特許第6000439号(P6000439)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社プライムポリマーの特許一覧

特許6000439二軸延伸フィルムおよびエチレン系重合体組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000439
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】二軸延伸フィルムおよびエチレン系重合体組成物
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20160915BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20160915BHJP
   C08F 210/16 20060101ALI20160915BHJP
【FI】
   C08J5/18CES
   C08L23/08
   C08F210/16
【請求項の数】8
【全頁数】51
(21)【出願番号】特願2015-501479(P2015-501479)
(86)(22)【出願日】2014年2月19日
(86)【国際出願番号】JP2014053946
(87)【国際公開番号】WO2014129511
(87)【国際公開日】20140828
【審査請求日】2015年8月11日
(31)【優先権主張番号】特願2013-30927(P2013-30927)
(32)【優先日】2013年2月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505130112
【氏名又は名称】株式会社プライムポリマー
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】金 慶子
(72)【発明者】
【氏名】田崎 力
(72)【発明者】
【氏名】金井 俊孝
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/016059(WO,A1)
【文献】 特開2008−031385(JP,A)
【文献】 特開2008−031386(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/094378(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
C08F 210/16
C08L 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件を満たすエチレン系重合体成分(A)と、下記要件を満たすエチレン系重合体成分(B)とを含み、且つ、
前記エチレン系重合体成分(A)の重量分率〔WA〕が0.50以上0.92以下、前記エチレン系重合体成分(B)の重量分率〔WB〕が0.08以上0.50以下(WAとWBの合計を1.0とする)であるエチレン系重合体組成物(E)から得られることを特徴とする、二軸延伸フィルム。
エチレン系重合体成分(A):
下記エチレン系重合体(a)を20重量%以上100重量%以下含み、且つ、下記要件(A−1)〜(A−3)を満たす:
(A−1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFRA)が0.01g/10分以上10g/10分以下である;
(A−2)密度(DA)が890kg/m3以上940kg/m3以下である;
(A−3)135℃デカリン中で測定した極限粘度〔[η](dl/g)〕と、GPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量の0.776乗(Mw0.776)の比、[η]/Mw0.776が、1.90×10-4以上2.80×10-4以下である。
エチレン系重合体成分(B):
エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとの共重合体であり、且つ、下記要件(B−1)〜(B−5)を満たす:
(B−1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFRB)が0.01g/10分以上30g/10分以下である;
(B−2)密度(DB)が900kg/m3以上939kg/m3以下である;
(B−3)13C−NMRにより測定された炭素原子1000個当たりのメチル分岐数〔Me(/1000C)〕とエチル分岐数〔Et(/1000C)〕との和〔(Me+Et)(/1000C)〕が1.80以下である;
(B−4)200℃におけるゼロせん断粘度〔η0(P)〕と、GPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量の6.8乗(Mw6.8)の比、η0/Mw6.8が、0.03×10-30以上7.5×10-30以下である;
(B−5)135℃デカリン中で測定した極限粘度〔[η](dl/g)〕と、GPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量の0.776乗(Mw0.776)の比、[η]/Mw0.776が、0.90×10-4以上1.65×10-4以下である。
エチレン系重合体(a):
エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとの共重合体であり、且つ、下記要件(a−1)〜(a−3)を満たす:
(a−1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFRa)が0.01g/10分以上5.0g/10分以下である;
(a−2)密度(Da)が890kg/m3以上928kg/m3以下である;
(a−3)(DB−Da)≧1kg/m3である。
【請求項2】
前記密度(DB)が900kg/m3以上930kg/m3以下である請求項1に記載の二軸延伸フィルム。
【請求項3】
前記エチレン系重合体成分(A)が、下記要件を満たすエチレン系重合体(c)(ただし、上記エチレン系重合体(a)に該当するものを除く)を、20重量%以上50重量%以下さらに含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の二軸延伸フィルム。
エチレン系重合体(c):
エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとの共重合体であって、下記要件(c−1)〜(c−4)を満たす:
(c−1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFRc
が0.01g/10分以上3000g/10分以下である;
(c−2)(MFRc−MFRa)≧1g/10分である;
(c−3)密度(Dc)が900kg/m3以上940kg/m3以下である;
(c−4)(Dc−Da)≧1kg/m3である。
【請求項4】
前記エチレン系重合体成分(A)が、下記要件を満たすエチレン系重合体(d)を、10重量%以上50重量%以下さらに含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の二軸延伸フィルム。
エチレン系重合体(d):
エチレン単独重合体もしくはエチレンと炭素数3以上10以下のα−オレフィンとの
共重合体であって、下記要件(d−1)〜(d−2)を満たす:
(d−1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFRd)が0.01g/10分以上2g/10分以下である;
(d−2)密度(Dd)が940kg/m3を超えて980kg/m3以下である。
【請求項5】
下記要件を満たすエチレン系重合体成分(A)と、下記要件を満たすエチレン系重合体成分(B)とを含み、且つ、
前記エチレン系重合体成分(A)の重量分率〔WA〕が0.50以上0.92以下、前記エチレン系重合体成分(B)の重量分率〔WB〕が0.08以上0.50以下(WAとWBの合計を1.0とする)であることを特徴とするエチレン系重合体組成物。
エチレン系重合体成分(A):
下記エチレン系重合体(a)を20重量%以上100重量%以下含み、且つ、下記要件(A−1)〜(A−3)を満たす:
(A−1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFRA
が0.01g/10分以上10g/10分以下である;
(A−2)密度(DA)が890kg/m3以上940kg/m3以下である;
(A−3)135℃デカリン中で測定した極限粘度〔[η](dl/g)〕と、GPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量の0.776乗(Mw0.776)の比、[η]/Mw0.776が、1.90×10-4以上2.80×10-4以下である。
エチレン系重合体成分(B):
エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとの共重合体であり、且つ、下記
要件(B−1)〜(B−5)を満たす:
(B−1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFRB)が0.01g/10分以上30g/10分以下である;
(B−2)密度(DB)が900kg/m3以上939kg/m3以下である;
(B−3)13C−NMRにより測定された炭素原子1000個当たりのメチル分岐数
〔Me(/1000C)〕とエチル分岐数〔Et(/1000C)〕との和〔(Me+Et)(/1000C)〕が1.80以下である;
(B−4)200℃におけるゼロせん断粘度〔η0(P)〕と、GPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量の6.8乗(Mw6.8)の比、η0/Mw6.8が、0.03×10-30以上7.5×10-30以下である;
(B−5)135℃デカリン中で測定した極限粘度〔[η](dl/g)〕と、GPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量の0.776乗(Mw0.776)の比、[η]/Mw0.776が、0.90×10-4以上1.65×10-4以下である。
エチレン系重合体(a):
エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとの共重合体であり、且つ、下記
要件(a−1)〜(a−3)を満たす:
(a−1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFRa)が0.01g/10分以上5.0g/10分以下である;
(a−2)密度(Da)が890kg/m3以上928kg/m3以下である;
(a−3)(DB−Da)≧1kg/m3である。
【請求項6】
前記密度(DB)が900kg/m3以上930kg/m3以下である請求項5に記載のエチレン系重合体組成物。
【請求項7】
前記エチレン系重合体成分(A)が、下記要件を満たすエチレン系重合体(c)(ただし、上記エチレン系重合体(a)に該当するものを除く)を、20重量%以上50重量%以下さらに含むことを特徴とする、請求項5または6に記載のエチレン系重合体組成物。
エチレン系重合体(c):
エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとの共重合体であって、下記要件
(c−1)〜(c−4)を満たす:
(c−1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFRc)が0.01g/10分以上3000g/10分以下である;
(c−2)(MFRc−MFRa)≧1g/10分である;
(c−3)密度(Dc)が900kg/m3以上940kg/m3以下である;
(c−4)(Dc−Da)≧1kg/m3である。
【請求項8】
前記エチレン系重合体成分(A)が、下記要件を満たすエチレン系重合体(d)を、10重量%以上50重量%以下さらに含むことを特徴とする、請求項5〜7のいずれか1項に記載のエチレン系重合体組成物。
エチレン系重合体(d):
エチレン単独重合体もしくはエチレンと炭素数3以上10以下のα−オレフィンとの共重合体であって、下記要件(d−1)〜(d−2)を満たす:
(d−1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFRd)が0.01g/10分以上2g/10分以下である;
(d−2)密度(Dd)が940kg/m3を超えて980kg/m3以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二軸延伸フィルムおよびエチレン系重合体組成物に関する。詳しくは、特定のエチレン系重合体を特定の比率で含むエチレン系重合体組成物から得られる二軸延伸フィルムおよび該エチレン系重合体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン・α−オレフィンランダム共重合体、いわゆる線状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、高圧法低密度ポリエチレンに比べ、透明性、耐ストレスクラッキング性、低温ヒートシール性、ヒートシール強度、耐衝撃性等に優れておりその特徴を活かして食品包装用のシーラントとして広く用いられている。中でも、シングルサイト触媒で重合されたLLDPEは、更に透明性、低温ヒートシール性、夾雑物シール性、ホットタック性にも優れている。
【0003】
LLDPEフィルムの透明性、機械的強度等を改良する方法として、フィルムを特定の条件下で二軸延伸する方法(特許文献1)、LLDPEに高密度ポリエチレンあるいは高圧法低密度ポリエチレンを加えてなる組成物を二軸延伸してなる収縮フィルム(特許文献2)が提案されている。
【0004】
特許文献3には、LLDPEに高圧法低密度ポリエチレンあるいは高密度ポリエチレンを加えてなる組成物からなり、引裂き性に優れる二軸延伸フィルムが開示されている。
一方、遷移金属錯体触媒を用いて製造された長鎖分岐型ポリエチレンをフィルムに用いることについては、特許文献4には長鎖分岐型ポリエチレンからなるフィルムが、特許文献5には長鎖分岐型ポリエチレンを含むブレンド組成物からなるフィルムが開示されている。
【0005】
特許文献6、7には、本願のポリエチレン組成物にも含まれうる長鎖分岐型ポリエチレンおよびそれを含むポリエチレン組成物やそれらからなるフィルムが開示されている。しかし、これら先行技術文献には二軸延伸フィルムに用いうることの記載はないし、二軸延伸フィルムに適した特定の組成についての記載は一切ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58−90924号公報
【特許文献2】特開昭57−181828号公報
【特許文献3】特開2005−298642号公報
【特許文献4】特開2007−177168号公報
【特許文献5】特開2007−197722号公報
【特許文献6】特開2006−233207号公報
【特許文献7】特開2008−31385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述したような従来公知の方法で得られるLLDPEを原料とする二軸延伸フィルムは、厚薄精度が劣るという問題がある。また、二軸延伸成形時に膜だれ、膜切れといった成形不良が起こりやすく、それらの成形不良が発生せずに延伸成形可能な温度幅が狭いという問題がある。すなわち、広い延伸温度幅において高い厚薄精度の二軸延伸フィルムを得ることは困難であった。
【0008】
本発明の課題は、二軸延伸成形温度幅が広くかつ厚薄精度に優れる、二軸延伸フィルムおよびその原料となるエチレン系重合体組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記問題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、特定のエチレン系重合体組成物、より具体的には、実質的に長鎖分岐を有さないエチレン系重合体成分と、多くの長鎖分岐を有するエチレン系重合体成分とを特定の割合で組み合わせてなるエチレン系重合体組成物を用いることで上記課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[6]に関する。
[1] 下記要件を満たすエチレン系重合体成分(A)と、下記要件を満たすエチレン系重合体成分(B)とを含み、且つ、
前記エチレン系重合体成分(A)の重量分率〔WA〕が0.50以上0.92以下、前記エチレン系重合体成分(B)の重量分率〔WB〕が0.08以上0.50以下(WAとWBの合計を1.0とする)であるエチレン系重合体組成物(E)から得られることを特徴とする、二軸延伸フィルム。
【0011】
エチレン系重合体成分(A):
下記エチレン系重合体(a)を20重量%以上100重量%以下含み、且つ、下記要件(A−1)〜(A−3)を満たす:
(A−1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFRA)が0.01g/10分以上10g/10分以下である;
(A−2)密度(DA)が890kg/m3以上940kg/m3以下である;
(A−3)135℃デカリン中で測定した極限粘度〔[η](dl/g)〕と、GPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量の0.776乗(Mw0.776)の比、[η]/Mw0.776が、1.90×10-4以上2.80×10-4以下である。
【0012】
エチレン系重合体成分(B):
エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとの共重合体であり、且つ、下記要件(B−1)〜(B−5)を満たす:
(B−1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFRB)が0.01g/10分以上30g/10分以下である;
(B−2)密度(DB)が900kg/m3以上939kg/m3以下である;
(B−3)13C−NMRにより測定された炭素原子1000個当たりのメチル分岐数〔Me(/1000C)〕とエチル分岐数〔Et(/1000C)〕との和〔(Me+Et)(/1000C)〕が1.80以下である;
(B−4)200℃におけるゼロせん断粘度〔η0(P)〕と、GPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量の6.8乗(Mw6.8)の比、η0/Mw6.8が、0.03×10-30以上7.5×10-30以下である;
(B−5)135℃デカリン中で測定した極限粘度〔[η](dl/g)〕と、GPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量の0.776乗(Mw0.776)の比、[η]/Mw0.776が、0.90×10-4以上1.65×10-4以下である。
【0013】
エチレン系重合体(a):
エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとの共重合体であり、且つ、下記要件(a−1)〜(a−3)を満たす:
(a−1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFRa)が0.01g/10分以上5.0g/10分以下である;
(a−2)密度(Da)が890kg/m3以上928kg/m3以下である;
(a−3)(DB−Da)≧1kg/m3である。
【0014】
[2] 前記エチレン系重合体成分(A)が、下記要件を満たすエチレン系重合体(c)(ただし、上記エチレン系重合体(a)に該当するものを除く)を、20重量%以上50重量%以下さらに含むことを特徴とする、前記[1]に記載の二軸延伸フィルム。
【0015】
エチレン系重合体(c):
エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとの共重合体であって、下記要件(c−1)〜(c−4)を満たす:
(c−1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFRc)が0.01g/10分以上3000g/10分以下である;
(c−2)(MFRc−MFRa)≧1g/10分である;
(c−3)密度(Dc)が900kg/m3以上940kg/m3以下である;
(c−4)(Dc−Da)≧1kg/m3である。
【0016】
[3] 前記エチレン系重合体成分(A)が、下記要件を満たすエチレン系重合体(d)を、10重量%以上50重量%以下さらに含むことを特徴とする、前記[1]または[2]に記載の二軸延伸フィルム。
【0017】
エチレン系重合体(d):
エチレン単独重合体もしくはエチレンと炭素数3以上10以下のα−オレフィンとの共重合体であって、下記要件(d−1)〜(d−2)を満たす:
(d−1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFRd)が0.01g/10分以上2g/10分以下である;
(d−2)密度(Dd)が940kg/m3を超えて980kg/m3以下である。
【0018】
[4] 下記要件を満たすエチレン系重合体成分(A)と、下記要件を満たすエチレン系重合体成分(B)とを含み、且つ、
前記エチレン系重合体成分(A)の重量分率〔WA〕が0.50以上0.92以下、前記エチレン系重合体成分(B)の重量分率〔WB〕が0.08以上0.50以下(WAとWBの合計を1.0とする)であることを特徴とするエチレン系重合体組成物。
【0019】
エチレン系重合体成分(A):
下記エチレン系重合体(a)を20重量%以上100重量%以下含み、且つ、下記要件(A−1)〜(A−3)を満たす:
(A−1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFRA)が0.01g/10分以上10g/10分以下である;
(A−2)密度(DA)が890kg/m3以上940kg/m3以下である;
(A−3)135℃デカリン中で測定した極限粘度〔[η](dl/g)〕と、GPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量の0.776乗(Mw0.776)の比、[η]/Mw0.776が、1.90×10-4以上2.80×10-4以下である。
【0020】
エチレン系重合体成分(B):
エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとの共重合体であり、且つ、下記要件(B−1)〜(B−5)を満たす:
(B−1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFRB)が0.01g/10分以上30g/10分以下である;
(B−2)密度(DB)が900kg/m3以上939kg/m3以下である;
(B−3)13C−NMRにより測定された炭素原子1000個当たりのメチル分岐数〔Me(/1000C)〕とエチル分岐数〔Et(/1000C)〕との和〔(Me+Et)(/1000C)〕が1.80以下である;
(B−4)200℃におけるゼロせん断粘度〔η0(P)〕と、GPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量の6.8乗(Mw6.8)の比、η0/Mw6.8が、0.03×10-30以上7.5×10-30以下である;
(B−5)135℃デカリン中で測定した極限粘度〔[η](dl/g)〕と、GPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量の0.776乗(Mw0.776)の比、[η]/Mw0.776が、0.90×10-4以上1.65×10-4以下である。
【0021】
エチレン系重合体(a):
エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとの共重合体であり、且つ、下記要件(a−1)〜(a−3)を満たす:
(a−1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFRa)が0.01g/10分以上5.0g/10分以下である;
(a−2)密度(Da)が890kg/m3以上928kg/m3以下である;
(a−3)(DB−Da)≧1kg/m3である。
【0022】
[5] 前記エチレン系重合体成分(A)が、下記要件を満たすエチレン系重合体(c)(ただし、上記エチレン系重合体(a)に該当するものを除く)を、20重量%以上50重量%以下さらに含むことを特徴とする、前記[4]に記載のエチレン系重合体組成物。
【0023】
エチレン系重合体(c):
エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとの共重合体であって、下記要件(c−1)〜(c−4)を満たす:
(c−1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFRc)が0.01g/10分以上3000g/10分以下である;
(c−2)(MFRc−MFRa)≧1g/10分である;
(c−3)密度(Dc)が900kg/m3以上940kg/m3以下である;
(c−4)(Dc−Da)≧1kg/m3である。
【0024】
[6] 前記エチレン系重合体成分(A)が、下記要件を満たすエチレン系重合体(d)を、10重量%以上50重量%以下さらに含むことを特徴とする、前記[4]または[5]に記載のエチレン系重合体組成物。
【0025】
エチレン系重合体(d):
エチレン単独重合体もしくはエチレンと炭素数3以上10以下のα−オレフィンとの共重合体であって、下記要件(d−1)〜(d−2)を満たす:
(d−1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFRd)が0.01g/10分以上2g/10分以下である;
(d−2)密度(Dd)が940kg/m3を超えて980kg/m3以下である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、厚薄精度に優れた二軸延伸フィルムを広い延伸温度幅で得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る二軸延伸フィルムおよびエチレン系重合体組成物について具体的に説明する。
[エチレン系重合体組成物(E)]
本発明のエチレン系重合体組成物(E)は、エチレン系重合体成分(A)とエチレン系重合体成分(B)とを含み、エチレン系重合体成分(A)の重量分率〔WA〕が0.50以上0.92以下、エチレン系重合体成分(B)の重量分率〔WB〕が0.08以上0.50以下(WAとWBの合計を1.0とする)である。
【0028】
ここで、WAの下限値は好ましくは0.55、より好ましくは0.60、上限値は好ましくは0.85、より好ましくは0.80、WBの下限値は好ましくは0.15、より好ましくは0.20、上限値は好ましくは0.45、より好ましくは0.40である。
【0029】
Bが上記下限値以上であると、後述する理由によってエチレン系重合体成分(A)とエチレン系重合体成分(B)との分子鎖の絡み合いが強くなり厚薄精度において好ましく、また、溶融張力も向上するため膜垂れを防ぎ延伸可能温度幅が広くなる。WBが上記上限値以下であると、原反粘度が高くなりすぎないため膜破れを防ぎ延伸可能温度幅が広がり、均一延伸でき厚薄精度が良好となる。
【0030】
このように、本発明に係るエチレン系重合体組成物(E)は、エチレン系重合体成分(A)とエチレン系重合体成分(B)とを特定の比率で含んでいればよく、それ以外の成分を更に含むかどうかについては特に限定されない。例えば、本発明に係るエチレン系重合体組成物(E)は、実質的にエチレン系重合体成分(B)およびエチレン系重合体成分(A)のみからなるものであっても良い。ただ、本発明に係るエチレン系重合体組成物(E)は、エチレン系重合体成分(B)とエチレン系重合体成分(A)のみからなるエチレン系重合体組成物に限られるものではなく、エチレン系重合体成分(B)およびエチレン系重合体成分(A)に加えて、エチレン系重合体成分(B)およびエチレン重合体成分(A)のいずれでもない熱可塑性樹脂(以下、「他の熱可塑性樹脂」)を含むことができる。
【0031】
また、エチレン系重合体組成物(E)には、「他の熱可塑性樹脂」に代えて、あるいは、「他の熱可塑性樹脂」に加えて、後述する「その他の配合成分」をさらに含むことができる。
【0032】
次に、エチレン系重合体組成物(E)の構成成分である、エチレン系重合体成分(B)およびエチレン系重合体成分(A)について説明する。
<エチレン系重合体成分(B)>
本発明に係るエチレン系重合体組成物(E)は、エチレン系重合体成分(B)を含む。本発明において、エチレン系重合体成分(B)は、後述するように、多くの長鎖分岐を有するエチレン系重合体成分として用いられるものである。
【0033】
このエチレン系重合体成分(B)は、エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィン、好ましくはエチレンと炭素数6以上10以下のα−オレフィンとの共重合体である。ここで、「炭素数4以上10以下のα−オレフィン」として炭素数4のα−オレフィンを使用する場合には、炭素数6〜10のα−オレフィンもあわせて使用することが好ましい。
【0034】
エチレン重合体成分(B)において、エチレンとの共重合に用いられる炭素数4〜10のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンなどが挙げられる。
【0035】
また、エチレン系重合体成分(B)は、本発明の目的を損なわない範囲で、後述する「その他の配合成分」を少量さらに含んでいてもよい。したがって、エチレン重合体成分(B)の構成態様として、以下のものが挙げられる:
エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとの共重合体のみからなるエチレン系重合体成分(B1);
エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとの共重合体と、後述する「その他の配合成分」とからなるエチレン系重合体成分(B1')。
【0036】
エチレン系重合体成分(B)は下記要件(B−1)〜(B−5)に示す特性を有している。
(B−1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFRB)が0.01g/10分以上30g/10分以下である。
【0037】
ここで、メルトフローレート(MFRB)の下限は好ましくは0.1g/10分、より好ましくは0.5g/10分、特に好ましくは1.0g/10分であり、上限は好ましくは20g/10分、より好ましくは7.0g/10分である。
【0038】
メルトフローレート(MFRB)が上記下限値以上の場合、エチレン系重合体組成物(E)においてせん断粘度・伸長粘度が高すぎず、成形性が良好である。メルトフローレート(MFRB)が上記上限値以下の場合、二軸延伸フィルムの厚薄精度が良好となり、引張強度やヒートシール強度などの機械的強度も良好になる。
【0039】
メルトフローレート(MFR)は分子量に強く依存しており、メルトフローレート(MFR)が小さいほど分子量は大きく、メルトフローレート(MFR)が大きいほど分子量は小さくなる。また、エチレン系重合体の分子量は、重合系内における水素とエチレンとの組成比(水素/エチレン)により決定されることが知られている(例えば、曽我和雄他編、「Catalytic Olefin Polymerization」、講談社サイエンティフィク、1990年、p.376)。このため、水素/エチレンを増減させることで、エチレン系重合体成分(B)のメルトフローレート(MFRB)を増減させることが可能である。そして、後述するエチレン系重合体(a)など、後述するエチレン系重合体成分(A)を構成する各構成重合体についても、同様の要領でメルトフローレートを調整することができる。
【0040】
メルトフローレート(MFR)は、メルトフローレート(MFRB)に限らず、後述するメルトフローレート(MFRA)、メルトフローレート(MFRa)、メルトフローレート(MFRc)およびメルトフローレート(MFRd)も含め、ASTM D1238−89に従い、190℃、2.16kg荷重の条件下で測定される。
【0041】
(B−2)密度(DB)が900kg/m3以上939kg/m3以下である。
ここで、密度(DB)の下限は好ましくは910kg/m3、より好ましくは915kg/m3であり、上限は好ましくは935kg/m3、より好ましくは930kg/m3である。
【0042】
密度(DB)が上記下限値以上の場合、エチレン系重合体組成物(E)から成形されたフィルムの表面べたつきが少なく耐ブロッキング性に優れ、密度(DB)が上記上限値以下の場合、二軸延伸フィルムの厚薄精度が良好となり、フィルムの衝撃強度も良好となり、ヒートシール強度、破袋強度などの機械的強度も良好である。
【0043】
密度はエチレン系重合体のα−オレフィン含量に依存しており、α−オレフィン含量が少ないほど密度は高く、α−オレフィン含量が多いほど密度は低くなる。また、エチレン系重合体中のα−オレフィン含量は、重合系内におけるα−オレフィンとエチレンとの組成比(α−オレフィン/エチレン)により決定されることが知られている(例えば、Walter Kaminsky, Makromol. Chem. 193, p.606(1992))。このため、α−オレフィン/エチレンを増減させることで、上記範囲の密度を有するエチレン系重合体を製造することができる。そして、後述するエチレン系重合体(a)など、後述するエチレン系重合体成分(A)を構成する各構成重合体成分についても、同様の要領で密度を調整することができる。
【0044】
密度の測定は、密度(DB)に限らず、後述する密度(DA)、密度(Da)、密度(Dc)および密度(Dd)も含め、測定サンプルを120℃で1時間熱処理し、1時間かけて直線的に室温まで徐冷した後、密度勾配管により行う。
【0045】
(B−3)13C−NMRにより測定された炭素原子1000個当たりのメチル分岐数〔Me(/1000C)〕とエチル分岐数〔Et(/1000C)〕との和〔(Me+Et)(/1000C)〕は1.80以下、好ましくは1.30以下、より好ましくは0.80以下、さらにより好ましくは0.50以下である。
【0046】
ここで、本発明にいう「メチル分岐数」および「エチル分岐数」は、特に別途の規定がない限り、本明細書全体を通じて、後述するように1000カーボン当たりの数で定義される。
【0047】
エチレン系重合体中にメチル分岐、エチル分岐などの短鎖分岐が存在すると、短鎖分岐が結晶中に取り込まれ、結晶の面間隔が広がってしまうため、樹脂の機械的強度が低下することが知られている(例えば、大澤善次郎他監修、「高分子の寿命予測と長寿命化技術」、(株)エヌ・ティー・エス、2002年、p.481)。そのため、上記炭素原子1000個当たりのメチル分岐数とエチル分岐数との和〔(Me+Et)(/1000C)〕が上記上限値以下の場合、エチレン系重合体組成物(E)および得られる二軸延伸フィルムの機械的強度が良好である。
【0048】
一般に、エチレン系重合体中のメチル分岐数、エチル分岐数はエチレン系重合体の重合方法に強く依存し、高圧ラジカル重合により得られたエチレン系重合体は、チーグラー型触媒を用いた配位重合により得られたエチレン系重合体に比べ、メチル分岐数、エチル分岐数が多い。配位重合の場合、エチレン系重合体中のメチル分岐数、エチル分岐数は、重合系内におけるプロピレン、1−ブテンとエチレンとの組成比(プロピレン/エチレン、1−ブテン/エチレン)に強く依存する。このため、1−ブテン/エチレンを増減させることで、エチレン系重合体における上記炭素原子1000個当たりのメチル分岐数とエチル分岐数の和〔(Me+Et)(/1000C)〕を増減させることが可能である。
【0049】
13C-NMRにより測定されたメチル分岐数およびエチル分岐数は下記のように決定される。測定は日本電子(株)製ECP500型核磁気共鳴装置(1H:500MHz)を用い、積算回数1万〜3万回にて測定した。なお、化学シフト基準として主鎖メチレンのピーク(29.97ppm)を用いた。直径10mmの市販のNMR測定石英ガラス管中に、サンプル250〜400mgと和光純薬工業(株)製特級o-ジクロロベンゼン:ISOTEC社製ベンゼン−d6=5:1(体積比)の混合液3mlを入れ、120℃にて加熱、均一分散させることにより行った。NMRスペクトルにおける各吸収の帰属は、化学領域増刊141号 NMR−総説と実験ガイド[I]、p.132〜133に準じて行った。1,000カーボン当たりのメチル分岐数、すなわち、エチレン系重合体の重合体鎖を構成する炭素原子1000個当たりのメチル分岐数、すなわち、エチレン系重合体の重合体鎖を構成する炭素原子1000個当たりのメチル分岐数は、5〜45ppmの範囲に現れる吸収の積分総和に対する、メチル分岐由来のメチル基の吸収(19.9ppm)の積分強度比より算出する。また、エチル分岐数は、5〜45ppmの範囲に現れる吸収の積分総和に対するエチル分岐由来のエチル基の吸収(10.8ppm)の積分強度比より算出する。
【0050】
なお、「メチル分岐数」および「エチル分岐数」についての以上の記載は、エチレン系重合体成分(B)に限らず、後述するエチレン系重合体成分(A)についても同様に当てはまる。
【0051】
(B−4)200℃におけるゼロせん断粘度〔η0(P)〕と、GPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量の6.8乗(Mw6.8)の比、η0/Mw6.8が、0.03×10-30以上7.5×10-30以下である。
【0052】
すなわち、本発明で用いられるエチレン系重合体成分(B)では、η0とMwが下記式(Eq-1)
0.03×10-30≦η0/Mw6.8≦7.5×10-30 -------- (Eq-1)
を満たす。ここで、下限値は好ましくは0.05×10-30、より好ましくは0.8×10-30であり、上限値は好ましくは5.0×10-30、より好ましくは3.0×10-30である。
【0053】
η0/Mw6.8が、0.03×10-30以上7.5×10-30以下であることは、η0とMwを両対数プロットした際に、log(η0)とlogMwが下記式(Eq-1')で規定される領域に存在することと同義である。
6.8Log(Mw)−31.523≦Log(η0)≦6.8Log(Mw)−29.125 -------- (Eq-1')
【0054】
重量平均分子量(Mw)に対してゼロせん断粘度〔η0(P)〕を両対数プロットしたとき、長鎖分岐がなく直鎖状で、伸長粘度がひずみ硬化性を示さないエチレン系重合体は、傾きが3.4のべき乗則に則る。一方、比較的短い長鎖分岐を数多く有し、伸長粘度がひずみ速度硬化性を示すエチレン系重合体は、べき乗則よりも低いゼロせん断粘度〔η0(P)〕を示し、さらにその傾きは3.4よりも大きな値となることが知られており(C. Gabriel, H. Munstedt, J. Rheol., 47(3), 619(2003)、H. Munstedt, D. Auhl, J. Non−Newtonian Fluid Mech. 128, 62−69(2005))、傾き6.8は経験的に選択しうる。η0とMw6.8との比をとることについては特開2011−1545号公報にも開示されている。
【0055】
エチレン系重合体成分(B)の200℃におけるゼロせん断粘度〔η0(P)〕が20×10-13×Mw6.8以下の場合、エチレン系重合体組成物(E)においてひずみ硬化性もしくはひずみ速度硬化性により均一延伸できる。
【0056】
ゼロせん断粘度〔η0(P)〕と重量平均分子量(Mw)との関係は、エチレン系重合体中の長鎖分岐の含量および長さに依存していると考えられ、長鎖分岐含量が多いほど、また長鎖分岐の長さが短いほど〔η0/Mw6.8〕は請求範囲下限に近い値を示し、長鎖分岐含量が少ないほど、また長鎖分岐の長さが長いほど〔η0/Mw6.8〕は請求範囲上限に近い値を示すと考えられる。
【0057】
すなわち、〔η0/Mw6.8〕が上限値を超えると長鎖分岐の数が不足する傾向となり、下限値を下回ると長鎖分岐の長さが不足する傾向となっていると考えられる。
ここで、長鎖分岐とはエチレン系重合体中に含まれる絡み合い点間分子量(Me)以上の長さの分岐構造と定義され、長鎖分岐の導入によりエチレン系重合体の溶融物性、及び成形加工性は著しく変化することが知られている(例えば、松浦一雄他編、「ポリエチレン技術読本」、工業調査会、2001年、p.32, 36)。後述のように本発明に係るエチレン系重合体成分(B)は、例えば、後記「エチレン系重合体成分(B)製造用触媒」の項で後述する成分(CA)、成分(CB)、成分(CC)を含むオレフィン重合用触媒の存在下、エチレンと、炭素数4以上10以下のα−オレフィンとを重合することによって製造することができる。
【0058】
本発明のエチレン系重合体が生成する機構において、本発明者らは、例えば、成分(CA)と成分(CC)、ならびに必要に応じて、後記「エチレン系重合体成分(B)製造用触媒」の項で後述する固体状担体(S)を含むオレフィン重合用触媒成分の存在下で、エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとを共重合させることによって数平均分子量4000以上20000以下、好ましくは4000以上15000以下の末端ビニルを有する重合体である「マクロモノマー」を生成させ、次いで、成分(CB)と成分(CC)、ならびに必要に応じて固体状担体(S)を含むオレフィン重合用触媒成分により、エチレンおよび炭素数4以上10以下のα−オレフィンの重合と競争的に該マクロモノマーを共重合させることにより、より有利な形で、エチレン系重合体成分(B)中に長鎖分岐が生成すると推定している。
【0059】
重合系中のマクロモノマーとエチレンとの組成比([マクロモノマー]/[エチレン])が高いほど長鎖分岐含量が多くなる。オレフィン重合用触媒中の成分(CA)の比率、すなわち、成分(CA)および成分(CB)の合計に対する、成分(CA)のモル比([A]/[A+B])を高くすることで[マクロモノマー]/[エチレン]を高くできることから、([A]/[A+B])を高くすることで長鎖分岐含量は多くなる。また、重合系中の水素とエチレンとの組成比(水素/エチレン)を高くするとマクロモノマーの分子量が小さくなる為、エチレン系重合体中に導入される長鎖分岐の長さは短くなる。
【0060】
このことから、[A]/[A+B]、及び水素/エチレンを増減させることで、上記範囲のη0/Mw6.8を有するエチレン系重合体を製造することができる。
これらのほか、長鎖分岐量を制御する重合条件について例えば国際公開第2007/034920号パンフレットに開示されている。
【0061】
200℃におけるゼロせん断粘度〔η0(P)〕は以下のようにして求める。測定温度200℃におけるせん断粘度(η*)の角速度〔ω(rad/秒)〕分散を0.02512≦ω≦100の範囲で測定する。測定にはレオメトリックス社製ダイナミックストレスレオメーターSR-5000を用いる。サンプルホルダーは25mmφのパラレルプレートを用い、サンプル厚みは約2.0mmとした。測定点はω一桁当たり5点とする。歪み量は、測定範囲でのトルクが検出可能で、かつトルクオーバーにならないよう、3〜10%の範囲で適宜選択する。せん断粘度測定に用いたサンプルは、神藤金属工業所製プレス成形機を用い、予熱温度190℃、予熱時間5分間、加熱温度190℃、加熱時間2分間、加熱圧力100kgf/cm2、冷却温度20℃、冷却時間5分間、冷却圧力100kgf/cm2の条件にて、測定サンプルを厚さ2mmにプレス成形することで調製する。
【0062】
ゼロせん断粘度η0は、下記数式(Eq-2)のCarreauモデルを非線形最小二乗法により実測のレオロジー曲線〔せん断粘度(η*)の角速度(ω)分散〕にフィッティングさせることで算出する。
η*=η0〔1+(λω)a(n-1)/a --- (Eq-2)
【0063】
ここで、λは時間の次元を持つパラメーター、nは材料の冪法則係数(power law index)を表す。なお、非線形最小二乗法によるフィッティングは下記数式(Eq-3)におけるdが最小となるよう行われる。
【0064】
【数1】
ここで、ηexp(ω)は実測のせん断粘度、ηcalc(ω)はCarreauモデルより算出したせん断粘度を表す。
【0065】
GPC-VISCO法による重量平均分子量(Mw)はウォーターズ社製GPC/V2000を用い、以下のようにして測定する。ガードカラムはShodex AT-G、分析カラムはAT-806を2本使用し、カラム温度は145℃とし、移動相にはo-ジクロロベンゼンおよび酸化防止剤としてBHT 0.3重量%を用い、1.0ml/分で移動させ、試料濃度は0.1重量%とし、検出器として示差屈折計、3キャピラリー粘度計を用いる。標準ポリスチレンは、東ソー社製を用いた。分子量計算は、粘度計と屈折計から実測粘度を算出し、実測ユニバーサルキャリブレーションより重量平均分子量(Mw)を算出する。
【0066】
(B−5)135℃デカリン中で測定した極限粘度〔[η](dl/g)〕と、GPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量の0.776乗(Mw0.776)の比、[η]/Mw0.776が、0.90×10-4以上1.65×10-4以下である。すなわち、本発明で用いられるエチレン系重合体成分(B)では、[η]とMwが下記式(Eq-4)
0.90×10-4≦[η]/Mw0.776≦1.65×10-4 -------- (Eq-4)
を満たす。ここで、下限値は好ましくは0.95×10-4、より好ましくは1.00×10-4であり、上限値は好ましくは1.55×10-4、より好ましくは1.45×10-4である。
【0067】
[η]/Mw0.776が、0.90×10-4以上1.65×10-4以下であることは、[η]とMwを両対数プロットした際に、log([η])とlog(Mw)が下記式(Eq-4')で規定される領域に存在することと同義である。
0.776Log(Mw)−4.046≦Log([η])≦0.776Log(Mw)−3.783 -------- (Eq-4')
【0068】
エチレン系重合体中に長鎖分岐が導入されると、長鎖分岐の無い直鎖型エチレン系重合体に比べ、分子量の割に極限粘度[η](dl/g)が小さくなることが知られている(例えばWalther Burchard, ADVANCES IN POLYMER SCIENCE, 143, Branched Polymers II, p.137(1999))。
【0069】
また、Mark−Houwink−桜田式に基づき、ポリエチレンの[η]はMvの0.7乗、ポリプロピレンの[η]はMwの0.80乗、ポリ−4−メチル−1−ペンテンの[η]はMnの0.81乗に比例することが報告されている(例えばR. Chiang, J. Polym. Sci., 36, 91 (1959): P.94、R. Chiang, J. Polym. Sci., 28, 235(1958): P.237、A. S. Hoffman, B. A. Fries and P. C. Condit, J. Polym. Sci. Part C, 4, 109(1963): P.119 Fig. 4)。
【0070】
そして、エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとの共重合体の代表的な指標としてMwの0.776乗を設定することとし、従来のエチレン系重合体に比べて分子量の割に[η]が小さいことを表したのが前記した要件(B−5)であり、この考え方は国際公開第2006/080578号パンフレットに開示されている。
【0071】
よって、エチレン系重合体成分(B)の[η]/Mw0.776が上記上限値以下、特に1.65×10-4以下の場合は多数の長鎖分岐を有しており、エチレン系重合体組成物(E)の成形性、流動性が優れる。
【0072】
前述のようにオレフィン重合用触媒中の成分(CA)の比率([A]/[A+B])を高くすることで長鎖分岐含量は多くなることから、[A]/[A+B]を増減させることで、請求範囲の極限粘度[η]を有するエチレン系重合体成分(B)を製造することができる。
【0073】
なお、極限粘度[η] (dl/g)はデカリン溶媒を用い、以下のように測定した。サンプル約20 mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定する。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定する。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/C値を極限粘度[η]とした。(下式(Eq-5)参照)
[η]=lim(ηsp/C) (C→0) ---------- (Eq-5)
【0074】
<エチレン系重合体成分(B)の製造方法>
本発明で用いられるエチレン系重合体成分(B)は、後述するエチレン系重合体製造用触媒の存在下、エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとを重合することにより製造することができる。
【0075】
本発明では、溶解重合や懸濁重合などの液相重合法、または気相重合法などの重合方法が用いられるが、好ましくは懸濁重合法や気相重合法が用いられる。
液相重合法で用いられる不活性炭化水素媒体としては、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカンおよび灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサンおよびメチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素;ならびにエチレンクロリド、クロロベンゼンおよびジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などが挙げられる。また、α−オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0076】
エチレン系重合体成分(B)製造用触媒
本発明のエチレン系重合体成分(B)は、成分(CA)、成分(CB)および成分(CC)を含む触媒の存在下、エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとを重合することによって効率的に製造することができる。
【0077】
本発明で用いられるエチレン系重合体成分(B)製造用触媒は、以下に述べる成分(CA)、成分(CB)および成分(CC)に加えて、固体状担体(S)ならびに成分(G)を含んでもよい。
上記オレフィン重合用触媒で用いられる各成分について説明する。
【0078】
成分(CA)
本発明で用いることができる成分(CA)は、下記一般式(I)で表される架橋型メタロセン化合物である。
【0079】
【化1】
一般式(I)中、Mは周期表第4族遷移金属原子を示し、具体的には、チタン、ジルコニウムおよびハフニウムから選ばれる遷移金属原子であり、好ましくはジルコニウムである。
【0080】
1〜R8は、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、硫黄含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、およびスズ含有基から選ばれ、互いに同一でも異なっていてもよいが、すべてが同時に水素原子ではない。また、R1〜R8は、隣接する基が互いに結合して脂肪族環を形成してもよい。
【0081】
炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基およびアリールアルキル基などが挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、ノニル基、ドデシル基およびエイコシル基などが挙げられる。シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基およびアダマンチル基などが挙げられる。アルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基およびシクロヘキセニル基などが挙げられる。アリール基としては、フェニル、トリル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニル、ビフェニル、α−またはβ−ナフチル、メチルナフチル、アントラセニル、フェナントリル、ベンジルフェニル、ピレニル、アセナフチル、フェナレニル、アセアントリレニル、テトラヒドロナフチル、インダニルおよびビフェニリルが挙げられる。アリールアルキル基としては、ベンジル、フェニルエチルおよびフェニルプロピルなどが挙げられる。
【0082】
1〜R8に好ましい基は、水素原子または炭素数1〜15のアルキル基であり、さらに好ましくは、R1〜R8の置換基のうち6つ以上が水素原子であり、特に好ましくは、R1〜R8の置換基のうち7つが水素原子であり、残りの1つが炭素数3〜15のアルキル基である。
【0083】
1は二つの配位子を結合する二価の基であって、アルキレン基、置換アルキレン基およびアルキリデン基などの炭素数1〜20の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基およびスズ含有基から選ばれる基であり、特に好ましくはケイ素含有基である。
【0084】
アルキレン基、置換アルキレン基およびアルキリデン基の具体例としては、メチレン、エチレン、プロピレンおよびブチレンなどのアルキレン基;イソプロピリデン、ジエチルメチレン、ジプロピルメチレン、ジイソプロピルメチレン、ジブチルメチレン、メチルエチルメチレン、メチルブチルメチレン、メチル−t−ブチルメチレン、ジヘキシルメチレン、ジシクロヘキシルメチレン、メチルシクロヘキシルメチレン、メチルフェニルメチレン、ジフェニルメチレン、ジトリルメチレン、メチルナフチルメチレン、ジナフチルメチレン、1−メチルエチレン、1,2−ジメチルエチレンおよび1−エチル−2−メチルエチレンなどの置換アルキレン基;シクロプロピリデン、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、ビシクロ[3.3.1]ノニリデン、ノルボルニリデン、アダマンチリデン、テトラヒドロナフチリデンおよびジヒドロインダニリデンなどのシクロアルキリデン基ならびにエチリデン、プロピリデンおよびブチリデンなどのアルキリデン基などが挙げられる。
【0085】
ケイ素含有基としては、シリレン、メチルシリレン、ジメチルシリレン、ジイソプロピルシリレン、ジブチルシリレン、メチルブチルシリレン、メチル−t−ブチルシリレン、ジシクロヘキシルシリレン、メチルシクロヘキシルシリレン、メチルフェニルシリレン、ジフェニルシリレン、ジトリルシリレン、メチルナフチルシリレン、ジナフチルシリレン、シクロジメチレンシリレン、シクロトリメチレンシリレン、シクロテトラメチレンシリレン、シクロペンタメチレンシリレン、シクロヘキサメチレンシリレンおよびシクロヘプタメチレンシリレンなどが挙げられ、特に好ましくは、ジメチルシリレン基およびジブチルシリレン基などのジアルキルシリレン基が挙げられる。
【0086】
Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基およびリン含有基から選ばれる原子または基であり、好ましくはハロゲン原子または炭化水素基である。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられ、特に好ましくは塩素が挙げられる。炭化水素基としては、上述したR1〜R8の炭化水素基と同様のものが挙げられ、炭素数1〜20のアルキル基が特に好ましい。
【0087】
一般式(I)で表される成分(CA)の好ましい化合物の具体例として、ジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2-メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(3-メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−オクチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジブチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−オクチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、トリフルオロメチルブチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、トリフルオロメチルブチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、トリフルオロメチルブチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−オクチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドなどが挙げられ、より好ましい具体例として、ジメチルシリレン(シクロペンタジエニル)(3−n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドおよびジメチルシリレン(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
【0088】
成分(CB)
本発明で用いることができる成分(CB)は、下記一般式(II)で表される架橋型メタロセン化合物である。
【0089】
【化2】
一般式(II)中、Mは周期表第4族遷移金属原子を示し、具体的には、チタン、ジルコニウムおよびハフニウムから選ばれる遷移金属原子であり、好ましくはジルコニウムである。
【0090】
9〜R20は、水素原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、硫黄含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基およびスズ含有基から選ばれ、互いに同一でも異なっていてもよく、また隣接する2個の基が互いに連結して環を形成してもよい。R9〜R20に好ましい基は、水素原子および炭化水素基であり、より好ましくはR9〜R12が水素原子であり、R13〜R20が水素原子または炭素数1〜20のアルキル基である。
【0091】
2は、二つの配位子を結合する二価の基であって、アルキレン基、置換アルキレン基およびアルキリデン基などの炭素数1〜20の炭化水素基ならびにハロゲン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基およびスズ含有基から選ばれる基であり、好ましくは、アルキレン基、置換アルキレン基およびアルキリデン基などの炭素数1〜20の炭化水素基ならびにケイ素含有基であり、特に好ましくはアルキレン基、置換アルキレン基およびアルキリデン基などの炭素数1〜10の炭化水素基である。
【0092】
Xは、上記式(I)中のXと同様のものが挙げられる。
一般式(II)で表される成分(CB)の好ましい化合物の具体例として、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジブチルメチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、シクロヘキシリデン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリル(シクロペンタジエニル)(3,6−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドおよびジメチルシリル(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドリドジベンズフルオレニル)ジルコニウムジクロリドが挙げられ、より好ましい具体例として、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドなどが挙げられる。
【0093】
成分(CC)
本発明で用いることができる成分(CC)は、下記(cc−1)〜(cc−3)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である:
【0094】
(cc−1)下記一般式(III)、(IV)または(V)で表される有機金属化合物、
amAl(ORbnpq ・・・ (III)
〔一般式(III)中、RaおよびRbは、炭素数が1〜15の炭化水素基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。〕
aAlRa4 ・・・ (IV)
〔一般式(IV)中、MaはLi、NaまたはKを示し、Raは炭素数が1〜15の炭化水素基を示す。〕
arbbst ・・・ (V)
〔一般式(V)中、RaおよびRbは、炭素数が1〜15の炭化水素基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、MbはMg、ZnまたはCdを示し、Xはハロゲン原子を示し、rは0<r≦2、sは0≦s≦1、tは0≦t≦1であり、かつr+s+t=2である。〕
【0095】
(cc−2)有機アルミニウムオキシ化合物、および、
(cc−3)成分(CA)および成分(CB)と反応してイオン対を形成する化合物。
【0096】
一般式(III)、(IV)または(V)で表される有機金属化合物(cc−1)の中では、一般式(III)で示されるものが好ましく、具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウムおよびトリオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;ならびにジメチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジ−n−ブチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドおよびジイソヘキシルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライドなどが挙げられる。これらは、1種単独または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0097】
有機アルミニウムオキシ化合物(cc−2)としては、トリアルキルアルミニウムまたはトリシクロアルキルアルミニウムから調製された有機アルミニウムオキシ化合物が好ましく、トリメチルアルミニウムまたはトリイソブチルアルミニウムから調製されたアルミノキサンが特に好ましい。このような有機アルミニウムオキシ化合物は、1種単独または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0098】
成分(CA)および成分(CB)と反応してイオン対を形成する化合物(cc−3)としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報およびUS5321106などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物や、さらにはヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物を制限無く使用することができる。
【0099】
固体状担体(S)
本発明で所要により用いることができる固体状担体(S)は、無機または有機の化合物であって、顆粒状または微粒子状の固体である。
【0100】
このうち無機化合物としては、多孔質酸化物、無機塩化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が挙げられ、好ましくは多孔質酸化物が挙げられる。
多孔質酸化物としては、SiO2、Al23、MgO、ZrO、TiO2、B23、CaO、ZnO、BaOおよびThO2など、またはこれらを含む複合物または混合物、具体的には、天然または合成ゼオライト、SiO2−MgO、SiO2−Al23、SiO2−TiO2、SiO2−V25、SiO2−Cr23およびSiO2−TiO2−MgOなどが用いられる。これらのうち、SiO2を主成分とするものが好ましい。
【0101】
このような多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なるが、本発明で用いられる固体状担体としては、粒径が通常0.2〜300μm、好ましくは1〜200μmであって、比表面積が通常50〜1200m2/g、好ましくは100〜1000m2/gの範囲にあり、細孔容積が通常0.3〜30cm3/gの範囲にあるものが好ましい。このような担体は、必要に応じて、例えば、100〜1000℃、好ましくは150〜700℃で焼成して用いられる。
【0102】
成分(G)
本発明で所要により用いることができる成分(G)として、下記(g−1)〜(g−6)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0103】
(g−1)ポリアルキレンオキサイドブロック、
(g−2)高級脂肪族アミド、
(g−3)ポリアルキレンオキサイド、
(g−4)ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル、
(g−5)アルキルジエタノールアミン、および
(g−6)ポリオキシアルキレンアルキルアミン。
【0104】
本願発明において、このような成分(G)は、反応器内でのファウリングを抑制し、あるいは生成重合体の粒子性状を改善する目的で、エチレン系重合体成分(B)製造用触媒中に共存させることができる。成分(G)の中では、(g−1)、(g−2)、(g−3)および(g−4)が好ましく、(g−1)および(g−2)が特に好ましい。ここで、(g−2)の例として、高級脂肪酸ジエタノールアミドなどが挙げられる。
【0105】
エチレン系重合体成分(B)製造用触媒の調製方法
本発明で用いられるエチレン系重合体成分(B)製造用触媒の調製方法について記載する。
【0106】
上記エチレン系重合体成分(B)製造用触媒は、成分(CA)、成分(CB)および成分(CC)を不活性炭化水素中または、不活性炭化水素を用いた重合系中に添加することにより調製することができる。
【0107】
各成分の添加順序は任意であるが、好ましい順序としては、例えば、
i)成分(CA)と成分(CB)を混合接触させた後に、成分(CC)を接触させ、重合系中に添加する方法
ii)成分(CA)と成分(CC)を混合接触させた接触物および成分(CB)と成分(CC)を混合接触させた接触物を重合系内に添加する方法
iii)成分(CA)、成分(CB)および成分(CC)それぞれを連続的に重合系中に添加する方法、
などが挙げられる。
【0108】
また固体状担体(S)を含む場合、成分(CA)、成分(CB)および成分(CC)の少なくとも1つの成分と、固体状担体(S)とを不活性炭化水素中で接触させ、固体触媒成分(X)を調製することができる。各成分の接触順序は任意であるが、好ましい順序としては、例えば、
iv)成分(CC)と固体状担体(S)とを接触させ、次いで成分(CA)および成分(CB)を接触させて固体触媒成分(X)を調製する方法
v)成分(CA)、成分(CB)および成分(CC)を混合接触させた後に、固体状担体(S)を接触させて調製する方法
vi)成分(CC)と固体状担体(S)とを接触させ、次いで成分(CA)と接触させて調製した固体触媒成分(X1)と、成分(CC)と固体状担体(S)とを接触させ、次いで成分(CB)と接触させて調製した固体触媒成分(X2)とを用いる方法、
などが挙げられ、より好ましいのはiv)である。
【0109】
不活性炭化水素として、具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカンおよび灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサンおよびメチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素;ならびにエチレンクロリド、クロロベンゼンおよびジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などが挙げられる。
【0110】
成分(CC)と固体状担体(S)との接触時間は、通常0〜20時間、好ましくは0〜10時間であり、接触温度は、通常−50〜200℃、好ましくは−20〜120℃である。また、成分(CC)と固体状担体(S)との接触のモル比(成分(CC)/固体状担体(S))は、通常0.2〜2.0、特に好ましくは0.4〜2.0である。
【0111】
成分(CC)および固体状担体(S)の接触物と、成分(CA)および成分(CB)との接触時間は、通常0〜5時間、好ましくは0〜2時間であり、接触温度は、通常−50〜200℃、好ましくは−50〜100℃である。成分(CA)と成分(CB)との接触量は、成分(CC)の種類と量に大きく依存し、成分(cc−1)を使用する場合は、成分(CA)および成分(CB)中の全遷移金属原子(M)と、成分(cc−1)とのモル比[(cc−1)/M]が、通常0.01〜100000、好ましくは0.05〜50000となる量で用いられ、成分(cc−2)を使用する場合は、成分(cc−2)中のアルミニウム原子と、成分(CA)および成分(CB)中の全遷移金属原子(M)とのモル比[(cc−2)/M]が、通常10〜500000、好ましくは20〜100000となる量で用いられ、成分(cc−3)を使用する場合は、成分(cc−3)と、成分(CA)および成分(CB)中の全遷移金属原子(M)とのモル比[(cc−3)/M]が、通常1〜10、好ましくは1〜5となる量で用いられる。なお、成分(CC)と、成分(CA)および成分(CB)中の全遷移金属原子(M)との比は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により求められる。
【0112】
成分(CA)および成分(CB)の使用量比は、エチレン系重合体の分子量および分子量分布から任意に決定できるが、好ましい範囲として、成分(CA)から生成するポリマーと成分(CB)から生成するポリマーとの比率(以下、「成分(CA)および成分(CB)由来のポリマー生成比率」ともいう。)[=成分(CA)の生成ポリマー量/成分(CB)の生成ポリマー量]が、通常40/60〜95/5、好ましくは50/50〜95/5、より好ましくは60/40〜95/5である。
【0113】
成分(CA)および成分(CB)由来のポリマー生成比率の算出方法について説明する。
GPC測定により得られる、エチレン系重合体成分(B)の分子量分布曲線は、実質的に3つのピークから構成される。この3つのピークのうち、1番低分子量側のピークは成分(CA)由来ポリマーに起因するピークであり、2番目のピークは成分(CB)由来ポリマーに起因するピークであり、3番目のピーク、すなわち最も高分子側にあるピークは成分(CA)および成分(CB)の両方用いたときのみに生成するピークである。そして、成分(CA)由来ポリマーに起因するピーク(すなわち、上記1番低分子量側のピーク)と成分(CB)由来ポリマーに起因するピーク(すなわち、上記2番目のピーク)との比率[=成分(CA)由来ポリマーに起因するピーク/成分(CB)由来ポリマーに起因するピーク]を、成分(CA)および成分(CB)由来のポリマー生成比率[=成分(CA)の生成ポリマー量/成分(CB)の生成ポリマー量]として定義する。
【0114】
各ピークの比率は、
エチレン系重合体成分(B)の分子量分布曲線(G1)と、
成分(CA)、成分(CC)、固体状担体(S)からなる触媒(すなわち、成分(CB)を含まない触媒)を用いたことを除き、エチレン系重合体成分(B)を得るときと同様の重合条件にて重合して得られたエチレン系重合体の分子量分布曲線(G2)と、
成分(CB)、成分(CC)、固体状担体(S)からなる触媒(すなわち、成分(CA)を含まない触媒)を用いたことを除き、エチレン系重合体成分(B)を得るときと同様の重合条件にて重合して得られたエチレン系重合体の分子量分布曲線(G3)と
を用いて、下記の方法により実施した。なお、本明細書において、「分子量分布曲線」というときは、特に別の記載がない限り、微分分子量分布曲線を指していい、また、分子量分布曲線について「面積」というときは、分子量分布曲線とベースラインとの間に形成される領域の面積をいう。
【0115】
[1](G1)、(G2)、(G3)の各数値データにおいて、Log(分子量)を0.02間隔に分割し、さらに(G1)、(G2)、(G3)のそれぞれについて、面積が1となるように強度[dwt/d(log分子量)]を正規化する。
【0116】
[2](G2)と(G3)との合成曲線(G4)を作成する。このとき、各分子量における(G1)の強度と(G4)の強度との差の絶対値が概ね0.0005以下となるように、(G2)および(G3)の各分子量における強度を一定の比率で任意に変更する。なお、高分子量側では生成する第3ピークの影響により、(G1)の強度と(G4)の強度との差の絶対値が0.0005より大きくなってしまうため、より低分子量側で(G1)の強度と(G4)の強度との差の絶対値が0.0005以下となるように、(G2)および(G3)の強度を変更していく。
【0117】
[3](G1)における最大重量分率での分子量をピークトップとしたときに、当該ピークトップより高分子量側における(G1)と(G4)との重なり合わない部分、すなわち、(G1)と(G4)との差分曲線(G5)を作成したときに、当該差分曲線(G5)において、(G1)における最大重量分率での分子量より高分子量側に現れるピーク部分(P5)[(G1)−(G4)]を第3ピーク(すなわち、上記「3番目のピーク」)とする。
【0118】
[4] 成分(CA)由来ポリマーに起因するピークの比率Wa、成分(CB)由来ポリマーに起因するピークの比率Wbを以下の通り算出する。
Wa=S(G2)/S(G4)
Wb=S(G3)/S(G4)
ここで、S(G2)、S(G3)はそれぞれ強度を変更した後の(G2)、(G3)の面積であり、S(G4)は(G4)の面積である。
【0119】
たとえば、(G4)が、(G2)の強度をx倍したものに、(G3)の強度をy倍したものを加算することにより得られた場合、上記[1]で上述した正規化によって元の(G2)および(G3)の面積が共に1とされていることから、S(G2)、S(G3)、S(G4)は、それぞれx、y、(x+y)となる。したがって、上記WaおよびWbは、上記xおよびyを用いて、それぞれ以下のように表すことができる。
Wa=x/(x+y)
Wb=y/(x+y)
【0120】
成分(CA)由来のポリマーの生成量が多い方が長鎖分岐を生成するのに有利であり、成分(CA)および成分(CB)の遷移金属化合物当たりのモル比は、生成ポリマーが上記の比率を満たす範囲内において任意に選ぶことができる。
【0121】
エチレン系重合体成分(B)の製造には、上記のような固体触媒成分(X)をそのまま用いることができるが、この固体触媒成分(X)にオレフィンを予備重合させ、予備重合触媒成分(XP)を形成してから用いることもできる。
【0122】
予備重合触媒成分(XP)は、上記固体触媒成分(X)の存在下、通常、不活性炭化水素溶媒中、オレフィンを導入させることにより調製することができ、回分式、半連続式および連続式のいずれの方法でも使用することができ、また減圧、常圧または加圧下のいずれでも行うことができる。この予備重合によって、固体状触媒成分(X)1g当たり、通常0.01〜1000g、好ましくは0.1〜800g、より好ましくは0.2〜500gの重合体を生成させる。
【0123】
不活性炭化水素溶媒中で調製した予備重合触媒成分は、懸濁液から分離した後、再び不活性炭化水素中に懸濁させ、得られた懸濁液中にオレフィンを導入してもよく、また、乾燥させた後オレフィンを導入してもよい。
【0124】
予備重合に際して、予備重合温度は、通常−20〜80℃、好ましくは0〜60℃であり、また予備重合時間は、通常0.5〜100時間、好ましくは1〜50時間である。
予備重合に使用する固体触媒成分(X)の形態としては、すでに述べたものを制限無く利用することができる。また、必要に応じて成分(CC)が用いられ、特に(cc−1)中の上記式(III)に示される有機アルミニウム化合物が好ましく用いられる。成分(CC)が用いられる場合は、該成分(CC)中のアルミニウム原子(Al−C)と遷移金属化合物とのモル比(成分(CC)/遷移金属化合物)で、通常0.1〜10000、好ましくは0.5〜5000の量で用いられる。
【0125】
予備重合系における固体触媒成分(X)の濃度は、固体触媒成分(X)/重合容積1リットル比で、通常1〜1000グラム/リットル、好ましくは10〜500グラム/リットルである。
【0126】
成分(G)は、上記エチレン系重合体成分(B)製造用触媒の調製におけるいずれの工程に共存させてもよく、接触順序も任意である。また予備重合によって生成した予備重合触媒成分(XP)に接触させてもよい。
【0127】
上記、エチレン系重合体成分(B)製造用触媒を用いて、エチレン、または、エチレンと炭素数4〜20のα−オレフィンとの重合を行うに際して、成分(CA)および成分(CB)は、反応容積1リットル当たり、通常10-12〜10-1モル、好ましくは10-8〜10-2モルになる量で用いられる。
【0128】
また、重合温度は、通常−50〜200℃、好ましくは0〜170℃、特に好ましくは60〜170℃の範囲である。重合圧力は、通常、常圧〜100kgf/cm2、好ましくは常圧〜50kgf/cm2の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式および連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うこともできる。
【0129】
得られるエチレン系重合体成分(B)の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによって調節することができる。さらに重合系には、ファウリング抑制あるいは粒子性状改善を目的として、前記の成分(G)を共存させることができる。
【0130】
本発明において、重合反応により得られたエチレン系重合体成分(B)は、そのままの形でエチレン系重合体組成物(E)の製造に用いてもよい。ただ、物性値のばらつきを抑制するため、後述する「その他の配合成分」をブレンドして、エチレン系重合体成分(B)と「その他の配合成分」とからなるエチレン系重合体組成物(B')の形でエチレン系重合体組成物(E)の製造に用いてもよい。重合反応により得られたエチレン系重合体成分(B)粒子と、所望により添加される「その他の配合成分」とのブレンドは、いずれも、従来公知の適当な方法を含む任意の方法により行うことができ、例えば、ドライブレンドによって行われるものであっても良く、あるいは、溶融、混練、さらに必要により造粒などの操作をさらに伴うものであっても良い。ここで、溶融、混練、造粒などは、任意の方法で行うことができる。
【0131】
<エチレン系重合体成分(A)>
本発明に係るエチレン系重合体組成物(E)は、エチレン系重合体成分(A)を含む。本発明において、エチレン系重合体成分(A)は、後述するように、実質的に長鎖分岐を有さない直鎖状のエチレン系重合体成分として用いられるものである。
【0132】
ここで、エチレン系重合体成分(A)は、後述するエチレン系重合体(a)を必須成分として20重量%以上100重量%以下含み、且つ、下記要件(A−1)〜(A−3)に示す特性を有している。
【0133】
(A−1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFRA)が0.01g/10分以上10g/10分以下である。下限値は好ましくは0.05、よりの好ましくは0.1、上限値は好ましくは6.0、より好ましくは4.0である。
【0134】
メルトフローレート(MFRA)が上記下限値以上の場合、エチレン系重合体組成物(E)においてせん断粘度・伸長粘度が高すぎず、成形性が良好である。メルトフローレート(MFRA)が上記上限値以下の場合、エチレン重合体組成物(E)の溶融張力が高く、膜だれや破断せず延伸可能温度幅が広がる。
【0135】
エチレン系重合体成分(A)のメルトフローレート(MFRA)は、エチレン系重合体成分(B)のメルトフローレート(MFRB)と同様に、共重合反応における水素/エチレン比率を増減させることで増減させることが可能である。
【0136】
(A−2)密度(DA)が890kg/m3以上940kg/m3以下である。下限値は好ましくは900kg/m3、より好ましくは905kg/m3である。上限値は好ましくは930kg/m3、より好ましくは925kg/m3である。
【0137】
密度(DA)が上記下限値以上の場合、エチレン系重合体組成物(E)から成形されたフィルムの表面べたつきがさらに少なく耐ブロッキング性に優れ、密度(DA)が上記上限値以下の場合、エチレン重合体組成物(E)の延伸可能温度幅は広がり、成形されたフィルムの衝撃強度もさらに良好となり、ヒートシール強度、破袋強度などの機械的強度も良好である。
【0138】
エチレン系重合体成分(A)の密度(DA)は、エチレン系重合体成分(B)の密度(DB)と同様に、共重合反応におけるα−オレフィン/エチレン比率を増減させることで調整することができ、これによって上記範囲の密度を有するエチレン系重合体を製造することができる。
【0139】
(A−3)135℃デカリン中で測定した極限粘度〔[η](dl/g)〕と、GPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量の0.776乗(Mw0.776)の比、[η]/Mw0.776が、1.90×10-4以上2.80×10-4以下である。すなわち、本発明で用いられるエチレン系重合体成分(A)では、[η]とMwが下記式(Eq-6)
1.90×10-4≦[η]/Mw0.776≦2.80×10-4 -------- (Eq-6)
を満たす。
【0140】
[η]/Mw0.776が、1.90×10-4以上2.80×10-4以下であることは、[η]とMwを両対数プロットした際に、log([η])とlog(Mw)が下記式(Eq-6')で規定される領域に存在することと同義である。
0.776Log(Mw)−3.721≦Log([η])≦0.776Log(Mw)−3.553 -------- (Eq-6')
【0141】
前述のとおり、エチレン系重合体中に長鎖分岐が存在しないと、長鎖分岐を有するエチレン系重合体と比較して分子量の割に極限粘度[η](dl/g)が大きくなることが知られている。そのため、[η]/Mw0.776が1.90×10-4以上のエチレン系重合体は実質的に長鎖分岐の存在しない直鎖状のエチレン系重合体である。このようなエチレン系重合体を含む本発明では、エチレン系重合体組成物(E)の溶融張力が向上し延伸可能温度幅が広がる。
【0142】
本発明で用いられるエチレン系重合体成分(A)は、上記要件のほか、下記要件(A−4)をさらに具備していることが好ましい。
(A−4)13C−NMRにより測定された炭素原子1000個当たりのメチル分岐数〔Me(/1000C)〕とエチル分岐数〔Et(/1000C)〕との和〔(Me+Et)(/1000C)〕が1.80以下、好ましくは1.30以下、より好ましくは0.80以下、さらにより好ましくは0.50以下である。
メチル分岐数とエチル分岐数との和(A+B)が上記数値以下の場合、エチレン系重合体組成物(E)の機械的強度が良好である。
【0143】
エチレン系重合体(a)
本発明において、エチレン系重合体成分(A)は、エチレン系重合体(a)を含む。
本発明で用いられるエチレン系重合体(a)は、エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとの共重合体であり、下記要件(a−1)〜(a−3)を満たす。ここで、エチレン系重合体(a)として用いられる「エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとの共重合体」は、好ましくは、エチレンと炭素数6以上10以下のα−オレフィンとの共重合体である。なお、このような「炭素数4以上10以下のα−オレフィン」として炭素数4のα−オレフィンを使用する場合には、炭素数6〜10のα−オレフィンもあわせて使用することが好ましい。
【0144】
エチレン系重合体(a)を構成する炭素数4以上10以下のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセンなどが挙げられる。
【0145】
エチレン系重合体成分(A)におけるエチレン系重合体(a)の含量は、20重量%以上100重量%以下であり、その下限は好ましくは40重量%、より好ましくは60重量%である。
【0146】
エチレン系重合体成分(A)がエチレン系重合体(a)を上記範囲含むことで、エチレン重合体組成物(E)の延伸可能温度幅が広くなり、二軸延伸フィルムとしたときの厚薄精度も良好となる。
【0147】
エチレン系重合体(a)が満たすべき要件(a−1)〜(a−3)は、以下の通りである。
(a−1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFRa)が0.01g/10分以上5.0g/10分以下である。
【0148】
メルトフローレート(MFRa)の下限は好ましくは0.05g/10分、より好ましくは0.1g/10分、上限は好ましくは3.0g/10分、より好ましくは1.0g/10分、さらに好ましくは0.5g/10分である。
【0149】
メルトフローレート(MFRa)が上記範囲内にあると、エチレン系重合体組成物(E)において、原反溶融粘度が高く延伸可能温度幅は広がり、上記エチレン系重合体成分(B)との強い分子鎖の絡み合いを発生させ厚薄精度も良好となる。また、せん断粘度・伸長粘度が高すぎず、押出・シート成形性が良好である。
【0150】
メルトフローレート(MFRa)は、上記(A−1)の説明に記載されているように、共重合反応における水素/エチレン比率を増減させることで上記範囲内に調整可能である。
【0151】
(a−2)密度(Da)が890kg/m3以上928kg/m3以下である。下限値は好ましくは895kg/m3、より好ましくは900kg/m3である。
密度(Da)の上限値は好ましくは920kg/m3、より好ましくは915kg/m3である。
【0152】
密度(Da)が上記範囲内にあると、延伸時にエチレン系重合体(a)が溶融状態となるため、エチレン系重合体組成物(E)において、原反溶融粘度が高く延伸可能温度幅は広がり、厚薄精度も良好となる。
【0153】
密度(Da)は、上記(A−2)の説明に記載されているように、共重合反応におけるα−オレフィン/エチレン比率を増減させることで上記範囲内に調整可能である。
(a−3)(DB−Da)≧1kg/m3である。好ましくは(DB−Da)≧3kg/m3、より好ましくは(DB−Da)≧5kg/m3である。
【0154】
すなわち、本願発明では、エチレン系重合体(a)として、上述したエチレン系重合体成分(B)よりも低い密度を有するものが用いられる。このように、エチレン系重合体(a)の密度(Da)がエチレン系重合体成分(B)の密度(DB)よりも低いと、延伸時にエチレン系重合体(a)が溶融状態となるため、エチレン系重合体組成物(E)において、原反溶融粘度が高く延伸可能温度幅は広がり、厚薄精度も良好となる。
【0155】
エチレン系重合体(a)は、エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとを共重合させることにより得ることができ、その際に用いられる重合触媒や重合条件は、上記要件を満たす限りにおいて、特に限定されない。ただ、エチレン系重合体(a)は、例えば、チーグラー触媒、シングルサイト触媒等を用いた従来公知の製造法により調製することができ、メタロセン化合物を含む触媒を用いて得られた共重合体であることが特に好ましい。
【0156】
このメタロセン化合物を含む触媒は、(a)遷移金属のメタロセン化合物と、(b)有機アルミニウムオキシ化合物と、(c)担体とから形成されることが好ましく、さらに必要に応じて、これらの成分と(d)有機アルミニウム化合物および/または有機ホウ素化合物とから形成されていてもよい。
【0157】
なお、このようなメタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒、および触媒を用いたエチレン系重合体の調製方法は、例えば特開平8−269270号公報に記載されている。
【0158】
エチレン系重合体(c)
本発明において、エチレン系重合体成分(A)は、上記エチレン系重合体(a)のほかに、エチレン系重合体(c)をさらに含んでいてもよい。
【0159】
本発明で所要により用いうるエチレン系重合体(c)は、エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとの共重合体であり、下記要件(c−1)〜(c−4)を満たす。
ここで、エチレン系重合体(c)として用いられる「エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとの共重合体」は、好ましくは、エチレンと炭素数6以上10以下のα−オレフィンとの共重合体である。なお、このような「炭素数4以上10以下のα−オレフィン」として炭素数4のα−オレフィンを使用する場合には、炭素数6〜10のα−オレフィンもあわせて使用することが好ましい。
【0160】
エチレン系重合体(c)を構成する炭素数4以上10以下のα−オレフィンとしては、エチレン系重合体(a)を構成するものと同様のものが挙げられる。
エチレン系重合体成分(A)におけるエチレン系重合体(c)の含量は、好ましくは20重量%以上50重量%以下である。下限はより好ましくは25重量%、さらに好ましくは30重量%、上限はより好ましくは45重量%、さらに好ましくは40重量%である。
【0161】
エチレン系重合体(c)を上記範囲含むことで、エチレン系重合体組成物(E)において、せん断粘度・伸長粘度が低く成形性が良好となり、原反溶融粘度も低くなりすぎず延伸可能温度幅は広がる。
【0162】
エチレン系重合体(c)が満たすべき要件(c−1)〜(c−4)は、以下の通りである。
(c−1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFRc)が0.01g/10分以上3000g/10分以下である。
【0163】
下限は好ましくは1.0g/10分、より好ましくは10g/10分、さらに好ましくは30g/10分、上限は好ましくは1000g/10分、より好ましくは500g/10分、さらに好ましくは100g/10分である。
【0164】
メルトフローレート(MFRc)が上記範囲内にあると、エチレン系重合体(c)を上記範囲含むことで、エチレン系重合体組成物(E)において、せん断粘度・伸長粘度が低く押出・シート成形性が良好となり、原反溶融粘度も低くなりすぎず延伸可能温度幅を保つ。
【0165】
メルトフローレート(MFRc)は上記(A−1)の説明に記載されているように、共重合反応における水素/エチレン比率を増減させることで上記範囲内に調整可能である。
(c−2)(MFRc−MFRa)≧1g/分である。好ましくは(MFRc−MFRa)≧3g/m3、より好ましくは(MFRc−MFRa)≧5g/分である。
【0166】
(c−3)密度(Dc)が900kg/m3以上940kg/m3以下である。下限は好ましくは910kg/m3、より好ましくは915kg/m3であり、上限は好ましくは935kg/m3、より好ましくは930kg/m3である。
【0167】
密度(Dc)が上記範囲内にあると、エチレン系重合体組成物(E)において、延伸可能温度幅は広がる。
密度(Dc)は、上記(A−2)の説明に記載されているように、共重合反応におけるα−オレフィン/エチレン比率を増減させることでと同様の方法で上記範囲内に調整可能である。
【0168】
(c−4)(Dc−Da)≧1kg/m3である。好ましくは(Dc−Da)≧5kg/m3、より好ましくは(Dc−Da)≧10kg/m3である。
エチレン系重合体(c)の密度がエチレン系重合体(a)の密度より大きいことで、エチレン系重合体組成物(E)において延伸可能温度幅は広がる。延伸可能温度幅が広がる理由は後述するように、エチレン系重合体組成物(E)における密度分布が広がることによって、原反フィルムにおいてラメラ厚み分布が広がるためと考えられる。
【0169】
また、延伸時に溶融部分の大半は分子鎖絡み合いに大きく寄与するエチレン系重合体(a)となるため厚薄精度も良好となる。
なお、エチレン系重合体(c)についての要件を満たすエチレン系重合体が、エチレン系重合体(a)についての要件をも同時に満たす場合、本発明では、そのようなエチレン系重合体をエチレン系重合体(a)として取り扱うこととする。
【0170】
エチレン系重合体(c)は、エチレンと炭素数4以上10以下のα−オレフィンとを共重合させることにより得ることができ、その際に用いられる重合触媒や重合条件は、上記要件を満たす限りにおいて、特に限定されない。ただ、エチレン系重合体(c)は、上記エチレン系重合体(a)と同様の方法により得ることができ、その際の重合条件等は、上記要件(c−1)〜(c−4)についての記載等をもとに、例えば、水素/エチレン比率やα−オレフィン/エチレン比率を増減させる等により適宜設定することができる。
【0171】
エチレン系重合体(d)
本発明において、エチレン系重合体成分(A)は、上記エチレン系重合体(a)のほかに、エチレン系重合体(c)に代えて、あるいは、エチレン系重合体(c)とともに、エチレン系重合体(d)をさらに含んでいてもよい。
【0172】
本発明で所要により用いうるエチレン系重合体(d)は、エチレン単独重合体もしくはエチレンと炭素数3以上10以下のα−オレフィンとの共重合体であり、下記要件(d−1)〜(d−2)を満たす。
【0173】
ここで、エチレン系重合体(d)として用いられうる「エチレンと炭素数3以上10以下のα−オレフィンとの共重合体」は、好ましくは、エチレンと炭素数6以上10以下のα−オレフィンとの共重合体である。なお、このような「炭素数3以上10以下のα−オレフィン」として炭素数3あるいは4のα−オレフィンを使用する場合には、炭素数6〜10のα−オレフィンもあわせて使用することが好ましい。
【0174】
エチレン系重合体(d)を構成する炭素数3以上10以下のα−オレフィンとしては、プロピレンおよびエチレン系重合体(a)を構成する炭素数4以上10以下のα−オレフィンと同様のものが挙げられる。
【0175】
エチレン系重合体成分(A)におけるエチレン系重合体(d)の含量は、好ましくは10重量%以上50重量%以下である。下限はより好ましくは15重量%、さらに好ましくは20重量%、上限はより好ましくは45重量%、さらに好ましくは40重量%である。
【0176】
エチレン系重合体(d)を上記範囲含むことで、二軸延伸フィルムの厚薄精度が良好になり、また、フィルムの剛性・強度を発現させる。これは、結晶性の高いエチレン系重合体(d)が結晶核剤として働き、エチレン系重合体組成物(E)において球晶が小さくなるためと考えられる。
【0177】
エチレン系重合体(d)が満たすべき要件(d−1)〜(d−2)は、以下の通りである。
(d−1)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFRd)が0.01g/10分以上2g/10分以下である。下限は好ましくは0.1g/10分、より好ましくは0.5g/10分、上限は好ましくは1.5g/10分、より好ましくは1g/10分である。
【0178】
メルトフローレート(MFRd)が上記範囲内にあると、二軸延伸フィルムの厚薄精度が良好となり、また、フィルムの剛性・強度を発現させる
メルトフローレート(MFRd)は、上記(A−1)の説明に記載されているように、共重合反応における水素/エチレン比率を増減させることで調整可能である。
【0179】
(d−2)密度(Dd)が940kg/m3を超えて980kg/m3以下である。下限は好ましくは945kg/m3、より好ましくは950kg/m3であり、上限は好ましくは970kg/m3、より好ましくは960kg/m3である。
【0180】
密度(Dd)が上記範囲内にあると、二軸延伸フィルムの厚薄精度が良好となり、また、フィルムの剛性・強度を発現させる。
密度(Dd)は、上記(A−2)の説明に記載されているように、共重合反応におけるα−オレフィン/エチレン比率を増減させることで上記範囲内に調整可能である。
【0181】
エチレン系重合体(d)は、上記要件を満たすものが得られる限りにおいて、用いる重合触媒や重合条件は特に限定されず、例えば、チーグラー触媒、シングルサイト触媒等を用いた従来公知の方法で製造できる。
【0182】
エチレン系重合体成分(A)が、エチレン系重合体(c)とエチレン系重合体(d)のいずれをも含むときは、エチレン系重合体(a)を20重量%以上70重量%以下、エチレン系重合体(c)を20重量%以上50重量%以下、かつ、エチレン系重合体(d)を10重量%以上50重量%以下含むことが好ましい。
【0183】
より好ましくは、エチレン系重合体成分(A)においてエチレン系重合体(a)を40重量%以上70重量%以下、エチレン系重合体(c)を20重量%以上45重量%以下、かつ、エチレン系重合体(d)を10重量%以上40重量%以下含む。
【0184】
以上のように、エチレン系重合体成分(A)は、少なくとも、エチレン系重合体(a)を含むが、その典型的な構成態様として、以下のものが挙げられる:
エチレン系重合体(a)のみからなるエチレン系重合体成分(A1);
エチレン系重合体(a)と、エチレン系重合体(c)とからなるエチレン系重合体成分(A2);
エチレン系重合体(a)と、エチレン系重合体(d)とからなるエチレン系重合体成分(A3);
エチレン系重合体(a)と、エチレン系重合体(c)と、エチレン系重合体(d)とからなるエチレン系重合体成分(A4)。
本発明で用いられるエチレン系重合体成分(A)は、エチレン系重合体(a)をそのまま用いてもよいし、あるいは、エチレン系重合体(a)と、エチレン系重合体(c)及び/またはエチレン系重合体(d)とを、公知の適当な方法を含む任意の方法でブレンドすることにより得ることもできる。
【0185】
本発明において、エチレン系重合体成分(A)は、そのままの形でエチレン系重合体組成物(E)の製造に用いてもよいものの、物性値のばらつきを抑制するため、後述する「その他の配合成分」をブレンドして、エチレン系重合体成分(A)と後述する「その他の配合成分」とからなるエチレン系重合体組成物(A')の形でエチレン系重合体組成物(E)の製造に用いてもよい。このエチレン系重合体組成物(A')は、エチレン系重合体成分(B)、および、エチレン系重合体組成物(E)には任意成分として含まれうる後述する「他の熱可塑性樹脂」のいずれも含まれない点でエチレン系重合体組成物(E)と区別される。
【0186】
ここで、エチレン系重合体組成物(A')は、エチレン系重合体成分(A)に「その他の配合成分」をブレンドすることによって得ても良く、あるいは、エチレン系重合体(a)に、「その他の配合成分」、並びに、所望により用いられるエチレン系重合体(c)及び/またはエチレン系重合体(d)をブレンドすることによって得ても良い。
【0187】
また、エチレン系重合体組成物(A')は、エチレン系重合体(a)に「その他の配合成分」をブレンドすることにより、予めエチレン系重合体(a)と「その他の配合成分」とからなるエチレン系重合体組成物(a')を得、このエチレン系重合体組成物(a')に、エチレン系重合体(c)及び/またはエチレン系重合体(d)をさらにブレンドすることによって得ても良い。
【0188】
更に別の態様として、エチレン系重合体組成物(A')は、エチレン系重合体(c)に「その他の配合成分」をブレンドすることにより、予めエチレン系重合体(c)と「その他の配合成分」とからなるエチレン系重合体組成物(c')を得、このエチレン系重合体組成物(c')に、エチレン系重合体(a)及び所要により用いられるエチレン系重合体(d)をさらにブレンドすることによって得ても良い。
【0189】
更に別の態様として、エチレン系重合体組成物(A')は、エチレン系重合体(d)に「その他の配合成分」をブレンドすることにより、予めエチレン系重合体(d)と「その他の配合成分」とからなるエチレン系重合体組成物(d')を得、このエチレン系重合体組成物(c')に、エチレン系重合体(a)及び所要により用いられるエチレン系重合体(c)をさらにブレンドすることによって得ても良い。
【0190】
更に別の態様として、エチレン系重合体組成物(A')は、エチレン系重合体(c)に「その他の配合成分」をブレンドすることにより、予めエチレン系重合体(c)と「その他の配合成分」とからなるエチレン系重合体組成物(c')を得るとともに、エチレン系重合体(d)に「その他の配合成分」をブレンドすることにより、予めエチレン系重合体(d)と「その他の配合成分」とからなるエチレン系重合体組成物(d')を得、エチレン系重合体(a)に、このエチレン系重合体組成物(c')およびエチレン系重合体組成物(d')をさらにブレンドすることによって得ても良い。
【0191】
上記ブレンドは、いずれも、従来公知の適当な方法を含む任意の方法により行うことができ、例えば、ドライブレンドによって行われるものであっても良く、あるいは、ドライブレンドの後、溶融、混練、さらに必要により造粒などの操作をさらに伴うものであっても良い。ここで、溶融、混練、造粒などは、任意の方法で行うことができる。
【0192】
エチレン系重合体成分(A)、エチレン系重合体成分(B)および、所要により用いうる「他の熱可塑性樹脂」に配合しうる「その他の配合成分」は、同じでもよく、あるいは、互いに異なっていても良い。
【0193】
<他の熱可塑性樹脂>
本発明において、エチレン系重合体組成物(E)は、上記エチレン系重合体成分(A)および上記エチレン系重合体成分(B)に加えて、エチレン系重合体成分(B)およびエチレン重合体成分(A)のいずれでもない熱可塑性樹脂(以下、「他の熱可塑性樹脂」)をさらに含むことができる。
【0194】
「他の熱可塑性樹脂」をブレンドすることにより熱可塑性樹脂組成物として得られるエチレン系重合体組成物(E)は、成形性に優れ、かつ機械的強度に優れる。エチレン系重合体成分(B)およびエチレン系重合体成分(A)の合計と、「他の熱可塑性樹脂」とのブレンド比率は、99.9/0.1〜0.1/99.9、好ましくは90/10〜10/90、さらに好ましくは70/30〜30/70である。
【0195】
上記エチレン系重合体組成物(E)においてブレンドしうる「他の熱可塑性樹脂」は、上記エチレン系重合体成分(B)および上記エチレン重合体成分(A)のいずれにも該当しない熱可塑性樹脂であるかぎり特に限定されないものの、好適な「他の熱可塑性樹脂」として、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルおよびポリアセタールなどの結晶性熱可塑性樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリアクリレートなどの非結晶性熱可塑性樹脂が用いられる。また、ポリ塩化ビニルも好ましく用いられる。
【0196】
上記ポリオレフィンとして具体的には、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、ブテン系重合体、4−メチル−1−ペンテン系重合体、3−メチル−1−ブテン系重合体、ヘキセン系重合体などが挙げられる。なかでも、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、4−メチル−1−ペンテン系重合体が好ましく、エチレン系重合体である場合は本発明に係るエチレン系重合体であっても従来のエチレン系重合体であってもよく、エチレン・極性基含有ビニル共重合体であってもよいが、従来のエチレン系重合体がより好ましい。
【0197】
上記ポリエステルとして具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族系ポリエステル;ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレートなどが挙げられる。
【0198】
上記ポリアミドとして具体的には、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−10、ナイロン−12、ナイロン−46などの脂肪族ポリアミド、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンより製造される芳香族ポリアミドなどが挙げられる。
【0199】
上記ポリアセタールとして具体的には、ポリホルムアルデヒド(ポリオキシメチレン)、ポリアセトアルデヒド、ポリプロピオンアルデヒド、ポリブチルアルデヒドなどを挙げることができる。中でも、ポリホルムアルデヒドが特に好ましい。
【0200】
上記ポリスチレンは、スチレンの単独重合体であってもよく、スチレンとアクリロニトリル、メタクリル酸メチル、α−メチルスチレンとの二元共重合体であってもよい。
上記ABSとしては、アクリロニトリルから誘導される構成単位を20〜35モル%の量で含有し、ブタジエンから誘導される構成単位を20〜30モル%の量で含有し、スチレンから誘導される構成単位を40〜60モル%の量で含有するABSが好ましく用いられる。
【0201】
上記ポリカーボネートとしては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタンなどから得られるポリマーが挙げられる。なかでも、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンから得られるポリカーボネートが特に好ましい。
【0202】
上記ポリフェニレンオキシドとしては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキシド)を用いることが好ましい。
上記ポリアクリレートとしては、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレートを用いることが好ましい。
【0203】
上記のような熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に好ましい熱可塑性樹脂はポリオレフィンであって、エチレン系重合体がより特に好ましい。
【0204】
本発明において、「他の熱可塑性樹脂」は、そのままの形でエチレン系重合体組成物(E)の製造に用いてもよい。ただ、物性値のばらつきを抑制するため、次述する「その他の配合成分」をブレンドして、「他の熱可塑性樹脂」と「その他の配合成分」とからなる「他の熱可塑性樹脂組成物」の形でエチレン系重合体組成物(E)の製造に用いてもよい。
【0205】
ここで、「他の熱可塑性樹脂組成物」は、「他の熱可塑性樹脂」あるいは2種以上の「他の熱可塑性樹脂」からなる混合物に、「その他の配合成分」をブレンドすることによって得ることができる。ここで、「他の熱可塑性樹脂」が2種以上用いられる場合には、各「他の熱可塑性樹脂」に、予め「その他の配合成分」をブレンドしてそれぞれ対応する熱可塑性樹脂組成物としておき、これらの熱可塑性樹脂組成物をさらにブレンドすることにより得ても良い。また、「他の熱可塑性樹脂組成物」は、第一の「他の熱可塑性樹脂」に、予め「その他の配合成分」をブレンドして対応する熱可塑性樹脂組成物とし、これに、第二の「他の熱可塑性樹脂」を更にブレンドすることにより得ても良い。
【0206】
いずれのブレンドも、従来公知の適当な方法を含む任意の方法により行うことができ、例えば、ドライブレンドによって行われるものであっても良く、あるいは、溶融、混練、さらに必要により造粒などの操作をさらに伴うものであっても良い。
【0207】
<その他の配合成分>
本発明のエチレン系重合体組成物(E)には、本発明の目的を損なわない範囲で、耐候安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、核剤、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤などの添加剤をさらに配合してもよい。
【0208】
これら「その他の配合成分」の総配合量は、エチレン系重合体組成物(E)を構成する、「その他の配合成分」以外の全成分の総重量100重量部に対して、一般的には10重量部以下、好ましくは1重量部以下、より好ましくは0.5重量部以下である。
【0209】
この「その他の配合成分」は、上述したように、エチレン系重合体成分(A)とエチレン系重合体成分(B)と、所要により用いられる上記「他の熱可塑性樹脂」とを各々別個に得た後にブレンドすることもできるし、あるいは、エチレン系重合体成分(A)、エチレン系重合体成分(B)、および所要により用いられる上記「他の熱可塑性樹脂」の各製造工程においてブレンドすることもできる。また、「その他の配合成分」は、エチレン系重合体成分(A)、エチレン系重合体成分(B)、および所要により用いられる上記「他の熱可塑性樹脂」の各製造工程においてブレンドするとともに、このエチレン系重合体成分(A)およびエチレン系重合体成分(B)等を混合する際にさらにブレンドすることもできる。ここで、エチレン系重合体成分(A)、エチレン系重合体成分(B)、所要により用いられる上記「他の熱可塑性樹脂」、およびこれらの混合物、並びに、エチレン系重合体成分(A)を構成しうるエチレン系重合体(a)、エチレン系重合体(c)およびエチレン系重合体(d)にブレンドしうる「その他の配合成分」は、互いに同一でも異なっていても良い。
【0210】
[エチレン系重合体組成物(E)の製法]
本発明に係るエチレン共重合体組成物(E)は、上記エチレン系重合体成分(A)と上記エチレン系重合体成分(B)と所要により用いられる上記「他の熱可塑性樹脂」を各々別個に得た後、これらを、所要により上記「他の配合成分」とともに、従来公知の方法を含む適当な方法によりブレンドすることにより得ることができる。
【0211】
ここで、上記エチレン系重合体成分(A)の代わりに、上記エチレン系重合体成分(A)と上記「他の配合成分」とからなるエチレン系重合体組成物(A')を用いてもよく、上記エチレン系重合体成分(B)の代わりに、上記エチレン系重合体成分(B)と上記「他の配合成分」とからなるエチレン系重合体組成物(B')を用いてもよい。また、上記「他の熱可塑性樹脂」をさらに含むエチレン共重合体組成物(E)を得る場合、上記「他の熱可塑性樹脂」に代えて、上記「他の熱可塑性樹脂」と上記「他の配合成分」とからなる「他の熱可塑性樹脂組成物」を用いてもよい。
【0212】
ブレンドを行う具体的な方法として、ヘンシェルミキサー、タンブラーブレンダー、V−ブレンダー等によりドライブレンドする方法、あるいは、ドライブレンドし、その後、単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー等により溶融混練する方法が好適に挙げられる。ただ、ブレンドに際して、溶融混練を行うほうが、得られる二軸延伸フィルムの外観が優れる傾向となり好ましい。また、経済性、処理効率等の観点から一軸押出機及び/または二軸押出機を用いることが好ましい。
【0213】
本発明に係るエチレン共重合体組成物(E)はまた、連続・多段重合プロセスにより、複数の重合器を用いて、エチレン系重合体成分(A)とエチレン系重合体成分(B)とを夫々重合した後、混合する方法等、種々公知の重合方法を採り得る。
【0214】
[二軸延伸フィルム]
本発明の二軸延伸フィルムは、前記エチレン系重合体組成物(E)から得られる。例えば、前記エチレン系重合体組成物(E)を、公知の適当な方法により原反フィルムとした後、この原反フィルムを二軸延伸することにより得ることができる。本発明の二軸延伸フィルムは以下の特徴(1)、(2)がある。
【0215】
(1)延伸温度幅
本願発明の二軸延伸フィルムは延伸温度幅が広いという特徴がある。延伸温度幅は、実施例に後述する方法にて評価される。
本願発明の二軸延伸フィルムの延伸温度幅は、一般的には1〜10℃、好ましくは4〜8℃である。
【0216】
(2)厚薄精度
本願発明の二軸延伸フィルムは厚薄精度が優れるという特徴がある。厚薄精度は、評価対象の二軸延伸フィルムにおいて厚みの測定を数カ所で行い、これらの厚みの標準偏差σ、平均厚みxを求め、2σ/xで表される値によって評価することができる。このときの厚みの測定は、例えば、後述する実施例で行ったように、二軸延伸フィルムをA3サイズにカットし、縦方向に45点、横方向に45点の厚みを測定することにより行うことができる。
【0217】
ここで、厚薄精度の評価は、縦方向(MD方向)または横方向(TD方向)のいずれか一方について行ってもよい。ただ、両方向の精度がより的確に反映されるよう、後述する実施例で行っているように、縦方向の厚薄精度(AMD)と横方向の厚薄精度(ATD)をそれぞれ求め、それらの幾何平均(すなわち、(AMD×ATD1/2)の値を算出し、この値を、フィルム全体としての厚薄精度と規定した上で評価を行うことが好ましい。
【0218】
本願発明の二軸延伸フィルムの厚薄精度は、一般的には5〜15%、好ましくは7〜12%、さらに好ましくは7〜10%である。
本発明の二軸延伸フィルムが上記の特徴があることの理由について、発明者らは以下のように考えている。
【0219】
延伸温度幅については、本発明のエチレン系重合体組成物(E)の密度(ラメラ厚み)分布が広いことで延伸原反の粘度変化が温度に対して鈍感になり延伸温度幅が広がると推測される。また、上記エチレン系重合体成分(B)について規定した式を満たす分子構造と上記エチレン系重合体成分(A)について規定したMFR範囲を満たす分子構造とからなる絡み合いは緩和時間が長く、延伸温度幅が広がる。
【0220】
ここで、緩和時間とは、溶融粘弾性データから割り出した低周波数での緩和時間を指し、具体的には、緩和時間tは、貯蔵弾性率G'、損失弾性率G''、周波数ωを用いて下記式(Eq-7)により求められる。
t = G'/(ω・G'') -------- (Eq-7)
【0221】
本発明では、上記緩和時間として、例えば、下記の実施例に示すように、ωを0.01 sec-1 としたときの値を用いることができる。
【0222】
ここで、この緩和時間が長いということは分子鎖の絡み合い点が多く、絡み合いが解けにくいことを意味しており、延伸原反粘度が高くなる事を意味する。それにより高温でも膜だれせず延伸温度幅が広がると推定している。
【0223】
厚薄精度については、上記エチレン系重合体成分(B)について規定した式を満たす分子構造と上記エチレン系重合体成分(A)について規定したMFR範囲を満たす分子構造とからなる絡み合いは緩和時間が長く、延伸工程において、延伸原反粘度が高くなる事を意味する。延伸後期でも分子鎖同士が解けないので延伸後期張力の値が大きくなり、その結果、延伸倍率-張力曲線立上がり度(延伸後期応力/降伏応力)が大きくなり、厚薄精度を出すのに有利となる。
【0224】
なぜなら、フィルム厚みの厚い箇所にかかる応力は、常に厚みの薄い箇所にかかる応力よりも小さくなり、厚みの薄いところが優先的に引き延ばされ厚薄精度を悪くする。延伸倍率-応力曲線立上がり度(延伸後期応力/降伏応力)が大きいと、フィルムが薄い箇所(延伸倍率高い)ほど高い延伸応力が必要となり引き延ばされ難くなり、厚薄精度が良くなる。
【0225】
前述のとおり、エチレン系重合体成分(B)は、[η]とMwとが特定の関係を満たし、長鎖分岐を有していると考えられる。本願発明者らは、エチレン系重合体成分(B)がエチレン系重合体成分(A)と共存することなく単独で存在している場合、エチレン系重合体成分(B)において長鎖分岐を有する分子鎖同士の強固な絡み合いは立体的障害のため形成されず、長鎖分岐を有する分子鎖同士の緩い絡み合いや、長鎖分岐を有する分子鎖と当該長鎖分岐を有する分子鎖と共に含まれているであろう長鎖分岐を有さない低分子量体(MFR≧100g/10分)との絡み合いが主として形成され、これらがエチレン系重合体成分(B)において最も緩和しにくい成分になっていると考えている。
【0226】
そして、エチレン系重合体成分(B)が特定のメルトフローレートを有するエチレン系重合体成分(A)にブレンドされると、エチレン系重合体成分(B)の長鎖分岐を有する分子鎖と、エチレン系重合体成分(A)の直鎖状の分子鎖との絡み合いが新たに形成され、これが最も緩和しにくい成分となり、このため、本発明の二軸延伸フィルムの延伸温度幅、厚薄精度が飛躍的に向上する。
【0227】
エチレン系重合体成分(B)にも、エチレン系重合体成分(A)を構成する直鎖状の重合体成分と同様の成分が共存している可能性を否定するには到らないものの、その割合は比較的低く、長鎖分岐を有する分子鎖と直鎖状の分子鎖との絡み合いによる上記の効果が顕在化しにくいと考えられる。
【0228】
なお、本発明の二軸延伸エチレン重合体フィルムは、印刷性あるいは後述の基材層を含め他のフィルムとの接着性を改良するために、フィルムの表面を、例えば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理等の表面活性化処理を行っておいてもよい。
【0229】
本発明の二軸延伸エチレン重合体フィルムは、単層でも用い得るが、他のフィルム基材、例えば熱可塑性樹脂からなるシート状またはフィルム状のもの、紙、アルミニウム箔等からなる基材層と積層してもよい。かかるフィルム基材として熱可塑性樹脂を用いる場合は、種々公知の熱可塑性樹脂、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、ポリブテン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミド等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体もしくはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、あるいはこれらの混合物等を例示することができる。これらのうちでは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等、延伸性、透明性が良好な熱可塑性樹脂が好ましい。
【0230】
また、かかる熱可塑性樹脂フィルムからなるフィルム基材は、無延伸フィルムであっても、延伸フィルムであっても良いし、1種または2種以上の共押し出し成形、押出しラミネート、ドライラミネート、サーマルラミネート等で得られる積層体であっても良い。中でも、二軸延伸熱可塑性フィルム、とくにポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミドからなる二軸延伸熱可塑性フィルムが好ましい。
【0231】
[二軸延伸フィルムの製造方法]
本発明の二軸延伸フィルムは、種々公知の方法、例えば、チューブラー方式又はフラット方式(テンター方式)により、上記範囲で縦方向(MD方向)及び横方向(TD方向)に二軸延伸することにより得られる。二軸延伸は同時二軸延伸でも、逐次二軸延伸でもよい。これら方式の中でも、フラット方式により得られる二軸延伸エチレン重合体フィルムが、より透明性に優れるので好ましい。
【0232】
フラット方式による場合は、通常、押出し成形して得たシートを90〜125℃の温度範囲で縦方向に延伸した後、90〜130℃の温度範囲で横方向に延伸することにより得られる。二軸延伸した後は、用途により、80〜140℃の温度範囲でヒートセットを行ってもよい。ヒートセットの温度は目的とする熱収縮率に応じて変える事が出来る。
【0233】
延伸倍率は、MD方向およびTD方向のうちの一方向の延伸倍率が一般的には3〜14倍、好ましくは5〜10倍、他方向の延伸倍率が一般的には3〜14倍、好ましくは5〜10倍の範囲にある。
【実施例】
【0234】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。本発明における各種試験法および評価法は次の通りである。
【0235】
<メルトフローレート(MFR)>
ASTM D1238−89に従い、190℃、2.16kg荷重(kgf)の条件下で測定した。
【0236】
<密度>
測定サンプルを120℃で1時間熱処理し、1時間かけて直線的に室温まで徐冷した後、JIS K 7112に準拠し、密度勾配管法によって行った。
【0237】
<メチル分岐数およびエチル分岐数>
日本電子(株)製ECP500型核磁気共鳴装置(500MHz)を用い13C−NMRスペクトルを測定することにより求めた。
【0238】
直径10mmの市販のNMR測定用石英ガラス管にエチレン系重合体250〜400mgと、o−ジクロロベンゼン(和光純薬工業(株)製特級)および重水素化ベンゼン(ISOTEC社製)の混合溶媒(o−ジクロロベンゼン:重水素化ベンゼン=5:1(v/v))3mlとを入れ、120℃で加熱して試料を均一分散させた。
積算回数は1万〜3万回とした。
【0239】
NMRスペクトルにおける各吸収の帰属は、化学領域増刊141号 NMR−総説と実験ガイド[I]、p.132〜133に準じて行った。重合体鎖を構成する炭素原子1000個当たりのメチル分岐数は、5〜45ppmの範囲に現れる吸収の積分総和に対するメチル分岐由来のメチル基の吸収(19.9ppm)の積分強度比より算出した。また、エチル分岐数は、5〜45ppmの範囲に現れる吸収の積分総和に対するエチル分岐由来のエチル基の吸収(10.8ppm)の積分強度比より算出した。
なお、主鎖メチレンのピーク(29.97ppm)を化学シフト基準とした。
【0240】
<せん断粘度(η*)>
200℃、角速度1.0rad/秒におけるせん断粘度〔η*(1.0)〕(P)は以下の方法により測定した。
【0241】
せん断粘度(η*)は、測定温度200℃におけるせん断粘度(η*)の角速度〔ω(rad/秒)〕分散を0.02512≦ω≦100の範囲で測定することにより決定した。測定には、レオメトリックス社製ダイナミックストレスレオメーターSR−5000を用い、サンプルホルダーとして25mmφのパラレルプレートを用い、サンプル厚みを約2.0mmとした。測定点はω一桁当たり5点とした。歪み量は、測定範囲でのトルクが検出可能で、かつトルクオーバーにならないよう、3〜10%の範囲で適宜選択した。
【0242】
せん断粘度測定に用いたサンプルは、神藤金属工業所製プレス成形機を用い、予熱温度190℃、予熱時間5分間、加熱温度190℃、加熱時間2分間、加熱圧力100kgf/cm2、冷却温度20℃、冷却時間5分間、冷却圧力100kgf/cm2の条件にて、測定サンプルを厚さ2mmにプレス成形することにより作製した。
【0243】
<ゼロせん断粘度(η0)>
200℃におけるゼロせん断粘度(η0)(P)は以下の方法により求めた。
測定温度200℃にて、せん断粘度(η*)の角速度ω(rad/秒)分散を0.02512≦ω≦100の範囲で測定した。測定には、レオメトリックス社製ダイナミックストレスレオメーターSR−5000を用い、サンプルホルダーとして25mmφのパラレルプレートを用い、サンプル厚みを約2.0mmとした。測定点はω一桁当たり5点とした。歪み量は、測定範囲でのトルクが検出可能で、かつトルクオーバーにならないよう、3〜10%の範囲で適宜選択した。
【0244】
せん断粘度測定に用いたサンプルは、神藤金属工業所製プレス成形機を用い、予熱温度190℃、予熱時間5分間、加熱温度190℃、加熱時間2分間、加熱圧力100kgf/cm2、冷却温度20℃、冷却時間5分間、冷却圧力100kgf/cm2の条件にて、測定サンプルを厚さ2mmにプレス成形することにより作製した。
【0245】
ゼロせん断粘度(η0)は、下記式(Eq-2)のCarreauモデルを非線形最小自乗法により実測のレオロジー曲線〔せん断粘度(η*)の角速度(ω)分散〕にフィッティングさせることで算出した。
η*=η0〔1+(λω)a(n-1)/a (Eq-2)
【0246】
ここで、λは時間の次元を持つパラメーター、nは材料の冪法則係数(power law index)を表す。なお、非線形最小自乗法によるフィッティングは下記式(Eq-3)におけるdが最小となるように行った。
【0247】
【数2】
上記式(Eq-3)中、ηexp(ω)は実測のせん断粘度を表し、ηcalc(ω)はCarreauモデルより算出したせん断粘度を表す。
【0248】
<長時間緩和時間>
下記仕様の装置で測定した。
装置:MCR301 SN80926214;FW3.51D090908;Slot2(Anton-paar社製)
測定温度:160℃
歪み:5%、
周波数:100〜0.01rad/秒
【0249】
周波数ωにおける緩和時間tは、貯蔵弾性率G'、損失弾性率G''から下記数式(Eq-7)より求められる(書籍:フィルム製造プロセスと製膜、加工技術、品質制御、2008年発行)
t = G'/(ω・G'') -------- (Eq-7)
下記の実施例および比較例では、ωが0.01 sec-1 のときの緩和時間を算出した。
【0250】
<数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)>
ウォーターズ社製GPC−粘度検出器(GPC−VISCO)GPC/V2000を用い、以下のように測定した。
【0251】
ガードカラムにはShodex AT−Gを用い、分析カラムにはAT−806を2本用い、検出器には示差屈折計および3キャピラリー粘度計を用い、カラム温度は145℃とし、移動相としては、酸化防止剤としてBHTを0.3重量%含むo−ジクロロベンゼンを用い、流速を1.0ml/分とし、試料濃度は0.1重量%とした。標準ポリスチレンには、東ソー社製のものを用いた。分子量計算は、粘度計および屈折計から実測粘度を計算し、実測ユニバーサルキャリブレーションより数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
【0252】
<極限粘度[η]>
測定サンプル約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、下記式(Eq-5)に示すように濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度[η](単位;dl/g)として求めた。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0) -------- (Eq-5)
【0253】
<延伸可能温度(成形温度幅)>
株式会社神藤金属工業所製のプレス機を用いて、成形温度190℃(上部/下部)で溶融し、1次加圧 5min(ガス抜き10回)、2次加圧 5min(50kgf/cm2)を行った後、20℃で4min冷却固化し、厚さ1.0mmのプレスシートを作製する。このシートを85mm×85mmにカットし、2軸延伸機(ブルックナー社製KAROIV)を用いて、延伸倍率 MD5倍×TD8倍、延伸速度 1m/minの条件で逐次延伸し、延伸可能(膜だれ、膜切れしない)温度幅を求めた。
【0254】
<延伸ムラ(厚薄精度)>
株式会社神藤金属工業所製のプレス機を用いて、成形温度190℃(上部/下部)で溶融し、1次加圧 5min(ガス抜き10回)、2次加圧 5min(50kgf/cm2)を行った後、20℃で4min冷却固化し、厚さ1.0mmのプレスシートを作製する。このシートを85mm×85mmにカットし、2軸延伸機(ブルックナー社製KAROIV)を用いて、延伸倍率 MD5倍×TD8倍、延伸速度 1m/minの条件で逐次延伸し、25μフィルムを得た。このフィルムをA3サイズにカットし、縦方向に45点、横方向に45点の厚みを測定し、標準偏差σ、平均厚みxから下記数式(Eq-8)より厚薄精度Aを求めた。
A=2σ/x -------- (Eq-8)
【0255】
ここで、下記の実施例および比較例においては、上記数式(Eq-8)に従い、縦方向(MD方向)の厚薄精度(AMD)と横方向(TD方向)の厚薄精度(ATD)をそれぞれ求め、それらの幾何平均(すなわち、(AMD×ATD1/2)を算出することによって、フィルム全体としての厚薄精度とした。
【0256】
実施例および比較例に用いたエチレン系重合体成分(A)、及びこれを構成するエチレン系重合体(a)、エチレン系重合体(c)およびエチレン系重合体(d)、並びに、エチレン系重合体成分(B)を以下に示した。
【0257】
[エチレン系重合体(a−1)]
固体状担体(S−1)の調製
内容積270リットルの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、シリカゲル(富士シリシア社製:平均粒径70μm、比表面積340m2/g、細孔容積1.3cm3/g、250℃で10時間乾燥)10kgを77リットルのトルエンに懸濁させた後0〜5℃に冷却した。この懸濁液にメチルアルミノキサンのトルエン溶液(Al原子換算で3.5mmol/mL)19.4リットルを30分間かけて滴下した。この際、系内温度を0〜5℃に保った。引き続き0〜5℃で30分間接触させた後、約1.5時間かけて系内温度を95℃まで昇温して、引き続き95℃で4時間接触させた。その後常温まで降温して、上澄み液をデカンテーションにより除去し、さらにトルエンで2回洗浄した後、全量115リットルのトルエンスラリーを調製した。得られたスラリー成分の一部を採取し濃度を調べたところ、スラリー濃度:122.6g/L、Al濃度:0.62mol/Lであった。
【0258】
予備重合触媒成分(XP−1)の調製
内容積114リットルの撹拌機付き反応器に、上記で得られた固体状担体(S−1)のスラリー10.0リットル(Al原子換算で6.20mol)を窒素雰囲気下で装入し、全量が28リットルになるようトルエンを添加した。
【0259】
次に、5リットルのガラス製反応器に窒素雰囲気下、ビス(1,3−ブチルメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド19.15g(Zr原子換算で44.3mmol)を採取し、トルエン5.0リットルに溶解させ、上記反応器に圧送した。
【0260】
系内温度20〜25℃で1時間接触させた後、系内温度を75℃に昇温し、さらに2時間接触させた。降温後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、さらにヘキサンを用いて3回洗浄した後、ヘキサンを加えて全量30リットルとし、固体触媒成分のヘキサンスラリーを調製した。
【0261】
引き続き、上記で得られた固体触媒成分のヘキサンスラリーを10℃まで冷却した後、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DiBAl−H)3.3molを添加した。さらに常圧下でエチレンを系内に連続的に数分間供給した。この間系内の温度は10〜15℃に保持し、次いで1−ヘキセン0.42リットルを添加した。1−ヘキセン添加後、エチレン供給を開始し、系内温度32〜37℃にて予備重合を行った。予備重合を開始してから30分毎に計5回、1−ヘキセン0.15リットルを添加し、予備重合開始から180分後、エチレン供給量が固体触媒成分重量の3倍に到達したところで、エチレン供給を停止した。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンを用いて4回洗浄した後、ヘキサンを加えて全量を50リットルとした。
【0262】
次に、系内温度を34〜36℃にて、ケミスタット2500(三洋化成工業社製)49.0gのヘキサン溶液を上記反応器に圧送し、引き続き、34〜36℃で2時間反応させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンを用いて4回洗浄した。
【0263】
次に、内容積43リットルの撹拌機付き蒸発乾燥機に、窒素雰囲気下、ヘキサンスラリーを挿入した後、乾燥機内を約60分かけて−68kPaGまで減圧し、−68kPaGに到達したところで約4.3時間真空乾燥しヘキサンならびに予備重合触媒成分中の揮発分を除去した。さらに−100kPaGまで減圧し、−100kPaGに到達したところで8時間真空乾燥し、予備重合触媒成分(XP−1)4.9kgを得た。得られた予備重合触媒成分の一部を採取し、組成を調べたところ、予備重合触媒成分1g当たりZr原子が0.54mg含まれていた。
【0264】
エチレン系重合体(a−1)の製造
内容積1.0m3の流動層型気相重合反応器において、予備重合触媒成分(XP−1)を用いて、エチレン・1−ヘキセン共重合体の製造を行った。
【0265】
下記表1に示す条件に従い、連続的に反応器内に予備重合触媒成分(XP−1)、エチレン、窒素、1−ヘキセンなどを供給した。
重合反応物は反応器より連続的に抜き出し、乾燥装置にて乾燥し、エチレン系重合体(a−1)パウダーを得た。得られたパウダーを測定用試料として物性測定を行った。結果を表2に示す。
【0266】
[エチレン系重合体(a−2)]
固体状担体(S−2)の調製
内容積1.0リットルの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、シリカゲル(グレースデビソン社製:平均粒径37μm、比表面積303m2/g、細孔容積1.4cm3/g、600℃焼成)73gを540ミリリットルのトルエンに懸濁させた後0〜5℃に冷却した。この懸濁液にメチルアルミノキサンのトルエン溶液(Al原子換算で2.9mmol/mL)208ミリリットルを30分間かけて滴下した。この際、系内温度を0〜5℃に保った。引き続き0〜5℃で30分間接触させた後、約1.5時間かけて系内温度を95℃まで昇温して、引き続き95℃で4時間接触させた。その後常温まで降温して、上澄み液をデカンテーションにより除去し、さらにトルエンで2回洗浄した後、全量1000ミリリットルのトルエンスラリーを調製した。
【0267】
予備重合触媒成分(XP−2)の調製
内容積3.0リットルの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、トルエンを1070ミリリットル、および上記で得られた固体状担体全量を装入した。次に、ビス(1,3−ブチルエチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド2.25g(Zr原子換算で5.05mmol)のトルエン溶液を滴下し、系内温度20〜25℃で2時間接触させた。上澄み液をデカンテーションにより除去し、さらにヘキサンを用いて2回洗浄した後、ヘキサンを加えて全量2.2リットルとし、固体触媒成分のスラリーを調製した。
【0268】
上記で得られた固体触媒成分スラリーを10℃まで冷却した後、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DiBAl−H)252.5mmolを添加した。さらに常圧下でエチレンを系内に連続的に数分間供給した。この間系内の温度は10〜15℃に保持し、次いで1−ヘキセン4.6ミリリットルを添加した。1−ヘキセン添加後、160リットル/hでエチレン供給を開始し、系内温度35℃にて予備重合を行なった。予備重合を開始してから30分毎に計2回、1−ヘキセン4.6ミリリットルを添加し、予備重合開始から90分後にエチレン供給量が固体触媒成分に対して重量換算で3等量分に到達したところで、エチレン供給を停止した。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンを用いて4回洗浄した後、ヘキサンを加えて全量を2リットルとした。次に、系内温度を35℃に昇温した後、ケミスタット2500(三洋化成工業株式会社製)4.1gのヘキサン溶液を添加し2時間接触させた。その後、スラリー全量を内容積3.0Lのグラスフィルターへ移し、減圧乾燥により溶媒を除去することで、予備重合触媒成分455gを得た。得られた予備重合触媒の組成を調べたところ、予備重合触媒成分1g当たり、Zr原子が0.85mg含まれていた。
【0269】
エチレン系重合体(a−2)の製造
エチレン系重合体(a−1)の製造において、反応機の内容積を1.7m3、予備重合触媒成分および重合条件を表1に示す条件に変更した以外はエチレン系重合体(a−1)と同様にして、エチレン系重合体(a−2)を得た。得られたパウダーを測定用試料として物性測定を行った。結果を表2に示す。
【0270】
[エチレン系重合体(a−3)]
エチレン系重合体(a−1)の製造において、予備重合触媒成分および重合条件を表1に示す条件に変更した以外はエチレン系重合体(a−1)と同様にして、エチレン系重合体(a−3)を得た。得られたパウダーを測定用試料として物性測定を行った。結果を表2に示す。
【0271】
【表1】
【0272】
[エチレン系重合体(c−1)]
株式会社プライムポリマーより市販されているエチレン系重合体(商品名:ウルトゼックス30501J)を用いた。製品ペレットを測定試料とし、物性測定を行った結果を表2に示す。
【0273】
[エチレン系重合体(d−1)]
株式会社プライムポリマーより市販されているエチレン系重合体(商品名:ハイゼックス3300F)を用いた。製品ペレットを測定試料とし、物性測定を行った結果を表2に示す。
【0274】
[エチレン系重合体(d−2)]
株式会社プライムポリマーより市販されているエチレン系重合体(商品名:ハイゼックス3600F)を用いた。製品ペレットを測定試料とし、物性測定を行った結果を表2に示す。
【0275】
[エチレン系重合体成分(A−1)]
前記エチレン系重合体(a−1)パウダーに、スミライザー(登録商標)GP(住友化学株式会社製)を500ppm配合し、プラコー社製1軸押出機(40mmφ)を用いて、温度190℃、押出量5Kg/時の条件で溶融混練し、エチレン重合体組成物を得た。得られたペレットを測定試料とし、物性測定を行った結果を表2に示す。
【0276】
後述する実施例1〜4および比較例1〜4では、このエチレン系重合体組成物をエチレン系重合体成分(A−1)として用いた。
ここで、エチレン系重合体成分(A−1)および後述するエチレン系重合体成分(A−2)〜(A−5)について、エチレン系重合体又は2種以上のエチレン系重合体を配合してなるエチレン系重合体混合物に添加剤を「Xppm配合した」というときは、当該添加剤を配合する前の「エチレン系重合体又は2種以上のエチレン系重合体を配合してなるエチレン系重合体混合物」1重量部に対して、当該添加剤を(X/100万)重量部配合したことを意味する。
【0277】
なお、実施例および比較例で用いられるエチレン系重合体成分(A−1)〜(A−5)は、エチレン系重合体成分(A)と「その他の配合成分」とからなるエチレン系重合体組成物(A')に該当する。
【0278】
[エチレン系重合体成分(A−2)]
前記エチレン系重合体(a−2)パウダーに、スミライザー(登録商標)GP(住友化学株式会社製)を500ppm配合し、プラコー社製1軸押出機(40mmφ)を用いて、温度190℃、押出量5Kg/時の条件で溶融混練し、エチレン重合体組成物を得た。得られたペレットを測定試料とし、物性測定を行った結果を表2に示す。
後述する実施例5では、このエチレン系重合体組成物をエチレン系重合体成分(A−2)として用いた。
【0279】
[エチレン系重合体成分(A−3)]
前記エチレン系重合体(a−3)及びエチレン系重合体(c−1)を60:40(重量部)の割合で配合してなるエチレン系重合体混合物に、スミライザー(登録商標)GP(住友化学株式会社製)を500ppm配合してドライブレンドした後、プラコー社製1軸押出機(40mmφ)を用いて、温度190℃、押出量5Kg/時の条件で溶融混練し、エチレン重合体組成物を得た。得られたペレットを測定試料とし、物性測定を行った結果を表2に示す。
後述する実施例6では、このエチレン系重合体組成物をエチレン系重合体成分(A−3)として用いた。
【0280】
[エチレン系重合体成分(A−4)]
前記エチレン系重合体(a−1)と、エチレン系重合体(d−1)とを64:36(重量部)の割合で配合してなるエチレン系重合体混合物に、スミライザー(登録商標)GP(住友化学株式会社製)を500ppm配合してドライブレンドした後、プラコー社製1軸押出機(40mmφ)を用いて、温度190℃、押出量5Kg/時の条件で溶融混練し、エチレン重合体組成物を得た。得られたペレットを測定試料とし、物性測定を行った結果を表2に示す。
後述する実施例7では、このエチレン系重合体組成物をエチレン系重合体成分(A−4)として用いた。
【0281】
[エチレン系重合体成分(A−5)]
前記エチレン系重合体(a−3)と、エチレン系重合体(c−1)と、エチレン系重合体(d−2)とを45:30:25(重量部)の割合で配合してなるエチレン系重合体混合物に、スミライザー(登録商標)GP(住友化学株式会社製)を500ppm配合してドライブレンドした後、プラコー社製1軸押出機(40mmφ)を用いて、温度190℃、押出量5Kg/時の条件で溶融混練し、エチレン重合体組成物を得た。得られたペレットを測定試料とし、物性測定を行った結果を表2に示す。
【0282】
後述する実施例8および比較例5では、このエチレン系重合体組成物をエチレン系重合体成分(A−5)として用いた。
【0283】
【表2】
【0284】
[エチレン系重合体成分(B−1)]
予備重合触媒成分(XP−3)の調製
内容積114リットルの撹拌機付き反応器に、予備重合触媒成分(XP−1)に記載の固体状担体(S−1)のスラリー12.2リットル(Al原子換算で7.56mol)を窒素雰囲気下で装入し、全量が28リットルになるようトルエンを添加した。
【0285】
次に、5リットルのガラス製反応器に窒素雰囲気下、ジメチルシリレン(3−n−プロピルシクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド2.95g(Zr原子換算で7.6mmol)と、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド16.47g(Zr原子換算で30.2mmol)を採取し、トルエン5.0リットルに溶解させ、上記反応器に圧送した。
【0286】
系内温度20〜25℃で1時間接触させた後、系内温度を75℃に昇温し、さらに2時間接触させた。降温後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、さらにヘキサンを用いて3回洗浄した後、ヘキサンを加えて全量30リットルとし、固体触媒成分のヘキサンスラリーを調製した。
【0287】
引き続き、上記で得られた固体触媒成分のヘキサンスラリーを10℃まで冷却した後、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DiBAl−H)3.8molを添加した。さらに常圧下でエチレンを系内に連続的に数分間供給した。この間系内の温度は10〜15℃に保持し、次いで1−ヘキセン0.15リットルを添加した。1−ヘキセン添加後、エチレン供給を開始し、系内温度32〜37℃にて予備重合を行った。予備重合を開始してから30分毎に計5回、1−ヘキセン0.15リットルを添加し、予備重合開始から180分後、エチレン供給量が固体触媒成分重量の3倍に到達したところで、エチレン供給を停止した。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンを用いて4回洗浄した後、ヘキサンを加えて全量を50リットルとした。
【0288】
次に、系内温度を34〜36℃にて、ケミスタット2500(三洋化成工業社製)59.8gのヘキサン溶液を上記反応器に圧送し、引き続き、34〜36℃で2時間反応させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンを用いて4回洗浄した。
【0289】
次に、内容積43リットルの撹拌機付き蒸発乾燥機に、窒素雰囲気下、ヘキサンスラリーを挿入した後、乾燥機内を約60分かけて−68kPaGまで減圧し、−68kPaGに到達したところで約4.3時間真空乾燥しヘキサンならびに予備重合触媒成分中の揮発分を除去した。さらに−100kPaGまで減圧し、−100kPaGに到達したところで8時間真空乾燥し、予備重合触媒成分(XP−1)6.0kgを得た。得られた予備重合触媒成分の一部を採取し、組成を調べたところ、予備重合触媒成分1g当たりZr原子が0.54mg含まれていた。
【0290】
エチレン系重合体成分(B−1)の製造
内容積1.7m3の流動層型気相重合反応器において、予備重合触媒成分(XP−3)を用いて、エチレン・1−ヘキセン共重合体の製造を行った。
【0291】
表3に示す条件に従い、連続的に反応器内に予備重合触媒成分(XP−3)、エチレン、窒素、1−ヘキセンなどを供給した。重合反応物は反応器より連続的に抜き出し、乾燥装置にて乾燥し、エチレン系重合体パウダーを得た。得られたパウダーを測定用試料として物性測定を行った。結果を表5に示す。
後述する実施例1,2,5,7および比較例1,2では、このエチレン系重合体パウダーをエチレン系重合体成分(B−1)として用いた。
【0292】
[エチレン系重合体成分(B−2)]
エチレン系重合体成分(B−1)の製造において重合条件を表3に示す条件に変更した以外は、エチレン系重合体成分(B−1)と同様にしてエチレン系重合体パウダーを得た。得られたパウダーを測定用試料として物性測定を行った。結果を表5に示す。
後述する実施例3では、このエチレン系重合体パウダーをエチレン系重合体成分(B−2)として用いた。
【0293】
[エチレン系重合体成分(B−3)]
予備重合触媒成分(XP−4)の調製
内容積114リットルの撹拌機付き反応器に、固体状担体(S−1)スラリー12.0リットル(Al原子換算で7.44mol)を窒素雰囲気下で装入し、全量が28リットルになるようトルエンを添加した。
【0294】
次に、5リットルのガラス製反応器に窒素雰囲気下、ジメチルシリレン(3−n−プロピルシクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド6.83g(Zr原子換算で17.5mmol)と、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド10.74g(Zr原子換算で19.7mmol)を採取し、トルエン5.0リットルに溶解させ、上記反応器に圧送した。
【0295】
系内温度20〜25℃で2時間接触させた後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、さらにヘキサンを用いて3回洗浄した後、ヘキサンを加えて全量30リットルとし、固体触媒成分のヘキサンスラリーを調製した。
【0296】
引き続き、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DiBAl−H)添加量を1.5mol、1−ヘキセン総添加量を0.28リットル、ケミスタット2500添加量を14.7gに変更した以外は予備重合触媒成分(XP−3)と同様の方法にて予備重合を行ない、予備重合触媒成分(XP−4)5.9Kgを得た。
【0297】
エチレン系重合体成分(B−3)の製造
エチレン系重合体成分(B−1)の製造において、予備重合触媒成分および重合条件を表3に示す条件に変更した以外は、エチレン系重合体成分(B−1)と同様にしてエチレン系重合体パウダーを得た。得られたパウダーを測定用試料として物性測定を行った。結果を表5に示す。
後述する実施例4では、このエチレン系重合体パウダーをエチレン系重合体成分(B−3)として用いた。
【0298】
[エチレン系重合体成分(B−4)]
予備重合触媒成分(XP−5)の調製
固体状担体(S−1)スラリーを10.5リットル(Al原子換算で6.51mol)、メタロセン成分として、ジメチルシリレン(3−n−プロピルシクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド3.56g(Zr原子換算で9.1mmol)と、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド12.77g(Zr原子換算で23.4mmol)を用いた以外は、予備重合触媒成分(XP−3)と同様の方法にて、固体触媒成分のヘキサンスラリーを調製した。
【0299】
引き続き、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DiBAl−H)添加量を1.5mol、1−ヘキセン総添加量を0.22リットル、ケミスタット2500添加量を51.5gに変更した以外は予備重合触媒成分(XP−3)と同様の方法にて予備重合を行ない、予備重合触媒成分(XP−5)5.1Kgを得た。
【0300】
エチレン系重合体成分(B−4)の製造
エチレン系重合体成分(B−1)の製造において、予備重合触媒成分および重合条件を表3に示す条件に変更した以外は、エチレン系重合体成分(B−1)と同様にしてエチレン系重合体パウダーを得た。得られたパウダーを測定用試料として物性測定を行った。結果を表5に示す。
後述する実施例6では、このエチレン系重合体パウダーをエチレン系重合体成分(B−4)として用いた。
【0301】
[エチレン系重合体成分(B−5)]
予備重合触媒成分(XP−6)の調製
固体状担体(S−1)スラリーを10.0リットル(Al原子換算で6.20mol)、メタロセン成分として、ジメチルシリレン(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド5.02g(Zr原子換算で12.4mmol)と、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロリド10.13g(Zr原子換算で18.6mmol)を用いた以外は、予備重合触媒成分(XP−4)と同様の方法にて、固体触媒成分のヘキサンスラリーを調製した。
【0302】
引き続き、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DiBAl−H)添加量を1.2mol、1−ヘキセン総添加量を0.21リットル、ケミスタット2500添加量を12.3gに変更した以外は予備重合触媒成分(XP−3)と同様の方法にて予備重合を行ない、予備重合触媒成分(XP−6)4.9Kgを得た。
【0303】
エチレン系重合体成分(B−5)の製造
エチレン系重合体成分(B−1)の製造において、予備重合触媒成分および重合条件を表3に示す条件に変更した以外は、エチレン系重合体成分(B−1)と同様にしてエチレン系重合体パウダーを得た。得られたパウダーを測定用試料として物性測定を行った。結果を表5に示す。
【0304】
後述する実施例8では、このエチレン系重合体パウダーをエチレン系重合体成分(B−5)として用いた。
【0305】
【表3】
【0306】
[エチレン系重合体成分(B−6)]
固体状担体(S−3)の調製
内容積270リットルの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、シリカゲル(旭硝子社製:平均粒径12μm、比表面積760m2/g、細孔容積0.7cm3/g、180℃で4時間乾燥)10kgを90リットルのトルエンに懸濁させた後0〜5℃に冷却した。この懸濁液にメチルアルミノキサンのトルエン溶液(Al原子換算で3.0mmol/mL)45.5リットルを30分間かけて滴下した。この際、系内温度を0〜5℃に保った。引き続き0〜5℃で30分間接触させた後、約1.5時間かけて系内温度を95℃まで昇温して、引き続き95℃で4時間接触させた。その後常温まで降温して、上澄み液をデカンテーションにより除去し、さらにトルエンで2回洗浄した後、全量130リットルのトルエンスラリーを調製した。得られたスラリー成分の一部を採取し濃度を調べたところ、スラリー濃度:137.5g/L、Al濃度:1.00mol/Lであった。
【0307】
予備重合触媒成分(XP−7)の調製
固体状担体(S−3)スラリーを8.7リットル(Al原子換算で8.70mol)、メタロセン成分として、ジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド12.88g(Zr原子換算で37.0mmol)と、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド2.82g(Zr原子換算で6.5mmol)を用いた以外は、予備重合触媒成分(XP−3)と同様の方法にて、固体触媒成分のヘキサンスラリーを調製した。
【0308】
引き続き、上記で得られた固体触媒成分のヘキサンスラリーを10℃まで冷却した後、10〜15℃に保持したまま常圧下でエチレンを系内に連続的に数分間供給した。その後トリイソブチルアルミニウム(TiBAl)1.6molを添加し、次いで1−ヘキセン0.16リットルを添加した。1−ヘキセン添加後、再びエチレン供給を開始し、系内温度24〜26℃にて予備重合を行った。予備重合を開始してから60分毎に計2回、1−ヘキセン0.08リットルを添加し、予備重合開始から240分後、エチレン供給量が固体触媒成分重量の3倍に到達したところで、エチレン供給を停止した。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンを用いて4回洗浄した後、ヘキサンを加えて全量を65リットルとし、予備重合触媒成分(XP−5)のヘキサンスラリーを得た。得られたスラリー成分の一部を採取し濃度を調べたところ、スラリー濃度:74.8g/L、Zr濃度:0.65mmol/Lであった。
【0309】
エチレン系重合体成分(B−6)の製造
内容積290Lの完全攪拌混合型重合機において、上記予備重合触媒成分(XP−7)を用いて、表4に記載の条件でエチレン系重合体の製造を行った。
【0310】
具体的には、重合槽内に、溶媒ヘキサンを45L/h、予備重合触媒をZr原子に換算して0.36mmol/h、トリイソブチルアルミニウムを20.0mmol/h、エチレンを8.0kg/h、1−ヘキセンを0.65kg/hの割合となる様に連続的に供給した。かつ重合槽内の溶媒量が一定となる様に重合槽より重合体スラリーを連続的に抜き出し、全圧0.8MPa-G、重合温度80℃、滞留時間2.5h、気相水素/エチレン比0.0065m.r.という条件で重合を行った。ここで、「m.r.」は、モル比であることを示す。重合槽から連続的に抜き出された重合体スラリーは、フラッシュドラムで未反応エチレンが実質的に除去される。その後、重合体スラリー中のヘキサンを溶媒分離装置で除去し、乾燥し、エチレン系重合体パウダーを得た。得られたパウダーを測定用試料として物性測定を行った。結果を表5に示す。
【0311】
後述する比較例3では、このエチレン系重合体パウダーをエチレン系重合体成分(B−6)として用いた。
【0312】
[エチレン系重合体成分(B−7)]
予備重合触媒成分(XP−8)の調製
固体状担体(S−3)スラリーを8.7リットル(Al原子換算で8.70mol)、メタロセン成分として、ジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド14.40g(Zr原子換算で41.3mmol)と、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド0.94g(Zr原子換算で2.2mmol)を用いた以外は、予備重合触媒成分(XP−4)と同様の方法にて、固体触媒成分のヘキサンスラリーを調製した。
【0313】
引き続き、予備重合触媒成分(XP−7)と同様の方法にて予備重合を行ない、予備重合触媒成分(XP−8)のヘキサンスラリーを得た。得られたスラリー成分の一部を採取し濃度を調べたところ、スラリー濃度:73.8g/L、Zr濃度:0.67mmol/Lであった。
【0314】
エチレン系重合体成分(B−7)の製造
エチレン系重合体成分(B−6)の製造において、予備重合触媒成分および重合条件を表4に示す条件に変更した以外は、エチレン系重合体成分(B−6)と同様にしてエチレン系重合体パウダーを得た。得られたパウダーを測定用試料として物性測定を行った。結果を表5に示す。
後述する比較例4では、このエチレン系重合体パウダーをエチレン系重合体成分(B−7)として用いた。
【0315】
[エチレン系重合体成分(B−8)]
三井・デュポン ポリケミカル株式会社より市販されているエチレン系重合体(商品名:ミラソン11P)を用いた。製品ペレットを測定試料とし、物性測定を行った結果を表5に示す。
後述する比較例5では、このエチレン系重合体をエチレン系重合体成分(B−8)として用いた。
【0316】
【表4】
【0317】
【表5】
【0318】
[実施例1]
前記エチレン系重合体成分(A−1)及びエチレン系重合体成分(B−1)を表6に示した割合で配合したものに、スミライザー(登録商標)GP(住友化学株式会社製)を500ppm配合してドライブレンドした後、プラコー社製1軸押出機(40mmφ)を用いて、温度190℃、押出量5Kg/時の条件で溶融混練した。得られたペレットを、プレス機を用いて、成形温度190℃(上部/下部)で溶融し、1次加圧 5min(ガス抜き10回)、2次加圧 5min(50kgf/cm2)を行った後、20℃で4min冷却固化し、厚さ1.0mmのプレスシートを作製する。このシートを85mm×85mmにカットし、2軸延伸機(ブルックナー社製KAROIV)を用いて、延伸倍率 MD5倍×TD8倍、延伸速度 1m/minの条件で逐次延伸し、厚さ25μmのフィルムを得た。このときの延伸可能温度幅、延伸フィルムの厚薄精度を前期記載の方法で測定した。結果を表6に示す。
【0319】
[実施例2]
前記エチレン重合体組成物成分(A−1)及びエチレン系重合体成分(B−1)を表6に示した割合で用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物の製造、シート原反の製造、フィルムの延伸加工ならびに評価を行った。得られた結果を表6に示す。
【0320】
[実施例3]
前記エチレン重合体組成物成分(A−1)及びエチレン系重合体成分(B−2)を表6に示した割合で用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物の製造、シート原反の製造、フィルムの延伸加工ならびに評価を行った。得られた結果を表6に示す。
【0321】
[実施例4]
前記エチレン重合体組成物成分(A−1)及びエチレン系重合体成分(B−3)を表6に示した割合で用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物の製造、シート原反の製造、フィルムの延伸加工ならびに評価を行った。得られた結果を表6に示す。
【0322】
[実施例5]
前記エチレン重合体組成物成分(A−2)及びエチレン系重合体成分(B−1)を表6に示した割合で用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物の製造、シート原反の製造、フィルムの延伸加工ならびに評価を行った。得られた結果を表6に示す。
【0323】
[実施例6]
前記エチレン重合体組成物成分(A−3)及びエチレン系重合体成分(B−4)を表6に示した割合で用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物の製造、シート原反の製造、フィルムの延伸加工ならびに評価を行った。得られた結果を表6に示す。
【0324】
[実施例7]
前記エチレン重合体組成物成分(A−4)及びエチレン系重合体成分(B−1)を表6に示した割合で用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物の製造、シート原反の製造、フィルムの延伸加工ならびに評価を行った。得られた結果を表6に示す。
【0325】
[実施例8]
前記エチレン重合体組成物成分(A−5)及びエチレン系重合体成分(B−5)を表6に示した割合で用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物の製造、シート原反の製造、フィルムの延伸加工ならびに評価を行った。得られた結果を表6に示す。
【0326】
[比較例1]
前記エチレン重合体組成物成分(A−1)及びエチレン系重合体成分(B−1)を表6に示した割合で用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物の製造、シート原反の製造、フィルムの延伸加工ならびに評価を行った。得られた結果を表6に示す。
比較例1は、エチレン系重合体成分(B−1)の成分量が本発明で規定する上限値より大きい。このため、フィルム延伸温度幅に劣る。
【0327】
[比較例2]
前記エチレン重合体組成物成分(A−1)及びエチレン系重合体成分(B−1)を表6に示した割合で用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物の製造、シート原反の製造、フィルムの延伸加工ならびに評価を行った。得られた結果を表6に示す。
比較例2は、エチレン系重合体成分(B−1)の成分量が本発明で規定する上限値より大きい。このため、フィルム延伸温度幅に劣る。
【0328】
[比較例3]
前記エチレン重合体組成物成分(A−1)及びエチレン系重合体成分(B−6)を表6に示した割合で用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物の製造、シート原反の製造、フィルムの延伸加工ならびに評価を行った。得られた結果を表6に示す。
比較例3は、エチレン系重合体成分(B−6)の密度が本発明で規定する要件(B−2)の上限値より大きい。このため、フィルム延伸温度幅及び厚薄精度に劣る。
【0329】
[比較例4]
前記エチレン重合体組成物成分(A−1)及びエチレン系重合体成分(B−7)を表6に示した割合で用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物の製造、シート原反の製造、フィルムの延伸加工ならびに評価を行った。得られた結果を表6に示す。
比較例4は、エチレン系重合体成分(B−7)の密度が本発明で規定する要件(B−2)の上限値より大きい。このため、フィルム延伸温度幅及び厚薄精度に劣る。
【0330】
[比較例5]
前記エチレン重合体組成物成分(A−5)及びエチレン系重合体成分(B−8)を表6に示した割合で用いた他は、実施例1と同様に樹脂組成物の製造、シート原反の製造、フィルムの延伸加工ならびに評価を行った。得られた結果を表6に示す。
【0331】
比較例5は、エチレン系重合体成分(B−8)の〔η0/Mw6.8〕が本発明で規定する要件(B−4)の下限値より小さい。このため、フィルム厚薄精度に劣る。
【0332】
【表6】