(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コントローラ/プロセッサ(80)は、(j)前記差分値が前記限界値を超えている場合、電気エネルギを前記複数の電極に伝達するように前記電気神経刺激に指示しないように構成される、請求項1に記載のシステム。
前記差分値は、前記電極(26)の個々の1つにおけるカソード電流の変化、前記電極(26)の個々の1つにおけるアノード電流の変化、前記電極(26)におけるカソード電流の全体変化、及び前記電極(26)におけるアノード電流の全体変化のうちの1つを含む、請求項6に記載のシステム。
ユーザ入力を受入れるように構成されたユーザインタフェース(100)を更に含み、 前記コントローラ/プロセッサ(80)は、前記ユーザ入力に応答して前記新しい仮想多極を定めるように構成される、請求項1に記載のシステム。
【背景技術】
【0002】
埋込み可能な神経刺激システムは、広範な病気及び疾患の治療効果を証明している。ペースメーカー及び「埋込み可能な心臓除細動器(ICD)」は、いくつかの心臓の病気(例えば、不整脈)の処置において非常に有効であることを証明している。「脊髄刺激(SCS)」システムは、慢性疼痛症候群の処置のための治療法として長く受入れられており、組織刺激の適用は、狭心症及び失禁等の付加的な適用に広がり始めている。「脳深部刺激(DBS)」も、難治性慢性疼痛症候群の処置のために10年以上治療的に適用されており、脳深部刺激(DBS)は、近年運動障害及びてんかん等の付加的な分野に適用されている。更に近年の研究では、「末梢神経刺激(PNS)」システムは、慢性疼痛症候群及び失禁の処置において有効性を明らかにしており、いくつかの付加的な適用は、現在研究中である。更に、ニューロコントロール(米国オハイオ州のクリーブランド)による「フリーハンド」システム等の「機能的電気刺激(FES)」システムは、脊髄損傷患者の麻痺した四肢の何らかの機能を回復させるために適用されている。
【0003】
それらの埋込み可能な神経刺激システムは、典型的には、望ましい刺激部位に埋込まれた刺激リードと、刺激部位から遠隔に埋込まれ且つ神経刺激リードに直接的に又はリード延長部を介して間接的に結合された神経刺激器(例えば、埋込み可能なパルス発生器(IPG))を支持する1つ又は2つ以上の電極を含む。神経刺激システムは、外部制御デバイスを更に含み、選択された刺激パラメータに従って電気刺激パルスを発生させるように遠隔式に神経刺激器に指示することができる。
【0004】
電気刺激エネルギは、電気パルス波形の形態で神経刺激器から電極に送出することができる。従って、刺激エネルギは、電極に制御可能に送出して神経組織を刺激することができる。電気パルスをターゲットにする組織に送出するのに使用する電極の構成は、電極形態を構成し、電極は、アノード(正)、カソード(負)、又はオフのまま(ゼロ)として作用するように選択的にプログラムすることが可能である。言い換えると、電極形態は、正、負、又はゼロの極性を表している。制御又は変更することができる他のパラメータは、電極アレイにより設けられた電気パルスの振幅、幅、及び繰返し数を含む。電気パルスパラメータと共に各電極形態は、「刺激パラメータセット」と呼ぶことができる。
【0005】
一部の神経刺激システム、特に独立して電流又は電圧供給源を制御したものを用いて、電極(電極として作用することができる神経刺激器の場合を含む)への電流の配分は、電流が多数の異なる電極形態を介して供給されるように変更することができる。異なる構成では、電極は、正又は負の電流又は電圧の異なる相対的割合で電流又は電圧を提供し、異なる電流配分(すなわち、分割電極形態)を生成することができる。
【0006】
簡単に上述したように、外部制御デバイスを使用して神経刺激器に指示し、選択された刺激パラメータに従って電気刺激パルスを発生させることができる。典型的には、神経刺激器の中にプログラムされた刺激パラメータは、外部制御デバイスに対する制御を操作することによって調節され、患者に神経刺激器システムが提供する電気刺激を修正することができる。従って、外部制御デバイスによってプログラムされた刺激パラメータに従って、電気パルスは、神経刺激器から刺激電極に送出され、刺激パラメータのセットに従ってある一定の容積の組織を刺激又は活性化し、望ましい有効な治療を患者に加えることができる。最良の刺激パラメータセットは、典型的には、刺激される非ターゲット組織の容積を最小にしながら、治療恩典(例えば、疼痛の治療)を提供するために刺激する必要がある組織の容積に刺激エネルギを送出するものであることになる。
【0007】
しかし、様々な複合刺激パルスを発生させる機能と共に利用可能な多数の電極は、臨床医又は患者に刺激パラメータセットの非常に大きな選択を与える。例えば、プログラムすべき神経刺激システムが、16の電極のアレイを有する場合、何百万もの刺激パラメータセットが、神経刺激システムの中にプログラムするために利用可能である可能性がある。今日、神経刺激システムは、32の電極まで有することができ、これは、プログラムするために利用可能な刺激パラメータセットの数を指数関数的に増加させる。
【0008】
このような選択を容易にするために、臨床医は、一般的に、コンピュータプログラムシステムを介して神経刺激器をプログラムする。このプログラムシステムは、内蔵型ハードウエア/ソフトウエアシステムであってもよいし、標準パーソナルコンピュータ(PC)で作動するソフトウエアによって主に形成されてもよい。PC又は専用ハードウエアは、神経刺激器が発生する電気刺激の特性を能動的に制御し、最適刺激パラメータを患者フィードバック又は他の手段に基づいて決定し、その後に最適刺激パラメータの1つのセット又は複数のセットで神経刺激器をプログラムすることを可能にすることができる。コンピュータプログラムシステムは、いくつかのシナリオで患者を担当する臨床医によって作動させることができる。
【0009】
例えば、脊髄刺激(SCS)から有効な結果を達成するために、1つのリード又は複数のリードは、電気刺激が異常感覚を引き起こすような位置に置く必要がある。刺激が誘発して患者が知覚する異常感覚は、処置のターゲットである疼痛と略同じ患者の身体の位置に位置するはずである。リードが正しく位置決めされない場合、患者は、埋込まれた脊髄刺激(SCS)システムから殆ど又は全く恩典を受けないことになる。従って、正しいリード配置は、有効疼痛治療と効果のない疼痛治療の間の差を意味する可能性がある。電極リードが患者内に埋込まれるとき、手術室(OR)マッピング手順との関連で、コンピュータプログラムシステムを使用して神経刺激器に指示し、電気刺激を付加してリード及び/又は電極の配置を試験することができ、それによってリード及び/又は電極が患者内の有効位置に埋込まれていることが保証される。
【0010】
リードが正しく位置決めされた状態で、ナビゲーションセッションと呼ぶ場合がある調整手順が、疼痛部位に最も良く対処する1組の刺激パラメータにより、コンピュータプログラムシステムを使用して実施され、外部制御デバイス及び適用可能な場合、は神経刺激器をプログラムすることができる。従って、ナビゲーションセッションを使用して、疼痛に相関する活性化容積(VOA)又は区域を識別することができる。このようなプログラム機能は、埋込み中に又はリードが漸次的に又は予想外に動いてそれらがそれ以外に刺激エネルギをターゲット部位から離れるように移動すると考えられる場合は埋込み後に組織をターゲットにするために特に有利である。神経刺激器を再プログラムすることにより(典型的には、独立して電極に対する刺激エネルギを変更することにより)、活性化容積(VOA)は、多くの場合、リード及びその電極アレイを再位置決めするために患者を再手術する必要なく有効疼痛部位に再度移動することができる。組織に対して活性化容積(VOA)を調節するとき、神経繊維の空間補充の変化を滑らかで連続的であると患者が知覚するように電流の割合を少しだけ変化させ、区分的ターゲッティング機能を有することが望ましい。
【0011】
脊髄刺激(SCS)に対する1つの公知のコンピュータプログラムシステムは、ボストン・サイエンティフィック・ニューロモデュレイション・コーポレーションから入手可能な「Bionic Navigator(登録商標)」と呼ばれている。「Bionic Navigator(登録商標)」は、好ましいPC上で作動し、臨床医が刺激パラメータを外部の手持ち式プログラム装置(遠隔制御部と呼ばれる)の中にプログラムすることを可能にするソフトウエアパッケージである。電極への分割電流配分(パーセントカソード電流、パーセントアノード電流、又はオフ)を含む刺激パラメータの各セットは、「Bionic Navigator(登録商標)」及び遠隔制御部の両方に記憶され、次に、患者内の複数の領域を刺激するのに使用することができる刺激プログラムの中に組合せることができる。
【0012】
プログラムされる刺激パラメータを決定するために、「Bionic Navigator(登録商標)」は、3つのモード:(a)電極を流れるカソード電流及びアノード電流を手動で選択する手動プログラムモードと、(b)限られた数の電極形態を使用して電極アレイを迅速に掃引し、2極刺激においてカソードを徐々に移動する電子トロール(「e−トロール」)モードと、(c)広範な電極形態を使用して患者の快適性のための刺激カバレージを微調節して最適化するナビゲーションプログラムモードとのうちの1つで臨床医によって作動させることができる。これらの3つのモードは、定められた患者に対して最も有効な刺激パラメータセットを臨床医が決定することを可能にする。
【0013】
手動プログラムモードにおいて、臨床医は、個々の電極と各選択された電極に適用される電流の大きさ及び極性とを直接に選択する。ナビゲーション及びe−トロールプログラムモードにおいて、「Bionic Navigator(登録商標)」は、異なる電極形態間を半自動的に移行し、系統的に実時間で(例えば、ジョイスティック又はジョイスティック様制御器を使用して)埋込みリードに沿って電流を電気的に「ステアリング」し、それによってその後に刺激プログラムの中に記憶されて最終的に組合せることができる最も有効な刺激パラメータセットを臨床医が決定することを可能にする。脊髄刺激(SCS)との関連では、電流ステアリングは、典型的には、吻側−尾側方向(すなわち、脊髄の軸線に沿って)又は内側−外側方向(すなわち、脊髄の軸線に垂直)のいずれかにおいて実施される。
【0014】
ナビゲーション及びe−トロールプログラムモードは、臨床医が電極形態を一方の構成から別の構成に変化させる方法において一部異なっている。e−トロールプログラムモードは、電極形態の基本形態を変化させることなく、電極のシーケンスに従って予め定められた電極形態をシフトさせる「パニング」として公知の技術を利用する。ナビゲーションプログラムモードは、電極のシーケンスに従ってカソードをゆっくり進めながら、カソードの周りに1つ又は複数のアノードを移動する「ウィービング」として公知の技術を利用する。e−トロール及びナビゲーションプログラムモードは、異なる臨床的用途(例えば、パニングの場合の「スイートスポット」の発見又はウィービングの場合のカソードの周りの電界の成形)を有する場合がある。
【0015】
特許文献1に説明されている1つの新しい電流ステアリング方法において、仮想極(仮想2極又は3極)の形態の刺激ターゲットが形成され、電極の各々に対する分割電流値を含む刺激パラメータは、これらの仮想極を模倣する態様で計算によって決定される。電流ステアリングは、電極の適切な分割電流値を仮想極の様々な位置の各々に対して計算するためにリードの周りで仮想極を移動することによって実施することができることを認めることができる。その結果、電流ステアリングは、任意の数及び配置の電極を使用して実施され、それによって上述の問題を解決することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
電流ステアリングを実行するとき、得られる電界の移行は、患者が過剰刺激によって引き起こされる不快感又は更に痛みを伴う感覚、又は刺激不足によって引き起こされる治療の突然損失のいずれかをもたらす場合がある刺激レジメの急激な変化を受けないようにできるだけ滑らかにすることが望ましい。脊髄刺激(SCS)との関連では、カソード電極は刺激効果を支配し、従って、過剰刺激は、ある一定のカソード電極上の電流の割合の有意な増加があるとき起こる場合があり、刺激不足は、ある一定のカソード電極上の電流の割合の有意な低下があるとき起こる場合がある。すなわち、電極形態間の移行が電流ステアリング中にできるだけ滑らかであることを保証する必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明により、複数の電極に結合された電気神経刺激器のためのシステム及び患者に治療を提供するためにそれを作動させる方法を提供する。システムは、電気神経刺激器と通信するように構成された遠隔測定回路及びコントローラ/プロセッサを含む。システムは、ユーザ入力を受入れるように構成されたユーザインタフェースを更に含むことができる。システムはまた、遠隔測定回路及びコントローラ/プロセッサを収容するハウジングを含むことができる。このシステム及び方法は、異なる電極形態間で電気刺激エネルギを滑らかに移行するためにいくつかの技術のうちの1つ又はそれよりも多くを実施することができる。
【0019】
1つの技術は、(a)当面の仮想多極を定める段階と、(b)当面の仮想多極を模倣する当面の電極形態(例えば、分割組合せ)を定める段階と、(c)当面の電極形態に従って複数の電極に電気エネルギを伝達するように遠隔測定回路を介して電気神経刺激器に指示する段階と、(d)ステップサイズ(これは正又は負のいずれかとすることができる)によって当面の仮想多極のパラメータ(例えば、位置、フォーカス、及び/又は上側アノード百分率)を変化させることによって新しい仮想多極を定める段階と、(e)新しい仮想多極を模倣する新しい電極形態(例えば、分割組合せ)を定める段階とを含む。
【0020】
この技術は、(f)当面の仮想多極及び新しい仮想多極の関数として差分値を計算する段階を更に含む。一実施形態において、差分値は、当面の電極形態及び新しい電極形態の関数である。例えば、差分値は、電極の個々のものに対するカソード電流の変化、電極の個々のものに対するアノード電流の変化、電極に対するカソード電流の全体変化、又は電極に対するアノード電流の全体変化を含むことができる。別の実施形態において、差分値は、電界、絶対電位、電流密度、活性化機能、及び当面の仮想多極及び新しい仮想多極から導出される全体正味駆動機能のうちの1つの関数である。更に別の実施形態において、差分値は、当面の仮想多極の1つの極と新しい仮想多極の対応する極との間の変位である。
【0021】
この技術は、(g)差分値を限界値と比較する段階と、(h)差分値が限界値を超えない場合、新しい電極形態に従って複数の電極に電気エネルギを伝達するように電気神経刺激器に指示する段階と、(i)電気エネルギを複数の電極に伝達するように電気神経刺激器に指示せず、ステップサイズの絶対値を低減して新しいステップサイズを生成し、かつ差分値が限界値を超える場合、新しいステップサイズに対して段階(d)〜(i)を繰返す段階とを更に含む。
【0022】
一実施形態において、この技術は、(d)別のステップサイズだけ当面の仮想多極の別のパラメータを変化させることによって新しい仮想多極を定める段階と、(i)他のステップサイズの絶対値を低減して別の新しいステップサイズを生成し、かつ差分値が限界値を超える場合、新しいステップサイズ及び他の新しいステップサイズに対して段階(d)〜(i)を繰返す段階とを含む。別の実施形態において、この技術は、(f)別の差分値を当面の仮想多極及び新しい仮想多極の別の関数として計算する段階と、(g)他の差分値を別の限界値と比較する段階と、(h)差分値が限界値を超えず、他の差分値も他の限界値を超えない場合、新しい組の刺激パラメータに従って複数の電極に電気エネルギを伝達するように電気神経刺激器に指示する段階と、(i)差分値が限界値を超えるか又は他の差分値が他の限界値を超えるかのいずれかの場合、ステップサイズの絶対値を低減して新しいステップサイズを生成し、かつ新しいステップサイズに対して段階(d)〜(i)を繰返す段階とを含む。
【0023】
別の技術は、当面の電極形態を定める段階と、当面の電極形態に従って複数の電極に電気エネルギを伝達する段階と、最終電極形態を定める段階と、当面の電極形態及び最終電極形態に基づいて発見的学習規則の組を使用して一連の中間電極形態を定める段階と、一連の中間電極形態に従って複数の電極に電気エネルギを伝達するように電気神経刺激器に指示する段階と、次の電極形態に従って複数の電極に電気エネルギを伝達するように電気神経刺激器に指示する段階とを含む。
【0024】
一連の中間電極形態は、次の中間電極形態が最終電極形態に適合するまで前に定められた当面の電極形態及び最終電極形態に基づいて次の中間電極形態を繰返し定めることによって定めることができる。この場合、発見的学習規則の組は、電極の個々のものに対するカソード電流の最大変化、電極の個々のものに対するアノード電流の最大変化、電極に対するカソード電流の全体最大変化、及び電極に対するアノード電流の全体最大変化のうちの1つ又はそれよりも多くに基づいて、前に定められた当面の電極形態から次の中間電極形態へのアノード及び/又はカソード電流のシフトの制限を含むことができる。
【0025】
一実施形態において、電極の各々は、電流変化移行なし、カソード電流増加移行、カソード電流減少移行、カソード電流減少/アノード電流増加移行、アノード電流増加移行、アノード電流減少移行、及びアノード電流減少/カソード電流増加移行のうちの1つである前に定められた当面の電極形態と最終電極形態間の電流移行を有し、コントローラ/プロセッサは、発見的学習規則の組を電流移行に適用して次の中間電極形態を定めるように構成される。
【0026】
電流のシフトは、前に定められた当面の電極形態と最終電極形態間の移行に依存することになる。
【0027】
例えば、電極の1つがカソード減少移行を有し、電極のうちの別のものがカソード増加移行を有する場合、発見的学習規則の組は、カソード電流を一方の電極から他の1つの電極にシフトすることができる。
【0028】
別の例として、電極の1つがアノード電流減少/カソード電流増加移行を有する場合、発見的学習規則の組は、アノード電流をその1つの電極から例えばアノード電流増加移行を有することができるか又は電流変化移行なし又はアノード電流減少移行を有することができる電極の別のものにシフトすることができる。電極の少なくとももう1つは、アノード電流減少/カソード電流増加移行を有することができ、上述の1つの電極は、最終電極形態に対して少なくとももう1つの電極よりも大きいカソード電流を有することができる。
【0029】
更に別の例として、電極の1つがカソード電流減少/アノード電流増加移行を有する場合、発見的学習規則の組は、その1つの電極から例えばカソード電流増加移行を有することができるか又は電流変化移行なし又はカソード電流減少移行を有することができる電極の別のものへのカソード電流のシフトを含むことができる。他の1つの電極は、カソード電流減少/アノード電流増加移行を有することができ、他の1つの電極は、最終電極形態に対して最大カソード電流を有することができる。
【0030】
更に別の例として、電極の1つがアノード減少移行を有し、電極のうちの別のものがアノード増加移行を有する場合、発見的学習規則の組は、アノード電流を一方の電極から他の1つの電極にシフトすることができる。
【0031】
発見的学習規則は、電流がシフトされることになる電極を優先させる一連の質問に組合せることができる。
【0032】
例えば、発見的学習規則の組は、カソード電流増加移行及びカソード電流減少移行を有する第1の電極対が存在するか否かを決定すること、第1の電極対が存在すると決定された場合、カソード電流減少移行を有する電極からカソード電流増加移行を有する電極にカソード電流をシフトすること、カソード電流増加移行及びカソード電流減少/アノード電流増加移行を有する第2の電極対が存在するか否かを決定すること、第2の電極対が存在すると決定された場合、カソード電流減少/アノード電流増加移行を有する電極からカソード電流増加移行を有する電極にカソード電流をシフトすること、アノード電流増加移行及びアノード電流減少移行を有する第3の電極対が存在するか否かを決定すること、第3の電極対が存在すると決定された場合、アノード電流減少移行を有する電極からアノード電流増加移行を有する電極にアノード電流をシフトすること、アノード電流増加移行及びアノード電流減少/カソード電流増加移行を有する第4の電極対が存在するか否かを決定すること、及び第4の電極対が存在すると決定された場合、アノード電流減少/カソード電流増加移行を有する電極からアノード電流増加移行を有する電極にアノード電流をシフトすることを含むことができる。
【0033】
第1、第2、第3、及び第4の電極対のどれも存在しない場合、発見的学習規則の組は、アノード電流減少/カソード電流増加移行を有する第1の電極が存在するか否か、及び電流変化移行なし又はアノード電流減少移行のいずれかを有する第2の電極が存在するか否かを決定することを含むことができる。第1及び第2の電極が存在する場合、発見的学習規則の組は、第1の電極から第2の電極にアノード電流をシフトする。第1の電極又は第2の電極のいずれかが存在しない場合、発見的学習規則の組は、カソード電流減少/アノード電流増加移行を有する電極から電流変化移行なし又はカソード電流減少移行のいずれかを有する電極にカソード電流をシフトすることを含む。
【0034】
発見的学習規則の組は、電極の全てがカソード電流減少/アノード電流増加移行又はアノード電流減少/カソード電流減少移行のいずれかを有するか否かを決定することを更に含むことができる。電極の全てがカソード電流減少/アノード電流増加移行又はアノード電流減少/カソード電流減少移行のいずれかを有する場合、発見的学習規則の組は、アノード電流減少/カソード電流増加移行を各々が有する複数の電極が存在するか否かを決定すること、複数の電極が存在する場合、複数の電極のどのものが最終電極形態に対して最大カソード電流を有するかを決定すること、及び1つの電極から別の電極にアノード電流をシフトすることを更に含む。発見的学習規則の組は、複数の電極が存在しない場合、以前の中間電極形態に対して最大カソード電流を有する1つの電極を決定すること、及び以前の中間電極形態に対するカソード電流を有するいずれかの電極からその1つの電極にカソード電流をシフトすることを更に含む。
【0035】
本開示の他の及び更に別の態様及び特徴は、本開示を例示することを意図し、本開示を限定しない好ましい実施形態の以下の詳細説明を読むと明らかになる。
【0036】
図面は、本開示の好ましい実施形態の設計及び有用性を示し、ここで、同様の要素は、共通の参照番号によって参照される。本開示の上述の及び他の利点及び目的を達成する方法をより良く理解するために、上で簡単に説明した本開示のより詳細説明を添付の図面に示されているその具体的な実施形態を参照して以下に示す。それらの図面は、本開示の典型的な実施形態のみを描いており、従って、本開示の範囲を限定すると考えるべきではないことを理解した上で、本開示を添付の図面の使用により付加的な特殊性及び詳細と共に説明かつ解説する。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下の説明は、脊髄刺激(SCS)システムに関する。しかし、本発明は、脊髄刺激(SCS)における適用例に適切であるが、本発明は、その最も広範な態様ではそのように限定されるものではないことを理解すべきである。そうではなく、本発明は、組織を刺激するのに使用する任意のタイプの埋込み可能な電気回路と共に使用することができる。例えば、本発明は、ペースメーカー、除細動器、蝸牛刺激器、網膜刺激器、協働四肢運動を生じさせるように構成された刺激器、皮質刺激器、脳深部刺激器、末梢神経刺激器、超小型刺激器、又は尿失禁、睡眠時無呼吸、肩関節亜脱臼、頭痛、その他を処置するように構成された任意その他の神経刺激器の一部として使用することができる。
【0039】
最初に
図1を見ると、例示の脊髄刺激(SCS)システム10は、一般的に、複数の(この場合は2つ)埋込み可能な神経刺激リード12と、埋込み可能なパルス発生器(IPG)14と、外部遠隔制御部(RC)16と、臨床医用プログラム装置(CP)18と、外部試験刺激器(ETS)20と、外部充電器22を含んでいる。
【0040】
埋込み可能なパルス発生器(IPG)14は、1つ又はそれよりも多くの経皮的リード延長部24を介して神経刺激リード12に物理的に接続され、神経刺激リード12は、アレイに配置された複数の電極26を支持する。図示の実施形態において、神経刺激リード12は、経皮的リードであり、この目的のために、電極26は、神経刺激リード12に沿って一列に並んで配置される。図示の神経刺激リード12の数は2つであるが、1つのみを含むあらゆる適切な数の神経刺激リード12を設けることができる。これに代えて、外科用パドルリードは、経皮リードのうちの1つ又はそれよりも多くの代わりに使用することができる。以下により詳細に説明するように、埋込み可能なパルス発生器(IPG)14は、パルス電気波形(すなわち、時間的に連続した電気パルス)の形態の電気刺激エネルギを1組の刺激パラメータに従って電極アレイ26に送出するパルス発生回路を含む。
【0041】
外部試験刺激器(ETS)20はまた、経皮的リード延長部28及び外部ケーブル30を介して神経刺激リード12に物理的に接続することができる。埋込み可能なパルス発生器(IPG)14と類似のパルス発生回路を有する外部試験刺激器(ETS)20も、1組の刺激パラメータに従ってパルス電気波形の形態の電気刺激エネルギを電極アレイ26に送出する。外部試験刺激器(ETS)20と埋込み可能なパルス発生器(IPG)14の間の大きな差は、提供することになっている刺激の反応性を試験するために、神経刺激リード12が埋込まれた後と埋込み可能なパルス発生器(IPG)14の埋込みの前に試験的に使用される埋込み不能デバイスである。従って、埋込み可能なパルス発生器(IPG)14に対して本明細書に説明するあらゆる機能は、外部試験刺激器(ETS)20に対して同様に実施することができる。例示的なETSの更なる詳細は、特許文献2に説明されている。
【0042】
遠隔制御部(RC)16を使用して、双方向RF通信リンク32を介して外部試験刺激器(ETS)20を遠隔測定的に制御することができる。埋込み可能なパルス発生器(IPG)14及び神経刺激リード12が埋込まれた状態で、遠隔制御部(RC)16を使用して、双方向RF通信リンク34を介して埋込み可能なパルス発生器(IPG)14を遠隔測定的に制御することができる。このような制御により、埋込み可能なパルス発生器(IPG)14をオン又はオフにし、異なる刺激パラメータセットでプログラムすることを可能にする。埋込み可能なパルス発生器(IPG)14も作動し、プログラムされた刺激パラメータを修正し、埋込み可能なパルス発生器(IPG)14によって出力された電気刺激エネルギの特性を能動的に制御することができる。以下により詳細に説明するように、臨床医用プログラム装置(CP)18は、手術室及び追跡セッションにおいて埋込み可能なパルス発生器(IPG)14及び外部試験刺激器(ETS)20をプログラムするための臨床医の詳細な刺激パラメータを提供する。
【0043】
臨床医用プログラム装置(CP)18は、IR通信リンク36を介して遠隔制御部(RC)16により埋込み可能なパルス発生器(IPG)14又は外部試験刺激器(ETS)20と間接的に通信することによってこの機能を実施することができる。これに代えて、臨床医用プログラム装置(CP)18は、RF通信リンク(図示せず)を介して埋込み可能なパルス発生器(IPG)14又は外部試験刺激器(ETS)20と直接に通信することができる。臨床医用プログラム装置(CP)18によって提供された臨床医の詳細な刺激パラメータも使用して、刺激パラメータをその後に独立型モード(すなわち、臨床医用プログラム装置(CP)18の支援なしに)遠隔制御部(RC)16の作動によって修正することができるように遠隔制御部(RC)16をプログラムする。
【0044】
外部充電器22は、誘導リンク38を介して埋込み可能なパルス発生器(IPG)14を経皮的に充電するのに使用する携帯式デバイスである。簡潔にするために、外部充電器22の詳細は、本明細書では以下に説明しない。外部充電器の例示の実施形態の詳細は、特許文献2に開示されている。埋込み可能なパルス発生器(IPG)14がプログラムされており、その電源が外部充電器22によって充電されるか又はそうでなければ補充された状態で、埋込み可能なパルス発生器(IPG)14は、遠隔制御部(RC)16又は臨床医用プログラム装置(CP)18が存在することなくプログラムされるように機能することができる。
【0045】
図2に示すように、神経刺激リード12は、患者40の脊柱42内に埋込まれる。神経刺激リード12の好ましい配置は、刺激すべき脊髄区域に隣接しており、すなわち、その上に載っている。神経刺激リード12が脊柱42を出る位置の近くの空間の不足により、埋込み可能なパルス発生器(IPG)14は、一般的に、腹部の中又は臀部の上のいずれかの外科的に作られたポケットに埋込まれる。埋込み可能なパルス発生器(IPG)14はまた、勿論、患者の身体の他の位置に埋込むことができる。リード延長部24は、神経刺激リード12の出口点から離れた埋込み可能なパルス発生器(IPG)14の位置決めを容易にする。図示のように、臨床医用プログラム装置(CP)18は、遠隔制御部(RC)16を介して埋込み可能なパルス発生器(IPG)14と通信する。
【0046】
ここで
図3を参照して、神経刺激リード12及び埋込み可能なパルス発生器(IPG)14の外部的特徴を簡単に説明する。神経刺激リードのうちの一方12aは、8つの電極26(E1〜E8とラベル付けした)を有し、他方の刺激リード12bは、8つの電極26(E9〜E16とラベル付けした)を有する。リード及び電極の実際の数及び形状は、勿論、意図する用途により変化することになる。埋込み可能なパルス発生器(IPG)14は、電子及び他の構成要素(以下により詳細に説明する)を収容するための外側ケース44と、神経刺激リード12の近位端が、電極26を外側ケース44内のエレクトロニクスに電気的に接続する方式で係合するコネクタ46とを含む。外側ケース44は、チタンのような導電性の生体適合性材料から構成され、気密シールされた区画を定め、内部エレクトロニクスは、身体組織及び体液から保護される。一部の実施形態において、外側ケース44は、電極として機能することができる。
【0047】
埋込み可能なパルス発生器(IPG)14は、バッテリと、埋込み可能なパルス発生器(IPG)14の中にプログラムされた1組の刺激パラメータに従ってパルス電気波形の形態の電気刺激エネルギを電極アレイ26に送出するパルス発生回路とを含む。このような刺激パラメータは、アノード(正)、カソード(負)、及びオフ(ゼロ)を定める電極形態と、各電極(分割電極形態)に割当られた刺激エネルギの百分率と、パルス振幅(埋込み可能なパルス発生器(IPG)14が電極アレイ26に一定の電流又は一定の電圧を供給するか否かかに応じてミリアンペア又はボルトで測定した)、パルス幅(マイクロ秒で測定した)、及びパルス繰返し数(1秒当たりのパルスで測定した)を定める電気パルスパラメータとを含むことができる。
【0048】
電気刺激は、2つ(又はそれよりも多く)の作動電極の間で起こることになり、2つの電極のうちの一方は、IPGケースとすることができる。刺激エネルギは、単極又は多極(例えば、二極、三極、その他)の様式で組織に送信することができる。単極刺激は、刺激エネルギが、選択された電極26とケースの間に送信されるように、リード延長部26のうちの選択された1つが埋込み可能なパルス発生器(IPG)14のケースと共に作動するとき起こる。双極刺激は、刺激エネルギが選択された電極26の間で送信されるように、リード電極26のうちの2つがアノード及びカソードとして作動するとき起こる。例えば、第1のリード12上の電極E3は、第2のリード12上の電極E11がカソードとして作動する同じ時間にアノードとして作動させることができる。三極刺激は、リード延長部26のうちの3つが、アノードとして2つ及び残りがカソードとして1つ、又はカソードとして2つ及び残りがアノードとして1つのその3つが作動するとき起こる。例えば、第1のリード12上の電極E4及びE5は、第2のリード12上の電極E12がカソードとして作動する同じ時間にアノードとして作動させることができる。
【0049】
図示の実施形態において、埋込み可能なパルス発生器(IPG)14は、電極の各々を貫流する電流のマグニチュードを個々に制御することができる。この場合、は、電流発生器を有することが好ましく、各電極に対する独立電流源からの個々の電流調節振幅は、選択的に発生させることができる。このシステムは、本発明を利用するのに最適であるが、本発明で使用することができる他の刺激器は、電圧調節出力装置を有する刺激器を含む。個々にプログラマブルな電極振幅は、微調整を達成するのに最適であるが、電極にわたってスイッチを切り換える単一出力源もプログラムするのに微調整なしに使用することができる。混合電流及び電圧調節デバイスも、本発明で使用することができる。IPGの詳細な構造及び機能を示した更なる詳細は、特許文献3及び4により完全に説明されている。
【0050】
埋込み可能なパルス発生器(IPG)ではなく、脊髄刺激(SCS)システム10は、これに代えて、神経刺激リード12に接続された埋込み可能受信機−刺激器(図示せず)を利用することができる点に注意すべきである。この場合、埋込まれた受信機に給電するための電源、例えば、バッテリ、並びに受信機−刺激器に命じる制御回路は、電磁気リンクを介して受信機−刺激器に誘導的に結合された外部コントローラに格納されることになる。データ/電力信号は、埋込まれた受信機−刺激器の上に置かれたケーブル接続送信コイルから経皮的に結合される。埋込まれた受信機−刺激器は、信号を受信し、制御信号に従って刺激を発生させる。
【0051】
ここで
図4を参照して、遠隔制御部(RC)16の一例示の実施形態を以下に説明する。上述したように、遠隔制御部(RC)16は、埋込み可能なパルス発生器(IPG)14、臨床医用プログラム装置(CP)18、又は外部試験刺激器(ETS)20と通信することができる。遠隔制御部(RC)16はケーシング50を含み、これは、内部構成要素(プリント基板(PCB)を含む)、並びにケーシング50の外部が担持する照明付き表示画面52及びボタンパッド54を収容する。図示の実施形態において、表示画面52は、照明付き平面パネル表示画面であり、ボタンパッド54は、フレックス回路の上に位置決めされた金属ドームの膜スイッチと、直接にPCBに接続されたキーパッドコネクタとを含む。任意的な実施形態において、表示画面52は、タッチスクリーン機能を有する。ボタンパッド54は、多くのボタン56、58、60、及び62を含み、それらは、埋込み可能なパルス発生器(IPG)14がオン及びオフになるのを可能にし、埋込み可能なパルス発生器(IPG)14内の刺激パラメータの調節又は設定に備え、スクリーンの間の選択に備える。
【0052】
図示の実施形態において、ボタン56は、埋込み可能なパルス発生器(IPG)14をオン及びオフにするように作動させることができるオン/オフボタンとして機能する。ボタン58は、遠隔制御部(RC)16が画面表示及び/又はパラメータの間でスイッチを切り換えることを可能にする選択ボタンとして機能する。ボタン60及び62は、パルス振幅、ハルス幅、及びパルス繰返し数を含む埋込み可能なパルス発生器(IPG)14が発生するパルスの刺激パラメータのいずれかを増加又は減少させるように作動させることができるアップ/ダウンボタンとして機能する。例えば、選択ボタン58は、パルス振幅をその間にアップ/ダウンボタン60、62を介して調節することができる「パルス振幅調節モード」、パルス幅をアップ/ダウンボタン60、62を介してその間に調節することができる「パルス振幅調節モード」、及びパルス繰返し数をアップ/ダウンボタン60、62を介してその間に調節することができる「パルス繰返し数調節モード」に遠隔制御部(RC)16を置くように作動させることができる。これに代えて、専用アップ/ダウンボタンを各刺激パラメータに提供することができる。アップ/ダウンボタンの使用ではなく、ダイヤル、スライダーバー、又はキーパッドのようないずれかの他のタイプのアクチュエータを使用して刺激パラメータを増加又は減少させることができる。遠隔制御部(RC)16の機能性及び内部構成要素の更なる詳細は、特許文献2に開示されている。
【0053】
図5を参照して、例示的な遠隔制御部(RC)16の内部構成要素をここで説明する。遠隔制御部(RC)16は、一般的に、プロセッサ64(例えば、マイクロコントローラ)、プロセッサ64によって実行するための作動プログラムを記憶するメモリ66、並びに刺激パラメータセット、入力/出力回路、及び特に埋込み可能なパルス発生器(IPG)14に刺激パラメータを出力し、埋込み可能なパルス発生器(IPG)14からステータス情報を受入れるための遠隔測定回路68、及びボタンパッド54から刺激制御信号を受入れ、表示画面52(
図4に示す)にステータス情報を送信するための入力/出力回路70を含む。簡潔にするために本明細書では説明していない遠隔制御部(RC)16の他の機能の制御と同様に、プロセッサ64は、ボタンパッド54のユーザ操作に応答して新しい刺激パラメータセットを生成する。それらの新しい刺激パラメータセットは、次に、遠隔測定回路68を介して埋込み可能なパルス発生器(IPG)14に送信されることになる。遠隔制御部(RC)16の機能性及び内部構成要素の更なる詳細は、特許文献2に開示されている。
【0054】
簡単に上述したように、臨床医用プログラム装置(CP)18は、複数の電極形態のプログミングを非常に簡素化し、ユーザ(例えば、医師又は臨床医)が埋込み可能なパルス発生器(IPG)14、並びに遠隔制御部(RC)16の中にプログラムされる望ましい刺激パラメータを容易に決定することを可能にする。従って、埋込み後の埋込み可能なパルス発生器(IPG)14のプログラマブルメモリの刺激パラメータの修正は、臨床医用プログラム装置(CP)18を使用するユーザによって実施され、臨床医用プログラム装置(CP)18は、埋込み可能なパルス発生器(IPG)14と直接に通信するか又は遠隔制御部(RC)16を介して埋込み可能なパルス発生器(IPG)14と間接的に通信することができる。すなわち、臨床医用プログラム装置(CP)18は、脊髄の近くの電極アレイ26の作動パラメータを修正するようにユーザによって使用されることができる。
【0055】
図2に示すように、臨床医用プログラム装置(CP)18の全体の外観は、ラップトップパーソナルコンピュータ(PC)のものであり、実際に、指示プログミングデバイスを含むように適正に構成され、本明細書に説明する機能を実施するようにプログラムされているPCを使用して実施することができる。これに代えて、臨床医用プログラム装置(CP)18は、ミニコンピュータ、携帯情報端末(PDA)など、又は拡張機能を有する遠隔制御器(RC)の形態でさえも取ることができる。従って、プログム手法は、臨床医用プログラム装置(CP)18内に格納されたソフトウエア指示を実行することができる。これに代えて、このようなプログム手法は、ファームウエア又はハードウエアを使用して実施することができる。いずれの場合でも、臨床医用プログラム装置(CP)18は、最適刺激パラメータを患者フィードバックに基づいて決定することを可能にし、その後に最適刺激パラメータを用いて埋込み可能なパルス発生器(IPG)14をプログラムするために、埋込み可能なパルス発生器(IPG)14が発生する電気刺激の特性を能動的に制御することができる。
【0056】
ユーザがそれらの機能を実施することを可能にするために、臨床医用プログラム装置(CP)18は、マウス72、キーボード74、及びケース78に収容されたプログミング表示画面76を含む。マウス72に加えて又はこの代わりに、トラックボール、タッチパッド、ジョイスティック、又はキーボード74に関連付けられたキーの一部として含まれる指示キーのような他の指示プログミングデバイスを使用することができることは理解されるものとする。
【0057】
以下に説明する図示の実施形態において、表示画面76は、従来型のスクリーンの形態を取り、その場合、マウス、ジョイスティック、トラックボール等によって制御されるカーソルのような仮想ポインティングデバイスを使用して表示画面76上のグラフィックオブジェクトを操作することができる。代替の実施形態において、表示画面76は、デジタイザタッチスクリーンの形態を取り、スクリーンは、能動的又は受動的のいずれにすることもできる。受動的である場合、表示画面76は、指又は非電子スタイラスのような受動デバイスがスクリーンと接触するとき、圧力又は電流の変化を認識する検出回路を含む。能動的である場合、表示画面76は、電子ペン又はスタイラスによって送信された信号を認識する検出回路を含む。いずれの場合、も、物理的ポインティングデバイス(例えば、指、非電子スタイラス、又は電子スタイラス)がスクリーンに近接しているとき、検出回路は、それがポインティングデバイスとスクリーンの間で物理的に接触しても又はスクリーンの近くのポインティングデバイスを所定の距離内に収めてもそれを検出することができ、同とき物理的ポインティングデバイスが近接しているスクリーンの位置を検出する。ポインティングデバイスがスクリーンに触れ又はそうでなければスクリーンに近接しているとき、タッチ点に隣接するスクリーン上のグラフィックオブジェクトは、操作に対して「ロックされ」、ポインティングデバイスがスクリーンから離れるように移動するとき、予めロックしたオブジェクトはアンロックされる。
【0058】
図6に示すように、臨床医用プログラム装置(CP)18は、一般的に、コントローラ/プロセッサ80(例えば、中央演算処理ユニット(CPU))と刺激プログラムパッケージ84を記憶するメモリ82とを含み、これらは、コントローラ/プロセッサ80によって実行され、ユーザが埋込み可能なパルス発生器(IPG)14及び遠隔制御器(RC)16をプログラムすることを可能にする。臨床医用プログラム装置(CP)18は、埋込み可能なパルス発生器(IPG)14及び遠隔制御器(RC)16に刺激パラメータをダウンロードするために、かつ遠隔制御器(RC)16の遠隔測定回路68を介して遠隔制御器(RC)16のメモリ66に既に記憶された刺激パラメータをアップロードするために(例えば、遠隔制御器(RC)16の遠隔測定回路を介して)出力回路86を更に含む。注意すべきことに、コントローラ/プロセッサ80を単一デバイスとして
図6に示すが、処理機能及び制御機能は、個別のコントローラ及びプロセッサによって実施することができる。従って、臨床医用プログラム装置(CP)18によって実施されるように以下に説明する制御機能は、コントローラによって実施することができ、臨床医用プログラム装置(CP)18によって実施されるように以下に説明する処理機能は、プロセッサによって実施することができることを認めることができる。
【0059】
コントローラ/プロセッサ80によるプログラムパッケージ84の実行は、マウス72の使用を介してナビゲートされる多くの表示画面(図示せず)を提供する。これらの表示画面は、他の機能の中でも、臨床医が、患者プロフィール情報(例えば、名前、誕生日、患者識別、医師、診断、及び住所)を選択又は入力し、手順情報(例えば、プログラム/追跡、インプラント試験システム、インプラント埋込み可能なパルス発生器(IPG)、インプラント埋込み可能なパルス発生器(IPG)及びリード、交換埋込み可能なパルス発生器(IPG)、交換埋込み可能なパルス発生器(IPG)及びリード、交換又は修正リード、外植、その他)を入力し、患者の疼痛マップを生成し、リードの構成及び向きを定め、神経刺激リード12によって出力された電気刺激エネルギを開始して制御し、かつ手術設定及び臨床設定の両方において刺激パラメータで埋込み可能なパルス発生器(IPG)14を選択してプログラムすることを可能にする。上述の臨床医用プログラム装置(CP)機能の更なる詳細説明は、特許文献5及び6に開示されている。
【0060】
本発明に最も関連することして、プログラムパッケージ84の実行は、異なるプログラムモード、及び図示の実施形態では手動プログラムモード、e−トロールプログラムモード、及びナビゲーションプログラムモードである3つのプログラムモードを使用して埋込み可能なパルス発生器(IPG)14をユーザがプログラムすることを便利に可能にするユーザインタフェースを提供する。
【0061】
ここで
図7を参照して、臨床医用プログラム装置(CP)18によって生成され、埋込み可能なパルス発生器(IPG)14をユーザがプログラムすることを可能にすることができるグラフィカルユーザインタフェース(GUI)100を説明する。図示の実施形態において、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)100は、プログラミング選択パネル102、リード表示パネル104、及び電気パラメータ調節パネル106の3つのパネルを含む。グラフィカルユーザインタフェース(GUI)100の一部の実施形態は、タブ108(パラメータ調節パネル106を示すか又は隠すための)又はタブ110(リード選択パネル104及びパラメータ調節パネル106の両方の全貌を示すか又は隠すための)上をクリックすることによってリード表示パネル102及びパラメータ調節パネル106の一方又は両方を閉じる及び拡張することを可能にすることができる。
【0062】
プログラミング選択パネル102は、プログラム及び埋込み可能なパルス発生器(IPG)14に対して定められているか又は定めることができる区域に関する情報を提供する。複数のプログラムは、カルーセル112に表示することができる。例示の実施形態において、16のプログラムを定めることができるが、プログラム1が、フィールド114の「1」に示すように、現在定められている唯一のものである。他の実施形態は、異なる数又は配置の利用可能なプログラムスロットと共に、利用可能なプログラムを表示するためのカルーセル又は他の技術を使用することができる。
【0063】
各プログラムは、名称フィールド116によって示すように名前をつけることができる。刺激オン/オフボタン118は、現在実行中のプログラムをオン又はオフにすることを可能にする。実行中のプログラムがオンであると、刺激パラメータセットが、臨床医用プログラム装置(CP)18に生成され、遠隔制御器(RC)16に送られる。プログラムが複数の区域の刺激を制御することを可能にする4つまでのプログラム区域120を定めることができる。各プログラム区域120は、患者内の電極の刺激を個別に制御することができ、かつ個別にオン又はオフにすることができる。プログラム区域120の各々は、以下に説明するように、図式のリード124及び126上のマーカとして使用することができるラベル122でラベル付けすることができる。いくつかの一時的区域128は、一時的区域128の中にプログラム区域120を複写し、又はプログラム区域120の中に一時的区域128を複写することによって区域情報の一時的記憶のために使用することができる。これは、一時的区域128のうちの1つによって4つのスロットのうちの1つから別のスロットにプログラム区域120を複写することを可能にする。他の実施形態はまた、プログラム区域120のうちの1つを直接にプログラム区域120のうちの別のものの中に複写することを可能にすることができる。個々のプログラムは、カルーセル112の他方のスロットに複写され、又は必要に応じて削除することができる。
【0064】
ここでリード表示パネル104を見ると、図式のリード124及び126は、8つのグラフィック電極130各々(リード124には電極E1〜E8とラベル付けし、リード126には電極E9〜E16とラベル付けした)と共に示されている。他の数のリード及びリード当たりの電極は、必要に応じて表示することができる。他の数の電極を使用する埋込みシステムにおいて、その電極の数は、リード表示パネル104に示すことができる。リードの4つまでの群は、リード群タブ132のうちの1つを選択することによって見ることができる。更に、埋込み可能なパルス発生器(IPG)14のケース44を表すアイコン134は、リード表示パネル104に表示されている。図式のリード124及び126の電極のいずれかに電流を割当てるのに追加して、電流は、電極としてのケース44に割当てることができる。
【0065】
リード124及び126の電極130の各々を個々に選択することができ、臨床医がその電極130に割当てられた電流の極性及び大きさを設定することを可能にする。例示の実施形態において、電極15が現在選択されている。それぞれ3つのプログラム区域に対応する3つの群の電極に電流が割当てられている。電極群130aは、カソード電流の100%を割当てた電極E2での単一カソードと、それぞれアノード電流の25%及び75%を割当てた電極E1及びE3での2つのアノードとを示している。電極群130bは、カソード電流の100%を割当てた電極E7での単一カソードと、それぞれアノード電流の50%及び50%を割当てた電極E6及びE8での2つのアノードとを示している。電極群130cは、カソード電流の100%を割当てた電極E10での単一カソードと、それぞれアノード電流の60%及び40%を割当てた電極E9及びE11での2つのアノードとを示している。
【0066】
パラメータ調節パネル106は、ユーザが手動プログラムモード、e−トロールプログラムモード、及びナビゲーションプログラムモードの間で切り換えることを可能にするプルダウンプログラムモードフィールド136を含む。
図7に示すように、手動プログラムモードが選択されている。手動プログラムモードにおいて、図式のリード124及び126、並びに図式のケース132の電極130の各々を個々に選択することができ、振幅/極性区域138に位置する図式の制御器を使用してその電極134に割当てた電流の極性(カソード又はアノード)及び大きさ(百分率)を臨床医が設定することを可能にする。特に、区域138に位置する図式の極性制御器140は、「+」アイコン、「−」アイコン、及び「オフ」アイコンを含み、これらは、正の分極(アノード)、負の分極(カソード)、及びオフ状態の間で選択された電極134を切り換えるようにそれぞれ作動させることができる。区域138における振幅制御器142は、選択された電極134の分割電流の大きさを低減するように作動させることができる矢印と、選択された電極134の分割電流の大きさを増加させるように作動させることができる矢印とを含む。振幅制御器142はまた、選択された電極134の分割電流の調節された大きさを示す表示区域を含む。振幅制御器142は、好ましくは、電極を見ることができず、かつリード表示パネル104において選択されない場合は無効にされる。
【0067】
手動プログラムモードが選択されたとき、パラメータ調節パネル106はまた、それぞれの「アノード+」及び「カソード−」アイコンによって選択された極性の全ての電極に対して自動的に電流割当を等しくするように作動させることができる均等化制御器144を含む。パラメータ調節パネル106はまた、パルス振幅調節制御器150(ミリアンペア(mA)で表される)、パルス幅調節制御器148(マイクロ秒(μs)で表される)、及びパルス速度調節制御器146(ヘルツ(Hz)で表される)を含み、これらは、全て3つのプログラムモードで表示されている。制御器146、148、150の各々は、それぞれの刺激パラメータの値を低減するように作動させることができる第1の矢印と、それぞれの刺激パラメータの値を増加させるように作動させることができる第2の矢印とを含む。制御器146,148、150の各々はまた、現在選択されているパラメータを表示するための表示区域を含む。例示の実施形態において、5mAのパルス振幅、210μsのパルス幅、60Hzのパルス速度が選択されている。制御器246、248、150も表示されている。
【0068】
図8に示すように、e−トロールプログラムモードが選択されている。このモードでは、手動プログラムモードで個々に選択可能及び構成可能であったリード表示パネル104に示す電極130は、表示のためだけに使用され、直接に選択可能又は制御可能ではない。パラメータ選択パネル106は、電流を上に、下に、左に、又は右にステアリングすることを可能にする矢印152のステアリングアレイを含む。例示の実施形態において、電流は、仮想多極をパニングし(すなわち、仮想多極の基本構成(フォーカス(F)及び上側アノード百分率(UAP)を変化させることなく、実際の電極26に対して仮想多極が移動される)、かつ実際の電極26が仮想多極を模倣するのに必要な電気振幅値を計算することによってステアリングされる。例えば、
図9に示すように、一連の仮想多極及びこの場合、3極及び2極は、電極アレイ26において利用可能な電極位置を表す複数の点線の上にパネル電流ステアリング技術により順次定められる。
【0069】
例示の実施形態において、仮想3極の全ては対称的であるので、仮想アノードは、中心仮想カソードから等しく離間している。公称仮想多極はまた、広い3極/2極と考えられるので、仮想アノードは、カソードから比較的大きい距離(この場合、2つの電極だけ)で離間している。電極アレイ26の端部の間で、仮想3極は、電極アレイ26に沿ってパニングされる(すなわち、長手方向フォーカス(LGF)値は、仮想カソードが電極アレイ26に沿ってシフトされるとき維持される)。しかし、仮想3極のうちの外側仮想アノードのいずれかがアレイの最後の電極と当接すると、仮想2極が利用される(電極アレイ26の上側にある上側仮想2極、及び電極アレイ26の下側にある下側仮想2極)。仮想2極は、次に、電極アレイ26に沿ってパニングすることができる(すなわち、長手方向フォーカス(LGF)値は、仮想カソードが電極アレイ26に沿ってシフトされるとき維持される)。
【0070】
e−トロールプログラムモードでは、パラメータ調節パネル106はまた、詳細タブ154を含み、詳細タブ154は、
図10に示すように、作動されたときリード表示パネル104を隠し、分解能制御器156及びフォーカス制御器158へのアクセスを提供する。
【0071】
分解能制御器156は、刺激調節分解能を変化させることができる。一実施形態において、「Fine」、「Medium」、及び「Coarse」の3つの可能な設定を選択することができる。分解能制御器156は、分解能を調節するのに使用することができる「+」アイコン及び「−」アイコンを有する。分解能制御器156はまた、電流分解能レベルをグラフィック表示する表示要素を含む。分解能を「Fine」に設定するとき、ステアリング矢印152の使用が引き起こす各変化により、分解能を「Medium」又は「Coarse」に設定する時よりも電極形態が変化しにくくなる。例えば、「Coarse」分解能を有する仮想多極のパニングは、電極間隔の10%と同等のステップで電極アレイ26に対して仮想多極を変位させることができるのに対して、「Fine」分解能を有する仮想多極のパニングは、電極間隔の1%と同等のステップで電極アレイ26に対して仮想多極を移動することができる。
【0072】
フォーカス制御器158は、フォーカスを増加させるように互いの方向に仮想多極のアノード及びカソードを変位させ、又はフォーカスを低減するように互いに離れるように仮想多極のアノード及びカソードを変位させることによって刺激フォーカスの変化を可能にする。フォーカス制御器158は、フォーカスを調節するのに使用することができる「+」アイコン及び「−」アイコンを有する。フォーカス制御器158はまた、電流フォーカスレベルをグラフィック表示する表示要素を含む。
【0073】
図11に示すように、ナビゲーションプログラムモードが選択されている。e−トロールプログラムモードにおけるように、ナビゲーションプログラムモードにおいては、手動プログラムモードで個々に選択可能及び構成可能であったリード表示パネル104に示す電極は、表示のためだけに使用され、直接に選択可能又は制御可能ではない。パラメータ選択パネル106は、電流を上に、下に、左に、又は右にステアリングすることを可能にする矢印162のステアリングアレイを含む。例示の実施形態において、電流は、カソードが電極アレイ26に対して変位するとき仮想多極のカソードの周りで1つ又はそれよりも多くのアノードをウィービングし、かつ電極26が仮想多極を模倣するのに必要な電気振幅値を計算することによってステアリングされる。
【0074】
例えば、
図12に示すように、一連の仮想多極は、電極アレイ26において利用可能な電極位置を表す複数の点線の上に、ウィーブ電流ステアリング技術に従って順番に定められる。図示の各多極は、3極であるか2極であるかの指示符号(3極はT、2極はB)と、電極の分離に関する長手方向フォーカス(LGF)を示す添字符号と、2極の場合の添字符号とを有し、2極の場合の添字符号は、2極が、アノードがカソードよりも上にあることを意味する上側2極(u)であること、又は、2極が、アノードがカソードよりも下にあることを意味する下側2極(l)であることを示す。
【0075】
図12に示す実施形態において、異なる仮想多極は、狭い仮想3極(T
2)、狭い上側仮想2極(B
2u)、広い上側仮想2極(B
3u)、広い仮想3極(T
2.5)、広い下側仮想2極(B
3l)、狭い下側仮想2極(B
2l)、及び狭い仮想3極(T
2)の順番で定められる。本明細書の目的に対して、e−トロールプログラムモード又はナビゲーションプログラムモードにおいて、仮想2極又は仮想3極を互いに定めるのに使用する時の用語「狭い」及び「広い」は、相対的な用語であり、狭い2極及び/又は狭い3極の長手方向フォーカス(LGF)が、広い2極及び/又は広い3極の長手方向フォーカス(LGF)よりも小さいことを単に意味する。
【0076】
図12に示す仮想多極は、複数の臨界点と考えられ、長手方向フォーカス(LGF)及び上側アノード百分率(UAP)によって定められるシーケンスを「ウィーブ空間」内にマッピングすることによって、カソード位置及び長手方向フォーカス(LGF)を臨界点と臨界点との間でインクリメント式に変化させる。
図13に最も良く示すように、仮想多極のシーケンスは、仮想多極において連続的変化をもたらす臨界点(円によって表す)を順次接続する軌道線によって定められる。
【0077】
図13から認められるように、狭い仮想3極(T
2)から始まり、狭い上側仮想2極(B
2u)で終るシーケンスは、長手方向フォーカス(LGF)を維持しながら上側アノード百分率(UAP)をインクリメント式に増加させる。狭い上側仮想2極(B
2u)から始まり、広い上側仮想2極(B
3u)で終るシーケンスは、長手方向フォーカス(LGF)をインクリメント式に増加させながら上側アノード百分率(UAP)を維持する。広い上側仮想2極(B
3u)から始まり、広い仮想3極(T
2.5)で終るシーケンスは、長手方向フォーカス(LGF)をインクリメント式に増加させながら上側アノード百分率(UAP)をインクリメント式に減少させる。広い仮想3極(T
2.5)から始まり、広い仮想2極(B
3l)で終るシーケンスは、長手方向フォーカス(LGF)をインクリメント式に増加させながら上側アノード百分率(UAP)をインクリメント式に減少させる。広い下側仮想2極(B
3l)から始まり、狭い下側仮想2極(B
2l)で終るシーケンスは、長手方向フォーカス(LGF)をインクリメント式に減少させながら上側アノード百分率(UAP)を維持する。狭い下側仮想2極(B
2l)から始まり、狭い仮想3極(T
2)で終るシーケンスは、長手方向フォーカス(LGF)を維持しながら上側アノード百分率(UAP)をインクリメント式に増加させる。
【0078】
注意すべきことに、上述のシーケンスは、狭い仮想3極(T
2)と広い上側仮想2極(B
3u)の間で異なるタイプの仮想2極/3極を介して移行しながら、電極アレイ26に対する仮想カソードの位置を同じに維持し、広い上側仮想2極(B
3u)と広い下側仮想2極(B
3l)の間で電極アレイ26に対する仮想カソードの位置を一方向に(この場合上方に)インクリメント式に変化させ、広い下側仮想2極(B
3l)と狭い仮想2極(T
2)の間で異なるタイプの仮想2極/3極を介して移行しながら、電極アレイ26に対する仮想カソードの位置を同じに維持する。
図12に示すシーケンスは、繰返し循環することができ、その効果は、各サイクル当たり1つの電極により仮想カソードを上方にシフトすることである。様々なウィーブ電流ステアリング技術を説明する更なる詳細は、「汎用仮想多極を定めるための神経刺激システム」という名称の特許文献7に説明されている。
【0079】
ナビゲーションプログラムモードにおいて、パラメータ調節パネル106はまた、上述の詳細タブ154を含み、詳細タブ154は、
図10のe−トロールプログラムモードに関して上述した同じ方式で、作動されたときリード表示パネル104を隠し、分解能制御器156及びフォーカス制御器158へのアクセスを提供する。
【0080】
分解能制御器156は、刺激調節分解能の変化を可能にする。一実施形態において、「細(Fine)」、「中(Medium)」、及び「粗(Coarse)」の3つの可能な設定を選ぶことができる。分解能を「Fine」に設定するとき、ステアリング矢印162の使用により生じる各変化により、分解能を「Medium」又は「Coarse」に設定する時よりも電極形態が変化しにくくなる。特に、分解能に応じて、異なるステップサイズを使用して
図12に示す仮想多極の間で移行させることができる。例えば、分解能を「Fine」に設定する場合、細かい分解能(1臨界点移行当たり10ステップ)を使用して、カソードがシフトされていない臨界点の間で移行することができ、更に細かい分解能(1臨界点移行当たり20ステップ)を使用して、カソードがシフトしている臨界点の間で移行することができる。分解能を「Coarse」に設定する場合、粗い分解能(1臨界点移行当たり5ステップ)を使用して臨界点の全ての間で移行することができる。
【0081】
フォーカス制御器158は、フォーカスを増加させるように互いの方向に仮想多極の各々のアノード及びカソードを変位させ、又はフォーカスを低減するように互いに離れるように仮想多極の各々のアノード及びカソードを変位させることによって刺激フォーカスの変化を可能にする。
【0082】
臨床医用プログラム装置(CP)18は、「神経刺激器プログラミングシステムのための異なるプログラムモードのシームレス統合」という名称の特許文献8に開示されている技術を使用して異なるプログラムモードの間で移行することができる。
【0083】
背景で上述したように、得られる電界をできるだけ滑らかに移行する方式で電流をステアリングすることが望ましい。この目的のために、臨床医用プログラム装置(CP)18は、各仮想多極を次の仮想多極に移行すると快適で有効な治療が維持されることを保証する「発見的学習安全ネット(HSN)」を利用する。
図14を参照して、電流をステアリングするとき発見的学習安全ネット(HSN)を使用する1つの方法をここで以下に説明する。
【0084】
最初に、臨床医用プログラム装置(CP)18は、当面の仮想多極を定め(段階200)、当面の仮想多極を模倣する(emulate)当面の分割電極形態を定め(段階202)、当面の分割電極形態に従って電気エネルギを電極26に伝達するように埋込可能パルス発生器(IPG)14に指示する(段階204)。グラフィカルユーザインタフェース(GUI)100のステアリング矢印(E−トロールプログラムモードにいる時のステアリング矢印152又はナビゲーションプログラムモードにいる時のステアリング矢印162)のいずれかの作動に応答して、臨床医用プログラム装置(CP)18は、ステップサイズだけ当面の仮想多極のパラメータを変化させることにより新しい仮想多極を定め(段階206)、新しい仮想多極を模倣する新しい分割電極形態を定める(段階208)。図示の実施形態において、新しい仮想多極は、式:X
new=X
current+ΔX、又は、X
new=X
current−ΔXに従って計算することができ、式中、X
newは、新しい仮想多極のパラメータであり、X
currentは、当面の仮想多極のパラメータであり、ΔXは、ステップサイズである。従って、当面の仮想多極のパラメータは、ステップサイズだけ増加するか又はステップサイズだけ減少するかのいずれかによって新しい仮想多極を発生させることができる。
【0085】
パラメータは、例えば、仮想多極のx−y位置(例えば、仮想多極がe−トロールプログラムモードにおいてパニングされる場合)、又はフォーカス又は上側アノード百分率(例えば、仮想多極がナビゲーションプログラムモードにおいてウィービングされる場合)とすることができる。パラメータのステップサイズは、例えば、分解能制御を介して調節することができる。ナビゲーションプログラムモードにいる時のような一部の場合、臨床医用プログラム装置(CP)18は、それぞれステップサイズの倍数によって当面の仮想多極の複数のパラメータ(例えば、フォーカス及び上側アノード百分率)を変化させることによって新しい仮想多極を定めることができる。
【0086】
次に、臨床医用プログラム装置(CP)18は、当面の仮想多極及び新しい仮想多極の関数として1つ又はそれよりも多くの差分値を計算し(段階210)、それぞれ差分値を1つ又はそれよりも多くの限界値と比較する(段階212)。図示の実施形態において、差分値は、当面の分割電極形態及び新しい分割電極形態の関数である。代替実施形態において、差分値は、当面の仮想多極及び新しい仮想多極から導出される電界、絶対電位、電流密度、活性化機能、全体正味駆動機能、その他のうちの1つ又はそれよりも多くの関数である。別の代替実施形態において、差分値は、当面の仮想多極の1つの極(例えば、仮想カソード)と新しい仮想多極の対応する極との間の変位とすることができる。
【0087】
差分値が当面の分割電極形態及び新しい分割電極形態の関数である場合、差分値は、例えば、電極26の個々の1つに対する分割カソード電流の変化(Cl)(例えば、電極E2に対するカソードが電流5%から15%に変化する場合、差分値は10%になる)、電極26の個々の1つに対する分割アノード電流の変化(Al)(例えば、電極E8に対するアノード電流が50%から30%に変化する場合、差分値は20%になる)、電極26に対する分割カソード電流の全体分割変化(CT)(例えば、電極E1に対するカソード電流が10%から20%に変化し、電極E2に対するカソード電流が30%から20%に変化し、かつ残りの電極に対するカソード電流が同じ状態のままである場合、差分値は20%になる)、及び/又は電極26に対するアノード電流の全体分割変化(AT)(例えば、電極E7に対するアノード電流が20%から25%に変化し、電極E8に対するアノード電流が35%から30%に変化し、かつ残りの電極に対するアノード電流が同じ状態のままである場合、差分値は10%になる)とすることができる。限界値は、例えば、Clの5−50%、Alの5−80%、CTの10−90%、及びATの10−90%の範囲にすることができる。図示の実施形態において、電極26の全ては、差分値をそれぞれの限界値と比較するとき考慮される。代替実施形態において、電極の全ては、差分値をそれぞれの限界値と比較するとき考慮されるわけではない。
【0088】
次に、臨床医用プログラム装置(CP)18は、差分値をそれぞれの限界値と比較する(段階214)。差分値のどれもそれぞれの限界値を超えない場合、臨床医用プログラム装置(CP)18は、新しい分割電極形態に従って電極26に電気エネルギを伝達するように埋込可能パルス発生器(IPG)14に指示する(段階216)。差分値のいずれかがそれぞれの限界値を超える場合、臨床医用プログラム装置(CP)18は、電極26に電気エネルギを伝達しないが、代わりに、差分値がそれぞれの限界値と比較されている回数が最大反復回数(例えば、2−20反復の範囲)を超えているか否かを決定するように埋込可能パルス発生器(IPG)14に指示する(段階218)。最大数の反復を超えている場合、臨床医用プログラム装置(CP)18は、それを示すエラーメッセージをユーザに戻す(段階220)。最大数の反復を超えていない場合、臨床医用プログラム装置(CP)18は、ステップサイズの絶対値を低減して新しいステップサイズを生成し(段階222)、次に、新しいステップサイズに対して段階206−218を繰返す。ステップサイズの絶対値は、式ΔX
new=ΔX
current・Kに従って減少することができ、式中、ΔX
newは、新しいステップサイズであり、ΔX
currentは、電流ステップサイズであり、Kは、1未満の増倍率である。複数のパラメータを使用して新しい仮想多極を発生させる場合、これらの複数のパラメータに関連付けられたステップサイズの全てを低減する場合がある。
【0089】
図15A及び
図15Bを参照して、電流をステアリングするとき発見的学習安全ネット(HSN)を使用する別の方法をここで以下に説明する。この方法において、発見的学習安全ネット(HSN)を使用して当面の電極形態と最終電極形態間に電極形態移行を定めて適用する。最初に15Aを参照して、臨床医用プログラム装置(CP)18は、当面の(初期)電極形態を定め(段階302)、この構成は、上述したような分割電極形態とすることができ、当面の分割電極形態に従って電極26に電気エネルギを伝達するように埋込可能パルス発生器(IPG)14に指示する(段階304)。
【0090】
グラフィカルユーザインタフェース(GUI)100のステアリング矢印(E−トロールプログラムモードにいる時のステアリング矢印152又はナビゲーションプログラムモードにいる時のステアリング矢印162)のいずれかの作動に応答して、臨床医用プログラム装置(CP)18は、新しい(最終)電極形態を定める(段階306)。既存の初期構成から定められた最終構成に進むために、臨床医用プログラム装置(CP)18は、一連の中間電極形態を定め、特にそれぞれ次の中間電極形態が最終電極形態に適合するまで、前に定められた当面の電極形態及び最終電極形態に基づいて次の中間電極形態を定める(段階308−314)。図示の実施形態において、各次の中間電極形態は、中間電極形態が最終電極形態に適合するまで、前に定められた当面の電極形態から次の中間電極形態までアノード及び/又はカソード電流をシフトすることによって定められる。
【0091】
発見的学習規則の組は、例えば、電極26のうちの個々の1つに対する分割カソード電流の最大変化(例えば、5−50%の範囲の最大カソード電流変化)、電極26のうちの個々の1つに対する分割アノード電流の最大変化(例えば、5−80%の範囲の最大アノード電流変化)、電極26に対するカソード電流の全分割変化(例えば、10−90%の範囲の最大カソード電流変化)、及び電極26に対するアノード電流の全体分割変化(例えば、10−90%の範囲の最大カソード電流変化)に基づいて、前に定められた当面の電極形態から次の中間電極形態へのアノード及び/又はカソード電流のシフトを制限する。図示の実施形態において、電極26の全ては、差分値をそれぞれの限界値と比較するとき考慮されている。代替実施形態において、電極の全ては、差分値をそれぞれの限界値と比較するとき考慮されるわけではない。
【0092】
上述の最大電流変化の限界を考慮しながら、臨床医用プログラム装置(CP)18は、前に定められた当面の電極形態の電極と最終電極形態のそれぞれの電極間の電気電流移行に基づいて次の中間電極形態を定める。この実施形態において、「移行」は、電極形態の個々の電極に印加されている電流の変化を意味する。従って、移行は、電流変化移行なし、カソード電流増加移行、カソード電流減少移行、カソード電流減少/アノード電流増加移行、アノード電流増加移行、アノード電流減少移行、及びアノード電流減少/カソード電流増加移行とすることができる。
【0093】
前に定められた当面の電極形態と最終電極形態間の電流移行を使用して発見的学習規則を適用することができる方法を理解するために、例示的な組の発見的学習規則をここで
図15Bに関して説明する。
【0094】
参照しやすくするために、ボックス402に示すように、数字指示符号1−6、特に、0=電流変化なし、1=カソード電流増加、2=カソード電流減少、3=カソード電流減少/アノード電流増加、4=アノード電流増加、5=アノード電流減少、及び6=アノード電流減少/カソード電流増加に特定の電流移行を割当てる。これらの指示符号は、以下の説明において排他的に使用されることになる。従って、1つの電極形態から第2の電極形態への移行は、各電極の電流変化を識別することによって完全に特徴付けることができる。
【0095】
更に、1対の電極の電流移行のある一定の組合せが、電流を移行させるとき自然に起こることに注目する(すなわち、電流が1つの電極に対して変化して特定の電流移行に影響を与えると、電流は、別の電極に対して自然に変化して異なる電流移行に影響を与える)。このような組合せは、「自然方向組合せ」と呼び、ボックス404で示されている。そこで認められるように、第1の自然組合せは、移行1及び2の組合せ、すなわち、他の1つの電極のカソード電流の減少に結合された1つの電極のカソード電流の増加である。第2の自然組合せは、移行1及び3の組合せ、すなわち、他の1つの電極のカソード電流の増加/アノード電流の減少に結合された1つの電極のカソード電流の増加である。第3の自然組合せは、4及び5の移行の組合せ、すなわち、他の1つの電極のアノード電流の減少に結合された1つの電極のアノード電流の増加である。第4の自然組合せは、4及び6の移行の組合せ、すなわち、他の1つの電極のアノード電流の減少/カソード電流の増加に結合された1つの電極のアノード電流の増加である。
【0096】
図15Bに具現化した発見的学習規則は、一般的に以下の通りに説明することができる。判断ブロック406、408、416、及び422は、以前に定められた中間電極形態と最終電極形態間に必要な電流移行の性質を質問し、アクションブロック410、412、414、418、420、424、及び426は、これらの質問に基づいてかつ上述の最大限度に従って達成される電流移行を支配する。
【0097】
第1の質問は、電極の全てが移行3又は移行6のいずれかを必要とするかである(段階406)。電極の全てが移行3又は移行6のいずれかを必要とするわけではない場合、ボックス604に示す4つの自然方向組合せのいずれかが存在するかを決定する(段階408)。
【0098】
4つの自然方向組合せのいずれかが存在する場合、電流は、以下の順序で自然方向組合せに従ってシフトされる。移行4及び6の自然組合せが存在する場合、アノード電流は、移行6を有する電極から移行4を有する電極にシフトされる(本質的に電極形態から移行6を排除しようとする)(段階410)。移行1及び3の自然組合せが存在する場合、カソード電流は、移行3を有する電極から移行1を有する電極にシフトされる(本質的に移行3を排除しようとする)(段階412)。移行のいずれかの他の自然組合せが存在する場合、カソード電流は、移行1及び2の自然組合せが存在する場合、移行2を有する電極から移行1を有する電極にシフトされ、アノード電流は、移行4及び5の自然組合せが存在する場合、移行5を有する電極から移行4を有する電極にシフトされる(段階414)。
【0099】
4つの自然方向組合せのどれも存在しない場合、移行6を有する電極及び移行0又は移行5のいずれかを有する別の電極が存在するか否かを決定する(段階416)。そうである場合、別の電流は、移行6を有する電極から移行0又は5を有する電極にシフトされる(本質的に移行6から移行1に変換する)(段階418)。そうでなければ、カソード電流は、移行3を有する電極から移行0を有する電極又は移行2を有する電極にシフトされる(本質的に移行3を移行4に変換する)(段階420)。
【0100】
電極の全てが段階608において移行3又は移行6のいずれかを必要とする場合、移行6を有する複数の電極が存在するか否かを決定する(段階422)。そうである場合、アノード電流は、最終電極形態に対して最大カソード電流を有する電極から別の電極にシフトされる(本質的に移行6から移行1に変換する)(段階424)。そうでなければ、カソード電流は、以前の中間電極形態内のいずれかのカソード電極から以前の中間電極形態内の最大カソード電流を有する電極にシフトされる(本質的に移行3から移行4に変換する)(段階426)。
【0101】
図15A及び
図15Bに具現化した発見的学習規則の組は、従って、以下の通りに説明することができる。
【0102】
規則1:電極の全てがカソード電流減少/アノード電流増加移行(移行3)又はアノード電流減少/カソード電流減少移行(移行6)のいずれかを有するかを決定し、そうでなければ、規則2−7に進み、そうである場合、規則8−9に進む。
【0103】
規則2:カソード電流増加移行(移行1)及びカソード電流減少移行(移行2)を有する第1の電極対が存在するか否かを決定する。そうである場合、カソード電流減少移行(移行2)を有する電極からカソード電流増加移行(移行1)を有する電極にカソード電流をシフトする。
【0104】
規則3:カソード電流増加移行(移行1)及びカソード電流減少/アノード電流増加移行(移行3)を有する第2の電極対が存在するか否かを決定する。そうである場合、カソード電流減少/アノード電流増加移行(移行3)を有する電極からカソード電流増加移行(移行1)を有する電極にカソード電流をシフトする。
【0105】
規則4:アノード電流増加移行(移行4)及びアノード電流減少移行(移行5)を有する第3の電極対が存在するか否かを決定する。そうである場合、アノード電流減少移行(移行5)を有する電極からアノード電流増加移行(移行4)を有する電極へアノード電流をシフトする。
【0106】
規則5:アノード電流増加移行(移行4)及びアノード電流減少/カソード電流増加移行(移行6)を有する第4の電極対が存在するか否かを決定する。そうである場合、アノード電流減少/カソード電流増加移行(移行6)を有する電極からアノード電流増加移行(移行4)を有する電極へアノード電流をシフトする。
【0107】
規則6:第1から第4の電極対のどれもない場合、アノード電流減少/カソード電流増加移行(移行6)を有する第1の電極が存在するか否か、及び電流変化移行なし(移行0)又はアノード電流減少移行(移行5)のいずれかを有する第2の電極が存在するか否かを決定する。そうである場合、アノード電流を第1の電極から第2の電極にシフトする。
【0108】
規則7:第1の電極又は第2の電極のいずれかが存在しない場合、カソード電流減少/アノード電流増加移行を有する電極から電流変化移行なし又はカソード電流減少移行のいずれかを有する電極にカソード電流をシフトする。
【0109】
規則8:電極の全てが、カソード電流減少/アノード電流増加移行(移行3)又はアノード電流減少/カソード電流増加移行(移行6)のいずれかを有する場合、かつアノード電流減少/カソード電流増加移行(移行6)を各々が有する複数の電極が存在する場合、複数の電極のどのものが最終電極形態に対して最大カソード電流を有するかを決定し、1つの電極から別の電極にアノード電流をシフトする。
【0110】
規則9:複数の電極が存在しない場合、以前の中間電極形態に対して最大カソード電流を有する1つの電極を決定し、以前の中間電極形態に対するカソード電流を有するいずれかの電極から1つの電極にカソード電流をシフトする。
【0111】
上記説明で示した発見的学習規則の適用及び発見的学習規則自体は、性質上例示的であることは理解されるであろう。発見的学習規則自体の経験的性質は、更に別の研究が異なる規則をもたらす可能性があることを示唆し、規則自体の実質的な性質の変化は、本明細書に示して主張する本発明の範囲に影響を与えることはない。
【0112】
ここで
図16を参照して、上記に示した発見的学習規則の組を使用する例を以下に説明する。図は、5つの連続時間T1−T5において1組の5つの電極A−Eの電極形態間の移行を示している。矢印は、1つの電極から別の電極への分割電流のシフトを表し、矢印の傍らの数字は、分割電流の変化の大きさを表している。各中間電極形態は、次の中間電極形態の開始点になる。各電極ボックスの下の数字は、電極が中間電極形態から最終電極形態に移行するのに必要な電流移行(
図15Bのボックス402に指定された)に対応する。ここで、あらゆる特定の電極(カソードであるか又はアノードであるか否かにかかわらず)に対する分割電流の変化は、40パーセント点である。
【0113】
規則1及び4は、時間T1で中間電極形態に対して実施され、ここで電極の全てが移行3及び6を有するとは限らず、電極Cは、アノード電流の60%及び必要な移行6を有して電極Cが時間T5で最終電極形態に対するカソード電流の40%を有するようにし、電極Eは、0%の電流及び必要な移行4を有して電極Eが時間T5で最終電極形態のアノード電流の40%を有するようにする点で自然方向組合せが存在する。この場合、アノード電流の40%は、電極Cから電極Eにシフトされ、時間T2で中間電極形態をもたらし、ここで電極C及びEは、それぞれ20%及び40%のアノード電流を有する。時間T1で中間電極形態のための他の自然方向組合せはない。
【0114】
規則1及び6は、時間T2で中間電極形態に対して実施され、ここで電極の全てが移行3及び6を有するとは限らず、自然方向組合せはなく、電極Cは、アノード電流の20%及び必要な移行6を有して電極Cが時間T5で最終電極形態に対するカソード電流の40%を有するようにし、電極Eは、アノード電流の40%及び必要な移行0を有して電極Eが時間T5で最終電極形態のアノード電流の40%を有するようにする。この場合、アノード電流の20%は、電極Cから電極Eにシフトされ、時間T3で中間電極形態をもたらし、ここで電極C及びEは、それぞれ0%の電流及び60%のアノード電流を有する。
【0115】
規則1及び3は、時間T3で中間電極形態に対して実施され、ここで電極の全てが移行3及び6を有するとは限らず、電極Bは、カソード電流の20%及び必要な移行3を有して電極Bが時間T5で最終電極形態のアノード電流の40%を有するようにし、電極Cは、0%電流及び必要な移行1を有して電極Cが時間T5で最終電極形態に対するカソード電流の40%を有するようにする点で自然方向組合せが存在する。この場合、カソード電流の20%は、電極Bから電極Cにシフトされ、時間T4で中間電極形態をもたらし、ここで電極B及びCは、それぞれ0%の電流及び20%のカソード電流を有する。T1において中間電極形態のための他の自然方向組合せはない。
【0116】
規則1、2、及び4は、時間T4で中間電極形態に対して実施され、ここで電極の全てが移行3及び6を有するとは限らず、電極Aは、カソード電流の80%及び必要な移行2を有して電極Aが時間T5で最終電極形態に対するカソード電流の60%を有するようにし、電極Cは、カソード電流の20%及び必要な移行1を有して電極Cが時間T5で最終電極形態に対するカソード電流の40%を有するようにする点で第1の自然方向組合せが存在し、かつ電極Bは、0%電流及び必要な移行4を有して電極Bがアノード電流の40%を有するようにし、電極Dは、アノード電流の40%及び必要な移行5を有して電極Dが時間T5で最終電極形態のアノード電流の20%を有するようにし、電極Eは、アノード電流の60%及び必要な移行5を有して電極Eが最終電極形態のアノード電流の40%を有するようにする点で第2の自然方向組合せが存在する。この場合、カソード電流の20%は、電極Aから電極Cにシフトされ、時間T5で望ましい最終電極形態をもたらし、ここで電極A及びCは、それぞれ60%のカソード電流及び40%のカソード電流を有し、アノード電流の20%は、DからBにシフトされ、アノード電流の20%は、電極Eから電極Bにシフトされ、時間T5で望ましい最終電極形態をもたらし、ここで電極B、D、及びEは、それぞれ、40%のアノード電流、20%のアノード電流、及び40%のアノード電流を有する。
【0117】
図17を参照して、別の例において、規則1及び8は、時間T1で中間電極形態に対して実施され、ここで電極の全てが移行3及び6を有し、移行6を有する複数の電極があり、アノード電流の全ては、最終電極形態に対して最大カソード電流を有する電極からシフトする必要がある。この場合、電極Cは、50%で最終電極形態に対して最大カソード電流を有し、従って、アノード電流の20%は、電極Cから電極Aにシフトされ、アノード電流の20%は、電極Cから電極Dにシフトされ、時間T2で中間電極形態をもたらし、ここで電極A、C、及びDは、それぞれ、30%、20%、及び50%のアノード電流を有する。注意すべきことに、いずれかの個々の電極へ又はそこからシフトすることができる最大電流は、各移行の40%であり、かつ電極Cは、時間T1で60%のアノード電流を有したので、アノード電流の追加の20%は電極Cからシフトする必要があり、その場合、アノード電流の10%は、電極Cから電極Aにシフトされ、アノード電流の10%は、電極Cから電極Dにシフトされ、時間T3で中間電極形態をもたらし、ここで電極A、C、及びDは、それぞれ、40%、0%、及び60%のアノード電流を有する。時間T3−T9での残りの中間電極形態に対して、規則2−5を実施して自然方向組合せの間で電流をシフトし、時間T10で最終電極形態をもたらす。
【0118】
図18を参照して、更に別の例において、規則1及び9は、時間T1で中間電極形態に対して実施され、ここで電極の全てが移行3及び6を有し、移行6を有する1つの電極のみが存在し、全てのカソード電流は、最大カソード電流を有する電極に対して統合されなければならない。この場合、電極Eは、40%で時間T1で中間電極形態に対して最大カソード電流を有し、従って、カソード電流の10%は、電極Aから電極Eにシフトされ、カソード電流の20%は、電極Bから電極Eにシフトされ、カソード電流の10%は、電極Dから電極Eにシフトされ、時間T2で中間電極形態をもたらし、ここで電極A、B、D、及びEは、それぞれ、0%、0%、20%、及び80%のカソード電流を有する。注意すべきことに、いずれかの個々の電極へ又はそこからシフトすることができる最大電流は、各移行の40%であり、かつカソード電流の60%は、電極Eにシフトして1つの電極にカソード電流の全てを統合する必要があるので、カソード電流の追加の20%は、電極E1にシフトする必要があり、その場合、電極Dに対する残りの電流の20%は、電極Eにシフトされ、時間T3で中間電極形態をもたらし、ここで電極D及びEは、それぞれ、0%及び100%のカソード電流を有し、それによって1つの電極内のカソード電流の完全統合を達成する。時間T3−T9での残りの中間電極形態に対して、規則2−5を実施して自然方向組合せの間で電流をシフトし、時間T10で最終電極形態をもたらす。
【0119】
図19を参照して、別の例において、規則1、6、及び7は、時間T1で中間電極形態に対して実施され、ここで電極の全てが移行3及び6を有するとは限らず、自然方向組合せはなく、移行0又は5を有する電極はなく、カソード電流は、移行3を有する電極から移行0又は2を有する電極にシフトしなければならない。この場合、電極Eは、移行3を有し、電極B及びDは、移行0を有し、従って、カソード電流の20%は、電極Eから電極Bにシフトされ、カソード電流の20%は、電極Eから電極Dにシフトされ、時間T2で中間電極形態をもたらし、ここで電極B、D、及びEは、それぞれ、20%、30%、及び50%のカソード電流を有する。注意すべきことに、いずれかの個々の電極へ又はそこからシフトすることができる最大電流は、各移行の40%であり、かつ電極Eは、時間T1で50%のカソード電流を有したので、カソード電流の追加の10%は、電極Cからシフトする必要があり、その場合、カソード電流の5%は、電極Eから電極Bにシフトされ、時間T3で中間電極形態をもたらし、ここで電極B、D、及びEは、それぞれ、40%、50%、及び10%のカソード電流を有する。時間T3−T6での残りの中間電極形態に対して、規則2−5を実施して自然方向組合せの間で電流をシフトし、時間T7で最終電極形態をもたらす。
【0120】
本開示の特定の実施形態を図示して説明したが、本開示を好ましい実施形態に限定するように考えられていないことは理解されるであろうし、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく様々な変形及び修正を行うことができることは当業者には明らかであろう。すなわち、本開示は、特許請求の範囲によって定められる本開示の精神及び範囲に含めることができる代替物、修正物、及び均等物を網羅するように意図している。