(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000507
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】診療情報登録装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/24 20120101AFI20160915BHJP
【FI】
G06Q50/24
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-222444(P2010-222444)
(22)【出願日】2010年9月30日
(65)【公開番号】特開2012-79000(P2012-79000A)
(43)【公開日】2012年4月19日
【審査請求日】2013年9月18日
【審判番号】不服2015-7328(P2015-7328/J1)
【審判請求日】2015年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】314005768
【氏名又は名称】パナソニックヘルスケアホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】柴林 一郎
【合議体】
【審判長】
手島 聖治
【審判官】
金子 幸一
【審判官】
石川 正二
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−49505(JP,A)
【文献】
特開平9−297787(JP,A)
【文献】
特開2004−70783(JP,A)
【文献】
特開2001−155100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q50/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の診療情報として患者の病名のデータを登録する診療情報登録装置であって、
病名を含む診療行為の名称毎の診療報酬請求に係るデータにマスターコードを付して登録したマスターコードデータベースと、
前記マスターコードに関連するデータにユーザー指定のユーザーコードを付して登録し、前記病名及び修飾語を登録したユーザーコードデータベースと、
前記マスターコードが付された病名の標準病名とその慣用病名とを対応付けて登録した標準病名データベースと、
前記病名の履歴が記録される患者病名データベースと、
病名の名称文字列を入力する入力手段と、
前記病名が未コード化病名である場合、前記入力手段により入力された名称文字列で前記ユーザーコードデータベースの病名を検索し、検索がヒットした場合、一致した病名のデータである前記病名と前記マスターコードを患者の病名データとして前記患者病名データベースに登録し、前記検索がヒットしなかった場合、前記名称文字列で前記マスターコードデータベースの病名を検索し、一致した病名のデータである前記病名と前記マスターコードを前記ユーザーコードデータベースに登録し、前記病名と前記マスターコードを患者の病名データとして前記患者病名データベースに登録する手段と、
前記未コード化病名をコード化病名に置き換える場合であって、前記未コード化病名が前記修飾語を含む場合、前記入力手段が受け付けた前記修飾語を含む名称文字列のうち、前記慣用病名の文字列のみを前記標準病名に置き換えた前記標準病名の名称文字列と、前記標準病名の名称文字列に付された前記マスターコードとを置き換え病名辞書に登録する手段とを備え、
前記ユーザーコードデータベースの検索に先立って、前記入力手段が受け付けた前記名称文字列で前記置き換え病名辞書を先ず検索し、取得した前記標準病名の名称文字列に付されたマスターコードで前記ユーザーコードデータベースを検索して得られた病名と、前記マスターコードとを、患者の病名データとして前記患者病名データベースに登録することを特徴とする診療情報登録装置。
【請求項2】
前記登録する手段は、前記名称文字列で前記マスターコードデータベースの病名を検索し、前記検索がヒットしなかった場合、前記入力手段により入力された名称文字列で前記標準病名データベースを検索し、一致した標準病名または慣用病名のマスターコードを取得し、そのマスターコードで前記ユーザーコードデータベースを検索して病名と、前記マスターコードを前記患者病名データベースに登録することを特徴とする請求項1に記載の診療情報登録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機関において患者の診療情報を登録する装置に係り、特に、コード化されていない病名を簡易に入力する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関において患者の診療情報を登録する装置は、処置や投薬等の診療行為に加えて、それらの診療行為の対象となった病名の情報も登録する。これらの診療情報は診療報酬の算定のために処置や薬剤、病名にはそれぞれ公的機関の定めたマスターコードが付与されているので、そのマスターコードとともに診療情報を登録しておく。そして、診療報酬の請求時にそのマスターコードを使って請求するものである。このように診療報酬用のデータを電子計算機で処理し、診療報酬請求書(いわゆるレセプト)を発行することをレセ電算処理と呼び、その際に使うマスターコードをレセ電算コードとも呼んでいる。近年はオンライン請求が普及してきており、病名等も文字列による記載ではなく、レセ電算コードを使うことが強く推奨されている。但し、レセ電算コードは桁数が多いのでそのまま入力に使うには不向きであり、従来、入力を簡単にするために、個々の診療行為にそれぞれユニークな数桁の文字や数字から成る覚えやすいコードを割り当てておいて、そのコードを使って入力するようにしている。即ち、このような装置では、診療報酬の対象となる診察や処置、投薬等の診療項目の1つ1つ、また検査や薬剤、更に病名の1つ1つに数桁のコードを付してデータベースに登録しておき、オペレータがカルテや処方せんを参照しながらそのコードを使って入力している。このコードを診療コードあるいはユーザーコードと呼んでいる。また、このデータベースはユーザーである医療機関毎に作成するのでユーザーコードデータベースと呼んでいる。データベースに登録する内容としては、入力に用いる診療コード、その診療行為の正式な名称と読みカナ又はフリガナ、医療費算定の基礎となる点数薬価、薬剤の場合は計量単位、区分、及びレセ電算コードなどである。
【0003】
そして、医師がカルテに記載した病名をそのまま文字列で入力したものを、自動的に診療コードの組合せに置き換えるコード入力装置を本願出願人は提案した(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−250657
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医師がカルテに記載した病名がコード化されている病名、即ち、ユーザーコードデータベースに登録された病名即ち標準の病名であればよいが、慣用的に用いられている病名を記載することも少なくない。例えば、「白癬」とすべきところを「水虫」と記載するような場合である。白癬と水虫のように明らかに対応が付くものであれば、オペレータの判断で正しい(標準の)病名である白癬のコードを入力することで処理できるが、類似の病名があるような場合はオペレータの判断に任せるのも難しい。ユーザーコードデータベースにはマスターコードが付与された標準の病名しか登録されていないからである。また、電子カルテ装置のように医師自らが病名を入力するような場合もあるので、文字列(テキスト)で入力された慣用病名を効率良くコード化された標準病名に置き換える装置が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、患者の診療情報として患者の病名のデータを登録する診療情報登録装置であって、病名を含む診療行為の名称毎の診療報酬請求に係るデータにマスターコードを付して登録したマスターコードデータベースと、マスターコードに関連するデータにユーザー指定のユーザーコードを付して登録し、病名及び修飾語を登録したユーザーコードデータベースと、マスターコードが付された病名の標準病名とその慣用病名とを対応付けて登録した標準病名データベースと、病名の履歴が記録される患者病名データベースと、病名の名称文字列を入力する入力手段と、病名が未コード化病名である場合、入力手段により入力された名称文字列でユーザーコードデータベースの病名を検索し、検索がヒットした場合、一致した病名のデータである
病名とマスターコードを患者の病名データとして患者病名データベースに登録し、検索がヒットしなかった場合、名称文字列でマスターコードデータベースの病名を検索し、一致した病名のデータである
病名とマスターコードをユーザーコードデータベースに登録し、
病名とマスターコードを患者の病名データとして患者病名データベースに登録する手段と、
未コード化病名をコード化病名に置き換える場合であって、未コード化病名が修飾語を含む場合、入力手段が受け付けた修飾語を含
む名称文字列のうち
、慣用病名の文字列のみを標準病名に置き換えた標準病名の名称文字列と、標準病名の名称文字列に付されたマスターコードと
を置き換え病名辞書に登録する手段とを備え、ユーザーコードデータベースの検索に先立って、入力手段が受け付けた名称文字列で置き換え病名辞書を先ず検索し、取得した標準病名の名称文字列
に付されたマスターコードでユーザーコードデータベースを検索して得られた病名と、マスターコードとを、患者の病名データとして患者病名データベースに登録することにより、上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の診療情報登録装置によれば、慣用病名等で文字列で入力されたコード化されていない病名をコード化された標準の病名に自動的に置き換えて登録することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の診療情報登録装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】ユーザーコードデータベースのレコード構成を示す図である。
【
図3】標準病名データベースのレコード構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態における診療情報登録装置100の構成を
図1に示す。1はMPUで構成され装置全体の動作を制御する制御手段、2はキーボードやマウス装置などの入力手段、3はCRTなどの表示手段、4はハードディスク装置等で構成した記憶手段である。この記憶手段には次に説明する各種のデータベースが記憶されている。
【0010】
10はユーザーコードデータベースであり、当該医療機関で使用する可能性がある診療項目のコードをあらかじめ登録したものである。病名も登録されている。また、右手骨折というときの右や手などの部位を表わす接頭辞や、インフルエンザの疑いというときの「の疑い」などの接尾辞も登録されている。
【0011】
同データベース10のレコード構成を
図2に示す。オペレータが入力の際に使うユーザーコード11と、名称12と、フリガナ13と、点数薬価14と、区分15と、単位16と、マスターコード(即ちレセ電算コード)17及び付加情報18とで構成されている。同データベースはユーザーである医療機関の事情に応じて、登録する診療行為や薬剤、病名を決定するのでユーザー毎に内容が異なっている。また、ユーザーコードはフリガナを利用することが多いが、ユーザーが自由に決定するものなのでユーザー毎に異なるのが普通である。
【0012】
20はマスターコードデータベースであり、レセ電算処理の対象となるすべての診療項目(処置等や病名、医薬品を含む)のデータにマスターコードを付して登録したものである。これはメーカーから提供されるデータベースであり、すべてのユーザーで共通に使用するメーカーマスターである。このマスターデータベースから必要な診療行為や病名等の個々のマスターコードに関連するデータを抽出し、ユーザーコードを付してユーザーコードデータベースに登録するものである。
【0013】
30は標準病名データベースであり、レセプト電算処理および病名交換用の標準の傷病名を登録したものである。同データベースは索引テーブルと病名テーブルと修飾語テーブルから成り、病名テーブルには
図3に示すように、標準病名の漢字表記である病名表記31と、そのカナ表記である病名表記カナ32と、標準病名を省略した省略名称33と、マスターコード34と、ICD−10情報35が登録されている。索引テーブルには索引用語36毎に病名テーブルおよび修飾語テーブルへのリンク情報37と同義語区分38が登録されている。ここで索引用語36は標準の病名に加えて慣用の病名も含み、同義語区分38にはその索引用語である病名が標準病名であるか又は同義語あるいは類義語であるかの区別が登録される。従って、慣用病名の場合は同義語区分38が同義語または類義語の区分で登録される。そして、リンク情報37はその索引用語36に対応する病名テーブル上の用語即ち標準病名を指すインデックスである。
【0014】
40は診療情報データベースであり、患者別に診療データが記録されるものである。基本的には診療日単位に、患者が受けた処置や投薬等のデータが記録される。
【0015】
50は患者病名データベースであり、患者の罹患した傷病名の履歴が記録されるものである。病名のデータは開始日、転帰日、転帰の情報、病名名称(文字列)及びそのマスターコードが記録される。
【0016】
60は置き換え辞書データベースであり、文字列で入力された慣用病名が標準の病名に置き換えて患者病名データベースに登録された場合に、その慣用病名と標準病名の対応関係を記録するものである。慣用病名の文字列と標準病名の文字列(前記病名表記31)とそのマスターコードが記録される。尚、病名は接頭辞や接尾辞と組み合わせて構成されることが多いので、ここで記録されるコードは、基本的には複数のコードの組み合わせである。
【0017】
図4は病名入力画面70の表示例である。上段は診療日と患者に係る情報が表示される患者情報エリアであり、その下が患者の現在の病名を表示する病名表示エリアである。下段は病名を入力および編集する入力エリアであり、病名コードを入力する欄72とその上には病名を直接、文字列(テキスト)で入力する欄71がある。病名のデータはそれぞれ開始日、転帰、転帰日の情報を持ち、それらを入力する欄が設けられている。尚、開始日は医師が診察してその病名を付けた日付であり、転帰はその病気が進行した結果、例えば治癒や死亡等であり、転帰日は転帰が決定した日付である。そして、入力エリアで入力された病名が病名表示エリアに表示される。制御装置は病名を入力順に連番を添えて表示し、文字列で入力された病名については連番の横にアスタリスク「*」を表示する。これを未コード化病名と呼んでおり、新報酬請求データにおいて、病名が文字列で登録される。
【0018】
医師又はオペレータが必要な病名の入力を済ませると、病名入力の終わりを指示入力する。本実施形態では、キーボードに「終了キー」を備えるのでそれを押下する。これに応じて制御装置は、入力されて病名表示エリアに表示された病名のデータを患者病名データベースに登録する。その際、アスタリスク「*」が付いた病名即ち未コード化病名があれば、それをコード化された病名即ちユーザーコードデータベースに登録された病名に置き換える処理を実行する(ステップS13;はい)。その場合、病名入力画面内に、未コード化病名をコード化病名に置き換え処理中である旨のメッセージを表示する。
【0019】
そこで、先ず、未コード化病名で置き換え辞書データベースを検索する(S14)。その未コード化病名を以前にコード化病名に置き換えた実績があれば直ちに対応する標準病名のマスターコードを得ることができるので、そのマスターコードでユーザーコードデータベースを検索して病名のデータを読み出し、患者病名データベースに登録する(S23)。
【0020】
他方、置き換え辞書データベースで検索ヒットしなかった場合、即ち一致するものがなく検索に失敗した場合は、次に、未コード化病名でユーザーコードデータベースを検索する(S16)。ここで検索ヒットすれば、その未コード化病名と同じ名称22の病名コードがユーザーコードデータベースに存在するので、その病名コードを患者病名データベースに登録する(S24)。
【0021】
他方、検索ヒットしなかった場合は、次に、未コード化病名でマスターコードデータベースを検索する(S18)。ここで検索ヒットすれば、その未コード化病名と同じ名称22の病名コードがマスターコードデータベースに存在するので、その病名コードを自動でユーザーコードデータベースに登録し(S25)、そのコードを利用して患者病名データベースに登録する。これは、マスターコードデータベースには存在するがその医療機関用のユーザーコードデータベースに登録されていない場合に発生する、ユーザーコードデータベースへの登録作業の削減と、同じ病名が入力された場合に同じコードを利用するためのものである。
【0022】
他方、検索ヒットしなかった場合は、次に、未コード化病名で標準病名データベースの索引テーブルを検索する(S20)。索引テーブルには標準病名だけではなくその同義語や類義語の慣用病名も載っているのでヒットする確立が高い。そして、検索ヒットした場合は、そのリンク情報で標準病名データベースの病名テーブルを参照し、そこからマスターコードを取得する。そして、このマスターコードを使って再びユーザーコードデータベース次にマスターコードデータベースを検索する(S22)。ユーザーコードデータベースで検索ヒットすれば、前述したようにその病名コードを患者病名データベースに登録する。検索ヒットしなかったときは、マスターコードデータベースを検索する。マスターコードデータベースにはすべてのマスターコードが登録されているので必ずヒットする。そこで、前述したと同様に、その病名コードをユーザーコードデータベースに登録し、患者病名データベースに登録する。
【0023】
そして、制御装置は、未コード化病名をコード化病名に置き換えた場合、その対応関係を置き換え辞書データベースに登録する。具体的には、見出しとなる未コード化病名の文字列と、置き換えた標準病名の文字列とそのマスターコードとを登録する。これにより、当該未コード化病名が次に入力されたときには、最初に置き換え辞書データベースを検索するので直ちに置き換えるべき標準病名を取得することができるようになるものである。
【符号の説明】
【0024】
100 診療情報登録装置
1 制御手段
2 入力手段
5 表示手段
4 記憶手段
10 ユーザーコードデータベース
20 マスターコードデータベース
30 標準病名データベース
40 診療情報データベース
50 患者病名データベース
60 置き換え辞書データベース