特許第6000562号(P6000562)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000562
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年9月28日
(54)【発明の名称】開閉装置及び該開閉装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/56 20060101AFI20160915BHJP
【FI】
   E06B9/56 A
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-23227(P2012-23227)
(22)【出願日】2012年2月6日
(65)【公開番号】特開2013-159977(P2013-159977A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2015年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118898
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 立昌
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】堤 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】井上 晋一
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−200202(JP,A)
【文献】 特開昭60−080678(JP,A)
【文献】 特開2005−060967(JP,A)
【文献】 特開平05−079261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/00−9/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に支持された筒状の巻取体と、該巻取体内に略同芯状に設けられたねじりコイルばねと、該巻取体に巻き取られたり繰り出されたりする開閉体とを備え、前記開閉体の開閉動作に伴い、前記巻取体を前記ねじりコイルばねの周方向の付勢力により回転させるようにした開閉装置において、
前記巻取体の中心側に配置されて両端側が不動部位に固定された固定軸を備え、
前記ねじりコイルばねは、前記固定軸の周囲に環状に設けられ、その軸方向の一端側がばね固定部材を介して前記固定軸に止着され、その他端側、軸方向へ引っ張られた状態で前記巻取体に止着され、
前記ばね固定部材は、前記固定軸に環状に装着され、前記ねじりコイルばねの前記一端側に固定されるばね固定部と、前記固定軸に対し止着具によって止着固定される止着部とを有し、
前記ばね固定部は、雄ネジ状に形成されるとともに前記ねじりコイルばねの前記一端側に螺合され、
前記止着部は、角柱状に形成され、前記固定軸に止着される前記止着具を挿通するための貫通孔を、周方向において異なる角度に複数配設していることを特徴とする開閉装置。
【請求項2】
前記止着部には、取っ手を着脱可能にするための止着孔が設けられていることを特徴とする請求項1記載の開閉装置。
【請求項3】
前記ねじりコイルばねの内側において前記固定軸の外周面に環状に装着された筒状ライナーを具備し、前記ねじりコイルばねが前記固定軸に直接接触しないようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の開閉装置。
【請求項4】
前記固定軸には、前記ばね固定部材に対し該固定軸の軸方向における前記ねじりコイルばね側とは反対側に、外周面に止着凹部を有する環状の中央側回転支持部材が、回転自在に装着され、
前記巻取体は、周壁に内部側へ突出する嵌合部を有する略筒状に形成され、該嵌合部を前記止着凹部に嵌め合せて前記中央側回転支持部材の外周面に支持されていることを特徴とする請求項1乃至3何れか1項記載の開閉装置。
【請求項5】
前記固定軸に環状に装着可能な端部側回転支持部材と、該端部側回転支持部材に対し軸方向に間隔を置いて配置された前記ばね固定部材と、これら端部側回転支持部材とばね固定部材との間に装着された前記ねじりコイルばねとを一体的に具備してばね組立てが構成され、
前記ばね組立には、前記固定軸が貫通状に挿通され、
前記固定軸における前記端部側回転支持部材よりも軸方向外側には、前記ばね組立の軸方向外側への移動を規制するように位置決めピンが挿入固定され、
前記端部側回転支持部材及び前記固定軸には、これら双方の部材に跨る仮止めピンを挿通するための貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4何れか1項記載の開閉装置。
【請求項6】
前記開閉体を半部側に沿わせて開閉体開閉方向に対する交差方向へ導くガイド軸を備え、前記巻取体は、前記ガイド軸に対し前記交差方向へ離間した位置に設けられ、前記ガイド軸によって導かれた前記開閉体を巻き取ることを特徴とする請求項1乃至5何れか1項記載の開閉装置。
【請求項7】
前記ねじりコイルばねは、前記他端側が、前記ねじりコイルばねの巻方向へ所定のねじり回数ねじられ且つ軸方向へ引っ張られた状態で前記巻取体に止着され、周方向の復元力によって前記巻取体を巻取方向へ回転させるように設けられていることを特徴とする請求項1乃至6何れか1項記載の開閉装置。
【請求項8】
前記ねじりコイルばねの一端側を前記固定軸に着脱可能に止着する工程と、同ねじりコイルばねの他端側を巻方向へ前記ねじり回数ねじるとともに引っ張って前記固定軸の軸方向の中心寄りに止着する工程と、前記着脱可能に止着された同ねじりコイルばねの前記一端側を前記巻取体に止着する工程と、前記着脱可能に止着された同ねじりコイルばねの前記一端側を前記固定軸から外す工程とを含むことを特徴とする請求項7記載の開閉装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじりコイルばねの付勢力により巻取体を回転させて、開閉体を開放動作又は閉鎖動作するようにした開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明には、例えば特許文献1に記載されたもののように、上下方向へ開閉動作する開閉体(10)と、該開閉体(10)をその上方側で巻き取ったり繰り出したりする巻取体(33)と、該巻取体(33)を巻取方向へ付勢するねじりコイルばね(付勢手段34)と、全閉状態の開閉体(10)を係脱可能に係止する係脱手段(40)とを備えた開閉装置がある。
この開閉装置では、開閉体(10)を閉鎖動作して全閉位置に係脱手段(40)により係止すると、ねじりコイルばね(付勢手段34)に巻取回転方向の付勢力が蓄積される。したがって、開閉体(10)の全閉状態で、係脱手段(40)を解除操作すれば、巻取体(33)がねじりコイルばね(付勢手段34)の付勢力により巻取方向へ回転し、該巻取体(33)に開閉体(10)が巻き取られて、開閉体(10)が全開位置になるまで開放動作する。
【0003】
ところで、前記のような開閉装置に用いられるねじりコイルばねは、環状に巻かれた素線一巻と、該素線一巻に隣り合う素線一巻との間(以降、隣り合う素線間を呼ぶ)が、密着、又は密着に近い状態で近接している。
そのため、前記ねじりコイルばねは、付勢力の蓄積のために、巻方向へ巻かれると、軸方向(換言すれば、ねじりコイルばねの中心線方向)へ伸びようとし、前記素線間が摺接する。より詳細に説明すれば、例えば、ねじりコイルばねが自由状態(換言すれば、ねじり負荷のかからない状態)で略全密着したものである場合、このねじりコイルばねの一端側を固定して他端側を巻方向へ一巻捩じると、該ねじりコイルばねは、素線の外径分だけ軸方向へ伸びようとする。このため、前記ねじりコイルばねは、その両端側が止着された状態でねじられると、伸びることができず、素線間が圧接され擦れたり、軸線に対し湾曲(蛇行)したりする。
【0004】
従来の開閉装置では、前述したように、ねじりコイルばねの素線間の摺接や、軸線に対する湾曲等に起因して、ねじりコイルばねが摩耗したり、該摩耗により破断したり、該摩耗や前記湾曲等によりねじり力が低下したり、湾曲したねじりコイルばねの内周面や外周面が他の部材(例えば固定軸等)に摺接したり等、耐久性低下のおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−315015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、ねじりコイルばねの素線間の摺接を防ぐこと、ねじりコイルばねの摩耗や損傷を防ぐこと、ねじりコイルばねの湾曲を防ぐこと、ねじりコイルばねの付勢特性を良好に維持すること、ねじりコイルばねの耐久性を向上すること、ねじりコイルばねの付勢力による開閉動作を長期間安定的に維持すること等、が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための一手段は、回転可能に支持された筒状の巻取体と、該巻取体内に略同芯状に設けられたねじりコイルばねと、該巻取体に巻き取られたり繰り出されたりする開閉体とを備え、前記開閉体の開閉動作に伴い、前記巻取体を前記ねじりコイルばねの周方向の付勢力により回転させるようにした開閉装置において、前記巻取体の中心側に配置されて両端側が不動部位に固定された固定軸を備え、前記ねじりコイルばねは、前記固定軸の周囲に環状に設けられ、その軸方向の一端側がばね固定部材を介して前記固定軸に止着され、その他端側、軸方向へ引っ張られた状態で前記巻取体に止着され、前記ばね固定部材は、前記固定軸に環状に装着され、前記ねじりコイルばねの前記一端側に固定されるばね固定部と、前記固定軸に対し止着具によって止着固定される止着部とを有し、前記ばね固定部は、雄ネジ状に形成されるとともに前記ねじりコイルばねの前記一端側に螺合され、前記止着部は、角柱状に形成され、前記固定軸に止着される前記止着具を挿通するための貫通孔を、周方向において異なる角度に複数配設していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような作用効果を奏する。
ねじりコイルばねは軸方向へ引っ張られた状態で止着されているため、該ねじりコイルばねの素線間に隙間が確保し易い。よって、ねじりコイルばねの素線間が圧接され擦れたり、ねじりコイルばねが湾曲して他の部材に摺接したり等することを防ぐことができ、ひいては、ねじりコイルばねの耐久性を向上し、ねじりコイルばねの付勢力による開閉動作を長期間安定的に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る開閉装置の一例を示す要部断面図である。
図2】固定軸にねじりコイルばねを装着した状態を示す平面図である。
図3】固定軸に装着前のねじりコイルばねを示す平面図である。
図4】端部側回転支持部材を示す斜視図である。
図5】ばね固定部材を示す斜視図である。
図6】中央側回転支持部材を示す斜視図である。
図7】巻取体を示す要部斜視図である。
図8】巻取体と開閉体の止着構造を示す断面図である。
図9】固定軸にねじりコイルばねを組み付けるための治具の一例を示す斜視図である。
図10】固定軸にねじりコイルばねを環状に装着する前の状態を示す斜視図である。
図11】固定軸に装着したねじりコイルばねをねじっている状態を示す斜視図である。
図12】本発明に係る開閉装置の一例を側方から示す模式図である。
図13】本発明に係る開閉装置の他例を側方から示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するために第一の形態では、回転可能に支持された筒状の巻取体と、該巻取体内に略同芯状に設けられたねじりコイルばねと、該巻取体に巻き取られたり繰り出されたりする開閉体とを備え、前記開閉体の開閉動作に伴い、前記巻取体を前記ねじりコイルばねの周方向の付勢力により回転させるようにした開閉装置において、前記ねじりコイルばねの軸方向の一端側を回転不能部位に止着し、その他端側を、軸方向へ引っ張った状態で前記巻取体に止着した。
ここで、前記「周方向」とは、ねじりコイルばねの外周の方向を意味する。
また、前記「巻取方向」とは、巻取体が開閉体を巻き取るために回転する方向を意味する。前記「繰出方向」とは、前記「巻取方向」に対する逆方向であって、巻取体が開閉体を繰り出すために回転する方向を意味する。
また、前記「回転不能部位」は、回転可能な巻取体に相対し回転しない部位であればよく、具体的には、巻取体を回転可能に支持するように不動部位に固定された固定軸や、巻取体を支持あるいは収納するブラケットやケース等があげられる。
この形態によれば、ねじりコイルばねが軸方向へ引っ張られた状態で止着されているため、該ねじりコイルばねの素線間に予め隙間が確保される。このため、ねじりコイルばねをねじったり、復元したりする際に、素線間が摺接したり、ねじりコイルばねが波打つように変形したりするのを防ぐことができる。
【0011】
第二の形態では、開閉体の全開から全閉までの範囲においてねじりコイルばねの素線間の摺接を防ぐように、前記ねじりコイルばねは、前記開閉体が全開位置から全閉位置までの範囲を移動する間に素線間が接触しないように、軸方向へ引っ張られる。
【0012】
第三の形態では、前記ねじりコイルばねの前記他端側を、前記ねじりコイルばねの巻方向へ所定のねじり回数ねじり且つ軸方向へ引っ張った状態で、前記巻取体に止着した。
この形態によれば、ねじりコイルばねには、予め、所定のねじり回数分の復元力が蓄積されていることになる。したがって、当該開閉装置の初期状態から、ねじりコイルばねの復元力を有効利用することができ、例えば、当該開閉装置の初期状態において、前記復元力によって、開閉体の全開状態又は閉鎖状態を維持することができる。
また、予め所定のねじり回数分の復元力が蓄積されたねじりコイルばねを、さらに開放動作又は閉鎖動作によりねじれば、復元力を増強することができる。
なお、前記「ねじりコイルばねの巻方向」とは、ねじりコイルばね単体の製造段階において、素線をコイル状に巻く際の巻方向である。
【0013】
第四の形態では、素線間の摺接をより低減するために、前記ねじりコイルばねは、自由状態から前記ねじり回数ねじられることで軸方向へ伸びる長さよりも長くなるように、引っ張られている。
ここで、前記「自由状態」とは、ねじりコイルばねにねじり負荷がかかっていない状態(ねじる前の状態)を意味し、ねじりコイルばねの一端側又は両端側を止着しない状態と同様の状態である。
また、前記「自由状態から前記ねじり回数ねじられることで軸方向へ伸びる長さ」について説明すれば、素線間が密着又は密着に近い状態で近接している一般的なねじりコイルばねをねじった場合、該ねじりコイルばねを軸方向へ引っ張らなくても、ねじり量に応じて、ねじりコイルばねの軸方向長さが長くなる。前記「自由状態から前記ねじり回数ねじられることで軸方向へ伸びる長さ」は、軸方向へ引っ張ることなくねじった場合のねじりコイルばねの軸方向長さ(全長)を意味する。
【0014】
第五の形態では、素線間の摺接をより低減するとともに良好なねじりばね特性を得るために、前記ねじりコイルばねは、自由状態から巻方向へ前記ねじり回数ねじられることで軸方向へ伸びる長さよりも、前記ねじりコイルばねの素線外径の1〜3倍の寸法だけ長くなるように、引っ張られている。
前記寸法を素線外径の1倍よりも小さくした場合には、素線間の摺接が増加し、ねじりコイルばねの耐久性を著しく損ねてしまうおそれがある。
また、前記寸法を素線外径の3倍よりも大きくした場合には、ねじりコイルばねが波打つようにして湾曲し、該ねじりコイルばねの内側又は外側の部材(例えば、固定軸や巻取体等)に摺接するおそれがある。
【0015】
第六の形態では、前記開閉体を片半部側に沿わせて開閉体開閉方向に対する交差方向へ導くガイド軸を備え、前記巻取体は、前記ガイド軸に対し前記交差方向へ離間した位置に設けられ、前記ガイド軸によって導かれた前記開閉体を巻き取るようにした。
すなわち、従来、ガイド軸によって前記交差方向へ導かれた開閉体を巻取体に巻き取るようにした開閉装置では、巻取体を錘体の重量によって巻取り回転させていた。しかしながら、本形態では、錘体を用いることなく、ねじりコイルばねによって前記巻取体を巻取り回転させるようにしているため、前記錘体及び前記錘体を上下動させるスペース等を省くことができる。
【0016】
第七の形態では、前記巻取体の外周部に、該巻取体の接線方向へ開口する係合凹部を設け、該係合凹部に、前記開閉体の開放方向側端部を嵌め合せて止着した。
この形態によれば、巻取体外周部と開閉体との止着を容易に行える上、ねじりコイルばねの付勢力に耐え得るように、巻取体外周部と開閉体との止着強度を向上することができる。
【0017】
第八の形態では、前記開閉体は、前記巻取体の外周部に止着された基部と、該基部の閉鎖方向端部に着脱可能に接続された開閉体本体とからなる。
この形態によれば、基部を共通部品として、該基部に対し、開閉方向の長さの異なる開閉体本体を選択的に接続することが可能になり、ひいては、開口部の開閉方向の長さの異なる現場等への対応を容易化することができる。また、開閉体本体が損傷した場合には、その開閉体本体を着脱して新たなものに容易に交換することができる。
【0018】
第九の形態では、具体的に好ましい態様として、前記回転不能部位は、前記巻取体の中心側に配置されて両端側が不動部位に固定された固定軸であり、前記ねじりコイルばねは、前記固定軸の周囲に環状に設けられ、周方向の復元力によって前記巻取体を巻取方向へ回転させる。
【0019】
第十の形態の製造方法では、前記ねじりコイルばねの一端側を前記固定軸に着脱可能に止着する工程と、同ねじりコイルばねの他端側を巻方向へ前記ねじり回数ねじるとともに引っ張って前記固定軸の軸方向の中心寄りに止着する工程と、同ねじりコイルばねの前記一端側を前記巻取体に止着する工程と、同ねじりコイルばねの前記一端側を前記固定軸から外す工程とを含む。
【0020】
なお、上記した一部の形態は、先に記載した形態の構成の一部を含まない独立した発明とすることが可能である。
すなわち、この独立した発明の一つでは、回転可能に支持された筒状の巻取体と、該巻取体に巻き取られたり繰り出されたりする開閉体とを備えた開閉装置において、前記巻取体の外周部に、該巻取体の接線方向へ開口する係合凹部を設け、該係合凹部に、前記開閉体の開放方向側端部を嵌め合せて止着したことを特徴とする。
この発明によれば、巻取体外周部と開閉体との止着を容易に行える上、巻取体外周部と開閉体との止着強度を向上することができる。
【0021】
また、他の独立した発明としては、回転可能に支持された筒状の巻取体と、該巻取体に巻き取られたり繰り出されたりする開閉体とを備えた開閉装置において、前記開閉体は、前記巻取体の外周部に止着された基部と、該基部の閉鎖方向端部に着脱可能に接続された開閉体本体とからなることを特徴とする。
この発明によれば、基部を共通部品として、該基部に対し、開閉方向の長さの異なる開閉体本体を選択的に接続することが可能になり、ひいては、開口部の開閉方向の長さの異なる現場等への対応を容易化することができる。また、開閉体本体が損傷した場合には、その開閉体本体を着脱して新たなものに容易に交換することができる。
【0022】
なお、本明細書中において「開閉体厚さ方向」とは、閉鎖状態の上記開閉体の厚さ方向を意味する。
また、本明細書中において「開閉体幅方向」とは、開閉体の開閉方向と略直交する方向であって、上記開閉体の厚さ方向ではない方向を意味する。
また、本明細書中において「開閉体開閉方向」とは、開閉体が空間を仕切ったり開放したりするためにスライドする方向を意味する。
【0023】
以下、上記形態の特に好ましい実施例を、図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0024】
この開閉装置1は、空間を上下方向へ仕切ったり開放したりして開閉動作する開閉体10(図12参照)と、該開閉体10の横幅方向の端部を囲んで開閉方向へ導くガイドレール(図示せず)と、該開閉体10を上半部側に沿わせて開閉方向に対する交差方向へ導くガイド軸20と、該ガイド軸20に対し前記交差方向へ離間した位置で回転可能に支持された筒状の巻取体30と、該巻取体30内の中心側に略同芯状に設けられて巻取体30を回転可能に支持するとともに両端側が不動部位に固定された固定軸40(図1及び2参照)と、該固定軸40に環状に装着されたばね組立50(図1〜3参照)とを備え、開閉体10の開閉動作に伴い、巻取体30をばね組立50の周方向の付勢力により回転させて、巻取体30の外周に開閉体10を巻き取ったり繰り出したりする。
【0025】
開閉体10は、巻取体30の外周部に止着された基部11と、該基部11の閉鎖方向端部に着脱可能に接続された開閉体本体12とからなる。
基部11と開閉体本体12の各々は、例えば、ガラスクロスやシリカクロス等の難燃性布地や、フッ素加工を施した塩化ビニル樹脂シート材、ガラス繊維を含んだ合成樹脂シート材等、遮煙性、必要に応じ耐火性(難燃性を含む)を有する可撓性シート材料によって構成される。
基部11は、巻取体30の外周に半周から一周半程度巻き付く長さの矩形状に形成され、その上端部を、巻取体30外周の係合凹部31に差し込んで止着している。
開閉体本体12は、全閉時に躯体開口部の略全面を覆う広さの矩形状に形成され、基部11の下端に着脱手段13を介して着脱可能に接続されている。
【0026】
着脱手段13は、図示される好ましい一例によれば、着脱可能な係合片と被係合片からなるベルベットファスナーであり、前記係合片を開閉体本体12の上端側に横幅方向の略全長にわたって止着するとともに、前記被係合片を基部11の下端側に横幅方向の略全長にわたって止着している。
なお、着脱手段13の他例としては、ボタンやホック、フックと該フックを係脱可能な孔、嵌脱可能な二つ部材等とすることが可能である。
【0027】
開閉体本体12の閉鎖方向端部には、開閉体10の全閉時の着座対象部位(図示しない床面や下枠等)に当接させるための座板部12aが設けられる。この座板部12aは、開閉体本体12の閉鎖方向端部を、開閉体幅方向の略全長にわたって袋状に形成し、この袋状部位の内部に、錘部材(例えば、砂袋や、棒状部材等)を内在することで構成される。この座板部12aは、その重量によって開閉体本体12を下方へ引っ張り、開閉体本体12に撓みや皺等が発生するのを防いだり、停電等により駆動源等が駆動しない場合等に自重によって開閉体10を閉鎖動作させたり等する。
【0028】
また、開閉体本体12の横幅方向の端部側には、必要に応じて、開閉体10がガイドレール(図示せず)から横幅方向へ抜けるのを防止する突起状の抜止め部材や、後述するガイド軸20の軸方向端部側の被係合部21(図12参照)に対し凹凸状に嵌り合う係合部(図示せず)等が設けられる。
【0029】
ガイド軸20は、開閉体10の上方側において横幅方向へわたる長尺筒状の部材であり、収納ケースやブラケット等の不動部位に対し回転自在に支持されている。このガイド軸20の軸方向の端部側には、必要に応じて、開閉体本体12における前記係合部に対し係脱可能な被係合部21が設けられる。この被係合部21は、図示例によれば、歯車状もしくはスプロケット状に形成される。
また、このガイド軸20の内部及び/又は外部には、該ガイド軸20を巻取り方向へ回転させる駆動源(例えば、チューブラモータ等の回転式モータ)や、該駆動源の回転力を適宜に調整してガイド軸20に伝達する動力伝達機構(例えば、チェーンとスプロケットによる機構や歯車機構等)が設けられる。
【0030】
また、巻取体30は、開閉体10の幅方向の略全長にわたる略筒状の部材であり、後述する固定軸40の周りを双方向へ自在に回転するように支持されている。
この巻取体30は、アルミニウム合金材料等から略筒状に成形され、その周壁には、開閉体10の上端部を止着するための係合凹部31、後述する端部側回転支持部材51,51’(図1及び4参照)や中央側回転支持部材70(図6参照)に嵌め合うための複数の嵌合部32、内部へ突出する複数のリブ33等が設けられる。
【0031】
係合凹部31は、接線方向へ開口部を向けた凹部であり、巻取体30の全長にわたって連続して設けられている(図7参照)。
【0032】
嵌合部32は、図示例によれば、断面台形状に形成され、内周面側においては巻取体30の全長にわたって連続する凸状であり、外周面側においては巻取体30の全長にわたって連続する凹状であり、この凹状の部分の内側には、止着具(例えば、ボルトやネジ等)を挿通させるための貫通孔32aが設けられる(図7参照)。
この嵌合部32の凸状の内周面は、後述する端部側回転支持部材51,51’(図1及び4参照)や中央側回転支持部材70(図6参照)の外周面の止着凹部51a1,71aに嵌り合う。そして、前記貫通孔32aに挿通される止着具(例えば、ボルトやネジ等)が、前記端部側回転支持部材51,51’に止着される。
この嵌合部32によれば、外周面側が凹状であるため、前記止着具の頭部が巻取体30外周面から遠心方向へ突出するのを防ぐことができる上、内周面側の凸状部分を端部側回転支持部材51,51’及び中央側回転支持部材70に嵌め合せて、これら回転支持部材と一体回転可能に保持される。
【0033】
また、リブ33は、図示例によれば、巻取体30の軸方向の全長にわたる平行な一対の突起であり、巻取体30の内周面において周方向に間隔を置いて複数組設けられる。これらリブ33は、巻取体30を補強するとともに、後述する端部側回転支持部材51,51’及び中央側回転支持部材70に嵌り合う。
【0034】
固定軸40は、巻取体30の中心側に挿通されるとともに巻取体30の両端から突出するように形成された中空軸状の筒体であり、その両端部が収納ケースやブラケット等の不動部位に固定されることで、巻取体30に対し回転不能な回転不能部位を構成している。
この固定軸40には、後述する左右の端部側回転支持部材51,51’及び中央側回転支持部材70等を止着するための複数の貫通孔41〜47(図1及び9参照)が、軸方向に間隔を置いて設けられる。
固定軸40の両端の貫通孔41,47は、該固定軸40を、後述する専用治具Aや、収納ケース等の不動部位に固定するための止着孔である。
貫通孔42は位置決めピン65を挿通するための孔、貫通孔43は仮止めピン61を挿通するための孔、貫通孔44は止着具63を挿通するための孔、貫通孔45は止着具68を挿通するための孔、貫通孔46は止着具62を挿通するための孔であり、これらのうち、貫通孔41,42,43,46,47は組立前に予め穿設されており、貫通孔44,45は、後述する組立作業中に穿設される。
【0035】
一方の端部側回転支持部材51は、固定軸40の一端側(図1によれば左端側)に環状に装着され、ばね組立50を構成する。
【0036】
ばね組立50は、図3に示すように、軸方向の一端側に配置された端部側回転支持部材51と、該端部側回転支持部材51に対し軸方向に間隔を置いて配置されたばね固定部材52と、これら端部側回転支持部材51とばね固定部材52との間に装着されたねじりコイルばね53と、該ねじりコイルばね53の内側に設けられた筒状ライナー54とを具備して一体的に構成される。
【0037】
端部側回転支持部材51は、中央側回転支持部材70と協働して巻取体30を内周面側から支持する部材であり、図1に示すように、支持部本体51aと、該支持部本体51a内に設けられたベアリグ51bと、該ベアリグ51bを所定位置に保持する環状のベアリングセットプレート51cと、該ベアリングセットプレート51cを覆うようにして支持部本体51aに固定された回転止め部材51dとから一体的に構成される。
この端部側回転支持部材51は、ベアリグ51bを介することで固定軸40に対し回転自在に環装されているが、当該開閉装置1が現場等に設置される前は、ねじりコイルばね53によって巻取り回転方向へ付勢された状態で、回転止め部材51d及び固定軸40に貫通される仮止めピン61によって一時的に回転不能な状態とされる。
【0038】
端部側回転支持部材51を構成する支持部本体51aは、図4に示すように、巻取体30の内周面を受ける最大径部分に、巻取体30の嵌合部32に嵌り合う止着凹部51a1と、巻取体30内のリブ33に嵌り合う凹部51a2とを有し、軸方向における巻取体中心側に、ねじりコイルばね53の端部を固定するためのばね固定部51a3を有する。
止着凹部51a1は、最大径部分に対し凹むとともに、巻取体30中央側(図1によれば右方向側)を開放し、その逆側に端面51a11を有するとともに、底部分には巻取体30を貫通した止着具を螺合するための螺子孔51a12が設けられる。
また、凹部51a2は、最大径部分に対し凹むとともに、巻取体30中央側(図1によれば右方向側)を開放し、その逆側に端面51a21を有する。
そして、支持部本体51aにおける前記凹部内の端面51a11と凹部51a2の端面51a21は、それぞれ巻取体30内の嵌合部32の端部とリブ33の端部に当接して、巻取体30を軸方向に位置決めする作用を奏する。
また、ばね固定部51a3は、ねじりコイルばね53の一端側に螺合して固定されるように雄ネジ状に形成される。
【0039】
また、ベアリグ51bは、ボールベアリグであり、固定軸40に対し支持部本体51aを回転自在に支持する。
【0040】
また、回転止め部材51dは、止着具(図示例によればボルト又はネジ)によって支持部本体51aに対し、回転不能に同軸状に固定される。この回転止め部材51dは、図示例によれば、支持部本体51aの端面に固定された円盤状部分と、該円盤状部分から軸方向へ突出して固定軸40の外周に嵌り合う筒状部分との二部材を溶着等により一体に構成される。
この回転止め部材51dにおける前記筒状部分には、仮止めピン61(図1左側参照)又は止着具62(図1右側参照)を挿通するための貫通孔51d1(図4参照)が設けられる。
【0041】
また、ばね固定部材52は、ねじりコイルばね53の他端側(図1によれば右端側)で固定軸40に環状に装着されて、ねじりコイルばね53の前記他端側を固定軸40に固定する略筒状の部材である。このばね固定部材52は、図5に示すように、ねじりコイルばね53の前記他端側に螺合して固定されるばね固定部52aと、固定軸40に対し止着具63(図1参照)によって止着固定される止着部52bとから一体に構成される。
【0042】
ばね固定部52aは、ねじりコイルばね53の前記他端側に螺合する雄ネジ状に形成される。
止着部52bは、固定軸40周りの回転量や周方向位置を視覚的に把握し易いように、角柱状(図示例によれば四角柱状)に形成されている。
【0043】
止着部52bには、止着具63(図示例によればボルト)を挿通するための貫通孔52b1と、取っ手64(図11参照)を着脱可能に装着するための止着孔52b2が設けられる。
貫通孔52b1は、選択的に用いられるように、周方向において異なる角度に複数配設され、図示例によれば90度毎に配置されるように4つ設けられる。
止着孔52b2は、取っ手64を着脱可能なように、例えば、取っ手64を螺合する雌ネジ状に形成され、止着部52bの周方向に複数設けられ、図示例によれば180度毎に配置されるように2つ設けられる。
【0044】
また、ねじりコイルばね53は、軸方向の一端側を固定した状態で他端側がねじられることで付勢力を発生するように構成され、図示例によれば、隣り合う素線間を近接又は接触させた略全密着状のコイルばねである(図1〜3参照)。したがって、このねじりコイルばね53は、軸方向の一端側が固定された自由状態から、他端側が例えば一回転だけねじられると、当該ねじりコイルばね53を構成する線材の素線外径w分(図3参照)だけ軸方向へ伸びることになる。
【0045】
また、筒状ライナー54は、ねじりコイルばね53の内側において、固定軸40の外周面に環状に装着された筒状の部材であり、ねじりコイルばね53が撓んだ際等に固定軸40に直接接触して損傷するようなことを防いでいる。この筒状ライナー54は、例えば、耐摩耗性の良好な合成樹脂材料から形成される。
【0046】
前記構成のばね組立50は、後に詳述する組立手順により、固定軸40の外周に環状に装着され、巻取体中央側(図1によれば右端側)が固定軸40に対し回転不能に止着されるとともに、ねじりコイルばね53がねじられた状態で、逆端側(図1によれば左端側)が仮止めピン61によって固定軸40に仮止めされる。
なお、図1中、符号65は、ばね組立50及び巻取体30の軸方向外側(図1によれば左方向側)への移動を規制する位置決めピン(例えば割ピン)、符号66は、位置決めピン65と回転止め部材51dとの間に介在して回転止め部材51dの端部を保護する環状スペーサである。
【0047】
また、上記端部側回転支持部材51と協働して巻取体30を支持する中央側回転支持部材70は、支持部本体71と、該支持部本体71内に設けられたベアリグ72(例えばボールベアリング)とから構成される。
支持部本体71は、上記端部側回転支持部材51の支持部本体51aと略同様に、巻取体30の内周面を受ける最大径部分に、巻取体30の嵌合部32に嵌り合う略台形凹状の凹部71a(図6参照)と、巻取体30内のリブ33に嵌り合う略矩形凹状の凹部71bとを有する。
【0048】
そして、前記構成の中央側回転支持部材70は、図1及び2に示すように、巻取体30の軸方向の中央側に位置するように、固定軸40に環状に装着され、ベアリグ72の部分がばね組立50と位置決めスリーブ67との間に挟まれることで軸方向に位置決めされる。位置決めスリーブ67は、止着具68によって固定軸40に対し不動に固定される。
したがって、中央側回転支持部材70は、固定軸40に対し、ベアリグ72を介することで回転自在であって、且つ軸方向へ移動不能に保持される。
そして、この中央側回転支持部材70の外周部には、巻取体30が環状に装着され、巻取体30を一体回転可能に支持する。
【0049】
また、他方(図1によれば右側)の端部側回転支持部材51’は、端部側回転支持部材51のものと同構成の支持部本体51aと、該支持部本体51a内に設けられたベアリグ51bと、該ベアリグ51bを所定位置に保持する環状のベアリングセットプレート51cとを具備してなり、固定軸40に対し環状に装着され、同固定軸40の軸方向外側(図1によれば右側)に環装される筒状の位置決めスリーブ69により、軸方向外側へ移動しないように保持される。位置決めスリーブ69は、止着具62(図示例によればボルトとナット)により固定軸40に対し不動に固定される。
前記構成によれば、端部側回転支持部材51’は、固定軸40に対し回転自在であって且つ軸方向へ移動不能に保持される。
そして、この端部側回転支持部材51’の外周部には、巻取体30が環状に装着されて図示しない止着具(例えばボルトやネジ等)により不動に固定される。
【0050】
次に、上記構成の巻取体30、固定軸40及びばね組立50等の組立手順の一例を詳細に説明する(図9〜11参照)。
まず、専用治具Aに固定軸40を固定する。専用治具Aは、支持部A1と他方の支持部A2と間隔を置いて対向するように配置してなる。
固定軸40の一端側(図9によれば左端側)と他端側は、それぞれ、支持部A1と支持部A2に対し、軸方向移動不能且つ回転不能となるように、止着具(例えばネジやボルト等)によって着脱可能に固定される。
【0051】
次に、固定軸40の一端から寸法L1の位置と、該位置から寸法L2の位置に、貫通孔44,45が穿設される(図9参照)。なお、図中、貫通孔42,43は、当該組立手順の前に、所定位置に予め穿設されている。
寸法L1は、ねじりコイルばね53の自由長さに応じて予め設定されており、例えば、ねじりコイルばね53の自由長さに対応して前記寸法L1を設定した寸法表から作業者が読み取るようにすればよい。
寸法L2は、固定軸40周りにばね固定部材52と中央側回転支持部材70と位置決めスリーブ67を環装し軸方向に当接させた際における、ばね固定部材52の止着具63(又は貫通孔52b1)と位置決めスリーブ67の止着具68(又は貫通孔)と間のピッチと略同等に設定された固定寸法である(図1参照)。
【0052】
なお、前記L1は、開閉体幅が現場毎に異ならない場合等には単一の固定寸法とし、組立前に予め穿設しておいてもよい。
また、他例としては、貫通孔44,45を、固定軸40の軸方向に所定間隔置きに3以上設け、これら貫通孔44,46が選択的に用いられるようにすることで、前記穿設作業を省くことも可能である。
【0053】
次に、固定軸40の一端側が支持部Aから一時的に外され、図10に示すように、該固定軸40の一端側に、位置決めスリーブ67、中央側回転支持部材70、ばね組立50、環状スペーサ66が順次に環装される。そして、この後、固定軸40の一端側が支持部Aに固定された状態に戻される。
【0054】
次に、固定軸40の前記一端側(図示例によれば左端側)に位置決めピン65が挿入固定され、該位置決めピン65側に、環状スペーサ66及びばね組立50が寄せられる(図11参照)。そして、前記一端側における端部側回転支持部材51の回転止め部材51d及び固定軸40に仮止めピン61が挿通されることで、端部側回転支持部材51が固定軸40に対し軸方向移動不能且つ回転不能な状態に仮止めされる。
【0055】
次に、ばね組立50他端側のばね固定部材52に取っ手64,64がハンドル状に装着される(図11参照)。なお、この取っ手64を装着する手順は、ばね組立50を固定軸40に環装する前等、他の時点とすることも可能である。
【0056】
次に、ばね組立50の前記他端側(図11によれば右端側)を、ねじりコイルばね53の巻方向へ所定のねじり回数ねじり且つ軸方向へ所定量引っ張った状態で、ばね組立50他端側のばね固定部材52に止着具63を挿通し、該止着具63を固定軸40に対し軸方向移動不能且つ回転不能に固定する。したがって、ばね組立50は、ねじりコイルばね53による周方向の付勢力が蓄積された状態となる。
ここで、前記「ねじりコイルばね53の巻方向」とは、当該組立作業前のねじりコイルばね53単体の製造段階において、素線をコイル状に巻く際の巻方向であり、図11の一例によれば、軸方向左側から視た場合の時計方向である。
前記作業は、ばね組立50を所定のねじり回数ねじった後に所定量軸方向へ引っ張ればよいが、ばね組立50を所定のねじり回数ねじりながら所定量引っ張るようにしてもよいし、ばね組立50を所定量引っ張った後に所定のねり回数ねじるようにしてもよい。
【0057】
前記ねじり回数は、開閉体10を全閉状態から全開状態にする際に、巻取体30をねじりコイルばね53の付勢力によって回転させて、開閉体10を全て巻取体30に巻き取れるように適宜に調整されている。より詳細に説明すれば、このねじり回数は、全閉状態の開閉体10を全て巻取体30に巻き取った際に巻取体30が回転する回数に、適宜なねじり回数(例えば、10〜15巻数程度)を加算した値とされる。前記加算されるねじり回数は、巻取体30が開閉体10を全閉から全開までスムーズに巻き取るだけのトルクを発生するように、予め実験又は計算等によって設定される値である。
【0058】
また、前記作業において、ばね組立50を引っ張る量は、軸方向へ引っ張ったばね固定部材52を止着する位置、すなわち上記手順で固定軸40に穿設された貫通孔44(図9参照)の位置により定まる。この位置は、ねじりコイルばね53が、自由状態から引っ張られることなく前記ねじり回数だけねじられることで軸方向へ伸びる長さよりも長くなるように、設定されている。
つまり、ねじりコイルばね53は自由状態で全密着状に形成されているため、このねじりコイルばね53の一端側を止着しその他端側を前記ねじり回数だけねじった場合、該ねじりコイルばね53は、外力によって引っ張られることがなくても、「前記ねじり回数×素線外径w」の長さだけ軸方向へ伸びることになる。本実施例の作業手順によれば、このようにしてねじりコイルばね53が伸びた状態から、更にねじりコイルばね53の素線外径wの1〜3倍、好ましくは2倍の寸法だけねじりコイルばね53が長くなるように引っ張られて、ばね固定部材52が固定軸40の軸方向の中心寄りに止着具63によって止着される。
【0059】
すなわち、ねじりコイルばね53は、引っ張られると、部分的に直径Dが細くなること等に起因して、蛇行状態となり凹凸ができ、密の部分と粗の部分を有する粗密状態となる。
ねじりコイルばね53の引張量は、例えば、前記粗密状態となった場合に、密の部分でばね素線間が接近していたとしても接触しないように、適宜に調整されている。さらには、ねじりコイルばね53の引張量は、蛇行状態になっていてもばね素線が固定軸40および筒状ライナー54に接触しないように調整するのが好ましい。ここで、前記接触しないとは、開閉体10の開閉動作に伴うねじりコイルばね53の巻き締め又は巻き戻し中に、振動等に起因して、ばね素線間の接触や、ばね素線と固定軸40又は筒状ライナー54との接触が若干あったとしても、その頻度や時間が希少であって実質的に接触しない場合と同程度な場合も含む。
前記のように調整しておけば、開閉体10の全閉位置からの開放動作に伴い、ねじりコイルばね53のねじり回数が減少し、各ばね素線間が拡大してゆき、かつ、ねじりコイルばね53の内径dが大きくなるので、ばね素線間の接触や、ねじりコイルばね53と固定軸40または筒状ライナー54との接触を避けることができる。
このような観点から、本実施例のねじりコイルばね53は、開閉体10が全開位置から全閉位置までの範囲を移動する間に素線間が接触しないように、軸方向へ引っ張られており、より好ましくは、自由状態から巻方向へ前記ねじり回数ねじられることで軸方向へ伸びる長さよりも、該ねじりコイルばね53の素線外径wの1〜3倍、好ましくは約2倍の寸法だけ長くなるように、軸方向へ引っ張られている。
【0060】
次に、ばね固定部材52側に中央側回転支持部材70及び位置決めスリーブ67を寄せて、位置決めスリーブ67を止着具68によって固定軸40に止着する。
よって、ばね組立50は、ねじりコイルばね53に巻取り方向の付勢力と軸方向の引張力を蓄積した状態に保持される。
【0061】
次に、固定軸40の一他側及び/又は他端側が専用治具Aから外され、端部側回転支持部材51,51’及び中央側回転支持部材70の周囲に、巻取体30が環状に装着され止着具(図示しないボルトやネジ等)によって固定される。
すなわち、この状態は、ねじりコイルばね53の軸方向の一端側(図1によれば右端側)を固定軸40(回転不能部位)に止着し、その他端側(図1によれば左端側)を、所定のねじり回数ねじり且つ軸方向へ引っ張った状態で巻取体30に止着したことになる。
【0062】
次に、一体化された巻取体30、固定軸40及びばね組立50等は、専用治具Aから完全に外される。そして、固定軸40の両端部が、開放時の開閉体10を収納する収納ケース(図示せず)内において、ガイド軸20から略水平方向へ離間した位置に配置され(図12参照)、該収納ケース内の不動部位(例えばブラケット等)に固定される。
【0063】
次に、開閉体10がガイド軸20の上半部側に掛け回され、該開閉体10の開放方向側端部が巻取体30の外周面に止着される(図12参照)。詳細には、上述したように、開閉体本体12の開放方向側端部が着脱手段13を介して、巻取体30に予め止着された基部11の閉鎖方向側端部に止着される(図8参照)。
【0064】
次に、開閉体10の閉鎖方向端部を着座対象部位に当接させた全閉状態において、固定軸40一端側の仮止めピン61を抜くことで、ばね組立50の端部側回転支持部材51を固定軸40に対し回転自在にし、当該組立作業を完了する。この全閉状態では、巻取体30が、ねじりコイルばね53の復元力によって巻取り回転方向へ付勢される。
【0065】
次に、当該開閉装置1の開閉動作時の作用効果について説明すれば、前記全閉状態において、図示しない駆動源の駆動によってガイド軸20を巻取り方向(図12によれば時計方向)へ回転させれば、この回転に伴って開放動作する開閉体10の基端側は、ねじりコイルばね53の復元力によって回転する巻取体30に巻き取られる。
また、図示しない駆動源の駆動によってガイド軸20を繰出し方向へ回転させて開閉体10を閉鎖動作した際には、開閉体10が巻取体30から繰り出されるとともに、巻取体30の繰出し回転に伴って、ねじりコイルばね53に、ねじり方向の付勢力が蓄積される。
このように、ねじりコイルばね53は、開閉体10の開閉動作に伴って、ねじり方向の回転と、復元方向の回転とを繰り返すことになるが、上記止着構造により軸方向へ引っ張られた状態に維持されているため、該ねじりコイルばね53の素線間には隙間が確保される。このため、この隙間によって、該ねじりコイルばね53の素線間が圧接され擦れたり、該ねじりコイルばね53が湾曲して他の部材に摺接したり等することを防ぐことができ、ひいては、ねじりコイルばね53の耐久性を向上し、ねじりコイルばね53の付勢力による開閉動作を長期間安定的に維持することができる。
【0066】
なお、ねじりコイルばね53を引っ張って止着するための寸法L1(図1参照)は、ねじりコイルばね53のねじり回数(あるいは、開閉体10の全開状態から全閉状態までストローク)に応じて異なる。このため、このねじり回数が多種類となる開閉装置の場合(例えば、現場等に応じて前記ストロークが異なる場合)には、ばね組立50の止着位置(寸法L1)を一律には決められないために生産性に劣るおそれがあるが、このような場合でも、開閉頻度が非常に多いために、ねじりコイルばね53の寿命やばねの性能向上をより重視する開閉装置等の場合には、本実施例を適用するのが有効である。もちろん、開閉装置の適用範囲が決まっている等の理由により、前記ねじり回数の範囲が決まっている場合には、ばね組立50の止着位置(寸法L1)を一律に設定できるので、製造コストの削減や品質向上の効果が大きくなる。
【0067】
また、上記実施例によれば、ねじりコイルばね53のねじり回数は、開閉体10を全閉状態から全開状態まで開放動作させることを前提にしているが、通常の使用状態では全閉までには至らずに、所定の中間位置で停止させる場合(例えば、昼間は換気等のために全閉よりも若干開放した位置で開閉体を停止するように設定し、夜間の所定時間になったときに防犯等のために本来の全閉位置で開閉体を停止するようにした場合)に、この中間位置の状態を前記全閉状態とみなして、ねじりコイルばね53のねじり回数を設定することも可能である。
【0068】
また、上記実施例では、ばね組立50をねじった状態(すなわち、ねじりコイルばね53をねじった状態)で固定軸40に止着し、開閉体10の上端を巻取体30に止着するまでの工程(さらには、これらを図示しない収納ケースに収納するまでの工程)を工場にて行うようにしたが、どの工程までを工場で行うのかは任意である。
【0069】
また、上記実施例によれば、駆動源の駆動によってガイド軸20を巻取り回転させるのに伴って、固定軸40がねじりコイルばね53の復元力で巻取り方向へ回転するようにしたが、他例としては、前記駆動源を省き、ねじりコイルばね53の復元力のみによってガイド軸20及び巻取体30を巻取り方向へ回転させる構成とすることも可能である。
【0070】
また、上記実施例によれば、ガイド軸20によって開放方向に対する交差方向へ導かれる開閉体10を巻取体30に巻き取る二軸式の開閉装置1を構成したが、他例としては、図13に示すように一軸式の開閉装置2を構成することも可能である。
図13に示す開閉装置2は、回転可能に支持された筒状の巻取体30’と、該巻取体30’の外周部に止着された開閉体10とを備え、巻取体30’の構造を、上述した巻取体30と略同様に構成している。
この開閉装置2によれば、巻取体30’を一方へ回転すれば、該巻取体30’の外周から直接下方へ開閉体10が繰り出され閉鎖動作をし、同巻取体30’を逆方向へ回転すれば開閉体10の基端側が直接巻取体30’の外周に巻かれることになる。そして、この開閉動作に伴い、上記開閉装置1と略同様に、巻取体30’内のばね組立50のねじり方向の回転と復元方向の回転とを繰り返すが、コイルばね53の素線間の隙間により良好な耐久性を得ることができる。
なお、この開閉装置2は、開閉体10を手動で開閉する態様としてもよいし、巻取体30を駆動源の駆動力によって回転させることで開閉体10を開閉動作する態様としてもよい。開閉体10を手動で開閉する態様とした場合、巻取体30をねじりコイルばね53の付勢力によって巻取回転させる構成としてもよいし、開閉体10を開閉途中位置で停止させるために巻取体30をねじりコイルばね53の付勢力を用いる構成(所謂バランスシャッターの構成)とすることも可能である。また、巻取体30を駆動源の駆動力によって回転させる態様とした場合、前記駆動源の駆動力をねじりコイルばね53の付勢力によって補助するようにしてもよいし、巻取体30を前記駆動源によって繰出し回転し同巻取体30をねじりコイルばね53の付勢力によって巻取り回転させるようにしてもよい。
【0071】
また、上記実施例では、ねじられたねじりコイルばね53の復元力により巻取体30,30’を巻取り方向へ回転させる構成としたが、他例としては、ねじられたねじりコイルばね53の復元力によって巻取体30,30’を繰出し方向へ回転させる構成とすることも可能である。
【符号の説明】
【0072】
1,2:開閉装置 10:開閉体
30:巻取体 50:ばね組立
51:端部側回転支持部材 51d:回転止め部材
52:ばね固定部材 53:ねじりコイルばね
70:中央側回転支持部材
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