔操作は、たとえばタワー下やタワー外のような風力発電装置のタワー近傍位置、ヘリコプターや船舶等のアクセス移動手段、及び陸地等の遠隔地から操作することを意味している。
【0007】
しかし、遠隔操作により風車ロータの回転を所定位置(アジマス角)で確実にロックするためには、ロックピン穴の位置を自動で判別しながらロックピンの挿入動作を行う必要がある。
同時に、ロックピン穴に対してロックピンが確実に挿入されたことを判別するモニタリング装置や、ロックピンを引き抜くロック機構の解除についても、確実に動作したことを確認するモニタリング装置が必要となる。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、遠隔操作によって風車ロータを所望のアジマス角で確実にロックして回転を阻止するロック機構を備えた風力発電装置及びそのロータヘッド回転ロック方法を提供することにある。
さらに、本発明の目的は、ロック機構の確実な動作を確認できるモニタリング機能を備えた風力発電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明に係る風力発電装置は、ロータヘッドから発電機に回転を伝達する駆動系に設けられて、ブレーキディスクを備えているブレーキ機構と、前記ブレーキディスクに設けたロックピン穴に、ロックピンを挿入して前記ロータヘッドを固定するロック機構と、前記ロータヘッドを回転させるターニング機構と、少なくとも前記ブレーキ機構、前記ロック機構及び前記ターニング機構の動作を制御する制御部と、前記制御部に前記ロック機構によるロータヘッドロック指令を出力する遠隔操作部と、前記ロックピンの挿入可否判断用となる前記ロックピン穴の現状位置を検出または推定して前記制御部に入力するロックピン穴位置モニタリング装置と
、を備え、前記ロック機構は、前記ロックピンの軸方向に前記ロックピンを突出または後退可能とする駆動機構を備え、前記ロックピンの先端が前記ブレーキディスク表面から離間した位置にある非ロック位置と、前記ロックピン穴のターニング回転方向直前近傍位置で前記ロックピンの先端を前記ブレーキディスク表面に当接させて押圧する挿入準備位置と、前記ターニング機構を動作させて所定の挿入位置まで回転移動した前記ロックピン穴に前記ロックピンを挿入して固定するロック位置と、を備えていることを特徴とするものである。
【0010】
このような風力発電装置によれば、ロックピンの挿入可否判断用となるロックピン穴の現状位置を検出または推測して制御部に入力するロックピン穴位置モニタリング装置を備えているので、遠隔操作によりロック機構を操作しても、ロックピン穴の現状位置がロックピン挿入可能か否かを自動で判別でき、従って、ロックピンを確実に挿入してロータヘッドの回転を固定することが可能となる。
【0011】
また、上記構成により、挿入準備位置の状態でロータヘッドをターニングさせれば、ロック機構のロック位置において、挿入位置まで回転移動したロックピ
ン穴が挿入可能位置にあることで、ブレーキディスク表面に押圧されているロックピンがスムーズかつ確実に挿入される。
【0012】
上記の風力発電装置は、前記ロック装置の動作状況を検出して前記制御部に入力するロックピン挿入状況モニタリング装置を備えていることが好ましく、これにより、ロックピン穴に対してロックピンが確実に挿入されていることを確認できる。換言すれば、ロックピンの状態が、非ロック位置、挿入準備位置及びロック位置の何れにあるかを正確に判別して認識することができる。
【0013】
本発明に係る風力発電装置のロータヘッド回転ロック方法は、ロータヘッドと共に回転して発電機を駆動する駆動系に設けられてブレーキディスクを備えているブレーキ機構と、前記ブレーキディスクに設けたピン穴に軸方向へ動作するロックピンを挿入して前記ロータヘッドの回転を固定するロック機構と、前記ロータヘッドを必要に応じて回転させるターニング機構と、前記ブレーキ機構、前記ロック機構及び前記ターニング機構の動作を含む風力発電装置の各種制御を行う制御部と、前記制御部に前記ロック機構によるロータヘッドロック指令を出力する遠隔操作部と、前記ロックピンの挿入可否判断用となる前記ロックピン穴の現状位置を検出して前記制御部に入力するロックピン穴位置モニタリング装置とを備え、前記ロータヘッドロック指令を受けた前記制御部のロック操作が、ピッチフェザリング後に前記ブレーキ機構を作動させ、前記ロータヘッドの回転を固定すると共に固定位置のアジマス角を計測する第1操作段階と、前記ブレーキ機構の作動を解除して所望のアジマス角直前近傍まで前記ロータヘッドをターニングさせる第2操作段階と、前記ブレーキ機構を作動させて前記ロータヘッドを前記アジマス角直前近傍位置に固定する第3操作段階と、前記ブレーキ機構のブレーキ力を低減した状態で、前記ロックピンを、前記ブレーキディスク表面から離間した非ロック位置から前記ロックピ
ン穴のターニング回転方向直前近傍位置で前記ブレーキディスク表面に押圧される挿入準備位置へ移動させる第4操作段階と、前記ターニング機構を動作させて所定の挿入位置まで回転移動した前記ロックピ
ン穴の挿入可否を前記ロックピン穴位置モニタリング装置で判断し、挿入可能と判断された場合にのみ前記ロックピンを挿入して固定すると共に前記ブレーキ機構を作動させて前記ロータヘッドを固定する第5操作段階と、を備えていることを特徴とするものである。
【0014】
このような風力発電装置のロータヘッド回転ロック方法によれば、遠隔操作によりロック機構を操作すると、ロックピン穴の現状位置がロックピン挿入可能か否かを自動的に判別し、ロックピンを確実に挿入してロータヘッドの回転を固定することができる。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明によれば、風力発電装置のロータヘッドを遠隔操作によって所望のアジマス角で確実にロック(固定)して回転を阻止することができるので、ヘリコプター等による風力発電装置へのアクセスを安全に行うことが可能となる。
また、ロックピン挿入状況モニタリング装置を設けることにより、ロック機構の確実な動作を確認することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る風力発電装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図7に示す風力発電装置1は、基礎B上に立設される支柱(「タワー」ともいう。)2と、支柱2の上端に設置されるナセル3と、略水平な回転軸線周りに回転可能に支持されてナセル3に設けられるロータヘッド4とを有している。なお、風力発電装置1が洋上風車の場合には、浮体式あるいは基礎Bを海底に設ける方式の何れでもよい。
ロータヘッド4には、その回転軸線周りに放射状にして複数枚(たとえば3枚)の風車回転翼5が取り付けられている。これにより、ロータヘッド4の回転軸線方向から風車回転翼5に当たった風の力が、ロータヘッド4を回転軸線周りに回転させる動力に変換されるようになっている。
【0018】
本実施形態の風力発電装置1は、たとえば
図1〜6に示すように、ロータヘッド4と共に回転して発電機25を駆動する駆動系に設けられてブレーキディスク12を備えているブレーキ機構BSと、ブレーキディスク12に設けたロックピン穴17に軸方向へ動作するロックピン13を挿入してロータヘッド4の回転を固定するロック機構10と、ロータヘッド4を必要に応じて回転させるターニング機構TSと、ブレーキ機構BS、ロック機構10及びターニング機構TSの動作を含む風力発電装置1の各種制御を行う制御部40と、制御部40にロック機構10によるロータヘッドロック指令を出力する遠隔操作部50と、ロックピン13の挿入可否判断用となるロックピン穴17の現状位置を検出して制御部40に入力するロックピン穴位置モニタリング装置と、を備えている。
【0019】
上述した風力発電装置1の発電機駆動方式については、上述した
図8の歯車増速機方式、
図9に示したダイレクトドライブ方式に加えて、
図3に示す油圧駆動方式がある。
以下では、
図3に示す油圧駆動方式を採用した発電機駆動機構20、及びこの発電機駆動機構20に適用されたロック機構10を備えている風力発電装置1について説明するが、上述した歯車増速機方式やダイレクトドライブ方式の発電機駆動機構を採用した風力発電装置1のロック機構10A,10A′,10Bにおいても同様に適用可能である。
【0020】
図3に示す油圧駆動方式の発電機駆動機構20では、ロータヘッド4と一体に回転する主軸11によって油圧ポンプ21が駆動される。この油圧ポンプ21は、油圧循環回路を形成する油圧配管22を介して油圧モータ23と連結されている。
油圧ポンプ21で発生した油圧は、油圧配管22を通って油圧モータ23に供給され、この油圧によって油圧モータ23が駆動される。この結果、油圧モータ23の出力軸24と連結された発電機25は、油圧モータ23を駆動源として発電する。なお、油圧モータ23を駆動した油圧は、油圧配管22を通って油圧ポンプ21に戻される。
【0021】
このような油圧駆動方式の発電機駆動機構20においても、ロータヘッド4と一体に回転する主軸11に取り付けられたブレークディスク12を備えている。このブレーキディスク12は、主軸11と一体に回転する円盤状の部材であり、摩擦力でロータヘッド4及び主軸11の回転を減速して停止させるブレーキ機構BSを構成している。
ロック機構10は、ロータヘッド4と共に回転して発電機25を駆動する駆動系の軸部である主軸11等の軸部に取り付けられたブレーキ機構BSを利用して回転を機械的に阻止する装置である。この場合のブレーキ機構BSは、機械式ブレーキとの併用または非併用について、特に限定されることはない。
【0022】
ロック機構10は、たとえば
図4に示すように、ブレーキディスク12に予めロックピン穴17を設けておき、このロックピン穴17に対して主軸11の軸方向へ動作するロックピン13を挿入することで、回転を機械的に阻止する装置である。なお、ロックピン13の先端部側は、テーパ面を形成することでそれ以外の部分よりも小径とすることが望ましい。
また、風車回転翼5とロックピン穴17とは、常に同じ位置関係となるように組み立てられる。たとえば、風車回転翼5がY字で停止した状態にあれば、ロックピン穴は常に45度,135度,225度、315度の位置となるように組み立てられる。
【0023】
図4は、ブレーキディスク12をロータヘッド4側から見た図であり、たとえば同一円周上に90度ピッチで4つのロックピン穴17が穿設されている。このブレーキディスク12は、図中に矢印で示すように、ターニング機構TSによるターニング方向が時計回りとなっている。
なお、ロックピン穴17の形状についても、ロックピン13の先端形状に合わせて入口側を大径にした円錐台形状とすることが望ましい。
【0024】
ロックピン13を動作させるロックピン動作機構30の駆動方式は、たとえば
図6に示す油圧式の他にも電動式、電磁石式及びばね式等があり、特に限定されることはない。
図6に示すロックピン動作機構30は、ナセル3内部の適所に固定設置された本体31のガイド穴32に沿って、ロックピン13が動作方向(主軸11の軸方向)へスライド自在に支持されている。ロックピン13の内部にはシリンダ室33が形成され、シリンダ室33の内部に設置されたピストン34が本体31に固定されている。
【0025】
このロックピン動作機構30は、ピストン34を備えた油圧機構であり、シリンダ室33の内部は、ピストン34によりロックピン13先端側の油圧空間35Aと,ロックピン13根本側の油圧空間35Bの二つに分割(分離)されている。そして、油圧空間35A,35Bは、図示しない油圧供給源と連結されている。
従って、油圧空間35Bに油圧を供給した状態(
図5の紙面左側)では、ロックピン13がガイド穴32及びピストンロッド36に沿って本体31の内部へ後退し、ブレーキディスク12から離間した状態の非ロック位置にある。一方、油圧空間35Aに油圧を供給した状態(
図5の紙面右側)では、ロックピン13がガイド穴32及びピストンロッド36に沿って本体31の外部へ突出し、後述する位置決め等の過程を経てブレーキディスク12のロックピン穴17挿入されたロック位置にある。
【0026】
このようなロックピン13の非ロック位置及びロック位置は、ロックピン挿入状況モニタリング装置70により検出される。
図6に示すロックピン挿入状況モニタリング装置70は、ロックピン13と一体に動作するロッド部材37、ロッド部材37のスライド方向に配置して所定位置に固定された一対のリミットスイッチ(モニタリングセンサー)38A,38Bを具備した構成とされる。この場合、一対のリミットスイッチ38A,38Bが共にロッド部材37を検出した場合に非ロック位置と判断され、ディスクブレーキ12側に配置されたモニタリングセンサー38Aのみがロッド部材37を検出した場合にロック位置と判断される。
【0027】
上述したロックピン挿入状況モニタリング装置70は、非接触式センサーや接触式センサーの中から適宜選択して採用すればよい。
なお、非接触式センサーの具体例としては、たとえばレーザー、赤外線、超音波、画像診断、磁気、光等を利用したものがあり、接触式センサーの具体例としては、検知用ピンやレバー等を設置してリミットスイッチや近接スイッチ等を連動させるものがある。
また、上述したロックピン動作機構30の油圧空間35A,35Bは、ロックピン13の挿入時だけでなく適切な引抜力の設定も必要となるため、共に油圧供給源と連結して両方向に油圧動作するものとしたが、たとえばリターン用のバネと組み合わせて何れか一方の油圧空間にのみ油圧を供給するものでもよい。
【0028】
ところで、ロックピン穴17の穴径は、ロックピン13を挿入する際のガタを小さくするため、ロックピン13の外径より少し大きい程度に設定される。従って、ロックピン13を完全に挿入するためには、あるいは、ピン挿入時のカジリ等を回避するためには、回転移動するロックピン穴17と固定位置にあるロックピン13との位置を正確に合わせる必要がある。
また、風力発電装置1へのアクセス時及び離脱時には、ロックピン13の確実な挿入及び引抜を確認する必要があるため、ピン挿入状態のモニタリングが必要になる。
【0029】
以下では、上述した構成のロック機構10について、遠隔操作による動作手順、すなわち風力発電装置のロータヘッド回転ロック方法を
図2のフローチャートに基づいて説明する。
上述した構成の風力発電装置1において、遠隔操作部50からロータヘッドロック指令を受けた制御部40のロック操作(動作手順)は、以下に説明する第1操作段階〜第5操作段階を備えている。
【0030】
第1操作段階は、遠隔操作スイッチによりピッチフェザリングを行わせた後にブレーキ機構BSを作動させ、ロータヘッド4の回転を固定すると共に固定位置のアジマス角を計測するものである。なお、この第1操作段階は、
図2のフローチャートにおいてステップS2〜S4に相当する。
第2操作段階は、ブレーキ機構BSの作動を解除して所望のアジマス角直前近傍までロータヘッド4をターニングさせるものである。なお、この第2操作段階は、
図2のフローチャートにおいてステップS5及びS6に相当する。
第3操作段階は、ブレーキ機構BSを作動させてロータヘッド4をアジマス角直前近傍位置に固定するものである。なお、この第3操作段階は、
図2のフローチャートにおいてステップS7に相当する。
【0031】
第4操作段階は、ブレーキ機構BSのブレーキ力を低減した状態で、ロックピン13を、ブレーキディスク12の表面から離間した非ロック位置からロックピン挿入穴17のターニング回転方向直前近傍位置でブレーキディスク12の表面に押圧される挿入準備位置へ移動させるものである。なお、この第4操作段階は、
図2のフローチャートにおいてステップS8及びS9に相当する。
第5操作段階は、ターニング機構TSを動作させて所定の挿入位置まで回転移動したロックピン挿入穴17の挿入可否をロックピン穴位置モニタリング装置60で判断し、挿入可能と判断された場合にのみロックピン12を挿入して固定すると共にブレーキ機構BSを作動させてロータヘッド4を固定するものである。なお、この第5操作段階は、
図2のフローチャートにおいてステップS10〜14に相当する。
【0032】
以下では、
図2のフローチャートについて詳述する。
最初のステップS1では、遠隔操作部50の遠隔操作スイッチを操作することにより、遠隔操作可能な状態(遠隔操作スイッチOn)とする。この操作は、たとえば緊急メンテナンスを実施するためヘリコプターにより風力発電装置1へアクセスする場合、ヘリコプターから無線の遠隔操作により実施される。なお、事前に陸上から有線で、または、海上から無線による遠隔操作も可能である。
【0033】
この後、次のステップS2に進んでピッチフェザリングが実施される。
このピッチフェザリングは、風車回転翼5のピッチ角を風向と平行なフェザー状態にして、風力によるロータヘッド4の回転力が生じない状態とするものである。
【0034】
ピッチフェザリングが完了した後には、次のステップS3に進んでブレーキ機構BSによるロータ固定を実施する。
すなわち、ブレーキ機構BSを作動させることにより、ブレーキディスク12に対して最大のブレーキ力(Fmax)を作用させてロータヘッド4の回転を停止状態に固定する。以下の説明では、このロータ固定により、ブレーキディスク12に穿設されたロックピン穴17の1つは、たとえば
図3に図示したロックピン穴17aの位置で停止したものとする。
【0035】
続くステップS4では、固定状態にあるロータヘッド4のアジマス角計測が行われる。このアジマス角計測は、一般的な風力発電装置1の運転制御に必要であるため、風力発電装置1が備える既存の計測装置(例えば主軸に設けられたロータリエンコーダ、または、アブソリュートエンコーダ)から必要なデータを入手すればよい。
アジマス角計測後には、次のステップS5に進んでブレーキ機構BSの作動を停止(ブレーキOff)する。この結果、ロータヘッド4及びブレーキディスク12は、ブレーキ力が解除されて回転可能な状態となる。
【0036】
この後、ステップS6に進み、ターニング機構TSにより所望のアジマス角直前まで低速回転でターニングを実施する。
この結果、ロックピン穴17は、たとえば
図4に示した17aの位置から17bの位置まで回転移動する。この場合、所望のアジマス角は、ロック機構10によりロータヘッド4の回転を固定する位置のアジマス角であり、具体的には、固定位置にあるロックピン13と、ロックピン13を挿入するロックピン穴17とが一致するアジマス角である。
本実施形態においては、風車回転翼5が120度ピッチに3枚設けられており、この場合に好適な所望のアジマス角は、3枚の風車回転翼5の一枚が水平位置で固定される値となる。
【0037】
また、本実施形態のターニング機構TSは、油圧駆動方式の発電機駆動機構20を利用した油圧によるモータリング、あるいは、風車回転翼5のピッチ角制御によるモータリングが可能であり、特に上述した低速回転のターニングに限定されることはない。上述した油圧によるモータリングは、サービスポンプからの供給油圧により油圧ポンプ21を油圧モータとして運転するものである。
なお、上述した増速機方式またはダイレクトドライブ方式の発電機駆動機構を採用した風力発電装置1では、上述した油圧によるモータリングに代えて、発電機16,16Aを電動機とするモータリングを行って低速回転のターニングを実施すればよい。
【0038】
こうして所望のアジマス角直前までのターニングが完了したら、次のステップS7に進んでブレーキ機構BSによるロータ固定を実施する。このステップS7においても、ブレーキ機構BSを作動させてブレーキディスク12に最大のブレーキ力(Fmax)を作用させ、ロータヘッド4の回転を停止状態に固定している。
【0039】
次のステップS8では、ブレーキ機構BSのブレーキ力を最大値のFmaxからF1まで低減する。この結果、ロータヘッド4及びブレーキディスク12は、ブレーキ力の低減によりターニングの回転が可能な状態となる。
この後、ステップS9に進むことにより、ロック機構10を操作して
図4の上段に示す非ロック位置の状態からロックピン13を油圧P1で風車前方へ突出させ、先端をブレーキディスク12の表面に押し付けてロック位置に近い
図4の中段に示す状態とする。
【0040】
この場合の油圧P1は、後述するロックピン13をロックピン穴17に挿入する場合の油圧P2よりも小さな値(P1<P2)に設定される。このため、ブレーキディスク12の表面に対するロックピン13の先端押付力はそれほど大きな値にならず、後述するブレーキディスク12のターニングによる回転を妨げることはない。
なお、ロックピン13の先端、あるいはロックピン13の先端が摺動するブレーキディスク12の表面上には、低摩擦係数や摩耗しやすい材料の摺動パッドを配置し、ロックピン13やブレーキディスク12を保護することが望ましい。
【0041】
次のステップS10では、ステップS6と同様のターニング機構TSによりターニングを実施する。このターニングにより、ステップS6,S7で所望のアジマス角直前位置にあるブレーキディスク12が若干回転することにより、ロックピン穴17が固定位置にあるロックピン12に向かって移動する。すなわち、ロックピン13は、所望のアジマス角に対応する位置でブレーキディスク12の表面に押し付けられているので、先端部の突出を阻止された状態でターニングによりロックピン穴17が
図3に示す17cの位置まで回転移動してくるのを待っている。
【0042】
次のステップS11では、ロックピン13についてロックピン穴17への挿入可否を判断する。この場合、ロックピン穴位置モニタリング装置60により、たとえばレーザー、赤外線、超音波、画像診断、磁気、光等を利用した位置検出手段を使用してロックピン穴17の位置を検知または推定し、固定位置にあるロックピン13の位置とずれがないことを確認する。
この結果、ロックピン13及びロックピン穴17の位置にずれがなく、ロックピン13の挿入が可能と判断された「YES」の場合には、ターニングの継続により所定のアジマス角位置に到達したロックピン穴17cの位置とロックピン13の位置とが同一軸線上で一致する。このため、ロックピン13は、突出を阻止するブレーキディスク12の壁面がなくなるので、油圧P1によってロックピン穴17cへ挿入されてロック位置となる。
【0043】
この後、ステップS12に進んでターニング機構TSを停止し、さらに、次のステップS13へ進み、ブレーキ機構BSによるロータヘッド4及びブレーキディスク12の固定が行われる。この場合、ブレーキディスク12にはステップS7と同様に最大のブレーキ力(Fmax)が作用し、さらに、ロックピン穴17に挿入されたロックピン13には上述したステップS9の油圧P1より大きい油圧P2が作用する。
【0044】
この結果、ロータヘッド4及びブレーキディスク12はブレーキ機構により強固に固定されるだけでなく、ロック機構10のロックピン13がロックピン穴17に挿入されて油圧P2による突出方向の強い押圧力を受けているので、ブレーキディスク12の回転は、ロック機構10で機械的に阻止された状態となる。すなわち、ブレーキ機構及びロック機構10の協働によりロータヘッド4の回転が確実に阻止されたロック状態となる。
こうしてロータヘッド4がロック状態になった後には、次のステップS14に進んでメンテナンス用ナセル方位へのヨーイングが実施される。
従って、次のステップS15では、風力発電装置1に対してヘリコプターによる安全なアクセスが可能となり、必要なメンテナンス等の作業が実施される。
【0045】
ところで、上述したステップS11の挿入可否判断において、ロックピン13の挿入が不可能と判断された「NO」の場合には、ステップS21に進んでロックピン13を非ロック位置まで引き戻す。ここでの挿入不可能な状態とは、外径及び内径の寸法差が小さいロックピン13及びロックピン穴17の位置ずれは勿論のこと、挿入時にカジリが生じるような位置ずれの状態も包含する。
【0046】
こうして挿入不可能と判断された場合には、ターニングを中止してステップS3へ戻り、ブレーキ機構によるロータ固定を実施する。この後、ブレーキ機構及びロック機構10が協働して確実に阻止されたロック状態となるまで、ステップS4〜11の過程を再度実施することとなる。
【0047】
すなわち、本実施形態のロック機構10は、ロータヘッド4をターニング機構TSにより低速回転させながら、ロックピン穴モニタリング装置60でロックピン穴17の位置を検知し、固定側のロックピン13と適切な位置関係にあることを検知及び確認した上で、ロックピン13をロックピン穴17に挿入するとともにブレーキ機構BSを作動させて完全に固定する。
また、ロックピン13を動作させた状態でロータヘッド4を低速回転させるため、ブレーキディスク12は、表面にロックピン13の先端部が当接した状態で回転する。従って、ブレーキディスク12の方向へ押圧されているロックピン13は、ロックピン穴17の位置が一致した時点において、比較的少ない衝撃力で挿入される。
【0048】
このような本実施形態の風力発電装置1によれば、ロックピン13の挿入可否判断用にロックピン穴17の現状位置を検出し、この検出結果を制御部40に入力するロックピン穴位置モニタリング装置60を備えているので、遠隔操作によりロック機構10を操作しても、ロックピン穴17の現状位置がロックピン挿入可能か否かを自動で正確に判別できる。従って、ロックピン13をロックピン穴17へ確実に挿入し、ロータヘッド4の回転を固定することができる。
【0049】
従って、風力発電装置1のロータヘッド4を遠隔操作によって所望のアジマス角で確実に固定して回転を阻止できるので、ヘリコプター等による風力発電装置への安全なアクセスが可能となる。また、ロックピン挿入状況モニタリング装置70を設けることにより、ロック機構10の確実な動作を遠隔で確認することができるので、より一層安全なアクセスが可能になる。
【0050】
ところで、上述した実施形態では、ロックピン13の押圧力となる油圧をP1,P2に可変としたが、一定の油圧にして制御ロジックを簡略化してもよい。なお、ロックピン13の押付力を可変とした場合は、ロックピ13が当接するブレーキディスク12の摺動面では摩耗力を軽減でき、さらに、押圧力を複数段または連続的に可変とすれば、ロックピン13の挿入が不完全な場合の対処(追加押込み)も可能となる。この場合、ロックピン挿入状況モニタリング装置70との併用が必要となる。
【0051】
また、ロックピン13を引き抜く場合には、ロック機構10が十分な引抜力を有していることが必要である。すなわち、ロック状態においてもロータヘッド4には絶えず荷重がかかっており、従って、ブレーキ機構BSの動作中でもロックピン13とロックピン穴17との接触により、引抜には相当な荷重を要するためである。
【0052】
この引抜時においては、遠隔操作部40からロータヘッドロック解除指令を与えることにより、ブレーキ機構BSを動作させたままロックピン13を引き抜く。この場合のピン引抜力は、ロック機構10の油圧を一定にして制御ロジックを簡素化してもよいし、あるいは、油圧を可変制御してカジリの低減や強引な引抜動作を可能にしてもよい。
また、ロックピン13がすぐに抜けない場合は、ロック機構10を損傷させないため、必要に応じて引抜動作のオン/オフを繰り返すことや、正逆両方向に適宜低速のターニングを行い、ロックピン13とロックピン穴17との位置関係を積極的に変えて抜けるタイミングを探すことが望ましい。
【0053】
上述したブレーキディスク12の設置位置は、ロータヘッド4と共に回転して発電機を駆動する駆動系の軸であればよく、従って、低速軸及び高速軸を問わず特に限定されることはない。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。