(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材の一方の面に、熱膨張性微小球を含有する熱剥離型粘着剤層を設けてなる加熱剥離型粘着シートであって、他方の面にウレタン変性酢酸ビニル−塩化ビニルコポリマー、ポリアクリルウレタン、又はポリウレタンポリエステルから選択された1種以上を含む有機コーティング層を介してエネルギー線硬化型弾性粘着剤層が配置されていることを特徴とする加熱剥離型粘着シート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、これらの課題に対して、まず、基材とエネルギー線硬化型弾性層との間に有機コーティング層を設けることで該エネルギー線硬化型弾性層の基材への密着性を向上させることにより、剥離時において糊残りを生じないようにすることが可能となることを見出し、本発明に至った。
【0013】
以下に本発明の加熱剥離型粘着シートの構造について、まず
図1に基づき説明する。
上記のように、本発明の加熱剥離性シートは、基材の一方の面に、熱膨張性微小球を含有する熱剥離型粘着剤層を設けてなる加熱剥離型粘着シートであって、他方の面に有機コーティング層を介して硬化されるエネルギー線硬化型弾性層が配置されていることを特徴とする加熱剥離型粘着シートである。
この加熱剥離型粘着シートのエネルギー線硬化型弾性層は粘着性を備えており、そのエネルギー線硬化型弾性層がデバイス等の被加工物に接着し、熱剥離型粘着剤層は支持体等に接着されることによって、該支持体上に本発明の加熱剥離型粘着シートによって被加工物を固定する。その後、被加工物に対して、切断、研磨等の各種機械的加工、あるいは光線照射等の物理的加工、あるいは特定のガス雰囲気下に晒す等の化学的加工等の任意の加工を1種以上施す。
続いて、本発明の加熱剥離型粘着シートを加熱して、熱膨張性微小球を発泡させることにより、支持体から被加工物及び本発明の加熱剥離型粘着シートを剥離する。次いで、本発明の加熱剥離型粘着シートのエネルギー線硬化型弾性層から被加工物を剥離する。
このような方法により本発明の加熱剥離型粘着シートは使用される。
【0014】
次に本発明の加熱剥離型粘着シートを構成する各層について述べる。
[基材]
基材1は有機コーティング層2、エネルギー線硬化型弾性層3及び熱剥離型粘着剤層4等の支持母体となるもので、熱剥離型粘着剤層4の加熱処理により機械的物性を損なわない程度の耐熱性を有するものが使用される。
このような基材1としては、例えば、ポリエステル、オレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのプラスチックフィルムやシートが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
基材1は被加工物の切断の際に用いるカッターなどの切断手段に対して切断性を有しているのが好ましい。また、基材1として軟質ポリオレフィンフィルム若しくはシート等の耐熱性と伸縮性とを具備する基材を使用すると、被加工物の切断工程の際、基材途中まで切断刃が入れば、後に基材を伸張することができるので、切断片間に隙間を生じさせることが必要な切断片回収方式に好適となる。
【0015】
さらに、基材1側からエネルギー線硬化型弾性層3を硬化させる際には、エネルギー線を用いるために基材1、有機コーティング層2(及び熱剥離型粘着剤層4等)は、エネルギー線硬化型弾性層を硬化させる程度の所定量以上のエネルギー線を透過しうる材料で構成される必要がある。また、仮にセパレータ6上にエネルギー線硬化型弾性層3を設け、セパレータ6を通じてこれを硬化するにはセパレータ6をエネルギー線透過性とする必要がある。
また、基材1は単層であってもよく多層からなってもよい。
【0016】
基材1の厚さは、被加工物の貼り合わせ、被加工物の切断、切断片の剥離、回収などの各工程における操作性や作業性を損なわない範囲で適宜選択できるが、通常500μm以下、好ましくは3〜300μm程度、さらに好ましくは5〜250μm程度である。
基材1の表面は、隣接する層との密着性、保持性などを高めるため、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的処理、下塗り剤(例えば、後述する粘着物質)によるコーティング処理等が施されていてもよい。
【0017】
[有機コーティング層]
有機コーティング層には、基材に良好に密着し、加熱剥離後にエネルギー線硬化型弾性層が投錨破壊しないことを目的として使用する。
投錨破壊が生じるか否かは、例えば、下記の実施例に記載の方法で評価することができる。有機コーティング層はプライマー層としての機能を有し、有機コーティング層を介して基材とエネルギー線硬化型弾性層とがより強く接着されることにより投錨破壊を防止できるので、本発明の加熱剥離型粘着シートを使用した際に加熱剥離性が良好で、糊剥がれ、つまり糊残りを生じないという効果を発揮することができる。
【0018】
有機コーティング層2は、これらの特性を有する限り、どのような材料を用いてもよい。
例えば、文献(プラスチックハードコート材料II、CMC出版、(2004))に示されるような各種のコーティング材料を用いることが可能である。なかでも、ウレタン系ポリマー等のウレタン結合を有するポリマーが好ましい。基材に対して優れた密着性を示し、かつ、エネルギー線硬化型弾性層(特に硬化後)に対して優れた投錨性を示すからである。特に、ポリアクリルウレタン及びポリエステルポリウレタン、これらの前駆物質がより好ましい。これらの材料は、基材への塗工・塗布が簡便であるなど、実用的であり、工業的に多種のものが選択でき、安価に入手できる。
【0019】
ポリアクリルウレタン及びポリエステルポリウレタンとしては、文献(プラスチックハードコート材料II、P17−21、CMC出版、(2004))及び文献(最新ポリウレタン材料と応用技術、CMC出版、(2005))に示されるいずれをも用いることができる。これらは、イソシアナートモノマーとアルコール性水酸基含有モノマー(例えば、水酸基含有アクリル化合物又は水酸基含有エステル化合物)との反応混合物からなるポリマーである。さらなる成分として、ポリアミンなどの鎖延長剤、老化防止剤、酸化安定剤などを含んでいてもよい。
ポリアクリルウレタン及びポリエステルポリウレタンは、上述したモノマーを反応させることにより調製したものを用いてもよいし、コーティング材料又はインキ、塗料のバインダー樹脂として多く市販又は使用されているものを用いてもよい(文献:最新ポリウレタン材料と応用技術、P190、CMC出版 (2005)参照)。このようなポリウレタンとしては、大日精化製の「NB300」、ADEKA製の「アデカボンタイター(登録商標)」、三井化学製の「タケラック(登録商標)A/タケネート(登録商標)A」、DICグラフィックス製の「UCシーラー」等の市販品が挙げられる。
このようなポリマーに色素を添加するなどして、インキとしてフィルム層に印刷して用いてもよい。このときに例えばポリウレタン系酢酸ビニル−塩化ビニルコポリマー(大日精化社NB300)等のポリウレタン変性樹脂を使用することができ、このような印刷により粘着シートの意匠性を高めることも可能となる。
【0020】
ここで特に、ポリアクリルウレタン及びポリエステルウレタンが基材に対して良好な密着性を示す理由としては、モノマーとして含まれるイソシアナート成分が基材表面に存在する水酸基やカルボキシル基などの極性官能基と反応して強固な結合を形成するからと考えられる。
また、特に、エネルギー線硬化後において、エネルギー線硬化型弾性層との投錨性が高まる理由としては、紫外線等照射時においてウレタン結合近傍に生成するラジカル種とエネルギー線硬化型弾性層に生成するラジカル種とが反応して強固な結合を形成するためと推測される(文献:ポリウレタンの構造・物性と高機能化および応用展開、p191−194、技術情報協会(1999))。
【0021】
有機コーティング層の厚みは特に限定されないが、例えば、0.1〜10μm程度が適しており、0.1〜5μm程度が好ましく、0.5〜5μm程度がより好ましい。
0.1〜10μmの範囲であれば、基材とエネルギー線硬化型弾性層との間で十分な密着性を発揮することで糊残り防止効果を示すことができ、かつ、加熱剥離型粘着シートの物性を大きく損ねることがない。
【0022】
[エネルギー線硬化型弾性層]
エネルギー線硬化型弾性層はエネルギー線による硬化によって粘着力が低下し、硬化後の粘着力は被加工物から剥がすことができる程度の粘着力を有する層である。
エネルギー線硬化型弾性層3は、エネルギー線硬化性を付与するためのエネルギー線硬化性化合物(又はエネルギー線硬化性樹脂)を含有する。また、エネルギー線硬化型弾性層3は、エネルギー線照射後には弾性体となるのが好ましい。このような観点から、エネルギー線硬化型弾性層3は、エネルギー線反応性官能基で化学的に修飾された母剤(粘着剤)を用いるか、エネルギー線硬化性化合物(又はエネルギー線硬化性樹脂)を弾性を有する母剤中に配合した組成物により構成するのが好ましい。
また、
図2に示すように、基材の熱剥離型粘着剤層4を設けた側において、基材1と熱剥離型粘着剤層4との間に基材1側から順に有機コーティング層2及びエネルギー線硬化型弾性層3を形成した場合、又はエネルギー線硬化型弾性層3を設けた場合には、いずれの場合においても、エネルギー線硬化型弾性層3は熱剥離型粘着剤層4が圧着される際に熱膨張性微小球の凹凸を緩和できる程度の粘弾性を有している。
またその時にはエネルギー線硬化型弾性層3に熱剥離型粘着剤層4に含有される熱膨張性微小球の一部が埋め込まれた状態となるようにすることもできる(
図2の拡大図参照)。
【0023】
前記母剤としては、例えば、天然ゴムや合成ゴムあるいはそれらを用いたゴム系粘着剤、シリコーンゴムあるいはその粘着剤、(メタ)アクリル酸アルキルエステル[例えば、(メタ)アクリル酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、ヘキシルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、イソデシルエステル、ドデシルエステルなどのC
1-20アルキルエステルなど]の単独又は共重合体や該(メタ)アクリル酸アルキルエステルと他のモノマー[例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸などのカルボキシル基若しくは酸無水物基含有モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマー;(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチルなどのアミノ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸メトキシエチルなどのアルコキシ基含有モノマー;N−シクロヘキシルマレイミドなどのイミド基含有モノマー;酢酸ビニルなどのビニルエステル類;N−ビニルピロリドンなどのビニル基含有複素環化合物;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマー;アクリロニトリルなどのシアノ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー;ビニルエーテルなどのビニルエーテル系モノマー等]との共重合体からなるアクリル系樹脂あるいはその粘着剤、ポリウレタン系樹脂やその粘着剤、エチレン−酢酸ビニル共重合体など、適宜な粘弾性を有する有機粘弾性体を用いうる。なお、該母剤として、後述の熱剥離型粘着剤層4を構成する粘着剤と同一又は同種の成分を用いることにより、エネルギー線硬化型弾性層3と熱剥離型粘着剤層4とを密着性よく積層できる。好ましい母剤にはアクリル系粘着剤などの粘着物質が含まれる。母剤は1種の成分で構成してもよく、2種以上の成分で構成してもよい。
【0024】
化学的な修飾に用いられるエネルギー線反応性官能基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、アセチレン基等の炭素−炭素多重結合を有する官能基等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの官能基は、エネルギー線の照射により炭素−炭素多重結合が開裂してラジカルを生成し、このラジカルが架橋点となって3次元網目構造を形成することができる。
なかでも、(メタ)アクリロイル基は、エネルギー線に対して比較的高反応性を示し、多様なアクリル系粘着剤から選択して組み合わせて使用できる等、反応性、作業性の観点で好ましい。
【0025】
このように、エネルギー線反応性官能基で化学的に修飾された母剤の代表的な例としては、ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基等の反応性官能基を含む単量体[例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸等]を(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合させた反応性官能基含有アクリル系重合体に、分子内に前記反応性官能基と反応する基(イソシアネート基、エポキシ基等)及びエネルギー線反応性官能基(アクリロイル基、メタクリロイル基等)を有する化合物[例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチレンイソシアネート等]を反応させて得られる重合体が挙げられる。
前記反応性官能基含有アクリル系重合体における反応性官能基を含む単量体の割合は、全単量体に対して、例えば5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%である。
【0026】
分子内に前記反応性官能基と反応する基及びエネルギー線反応性官能基を有する化合物の使用量は、前記反応性官能基含有アクリル系重合体と反応させる際、反応性官能基含有アクリル系重合体中の反応性官能基(ヒドロキシル基、カルボキシル基等)に対して、例えば、20〜100モル%、好ましくは40〜95モル%である。また、分子内に前記反応性官能基と反応する基及びエネルギー線反応性官能基を有する化合物と反応性官能基含有アクリル系重合体中の反応性官能基との(付加)反応を促進するために、有機スズ、有機ジルコニウムなどの有機金属系化合物やアミン系化合物などの触媒を配合してもよい。
【0027】
エネルギー線硬化型弾性層3をエネルギー線硬化させるためのエネルギー線硬化性化合物としては、可視光線、紫外線、電子線などのエネルギー線により硬化可能なものであれば特に限定されないが、エネルギー線照射後のエネルギー線硬化型弾性層3の3次元網状化が効率よくなされるものが好ましい。エネルギー線硬化性化合物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0028】
エネルギー線硬化性化合物を母剤に配合する場合のエネルギー線硬化性化合物の具体的な例として、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート等が挙げられる。
【0029】
エネルギー線硬化性化合物としてエネルギー線硬化性樹脂を用いてもよく、エネルギー線硬化性樹脂として、例えば、分子末端に(メタ)アクリロイル基を有するエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、アクリル樹脂(メタ)アクリレート、分子末端にアリル基を有するチオール−エン付加型樹脂や光カチオン重合型樹脂、ポリビニルシンナマート等のシンナモイル基含有ポリマー、ジアゾ化したアミノノボラック樹脂やアクリルアミド型ポリマーなど、感光性反応基含有ポリマーあるいは感光性反応基含有オリゴマーなどが挙げられる。さらに高エネルギー線で反応するポリマーとしては、エポキシ化ポリブタジエン、不飽和ポリエステル、ポリグリシジルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリビニルシロキサンなどが挙げられる。なお、エネルギー線硬化性樹脂を使用する場合には、前記母剤は必ずしも必要でない。
【0030】
エネルギー線硬化性化合物の配合量は、例えば、母剤100重量部に対して、5〜500重量部程度、好ましくは15〜300重量部、さらに好ましくは20〜150重量部程度の範囲である。また、エネルギー線硬化型弾性層3のエネルギー線照射後における動的弾性率が、20℃において、せん断貯蔵弾性率5×10
6〜1×10
10Pa(周波数:1Hz、サンプル:厚さ1.5mmフィルム状)であると、優れた切断作業性と加熱剥離性との両立が可能となる。この貯蔵弾性率は、エネルギー線硬化性化合物の種類や配合量、エネルギー線照射条件などを適宜選択することにより調整できる。
なお、必要に応じてエネルギー線重合開始剤とともにエネルギー線重合促進剤を併用してもよい。
【0031】
エネルギー線硬化型弾性層3には、上記成分のほか、エネルギー線硬化性化合物を硬化させるためのエネルギー線重合開始剤、及びエネルギー線硬化前後に適切な粘弾性を得るために、熱重合開始剤、架橋剤、粘着付与剤、加硫剤等の適宜な添加剤、さらに充填剤、老化防止剤、酸化防止剤、着色剤を必要に応じて配合できる。
【0032】
エネルギー線重合開始剤としては、用いるエネルギー線の種類に応じて公知乃至慣用の重合開始剤を適宜選択できる。
エネルギー線として紫外線を用いて重合・硬化を行う場合には、硬化するために光重合開始剤が含まれる。光重合開始剤としては特に限定されないが、たとえば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなどのベンゾインエーテル;アニソールメチルエーテルなどの置換ベンゾインエーテル;2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトンなどの置換アセトフェノン;2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノンなどの置換アルファーケトール;2−ナフタレンスルフォニルクロライドなどの芳香族スルフォニルクロライド;1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどの光活性オキシム;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどのアシルフォスフィンオキサイドなどがあげられる。
【0033】
エネルギー線硬化型弾性層3は、例えば、エネルギー線硬化性樹脂、あるいは母剤、エネルギー線重合性化合物、及びエネルギー線重合開始剤、さらに必要に応じて添加剤、溶媒等を含むコーティング液を基材1上に塗布する方式、適当なセパレータ(剥離紙など)上に前記コーティング液を塗布してエネルギー線硬化型弾性層3を形成し、これを基材1上に転写(移着)する方法など、慣用の方法により形成できる。
該エネルギー線硬化型弾性層を硬化するに際して、酸素による重合阻害の発生が懸念される場合には、セパレータ上に塗布したウレタンポリマーとラジカル重合性モノマーとの混合物の上に、剥離処理したシートをのせて酸素を遮断してもよいし、不活性ガスを充填した容器内に基材を入れて、酸素濃度を下げてもよい。
エネルギー線等の種類や照射により使用されるランプの種類等は適宜選択することができ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト、殺菌ランプ等の低圧ランプや、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ等の高圧ランプ等を用いることができる。さらに紫外線などの照射量は、要求されるエネルギー線硬化型弾性層の特性に応じて、任意に設定することができる。
【0034】
エネルギー線硬化型弾性層3の厚さは、熱剥離型粘着剤層4に含まれる熱膨張性微小球の凹凸の緩和、被加工物を切断する際の回転刃による振動防止等の観点から、3〜300μm程度、好ましくは10〜150μm程度、さらに好ましくは15〜100μm程度である。
【0035】
[熱剥離型粘着剤層]
熱剥離型粘着剤層4は、粘着性を付与するための粘着剤、及び熱膨張性を付与するための熱膨張性微小球を含有する。
熱剥離型粘着剤層4は、熱による熱膨張性微小球の発泡により、接着面積が減少して剥離が容易になる層である。熱膨張性微小球は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
熱膨張性微小球としては、公知の熱膨張性微小球から適宜選択することができる。マイクロカプセル化していない熱膨張性微小球では、良好な剥離性を安定して発現させることができない場合があるので、マイクロカプセル化されている熱膨張性微小球を好適に用いることができる。
そして、
図2の右の図に示す拡大図のように、
図1の加熱剥離型粘着シートも、熱剥離型粘着剤層4の表面は含有する熱膨張性微小球の形状を反映した凹凸を有することがなく平滑であることが望ましい。
【0036】
前記粘着性物質としては加熱時に熱膨張性微小球の発泡及び/又は膨張を許容し、拘束しない程度の弾性を有するものを使用する。このため、従来公知の感圧接着剤(粘着剤)等を使用することができる。感圧接着剤として、例えば、天然ゴムや各種の合成ゴム等のゴム系感圧接着剤;シリコーン系感圧接着剤;(メタ)アクリル酸アルキルエステルとこのエステルに対して共重合可能な他の不飽和単量体との共重合体等のアクリル系感圧接着剤(例えば、前記エネルギー線硬化型弾性層3の母剤として記載したアクリル系粘着剤など)等が例示される。また、熱剥離型粘着剤層4には、エネルギー線硬化型粘着剤を使用することもできる。その場合、エネルギー線照射後の動的弾性率が、熱膨張性微小球の膨張を開始する温度範囲において、せん断貯蔵弾性率1×10
5〜5×10
7Pa(周波数:1Hz、サンプル:厚さ1.5mmフィルム状)であると、良好な剥離性を得ることができる。
【0037】
熱膨張性微小球としては、例えば、イソブタン、プロパン、ペンタンなどの加熱により容易にガス化して膨張する物質を、弾性を有する殻内に内包させた微小球であればよい。前記殻は、通常、熱可塑性物質、熱溶融性物質、熱膨張により破裂する物質などで形成される。前記殻を形成する物質として、例えば、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホンなどが挙げられる。熱膨張性微小球は慣用の方法、例えば、コアセルベーション法、界面重合法などにより製造できる。熱膨張性微小球として、例えば、マツモトマイクロスフェア[F-100D、松本油脂製薬(株)製]などの市販品を利用することもできる。
【0038】
熱膨張性微小球の平均粒子径は、分散性や薄層形成性などの点から、一般に1〜80μm程度、好ましくは3〜50μm程度、より好ましくは5μm〜15μmである。また、熱膨張性微小球としては、加熱処理により粘着剤を含む熱剥離型粘着剤層の粘着力を効率よく低下させるため、体積膨張率が5倍以上、特に10倍以上となるまで破裂しない適度な強度を有するものが好ましい。なお、低い膨張率で破裂する熱膨張性微小球を用いた場合や、マイクロカプセル化されていない熱膨張剤を用いた場合には、熱剥離型粘着剤層4と被加工物との粘着面積が十分には低減されず、良好な剥離性が得られにくい。
【0039】
熱膨張性微小球の使用量は、その種類によっても異なるが、熱剥離型粘着剤層4を構成する粘着剤ベースポリマー100重量部に対して、例えば10〜200重量部、好ましくは20〜125重量部程度である。10〜200重量部であれば、加熱処理後には粘着力は十分に低下でき、かつ、熱剥離型粘着剤層4の凝集破壊や、エネルギー線硬化型弾性層3と支持体との界面破壊が生じることがない。
【0040】
熱剥離型粘着剤層4には、粘着性物質、熱膨張性微小球の他に、架橋剤(例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤など)、粘着付与剤(例えば、多官能性エポキシ化合物、または、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、無水化合物、ポリアミン、カルボキシル基含有ポリマー等)、可塑剤、顔料、充填剤、老化防止剤、界面活性剤、帯電防止剤などの適宜な添加剤を配合してもよい。
【0041】
熱剥離型粘着剤層4の厚さは、粘着シートの使用目的や加熱による粘着力の低減性などに応じて適宜に決定しうるが、被加工物の加工性を向上するためには、薄い方が好ましい。このため、熱剥離型粘着剤層4の厚さは、50μm以下、好ましくは25μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。熱剥離型粘着剤層4の厚さが50μm以下であれば、被加工物を保持するために十分な粘着力が得られる。さらに、電子部品を加工する際に押圧力やせん断力が該電子部品に加わることを通じて、熱剥離型粘着剤層4へもこれらの力が伝わることになるが、熱剥離型粘着剤層4の厚さが薄いので、この加わる力に抗して本発明の加熱剥離型粘着シートが該電子部品を確実に保持できる。
【0042】
なお、加熱処理時の熱剥離型粘着剤層4の凹凸変形に伴う被接着物との接着界面での微細な凝集破壊を防止するために、該熱剥離型粘着剤層4上にさらに粘着層を設けてもよい。
該粘着層の粘着物質としては、前述の熱剥離型粘着剤層4で記載した粘着剤を使用できる。該粘着層の厚さは、被加工物に対する粘着力の低減乃至消失の観点から、好ましくは0.1〜8μm、特に1〜5μmであり、熱膨張性粘着層4に準じた方法により形成することができる。
【0043】
[ゴム状有機弾性層]
熱剥離型粘着剤層4は直接、又はゴム状有機弾性層などの他の層を介して基材1上に設けられても良い。ゴム状有機弾性層は、加熱剥離型粘着シートを被着体に接着する際に、前記粘着シートの表面を被着体の表面形状に良好に追従させて、接着面積を大きくするという機能と、前記粘着シートを被着体から加熱剥離する際に、熱膨張性層の加熱膨張を高度に(精度よく)コントロールし、熱膨張性層を厚さ方向へ優先的に且つ均一に膨張させるという機能とを有する。
【0044】
前記合成ゴム又はゴム弾性を有する合成樹脂としては、例えば、ニトリル系、ジエン系、アクリル系などの合成ゴム;ポリオレフィン系、ポリエステル系などの熱可塑性エラストマー;エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリブタジエン、軟質ポリ塩化ビニルなどのゴム弾性を有する合成樹脂などが挙げられる。なお、ポリ塩化ビニルなどのように本質的には硬質系ポリマーであっても、可塑剤や柔軟剤等の配合剤との組み合わせによりゴム弾性が発現しうる。このような組成物も、前記ゴム状有機弾性層の構成材料として使用できる。また、後述の粘着層(又は、熱膨張性粘着層)を構成する粘着剤等の粘着性物質を、ゴム状有機弾性層の構成材料として使用することもできる。ゴム状有機弾性層の厚さは、一般的には500μm以下(例えば、1〜500μm)、好ましくは3〜300μm、さらに好ましくは5〜150μm程度である。
【0045】
[セパレータ]
セパレータ5は、基材フィルムの片面に必要により剥離剤層を形成してなるシートであり、本発明の加熱剥離型粘着シートの表面層を保護しておき、使用する前に露出させるために剥離されるシート、又は熱剥離型粘着剤層4を形成する際の土台となるシートでもある。
セパレータ5としては、例えば、シリコーン系樹脂、長鎖アルキルアクリレート系樹脂、フッ素系樹脂などで代表される剥離剤により表面コートしたプラスチックフィルムや紙等からなる基材、あるいはポリエチレンやポリプロピレンなどの無極性ポリマーからなる粘着性の小さい基材などを使用できる。
【0046】
セパレータ5の基材フィルムとしては公知のものを使用でき、例えばポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、及びポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム等から選択することが可能である。
使用できる剥離剤層は、フッ素化されたシリコーン樹脂系剥離剤、フッ素樹脂系剥離剤、シリコーン樹脂系剥離剤、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、長鎖アルキル化合物等の公知の剥離剤を、粘着剤層の樹脂に応じて選択して含有させてなる層である。
【0047】
[
図1にて示す加熱剥離型粘着シートの製造例]
図1は本発明の加熱剥離型粘着シートの例を示す概略断面図である。基材1の一方の面に、有機コーティング層2、エネルギー線硬化型弾性層3及びセパレータ6がこの順に積層されているとともに、基材1の他方の面に熱剥離型粘着剤層4及びセパレータ5がこの順に積層されている。
基材の片面に有機コーティング層2を設け、その上に上記のエネルギー線硬化型弾性層3を構成する硬化前の組成物を、任意の手段により均一に塗布する。そして、得られた基材の片面に形成された上記のエネルギー線硬化型弾性層3が反応性溶媒以外の溶媒を含有する場合には、一旦、塗布後に溶媒が乾燥により除去された状態とした後に、その上にセパレータ6を被覆して、基材1、有機コーティング層2及びエネルギー線硬化型粘着剤層3、セパレータ6を積層する。
別途、用意したセパレータ5上に塗布乾燥された熱剥離型粘着剤層4を形成する。その後、熱膨張性微小球が熱剥離性粘着剤層4表面から突出しない状態において、該熱剥離型粘着剤層4表面を基材1のエネルギー線硬化型粘着剤層が設けられていない側の面に接着させるようにして積層させる。なお、有機コーティング層2を予め基材の両面に設けるようにしても良い。
【0048】
以下に
図2に示す本発明の加熱剥離型粘着シートの構造について説明する。
図2に示す加熱剥離型粘着シートを構成する各層の材料は
図1に示す材料と同じである。
熱剥離型粘着剤層4の形成は、例えば、粘着剤、熱膨張性微小球、及び必要に応じて添加剤、溶媒等を含むコーティング液をエネルギー線硬化型弾性層3上に直接塗布し、セパレータ5を介して圧着する方法、適当なセパレータ(剥離紙など)5上に前記コーティング液を塗布して熱剥離型粘着剤層4を形成し、これを基材1上に任意に有機コーティング層を介して設けられたエネルギー線硬化型弾性層3上に圧着転写(移着)する方法など適宜な方法にて行うことができる。
【0049】
このとき、
図2の右の図に示す拡大図のように、この例の加熱剥離型粘着シートも、熱剥離型粘着剤層4の表面は含有する熱膨張性微小球の形状を反映した凹凸を有することがなく平滑であることが望ましい。
そのため、大きい熱膨張性微小球が存在することにより熱剥離型粘着剤層4の層の厚さ内に熱膨張性微小球が収まらない場合であっても、エネルギー線硬化型弾性層の層内にその熱膨張性微小球の凸部を嵌入させることにより、熱剥離型粘着層4の表面を平滑にすることが望ましい。
【0050】
セパレータ5は、上記のように、エネルギー線硬化型弾性層3上に熱剥離型粘着剤層4を圧着転写(移着)する際の仮支持体として、また、実用に供するまで熱剥離型粘着剤層4を保護する保護材として用いられる。
【0051】
[
図2に示す加熱剥離型粘着シートの製造例]
図2は本発明の加熱剥離型粘着シートの他の例を示す概略断面図である。この例では、基材1の一方の面に、有機コーティング層2、エネルギー線硬化型弾性層3及びセパレータ6がこの順に積層されているとともに、基材1の他方の面に有機コーティング層2、エネルギー線硬化型弾性層3、熱剥離型粘着剤層4及びセパレータ5がこの順に積層されている。この粘着シートは、基材1の他方の面に有機コーティング層2、エネルギー線硬化型弾性層3、熱剥離型粘着剤層4及びセパレータ5が設けられている点で、
図1の粘着シートとは別である。
上記加熱剥離型粘着シート1の製造方法の途中段階である基材1、有機コーティング層2及びエネルギー線硬化型粘着剤層3、セパレータ6を積層した直後において、該基材1の未だ有機コーティング層2を設けていない面に有機コーティング層2を設け、その上に上記のエネルギー線硬化型弾性層3を構成する硬化前の組成物を、任意の手段により均一に塗布する。そして、得られた基材の片面に形成された上記のエネルギー線硬化型弾性層3が反応性溶媒以外の溶媒を含有する場合には、そのような溶媒が乾燥により除去された状態であり、該エネルギー線硬化型弾性層3をエネルギー線による硬化前としておく。但し十分な流動性を備える限りにおいて、部分硬化させてもよい。
別途、用意したセパレータ5上に塗布乾燥された熱剥離型粘着剤層4を形成する。この熱剥離型粘着剤層4はその表面、つまりセパレータ5側ではない面は、熱剥離型粘着剤層4の厚さによっては、含有する熱膨張性微小球が該熱剥離型粘着剤層4に完全に埋め込まれることがないために、その熱膨張性微小球の一部が表面に突出して凸部を形成している。
【0052】
具体的には、上記の硬化前の該エネルギー線硬化型弾性層3の表面に、上記のセパレータ上に形成された該熱剥離型粘着剤層4をその凸部が形成された表面を合わせるようにして積層し、該基材及び該セパレータ側から、該エネルギー線硬化型弾性層3と該熱剥離型粘着剤層4を互いに押圧することによって、硬化されていない該エネルギー線硬化型弾性層3の内部に該凸部を埋め込むようにする。
この結果、セパレータ6、エネルギー線硬化型弾性層3、有機コーティング層2、基材1、有機コーティング層2、未硬化の該エネルギー線硬化型弾性層3、該熱剥離型粘着剤層4及びセパレータ5を、この順で積層してなるシートを得ることができる。
さらに、この未硬化の該エネルギー線硬化型弾性層3に対して、基材1側及び/又はセパレータ5側からエネルギー線を照射することによって未硬化の該エネルギー線硬化型弾性層3を硬化することによって、本発明の加熱剥離型粘着シートを得ることができる。
【0053】
なお、これらの加熱剥離型粘着シートの製造方法において、各層を積層する手順はこれらの順に限定されるものではなく、本発明の目的を達成する限り、任意の手段を採用することができる。そして、上記2種の加熱剥離型粘着シートを製造する場合において、各面への各層の形成をいずれの順によっても行うことができる。
【0054】
[加熱剥離型粘着シートの使用方法]
図3は本発明の
図1に示す加熱剥離型粘着シートを使用した被加工物7の製造方法の一例を示す概略工程図である。より詳細には、
図3は、
図1の加熱剥離型粘着シート(セパレータ5及び6を剥がした状態のもの)のエネルギー線硬化型弾性層3の表面に被加工物7を圧着して貼り合わせ、かつ、熱剥離型粘着剤層4を支持体10に貼り合わせて、加熱剥離型粘着シートと被加工物を支持体10に固定する。
そしてエネルギー線硬化型弾性層3として硬化後においても十分な接着力を示すものを使用した場合、エネルギー線8の照射によりエネルギー線硬化型弾性層3を硬化させた後、中央の図に示すように、切断線9に沿って所定寸法に切断して切断片とする。なお、エネルギー線硬化型弾性層3として硬化後において接着力が低下するものを使用した場合には、エネルギー線の照射は切断工程後となる。
次いで加熱処理により支持体10上の熱剥離型粘着剤層4中の熱膨張性微小球を膨張および発泡させて、加熱剥離型粘着シートを被加工物ごと支持体10から剥離する。
次いで、右の図に示すように切断された被加工物7をピックアップして、加熱剥離型粘着シートのエネルギー線硬化型弾性層3から剥離し分離する。
【0055】
図4は本発明の
図2に示す加熱剥離型粘着シートを使用した被加工物の製造方法の一例を示す概略工程図である。
使用する加熱剥離型粘着シートの層構成が異なるのみで、使用方法自体は上記の
図3による場合と変わらない。必要により有機コーティング層2上にエネルギー線硬化型弾性層3を介して、熱剥離型粘着剤層4が形成されているので、特に熱剥離性粘着剤層4の表面は熱膨張性微小球に由来する凹凸がなく、被加工物7を支持体10上により正確に固定することが可能となる。
【0056】
これらの加熱剥離型粘着シートの使用方法において、エネルギー線硬化型熱剥離性粘着シートの熱剥離型粘着剤層4と支持体10との圧着は、例えば、ゴムローラ、ラミネートロール、プレス装置などの適宜な押圧手段で加熱剥離型粘着シートを圧着処理する方式などにより行うことができる。なお、圧着処理の際、必要ならば、粘着性物質のタイプに応じて、熱膨張性微小球が膨張しない温度範囲で加熱したり、水や有機溶剤を塗布して粘着性物質を賦活させたりすることもできる。
【0057】
エネルギー線8としては可視光線や紫外線、電子線などを使用できる。エネルギー線8の照射は適宜な方法で行うことができる。ただし、エネルギー線8の照射熱により熱膨張性微小球が膨張を開始することがあるため、できるだけ短時間の照射にとどめるか、あるいは加熱剥離型粘着シートを風冷するなどして熱膨張性微小球が膨張を開始しない温度に保つことが望ましい。そして支持体10は熱剥離型粘着剤層4の膨張により、該熱剥離型粘着剤層4との接着力が低下する材料であれば良く、被加工物7の加工時に係る力等によってずれたり変形することがなく、必要により該エネルギー線が透過する材料からなり、例えばガラスや台座ウエハ等を好適に使用できる。
【0058】
被加工物7の切断はダイシング等の慣用の切断手段により行うことができ、例えば
図3に切断線9で示すように切断部が形成される。また加工として研削等も行い得る。
加熱条件は、被加工物7(又は切断された被加工物7)の表面状態や耐熱性、熱膨張性微小球の種類、粘着シートの耐熱性、被加工物7の熱容量などにより適宜設定できるが、一般的な条件は、温度350℃以下、処理時間30分以下であり、特に温度80〜200℃、処理時間1秒〜15分程度が好ましい。また、加熱方式としては、熱風加熱方式、熱板接触方式、赤外線加熱方式などが挙げられるが、特に限定されない。
【0059】
また、加熱剥離型粘着シートの基材1に伸縮性を有するものを使用した場合、伸張処理は例えば、シート類を二次元的に伸張させる際に用いる慣用の伸張手段を使用することにより行うことができる。
【0060】
これらの加熱剥離型粘着シートに共通する性質としては、エネルギー線硬化型粘着剤層を有機コーティング層を介して基材上に設けたので、加熱剥離型粘着シートの該エネルギー線硬化型粘着剤層上に設けた被加工物を加工後に、該被加工物をエネルギー線硬化型粘着剤層から剥離するときに、該エネルギー線硬化型粘着剤層が基材から剥がれて被加工物表面に糊残りを生じて汚染することがない。
これはエネルギー線硬化型粘着剤層が有機コーティング層によって基材上に強く接着することによって、被加工物を剥離する際にエネルギー線硬化型粘着剤層が凝集破壊を起こすことがないためである。
【0061】
さらに、上記
図4に示す加熱剥離型粘着シートによれば、加熱剥離型粘着シートの熱剥離型粘着剤層4は薄く形成可能であり、且つエネルギー線硬化型弾性層3の硬化後においても十分な接着力を有するものを使用した場合、切断工程の前にエネルギー線を照射することによりエネルギー線硬化型弾性層3を硬化させるため、切断工程時において切断刃による接着剤層の巻き上げや接着剤層等のぶれに伴うチッピング等を従来の熱膨張性粘着シートに比べて大幅に低減しつつ所定の寸法に切断できる。
さらに、熱剥離型粘着剤層4は熱膨張性微小球を含み、熱膨張性を有するので、切断工程後の加熱処理により、熱膨張性微小球が速やかに発泡又は膨張し、その結果、前記熱剥離型粘着剤層4が体積変化して表面に凹凸状の三次元構造が形成され、支持体10との接着面積ひいては接着強度が大幅に低下若しくは消失する。
その後、公知の手段により切断された被加工物がピックアップされる。
【0062】
図5に示す加熱剥離型粘着シートも
図1に示す加熱剥離型粘着シートと同じ構成であり、本発明の加熱剥離型粘着シートはダイシングのみならず、研削、研磨、エッチング、旋盤加工、樹脂封止等の他の加工にも使用することができる。
【0063】
図6にて、研削等の被加工物表面の加工方法を示す。
まず、加熱剥離型粘着シートの両面に設けられたセパレータを剥がし、エネルギー線硬化型弾性層側の面には被加工物を接着し、反対側の熱剥離型粘着剤層4側の面により被加工物を支持体10に固定して該被加工物表面を加工する。
その後加熱することにより熱剥離型粘着剤層4に含有された熱膨張性微小球を膨張させて支持体10から加熱剥離型粘着シート及び被加工物を剥がす。
さらにエネルギー線8の照射によりエネルギー線硬化型弾性層3を硬化させることにより、エネルギー線硬化型弾性層3の凝集力を増加させて被加工物7との接着力を低下させる。
次いで該被加工物7をエネルギー線硬化型弾性層3から剥がして加工された被加工物を得る。
【0064】
上記の方法の他に被加工物が折り曲げ可能なフィルム状物である場合には、支持体上に本発明の加熱剥離型粘着シートを介して被加工物を固定した後、該被加工物表面を目的とする任意の手段により処理を施し、その後該被加工物表面側又は支持体側からエネルギー線を照射することにより、該エネルギー線硬化型弾性層を硬化させて、被加工物を硬化された該エネルギー線硬化型弾性層から剥離することもできる。その場合には、被加工物の剥離後に加熱剥離型粘着シートの特に熱剥離型粘着剤層を加熱することによって、該支持体から加熱剥離型粘着シートを剥離する方法を採用することもできる。
【0065】
このように、剥離時のエネルギー線硬化型弾性層の剥離防止、エネルギー線照射によるエネルギー線硬化型弾性層3の硬化、および加熱処理による接着強度の著しい低下若しくは消失により、被加工物への糊残り発生防止、被加工物7の加工工程、加工された被加工物の剥離、回収工程における操作性及び作業性が大幅に改善され、生産効率も大きく向上できる。
【0066】
本発明のエネルギー線硬化型熱剥離性粘着シートは、被加工物を永久的に接着させる用途にも使用できるが、被加工物を所定期間接着すると共に、接着目的を達成した後には、その接着状態を解除することが要求若しくは望まれる用途にも適している。このような用途の具体例として、半導体ウエハやセラミック積層シートの固定材のほか、各種の電気装置、電子装置、ディスプレイ装置等の組立工程における部品搬送用、仮止め用等のキャリアテープ、仮止め材又は固定材、金属板、プラスチック板、ガラス板等の汚染損傷防止を目的とした表面保護材又はマスキング材などが挙げられる。特に、電子部品の製造工程において、小さな若しくは薄層の半導体チップや積層コンデンサチップなどの製造工程等に好適に使用できる。
【実施例】
【0067】
次に本発明を実施例に基づき更に詳細に説明する。なお本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0068】
有機コーティング層付の基材1の作製
基材として、東レ社製、片面コロナ処理済み、ルミラーS105(厚み50μm)のPETフィルムを用いた。この基材のコロナ処理面側に、有機コーティング層を、乾燥膜厚が1〜2μmとなるように、グラビアコーターで塗布し、乾燥し、有機コーティング層付の基材1を得た。この有機コーティング層には、薄青色印刷インクNB300(大日精化社)を用いた。なお、NB300にはバインダー樹脂としてポリウレタン系酢酸ビニル−塩化ビニルコポリマーが含まれており、IRによってウレタンと考えられる強度ピークを確認した。
【0069】
有機コーティング層付の基材2の作製
基材として、東レ社製、片面コロナ処理済み、ルミラーS105(厚み50μm)のPETフィルムを用いた。この基材のコロナ処理面側に、有機コーティング層を、乾燥膜厚が1〜2μmとなるように、グラビアコーターで塗布し、乾燥し、有機コーティング層付の基材2を得た。この有機コーティング層には、薄青色の色素を含まない印刷インクNB300(大日精化社)を用いた。なお、NB300にはバインダー樹脂としてポリウレタン系酢酸ビニル−塩化ビニルコポリマーが含まれており、IRによってウレタンと考えられる強度ピークを確認した。
【0070】
有機コーティング層付の基材3の作製
基材として、東レ社製、片面コロナ処理済み、ルミラーS105(厚み50μm)のPETフィルムを用いた。この基材のコロナ処理面側に、有機コーティング層を、乾燥膜厚が1〜2μmとなるように、グラビアコーターで塗布し、乾燥し、有機コーティング層付の基材3を得た。この有機コーティング層には、ポリウレタン系プライマー剤であるアデカボンタイターU500(ADEKA製)71重量部とイソシアネート樹脂であるコロネートHL(日本ポリウレタン工業製)28重量部の酢酸エチル溶液を用いた。
【0071】
有機コーティング層付の基材4の作製
アクリル系モノマーとして、アクリル酸t−ブチル50.0部、アクリル酸30.0部、アクリル酸ブチル20.0部と、多官能モノマーとしてトリメチロールプロパントリアクリレート1.0部と、光重合開始剤として、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(商品名「イルガキュア2959」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.1部と、ポリオールとして、ポリオキシテトラメチレングリコール(分子量650、三菱化学(株)製)73.4部と、ウレタン反応触媒として、ジブチル錫ジラウレート0.05部とを投入し、攪拌しながら、キシリレンジイソシアネート26.6部を滴下し、65℃で2時間反応させて、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を得た。ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、NCO/OH(当量比)=1.25であった。
得られたウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、商品名「S−10」)上に、硬化後の厚みが3〜4μmになるように塗布した。この上に、剥離処理したPETフィルム(厚み38μm)を重ねて被覆し、この被覆したPETフィルム面に、高圧水銀ランプを用いて紫外線(照度163mW/cm
2、光量2100mJ/cm
2)を照射して硬化させて、ポリエチレンテレフタレート/アクリル・ウレタン積層シートを得た。
【0072】
有機コーティング層付の基材5の作製
基材として、PETフィルムを準備した。東レ社製、片面コロナ処理済み、ルミラーS105(厚み38μm)をこのPETフィルムとして用いた。この剛直フィルム層のコロナ処理面側に、有機コーティング層を、乾燥膜厚が1〜2μmとなるように、グラビアコーターで塗布し、乾燥し、有機コーティング層付の基材5を得た。この有機コーティング層には、青色印刷インクCVL−PR(DICグラフィックス社製)を用いた。CVL−PRにはバインダー樹脂として水酸基含有酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体が含まれており、IRではウレタンと考えられる強度ピークは確認できなかった。
【0073】
有機コーティング層付の基材6の作製
基材として、PETフィルムを準備した。東レ社製、片面コロナ処理済み、ルミラーS105(厚み50μm)をこのPETフィルムとして用いた。この基材のコロナ処理面側に、有機コーティング層を、乾燥膜厚が1〜2μmとなるように、グラビアコーターで塗布し、乾燥し、有機コーティング層付の基材6を得た。この有機コーティング層には、非晶性飽和共重合ポリエステル樹脂(商品名「バイロン200」、東洋紡績(株)製)を用いた。
【0074】
エネルギー線硬化型粘着剤層1の作製
2−エチルヘキシルアクリレート:モルホリルアクリレート:2−ヒドロキシエチルアクリレート=75:25:20(モル比)混合物100重量部に重合開始剤ベンジルパーオキサイド0.2重量部を加えたトルエン溶液から共重合してアクリル系重合体(重量平均分子量70万)を得た。得られた前記アクリル系重合体に2−ヒドロキシエチルアクリレート由来の水酸基の50モル%のメタクリロイルオキシエチルイソシアナート(2−イソシアナトエチルメタクリレート)と前記アクリル系重合体100重量部に対して、付加反応触媒ジブチル錫ジラウレート0.03重量部とを配合し、空気雰囲気下、50℃で24時間反応させて、側鎖にメタクリレート基を有するアクリル系重合体を製造した。得られたアクリル系重合体100重量部に対して、3官能アクリル系光重合性モノマー(トリメチロールプロパントリアクリレート(商品名:アロニクスM320、東亜合成(株)製))15重量部、ラジカル系光重合開始剤(イルガキュア651、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、チバガイギー社製)1重量部、イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業(株)製、 商品名コロネートL)1重量部を加え、混合物を得た。
得られた混合物を、ダイコーターを用いて、剥離処理済みPETフィルムMRF38(三菱ポリエステル社製)の剥離処理面に、乾燥膜厚が30μmとなるように塗布し、エネルギー線硬化型粘着剤層1を得た。なお、剥離処理済みPETフィルムMRF38は、セパレータとして用いた。
【0075】
エネルギー線硬化型粘着剤層2の作製
エチルアクリレート−2−エチルヘキシルアクリレート−2−ヒドロキシエチルアクリレート (80部-20部-5部)からなる共重合体ポリマー100部に対し、6官能アクリル系光重合性モノマー(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名:A−DPH、新中村化学(株)製))70重量部、イルガキュア651を1重量部、コロネートLを0.8重量部を加え、混合物を得た。得られた混合物を、ダイコーターを用いて、剥離処理済みPETフィルムMRF38(三菱ポリエステル社製)の剥離処理面に、乾燥膜厚が30μmとなるように塗布し、エネルギー線硬化型粘着剤層2を得た。
【0076】
熱剥離型粘着剤層の作製
エチルアクリレート−2−エチルヘキシルアクリレート−2−ヒドロキシエチルアクリレート (80部-20部-5部)からなる共重合体ポリマー100部に対し、「コロネートL」(架橋剤、日本ポリウレタン工業社製)を1部、170℃発泡膨張タイプの熱膨張性微小球「マツモトマイクロスフェアF−100D」(熱膨張性微小球、松本油脂製)30部を配合して混合液を調整した。この混合液を剥離処理済みPETフィルムMRF38(三菱ポリエステル社製)の剥離処理面に上に塗工し乾燥させ50μmの熱剥離型粘着剤層を得た。
【0077】
実施例1
有機コーティング層付の基材1の有機コーティング層側に上記エネルギー線硬化型粘着剤層1を貼り合せ、次いで基材の他方の面上に上記熱剥離型粘着剤層を貼り合せて加熱剥離型粘着シートを作製した。
実施例2
有機コーティング層付の基材2の有機コーティング層側に上記エネルギー線硬化型粘着剤層1を貼り合せ、次いで基材の他方の面上に上記熱剥離型粘着剤層を貼り合せて加熱剥離型粘着シートを作製した。
実施例3
有機コーティング層付の基材3の有機コーティング層側に上記エネルギー線硬化型粘着剤層1を貼り合せ、次いで基材の他方の面上に上記熱剥離型粘着剤層を貼り合せて加熱剥離型粘着シートを作製した。
実施例4
有機コーティング層付の基材4の有機コーティング層側に上記エネルギー線硬化型粘着剤層1を貼り合せ、次いで基材の他方の面上に上記熱剥離型粘着剤層を貼り合せて加熱剥離型粘着シートを作製した。
実施例5
有機コーティング層付の基材1の有機コーティング層側に上記エネルギー線硬化型粘着剤層2を貼り合せ、次いで基材の他方の面上に上記熱剥離型粘着剤層を貼り合せて加熱剥離型粘着シートを作製した。
実施例6
有機コーティング層付の基材2の有機コーティング層側に上記エネルギー線硬化型粘着剤層2を貼り合せ、次いで基材の他方の面上に上記熱剥離型粘着剤層を貼り合せて加熱剥離型粘着シートを作製した。
【0078】
比較例1
東レ社製PETフィルム、ルミラーS10(厚み50μm)に上記エネルギー線硬化型粘着剤層1を貼り合せ、次いで基材の他方の面上に上記熱剥離型粘着剤層を貼り合せて加熱剥離型粘着シートを作製した。
比較例2
東レ社製、片面コロナ処理済み、ルミラーS105(厚み50μm)に上記エネルギー線硬化型粘着剤層1を貼り合せ、次いで基材の他方の面上に上記熱剥離型粘着剤層を貼り合せて加熱剥離型粘着シートを作製した。
比較例3
東レ社製PETフィルム、ルミラーS10(厚み50μm)に上記エネルギー線硬化型粘着剤層2を貼り合せ、次いで基材の他方の面上に上記熱剥離型粘着剤層を貼り合せて加熱剥離型粘着シートを作製した。
比較例4
東レ社製、片面コロナ処理済み、ルミラーS105(厚み50μm)に上記エネルギー線硬化型粘着剤層2を貼り合せ、次いで基材の他方の面上に上記熱剥離型粘着剤層を貼り合せて加熱剥離型粘着シートを作製した。
参考例1
有機コーティング層付の基材5の有機コーティング層側に上記エネルギー線硬化型粘着剤層1を貼り合せ、次いで基材の他方の面上に上記熱剥離型粘着剤層を貼り合せて加熱剥離型粘着シートを作製した。
参考例2
有機コーティング層付の基材6の有機コーティング層側に上記エネルギー線硬化型粘着剤層1を貼り合せ、次いで基材の他方の面上に上記熱剥離型粘着剤層を貼り合せて加熱剥離型粘着シートを作製した。
【0079】
上記加熱剥離型粘着シートの熱剥離型粘着剤表面にウエハA(厚さ725μm、6インチ:支持体)を、エネルギー線硬化型粘着剤表面に縦10mm、横10mm間隔で賽の目状に5μmの切り込みを入れたウエハB(厚さ725μm、6インチ:被加工物)を貼り合せた。次いでウエハBの裏面を100μmまで機械研削加工した。その後、日東精機社製UV照射機NEL UM810(高圧水銀灯光源、20mW/cm
2)を用いて300mJ/cm
2の紫外線照射を行い、エネルギー線硬化粘着剤層を硬化させた。次いで170℃まで昇温させることにより熱膨張させウエハAを回収した後、ウエハB上に残った加熱剥離型粘着シートを1m/分の速度でピールにより剥離した。
【0080】
糊残り性評価
剥離後のウエハ表面における賽の目にした100区画中の糊残りの発生した数を光学顕微鏡により観察した。
【0081】
上記の各実施例及び比較例とその結果を以下の表1に示す。
【表1】
【0082】
実施例1〜6に示す例は、いずれも有機コーティング層を設けてなる本発明に沿った例である。これらの例によれば、糊残り(糊剥がれ)個数が0個又は30個と極めて優れた結果となった。
しかしながら、有機コーティング層を設けなかった比較例1〜4によると糊残り(糊剥がれ)が多く発生しており、被加工物を剥離した後に該被加工物表面が汚染される結果になった。
また、参考例1及び2に示すように、有機コーティング層を設けるものの、ウレタン結合を有しない共重合体をバインダーとした場合には、33個又は28個の糊剥がれを生じた。参考例1及び2によれば、明らかに有機コーティング層を設けない場合よりは糊剥がれ個数が少なく、その分、被加工物表面の汚染の程度が小さいことがわかる。