(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
銅合金板条からなる母材の表面に、Cu含有量が20〜70at%で平均の厚さが0.2〜3.0μmのCu−Sn合金被覆層と平均の厚さが0.2〜5.0μmのSn被覆層がこの順に形成され、その材料表面はリフロー処理されていて、材料表面の少なくとも一方向における算術平均粗さRaが0.15μm以上で、全ての方向における算術平均粗さRaが3.0μm以下であり、前記Sn被覆層の表面に前記Cu−Sn合金被覆層の一部が露出して形成され、前記Cu−Sn合金被覆層の材料表面露出面積率が3〜75%であり、Cu−Sn合金被覆層の少なくとも一方向における平均の材料表面露出間隔が0.01〜0.5mmである接続部品用導電材料において、
試験力を加える方向に平行で正四角錐の圧子の稜線の一つを含む面を前記母材の圧延方向に平行に向け、4.903Nの試験力を前記母材表面に加えて10秒間保持するビッカース硬さ試験を行い、前記試験力を解除した後に前記母材表面に残ったくぼみの圧延方向に平行な対角線の長さから求めたビッカース硬さをVL、圧延方向に垂直な対角線の長さから求めたビッカース硬さをVTとしたとき、VT−VL≧4であり、母材の圧延方向に対し45°方向及び垂直方向に測定された前記材料表面の摩擦係数が、母材の圧延方向に対し平行方向に測定された前記材料表面の摩擦係数より小さいことを特徴とする接続部品用導電材料。
前記母材の表面と前記Cu−Sn合金被覆層の間にさらにNi被覆層、Co被覆層、Fe被覆層のうちいずれか1つからなる下地層が形成され、同下地層の平均の厚さが0.1〜3.0μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載された接続部品用導電材料。
前記母材の表面と前記Cu−Sn合金被覆層の間にさらにNi被覆層、Co被覆層、Fe被覆層のうちいずれか2つからなる下地層が形成され、前記下地層の合計の平均の厚さが0.1〜3.0μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載された接続部品用導電材料。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、特許文献1に記載された接続部品用導電材料を改良し、母材の圧延方向に対し直角方向の摩擦係数及び母材の圧延方向から
45°傾斜した方向の摩擦係数を、母材の圧延方向の摩擦係数より低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る接続部品用導電材料は、銅合金板条からなる母材の表面に、Cu含有量が20〜70at%で平均の厚さが0.2〜3.0μmのCu−Sn合金被覆層と平均の厚さが0.2〜5.0μmのSn被覆層がこの順に形成され、その材料表面はリフロー処理されていて、
材料表面の少なくとも一方向における算術平均粗さRaが0.15μm以上で、全ての方向における算術平均粗さRaが3.0μm以下であり、前記Sn被覆層の表面に前記Cu−Sn合金被覆層の一部が露出して形成され、前記Cu−Sn合金被覆層の材料表面露出面積率が3〜75%であり、
Cu−Sn合金被覆層の少なくとも一方向における平均の材料表面露出間隔が0.01〜0.5mmであり、さらに、ビッカース硬さ試験で母材表面に残ったくぼみの圧延方向に平行な対角線の長さから求めたビッカース硬さをVL、圧延方向に垂直な対角線の長さから求めたビッカース硬さをVTとしたとき、VT−VL≧4であり、
、圧延方向に対し45°方向及び垂直方向の摩擦係数が、圧延方向に対し平行方向の摩擦係数より小さいことを特徴とする。
【0009】
前記ビッカース硬さ試験は、試験力を加える方向に平行で正四角錐の圧子の稜線の一つを含む面を前記母材の圧延方向に平行に向け(圧子の稜線の1つを平面視で前記母材の圧延方向に平行に向ける)、4.903N(500g)の試験力を前記母材表面に加えて10秒間保持した後、試験力を解除するものとする。
このビッカース硬さ試験で母材表面に残されたくぼみの2つの対角線は、圧延方向に平行及び垂直に向く。ビッカース硬さ試験の試験力をF(N)、くぼみの圧延方向に平行な対角線の長さをDL(mm)、圧延方向に垂直な対角線の長さをDT(mm)としたとき、本発明でいうビッカース硬さVLは0.1891×(F/DL
2)、ビッカース硬さVTは0.1891×(F/DT
2)で計算される。
【0010】
上記接続部品用導電材料は、例えば以下に挙げる実施の形態を有する。
材料表面に露出する前記Cu−Sn合金被覆層の厚さが、好ましくは0.2μm以上である。
前記母材の表面と前記Cu−Sn合金被覆層の間にさらにCu被覆層を有する。
前記母材の表面と前記Cu−Sn合金被覆層の間にさらにNi被覆層、Co被覆層、Fe被覆層のうちいずれか1つからなる下地層が形成され、同下地層の平均の厚さが0.1〜3.0μmである。
前記母材の表面と前記Cu−Sn合金被覆層の間にさらにNi被覆層、Co被覆層、Fe被覆層のうちいずれか2つからなる下地層が形成され、前記下地層の合計の平均の厚さが0.1〜3.0μmである。
前記下地層とCu−Sn合金被覆層との間にさらにCu被覆層を有する。
【0011】
前記母材の表面は、少なくとも一方向における算術平均粗さRaが0.3μm以上で、全ての方向における算術平均粗さRaが4.0μm以下である。
前記母材の表面は、少なくとも一方向における凹凸の平均間隔Smが0.01〜0.5mmである。
前記Sn被覆層、Cu被覆層、Ni被覆層、Co被覆層及びFe被覆層は、それぞれSn、Cu、Ni、Co、Fe金属のほか、Sn合金、Cu合金、Ni合金、Co合金、Fe合金を含む。また、前記Snめっき層は、Sn金属のほか、Sn合金を含む。
【発明の効果】
【0012】
まず、本発明に係る接続部品用導電材料は、特許文献1,2に記載された接続部品用導電材料を改良したもので、特許文献1,2に記載された接続部品用導電材料と同様に、摩擦係数が低く、端子の挿入力を低下させ、端子の耐微摺動摩耗性を改善できる。
そして、本発明に係る接続部品用導電材料は、銅合金母材のビッカース硬度差がVT−VL≧4であることにより、圧延方向に対し垂直方向の摩擦係数が、圧延方向に対し平行方向の摩擦係数より小さく、圧延方向に対し45°傾斜した方向の摩擦係数はさらに小さい。本発明に係る接続部品用導電材料を打抜き、又は打抜き後曲げ加工して製造される端子において、端子の挿入方向を母材の圧延方向に対し直角方向に設定した場合、又は母材の圧延方向に対し傾斜(典型的には45°)して設定した場合、母材の圧延方向に設定した場合より、さらに端子の挿入力を低減でき、かつ端子の耐摺動摩耗特性を改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[ビッカース硬度差(VT−VL≧4)]
はじめに、本発明に係る接続部品用導電材料の最大の特徴部分である銅合金母材のビッカース硬度差(VT−VL≧4)について説明する。
前記ビッカース硬度差を求めるビッカース硬さ試験は、圧子の稜線の1つを平面視で前記母材の圧延方向に平行に向け、4.903N(500g)の試験力を母材表面に加えて10秒間保持した後、試験力を解除するものとする。
図1に示すように、このビッカース硬さ試験により母材表面に残された圧痕(くぼみ)1は、母材の圧延方向に平行な対角線2と圧延方向に垂直な対角線3を有する。ビッカース硬さ試験の試験力をF(N)、対角線2の長さをDL(mm)、対角線3の長さをDT(mm)としたとき、本発明でいうビッカース硬さVLは0.1891×(F/DL
2)、ビッカース硬さVTは0.1891×(F/DT
2)で計算される。
【0015】
ビッカース硬度差の式(VT−VL≧4)は、母材の圧延方向に垂直な対角線3の長さDTから求めたビッカース硬さVTが、母材の圧延方向に平行な対角線2の長さDLから求めたビッカース硬さVTより、4以上大きいことを意味する。言い換えれば、ビッカース硬さ試験において正四角錐の圧子が母材表面に押し込まれたとき、母材の圧延方向に対し垂直方向の変形抵抗が、母材の圧延方向に対し平行方向の変形抵抗より大きいということである。
【0016】
銅合金母材のビッカース硬度差を4以上(VT−VL≧4)にすることにより、接続部品用導電材料において、母材の圧延方向に対し垂直方向の摩擦係数を、圧延方向に対し平行方向の摩擦係数より低く(後述する実施例で0.04超)することができる。同時に、母材の圧延方向に対し45°方向の摩擦係数を、垂直方向の摩擦係数よりさらに低くすることができる。逆に、ビッカース硬度差が4未満(VT−VL<4)の場合、母材の圧延方向に対し垂直方向の摩擦係数及び母材の圧延方向に対し45°方向の摩擦係数を、上記のように低くすることができない。前記ビッカース硬度差(VT−VL)は6以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましい。
【0017】
接続部品用導電材料において、銅合金母材のビッカース硬度差を4以上(VT−VL≧4)にすることにより、母材の圧延方向に対し垂直方向及び45°方向の摩擦係数が、上記のように低くなる理由は明確ではない。なお、本発明者は、銅合金母材のビッカース硬度差が4以上となり、同母材の変形抵抗の方向差が大きくなったことが、リフロー処理後のSn被覆層の変形(端子摺動時の掘り起こし)のしやすさに影響し、その結果、摩擦係数の大きさに前記のような方向による違いが生じたと推測している。
銅合金母材のビッカース硬度差を4以上(VT−VL≧4)にする方法については、後述する。
【0018】
[表面被覆層構成]
続いて、本発明に係る接続部品用導電材料の表面被覆層構成について説明する。なお、本発明に係る接続部品用導電材料において、Cu−Sn合金被覆層中のCu含有量、Cu−Sn合金被覆層の平均の厚さ、Sn被覆層の平均の厚さ、材料表面の算術平均粗さRa、Cu−Sn合金被覆層の材料表面露出面積率、材料表面に露出したCu−Sn合金被覆層の露出間隔、Cu被覆層の平均の厚さ、Ni被覆層の平均の厚さ、母材表面の算術平均粗さ、及び母材表面の凹凸の平均間隔Smの各規定は、基本的に特許文献1,2と同じである。
【0019】
(1)Cu−Sn合金被覆層中のCu含有量
Cu含有量が20〜70at%のCu−Sn合金被覆層は、Cu
6Sn
5相を主体とする金属間化合物からなる。Cu
6Sn
5相はSn被覆層を形成するSn又はSn合金に比べて非常に硬く、それを材料の最表面に部分的に露出形成すると、端子挿抜の際にSn被覆層の掘り起こしによる変形抵抗や凝着をせん断するせん断抵抗を抑制でき、摩擦係数を非常に低くすることができる。さらに、本発明ではCu
6Sn
5相がSn被覆層の表面に部分的に突出しているため、端子挿抜や振動環境下などにおける電気接点部の摺動・微摺動の際に接圧力を硬いCu
6Sn
5相で受けてSn被覆層同士の接触面積を一段と低減できる。このため、摩擦係数をさらに低くすることができ、微摺動によるSn被覆層の摩耗や酸化も減少する。一方、Cu
3Sn相はさらに硬いが、Cu
6Sn
5相に比べてCu含有量が多いため、これをSn被覆層の表面に部分的に露出させた場合には、経時や腐食などによる材料表面のCuの酸化物量などが多くなる。このため、Cu
3Sn相は接触抵抗を増加させ易く、電気的接続の信頼性を維持することが困難となる。また、Cu
3Sn相はCu
6Sn
5相に比べて脆いために、成形加工性などが劣るという問題点がある。従って、Cu−Sn合金被覆層の構成成分を、Cu含有量が20〜70at%のCu−Sn合金に規定する。このCu−Sn合金被覆層には、Cu
3Sn相が一部含まれていてもよく、下地めっき層、母材及びSnめっき中の成分元素などが含まれていてもよい。しかし、Cu−Sn合金被覆層のCu含有量が20at%未満では凝着力が増して摩擦係数を低くすることが困難となる上に、耐微摺動摩耗性も低下する。一方、Cu含有量が70at%を超えると経時や腐食などによる電気的接続の信頼性を維持することが困難となり、成形加工性なども悪くなる。従って、Cu−Sn合金被覆層中のCu含有量を20〜70at%に規定する。より望ましくは45〜65at%である。
【0020】
(2)Cu−Sn合金被覆層の平均の厚さ
本発明では、Cu−Sn合金被覆層の平均の厚さを、Cu−Sn合金被覆層に含有されるSnの面密度(単位:g/mm
2)をSnの密度(単位:g/mm
3)で除した値と定義する。下記実施例に記載したCu−Sn合金被覆層の平均の厚さの測定方法は、この定義に準拠するものである。Cu−Sn合金被覆層の平均の厚さが0.2μm未満では、特に本発明のようにCu−Sn合金被覆層を材料表面に部分的に露出形成させる場合には、高温酸化などの熱拡散による材料表面のCuの酸化物量が多くなる。その結果、接触抵抗を増加させ易く、電気的接続の信頼性を維持することが困難となる。一方、平均の厚さが3.0μmを超える場合には、経済的に不利であり、生産性も悪く、硬い層が厚く形成されるために成形加工性なども悪くなる。従って、Cu−Sn合金被覆層の平均の厚さを0.2〜3.0μmに規定する。より望ましくは0.3〜1.0μmである。
【0021】
(3)Sn被覆層の平均の厚さ
本発明では、Sn被覆層の平均の厚さを、Sn被覆層に含有されるSnの面密度(単位:g/mm
2)をSnの密度(単位:g/mm
3)で割った値と定義する。下記実施例に記載したSn被覆層の平均の厚さ測定方法は、この定義に準拠するものである。Sn被覆層の平均の厚さが0.2μm未満では、熱拡散によりSn被覆層表面に拡散するCuの量が多くなることから、Sn被覆層表面のCuの酸化物量が多くなり、接触抵抗を増加させ易い。また耐食性も悪くなることから、電気的接続の信頼性を維持することが困難となる。一方、平均の厚さが5.0μmを超える場合には、経済的に不利であり、生産性も悪くなる。従って、Sn被覆層の平均の厚さを0.2〜5.0μmに規定する。より望ましくは0.5〜3.0μmである。
【0022】
(4)材料表面の算術平均粗さRa
材料表面の全ての方向において算術平均粗さRaが0.15μm未満の場合、Cu−Sn合金被覆層の材料表面突出高さが全体に低く、電気接点部の摺動・微摺動の際に接圧力を硬いCu
6Sn
5相で受ける割合が小さくなる。このため、特に微摺動によるSn被覆層の摩耗量を低減することが困難となる。一方、いずれかの方向において算術平均粗さRaが3.0μmを超える場合、高温酸化などの熱拡散による材料表面のCuの酸化物量が多くなり、接触抵抗を増加させ易く、電気的接続の信頼性を維持することが困難となる。従って、材料表面の表面粗さは、少なくとも一方向の算術平均粗さRaが0.15μm以上、かつ全ての方向の算術平均粗さRaが3.0μm以下と規定する。より望ましくは0.2〜2.0μmである。なお、本発明では、銅合金母材の圧延方向に対し垂直方向において、算術平均粗さRaが最も大きくなる。
【0023】
(5)Cu−Sn合金被覆層の材料表面露出面積率
本発明では、Cu−Sn合金被覆層の材料表面露出面積率を、材料の単位表面積あたりに露出するCu−Sn合金被覆層の表面積に100をかけた値として算出する。Cu−Sn合金被覆層の材料表面露出面積率が3%未満では、Sn被覆層同士の凝着量が増し、さらに端子挿抜の際の接触面積が増加するため摩擦係数を低くすることが困難となり、耐微摺動摩耗性も低下する。一方、材料表面露出面積率が75%を超える場合には、経時や腐食などによる材料表面のCuの酸化物量などが多くなり、接触抵抗を増加させ易く、電気的接続の信頼性を維持することが困難となる。従って、Cu−Sn合金被覆層の材料表面露出面積率を3〜75%に規定する。より望ましくは10〜50%である。
【0024】
(6)Cu−Sn合金被覆層の平均の材料表面露出間隔
本発明では、Cu−Sn合金被覆層の平均の材料表面露出間隔を、材料表面に描いた直線を横切るCu−Sn合金被覆層の平均の幅(前記直線に沿った長さ)とSn被覆層の平均の幅を足した値と定義する。Cu−Sn合金被覆層の平均の材料表面露出間隔が0.01mm未満では、高温酸化などの熱拡散による材料表面のCuの酸化物量が多くなり、接触抵抗を増加させ易く、電気的接続の信頼性を維持することが困難となる。一方、平均の材料表面露出間隔が0.5mmを超える場合には、特に小型端子に用いた際に低い摩擦係数を得ることが困難となる場合が生じてくる。一般的に端子が小型になれば、インデントやリブなどの電気接点部(挿抜部)の接触面積が小さくなるため、挿抜の際にSn被覆層同士のみの接触確率が増加する。これにより凝着量が増すため、低い摩擦係数を得ることが困難となる。従って、Cu−Sn合金被覆層の平均の材料表面露出間隔を少なくとも一方向(特に圧延垂直方向)において0.01〜0.5mmとすることが望ましい。より望ましくは、Cu−Sn合金被覆層の平均の材料表面露出間隔を全ての方向において0.01〜0.5mmにする。これにより、挿抜の際のSn被覆層同士のみの接触確率が低下する。さらに望ましくは全ての方向において0.05〜0.3mmである。
【0025】
(7)Sn被覆層の表面に露出するCu−Sn合金被覆層の厚さ
本発明のようにCu−Sn合金被覆層の一部をSn被覆層の表面に露出させる場合、製造条件によりSn被覆層の表面に露出するCu−Sn合金被覆層の厚さが前記Cu−Sn合金被覆層の平均の厚さと比較して極めて薄くなる場合が生じる。なお本発明では、Sn被覆層の表面に露出するCu−Sn合金被覆層の厚さを、断面観察により測定した値と定義する(前記Cu−Sn合金被覆層の平均の厚さ測定方法とは異なる)。Sn被覆層の表面に露出するCu−Sn合金被覆層の厚さが0.2μm未満の場合、特に本発明のようにCu−Sn合金被覆層を材料表面に部分的に露出形成させる場合には、高温酸化などの熱拡散による材料表面のCuの酸化物量が多くなり、また耐食性も低下する。このため、接触抵抗を増加させ易く、電気的接続の信頼性を維持することが困難となる。従って、Sn被覆層の表面に露出するCu−Sn合金被覆層の厚さを0.2μm以上とすることが望ましい。より望ましくは0.3μm以上である。
【0026】
(8)Cu被覆層の平均の厚さ
黄銅や丹銅のようなZn含有Cu合金を母材として用いる場合などには、母材とCu−Sn合金被覆層の間にCu被覆層を有していてもよい。このCu被覆層はリフロー処理後にCuめっき層が残留したものである。Cu被覆層は、Znやその他の母材構成元素の材料表面への拡散を抑制するのに役立ち、はんだ付け性などが改善されることが広く知られている。Cu被覆層は厚くなりすぎると成形加工性などが劣化し、経済性も悪くなることから、Cu被覆層の厚さは3.0μm以下が好ましい。
Cu被覆層には、母材に含まれる成分元素等が少量混入していてもよい。また、Cu被覆層がCu合金からなる場合、Cn合金のCn以外の構成成分としてはSn、Zn等が挙げられる。Snの場合は50質量%未満、他の元素については5質量%未満が望ましい。
【0027】
(9)下地層(Ni被覆層等)の平均の厚さ
母材とCu−Sn合金被覆層の間(Cu被覆層がない場合)、又は母材とCu被覆層の間に、Ni被覆層が形成されていてもよい。Ni被覆層はCuや母材構成元素の材料表面への拡散を抑制して、高温長時間使用後も接触抵抗の上昇を抑制するとともに、Cu−Sn合金被覆層の成長を抑制してSn被覆層の消耗を防止し、また亜硫酸ガス耐食性を向上させることが知られている。しかし、Ni被覆層の平均厚さが0.1μm未満の場合、Ni被覆層中のピット欠陥が増加することなどにより、上記効果を充分に発揮できなくなる。また、Ni被覆層自身の材料表面への拡散はCu−Sn合金被覆層やCu被覆層により抑制される。このことから、Ni被覆層を形成した接続部品用材料は、耐熱性が求められる接続部品に特に適する。Ni被覆層は厚くなりすぎると成型加工性などが劣化し、経済性も悪くなることから、Ni被覆層の厚さは3.0μm以下が好ましい。従って、Ni被覆層の平均厚さは、好ましくは0.1〜3.0μmとし、より好ましくは下限が0.2μm、上限が2.0μmである。
Ni被覆層には、母材に含まれる成分元素等が少量混入していてもよい。また、Ni被覆層がNi合金からなる場合、Ni合金のNi以外の構成成分としては、Cu、P、Coなどが挙げられる。Cuについては40質量%以下、P、Coについては10質量%以下が望ましい。
【0028】
Ni被覆層に代え、下地層としてCo被覆層又はFe被覆層を用いることができる。Co被覆層はCo又はCo合金からなり、Fe被覆層はFe又はFe合金からなる。
Co被覆層又はFe被覆層は、Ni被覆層と同様に、母材構成元素の材料表面への拡散を抑制する。このため、Cu−Sn合金層の成長を抑制してSn層の消耗を防止し、高温長時間使用後において接触抵抗の上昇を抑制するとともに、良好なはんだ濡れ性を得るのに役立つ。しかし、Co被覆層又はFe被覆層の平均厚さが0.1μm未満の場合、Ni被覆層と同様に、Co被覆層又はFe被覆層中のピット欠陥が増加することなどにより、上記効果を充分に発揮できなくなる。また、Co被覆層又はFe被覆層の平均厚さが3.0μmを超えて厚くなると、Ni被覆層と同様に、上記効果が飽和し、また曲げ加工で割れが発生するなど端子への成形加工性が低下し、生産性や経済性も悪くなる。従って、Co被覆層又はFe被覆層を下地層としてNi被覆層の代わりに用いる場合、Co被覆層又はFe被覆層の平均厚さは0.1〜3.0μmとする。Co被覆層又はFe被覆層の平均厚さは、好ましくは下限が0.2μm、上限が2.0μmである。
【0029】
また、Ni被覆層、Co被覆層、Fe被覆層のうちいずれか2つを、下地層として用いることができる。この場合、Co被覆層又はFe被覆層を、母材表面とNi被覆層の間、又は前記Ni被覆層とCu−Sn合金層の間に形成することが好ましい。2層の下地層(Ni被覆層、Co被覆層、Fe被覆層のうちいずれか2つ)の合計の平均厚さは、下地層を1層のみとした場合と同じ理由で、0.1〜3.0μmとする。この合計の平均厚さは、好ましくは下限が0.2μm、上限が2.0μmである。
【0030】
[接続部品用導電材料の製造方法]
本発明に係る接続部品用導電材料は、基本的に特許文献1,2に記載された製造方法で製造することができる。
まず、銅合金板条からなる母材(銅合金母材)の表面を粗面化して、少なくとも一方向における算術平均粗さRaが0.3μm以上で、全ての方向における算術平均粗さRaが4.0μm以下の表面粗さとする。前記母材の表面は、少なくとも一方向における凹凸の平均間隔Smが0.01〜0.5mmの表面粗さであることが望ましい。
母材の表面の粗面化に当たっては、最終(仕上げ)冷間圧延において、ショットブラスト又は機械研磨(バフ研磨やブラシ研磨等)等により粗面化したワークロールを用いる。粗面化したワークロールを用いた仕上げ冷間圧延の前又は後に、母材の表面を機械研磨(バフ研磨やブラシ研磨等)により粗面化することもできる。
【0031】
粗面化したワークロールを用いた仕上げ冷間圧延により、母材の表面を粗面化すると共に、適切な圧延条件を選択することにより、母材のビッカース硬度差を4以上(VT−VL≧4)にすることができる。そのためには、ワークロールのロール径を大きくする、圧延潤滑油の粘度を小さくする、圧延速度を遅くする、1パス当たりの圧下率を大きくすることが有効である。また、母材の表面粗度を上記範囲内に収め、かつ表面に肌荒れや焼き付きが発生しない範囲で、圧延ロールの表面粗さを大きくすることも有効である。
上記圧延条件を組合せて仕上げ冷間圧延を行うことで、仕上げ冷間圧延後の母材の表面のビッカース硬度差を4以上(VT−VL≧4)にすることができる理由は明確ではない。しかし、本発明者は、上記の圧延条件を組合せることで、仕上げ冷間圧延中の圧延ロールと銅合金板条(母材)の間の摩擦力が大きくなり、これが仕上げ冷間圧延後の銅合金母材の表面のビッカース硬度差(VT−VL)を大きくすることに寄与したのではないかと推測している。
【0032】
続いて、粗面化した銅合金母材の表面にSnめっき層を形成し、又はCuめっき層とSnめっき層をこの順に形成した後、リフロー処理を行い、Cu−Sn合金被覆層と、Sn被覆層をこの順に形成する。
母材の表面にSnめっき層のみを形成する場合、Cu−Sn合金被覆層は母材とSnめっき層から形成され、母材表面にCuめっき層とSnめっき層を形成する場合、Cu−Sn合金被覆層はCuめっき層とSnめっき層から形成される。Cuめっき層を形成する場合、母材とCuめっき層の間に、下地層としてNiめっき層、Coめっき層及びFeめっき層のうち1種又は2種を形成することもできる。リフロー処理後にも残留したCuめっき層がCu被覆層となる。
【0033】
粗面化した銅合金母材の表面の算術平均粗さRaが、同母材の表面の全ての方向において0.3μm未満の場合、本発明に係る接続部品用導電材料の製造が非常に困難となる。具体的にいえば、リフロー処理後の材料表面の少なくとも一方向における算術平均粗さRaを0.15μm以上とし、かつCu−Sn合金被覆層の材料表面露出面積率を3〜75%とし、同時にSn被覆層の平均の厚さを0.2〜5.0μmとすることが非常に困難となる。一方、いずれかの方向において算術平均粗さRaが4.0μmを超える場合、溶融Sn又はSn合金の流動作用によるSn被覆層表面の平滑化が困難となる。従って、母材の表面粗さは、少なくとも一方向の算術平均粗さRaが0.3μm以上、かつ全ての方向の算術平均粗さRaが4.0μm以下とする。母材の表面をこの表面粗さとしたことにより、溶融Sn又はSn合金の流動作用(Sn被覆層の平滑化)に伴い、リフロー処理で成長したCu−Sn合金被覆層の一部が材料表面に露出する。母材の表面粗さについては、より好ましくは、少なくとも一方向の算術平均粗さRaが0.4μm以上かつ全ての方向の算術平均粗さRaが3.0μm以下である。
【0034】
先に述べたとおり、リフロー処理後の材料表面に露出するCu−Sn合金被覆層は、少なくとも一方向(特に圧延垂直方向)における平均の露出間隔が0.01〜0.5mmであることが好ましい。リフロー処理で形成されるCu−Sn合金被覆層は、通常、母材の表面形態を反映して成長するため、リフロー処理後の材料表面のCu−Sn合金被覆層の露出間隔は、母材表面の凹凸の平均間隔Smをおよそ反映する。従って、前記一方向において算出された母材表面の凹凸の平均間隔Smが、0.01〜0.5mmであることが好ましい。さらに好ましくは0.05〜0.3mmである。これにより、リフロー処理後の材料表面に露出するCu−Sn合金被覆層の露出形態を制御することが可能となる。
【0035】
リフロー処理の条件は、Snめっき層の溶融温度〜600℃×3〜30秒間とする。Sn金属の場合、加熱温度が230℃未満では溶融せず、低すぎないCu含有量のCu−Sn合金被覆層を得るには、加熱温度は好ましくは240℃以上である。一方、加熱温度が600℃を越えると銅合金母材が軟化し、歪みが発生するとともに、高すぎるCu含有量のCu−Sn合金被覆層が形成され、接触抵抗を低く維持することができない。加熱時間が3秒未満では熱伝達が不均一となり、十分な厚みのCu−Sn合金被覆層を形成できず、30秒を越える場合には、材料表面の酸化が進行するため、接触抵抗が増加し、耐微摺動摩耗性も劣化する。
このリフロー処理を行うことにより、Cu−Sn合金被覆層が形成され、溶融Sn又はSn合金が流動してSn被覆層が平滑化され、0.2μm以上の厚さを有するCu−Sn合金被覆層が材料表面に露出する。また、めっき粒子が大きくなり、めっき応力が低下し、ウイスカが発生しなくなる。いずれにしても、Cu−Sn合金層を均一に成長させるためには、熱処理はSn又はSn合金の溶融する温度で、300℃以下のできるだけ少ない熱量で行うことが望ましい。
【実施例】
【0036】
Zn:30質量%、残部Cuからなる厚さ45mmの銅合金(黄銅)の鋳塊を、850℃×3時間均熱後、熱間圧延して15mmの板厚とし、600℃以上で焼き入れ、続いて冷間粗圧延、再結晶焼鈍、仕上げ冷間圧延を行った。仕上げ冷間圧延は、表面を粗化したワークロールを使用し、表1に示す圧延条件で1パスのみの圧延を実施し、板厚0.25mmに仕上げた。
【0037】
【表1】
【0038】
得られた銅合金条(銅合金母材)のビッカース硬さ(VT,VL)を前記要領で測定して、ビッカース硬度差(VT−VL)を求めた。ただし、ビッカース硬さ試験において、測定箇所は各母材A〜Hごとに30箇所ずつとし、30点の平均値を算出して前記ビッカース硬さ(VT,VL)とした。また、母材の表面粗さを下記要領で測定した。これらの結果を表2に示す。
[母材の表面粗さ測定]
接触式表面粗さ計(株式会社東京精密;サーフコム1400)を用いて、JIS B0601−1994に基づいて測定した。表面粗さ測定条件は、カットオフ値を0.8mm、基準長さを0.8mm、評価長さを4.0mm、測定速度を0.3mm/s、及び触針先端半径を5μmRとした。表面粗さの測定方向は、圧延方向に垂直な方向(算術平均粗さRaが最も大きく出る方向)とした。
【0039】
【表2】
【0040】
表2に示す銅合金母材(A〜H)に、各々の厚さのNiめっき、Cuめっき及びSnめっきを施した後、280℃で10秒間のリフロー処理を行って、表3に示す試験材No.1〜8を得た。
めっき後(リフロー処理前)の試験材No.1〜8について、Niめっき層、Cuめっき層及びSnめっき層の平均の厚さを、特許文献1,2の実施例と同じく、下記要領で測定した。その結果を表3に示す。
【0041】
[Niめっき層の平均の厚さの測定]
蛍光X線膜厚計(セイコーインスツルメンツ株式会社;SFT3200)を用いて、リフロー処理前の試験材のNiめっき層の平均の厚さを算出した。測定条件は、検量線にSn/Ni/母材の2層検量線を用い、コリメータ径をφ0.5mmとした。なお、Niめっき層の平均の厚さはリフロー処理の前後でほとんど変化しない。
【0042】
[Cuめっき層の平均の厚さの測定]
ミクロトーム法にて加工したリフロー処理前の試験材の断面SEM(走査型電子顕微鏡)を10,000倍の倍率で観察し、画像解析処理によりCuめっき層の平均の厚さを算出した。
[Snめっき層の平均の厚さの測定]
蛍光X線膜厚計(セイコーインスツルメンツ株式会社;SFT3200)を用いて、リフロー処理前の試験材のSnめっき層の平均の厚さを算出した。測定条件は、検量線にSn/母材の単層検量線又はSn/Ni/母材の2層検量線を用い、コリメータ径をφ0.5mmとした。
【0043】
リフロー処理後の試験材No.1〜8について、Cu−Sn合金被覆層及びSn被覆層の平均の厚さ、及び表面粗さを、特許文献1,2の実施例と同じく、下記要領で測定した。また、Cu−Sn合金被覆層について、そのCu含有量、表面露出面積率、平均の表面露出間隔、及び材料表面に露出したCu−Sn合金被覆層の厚さを、特許文献1,2の実施例と同じく、下記要領で測定した。以上の測定結果を同じく表3に示す。なお、表3において、Ni被覆層の平均の厚さの欄には、めっき後(リフロー処理前)の試験材のNiめっき層の平均の厚さをそのまま記載した。
【0044】
[Cu−Sn合金被覆層の平均の厚さの測定]
まず、試験材をp−ニトロフェノール及び苛性ソーダを成分とする水溶液に10分間浸漬し、Sn被覆層を除去した。その後、蛍光X線膜厚計(セイコーインスツルメンツ株式会社;SFT3200)を用いて、Cu−Sn合金被覆層に含有されるSn成分の膜厚を測定した。測定条件は、検量線にSn/母材の単層検量線又はSn/Ni/母材の2層検量線を用い、コリメータ径をφ0.5mmとした。得られた値をCu−Sn合金被覆層の平均の厚さと定義して算出した。
【0045】
[Sn被覆層の平均の厚さの測定]
まず、蛍光X線膜厚計(セイコーインスツルメンツ株式会社;SFT3200)を用いて、試験材のSn被覆層の膜厚とCu−Sn合金被覆層に含有されるSn成分の膜厚の和を測定した。その後、p−ニトロフェノール及び苛性ソーダを成分とする水溶液に10分間浸漬し、Sn被覆層を除去した。再度、蛍光X線膜厚計を用いて、Cu−Sn合金被覆層に含有されるSn成分の膜厚を測定した。測定条件は、検量線にSn/母材の単層検量線又はSn/Ni/母材の2層検量線を用い、コリメータ径をφ0.5mmとした。得られたSn被覆層の膜厚とCu−Sn合金被覆層に含有されるSn成分の膜厚の和から、Cu−Sn合金被覆層に含有されるSn成分の膜厚を差し引くことにより、Sn被覆層の平均の厚さを算出した。
【0046】
[表面粗さの測定]
表面粗さ(算術平均粗さRa)は、接触式表面粗さ計(株式会社東京精密;サーフコム1400)を用いて、JIS B0601−1994に基づいて測定した。表面粗さの測定条件は、カットオフ値を0.8mm、基準長さを0.8mm、評価長さを4.0mm、測定速度を0.3mm/s、及び触針先端半径を5μmRとした。なお、表面粗さの測定方向は、圧延方向に垂直な方向(表面粗さが最も大きく出る方向)とした。
【0047】
[Cu−Sn合金被覆層のCu含有量の測定]
まず、試験材をp−ニトロフェノール及び苛性ソーダを成分とする水溶液に10分間浸漬し、Sn被覆層を除去した。その後、EDX(エネルギー分散型X線分光分析器)を用いて、Cu−Sn合金被覆層のCu含有量を定量分析により求めた。
[Cu−Sn合金被覆層の表面露出面積率]
試験材の表面を、EDX(エネルギー分散型X線分光分析器)を搭載したSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて200倍の倍率で観察した。得られた組成像の濃淡(汚れや傷等のコントラストは除く)から画像解析によりCu−Sn合金被覆層の表面露出面積率を測定した。
【0048】
[Cu−Sn合金被覆層の平均の表面露出間隔の測定]
試験材の表面を、EDX(エネルギー分散型X線分光分析器)を搭載したSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて200倍の倍率で観察した。得られた組成像から、材料表面に圧延方向に垂直方向に引いた直線を横切るCu−Sn合金被覆層の平均の幅(前記直線に沿った長さ)とSn被覆層の平均の幅を足した値の平均を求めることにより、Cu−Sn合金被覆層の平均の材料表面露出間隔を測定した。
[表面に露出したCu−Sn合金被覆層の厚さの測定]
ミクロトーム法にて加工した試験材の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて10,000倍の倍率で観察し、画像解析処理により材料表面に露出するCu−Sn合金被覆層の厚さを算出した。
【0049】
【表3】
【0050】
リフロー処理後の試験材No.1〜8について、銅合金母材の圧延方向に垂直方向、45°傾斜した方向、及び平行方向の摩擦係数の評価試験を、下記の要領で行った。その結果を、表4に示す。なお、表4には、各試験材No.1〜8の銅合金母材のビッカース硬度差(VT−VL)を併記した。
【0051】
[摩擦係数評価試験]
嵌合型接続部品における電気接点のインデント部の形状を模擬し、
図2に示すような装置を用いて評価した。まず、各試験材(No.1〜8)から切り出した板材のオス試験片4を水平な台5に固定し、その上に試験材No.8から切り出した半球加工材(外径をφ2.0mmとした)のメス試験片6をおいて被覆層同士を接触させた。続いて、メス試験片6に2.0Nの荷重(錘7)をかけてオス試験片4を押さえ、横型荷重測定器(アイコーエンジニアリング株式会社;Model−2152)を用いて、オス試験片4を水平方向に引っ張り(摺動速度を80mm/minとした)、摺動距離5mmまでの最大摩擦力F(単位:N)を測定した。オス試験片4の摺動方向は圧延方向に垂直方向、45°傾斜した方向及び平行方向とした。摩擦係数を下記式(1)により求めた。なお、8はロードセル、矢印は摺動方向である。
摩擦係数=F/2.0 …(1)
【0052】
【表4】
【0053】
表2,3に示すように、試験材No.1〜8は、銅合金母材の表面粗さ、各被覆層の平均の厚さ及び表面粗さ、さらに、Cu−Sn合金被覆層のCu含有量、表面露出面積率、平均の表面露出間隔及び表面露出部の厚さについて、本発明の規定を満たす。また、試験片1〜3,5〜7は、ビッカース硬度差について本発明の規定(VT−VL≧4)を満たし、試験片4,8は同規定を満たさない。
その結果、表4に示すように、試験片No.1〜3,5〜7は、圧延方向に垂直方向の摩擦係数が、圧延方向に平行方向の摩擦係数より0.04超低く、圧延方向に45°傾斜した方向の摩擦係数はそれよりさらに低い。
これに対し、試験片No.4,8は、圧延方向に垂直方向及び圧延方向に45°傾斜した方向の摩擦係数が、圧延方向に平行方向の摩擦係数と大きく変わらない。
【0054】
なお、リフロー処理後の試験材No.1,7のSn被覆層、Cu−Sn合金被覆層及びNi被覆層をエッチングにより除去し、銅合金母材のビッカース硬さ(VT,VL)を前記要領で測定して、ビッカース硬度差(VT−VL)を求めた。試験材1,7とも、リフロー処理後の銅合金母材のビッカース硬度差(VT−VL)は、めっき前の銅合金母材のビッカース硬度差(VT−VL)と同じ値であった。
【課題】表面にCu−Sn合金被覆層及びSn被覆層がこの順に形成され、Cu−Sn合金被覆層の一部が表面に露出した接続部品用導電材料において、銅合金母材の圧延方向に対し垂直方向及び45°傾斜した方向の摩擦係数を、銅合金母材の圧延方向の摩擦係数より低減する導電材料。
【解決手段】導電材料の表面がリフロー処理され、少なくとも一方向における算術平均粗さRaが0.15μm以上で、全ての方向における算術平均粗さRaが3.0μm以下とされ、Cu−Sn合金被覆層の材料表面露出面積率が3〜75%、少なくとも一方向における平均の材料表面露出間隔が0.01〜0.5mmであり、ビッカース硬さ試験で銅合金母材の表面に残ったくぼみの圧延方向に平行な対角線の長さDLから求めたビッカース硬さをVL、圧延方向に垂直な対角線の長さDTから求めたビッカース硬さをVTとしたとき、VT−VL≧4である接続部品用導電材料。