(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
セルロース繊維と水溶性セルロース誘導体を含む水懸濁液に機械的剪断力を与えて前記セルロース繊維をフィブリル化し、得られた水懸濁液とゴムラテックスとを混合し、その混合液を乾燥させるゴム/セルロースマスターバッチの製造方法であって、
前記フィブリル化されたセルロース繊維の量が前記ゴムラテックス中のゴム成分100質量部に対して1〜50質量部である
ことを特徴とするゴム/セルロースマスターバッチの製造方法。
前記水溶性セルロース誘導体が、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース及びヒドロキシアルキルアルキルセルロースからなる群から選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載のゴム/セルロースマスターバッチの製造方法。
【背景技術】
【0002】
セルロースは樹脂やゴムに対する補強効果が知られており、例えば、下記特許文献1には、タイヤ用ゴム組成物の高剛性化を目的として、微粉末セルロース繊維を補強剤として用いることが提案されている。しかしながら、このようなセルロース粉末は繊維が絡み合った粒子状であり、セルロースの微細繊維形状を活かした高い補強効果を得るには改善の余地がある。
【0003】
また、下記特許文献2には、ゴム組成物の補強性を高めるためにセルロースなどの短繊維をフィブリル化するとともに、そのゴム中への分散性を向上するために、フィブリル化短繊維の水分散液とゴムラテックスとを攪拌混合し、その混合液から水を除去することでゴム/短繊維マスターバッチを得ることが開示されている。しかしながら、フィブリル化されたセルロース繊維は凝集しやすく、ゴム成分中に均一に分散させるのは困難であり、微細繊維形状を活かした高い補強効果を得るには改善の余地がある。
【0004】
下記特許文献3には、ミクロフィブリルセルロースとゴムとの相溶性を向上するために、アセチル化やアルキルエステル化等の化学変性を行った化学変性ミクロフィブリルセルロースを、ゴム組成物に配合することが開示されている。しかしながら、ミクロフィブリルセルロースの高分散化を目的として水溶性セルロース誘導体を用いることは開示されていない。
【0005】
下記特許文献4には、ミクロフィブリルセルロースとミネラル粒子を組み合わせた乾燥物を、ゴム組成物に配合することが開示されており、また、該ミクロフィブリルに添加剤としてカルボキシ化セルロースを組み合わせ可能なことが開示されている。また、この文献には、該乾燥物をポリマーの補強充填剤として用いる際に、ポリマーとしてのラテックスに該乾燥物を混合することが開示されている。しかしながら、水溶性セルロース誘導体の存在下でセルロース繊維をフィブリル化することは開示されていない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0011】
本実施形態に係るゴム/セルロースマスターバッチの製造方法においては、セルロース繊維と水溶性セルロース誘導体を含む水懸濁液に機械的剪断力を与える解繊処理により該セルロース繊維を微細化、即ちフィブリル化する。これにより得られたフィブリル化セルロース繊維と水溶性セルロース誘導体を含む水懸濁液において、水溶性セルロース誘導体は、フィブリル化セルロース繊維の表面に水素結合や疎水性相互作用等により吸着される。特に、セルロース分子骨格を有する水溶性セルロース誘導体は、フィブリル化セルロース繊維に対して効果的に吸着するものと考えられる。このようにして吸着した水溶性セルロース誘導体は、保護コロイドとして働くことにより、フィブリル化セルロース繊維同士の水素結合による凝集を阻害し、よって、フィブリル化セルロース繊維が懸濁液中で高分散化させるものと考えられる。特に、水溶性セルロース誘導体の存在下でフィブリル化(即ち、解繊処理)することにより、水溶性セルロース誘導体をフィブリル化セルロース繊維表面により効果的に吸着させて、フィブリル化セルロース繊維の高分散化効果を発揮することができる。
【0012】
本実施形態において、解繊処理対象となる上記セルロース繊維としては、木材やもみ殻、藁、竹などの各種天然植物繊維から調製されるセルロース繊維(パルプ)を用いることができる。好ましくは、天然植物繊維を水酸化ナトリウム等の薬品やオゾン等により化学的に処理することで得られた粉末状セルロース繊維を用いることである。かかる粉末状セルロース繊維の平均粒子径は特に限定されないが、100μm以下であることが好ましく、より好ましくは1〜50μmである。ここで、平均粒子径は、レーザ回折・散乱法により求められる平均粒子径(50%積算値の粒径)である。
【0013】
上記水溶性セルロース誘導体としては、セルロース分子の水酸基の水素原子を適度に他の基に置換することで、その水酸基同士の水素結合が起こらないようにした水溶性のセルロースエーテルを用いることができる。より詳細には、下記式(1)で表されるセルロース誘導体であり、式中の3つのRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基、又は炭素数1〜6のカルボキシアルキル基であり、元の3つの水素原子がこれらのアルキル基、ヒドロキシアルキル基及び/又はカルボキシルアルキル基で適度に置換されている。なお、nは1以上の整数である。
【化1】
【0014】
水溶性セルロース誘導体の具体例としては、メチルセルロース(式(1)中、R=H又はCH
3)、エチルセルロース(式(1)中、R=H又はCH
2CH
3)などのアルキルセルロース; ヒドロキシエチルセルロース(式(1)中、R=H又は(CH
2)
2OH)などのヒドロキシアルキルセルロース; ヒドロキシメチルメチルセルロース(式(1)中、R=H、CH
3又はCH
2OH)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(式(1)中、R=H、CH
3又は(CH
2)
2OH)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(式(1)中、R=H、CH
3又はCH
2CHOHCH
3)、ヒドロキシエチルエチルセルロース(式(1)中、R=H、CH
2CH
3又は(CH
2)
2OH)などのヒドロキシアルキルアルキルセルロース; カルボキシメチルセルロース(式(1)中、R=H、CH
2COOH)などのカルボキシアルキルセルロース等が挙げられ、これらはいずれか1種単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、フィブリル化セルロース繊維に対する吸着性を高める上で、疎水性官能基を有する水溶性セルロース誘導体として、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース及びヒドロキシアルキルアルキルセルロースからなる群から選択された少なくとも1種が好ましく、より好ましくは、アルキルセルロース及びヒドロキシアルキルアルキルセルロースからなる群から選択された少なくとも1種である。
【0015】
水溶性セルロース誘導体のエーテル化度(置換度)は0.1〜3.0の範囲、通常は0.1〜2.5である。特に限定するものではないが、エーテル化度は、0.2〜2.0の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.5の範囲である。なお、エーテル化度とは、無水グルコース1単位当たりのエーテル置換基数である。
【0016】
解繊処理に用いる水懸濁液は、上記のセルロース繊維と水溶性セルロース誘導体を含有するものであり、即ち、セルロース繊維が水中に分散してなるスラリーである。これは、セルロース繊維と水溶性セルロース誘導体を水に混合攪拌することにより調製することができ、水溶性セルロース誘導体は水中に溶解して該水懸濁液中でセルロース繊維表面に水素結合や疎水性相互作用等により吸着される。該水懸濁液中におけるセルロース繊維の濃度は特に限定されないが、0.5〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜20質量%である。また、水溶性セルロース誘導体は、該セルロース繊維に対して0.1〜50質量%の範囲で添加されることが好ましく、すなわち、セルロース繊維100質量部に対する水溶性セルロース誘導体の量が0.1〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜25質量部であり、更に好ましくは1〜10質量部である。
【0017】
該水懸濁液に機械的剪断力を与える解繊処理としては、特に限定されず、石臼法(別称:ディスクミル、グラインダー)による磨砕処理の他、高圧ホモジナイザー、ジェットミル、ボールミル等が挙げられる。ここで、石臼法では、複数枚の砥粒板を対向させて配置した擦り合せ部に、上記水懸濁液を通過させることにより、セルロース繊維が微細化(即ち、フィブリル化)される。このようにして解繊処理した水懸濁液においては、セルロース繊維がフィブリル化(ミクロフィブリル化)された状態で水中に分散するとともに、水溶性セルロース誘導体がフィブリル化セルロース繊維表面に水素結合や疎水性相互作用等によって吸着され、保護コロイドとして働くことでフィブリル化セルロース繊維を高分散化させる。
【0018】
フィブリル化セルロース繊維の直径(即ち、繊維径)は、特に限定されないが、平均繊維径が0.003〜10μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.01〜1μmである。また、フィブリル化セルロース繊維の長さ(即ち、繊維長)も、特に限定されないが、平均繊維長が1〜1000μmの範囲内であることが好ましい。ここで、平均繊維径は、走査型電子顕微鏡観察(SEM)像より、フィブリル化セルロース繊維を10個無作為に抽出し、短径を測定してその相加平均を平均繊維径とする。平均繊維長は、カジャーニ(KAJAANI)社の繊維長測定機(FS−200)を用い、JIS P8121により測定される。
【0019】
本実施形態に係るゴム/セルロースマスターバッチの製造方法においては、上記のようにして解繊処理した水懸濁液と、ゴムラテックスと、を混合し、その混合液を乾燥させる。このように水溶性セルロース誘導体の吸着により物理的に表面修飾されたフィブリル化セルロース繊維は、更にゴムラテックスと混合され、乾燥されるが、水溶性セルロース誘導体の存在により、ゴム成分への分散性及びゴム成分との密着性が高まるものと考えられ、その結果、高い補強効果が発揮される。
【0020】
上記ゴムラテックスとしては、乳化重合法により合成された合成ゴムラテックスの他、天然ゴムラテックス(例えば、フィールドラテックス、濃縮ラテックス等)や、溶液重合法により合成されたゴムを水中に乳化分散させたラテックス等、各種のゴムラテックスを用いることができる。ラテックス中におけるゴム成分(ゴムポリマー)の含有率は、特に限定されないが、一般には10〜70質量%のものを用いることができる。該ゴム成分として、具体的には、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)などの各種ジエン系ゴムが挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても2種以上併用してもよい。好ましくは、NR、IR、SBR、BR又はこれらの2種以上のブレンドゴムを用いることである。
【0021】
フィブリル化セルロース繊維及び水溶性セルロース誘導体を含む水懸濁液とゴムラテックスとの混合方法は、特に限定されず、例えば、ホモジナイザー、プロペラ式攪拌装置、ロータリー式攪拌装置などの公知の混合機を用いて行うことができる。
【0022】
このようにして得られた混合液を乾燥させてゴムマスターバッチを得る手法としては、特に限定されず、噴霧乾燥、自然乾燥、オーブン乾燥、凍結乾燥などの一般的方法により混合液から水を除去すればよい。好ましくは、噴霧乾燥することであり、フィブリル化セルロース繊維の表面に水溶性セルロース誘導体が良好に吸着した状態でゴム/セルロースマスターバッチを調製することができ、フィブリル化セルロース繊維のゴムへの分散性、密着性をより向上することができる。噴霧乾燥は、公知のスプレードライ装置を用いて行うことができる。噴霧乾燥方式としては、ノズル式、ディスク式等を挙げることができるが、ノズル式の噴霧乾燥機が好ましい。乾燥温度としては、100℃以上であることが好ましく、より好ましくは120℃以上である。乾燥温度の上限は、特に限定されないが、通常は200℃以下である。
【0023】
このようにして得られる本実施形態のゴム/セルロースマスターバッチにおいて、フィブリル化セルロース繊維とゴム成分との混合比は特に限定されないが、ゴム成分(固形分)100質量部に対して、フィブリル化セルロース繊維が0.5〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜50質量部であり、更に好ましくは5〜30質量部である。このような配合量とすることにより、フィブリル化セルロース繊維による優れた補強効果をより効果的に発揮することができる。
【0024】
また、該ゴム/セルロースマスターバッチにおいて、水溶性セルロース誘導体の量は、フィブリル化セルロース繊維100質量部に対して0.1〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜25質量部であり、更に好ましくは1〜10質量部である。このような配合量とすることにより、低発熱性の悪化を抑えながら剛性を高めることができる。
【0025】
本実施形態に係るゴム組成物は、該ゴム/セルロースマスターバッチ(以下、単にマスターバッチということがある。)を含むものである。上記のように該マスターバッチにおいて、フィブリル化セルロース繊維はその繊維表面に水溶性セルロース誘導体が吸着しており、すなわち、水溶性セルロース誘導体で表面処理されたフィブリル化セルロース繊維を含むものである。そのため、該ゴム組成物は、水溶性セルロース誘導体で表面処理されたフィブリル化セルロース繊維を含有する。
【0026】
該ゴム組成物において、ゴム成分は、該マスターバッチ由来のゴムポリマーのみからなるものであってもよいが、該マスターバッチから配合されるものとは別に、通常の天然ゴムやジエン系合成ゴム(例えば、上記のIR、BR、SBR、CR、NBR、IIR等)などの各種ゴムポリマーのいずれか1種以上を含むものであってもよい。ゴム組成物中のゴム成分全体に対する上記マスターバッチ由来のゴム成分は30質量%以上であることが好ましく、より好ましくは50質量%以上である。
【0027】
また、ゴム組成物中における上記フィブリル化セルロース繊維の含有量は、特に限定されず、ゴム組成物の用途に応じて要求される補強性を発揮するように適宜設定すればよい。好ましくは、ゴム組成物中に含まれる全ゴム成分100質量部に対して、フィブリル化セルロース繊維の含有量が0.1〜50質量部であり、より好ましくは1〜40質量部、更に好ましくは5〜30質量部である。
【0028】
該ゴム組成物には、シリカやカーボンブラック等の補強性充填剤を、ゴム混練り時に目的に応じて適宜追加で添加することができる。シリカとしては、湿式シリカ、乾式シリカ等が挙げられるが、好ましくは湿式シリカである。シリカの比表面積は特に限定されないが、窒素吸着比表面積が100〜300m
2/gであることが好ましく、より好ましくは150〜250m
2/gである。ここで、窒素吸着比表面積は、ISO 5794に記載のBET法に準拠し測定される。また、カーボンブラックとしては、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF等の各種グレードのものを用途に応じて用いることができる。これらのシリカ及び/又はカーボンブラックの配合量は、特に限定されないが、ゴム成分100質量部に対して20〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは30〜80質量部である。
【0029】
該ゴム組成物には、また、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、亜鉛華、ステアリン酸、樹脂、加硫剤、加硫促進剤など、ゴム工業において一般に使用される各種添加剤を配合することができる。上記加硫剤としては、硫黄、硫黄含有化合物等が挙げられ、特に限定するものではないが、その配合量はゴム組成物中の全ゴム成分100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。また、加硫促進剤の配合量としては、ゴム組成物中の全ゴム成分100質量部に対して0.1〜7質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。
【0030】
該ゴム組成物は、通常に用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、上記マスターバッチに添加剤を加えて、常法に従い混練することにより作製することができる。より詳細には、第1混合段階(NP)で、上記マスターバッチと、任意に他のゴム成分と、加硫剤や加硫促進剤などの加硫系添加剤を除く薬品とを、混練し、その後の第2混合段階(FN)で、上記で得られた混練物に加硫系添加剤を添加し混合することにより、ゴム組成物を調製することができる。
【0031】
このようにして得られるゴム組成物は、常法に従い例えば140〜200℃で加硫成形することにより、例えば、トレッドやサイドウォール、ビードフィラー、リムストリップ等のタイヤ、コンベアベルト、防振ゴムなどの各種用途に用いることができる。好ましくは、該ゴム組成物は、低発熱性の悪化を抑えながら、補強性を高めることができるので、空気入りタイヤのゴム部材として用いることであり、タイヤに要求される補強性と低燃費性のバランスを向上することができる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
<マスターバッチの調製>
[実施例1]
セルロース繊維として微粉末セルロース(日本製紙ケミカル株式会社製「KCフロックW−400G」)を用い、水溶性セルロース誘導体としてメチルセルロース(和光純薬工業株式会社製「メチルセルロース1500cP」、エーテル化度:0.78〜0.99)を用いた。セルロース繊維20質量部と水溶性セルロース誘導体0.5質量部を水980質量部と混合攪拌して、水懸濁液(スラリー)を調製し、得られた水懸濁液に対して石臼法による磨砕処理を行った。磨砕処理は、増幸産業株式会社製「スーパーマスコロイダーMKCA6−2」(砥粒板:MKG、砥粒の粒度:120番)を用いて、砥粒板のクリアランス:0μm(接触運転)、砥粒板の回転数:1500rpmに設定し、パス回数:5回として、水懸濁液を装置の摺り合わせ部に通過させることにより行った。これにより、フィブリル化セルロース繊維(MFC)とメチルセルロース(MC)を含む水懸濁液を得た。磨砕処理後のフィブリル化セルロース繊維の平均繊維径は15nmであった。
【0034】
磨砕処理後の水懸濁液と、スチレンブタジエンゴムラテックス(日本ゼオン株式会社製「SBラテックス Nipol LX110」、固形分濃度=40.5質量%)を、ゴム成分(SBR)100質量部に対してフィブリル化セルロース繊維(MFC)が20質量部となるように、ホモジナイザーを用いて攪拌混合し、得られた混合液を、スプレードライ装置(ヤマト科学株式会社製「スプレードライヤーADL311S−A」)にて、乾燥温度(ノズル温度)=160℃で噴霧乾燥することにより、ゴム/セルロースマスターバッチAを得た。
【0035】
[実施例2]
セルロース繊維と水溶性セルロース誘導体を混合する際に、セルロース繊維20質量部と水溶性セルロース誘導体1質量部を水980質量部と混合し、その他は実施例1と同様にしてゴム/セルロースマスターバッチBを得た。磨砕処理後のフィブリル化セルロース繊維の平均繊維径は12nmであった。
【0036】
[実施例3]
セルロース繊維と水溶性セルロース誘導体を混合する際に、セルロース繊維20質量部と水溶性セルロース誘導体5質量部を水980質量部と混合し、その他は実施例1と同様にしてゴム/セルロースマスターバッチCを得た。磨砕処理後のフィブリル化セルロース繊維の平均繊維径は15nmであった。
【0037】
[実施例4]
水溶性セルロース誘導体として、メチルセルロースの代わりに、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、信越化学工業株式会社製「メトローズ65SH」、エーテル化度:1.8)を用い、その他は実施例1と同様にしてゴム/セルロースマスターバッチDを得た。磨砕処理後のフィブリル化セルロース繊維の平均繊維径は18nmであった。
【0038】
[比較例1]
微粉末セルロース(日本製紙ケミカル株式会社製「KCフロックW−400G」)20質量部を水980質量部に加え攪拌して水懸濁液(スラリー)を調製し、得られた水懸濁液に対して実施例1と同様の磨砕処理を行うことで、フィブリル化セルロース繊維(MFC)を含む水懸濁液を得た。磨砕処理後のフィブリル化セルロース繊維の平均繊維径は20nmであった。得られた水懸濁液と、スチレンブタジエンゴムラテックス(日本ゼオン株式会社製「SBラテックス Nipol LX110」、固形分濃度=40.5質量%)を、ゴム成分(SBR)100質量部に対してフィブリル化セルロース繊維(MFC)が20質量部となるように、ホモジナイザーを用いて攪拌混合し、得られた混合液を、実施例1と同様に噴霧乾燥することでゴム/セルロースマスターバッチEを得た。
【0039】
[比較例2]
水溶性セルロース誘導体の代わりに、水溶性ポリマーとしてポリエチレンオキシド(PEO、和光純薬工業株式会社製「ポリエチレンオキシド200000」)を用い、その他は実施例1と同様にしてゴム/セルロースマスターバッチFを得た。磨砕処理後のフィブリル化セルロース繊維の平均繊維径は18nmであった。
【0040】
[比較例3]
比較例1と同様に磨砕処理を行った後、得られた水懸濁液に対し、メチルセルロース(和光純薬工業株式会社製「メチルセルロース1500cP」)を、その配合量がフィブリル化セルロース繊維20質量部に対して1質量部となるように添加し、混合攪拌した。その後、実施例1と同様に、スチレンブタジエンゴムラテックスと混合し、更に噴霧乾燥して、ゴム/セルロースマスターバッチGを得た。
【0041】
<ゴム組成物の調製及び評価>
下記表1に示す配合(質量部)に従い、まず、第1混合段階で、硫黄と加硫促進剤を除く配合成分について、ラボミキサー(ラボプラストミル)を用いて5分間混練りし、次いで、得られた混練物に、最終混合段階で、加硫剤である硫黄と加硫促進剤を添加し1分間混合することにより、ゴム組成物を得た。表1中の各成分の詳細は、以下の通りである。
【0042】
・SBR:日本ゼオン株式会社製「SBラテックス Nipol LX110」をそのまま噴霧乾燥して得られたスチレンブタジエンゴム
・シリカ:デグサ社製「Ultrasil VN3」、BET比表面積=175m
2/g
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製「亜鉛華3号」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS−20」
・シランカップリング剤:デグサ社製「Si75」
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「粉末硫黄」
・加硫促進剤CZ:住友化学(株)製「ソクシノールCZ」
・加硫促進剤D:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーD」
【0043】
得られた各ゴム組成物を所定の形状に成形後、モールド中で160℃×30分間にて加硫することにより、試験片を作製した。得られた試験片を用いて、補強性の指標としての破断強度TBと、破断時伸びEBと、複素弾性率E
*と、低発熱性の指標としての損失係数tanδを測定した。測定方法は以下の通りである。
【0044】
・TB、EB:JIS K6251に準じた引張り試験(ダンベル状3号形)により、破断強度および破断時の伸びを測定し、比較例4の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど、破断強度および破断時伸びが大きいことを示す。
【0045】
・E
*、tanδ:JIS K6394に準じて、温度23℃、周波数10Hz、動歪み2%、静歪み5%の条件で、粘弾性測定試験を行い、複素弾性率E
*および損失係数tanδを求めて、それぞれ比較例4の値を100とした指数で表示した。E
*指数が大きいほど、補強性が高く、高剛性化効果に優れることを示し、また、tanδ指数が低いほど、エネルギー損失が小さく、従って発熱しにくく、低発熱性(低燃費性)に優れることを示す。
【0046】
【表1】
【0047】
結果は表1に示す通りであり、比較例4では、フィブリル化セルロース繊維を含むマスターバッチを配合することにより、比較例6に対して剛性が高く、低発熱性も改良されていた。実施例5〜8では、水溶性セルロース誘導体で表面処理されたフィブリル化セルロース繊維を含むマスターバッチを配合したことにより、比較例4に対して、更に高剛性化が図られ、機械特性にも優れるとともに、低発熱性も改良されており、これらのバランスに優れるものであった。これに対し、水溶性セルロース誘導体の代わりに、同じく水素結合能を有するPEOを用いた比較例5では、比較例6に対しては性能向上が見られたものの、実施例5〜8のような顕著な性能向上は見られなかった。このように単に水素結合能を有するのみでは顕著な性能向上は見られず、セルロース分子骨格を有する水溶性セルロース誘導体によりフィブリル化セルロース繊維表面に効果的に吸着し、フィブリル化セルロース繊維の凝集を阻害して、ゴム成分に対する分散性とゴム成分との密着性の向上が図られ、これにより高い剛性と機械特性、および低発熱性において顕著な性能向上が得られたものと考えられる。また、比較例7では、セルロース繊維の磨砕処理後に水溶性セルロース誘導体を添加したため、実施例5〜8に比べて、高剛性化と低発熱性の両立効果に劣っていた。