(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に関わる炊飯器を、家庭用IH式炊飯器に適用した場合の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、この図面の形態は一例であり本発明を限定するものではない。また、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。なお、本実施の形態の炊飯工程の説明にて記載する温度と時間は一例であり、その数値によって本発明が限定されるものではない。
【0013】
実施の形態1.
(構成)
図1は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器の構成の一例を概略的に示す断面模式図である。以下、
図1に基づいて炊飯器100について説明する。
炊飯器100は、被加熱物(本実施の形態1では米200及び水201)を入れた鍋状容器5を加熱コイル3で加熱することで被加熱物を炊き上げるものである。
図1に示すように、炊飯器100は、例えば外観が有底筒状の本体1と、本体1に取り付けられ本体1の上部開口部を開閉する蓋体10とを備えている。
【0014】
本体1は、容器カバー2と、加熱手段である加熱コイル3と、鍋底温度センサー4と、時間計測手段7と、蓋体10を開閉自在に支持するヒンジ部6と、各部及び各装置を駆動制御して炊飯工程を実行する制御手段8とを備えている。
【0015】
容器カバー2は、有底筒状に形成されていて、その内部に鍋状容器5が着脱自在に収容される。容器カバー2の底部中央には、鍋底温度センサー4が挿入される孔部2aが設けられている。なお、鍋状容器5は、誘導加熱により発熱する材料で構成され、有底円筒形状である。鍋状容器5の上端部外周には、フランジ部5aが形成されている。
【0016】
加熱コイル3は、制御手段8により通電制御され、鍋状容器5を誘導加熱するものである。なお、加熱手段として、加熱コイル3に代えてシーズヒーター等の電気ヒーターを設けてもよい。加熱コイル3の配置は図示のものに限定されず、例えば鍋状容器5の底面近傍に加えて鍋状容器5の側面に沿って加熱コイル3を設けてもよい。
【0017】
鍋底温度センサー4は、例えばサーミスタで構成され、鍋状容器5の温度を検知する。本実施の形態1の鍋底温度センサー4は、バネ等の弾性手段によって上方に付勢されており、容器カバー2に収容された鍋状容器5の底面に接する。鍋底温度センサー4が検知した鍋状容器5の温度に関する情報は、制御手段8に出力される。なお、鍋底温度センサー4の具体的構成はサーミスタに限定されず、鍋状容器5に接触して温度を検知する接触式温度センサーのほか、例えば赤外線センサー等の鍋状容器5の温度を非接触で検知する非接触式温度センサーを採用してもよい。
【0018】
ヒンジ部6は、本体1の上部の一端側(
図1の紙面左側)に設けられ、蓋体10を開閉自在に支持する。
【0019】
時間計測手段7は、制御手段8からの指示信号に基づいて経過時間をカウントする。時間計測手段7がカウントした経過時間は、制御手段8に出力される。
【0020】
制御手段8は、鍋底温度センサー4、並びに蓋体10に設けられた操作表示部15及び内部温度センサー16からの出力に基づいて、加熱コイル3に通電する高周波電流を制御する。そのほか、制御手段8は、炊飯器100の動作全般を制御する。制御手段8は、その機能を実現する回路デバイスのようなハードウェアで構成することもできるし、マイコンやCPUのような演算装置と、その上で実行されるソフトウェアとにより構成することもできる。
【0021】
蓋体10は、外蓋11と、内蓋12とを有している。外蓋11には、着脱できるカートリッジ14が設けられ、外蓋11の上面には操作表示部15が設けられている。
【0022】
外蓋11は、蓋体10の上部及び側部を構成し、外蓋11の下面(鍋状容器5に対向する面)には、係止材13を介して、内蓋12が着脱自在に取り付けられている。また、外蓋11の下面には内部温度センサー16、そして内蓋12には内部温度センサー16を挿入させる孔部12aが設けられ、内蓋12の周縁部には、鍋状容器5の上端部外周に形成されたフランジ部5aとの密閉性を確保するシール材である蓋パッキン9が取り付けられている。さらに、内蓋12には、鍋状容器5内で発生した蒸気が出入する蒸気口12bが設けられ、後述するカートリッジ14の蒸気取入口14aと通じている。なお、外蓋11には、内蓋12の孔部12aに挿入された内部温度センサー16の外周の隙間を塞ぐパッキン11aが取り付けられている。
【0023】
カートリッジ14には、炊飯中に発生する蒸気圧に応じて上下動する弁(図示せず)を備えた蒸気取入口14aと、蒸気取入口14aの弁を通過した蒸気を外部へ排出する蒸気排出口14bとが設けられている。蒸気取入口14aは、蒸気口12bに通じており、発生した蒸気は蒸気口12bを通過して蒸気取入口14aからカートリッジ14内に入ってカートリッジ14内を流れ、蒸気排出口14bからカートリッジ14の外へ流出する。カートリッジ14内を流れる過程において蒸気は冷却されて復水するので、炊飯器100の外へ流出する蒸気量を減らすことができる。
【0024】
操作表示部15は、外蓋11の上面に設けられている。この操作表示部15は、使用者からの操作入力を受け付けるとともに、操作入力に関する情報及び炊飯器100の動作状態を表示する。操作表示部15に対して設定可能な項目としては、例えば、炊飯の開始、取り消し、炊飯予約、炊飯メニューがある。操作表示部15が表示する項目としては、例えば、炊飯中又は予約待機中等の炊飯器100の状態、設定されている炊飯メニューの内容、炊き上がりの予定時刻、現在時刻、炊飯する米の量等が挙げられる。
【0025】
炊飯メニューは、例えば白米炊飯又は玄米炊飯等の米の種類に関するもの、そして標準(ふつう)モードAと成分増量モードB等の炊き方に関するものを備え、米の種類を決定した後に炊き方を選択する。なお、標準(ふつう)モードAは、硬さと粘りに関して顕著な特性を有さず、万人に好まれる食感に炊き上げるモードである。成分増量モードBは同じ種類の米、同量の水で炊飯した際に、単位重量あたりの飯の中に含まれる所定の成分が標準(ふつう)モードAよりも多くなるモードである。
なお、標準(ふつう)モードAは、本発明における「第1炊飯モード」に相当する。
また、成分増量モードBは、本発明における「第2炊飯モード」に相当する。
【0026】
操作表示部15に対して使用者が操作入力を行うと、本体1に内蔵された制御手段8は、入力された炊飯メニュー及び炊飯する米の量に合わせた炊飯プログラムに従って、加熱コイル3を動作させて炊飯工程を実行する。また、制御手段8は、選択された炊飯メニュー(各モード)の情報を操作表示部15に表示させる。
【0027】
内部温度センサー16は、鍋状容器5内の温度を検知する温度検知手段である。内部温度センサー16の一部は内蓋12の孔部12aに挿入されており、内部温度センサー16は孔部12aを介して鍋状容器5内の温度を検知する。内部温度センサー16は、例えばサーミスタで構成することができる。内部温度センサー16が検知した鍋状容器5内の温度に関する情報は、制御手段8に出力される。
【0028】
なお、
図21に示すように、鍋状容器5内の被加熱物を接触式で検知する被加熱物温度センサー17を設けても良い。被加熱物温度センサー17は、例えばサーミスタで構成することができる。被加熱物温度センサー17が検知した鍋状容器5内の被加熱物の温度に関する情報は、制御手段8に出力される。
【0029】
なお、鍋底温度センサー4は、本発明における「温度検出手段」に相当する。
また、操作表示部15は、本発明における「操作手段」及び「報知手段」に相当する。
また、内部温度センサー16は、本発明における「第2温度検出手段」に相当する。
また、被加熱物温度センサー17は、本発明における「第3温度検出手段」に相当する。
【0030】
(動作)
次に、本実施の形態1に係る炊飯器100の炊飯工程について
図2を用いて説明する。
図2は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器の炊飯工程と、被加熱物温度及び鍋状容器温度との関係を概略的に示す図である。
なお、本実施の形態1では、被加熱物温度、すなわち鍋状容器5の内部温度を内部温度センサー16の検出値に基づいて検出する。また、鍋状容器温度(鍋状容器5の温度)を、鍋底温度センサー4の検出値に基づいて検出する。
【0031】
炊飯工程の流れについて大まかに説明する。
図2に示すように、実施の形態1に係る炊飯工程は、予熱工程(ステップa)、昇温工程(ステップb)、沸騰工程(ステップc)、むらし工程(ステップd)で構成される。
【0032】
予熱工程(ステップa)は、米に吸水を促す工程である。
【0033】
昇温工程(ステップb)は、吸水工程が終了したのち、被加熱物(米200と水201)が沸騰温度に至るまでの工程である。
【0034】
沸騰維持工程(ステップc)は、被加熱物(米200と水201)を沸騰温度に維持し、デンプンの糊化が盛んに行われる工程である。加熱が継続されると、炊飯液(米200から溶け出した成分と水201の混合液)が徐々に少なくなり、炊飯液が消失するとドライアップと判定され、むらし工程へ移行する。
【0035】
むらし工程(ステップd)は、米を蒸らすことにより米の中心部まで糊化を促進させ、米粒内の水分分布を均一にする工程である。むらし工程が終わると炊飯は終了する。
【0036】
次に、本実施の形態1に係る炊飯器100の炊飯工程の制御に関し、標準(ふつう)モードAと成分増量モードBとを説明する。
以下、標準(ふつう)モードAの炊飯制御を説明したあと、成分増量モードBの炊飯制御について、標準(ふつう)モードAと比較しながらその特徴について説明する。
【0037】
[標準(ふつう)モードA]
標準(ふつう)モードAは、他のモードと比較し食感に関して顕著な特性を有さず、万人に好まれる飯に炊き上げる炊飯制御を行うモードである。
【0038】
まず、使用者は洗米した米200を鍋状容器5に投入し、規定量の水201を加える。鍋状容器5の内側には炊飯量に応じた目盛り線(水位目盛り)が印字されている。なお、何れのモードにおいても、米の種類が同じであれば同一の目盛りを使用する。つまり、標準(ふつう)モードA、成分増量モードBの目盛りは同じである。目盛りを統一する理由は、目盛りが複数あることにより使用者が間違った目盛りに水位合わせしてしまう事態を防ぐためである。
【0039】
次に、使用者は、米200及び水201を入れた鍋状容器5を本体1にセットし、操作表示部15にて米種を決定し、炊き方の中から標準(ふつう)モードAを選択する。モードを設定したのち、炊飯ボタンを押下すると、制御手段8は炊飯制御を開始する。また、制御手段8は、選択されたモードの情報を操作表示部15に表示させる。
【0040】
図3は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器の標準(ふつう)モードAの炊飯工程を示すフローチャートである。以下、
図3の各ステップに基づき説明する。
【0041】
(予熱工程)
まず、予熱工程が開始すると(ステップSa)、制御手段8は時間計測手段7に予熱工程時間B
予熱の計測を開始させ(ステップSa1)、加熱コイル3へ電力を供給する。制御手段8は、加熱コイル3への通電及び遮断を繰り返し、鍋底温度センサー4の検知する鍋状容器5の温度が所定の予熱温度T
a(例えば60℃)を維持するよう火力調節する(ステップSa2)。そして予熱工程時間B
予熱が所定時間(例えば20分)を経過すると(ステップSa3:Yes)、制御手段8は、予熱工程を終了し昇温工程へ移行する。
【0042】
(昇温工程)
昇温工程が開始すると(ステップSb)、制御手段8は加熱コイル3へ電力P
aを供給する(ステップSb1)。そして内部温度センサー16が、被加熱物(米200と水201)が沸騰したと判断される所定の温度(例えば80℃)を検知すると(ステップSb2:Yes)、沸騰工程へ移行する。
なお、内部温度センサー16が検知する鍋状容器5内の空間温度は、実際の被加熱物の温度よりも遅く沸騰温度(例えば100℃)に到達するため、被加熱物の温度が沸騰温度に到達する時に内部温度センサー16が検知する温度(例えば80℃)を、沸騰工程へ移行するか否かを判定する所定の温度として設定している。
【0043】
(沸騰工程)
沸騰工程が開始すると(ステップSc)、制御手段8は加熱コイル3へ電力P
bを供給する(ステップSc1)。電力P
bは被加熱物(米200と炊飯液)が沸騰状態を維持できる電力とする。炊飯液が存在している間は、被加熱物及び鍋状容器5の温度は100℃を維持し、鍋状容器5の釜肌付近の炊飯液が消失し始めると、被加熱物及び鍋状容器5の温度は100℃以上になる。そして鍋底温度センサー4の検知する鍋状容器5の温度が100℃以上の所定のドライアップ判定温度(例えば130℃)に到達すると(ステップSc2:Yes)、制御手段8は、炊飯液が消失したと判断し、むらし工程へ移行する。
【0044】
(むらし工程)
むらし工程が開始すると(ステップSd)、制御手段8は時間計測手段7に経過時間B
むらしの計測を開始させ(ステップSd1)、加熱コイル3へ電力P
cを供給する(ステップSd2)。経過時間B
むらしが所定時間(例えば15分)を経過すると(ステップSd3:Yes)、制御手段8は、炊飯制御を終了する。
【0045】
なお、標準(ふつう)モードAの炊飯制御にて用いた温度や時間は、一例であり本発明を限定するものではない。
【0046】
[成分増量モードB]
次に、成分増量モードBの炊飯制御について、標準(ふつう)モードAと比較しながらその特徴について説明する。
【0047】
(予熱工程)
図4は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器の成分増量モードBの予熱工程の一例を示すフローチャートである。成分増量モードBの予熱工程を、
図4を用いて説明する。
予熱工程が開始すると(ステップSa)、制御手段8は時間計測手段7を用いて予熱工程時間B
予熱の計測を開始し(ステップSa4)、鍋状容器5の温度が所定の予熱温度(例えば40℃)を維持するよう火力調節する(ステップSa5)。予熱工程時間B
予熱が所定時間(例えば20分)を経過すると(ステップSa6:Yes)、制御手段8は、予熱工程を終了する。
このような、成分増量モードBの予熱工程において、制御手段8は、ステップSa5における予熱温度を、標準(ふつう)モードAの予熱温度よりも低く設定する。なお、ステップSa6における所定時間は、標準(ふつう)モードAの所定時間と同じである。
【0048】
ここで、予熱工程における予熱温度が低いほど、米200の吸水が抑制され、予熱工程の吸水抑制が炊きあがりの飯の低含水率化に寄与する。即ち、予熱工程の予熱温度を低くすることにより、炊きあがりの飯の含水率を低減できる。よって、飯の成分が濃縮され、単位重量あたりの飯の成分が増加するという効果を奏する。
【0049】
(予熱工程の変形例1)
図5は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器の成分増量モードBの予熱工程の変形例1を示すフローチャートである。成分増量モードBの予熱工程の変形例1を、
図5を用いて説明する。
予熱工程が開始すると(ステップSa)、制御手段8は時間計測手段7を用いて予熱工程時間B
予熱の計測を開始し(ステップSa7)、鍋状容器5の温度が所定の予熱温度(例えば60℃)を維持するよう火力調節する(ステップSa8)。予熱工程時間B
予熱が所定時間(例えば10分)を経過すると(ステップSa9:Yes)、制御手段8は、予熱工程を終了する。
この成分増量モードBの予熱工程において、制御手段8はステップSa9における所定時間を、標準(ふつう)モードAの所定時間よりも短く設定する。なお、ステップSa8における予熱温度は、標準(ふつう)モードAの予熱温度と同じである。
【0050】
このように、予熱工程の時間を標準(ふつう)モードAよりも短くすることで、米200の吸水を抑制することができる。このため、炊きあがりの飯の含水率を低減できる。よって、飯の成分が濃縮され、単位重量あたりの飯の成分が増加するという効果を奏する。
【0051】
(予熱工程の変形例2)
図6は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器の成分増量モードBの予熱工程の変形例2を示すフローチャートである。成分増量モードBの予熱工程の変形例2を、
図6を用いて説明する。
予熱工程が開始すると(ステップSa)、制御手段8は時間計測手段7を用いて予熱工程時間B
予熱の計測を開始し(ステップSa10)、鍋状容器5の温度が所定の予熱温度(例えば40℃)を維持するよう火力調節する(ステップSa11)。予熱工程時間B
予熱が所定時間(例えば10分)を経過すると(ステップSa12:Yes)、制御手段8は、予熱工程を終了する。
この成分増量モードBの予熱工程において、制御手段8は、ステップSa11における予熱温度を、標準(ふつう)モードAの予熱温度よりも低く設定する。また、制御手段8は、ステップSa12における所定時間を、標準(ふつう)モードAの所定時間よりも短く設定する。
【0052】
このように、予熱工程の予熱温度を低くし、且つ、予熱工程の時間を標準(ふつう)モードAよりも短くすることで、米200の吸水をさらに抑制することができる。このため、炊きあがりの飯の含水率をより低減できる。よって、飯の成分が濃縮され、単位重量あたりの飯の成分が増加するという効果を奏する。
【0053】
(昇温工程)
図7は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器の成分増量モードBの昇温工程の一例を示すフローチャートである。成分増量モードBの昇温工程を、
図7を用いて説明する。
昇温工程が開始すると(ステップSb)、制御手段8は、標準(ふつう)モードAの昇温工程の電力P
aよりも大きい電力P
dを、加熱コイル3へ供給する(ステップSb3)。そして内部温度センサー16が、被加熱物(米200と水201)が沸騰したと判断される所定の温度(80℃)を検知すると(ステップSb4:Yes)、沸騰工程へ移行する。
なお、所定の温度は、本発明における「第1温度」に相当する。
【0054】
このように、昇温工程の電力P
dを、標準(ふつう)モードAの昇温工程の電力P
aよりも大きくすることにより、昇温速度が上がり昇温工程開始から沸騰検知までの時間が短縮される。この時間短縮により、昇温工程での米200への吸水が抑制され、沸騰工程開始時点での米の吸水量が小さくなる。よって、炊きあがり飯の含水率を低くするという効果を奏する。また、炊きあがり飯の含水率を低くすることにより、飯の成分が濃縮され、単位重量あたりの飯の成分が増加する効果を奏する。
【0055】
(炊飯器100から外部へ放出される水蒸気量)
成分増量モードBの沸騰工程を説明する前に、各炊飯工程にて炊飯器100から外部へ放出される水蒸気量について
図8を用いて説明する。
【0056】
図8は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器の炊飯工程と各工程の電力と各工程の蒸発量とを概略的に示す図である。
図8(a)は、炊飯工程の各工程と被加熱物温度及び鍋状容器温度との関係を示す。
図8(b)は、加熱コイル3へ供給される電力を示す。
図8(c)は、炊飯器100から外部へ放出される蒸発量の推移を示す。
炊飯工程の各工程のうち、沸騰工程において盛んに水の相変化(液体から気体)が起こる。このため、炊飯工程の各工程のうち、沸騰工程の蒸発量が最も多い。従って炊飯工程の各工程のうち沸騰工程の火力(電力)を上げることが、最も効率よく低含水率化を実現する手段である。
【0057】
また熱に弱い成分は、温度が高いほど、また加熱時間が長いほどその損失量が多いことが知られている。炊飯工程のうち、沸騰工程が最も高温で長時間加熱する工程であるため、この沸騰工程の加熱時間を短縮することが、成分の熱損失を抑制する観点からも最も有効な手段であるといえる。このようなことから、本実施の形態1の炊飯器100は、成分増量モードBにおける沸騰工程の時間が、標準(ふつう)モードAにおける沸騰工程の時間よりも短くする。
【0058】
なお、本実施の形態1に係る炊飯器100は、成分増量モードBにおける沸騰工程の時間を、標準(ふつう)モードAよりも短縮することにより、加熱時間の短縮に伴う成分の熱分解を抑制する。このため、沸騰工程の時間に影響する沸騰工程の開始タイミングの制御が重要である。すなわち、沸騰工程が開始したタイミングの被加熱物の沸騰状態は、標準(ふつう)モードAと成分増量モードBにてほぼ等しくすることが望ましい。
【0059】
上述した昇温工程においては、内部温度センサー16が検知した温度が所定の温度(例えば80℃)に到達すると、被加熱物の沸騰状態を検知して沸騰工程を開始する場合を説明したが、本発明はこれに限定されない。
被加熱物の沸騰状態を検知する手段として、鍋状容器5の温度を接触式で検知する鍋底温度センサー4、鍋状容器5内の空間温度を検知する内部温度センサー16、そして鍋状容器5内の被加熱物を接触式で検知する被加熱物温度センサー17が挙げられる。以下、それぞれのメリットとデメリットを説明する。
【0060】
鍋底温度センサー4を用いた場合、鍋底温度センサー4は被加熱物が収容される鍋状容器5の温度を接触式にて測定するため、測定誤差が小さく、被加熱物温度検知の再現性が良いというメリットがある。また鍋底温度センサー4は被加熱物に直接触れないため、衛生的である。一方、鍋状容器5の温度は被加熱物温度よりも早く沸騰温度に到達するため、被加熱物が沸騰状態に到達する前に沸騰工程が開始され、被加熱物全体が沸騰状態になるまでにタイムラグが生じてしまうデメリットがある。
【0061】
内部温度センサー16を用いた場合、内部温度センサー16が検知する鍋状容器5内の空間温度は被加熱物温度よりも遅く100℃に到達するため、予め被加熱物が沸騰温度に到達する時に内部温度センサー16が検知する温度(例えば、80℃)を調べ、その温度を検知したら沸騰工程を開始するよう設定すれば、被加熱物が沸騰温度に到達するタイミングにて沸騰工程を開始することができる、というメリットがある。また内部温度センサー16が被加熱物に直接触れないため、衛生的である。
【0062】
被加熱物温度センサー17を用いた場合、直接人の口に入る被加熱物にセンサーが接触するため衛生面での懸念はあるが、被加熱物を接触式で検知するため最も正確に被加熱物温度を検知できる、というメリットがある。
【0063】
本実施の形態1においては、内部温度センサー16が検知した温度に基づいて被加熱物の沸騰状態を検知する場合を説明するが、上述したメリット及びデメリットを勘案して、鍋底温度センサー4、内部温度センサー16、及び被加熱物温度センサー17のうちから任意のセンサーを用いて沸騰状態を検知しても良い。
【0064】
(沸騰工程)
図9は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器の成分増量モードBの沸騰工程の一例を示すフローチャートである。成分増量モードBの沸騰工程を、
図9を用いて説明する。
沸騰工程が開始すると(ステップSc)、制御手段8は、標準(ふつう)炊飯モードにおける沸騰工程の電力P
bよりも大きい電力P
eを、加熱コイル3へ供給する(ステップSc3)。炊飯液が存在している間は、被加熱物及び鍋状容器5の温度は沸騰温度(約100℃)を維持し、鍋状容器5の釜肌付近の炊飯液が消失し始めると、被加熱物及び鍋状容器5の温度は沸騰温度以上になる。そして、鍋底温度センサー4が所定のドライアップ判定温度(130℃)を検知すると(ステップSc4:Yes)、制御手段8は、炊飯液が消失したと判断し、むらし工程へ移行する。
なお、ドライアップ判定温度は、本発明における「第2温度」に相当する。
【0065】
このように、成分増量モードBの沸騰工程にて、標準(ふつう)モードAの電力P
bよりも大きい電力P
eを加熱コイル3へ供給するので、沸騰工程の開始からドライアップまでの時間が短くなり、沸騰工程時間が短縮される。このため、米200に含まれる熱に弱い成分の熱損失を抑制することができる。
また、沸騰工程における蒸発量が標準(ふつう)モードAよりも増加するので、炊きあがりの飯の含水率を低減できる。よって、飯の成分が濃縮され、単位重量あたりの飯の成分が増加するという効果を奏する。
【0066】
なお、被加熱物の炊飯液が消失するタイミングの前後にて投入する電力を可変してもよい。以下、変形例1〜3において、このような制御動作例を説明する。
【0067】
(沸騰工程の変形例1)
図10は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器の成分増量モードBの沸騰工程の変形例1を示すフローチャートである。成分増量モードBの沸騰工程の変形例1を、
図10を用いて説明する。
沸騰工程が開始すると(ステップSc)、制御手段8は時間計測手段7を用いて経過時間B
沸騰の計測を開始し(ステップSc5)、加熱コイル3へ電力P
fを供給する(ステップSc6)。経過時間B
沸騰が所定時間(例えば15分)を経過すると(ステップSc7:Yes)、制御手段8は加熱コイル3へ電力P
gを供給する(ステップSc8)。そして、鍋底温度センサー4が所定のドライアップ判定温度(130℃)を検知すると(ステップSc9:Yes)、制御手段8は、むらし工程へ移行する。
【0068】
このように、制御手段8は、沸騰工程の開始から所定時間を経過したあと沸騰工程の電力を可変する。この所定時間(例えば15分)は、例えば3合炊飯の場合に釜肌付近の炊飯液が消失する時間である。なお、炊飯量が異なる場合は炊飯液が消失するタイミングが異なるため、炊飯量判定手段を備え、炊飯量判定結果に基づいて所定時間を設定しても良い。炊飯量判定手段としては、例えば重量計測手段を備えて炊飯開始時の鍋状容器5の重量に基づいて判定する方法や、昇温工程の昇温速度に基づいて判定する方法等がある。
なお、この所定時間は、本発明における「第1時間」に相当する。
【0069】
なお、電力P
fと電力P
gの総電力は、標準(ふつう)モードAの電力P
bよりも大きくする。これにより、標準(ふつう)モードAの沸騰工程よりも蒸発量が多く、沸騰工程の加熱時間を短縮することができる。よって、米200に含まれる熱に弱い成分の熱損失を抑制することができる。
【0070】
なお、投入する電力P
fと電力P
gはどちらを大きくしても良い。
電力P
fを大きくした場合(釜肌付近の炊飯液が消失するタイミングより前の工程の電力を大きくした場合)、この時は炊飯液が存在しているため、発生した熱エネルギーの大部分は水201の蒸発エネルギーに使用される。従って加熱コイル3や制御手段8が過加熱になることなく、大火力の投入を続けることができるというメリットがある。一方、ドライアップ判定の直前に炊飯液が泡状になって釜上部まで上昇する現象が起こるため、吹きこぼれの恐れが生じるというデメリットがある。
【0071】
電力P
gを大きくした場合(釜肌付近の炊飯液が消失するタイミングより後の工程の電力を大きくした場合)、鍋状容器5の釜底の水分を十分に飛ばしてからむらし工程へ移行するため、釜底の飯が水分過多により崩壊するのを防ぐことができる。なお、例えば、かまど炊飯は高火力のため釜底の飯の含水率が上部の含水率よりも小さくなるが、本ケースのように、沸騰工程のドライアップ判定後に電力P
gを大きくすると、かまど炊飯の含水率分布に近づけることができる。一方、この工程では炊飯液が存在していないため、電力P
gを大きくしすぎると、加熱コイル3や制御手段8が過加熱になってしまうというデメリットがある。また、炊きあがった飯におこげが生じてしまう可能性もある。
【0072】
(沸騰工程の変形例2)
上述した沸騰工程の変形例1では、電力P
fから電力P
gへ移行するタイミングの判定(ステップSc7)の所定時間を、鍋状容器5の釜肌付近の炊飯液が消失する時間に設定する場合を説明したが、この所定時間を、釜肌付近の被加熱物の炊飯液が消失するタイミングよりも短く設定しても良い。この炊飯制御を、
図11を用いて説明する。
【0073】
図11は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器の成分増量モードBの沸騰工程の変形例2を示すフローチャートである。成分増量モードBの沸騰工程の変形例2を、
図11を用いて説明する。
沸騰工程が開始すると(ステップSc)、制御手段8は時間計測手段7を用いて経過時間B
沸騰の計測を開始し(ステップSc10)、加熱コイル3へ電力P
fを供給する(ステップSc11)。経過時間B
沸騰が所定時間(例えば10分)を経過すると(ステップSc12:Yes)、制御手段8は加熱コイル3へ電力P
gを供給する(ステップSc13)。そして、鍋底温度センサー4が所定のドライアップ判定温度(130℃)を検知すると(ステップSc14:Yes)、制御手段8は、むらし工程へ移行する。
【0074】
例えば電力P
fを電力P
gよりも大きくする場合、上述した炊飯液が泡状になって釜上部まで上昇する現象が起こる前に電力P
fよりも小さい電力P
gへ移行するので、おねばの吹きこぼれを回避することができる。このように、電力P
fから電力P
gへ移行するタイミングを経過時間B
沸騰に基づいて判断する事により、移行タイミングを任意の時間に可変できる、というメリットがある。
【0075】
(沸騰工程の変形例3)
上述した沸騰工程の変形例1及び2では、電力P
fから電力P
gへ移行するタイミングを経過時間B
沸騰に基づき判定(ステップSc7、c12)する場合を説明したが、鍋底温度センサー4が検知した鍋状容器5の温度に基づき判定しても良い。この炊飯制御を、
図12を用いて説明する。
【0076】
図12は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器の成分増量モードBの沸騰工程の変形例3を示すフローチャートである。成分増量モードBの沸騰工程の変形例3を、
図12を用いて説明する。
沸騰工程が開始すると(ステップSc)、制御手段8は加熱コイル3へ電力P
fを供給する(ステップSc15)。そして鍋底温度センサー4が検知する鍋状容器5の温度が、所定温度(105℃)以上になると(ステップSc16:Yes)、制御手段8は加熱コイル3へ電力P
gを供給する(ステップSc17)。そして、そして、鍋底温度センサー4が所定のドライアップ判定温度(130℃)を検知すると(ステップSc18:Yes)、制御手段8は、むらし工程へ移行する。
なお、この変形例3における所定温度は、本発明における「第3温度」に相当する。
【0077】
このように、電力P
fから電力P
gへ移行するタイミングを鍋底温度センサー4の検知温度に基づいて判断することにより、炊飯量判定手段を設けなくてもよいというメリットがある。つまり、鍋底温度センサー4が検知した鍋状容器5の温度が所定温度(105℃)となるタイミングは炊飯量に準じて変化するため、炊飯量にかかわらず炊飯液が消失したタイミングを判定することができる。
一方、移行タイミングをドライアップ判定前の任意のタイミングに可変できない、というデメリットがある。ドライアップ判定前は、鍋状容器5は沸騰温度(100℃)に維持されるためである。
【0078】
(沸騰工程の変形例4)
図13は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器の成分増量モードBの沸騰工程の変形例4を示すフローチャートである。
次に、ドライアップ判定温度を、標準(ふつう)モードAとは異なる温度に設定した炊飯制御について、
図13(a)、(b)を用いて説明する。
【0079】
図13(a)は、ドライアップ判定温度を、標準(ふつう)モードAよりも高くした沸騰工程を示している。
沸騰工程が開始すると(ステップSc)、制御手段8は、標準(ふつう)炊飯モードにおける沸騰工程の電力P
bよりも大きい電力P
eを、加熱コイル3へ供給する(ステップSc19)。炊飯液が存在している間は、被加熱物及び鍋状容器5の温度は沸騰温度(約100℃)を維持し、鍋状容器5の釜肌付近の炊飯液が消失し始めると、被加熱物及び鍋状容器5の温度は沸騰温度以上になる。そして、鍋底温度センサー4が、標準(ふつう)モードAよりも高い所定のドライアップ判定温度(140℃)を検知すると(ステップSc20a:Yes)、制御手段8は、むらし工程へ移行する。
【0080】
このように、ドライアップ判定温度を、標準(ふつう)モードAのドライアップ判定温度(130℃)よりも高温にすると、加熱コイル3への電力P
eの供給時間が長くなるため、水分が蒸発する時間が延長し、より含水率の低い飯を炊き上げることができる。
【0081】
図13(b)は、ドライアップ判定温度を、標準(ふつう)モードAよりも低くした沸騰工程を示している。
沸騰工程が開始すると(ステップSc)、制御手段8は、標準(ふつう)炊飯モードにおける沸騰工程の電力P
bよりも大きい電力P
eを、加熱コイル3へ供給する(ステップSc19)。炊飯液が存在している間は、被加熱物及び鍋状容器5の温度は沸騰温度(約100℃)を維持し、鍋状容器5の釜肌付近の炊飯液が消失し始めると、被加熱物及び鍋状容器5の温度は沸騰温度以上になる。そして、鍋底温度センサー4が、標準(ふつう)モードAよりも低い所定のドライアップ判定温度(120℃)を検知すると(ステップSc21:Yes)、制御手段8は、むらし工程へ移行する。
【0082】
このように、ドライアップ判定温度を、標準(ふつう)モードAのドライアップ判定温度(130℃)よりも低温にすると、沸騰工程の時間が短縮されるため、熱に弱い成分の熱損失を抑制する効果を奏する。またドライアップ時の釜肌に接する飯の温度が標準(ふつう)モードAよりも低温になるため、釜肌に接する飯の成分の熱損失も抑制できる。そしてドライアップ温度が低いために飯が硬くなりすぎず、食味が向上する。
【0083】
(むらし工程)
図14は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器の成分増量モードBのむらし工程の一例を示すフローチャートである。成分増量モードBのむらし工程を、
図14を用いて説明する。
むらし工程が開始すると(ステップSd)、制御手段8は時間計測手段7を用いて経過時間B
むらしの計測を開始する(ステップSd4)。次に、制御手段8は、標準(ふつう)モードAのむらし工程の電力P
Cよりも大きい電力P
h を、加熱コイル3へ供給する(ステップSd5)。そして、経過時間B
むらしが所定時間(例えば15分)を経過すると(ステップSd6:Yes)、制御手段8は、炊飯を終了する。
【0084】
このように、むらし工程における電力P
hを、標準(ふつう)モードAのむらし工程における電力P
Cよりも大きくすることにより、単位時間当たりの蒸発量が増加し、炊きあがりの飯の含水率を低減できる。よって、飯の成分が濃縮され、単位重量あたりの飯の成分が増加するという効果を奏する。
【0085】
(むらし工程の変形例1)
図15は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器の成分増量モードBのむらし工程の変形例1を示すフローチャートである。成分増量モードBのむらし工程の変形例1を、
図15を用いて説明する。
本変形例1では、ステップSd6の所定時間を、標準(ふつう)モードAの所定時間(ステップSd3)よりも短く設定する。
【0086】
このように、むらし工程の時間を、標準(ふつう)モードAよりも短くすることにより、低含水率化が顕著に進むのを抑制し、飯が許容範囲外の硬さになることを抑制することができる効果を奏する。
【0087】
(むらし工程の変形例2)
図16は、本発明の実施の形態1に係る炊飯器の成分増量モードBのむらし工程の変形例2を示すフローチャートである。成分増量モードBのむらし工程の変形例2を、
図15を用いて説明する。
むらし工程が開始すると(ステップSd)、制御手段8は時間計測手段7を用いて経過時間B
むらしの計測を開始する(ステップSd7)。次に、制御手段8は、鍋状容器5の温度が所定の釜底温度(例えば105℃)を維持するよう火力調節する(ステップSa8)。そして、経過時間B
むらしが所定時間(例えば15分)を経過すると(ステップSd9:Yes)、制御手段8は、炊飯を終了する。
ここで、所定の釜底温度は、標準(ふつう)モードAにおけるむらし工程の温度(例えば、100℃)よりも高い温度に設定する。
なお、この釜底温度は、本発明における「第4温度」に相当する。
【0088】
このように、むらし工程の釜底温度を、標準(ふつう)モードAの釜底温度よりも高くすると、むらし工程における蒸発量が標準(ふつう)モードAよりも増加するので、炊きあがりの飯の含水率を低減できる。よって、飯の成分が濃縮され、単位重量あたりの飯の成分が増加するという効果を奏する。
【0089】
以上のように本実施の形態1においては、成分増量モードBの標準(ふつう)モードAに対する変更点を、予熱工程、昇温工程、沸騰工程、むらし工程の4工程に分けて説明した。本発明は、成分増量モードBの4工程の全てを標準(ふつう)モードAに対して変更する場合に限定されない。成分増量モードBは、これら全ての工程を標準(ふつう)モードAに対して変更してもよいし、一部の工程のみを変更してもよい。
【0090】
成分増量モードBの全ての工程(予熱工程、昇温工程、沸騰工程、むらし工程の全て)を実施の形態1にて説明した制御へ変更した方が、より含水率が低くなり、かつ加熱時間が短縮するため、単位重量あたりの飯に含まれる成分が増加するというメリットがある。
一方、含水率が顕著に低下してしまう可能性があるが、これを避けたい場合には、一部の工程のみを適用すれば良い。但し、低含水率化と加熱時間短縮が最も効率よく進む沸騰工程は、本実施の形態1で説明した成分増量モードBの沸騰工程を適用するのが望ましい。
【0091】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、炊きあがった飯の低含水率化と加熱時間短縮の両者を実現し、単位重量当たりの飯の成分量を多くする炊飯制御について説明した。本実施の形態2では、飯の低含水率化と加熱時間短縮の両者を実現し、且つ実施の形態1の飯よりも食味を向上させる炊飯制御について説明する。
なお、本実施の形態2における炊飯器100の構成、及び、標準(ふつう)モードAの炊飯工程は、実施の形態1と同じである。また、本実施の形態2における成分増量モードBの沸騰工程は、上記実施の形態1と同じである。
【0092】
(予熱工程)
図17は、本発明の実施の形態2に係る炊飯器の成分増量モードBの予熱工程の一例を示すフローチャートである。成分増量モードBの予熱工程を、
図17を用いて説明する。
予熱工程が開始すると(ステップSa)、制御手段8は時間計測手段7を用いて予熱工程時間B
予熱の計測を開始し(ステップSa13)、鍋状容器5の温度が所定の予熱温度(例えば60℃)を維持するよう火力調節する(ステップSa14)。予熱工程時間B
予熱が、所定時間(例えば30分)を経過すると(ステップSa15:Yes)、制御手段8は、予熱工程を終了する。
この成分増量モードBの予熱工程において、制御手段8はステップSa15における所定時間を、標準(ふつう)モードAの所定時間よりも長く設定する。なお、ステップSa14における予熱温度は、標準(ふつう)モードAの予熱温度と同じである。
【0093】
このように、予熱工程の時間を標準(ふつう)モードAよりも長くすることで、上記実施の形態1と比較して、予熱工程で米の吸水が促進し米粒中心まで到達する水分の量が多くなる。このため、炊きあがりの飯は芯が無く、軟らかくて食べやすい飯を炊き上げる効果がある。
なお、予熱工程の加熱時間が上記実施の形態1と比較して長くなるため、米の成分の熱損失が懸念されるが、熱損失の大部分は沸騰工程にて生じており、比較的低温である予熱工程の延長が熱損失へ及ぼす影響は小さい。
【0094】
(昇温工程)
図18は、本発明の実施の形態2に係る炊飯器の成分増量モードBの昇温工程の一例を示すフローチャートである。成分増量モードBの昇温工程を、
図18を用いて説明する。
昇温工程が開始すると(ステップSb)、制御手段8は、標準(ふつう)モードAの昇温工程の電力P
aよりも小さい電力P
iを、加熱コイル3へ供給する(ステップSb5)。そして内部温度センサー16が、被加熱物(米200と水201)が沸騰したと判断される所定の温度(80℃)を検知すると(ステップSb6:Yes)、沸騰工程へ移行する。
【0095】
このように、昇温工程の電力(加熱量)を、標準(ふつう)モードAよりも小さくすることで、昇温工程の昇温速度が上記実施の形態1と比較して遅くなるため、米の吸水が促進される。このため、上記実施の形態1と比較して、軟らかくて食べやすい飯を炊き上げる効果がある。
また、昇温工程の温度帯にて酵素が活性化する成分は、前記温度帯の通過時間が長くなることにより増加する。ゆえに酵素による成分の生成が成分増量に寄与するというメリットがある。
【0096】
なお、本実施の形態2における成分増量モードBの予熱工程及び昇温工程の両方または何れか一方のみを、上記実施の形態1における成分増量モードBの予熱工程と昇温工程とに適用するようにしてもよい。これにより、実施の形態1と比較して、沸騰工程前に吸水が促進し、飯が軟らかくなり食味が向上するとともに、沸騰工程では実施の形態1に記載の高火力加熱が実施されるため、低含水率化と加熱時間短縮も実現できる。
【0097】
(むらし工程)
図19は、本発明の実施の形態2に係る炊飯器の成分増量モードBのむらし工程の一例を示すフローチャートである。成分増量モードBのむらし工程を、
図19を用いて説明する。
むらし工程が開始すると(ステップSd)、制御手段8は時間計測手段7を用いて経過時間B
むらしの計測を開始する(ステップSd10)。次に、制御手段8は、標準(ふつう)モードAのむらし工程の電力P
Cよりも小さい電力P
jを、加熱コイル3へ供給する(ステップSd11)。そして、経過時間B
むらしが所定時間(例えば15分)を経過すると(ステップSd12:Yes)、制御手段8は、炊飯を終了する。
【0098】
このように、むらし工程の電力を、標準(ふつう)モードAよりも小さくすることで、むらし工程における被加熱物の温度が上記実施の形態1と比較して低温になるため、釜肌に接する飯の成分の熱損失を抑制できる。このため、上記実施の形態1と比較して、飯が硬くなりすぎず、食味が向上するという効果を奏する。
【0099】
(むらし工程の変形例1)
図20は、本発明の実施の形態2に係る炊飯器の成分増量モードBのむらし工程の変形例1を示すフローチャートである。成分増量モードBのむらし工程の変形例1を、
図20を用いて説明する。
本変形例1では、ステップSd12の所定時間を、標準(ふつう)モードAの所定時間(ステップSd3)よりも長く設定する。
【0100】
このように、むらし工程の時間を、標準(ふつう)モードAよりも長くすることにより、沸騰工程の終了時点で吸水が不十分で糊化不足であった場合でも、むらし工程で水分分布が均一となり糊化が促進され、軟らかくもちもちした食感に炊きあげることができる。
【0101】
なお、本実施の形態2では、成分増量モードBにおける、予熱工程、昇温工程にて吸水を促し、むらし工程にて糊化を促進させる炊飯制御を説明した。この予熱工程、昇温工程、むらし工程のうち、少なくとも1つのみを、上記実施の形態1の成分増量モードBに適用するようにしても良い。これにより、単位重量あたりの飯に含まれる成分が標準(ふつう)モードAよりも増加し、且つ実施の形態1よりも軟らかく食べやすい飯に炊き上げることができる。
【0102】
実施の形態3.
上記実施の形態1と2では、炊飯モードとして標準(ふつう)モードAと成分増量モードBとについて説明した。本実施の形態3はこれらモードに加え成分増量モードCを備える。
成分増量モードBと成分増量モードCは、同じ種類の米、同量の水で炊飯した際に、単位重量あたりの飯の中に含まれる成分が標準(ふつう)モードAよりも多くなるモードである。成分増量モードCは、酵素によって成分の生成を促し、特定の成分を増量させるモードである。
【0103】
成分増量モードCは、GABA(γ−アミノ酪酸)や還元糖量などの酵素により生成し増量する成分に特化したモードであり、その炊飯制御は公知の技術を適用する。標準(ふつう)モードAに対し、成分増量モードBとCは共に単位重量あたりの成分量は増えるモードであるが、成分増量モードBは主として低含水率化に伴う成分濃縮と加熱時間短縮に伴う熱損失抑制にて成分が増量し、成分増量モードCは酵素にて成分が生成し増量する、という相違点がある。異なる手段によって単位重量あたりの飯の成分を増加させるため、増量する成分の種類及び増加量は成分増量モードBとCで異なる。
【0104】
成分増量モードとして、酵素により成分が生成し増加する成分増量モードCのみを搭載する技術は広く認知されている。しかし、本実施の形態3では、異なる手段にて成分を増加させる成分増量モードBと成分増量モードCの2つを備え、使用者の用途に応じた成分の選択を可能としたところに特徴がある。増加する成分の具体例として、成分増量モードBはビタミンB1(チアミン:熱損失しやすい成分)、成分増量モードCはGABA(γ−アミノ酪酸:酵素で生成反応が促進し増加する成分)等が挙げられる。実施の形態3では喫食者の健康状態に応じて摂取する成分を選び、成分増量モードBとCを炊き分けることができるというメリットがある。
【0105】
なお、本実施の形態1〜3にて説明した標準(ふつう)モードA、成分増量モードB、成分増量モードCは玄米専用コースとしても良い。玄米には白米よりも多くの栄養素が含まれるため、玄米専用コースとすることで成分増量モードBとCにてより多くの成分を摂取することができる。
なお、制御手段8は、標準(ふつう)モードA、成分増量モードB、又は成分増量モードCが操作表示部15から選択された場合、玄米専用コースである旨の情報を操作表示部15に表示させても良い。
【0106】
米に含まれる栄養成分としてビタミン類、ミネラル類、食物繊維が挙げられる。本実施の形態1〜3にて説明した成分増量モードBは、低含水率化に伴う成分濃縮と熱損失抑制効果により、単位重量の飯で比較した際に、これらの栄養成分を標準(ふつう)モードAよりも多くすることができる。本実施の形態3にて説明した成分増量モードCは、酵素により生成反応が促進する成分のみが増えるが、成分増量モードBは酵素によって増加しない栄養成分を増やすことが出来る。
【0107】
また、米に含まれる栄養成分、特に玄米に多く含まれるものとして、イノシトール、オリザノール、フィチン酸、総フェルラ酸等が挙げられる。本実施の形態1〜3にて説明した成分増量モードBは、低含水率化に伴う成分濃縮と熱損失抑制効果により、単位重量の飯で比較した際に、これらの機能性成分を標準(ふつう)モードAよりも多くすることができる。本実施の形態3にて説明した成分増量モードCは、酵素によって生成反応が促進する成分のみが増加するが、成分増量モードBは酵素によって増量しない機能性成分を増やすことが出来る。
【解決手段】被加熱物の温度が予め設定された第1温度に到達すると沸騰工程を開始し、被加熱物の温度が沸騰温度となるように電力を制御し、容器の温度が沸騰温度よりも高い第2温度に到達すると沸騰工程を終了させる制御手段を備え、第2炊飯モードにおける沸騰工程の時間が、第1炊飯モードにおける沸騰工程の時間よりも短いものである。