(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000519
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/56 20060101AFI20160915BHJP
【FI】
H01L21/56 T
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-161959(P2011-161959)
(22)【出願日】2011年7月25日
(65)【公開番号】特開2013-26550(P2013-26550A)
(43)【公開日】2013年2月4日
【審査請求日】2014年5月8日
【審判番号】不服2015-18679(P2015-18679/J1)
【審判請求日】2015年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000144821
【氏名又は名称】アピックヤマダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【弁理士】
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】小林 一彦
【合議体】
【審判長】
井上 信一
【審判官】
酒井 朋広
【審判官】
関谷 隆一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−056958(JP,A)
【文献】
特開平06−342816(JP,A)
【文献】
特開昭60−182729(JP,A)
【文献】
特開2009−185301(JP,A)
【文献】
特表2010−529246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に半導体チップを実装するステップと、
前記半導体チップの実装後に、樹脂封止の際に用いられる金型のランナおよびゲートが配置される前記基板の上の領域に、静電噴霧により前記領域に対応するパターンを備えたマスクを介して液剤を塗布することで剥離性部材を形成するステップと、
前記半導体チップを封止するように前記基板の上に樹脂を形成するステップと、
前記基板の前記剥離性部材の上に形成された不要な樹脂をゲートブレイクを行うことで除去するステップと、を有し、
前記不要な樹脂と前記剥離性部材との間の密着力は、該不要な樹脂と前記基板との間の密着力よりも小さく、前記ゲートブレイクにより、該不要な樹脂が該基板の上に形成された該剥離性部材から剥離されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記剥離性部材を形成するステップは、
前記液剤を微粒子化して前記領域に堆積させるステップと、
該堆積した微粒子化した液剤を硬化させるステップと、
を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記剥離性部材は、シリコーン系又はフッ素系の材料からなることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に応力を掛けることなく不要な樹脂を除去する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体パッケージを樹脂封止した後、金型のランナおよびゲートの位置に形成された不要な樹脂を除去する必要がある。しかしながら、不要な樹脂と基板(リードフレーム)との間の密着力が強いと、不要な樹脂を基板上から除去する際(ディゲート、ゲートブレイク)に大きな力が必要となり、基板が変形し、または、意図していたブレイク箇所と異なるランナの途中で折れたりすることがある。
【0003】
図9は、基板上に形成された不要な樹脂を除去する際に生じる問題点を説明する図である。
図9(a)は、金型(不図示)を用いて基板600上に樹脂400を封止した状態を示しており、金型のランナおよびゲートが配置されていた位置に不要な樹脂450が形成されている。樹脂450を基板600上から除去するためにディゲート(ゲートブレイク)を行う場合、
図9(c)に示されるように、樹脂450が基板600から除去されるのが望ましい。しかしながら、樹脂450と基板600との密着力が強く、
図9(b)に示されるように矢印Aで示される箇所において、基板600が折れるなど変形する場合がある。
【0004】
そこで、金型を用いて基板上に樹脂成形を行う際に、金型のランナおよびゲートが配置される位置において、基板上に金メッキを施す方法がある。
図10は、従来例における金メッキ(金パターン)が形成された基板の平面図である。基板600の上には、複数の半導体チップ700が実装されている。半導体チップ700を実装した基板600は、金型(不図示)を用いて樹脂封止される。このとき、金型のランナおよびゲートが配置される位置において、基板600の上(
図10中の基板600の右辺)には、金メッキ650が複数の箇所に施されている。
【0005】
しかしながら、半導体パッケージの軽薄化に伴い、基板との密着性の高い樹脂が用いられるようになっている。また、基板と樹脂との密着性を向上させるために樹脂封止前に基板に親水性大気圧プラズマ処理を施すことも行われており、樹脂の密着性が高まっている。このため、ランナー部と樹脂との密着性の低減に金メッキだけでは十分ではない。また、製造コストを低減するために、金メッキ量を減らすことが望まれている。
【0006】
そこで特許文献1には、基板の表面のランナー部に、マスクを介して疎水性ガスを利用した疎水性大気圧プラズマ処理を行ってランナー部を疎水性に改質する半導体装置の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−118604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のように疎水性大気圧プラズマ処理を行うと、処理が複雑になり、高コストとなる。また、樹脂との密着力を弱めるために基板上に金メッキを形成する場合、金メッキは、基板の製造時(基板上のパターン形成時)に形成する必要がある。このため、金メッキの形成箇所は、予め決められた(特定の)箇所にならざるを得ない。すなわち、ランナおよびゲートが異なる位置に形成された任意の金型を用いて、基板に応力をかけることなく樹脂成形を行うことができない。
【0009】
そこで本発明は、ランナおよびゲートが異なる位置に設けられた任意の金型に対応可能であり、かつ、基板に応力をかけることなく不要な樹脂を除去する半導体装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面としての半導体装置の製造方法は、基板の上に半導体チップを実装するステップと、前記半導体チップの実装後に、樹脂封止の際に用いられる金型のランナおよびゲートが配置される前記基板の上の領域に、静電噴霧により前記領域に対応するパターンを備えたマスクを介して液剤を塗布することで剥離性部材を形成するステップと、前記半導体チップを封止するように前記基板の上に樹脂を形成するステップと、前記基板の前記剥離性部材の上に形成された不要な樹脂を
ゲートブレイクを行うことで除去するステップと、を有
し、前記不要な樹脂と前記剥離性部材との間の密着力は、該不要な樹脂と前記基板との間の密着力よりも小さく、前記ゲートブレイクにより、該不要な樹脂が該基板の上に形成された該剥離性部材から剥離される
ことを特徴とする。
【0011】
本発明の他の目的及び特徴は、以下の実施例において説明される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ランナおよびゲートが異なる位置に設けられた任意の金型に対応可能であり、かつ、基板に応力をかけることなく不要な樹脂を除去する半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1におけるリードフレームの平面図である。
【
図2】実施例1における剥離性部材を形成するために用いられるマスクの平面図である。
【
図3】実施例1における剥離性部材を形成するために用いられる静電噴霧装置の概略構成図である。
【
図4】実施例1における剥離性部材を形成した後のリードフレームの平面図である。
【
図5】実施例1における樹脂封止後のリードフレームの平面図である。
【
図7】実施例2における剥離性部材を形成するために用いられるワックス塗布装置である。
【
図8】実施例2における剥離性部材を形成した後の基板の平面図である。
【
図9】従来例において、不要な樹脂を除去する際に生じる問題点の説明図である。
【
図10】従来例における金パターンが形成された基板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【実施例1】
【0015】
まず、
図1乃至
図5を参照して、本発明の実施例1における半導体装置の製造方法について説明する。
図1は、本実施例におけるリードフレームの平面図である。リードフレーム30(基板)は、複数のダイパッド32を備え、それぞれのダイパッド32には半導体チップ50が実装されている。リードフレーム30は、例えば、銅系フレーム材の表面に、ニッケル、パラジウム、銀、又は金などで構成されるメッキ層(例えばNi−Agメッキ)を形成して構成される。リードフレーム30の板厚は、例えば0.5mmであり、板厚0.2mmや0.3mm程度のリードフレームを用いてもよい。
【0016】
次に、本実施例における剥離性部材を形成する工程について説明する。
図2は、剥離性部材を形成するために用いられるマスクの平面図である。マスク20は、剥離性部材の位置および形状を決定するためのパターン25を備えて構成される。
【0017】
図3は、剥離性部材を形成するために用いられる静電噴霧装置の概略構成図である。静電噴霧装置10は、静電噴霧によりマスク20を介してリードフレーム30の上に剥離性部材を形成する。
【0018】
静電噴霧装置10は、複数のノズル12(
図3中には1つのノズルのみ描かれている)を備えている。また静電噴霧装置10は、リードフレーム30を載置するためのテーブル、および、所定の電圧をノズル12とリードフレーム30(テーブル)との間に印加する電圧制御装置(いずれも不図示)を備えている。ノズル2には、
図3中の矢印Aの方向から剥離性部材の原材料となる液剤が供給される。電圧制御装置は、ノズル12の電極とテーブルの電極との間に所定の電圧を印加する。リードフレーム30は、ノズル12の先端部12a(ノズル先端部)に対向するようにテーブルの上に載置されている。ノズル先端部の径(液剤が通過する内径)は、例えば20μm〜200μm程度に設定される。
【0019】
電圧制御装置により所定の電圧が印加されると、ノズル12の先端部12aからリードフレーム30に向けて液剤15が噴霧される。このとき、ノズル12の内部における液剤は、印加電圧により生じる静電力で反発し、ノズル12の先端部12aにおける液面の表面張力を破って微粒子化する。微粒子化された液剤は、正又は負のいずれかに帯電しているため、互いの粒子は反発し合い、凝集することなく噴霧することができる。このように、液剤15はノズル12の先端部12aから噴霧され、最初は比較的大きな径を有する粒子の状態にあり、その後比較的小さな径を有する粒子となってリードフレーム30上の所定の領域(マスク20に形成されたパターン25に対応する領域)に堆積する。最後に、堆積した粒子(液剤)を硬化させることにより、リードフレーム30上の所定の領域に剥離性部材が形成される。
【0020】
図4は、剥離性部材を形成した後のリードフレームの平面図である。
図4に示されるように、リードフレーム30の上には、剥離性部材35(離型材)が形成されている。リードフレーム30上の剥離性部材35は、マスク20のパターン25に対応する位置に形成されている。本実施例の剥離性部材35は、例えばシリコーン系またはフッ素系の材料からなるが、これに限定されるものではない。また本実施例では、リードフレーム30の上に二箇所の剥離性部材35が形成されているが、樹脂封止の際に用いられる金型のランナおよびゲートが配置される位置に形成されていれば、これに限定されるものではない。
【0021】
本実施例において、剥離性部材35はリードフレーム30上に半導体チップ50を実装した後に形成される。すなわち、半導体チップ50の実装後に、任意のパターンを有するマスクを用いて剥離性部材を形成することができる。このため、本実施例によれば、ランナおよびゲートが異なる位置に設けられた任意の金型に対応であるため、ランナおよびゲートに応じて自由に剥離性部材を形成することが可能である。
【0022】
また本実施例の剥離性部材35は、後述の樹脂封止工程の前に静電噴霧装置10を用いて形成されるが、これに限定されるものでなない。例えば、樹脂封止工程において、すなわち樹脂封止装置(不図示)の内部において形成されるように構成してもよい。
【0023】
図5は、樹脂封止後のリードフレームの平面図である。リードフレーム30上の所定の位置に剥離性部材35を形成した後、樹脂封止用の金型(不図示)を用いてリードフレーム30上に樹脂40を形成する。樹脂40は、リードフレーム30上に実装されている半導体チップ50を封止するように、トランスファモールドにより金型のランナおよびゲートを介してリードフレーム30上を覆う。樹脂封止が完了して金型からリードフレーム30(半導体装置)を取り外すと、
図5に示されるように、それぞれの半導体チップ50を封止した樹脂40、および、金型のランナおよびゲートが配置される位置に形成された樹脂45がリードフレーム30上に形成される。
【0024】
樹脂45は、製品には不要な樹脂であるため、
図5に示されるリードフレーム30からは不要な樹脂45を除去する必要がある。本実施例では、不要な樹脂45が形成される位置において、リードフレーム30上には剥離性部材35が形成されている。樹脂45は、リードフレーム30に対しては剥離しにくいが、剥離性部材35に対しては容易に(リードフレーム30に応力を掛けることなく)剥離することができる。
【0025】
このため、本実施例によれば、ランナおよびゲートが異なる位置に設けられた任意の金型に対応可能であり、かつ、リードフレームに応力を掛けることなく不要な樹脂を除去する半導体装置の製造方法を提供することができる。なお本実施例では、基板としてのリードフレーム上に静電噴霧で剥離性部材を形成しているが、これに限定されるものではない。例えば、樹脂基板の上に静電噴霧で剥離性部材を形成することもでき、この場合でも本実施例と同様の効果が得られる。
【実施例2】
【0026】
次に、
図6乃至
図8を参照して、本発明の実施例2における半導体装置の製造方法について説明する。
図6は、本実施例における基板(樹脂基板)の平面図である。基板60は、複数のダイパッド62を備え、それぞれのダイパッド62には半導体チップ70が実装されている。
【0027】
図7は、本実施例における剥離性部材を形成するために用いられるワックス塗布装置である。ワックス塗布装置80は、その先端部に固形ワックス82を保持している。基板60はテーブル90の上に載置されている。ワックス塗布装置80は、テーブル90に対して
図7中の矢印方向(左右方向)に相対移動可能に構成されている。このためワックス塗布装置80は、所定の領域(樹脂封止の際に用いられる金型のランナおよびゲートが配置される位置)において、基板60上に剥離性部材を塗布することができる。
【0028】
図8(a)、(b)は、剥離性部材を形成した後の基板60の平面図である。
図8(a)は基板60の一辺における三箇所に剥離性部材65を形成した状態を示し、
図8(b)は基板60の一辺の全体に剥離性部材66を形成した状態を示す。剥離性部材の位置および形状は、基板60を樹脂封止する際に用いられる金型のランナおよびゲートが配置される位置および形状に応じて決定される。このため、本実施例において剥離性部材の位置および形状は
図8に示されるものに限定されるものではない。
【0029】
本実施例によれば、ランナおよびゲートが異なる位置に設けられた任意の金型に対応可能であり、かつ、基板に応力を掛けることなく不要な樹脂を除去する半導体装置の製造方法を提供することができる。なお本実施例では、基板としての樹脂基板上に固形ワックスで剥離性部材を形成しているが、これに限定されるものではない。例えば、基板としてのリードフレーム上に固形ワックスで剥離性部材を形成することもでき、この場合でも本実施例と同様の効果が得られる。
【0030】
以上、本発明の実施例について具体的に説明した。ただし、本発明は上記実施例として記載された事項に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0031】
10 静電噴霧装置
12 ノズル
15 液剤
20 マスク
25 パターン
30 リードフレーム
32、62 ダイパッド
35、65、66 剥離性部材
40、45 樹脂
50、70 半導体チップ
60 基板
80 ワックス塗布装置
82 固形ワックス
90 テーブル