特許第6000419号(P6000419)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローランドディー.ジー.株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6000419-インクジェット式記録装置 図000002
  • 特許6000419-インクジェット式記録装置 図000003
  • 特許6000419-インクジェット式記録装置 図000004
  • 特許6000419-インクジェット式記録装置 図000005
  • 特許6000419-インクジェット式記録装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6000419
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】インクジェット式記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20160915BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   B41J2/175 151
   B41J2/175 143
   B41J2/01 305
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-169129(P2015-169129)
(22)【出願日】2015年8月28日
【審査請求日】2015年8月28日
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(72)【発明者】
【氏名】小谷内 康雄
【審査官】 清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−345247(JP,A)
【文献】 特開2007−083679(JP,A)
【文献】 特開2014−028526(JP,A)
【文献】 特開2004−122704(JP,A)
【文献】 特開2015−063098(JP,A)
【文献】 特開2014−213565(JP,A)
【文献】 特開2012−066601(JP,A)
【文献】 特開2007−152563(JP,A)
【文献】 特開2005−297286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を支持するプラテンと、
主走査方向に延び前方に向かって形成された開口を備え、少なくとも一部が前記プラテンの上方に配置されることにより前記少なくとも一部が前記主走査方向において前記プラテンと重なる容器収容部と、
前記容器収容部に収容され、インクが充填されたインクパックのうち当該インクパックの厚み方向に対して垂直な方向の部分を支持することにより前記インクパックを横置きの状態で収容する容器と、
前記開口よりも下方に位置する回動中心を基準にして、前記開口を閉じることにより前記容器収容部と共に前記容器を覆う第1位置と、前方に向けて回動することにより前記開口を開放する第2位置との間で回動可能に設けられたカバー部材と、を備え、
前記プラテンは、主走査方向に延び、前端が前記容器収容部よりも前方に位置するように設けられ、
前記カバー部材が前記第2位置にあるときに、当該カバー部材の前端は前記プラテンよりも上方に位置している、インクジェット式記録装置。
【請求項2】
前記カバー部材は、前記第1位置にあるときに、前記容器の前端に対向する第1板部材と、前記第1板部材に交差するように連結され且つ後方に突出する第2板部材と、を備えている、請求項1に記載のインクジェット式記録装置。
【請求項3】
前記開口よりも下方に設けられ、前記カバー部材に接続され、前記カバー部材を前方に回動させて前記開口を開放するヒンジを備えた、請求項1または2に記載のインクジェット式記録装置。
【請求項4】
前記容器の前部には、垂直に配置された前板部材と、前記前板部材に連結され当該前板部材の前方に位置する板状の把持部と、が設けられている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット式記録装置。
【請求項5】
前記容器収容部は天板部を備え、
前記容器が前記容器収容部に収容されたときに、前記把持部は、上下方向において前記天板部と前記カバー部材の前記回動中心との間に位置している、請求項4に記載のインクジェット式記録装置。
【請求項6】
前記プラテンは、前記前端に湾曲部を備え、
前記カバー部材が前記第2位置にあるときに、当該カバー部材の前端は前記プラテンの前記湾曲部よりも上方に位置している、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット式記録装置。
【請求項7】
前記カバー部材が前記第2位置にあるときに、当該カバー部材の前端は前記プラテンの前記湾曲部よりも前方に位置している、請求項に記載のインクジェット式記録装置。
【請求項8】
前記容器収容部よりも少なくとも一部が前方に位置し、前記容器収容部よりも下方に位置する筐体を備え、
前記カバー部材は、前記第2位置において前記筐体に接触するように構成されている、請求項1〜のいずれか1項に記載のインクジェット式記録装置。
【請求項9】
前記容器収容部は、前記容器の後端が当該容器の前端よりも低くなるように前記容器を支持する傾斜部を備えている、請求項1〜のいずれか1項に記載のインクジェット式記録装置。
【請求項10】
前記カバー部材の前記主走査方向における長さは、前記容器収容部の前記主走査方向における長さ以上である、請求項1〜のいずれか1項に記載のインクジェット式記録装置。
【請求項11】
前記容器収容部は、前記主走査方向に沿って複数の個別収容部に区分けされている、請求項1〜10のいずれか1項に記載のインクジェット式記録装置。
【請求項12】
記録媒体を支持するプラテンと、
主走査方向に延び前方に向かって形成された開口を備え、少なくとも一部が前記プラテンの上方に配置されることにより前記少なくとも一部が前記主走査方向において前記プラテンと重なる容器収容部と、
前記容器収容部に収容され、インクが充填されたインクパックのうち当該インクパックの厚み方向に対して垂直な方向の部分の少なくとも一部を支持することにより前記インクパックを横置きの状態で収容する容器と、
前記開口よりも下方に位置し且つ前記プラテンよりも上方に位置する回動中心を基準にして、前記開口を閉じることにより前記容器収容部と共に前記容器を覆う第1位置と、前方に向けて回動することにより前記開口を開く第2位置との間で回動可能に設けられたカバー部材と、を備え、
前記プラテンは、主走査方向に延び、前端が前記容器収容部よりも前方に位置するように設けられ、
前記カバー部材が前記第2位置にあるときに、当該カバー部材の前端は前記プラテンよりも上方に位置している、インクジェット式記録装置。
【請求項13】
前記プラテンは、前記前端に湾曲部を備え、
前記カバー部材が前記第2位置にあるときに、当該カバー部材の前端は前記プラテンの前記湾曲部よりも上方に位置している、請求項12に記載のインクジェット式記録装置。
【請求項14】
前記カバー部材が前記第2位置にあるときに、当該カバー部材の前端は前記プラテンの前記湾曲部よりも前方に位置している、請求項13に記載のインクジェット式記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクパックが配置された容器を収容する容器収容部を備えたインクジェット式記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水性インクなどのインクを用いるインクジェット式記録装置が知られている。近年では、比較的大型のサイズの記録紙に記録することが可能なインクジェット式記録装置の開発が進んでいる(例えば、特許文献1参照)。大型サイズの記録紙に対応して、インクジェット式記録装置も大型化している。このような大型のインクジェット式記録装置においては、インクを大量に消費することが多いため、インクパックを収納したインクカートリッジの交換頻度が高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−266732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、インクカートリッジの交換時にインクが漏れることがある。インクカートリッジの交換頻度が高くなればなるほど、インクカートリッジ交換時におけるインク漏れの頻度も高くなる。インクが漏れると、インクジェットプリンタ本体や記録紙に付着してしまい、インク汚れが生じる。しかしながら、上記従来のインクジェット式記録装置では、インクカートリッジ交換時のインク汚れに対する対策を講じていない。また、インクジェット式記録装置のコンパクト化が望まれている現状がある。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、インクパックを収容する容器の取り出し時におけるインク汚れを抑制することができ、コンパクト化されたインクジェット式記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るインクジェット式記録装置は、記録媒体を支持するプラテンと、主走査方向に延び前方に向かって形成された開口を備え、少なくとも一部が前記プラテンの上方に配置されることにより前記少なくとも一部が前記主走査方向において前記プラテンと重なる容器収容部と、前記容器収容部に収容され、インクが充填されたインクパックのうち当該インクパックの厚み方向に対して垂直な方向の部分を支持することにより前記インクパックを横置きの状態で収容する容器と、前記開口よりも下方に位置する回動中心を基準にして、前記開口を閉じることにより前記容器収容部と共に前記容器を覆う第1位置と、前方に向けて回動することにより前記開口を開放する第2位置との間で回動可能に設けられたカバー部材と、を備えている。
【0007】
本発明に係るインクジェット式記録装置によれば、インクパックを横置きの状態で収容する容器が上記容器収容部に収容される。このような構成により、容器収容部の高さを低くすることができる。それにより、インクジェット式記録装置の高さ部分をコンパクトにすることが可能となる。一方、インクパックを横置きの状態で収容する容器を容器収容部に収容する構成のみだと、インクジェット式記録装置の主走査方向の部分が長くなってしまう。これに対して、本発明では、容器収容部の一部が主走査方向においてプラテンと重なっている。これにより、インクジェット式記録装置の主走査方向の部分が長くなってしまうことを抑制することができる。以上により、インクジェット式記録装置の高さ部分をコンパクトにしながらも、当該インクジェット式記録装置の主走査方向の部分が長くなってしまうことを抑制することができる。さらに、容器収容部の一部が主走査方向においてプラテンと重なっていることで、容器取り出しの際にインクがプラテン等に垂れる虞があるが、インクが垂れた場合でも第2位置にあるカバー部材で受けることができる。これによって、インクがインクジェット式記録装置本体や記録媒体に付着してインク汚れが生じることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、インクパックを収容する容器の取り出し時におけるインク汚れを抑制することができ、コンパクト化されたインクジェット式記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタの正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るカバー部材を開放した状態のインクジェットプリンタの斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る容器収容部の傾斜部の側面図である。
図4】本発明の一実施形態に係るインクパックの平面図である。
図5】(a)は本発明の一実施形態に係るインクパックにアダプタが設置された状態の斜視図であり、(b)は本発明の一実施形態に係るインクカートリッジにアダプタ付きインクパックが配置された状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態に係るインクジェット式記録装置は、記録媒体としての記録紙Kに印刷を行うインクジェットプリンタ100である。以下の説明では、左、右、上、下とは、図1のインクジェットプリンタ100の正面にいる作業者から見た左、右、上、下をそれぞれ意味することとする。また、インクジェットプリンタ100から上記作業者に近づく方を前方、遠ざかる方を後方とする。図1において、符号F(図2参照)、Re(図2参照)、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表している。但し、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、本実施形態に係るインクジェットプリンタ100の設置態様を何ら限定するものではない。インクヘッドユニット107は、左方および右方に移動可能であり、記録紙Kは前方および後方に搬送可能である。インクヘッドユニット107の移動方向、記録紙Kの搬送方向をそれぞれ主走査方向Y、副走査方向X(図2参照)と称することとすると、主走査方向Yは左右方向に対応し、副走査方向Xは前後方向に対応する。主走査方向Yと副走査方向Xとは直交している。但し、主走査方向Yおよび副走査方向Xは特に限定されるわけではなく、インクジェットプリンタ100の形態などに応じて適宜に設定可能である。なお、上記の記録媒体は、他のシート状の記録媒体、例えば樹脂製のシート等であってもよい。また、記録媒体は、可撓性を有するシート状のものに限らず、ガラス基板等の硬い記録媒体であってもよい。
【0011】
図1に示すように、インクジェットプリンタ100は、本体部101と、側方部102,103と、プラテン104と、脚部105,106と、インクヘッドユニット107と、後述の複数の容器1(図2参照)をそれぞれ収容する容器収容部108,109と、を備えている。本体部101は、左右方向に延びた筐体である。本体部101の内方には、記録紙Kを支持するプラテン104が設けられている。プラテン104は、主走査方向Yに延び、当該プラテン104の前端が容器収容部108,109よりも前方に位置するように設けられている。図2に示すように、プラテン104の前端には湾曲部104aが形成されている。本体部101の前部の左方には筐体からなる側方部102が接続されている。側方部102は、容器収容部108よりも前方に位置し、かつ容器収容部108よりも下方に位置している。本体部101の前部の右方には筐体からなる側方部103が接続されている。側方部103は、側方部102の右方に位置している。本体部101の下部には、当該本体部101を支持する脚部105,106が取り付けられている。脚部106は、脚部105の右方に位置している。インクヘッドユニット107は、本体部101の内方に配置されている。容器収容部108,109は、本体部101の上部の左方に設けられている。容器収容部109は、容器収容部108の右方に当該容器収容部108と並んで配置されている。なお、本実施形態では、2つの容器収容部108,109を設けるようにしたが、一つ或いは三つ以上の容器収容部を設けるようにしてもよい。
【0012】
図1において、記録紙Kを支持するプラテン104の領域(つまり、印刷領域)のうち左右方向の領域をR1とし、容器収容部108の左右方向の領域をR2とし、容器収容部109の左右方向の領域をR3とする。容器収容部108の少なくとも一部は、プラテン104の上方に配置されることにより、インジェクタプリンタ100の左右方向においてプラテン104と重なっている。また、容器収容部109の少なくとも一部は、プラテン104の上方に配置されることにより、左右方向においてプラテン104と重なっている。本実施形態では、容器収容部108の領域R2の一部は、左右方向においてプラテン104の領域R1と重なっている。また、容器収容部109の領域R3の全部は、左右方向において領域R1と重なっている。これにより、領域R1の上方に領域R2の一部が位置しており、領域R1の上方に領域R3の全部が位置している。
【0013】
図2に示すように、容器収容部108は、主走査方向Y、つまり左右方向に延びている。容器収容部108は、傾斜部2と、左壁部3と、右壁部4と、天板部5と、複数の側板9とを備えている。なお、容器収容部109の構成は容器収容部108の構成と同じであるため、以下では、容器収容部108の説明のみ行う。傾斜部2は、インクパック110が収容された容器1を支持する。インクパック110内には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)またはその他のインクが充填されている。傾斜部2は、後方に向かうにつれて下方に傾斜している。図3に示すように、傾斜部2の水平面HSに対する傾斜角θは、例えば5度である。これにより、傾斜部2に支持された容器1は、後方に向かうにつれて下方に傾斜して配置されている。したがって、インクパック110は、容器1において後方に向かうにつれて下方に傾斜して収容されている。なお、傾斜角θの値は、特に限定されるものではない。
【0014】
図2に戻り、左壁部3は、傾斜部2の左端に接続されている。右壁部4は、傾斜部2の右端に接続されている。天板部5は、左壁部3の上端と右壁部4の上端とに接続されている。天板部5は、傾斜部2に対向して配置されている。これらの傾斜部2と、左壁部3と、右壁部4と、天板部5とによって、開口7が形成されている。開口7は、主走査方向Yに延びかつ前方に向かって形成されている。側板9は垂直に設けられている。側板9の上端は、天板部5に接続されている。側板9の下端は、傾斜部2に接続されている。各側板9は、それぞれ主走査方向Yに沿って互いに間隔を空けて並設されている。このような構成により、容器収容部108は、側板9によって区分けされている。容器収容部108は、複数の個別収容部108aに区分けされている。容器収容部108よりも下方に複数の表示灯10が設けられている。各表示灯10は、各個別収容部108aにそれぞれ対応して設けられている。表示灯10は、インクパック110が収容された容器1が個別収容部108aの所定位置に適切に配置されたことが図示しないセンサにより検知されたときに点灯されるようになっている。これによって、容器1を個別収容部108aに配置したにも関わらず表示灯10が点灯しないときには、作業者は、容器1が個別収容部108aの所定位置に適切に配置されていないことを認識することができる。なお、図2においては、容器収容部108には4つの容器1が収容されており、容器収容部109と併せて、本実施形態のインクジェットプリンタ100では合計8つの容器1が収容されるが、収容される容器1の数は特に限定されるものではない。
【0015】
図2に示すように、容器1は、容器収容部108の個別収容部108aに収容される。作業者は、容器1を開口7から後方に向けて個別収容部108aに挿入する。容器1は、前板部材1aと、板状の把持部1bと、左板部材1cと、右板部材1dと、底板部材1e(図3参照)と、後板部材1f(図5(b)参照)と、を備えている。容器1の底板部材1eは、当該容器1が個別収容部108aに収容されたときに傾斜部2に支持される。前板部材1aは、底板部材1eの前端に接続されている。後板部材1fは、底板部材1eの後端に接続されている。把持部1bは、前板部材1aに連結され、当該前板部材1aの前方に位置している。把持部1bは、容器1が個別収容部108aに収容されたときに、上下方向において天板部5とカバー部材6の後述の回動中心8aとの間に位置している。左板部材1cは、底板部材1eの左端、前板部材1aの左端および後板部材1fの左端に接続されている。右板部材1dは、底板部材1eの右端、前板部材1aの右端および後板部材1fの右端に接続されている。なお、前板部材1aおよび把持部1bを採用する代わりに、図5(b)のような前板部材1gのみを採用してもよい。容器1の後部には、インクパック110を容器1において位置決めするための後述のアダプタ12(図5(a),(b)参照)が設けられている。インクパック110は、当該インクパック110の厚み方向と垂直な方向の部分が容器1の底板部材1e(図3参照)に支持されることにより横置きの状態で容器1に配置される。
【0016】
図2に示すように、開口7よりも前方にカバー部材6が設けられている。カバー部材6の主走査方向Yにおける長さは、容器収容部108の主走査方向Yにおける長さ以上となっている。カバー部材6は、開口7よりも下方に位置する回動中心8aを基準に回動するように構成されている。カバー部材6は、開口7よりも下方に設けられ、当該カバー部材6に接続されたヒンジ8によって前方に開くようになっている。これにより、カバー部材6は、開口7を閉じることにより容器収容部108の各構成部材と共に容器1を覆う第1位置P1と、前方に向けて回動することにより開口7を開放する第2位置P2との間で回動可能に構成されている。カバー部材6は、第2位置P2にあるときに側方部102の上面に接触する。それにより、カバー部材6は、第2位置P2においてそれ以上回動しないように規制されている。
【0017】
カバー部材6は、第1板部材6aと、第2板部材6bとを備えている。カバー部材6の第1板部材6aは、カバー部材6が第1位置P1にあるときに、容器1の前端である把持部1bと対向する。カバー部材6の第2板部材6bは、第1板部材6aに交差するように連結され、かつカバー部材6が第1位置P1にあるときに、後方に突出するように設けられている。カバー部材6が第2位置P2にあるときに、当該カバー部材6の前端6cはプラテン104よりも上方に位置している。カバー部材6が第2位置P2にあるときに、当該カバー部材6の前端6cはプラテン104の湾曲部104aよりも上方に位置している。カバー部材6が第2位置P2にあるときに、当該カバー部材6の前端6cはプラテン104の前端である湾曲部104aよりも前方に位置している。
【0018】
次に、本実施形態のインクパック110について説明する。図4に示すように、インクパック110には、インクパックキャップ111が設けられている。インクパックキャップ111は、インクパック110の長手方向D1の一方の端部110aの中央に接続されている。インクパックキャップ111は、インクパック110よりも後方に配置されている。インクパックキャップ111の一部はインクパック110内に挿入されている。インクパックキャップ111の前端111aはインクパック110内に挿入されている。インクパック110は、矩形状に形成されている。インクパック110は、それぞれ矩形状に形成された上面部112aおよび下面部112bを備えている。
【0019】
インクパック110内には、インク充填部113と、インク充填部113に連結したインク流出部114と、インク流出部114に連結したインク供給部115と、が形成されている。インク充填部113は、一定幅を有している。インク流出部114は、インク充填部113から離間するにつれて幅が小さくなるよう設定されている。インク流出部114は、長手方向D1の中央よりもインクパックキャップ111側に位置している。インク供給部115は、インクパックキャップ111の一部が挿入され、インク充填部113の幅よりも小さい一定幅を有している。このようなインク流出部114およびインク供給部115は、インクパック110の上面部112aと下面部112bとを溶着することによって形成されている。図4に示すように、インクパック110には、斜線で示す2つの溶着領域WR1,WR2が設けられている。溶着領域WR1,WR2は、それぞれ平面視で台形状に形成されている。このように、インクパック110のうちインクパックキャップ111近傍の部分を窄ませた形状にすることができる。これによって、インクパック110内の隅にインク溜まりが生じ難くなり、インク充填部113のインクをインク流出部114に集め易くなる。すなわち、インクパック110内において一点集中的にインクを集めることができる。これにより、多量のインクがインクパック110内に残留することなく、インクがインクパックキャップ111から十分に流出される。したがって、インクパック110内のインクを十分に使うことが可能となり、経済的である。
【0020】
図5(a)に示すように、本実施形態では、インクパック110が容器1に配置される前に、当該インクパック110にはアダプタ12が装着される。そして、アダプタ12が装着された状態のインクパック110が容器1の所定位置に配置されるようになっている。アダプタ12は、インクパック110に対して着脱可能な構成となっている。アダプタ12は、後面部12aと、後面部12aの上端に接続された上面部12bと、後面部12aの下端に接続され、上面部12bの前端よりも前方に延びる下面部(図示せず)と、上面部12bの左端に接続された左壁部12dと、上面部12bの右端に接続された右壁部12eと、を備えている。左壁部12dと前記下面部との間には隙間13が設けられている。右壁部12eと前記下面部との間には隙間14が設けられている。インクパックキャップ111(図4参照)がアダプタ12の後面部12aの所定位置に設置された状態で、インクパック110の後部が上記隙間13および隙間14に配置される。詳細には、インクパック110の後部の左部が左壁部12dに接触しない状態で隙間13に挿通され、インクパック110の後部の右部が右壁部12eに接触しない状態で隙間14に挿通されている。これによって、インクパック110の後部は、アダプタ12から押圧力を受けることなくフリーな状態で当該アダプタ12に対して位置決めされている。次に、図5(b)に示すように、アダプタ12が装着されたインクパック110が容器1に配置される。この場合、インクパック110の下面部112b(図4参照)が容器1の底板部材1eに支持される。
【0021】
以上のように、本実施形態によれば、インクパック110を横置きの状態で収容する容器1が容器収容部108の個別収容部108aに収容される。個別収容部108aは、主走査方向Yに沿って並設されている。このような構成により、容器収容部108の高さを低くすることができる。それにより、インクジェットプリンタ100の高さをコンパクトにすることが可能となる。一方、インクパック110を横置きの状態で収容する容器1を個別収容部108aに収容する構成のみだと、インクジェットプリンタ100の主走査方向Yの部分が長くなってしまう。これに対して、本実施形態では、容器収容部108の一部が主走査方向Yにおいてプラテン104と重なっている。これにより、インクジェットプリンタ100の主走査方向Yの部分が長くなってしまうことを抑制することができる。以上により、インクジェットプリンタ100の高さをコンパクトにしながらも、当該インクジェットプリンタ100の主走査方向Yの部分が長くなってしまうことを抑制することができる。さらに、容器収容部108の一部が主走査方向Yにおいてプラテン104と重なっていることで、容器取り出しの際にインクがプラテン104等に垂れる虞があるが、インクが垂れた場合でも第2位置P2にあるカバー部材6で受けることができる。これによって、インクがインクジェットプリンタ100本体や記録紙Kに付着してインク汚れが生じることを抑制することができる。
【0022】
また、本実施形態によれば、カバー部材6が第2位置P2にあるときに、第2板部材6bは第1板部材6aと交差しかつ上方を向くように配置される。このため、容器1から漏れたインクを第1板部材6aで受けることができる。また、第1板部材6aで受けたインクが当該第1板部材6aに沿って下方に垂れても、当該インクは第2板部材6bにより堰き止められる。これによって、インクがインクジェットプリンタ100本体や記録紙Kに付着してインク汚れが生じることをより抑制することができる。
【0023】
また、本実施形態によれば、ヒンジ8によりカバー部材6を前方に回動させることができる。それにより、簡単な構造でカバー部材6の回動を実現することができる。
【0024】
また、本実施形態によれば、作業者は、容器1の把持部1bを把持しつつ当該容器1を容器収容部108の個別収容部108aに対して容易に出し入れすることができる。
【0025】
また、本実施形態によれば、カバー部材6が第2位置P2にあるときに、容器1の把持部1bが上下方向において天板部5とカバー部材6の回動中心8aとの間に位置しているので、作業者は把持部1bを把持し易い。これによって、作業者はインクパック110の交換時に個別収容部108aから容器1を取り出し易い。
【0026】
また、本実施形態によれば、カバー部材6が第2位置P2にあるときに、プラテン104の上方にカバー部材6の前端6cが位置している。これにより、容器取り出しの際にインクが容器1から漏れたとしても、カバー部材6の存在によってプラテン104および当該プラテン104上の記録紙Kにインクが付着する可能性が低減される。
【0027】
また、本実施形態によれば、カバー部材6が第2位置P2にあるときに、プラテン104の湾曲部104aの上方にカバー部材6の前端6cが位置している。これにより、容器取り出しの際にインクが容器1から漏れたとしても、カバー部材6の存在によってプラテン104および当該プラテン104上の記録紙Kにインクが付着する可能性がより低減される。
【0028】
また、本実施形態によれば、カバー部材6が第2位置P2にあるときに、当該カバー部材6の前端6cはプラテン104の湾曲部104aよりも前方に位置している。これにより、容器取り出しの際にインクが容器1から漏れたとしても、カバー部材6の存在によってプラテン104および当該プラテン104上の記録紙Kにインクが付着する可能性がさらに低減される。
【0029】
また、本実施形態によれば、カバー部材6を第2位置P2において側方部102の上面に接触させることにより、当該カバー部材6をそれ以上回動しないようにすることができる。これにより、カバー部材6が第2位置P2よりも下方に回動することによって、当該カバー部材6によりインクを受けることができなくなってしまうことを回避することができる。
【0030】
また、本実施形態によれば、傾斜部2により、容器1が後方に向かうにつれて下方に傾斜する。これにより、インクパック110は、後方に向かうにつれて下方に傾斜した状態で容器1に収容される。このため、インクパック110内のインクが後方に向けて流出し易くなる。したがって、インクパック110内にインク溜まりが生じ難くなる。
【0031】
また、本実施形態によれば、カバー部材6の主走査方向Yにおける長さは、容器収容部108の主走査方向Yにおける長さ以上となっている。これにより、容器取り出しの際にインクが容器1から漏れたとしても、プラテン104および当該プラテン104上の記録紙Kにインクが付着する可能性がより低減される。
【0032】
また、本実施形態によれば、容器収容部108は、主走査方向Yに沿って複数の個別収容部108aに区分けされているので、インクパック110を収容した容器1を容器収容部108の所定の位置に収容し易くなる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で以下のように実施することが可能である。
【0034】
上記実施形態では、容器収容部108の一部が主走査方向Yにおいてプラテン104と重なるようにしたが、これに限定されるものではない。容器収容部108の全部が主走査方向Yにおいてプラテン104と重なるように構成してもよい。
【0035】
また、上記実施形態では、カバー部材6を第2位置P2において側方部102の上面に接触させることで、当該カバー部材6の回動を規制するようにしたが、これに限定されるものではない。カバー部材6の回動を規制するロック機構などを設けるようにしてもよい。
【0036】
また、上記実施形態では、容器収容部108の傾斜部2により容器1が支持されることによって当該容器1を傾斜するようにしたが、これに限定されるものではない。傾斜部2を傾斜させずに水平面とし、容器1の底板部材1eを後方に向かうにつれて下方に傾斜するように形成してもよい。要は、インクパック110を後方に向かうにつれて下方に傾斜させればよく、当該インクパック110を傾斜させる構成については、特に限定されるものではない。
【0037】
また、上記実施形態では、容器1の把持部1bを板状に形成するようにしたが、これに限定されるものではない。把持部1bに取っ手を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 容器
1a 前板部材
1b 把持部
2 傾斜部
5 天板部
6 カバー部材
6a 第1板部材
6b 第2板部材
6c カバー部材の前端
7 開口
8 ヒンジ
8a カバー部材の回動中心
100 インクジェットプリンタ(インクジェット式記録装置)
102 側方部(筐体)
104 プラテン
104a プラテンの湾曲部
108,109 容器収容部
108a 個別収容部
110 インクパック
K 記録紙(記録媒体)
P1 第1位置
P2 第2位置
X 副走査方向
Y 主走査方向
【要約】
【課題】インクパックを収容する容器の取り出し時におけるインク汚れを抑制することができ、コンパクト化されたインクジェット式記録装置を提供する。
【解決手段】インクジェットプリンタ100は、記録紙を支持するプラテン104と、主走査方向Yに延び前方に向かって形成された開口7を備え、少なくとも一部がプラテン104の上方に配置されることにより、上記少なくとも一部が主走査方向Yにおいてプラテン104と重なる容器収容部108と、容器収容部108に収容され、インクパック110のうち当該インクパック110の厚み方向に対して垂直な方向の部分を支持することによりインクパック110を横置きの状態で収容する容器1とを備えている。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5