【文献】
Sankha Chattopadhyay,Malay Kanti Das,A novel technique for the effective concentration of 99mTc from a large alumina column loaded with low specific-activity(n,g)-produced 99Mo,Applied Radiation and Isotopes,日本,2008年,66,P1295-1299,URL,http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0969804308001395
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、下記非特許文献1に記載の
99mTcの精製方法が知られている。この精製方法は、次のようなものである。まず、
99Mo/
99mTcターゲットをH
2O
2溶液等で溶解しpH2〜3の溶解液を得る(工程a)。この溶解液を陰イオン交換カラムに導入すると、
99Moと
99mTcとが陰イオン交換カラムに捕集される(工程b)。その後、陰イオン交換カラムにNaCl水溶液を導入し
99Moをカラムから脱離させ除去する(工程c)。更にその後、陰イオン交換カラムにTBAB/CH
2Cl
2を導入することで、陰イオン交換カラムから脱離した
99mTcの溶液が得られる(工程d)。その後、この溶液をアルミナカラムに導入すると、
99mTcがアルミナカラムに吸着される(工程e)。その後、このアルミナカラムに生理食塩水を導入すると、酸性アルミナカラムから脱離した
99mTcの溶液が最終的に得られる(工程f)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の精製方法では、上記の工程dで使用したCH
2Cl
2(ジクロロメタン)が最終生成物の
99mTcの溶液中に僅かに残留する。最終的に得られた
99mTcが放射性医薬品として用いられる場合には特に、CH
2Cl
2のような有機溶媒の残留量は可能な限り小さいことが望まれる。また、この種の精製方法にあっては、
99mTcの収率の向上も望まれる。
【0005】
そこで本発明は、精製過程で使用する溶媒の残留量を低減すると共に収率の向上を図ることができる
99mTcの精製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の
99mTcの精製方法は、
99Mo/
99mTcターゲットから
99mTcを精製する
99mTcの精製方法であって、前記
99Mo/
99mTcターゲットを
酸で溶解して溶解液を得る溶解工程と、前記溶解液を陰イオン交換カラムに導入し前記陰イオン交換カラムに
99Moと
99mTcとを吸着させる陰イオン交換カラム吸着工程と、前記陰イオン交換カラムに吸着された
99Moを溶媒で除去する
99Mo除去工程と、前記陰イオン交換カラムに吸着された
99mTcを溶媒で抽出する
99mTc抽出工程と、前記
99mTc抽出工程で得られた抽出液に所定の処理を施して
99mTcを含む溶液を得る
99mTc溶液調製工程と、前記
99mTcを含む溶液を酸性アルミナカラムに導入し前記酸性アルミナカラムに
99mTcを吸着させる酸性アルミナカラム吸着工程と、前記酸性アルミナカラムに吸着された
99mTcを食塩水で抽出し回収する
99mTc回収工程と、を備え、前記溶解工程の前記溶解液を
アルカリ性とし、
99mTc溶液調製工程における前記所定の処理は、前記抽出液から溶媒を蒸発させて除去した後、水を加えて
99mTc水溶液とする処理であることを特徴とする。
【0007】
この精製方法では、溶解工程の溶解液をアルカリ性とし、陰イオン交換カラム吸着工程では、このアルカリ性の溶解液をカラムに導入する。このように、陰イオン交換カラムに導入する溶解液をアルカリ性にすることで、陰イオン交換カラムへの
99mTcの吸着率が向上する。その結果、最終的に得られる
99mTcが増加し、
99mTcの収率が向上する。この精製方法では、
99mTc溶液調製工程において、
99mTc分離工程で得られた抽出液から溶媒を蒸発させて除去した後、水を加えて
99mTc水溶液とする処理を行っている。この処理により、
99mTc分離工程で使用した溶媒が除去され水に置換されるので、最終的に得られる
99mTcにおいて、溶媒の残留量を低減することができる。また酸性アルミナカラム吸着工程において、酸性アルミナカラムに導入する溶液を
99mTc水溶液としたので、
99mTcの
CH2Cl2溶液を導入する場合に比べて、カラムへの吸着率が向上し、その結果、最終的に得られる
99mTcが増加し、
99mTcの収率が向上する。
【0008】
本発明の
99mTcの精製方法は、
99Mo/
99mTcターゲットから
99mTcを精製する精製方法であって、前記
99Mo/
99mTcターゲットを
酸で溶解して溶解液を得る溶解工程と、前記溶解液を陰イオン交換カラムに導入し前記陰イオン交換カラムに
99Moと
99mTcとを吸着させる陰イオン交換カラム吸着工程と、前記陰イオン交換カラムに吸着された
99mTcを取得する
99mTc取得工程と、を備え、前記溶解工程の前記溶解液を
アルカリ性とすることを特徴とする。
【0009】
この精製方法では、溶解工程の溶解液をアルカリ性とし、陰イオン交換カラム吸着工程では、このアルカリ性の溶解液をカラムに導入する。このように、陰イオン交換カラムに導入する溶解液をアルカリ性にすることで、陰イオン交換カラムへの
99mTcの吸着率が向上する。その結果、最終的に得られる
99mTcが増加し、
99mTcの収率が向上する。
【0010】
本発明の
99mTcの精製方法は、
99Mo/
99mTcターゲットから
99mTcを精製する精製方法であって、
99Mo/
99mTcターゲットの溶解液を吸着させたカラムから溶媒にて
99mTcを分離抽出した抽出液を準備する工程と、抽出液に所定の処理を施して
99mTcを含む溶液を得る
99mTc溶液調製工程と、を備え、
99mTc溶液調製工程における所定の処理は、抽出液から溶媒を蒸発させて除去した後、水を加えて
99mTcを含む水溶液とする処理であることを特徴とする。
【0011】
この精製方法では、
99mTc溶液調製工程において、抽出液から溶媒を蒸発させて除去した後、水を加えて
99mTcを含む水溶液とする処理を行っている。この処理により、抽出液に含まれる溶媒が除去され水に置換されるので、最終的に得られる
99mTcにおいて、溶媒の残留量を低減することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、精製過程で使用する溶媒の残留量を低減すると共に収率の向上を図ることができる
99mTcの精製方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る
99mTcの精製方法の一実施形態について詳細に説明する。
【0015】
本実施形態に係る
99mTc(99m-テクネチウム)の精製方法は、以下に説明する溶解工程、陰イオン交換カラム吸着工程、
99Mo除去工程、
99mTc抽出工程、
99mTc溶液調製工程、酸性アルミナカラム吸着工程、及び
99mTc回収工程を含んでいる。
【0016】
(溶解工程)
まず、
99Mo/
99mTcターゲットを準備する。
99Mo/
99mTcターゲットは、例えば、金属Mo(モリブデン)ターゲットに、サイクロトロンで中性子線を照射し、Moの一部を放射化させることで生成される。次に、
図1(a)に示すように、準備した
99Mo/
99mTcターゲット11に、塩酸、過酸化水素水を加えて溶解する。更にNaOH水溶液を加えて溶解液のpHを調整する。溶解液は、アルカリ性(pH7.0以上)とする。好ましくは、溶解液のpHをpH11以上とする。なお、NaOH水溶液を加えて溶解液を最終的にpH7.0以上とすればよいので、上記の過酸化水素水の濃度を高くすることも可能である。その結果、
99Mo/
99mTcターゲット11の溶解速度が向上し、溶解工程の時間を短縮することもできる。
【0017】
(陰イオン交換カラム吸着工程)
次に、
図1(b)に示すように、陰イオン交換樹脂を充填したカラム(陰イオン交換カラム)13を準備する。陰イオン交換樹脂としては、例えば、ダウ・ケミカル社製のDowex 1X8 等が好適に用いられる。準備した陰イオン交換カラム13に、上記溶解工程で得られた溶解液を導入する。そうすると、陰イオン交換カラム13内に
99Moと
99mTcとが吸着される。
【0018】
(
99Mo除去工程)
次に、
図1(c)に示すように、上記陰イオン交換カラム13にMo脱離液として0.9wt%のNaCl水溶液(生理食塩水)を導入する。そうすると、陰イオン交換カラム13に吸着されていた
99Moが脱離し除去される。ここでは、陰イオン交換カラム13に吸着された
99mTcは、ほとんど脱離せずに陰イオン交換カラム13内に留まる。
【0019】
(
99mTc抽出工程)
次に、
図2(a)に示すように、上記陰イオン交換カラム13に、Tc脱離液としてTBAB(テトラブチルアンモニウムブロマイド)/CH
2Cl
2を導入する。そうすると、陰イオン交換カラム13に留まっていた
99mTcが抽出され、CH
2Cl
2と一緒に陰イオン交換カラム13から排出される。すなわち、陰イオン交換カラム13の出口からは、
99mTcのCH
2Cl
2溶液が、抽出液として排出される。また、抽出液には、TBABが僅かに混入している。なお、ここで用いる溶媒TBAB/CH
2Cl
2のTBAB濃度を適切に調整することにより、陰イオン交換カラム13に吸着されていた
99mTcの脱離能を向上させ、抽出液中に回収される
99mTcの量を増加させることができる。
【0020】
(
99mTc溶液調製工程)
次に、
図2(b)に示すように、上記
99mTc抽出工程で得られた抽出液からCH
2Cl
2を蒸発させ除去することで、抽出液を乾固させる。その後、この乾固物に水を加えて
99mTc水溶液とする。この水溶液には、TBABと
99mTcとが含まれている。
【0021】
(酸性アルミナカラム吸着工程)
次に、
図3(a)に示すように、酸性アルミナ粉末を充填したカラム(酸性アルミナカラム)15を準備する。酸性アルミナ粉末としては、例えば、和光純薬工業(株)製の「Alumina A」等が好適に用いられる。準備した酸性アルミナカラム15に、上記
99mTc溶液調製工程で得られた
99mTc水溶液を導入する。そうすると、酸性アルミナカラム15に
99mTcが吸着される。ここでは、
99mTcの水溶液が用いられているので
99mTcがより陽イオン化し易く、酸性アルミナカラムに対して
99mTcが吸着され易いと考えられる。
【0022】
(
99mTc回収工程)
次に、
図3(b)に示すように、上記酸性アルミナカラム15に、0.9wt%のNaCl水溶液(生理食塩水)を導入する。そうすると、酸性アルミナカラム15中の
99mTcが抽出され、最終的に精製された
99mTcが生理食塩水に溶解した状態で回収される。
【0023】
続いて、以上説明した精製方法による作用効果について説明する。この精製方法では、溶解工程の溶解液をアルカリ性とし、陰イオン交換カラム吸着工程では、このアルカリ性の溶解液をカラムに導入する。このように、陰イオン交換カラムに導入する溶解液をアルカリ性にすることで、陰イオン交換カラムへの
99mTcの吸着率が向上する。その結果、最終的に得られる
99mTcが増加し、
99mTcの収率が向上する。
【0024】
また酸性アルミナカラム吸着工程において、酸性アルミナカラムに導入する溶液を
99mTc水溶液としたので、
99mTcの
CH2Cl2溶液を導入する場合に比べて、カラムへの吸着率が向上し、その結果、最終的に得られる
99mTcが増加し、
99mTcの収率が向上する。すなわち、
99mTc水溶液が用いられているので
99mTcがより陽イオン化し易く、酸性アルミナカラムに対して
99mTcが吸着され易いと考えられる。
【0025】
また、この精製方法では、
99mTc抽出工程においてCH
2Cl
2といった有機溶媒が使用される。精製工程で使用されるこの種の有機溶媒は、最終的には可能な限り除去されることが望まれる。すなわち、最終的に得られる精製済みの
99mTcは放射性医薬品として使用されるものであるので、CH
2Cl
2のような有機溶媒の残留量は可能な限り小さいことが望まれる。これに対して、上記の本実施形態の精製方法では、
99mTc溶液調製工程において、抽出液からCH
2Cl
2を蒸発させて除去した後、水を加えて
99mTc水溶液とする処理を行っている。この処理により、
99mTc分離工程で使用したCH
2Cl
2が除去され水に置換されるので、最終的に得られる
99mTcにおいて、CH
2Cl
2の残留量を低減することができる。
【0026】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形したものであってもよい。
【0027】
続いて、本発明者らが行った実験について説明する。
【0028】
〔実験1〕
実験1では、本実施形態の精製方法に従って、
99mTcの精製を行った。そして、各工程の分離前と分離後の
99mTcの放射能をGe検出器で測定し、分離後/分離前の値を「分離精製効率」(%)として表した。実験1には、下に説明する実験1−1〜実験1−3が含まれる。
【0029】
(実験1−1)
実験1−1では、各工程の分離条件を次の通りとした。
溶解工程で準備した
99Mo/
99mTcターゲット11は、金属Moターゲット(寸法:20mmx20mmx1mmを1枚、質量:0.7g)に、サイクロトロンの中性子線を照射して得られたものである。中性子線の照射条件は、照射電流=1μA、照射時間=10分である。
【0030】
溶解工程では、
99Mo/
99mTcターゲット11に対し、1Nの塩酸2mLと過酸化水素水0.4mLとを加えてターゲットを溶解し、更に5NのNaOH水溶液2mLを加えて溶解液のpHをpH11以上とした。
陰イオン交換カラム吸着工程で用いた陰イオン交換樹脂は、ダウ・ケミカル社製のDowex1X8であり、この陰イオン交換樹脂0.4gを容器に充填して陰イオン交換カラム13とした。カラムの前処理として、生理食塩水5mLと純水5mLを通過させた。
99Mo除去工程では、
99Mo 脱離液として0.9wt%のNaCl水溶液3mLを用いた。
99mTc抽出工程では、
99mTc 脱離液としてTBAB/CH
2Cl
2を5mL用いた。TBAB濃度は0.2mg/mlとした。
酸性アルミナカラム吸着工程で用いた酸性アルミナ粉末は、和光純薬工業(株)製の「AluminaA」であり、この酸性アルミナ粉末1.5gを容器に充填して酸性アルミナカラム15とした。
99mTc回収工程では、0.9wt%のNaCl水溶液5mLを用いた。
【0031】
(実験結果1−1)
続いて、実験1−1の結果を説明する。
陰イオン交換カラム吸着工程における分離精製効率は、95%であった。すなわち、陰イオン交換カラム吸着工程においては、溶解液に含まれる
99mTcの95%が陰イオン交換カラム13に吸着された。
99Mo除去工程における分離精製効率は、95%以上であった。すなわち、
99Mo除去工程においては、陰イオン交換カラム13に吸着されていた
99mTcの95%以上が脱離せずに陰イオン交換カラム13内に留まった。
99mTc抽出工程における分離精製効率は、84%であった。すなわち、
99mTc抽出工程においては、陰イオン交換カラム13に留まっていた
99mTcの84%が抽出され、CH
2Cl
2と一緒に陰イオン交換カラム13から排出された。
酸性アルミナカラム吸着工程における分離精製効率は、95%であった。すなわち、酸性アルミナカラム吸着工程においては、
99mTc溶液調製工程で得られた
99mTc水溶液中の
99mTcのうち95%が、酸性アルミナカラム15に吸着された。
99mTc回収工程における分離精製効率は93%であった。すなわち、
99mTc回収工程においては、酸性アルミナカラム15に吸着されていた
99mTcの93%が生理食塩水と一緒に酸性アルミナカラム15から排出された。
【0032】
(実験1−2及び実験1−3)
続いて、実験1−2では、溶解工程において加えるNaOH水溶液の量を変えて溶解液のpHをpH7.0とした。それ以外の分離条件は実験1−1と同様である。同様にして、溶解液のpHを変えながら実験1−3を行った。
【0033】
実験1(実験1−1〜実験1−3)の分離条件は、まとめて表1(
図4)に示す。
【0034】
〔実験2〕
続いて、本実施形態の精製方法と比較するため、実験2では、前述の非特許文献1に記載の精製方法に従って、
99mTcの精製を行った。そして、実験1と同様に、各工程の分離前と分離後の
99mTcの放射能をGe検出器で測定し、分離後/分離前の値を「分離精製効率」(%)として表した。実験2には、下に説明する実験2−1及び実験2−2が含まれる。
【0035】
(実験2−1)
実験2−1では、各工程の条件を次の通りとした。
工程aで準備した
99Mo/
99mTcターゲットは、金属Moターゲット(寸法:20mmx20mmx1mm、質量:0.07g)に、サイクロトロンの中性子線を照射して得られたものである。中性子線の照射条件は、照射電流=1μA、照射時間=10分である。
工程aでは、
99Mo/
99mTcターゲットに対し、1Nの塩酸2mLと過酸化水素水0.4mLとを加えてターゲットを溶解し、更に5NのNaOH水溶液
0.2mLを加えて溶解液のpHをpH2.0とした。
工程bで用いた陰イオン交換樹脂は、ダウ・ケミカル社製のDowex1X8であり、この陰イオン交換樹脂0.4gを容器に充填して陰イオン交換カラムとした。カラムの前処理として、生理食塩水5mLと純水5mLを通過させた。
工程cでは、0.9wt%のNaCl水溶液3mLを用いた。
工程dでは、TBAB/CH
2Cl
2を5mL用いた。TBAB濃度は0.2mg/mlとした。
工程eで用いたアルミナ粉末は、中性アルミナ粉末であり、和光純薬工業(株)製の「AluminaN」であり、このアルミナ粉末1.5gを容器に充填してアルミナカラムとした。
99mTc回収工程では、0.9wt%のNaCl水溶液5mLを用いた。
【0036】
(実験2−2)
実験2−2では、各工程の条件を次の通りとした。
工程aで準備した
99Mo/
99mTcターゲットは、金属Moターゲット(寸法:6mmx6mmx0.1mmを6枚、質量:0.1627g)に、サイクロトロンの中性子線を照射して得られたものである。中性子線の照射条件は、照射電流=1μA、照射時間=10分である。
工程aでは、
99Mo/
99mTcターゲットに対し、1Nの塩酸8mLと過酸化水素水1.6mLとを加えてターゲットを溶解し、更に5NのNaOH水溶液2mLを加えて溶解液のpHをpH11とした。
工程bで用いた陰イオン交換樹脂は、ダウ・ケミカル社製のDowex1X8であり、この陰イオン交換樹脂0.2gを容器に充填して陰イオン交換カラムとした。カラムの前処理として、生理食塩水5mLと純水5mLを通過させた。
工程cでは、0.9wt%のNaCl水溶液3mLを用いた。
工程dでは、TBAB/CH
2Cl
2を5mLずつ3回に分けて合計15mL導入した。TBAB濃度は0.2mg/mlとした。
工程eで用いたアルミナ粉末は、中性アルミナ粉末であり、和光純薬工業(株)製の「AluminaN」であり、このアルミナ粉末1.5gを容器に充填してアルミナカラムとした。
99mTc回収工程では、0.9wt%のNaCl水溶液5mLを用いた。
【0037】
実験2(実験2−1〜実験2−2)の分離条件は、まとめて表2(
図5)に示す。
【0038】
〔実験結果の考察〕
実験2では、工程bにおける分離精製効率は最大でも84.9%であった。これに対し、実験1では、陰イオン交換カラム吸着工程における分離精製効率はいずれも95%以上であった。よって、陰イオン交換カラムに導入する溶解液をアルカリ性にすることで、陰イオン交換カラムへの
99mTcの吸着率が向上し、その結果、最終的に得られる
99mTcが増加し、
99mTcの収率が向上することが判った。
【0039】
更に、実験1−1〜1−3を比較すると、溶解液のpHが高くなるほど、陰イオン交換カラム吸着工程における分離精製効率が向上することが判った。そして、十分な分離精製効率を得るために、溶解液のpHをpH11以上とすることが特に好ましいことが判った。
【0040】
また実験2では、工程fにおける分離精製効率は最大でも10%未満であった。すなわち、アルミナカラムへの
99mTcの吸着率が極めて低い。これに対し、実験1では、酸性アルミナカラム吸着工程における分離精製効率はいずれも95%以上であった。よって、酸性アルミナカラムに導入する溶液を
99mTc水溶液とすることで、
99mTcのTBAB/
CH2Cl2溶液を導入する場合に比べて、カラムへの吸着率が向上し、その結果、最終的に得られる
99mTcが増加し、
99mTcの収率が向上することが判った。
【0041】
以上のとおり、実験1,2によれば、本実施形態の精製方法(実験1の精製方法)では、非特許文献1の精製方法(実験2の精製方法)に比べて、
99mTcの収率が向上することが判った。