(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御手段は、前記温度検出手段によって、製版開始時に検出した前記製版手段の製版開始温度に基づいて、前記インク供給量の補正を行うように前記調節手段を制御することを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の孔版印刷装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一例としての実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。ここで、添付図面において同一の部材には同一の符号を付しており、また、重複した説明は省略されている。なお、ここでの説明は本発明が実施される最良の形態であることから、本発明は当該形態に限定されるものではない。
【0024】
<孔版印刷装置の全体構成>
本実施の形態に係る孔版印刷装置PR1の全体構成について説明する。
【0025】
図1は、本実施の形態に係る孔版印刷装置PR1の全体構成を示した概略構成図である。
【0026】
図1に示すように、孔版印刷装置PR1は、画像読み取り部102と、給紙部103と、第1の印刷部104と、第2の印刷部105と、製版部(製版手段)1と、第1の排版部108と、第2の排版部109と、反転貯留部110と、排紙部211とを備えている。
【0027】
画像読み取り部102は、孔版印刷装置PR1の上部に設けられ、図示しないコンタクトガラス上に載置された原稿から画像データを読み取る。
【0028】
製版部1は、複数の抵抗発熱素子を有するサーマルヘッド2を備え、画像読み取り部102により読み取られた画像データに基づいて孔版原紙(マスタ)Gに製版を行う。
【0029】
製版部1は、第1の印刷部104と第2の印刷部105との間をX方向に移動可能に構成されている。
【0030】
第1の排版部108は、第1の印刷部104の第1の印刷ドラム41の外周面よりクランプ解除された孔版原紙Gを第1の印刷ドラム41より引き剥がし、引き剥がされた孔版原紙Gを排版ボックス(図示しない)内に収納する。また、第2の排版部109は、第1の排版部108と同様の構成を有する。
【0031】
給紙部103は、印刷用紙Wが積層される給紙台31と、この給紙台31から最上位置の印刷用紙Wのみを搬送させる1次給紙ロール32と、この1次給紙ロール32によって搬送された印刷用紙Wを後述する第1の印刷部104の第1の印刷ドラム41の回転に同期して第1の印刷ドラム41と第1のプレスローラ43間に搬送する一対の2次給紙ロール33とを有する。
【0032】
第1の印刷部104は、矢印A方向に回転する第1の印刷ドラム41と、この第1の印刷ドラム41の外周面に設けられ、孔版原紙Gの先端をクランプする原紙クランプ部42とを備えている。
【0033】
また、第1の印刷部104は、印刷用紙Wを反転貯留部110へ搬送する搬送ベルト44と、第1の印刷ドラム41の下方位置に配置された第1のプレスローラ43とを備えている。
【0034】
そして、第1の印刷ドラム41の回転に同期して給紙部103より給紙される印刷用紙Wを第1のプレスローラ43で第1の印刷ドラム41に着版された第1の孔版原紙に押圧することによって、第1の孔版原紙の穿孔からインクが押し出されて画像が印刷用紙Wの表面に印刷されるようになっている。
【0035】
第1のプレスローラ43が第1の印刷ドラム41に押圧することによって画像が印刷された印刷用紙Wは、両端が一対の回転軸に巻き掛けられた環状の搬送ベルト44によって反転貯留部110に搬送される。
【0036】
反転貯留部110は、第1の印刷部104に対して印刷用紙Wの搬送方向下流側に配置され、多孔構造に形成された環状の反転ベルト201が半円形状に配置されている。この反転ベルト201は、半円形状の補助部材202と一対のローラ203,204に巻きかけられ、一対のローラ203,204のうち少なくとも一方のローラが駆動モータ(図示せず)で回転駆動される。この反転貯留部110により印刷用紙Wの表裏が反転され、積載台206に印刷用紙Wを搬送される。
【0037】
第2の印刷部105は、第1の印刷部104と同様に、矢印A方向に回転する第2の印刷ドラム51と、この第2の印刷ドラム51の外周面に設けられ、第2の孔版原紙の先端をクランプする原紙クランプ部52と、第2の印刷ドラム51の下方位置に配置された第2のプレスローラ53と、反転貯留部110により反転された印刷用紙Wを第2の印刷ドラム51の回転に同期して第2の印刷ドラム51と第2のプレスローラ53間に搬送する一対の2次給紙ロール54とを有している。
【0038】
そして、第2の印刷部105は、第1の印刷部104と同様に、第2の印刷ドラム51の回転に同期して一対の2次給紙ロール54より給紙される印刷用紙Wを第2のプレスローラ53で第2の印刷ドラム51に着版された孔版原紙Gに押圧することによって、孔版原紙Gの穿孔からインクが押し出されて画像が印刷用紙Wの裏面に印刷されるようになっている。
【0039】
排紙部211は、印刷された印刷用紙Wが搬送される排紙ベルト111と、排紙ベルト111より排紙される印刷用紙Wが積置される排紙台112と、積載台106に複数枚積載された印刷用紙Wを搬出する中間搬送ベルト113と、中間搬送ベルト113により搬出された印刷用紙Wを第2の印刷部105に搬送する一対のローラ115とを有する。
【0040】
<孔版印刷装置の機能構成>
本実施の形態に係る孔版印刷装置PR1の機能構成について説明する。
【0041】
図2は、本実施の形態に係る孔版印刷装置PR1の機能構成を示した機能ブロック図である。
【0042】
図2に示すように、孔版印刷装置PR1は、孔版原紙に製版を行う複数の抵抗発熱素子を有するサーマルヘッド2等で構成される製版手段(製版部)1を具備した孔版印刷装置として構成される。
【0043】
また、サーマルヘッド2について、製版中における複数位置の温度を検出するサーミスタ等で構成される温度検出手段3と、温度検出手段3によって検出された温度に基づいて、各位置における温度変化に関する演算を行う演算手段5と、演算手段5の演算結果に基づいてインク供給量を制御する制御手段6と、制御手段6の制御により、温度検出手段3の各位置に対応する印刷領域へのインク供給量を調節する調節手段(インク供給量調節部)7と、調節手段7を介して供給されたインクにより、製版手段1で製版された孔版原紙を用いた印刷を行う印刷手段8とを少なくとも備えている。
【0044】
ここで、温度変化とは、サーミスタ等で構成される温度検出手段3が配置された位置におけるサーマルヘッド2の温度変化をいう。
【0045】
サーマルヘッド2は、製版を行う際に、画像信号に応じてサーマルヘッド2が備える各発熱体が発熱され、孔版原紙Gに対して穿孔を行う。したがって、画像信号において濃度が高い部位ほど穿孔率が高くなり、発熱量も多くなる。
【0046】
なお、演算手段5および制御手段6は、マイクロコンピュータ4等で構成することができる。演算手段5は、各位置への温度変化に対応した孔版原紙の製版率テーブルを参照して、各位置へのインク供給量を演算する。本実施形態では、製版率が高いほどインク供給量は高いように設定されている。
【0047】
また、インク供給量調節部7は、制御手段6によってインクの流量を調節する可変バルブで構成することができる。構成例については後述する。
【0048】
また、インク供給量調節部7は、制御手段6によってインクの吸引量を調節するモータで構成するようにしても良い。構成例については後述する。
【0049】
印刷手段8は、印刷データに基づいて各種画像処理を行う画像処理部10、印刷用紙を載置する給紙台や印刷用紙の搬送機構等を備え、給紙台に載置された印刷用紙を搬送する通紙部11、印刷ドラム等を備え印刷用紙に対する印刷を実行する印刷部12等を備える。
【0050】
ここで、演算手段5および制御手段6における処理の形態について説明する。なお、詳細な処理手順については、フローチャートを参照して後述する。
【0051】
<サーマルヘッドの構成>
図3を参照して、孔版印刷装置PR1の製版部1に適用されるサーマルヘッドユニットUの構成例について説明する。
【0052】
図3(a)はサーマルヘッド2を示す側面図、
図3(b)は
図3(a)のサーマルヘッドを模式的に示す平面図である。
【0053】
図3(a)に示すように、製版部1においてサーマルヘッドユニットUは、サーマルヘッド2を備え、このサーマルヘッド2の各発熱体を画像信号に応じて発熱させて、孔版原紙Gに対して穿孔し、画像信号に応じた穿孔パターンを形成する。
【0054】
サーマルヘッドユニットUは、基板20を備えている。基板20の下面側には、アルミ放熱板121及びコネクタ122が取り付けられている。基板20の上面側には、ICカバー123がナット124によって取り付けられている。基板20の上部には、サーマルヘッド2が形成されている。
【0055】
図3(b)に示すように、サーマルヘッド2は、アルミナセラミックス等からなる絶縁性の基板本体66を基部として有しており、この基板本体上表面が、ガラス製のグレーズで被覆されている。
【0056】
また、これら多数の発熱体721〜72nによって、主走査方向に延設される列状の発熱体72が構成される。各発熱体721〜72nの副走査方向における両側には、アルミニウム等からなる導電層64a、64bが、それぞれ各発熱体721〜72nと電気的に接続するように、グレーズ上に成膜されている。
【0057】
さらに、サーマルヘッド2では、発熱体721〜72nと、各導電層64a、64bとを、一括して覆うように保護層が形成されている。また、発熱体72の両端には、コモン電極部65,65が配置されている。
【0058】
なお、図示は省略するが、サーマルヘッドユニットUには、サーミスタ等で構成される温度検出手段が、所定の間隔で複数個(例えば、4個)設けられている。
【0059】
<インク供給手段>
次に、
図4および
図5を参照して、印刷ドラム41(および印刷ドラム51)に適用されるインク供給手段の構成例について説明する。
【0060】
印刷ドラム41(51)は図中矢印A方向に回転する。スキージローラ132は、印刷ドラム41(51)内に所定の隙間を空けて配置され、当該隙間に形成されたインク膜を介して印刷ドラム41(51)と内接しながら図中矢印B方向に回転する。
【0061】
ドクターローラ133はスキージローラ132と所定の隙間を空けた位置で孔版印刷装置PR1に固定されている。
【0062】
インク供給手段134は、インクボトル341と、インクボトル341のインクを分配してインク受け部に吐出するインク分配器342とを有している。
【0063】
インク分配器342の吐出口343は、印刷ドラム41(51)の回転軸方向に所定の間隔を空けて配置されている。
【0064】
インク駆動棒136は、吐出口343とインク受け部500との間で図中矢印C方向に回転する。
【0065】
インク溜まり400は、スキージローラ132とインク駆動棒136の回転によって流動し、インク駆動棒136の回転軸方向に延ばされる。
【0066】
インク検出部80は、インク受け部500に貯留されたインク溜まり400を印刷ドラム41(51)の回転軸方向に仮想的に区画した複数の領域毎に、インクが所定量を有するか否かを検出するインクセンサ81を備えている。
【0067】
インクセンサ81はインクに接触する検出プローブ811を備え、検出プローブ811がインクに接触していることを示すインク検出信号を出力する。このインク検出信号は、インクを補充するトリガー等として用いられる。
【0068】
<第1の実施例>
次に、
図6〜
図8を参照して、孔版印刷装置PR1の第1の実施例について説明する。
【0069】
第1の実施例に係る孔版印刷装置PR1は、孔版原紙に製版を行う複数の抵抗発熱素子を有する製版手段を具備する孔版印刷装置PR1に関する。
【0070】
具体的には、サーマルヘッドで構成される製版手段1について、製版中に孔版原紙の搬送方向に直交する方向における複数位置の温度を検出する温度検出手段(サーミスタ等)3と、温度検出手段3の各位置に対応する印刷領域へのインク供給量を調節する調節手段(可変バルブ、モータ等)7と、温度検出手段7によって検出された温度に基づいて各位置における温度変化を算出し、算出された前記温度変化から前記各位置へのインク供給量の比率を演算するマイクロコンピュータ等で構成される演算手段5と、演算手段5で演算された比率に応じて、調節手段7を制御する前記マイクロコンピュータ等で構成される制御手段6と、調節手段7を介して供給されたインクにより、製版手段1で製版された孔版原紙を用いた印刷を行う印刷手段8とを少なくとも備える。
【0071】
図6の(a)は第1の実施例に係るサーマルヘッド2およびサーミスタ3を示す模式図、(b)は印刷データに対応した濃淡を示す説明図である。
【0072】
図6の(a)に示す構成例では、サーマルヘッド2に、所定の間隔で4個のサーミスタ3a、3b、3c、3dが設けられている。
【0073】
なお、サーミスタ3の数は4個に限られず、2以上であれば任意の数とすることが可能である。
【0074】
また、サーマルヘッド2が、適正電圧を求めるためにサーミスタを予め備えている場合には、そのサーミスタを利用することができる。
【0075】
また、特には限定されないが、サーミスタ3a、3b、3c、3dの位置は、
図2等に示す印刷ドラム41、51のインク供給位置と対応した位置とすることができる。
【0076】
図6の(b)に示す説明図は、印刷データに基づいてサーマルヘッド2により製版された孔版原紙を用いて印刷を行った場合の濃淡の例を示す。この例では、約左半分が濃度が低い印刷領域A1、約右半分が濃度の高い印刷領域(いわゆるベタ)A2を示している。
【0077】
図7は、第1の実施例におけるサーミスタ3a、3b、3c、3dの温度変化を示すグラフである。
【0078】
具体的には、製版開始温度(最低温度)t3からサーミスタ3a、3bの最高温度t2まで、および製版開始温度(最低温度)t3からサーミスタ3c、3dの最高温度t1までの温度の検出結果が示されている。
【0079】
ここで、
図6の(b)に示す例では、印刷領域A2の濃度が高くなっており、孔版原紙の製版における穿孔率が高く、この領域に対応するサーマルヘッド2の部位における温度上昇率が高くなる。したがって、印刷領域A2に対応する範囲に配置されているサーミスタ3c,3dの温度上昇率が、それ以外の領域に配置されたサーミスタ3a、3bに比して高くなっている(
図7のグラフ参照)。
【0080】
そして、本発明によれば、所定時間における各サーミスタ3a、3b、3c、3dの最高温度と最低温度との差の比率に応じてインク供給量を制御することができる。
【0081】
即ち、印刷ドラム41、51におけるインク供給量は、各サーミスタ3a、3b、3c、3dの最高温度から最低温度を引いた比率に基づいて制御される。
【0082】
具体的には、例えば、各サーミスタ3a、3b、3c、3dの位置と、印刷ドラム41、51におけるインク供給位置(例えば、インク供給箇所A、B、C、D)とが同じである場合において、
図7のグラフに基づけば、インク供給箇所A:B:C:D=(t2−t3):(t2−t3):(t1−t3):(t1−t3)の比率でインクが供給される。
【0083】
このように、第1の実施例によれば、従来のように、製版率のカウント等を行うこと無く、印刷濃度に合わせたインク供給量の調節を低コスト且つ高速に行うことが可能となる。
【0084】
即ち、サーマルヘッド2は、製版を行う際に、画像信号に応じてサーマルヘッド2が備える各発熱体が発熱され、孔版原紙Gに対して穿孔を行う。したがって、画像信号において濃度が高い部位ほど穿孔率が高くなり、発熱量も多くなる。よって、温度検出手段3でサーマルヘッド2の製版を開始した状態からの温度上昇率、即ち温度変化を検出することにより、印刷物における濃度の濃淡を把握することができ、ひいては印刷に必要なインク量の比率をこの温度変化から推定することが可能となる。
【0085】
<第2の実施例>
図8および
図9のフローチャートを参照して、第2の実施例に係る印刷処理の処理手順について説明する。
【0086】
第2の実施例に係る印刷処理は、演算手段5により、各位置の製版開始時の温度と製版終了時の温度との差に基づいて各位置へのインク供給量の比率を演算する場合である。
【0087】
また、演算手段5は、所定時間における前記各位置の最高温度と最低温度との差に基づいて各位置へのインク供給量の比率を演算するようにできる。
【0088】
図8のフローチャートに示す印刷処理は、製版開始時の温度、製版終了時の温度を求め、インク供給の比率を求める場合である。ここでは、製版開始時が最低温度、製版終了時が最高温度を参照する場合である。
【0089】
まず、孔版印刷装置PR1が動作を開始すると、ステップS101で製版を開始する。 次いで、ステップS102では、サーマルヘッド2の温度監視を開始してステップS103に移行する。
【0090】
ステップS103では、各サーミスタ3a、3b、3c、3dの情報をメモリ等に保存してステップS104に移行する。
【0091】
ステップS104では、印刷データの出力が完了したか否かが判定され、「No」の場合にはステップS103に戻り、「Yes」の場合にはステップS105に移行して、製版を終了してステップS106に移行する。
【0092】
ステップS106では、保存したデータに基づいて、各サーミスタ3a、3b、3c、3dの製版開始時の温度、製版終了時の温度を求めステップS107に移行する。
【0093】
ステップS107では、製版開始時の温度と製版終了時の温度とに基づいて、各インクノズルのインク供給量の比率を求めてステップS108に移行して、印刷を開始する。
【0094】
ステップS109では、インクセンサ81はOFFか否かが判定され、「No」の場合にはステップS111に移行し、「Yes」の場合にはステップS110に移行する。
【0095】
ステップS110では、求めた比率に基づいてインク供給を行なって、ステップS111に移行する。
【0096】
ステップS111では、残り印刷枚数が0か否かが判定され、「No」の場合にはステップS109に戻って処理を繰り返し、「Yes」の場合にはステップS112に移行して印刷を終了して、動作を終了する。
【0097】
これにより、
図6の(b)に示す例によれば、濃度が高い印刷領域(いわゆるベタ)A2に対してはインク供給量が増加され、濃度が低い印刷領域A1に対してはインク供給量が低減されるように制御される。
【0098】
次に、
図9のフローチャートを参照して、第2の実施例における印刷処理の他の処理手順について説明する。
【0099】
なお、
図9に示す印刷処理は、製版中に最高温度、最低温度を求め、製版終了後にインク供給の比率を求める場合である。
【0100】
まず、孔版印刷装置PR1が動作を開始すると、ステップS201で製版を開始する。 次いで、ステップS202では、サーマルヘッド2の温度監視を開始してステップS203に移行する。
【0101】
ステップS203では、各サーミスタ3a、3b、3c、3dごとに最高温度と最低温度を更新してステップS204に移行する。
【0102】
ステップS204では、印刷データの出力が完了したか否かが判定され、「No」の場合にはステップS203に戻り、「Yes」の場合にはステップS205に移行して、製版を終了してステップS206に移行する。
【0103】
ステップS206では、最高温度と最低温度に基づいて、各インクノズルのインク供給量の比率を求めてステップS207に移行して、印刷を開始する。
【0104】
ステップS208では、インクセンサ81はOFFか否かが判定され、「No」の場合にはステップS210に移行し、「Yes」の場合にはステップS209に移行する。
【0105】
ステップS209では、求めた比率に基づいてインク供給を行なって、ステップS210に移行する。
【0106】
ステップS210では、残り印刷枚数が0か否かが判定され、「No」の場合にはステップS208に戻って処理を繰り返し、「Yes」の場合にはステップS211に移行して印刷を終了して、動作を終了する。
【0107】
このように、第2の実施例によれば、処理過程がより少なくて済み、印刷濃度に合わせたインク供給量の調節を低コスト且つより高速に行うことが可能となる。
【0108】
<第3の実施例>
次に、
図10および
図11を参照して、孔版印刷装置PR1の第3の実施例について説明する。
【0109】
第3の実施例に係る印刷処理は、演算手段5により、各位置の製版開始時から製版終了時までの温度の積分値に基づいて、各位置へのインク供給量の比率を演算する場合である。
【0110】
なお、サーマルヘッド2およびサーミスタ3の構成は、
図6の(a)に示すものと同様である。
【0111】
即ち、
図6の(a)に示す構成例では、サーマルヘッド2に、所定の間隔で4個のサーミスタ3a、3b、3c、3dが設けられている。なお、サーミスタ3の数は4個に限られず、2以上であれば任意の数とすることが可能である。また、サーマルヘッド2が、適正電圧を求めるためにサーミスタを予め備えている場合には、そのサーミスタを利用することができる。
【0112】
また、特には限定されないが、サーミスタ3a、3b、3c、3dの位置は、
図2に示す印刷ドラム41、51のインク供給位置と対応した位置とすることができる。
【0113】
また、
図6の(b)に示す説明図も同様に適用される。
【0114】
即ち、
図6の(b)は、印刷データに基づいてサーマルヘッド2により製版された孔版原紙を用いて印刷を行った場合の濃淡の例を示す。この例では、約左半分が濃度が低い印刷領域A1、約右半分が濃度の高い印刷領域(いわゆるベタ)A2を示している。
【0115】
図10は、第3の実施例におけるサーミスタ3a、3b、3c、3dの温度変化を示すグラフである。
【0116】
具体的には、製版開始温度(最低温度)t3からサーミスタ3a、3bの最高温度t2まで、および製版開始温度(最低温度)t3からサーミスタ3c、3dの最高温度t1までの温度の検出結果が示されている。
【0117】
ここで、前出の
図6の(b)に示す例では、印刷領域A2の濃度が高くなっており、孔版原紙の製版における穿孔率が高く、この領域に対応するサーマルヘッド2の部位における温度上昇率が高くなる。したがって、印刷領域A2に対応する範囲に配置されているサーミスタ3c,3dの温度上昇率が、それ以外の領域に配置されたサーミスタ3a、3bに比して高くなっている。また、プロット曲線とX軸との間の面積についてもサーミスタ3c,3dの方が、サーミスタ3a、3bよりも大きくなっている(
図10のグラフ参照)。
【0118】
そして、本発明によれば、サーミスタ3a、3b、3c、3dによって検出された各位置の温度について、Y軸を温度、X軸を時間とするグラフにプロットした場合のプロット曲線とX軸との間の面積の比率を算出し、算出された比率に応じてインク供給量を制御することができる。
【0119】
即ち、印刷ドラム41、51におけるインク供給量は、各サーミスタ3a、3b、3c、3dの温度の上昇下降の面積の比率に基づいて制御される。
【0120】
具体的には、例えば、各サーミスタ3a、3b、3c、3dの位置と、印刷ドラム41、51におけるインク供給位置(例えば、インク供給箇所A、B、C、D)とが同じである場合において、
図10のグラフに基づけば、インク供給箇所A:B:C:D=B1の面積:B1の面積:B2の面積:B2の面積の比率でインクが供給される。
【0121】
ここで、
図11のフローチャートを参照して、第3の実施例における印刷処理の処理手順について説明する。
【0122】
まず、孔版印刷装置PR1が動作を開始すると、ステップS301で製版を開始する。 次いで、ステップS302では、サーマルヘッド2の温度監視を開始してステップS303に移行する。
【0123】
ステップS303では、各サーミスタ3a、3b、3c、3dの情報をメモリ等に保存してステップS304に移行する。
【0124】
ステップS304では、印刷データの出力が完了したか否かが判定され、「No」の場合にはステップS303に戻り、「Yes」の場合にはステップS305に移行して、製版を終了してステップS306に移行する。
【0125】
ステップS306では、保存したデータに基づいて、各サーミスタ3a、3b、3c、3dごとにプロット曲線とX軸との間の面積を算出してステップS307に移行する。
【0126】
ステップS307では、各サーミスタ3a、3b、3c、3dごとの面積に基づいて、各インクノズルのインク供給量の比率を求めてステップS308に移行して、印刷を開始する。
【0127】
ステップS309では、インクセンサ81はOFFか否かが判定され、「No」の場合にはステップS311に移行し、「Yes」の場合にはステップS310に移行する。
【0128】
ステップS310では、求めた比率に基づいてインク供給を行なって、ステップS311に移行する。
【0129】
ステップS311では、残り印刷枚数が0か否かが判定され、「No」の場合にはステップS309に戻って処理を繰り返し、「Yes」の場合にはステップS312に移行して印刷を終了して、動作を終了する。
【0130】
これにより、
図6の(b)に示す例によれば、濃度が高い印刷領域(いわゆるベタ)A2に対してはインク供給量が増加され、濃度が低い印刷領域A1に対してはインク供給量が低減されるように制御される。
【0131】
このように、第3の実施例によれば、各位置の製版開始時から製版終了時までの温度の積分値に基づいて演算手段で演算された比率に応じて、調節手段を制御するので、比率に対応する印刷濃度に合わせたインク供給量の調節をより正確に、低コスト且つ高速に行うことができる。特に、プロット数が多いので、製版率に応じて精度よくインク供給量を調整することができる。
【0132】
また、従来のように、製版率のカウント等を行うこと無く、印刷濃度に合わせたインク供給量の調節を低コスト且つ高速に行うことが可能となる。
【0133】
<インク供給量調節部の構成例>
次に、
図12を参照して、本発明に適用可能なインク供給量調節部の構成例について説明する。
【0134】
ここに、
図12の(a)は可変バルブ700a〜700dを用いたインク供給量調節部の構成例を示す概略図である。
【0135】
即ち、
図12の(a)に示す構成例において、インク供給量調節部は、マイクロコンピュータ等で構成される制御手段1の制御によってインクボトル341からのインクの流量を調節可能な可変バルブ700a〜700dで構成されている。
【0136】
また、
図12の(b)はモータM1〜M4を用いたインク供給量調節部の構成例を示す概略図である。
【0137】
即ち、
図12の(b)に示す構成例において、インク供給量調節部は、マイクロコンピュータ等で構成される制御手段1の制御によってインクボトル341からのインクの供給量を調節するモータM1〜M4で構成される。
【0138】
これにより、前記第1の実施例および第2の実施例および第3の実施例で示した比率に応じたインク供給量の増減を実現させることができる。
【0139】
<インク供給量の補正>
制御手段1は、各サーミスタ3a、3b、3c、3dによって、製版開始時に検出したサーマルヘッド2の製版開始温度に基づいて、インク供給量の補正を行うように制御することができる。
【0140】
開始温度が高いときは、温度を上げなくても高い製版率になるので、あまり大きな熱量を与えないように調整する。そのため、最高温度と最低温度の差分(面積)だけからインク供給量の比率を計算すると、温度変化があまりないため、高い製版率にもかかわらず、インク供給量が少なくなってしまう。つまり、与える熱量を補正すると同時に、インク供給量も補正する必要がある。
【0141】
インク供給量の補正は、サーマルヘッド2の製版開始温度(サーマルヘッド2が計測を開始する温度)に基づいて、インク供給量に所定の重み付けを行う補正とすることができる。
【0142】
重みを勘案して、開始温度と最高温度の差分値に重み付けして補正することで、開始温度が高くても、最適なインク供給を行えるようになる。
【0143】
具体的には、
図13に示すような差分X、重み、差分Yの補正値等を用いてインク供給量を補正することができる。
【0144】
図13において、定格温度は、「これ以上の温度になるとサーマルヘッドが壊れる温度」、最高温度は、「サーミスタが検知した最高温度(なお、
図13では便宜上一定)」、開始温度は、重みを計算するために用いる(なお、
図13では便宜上、開始温度=最低温度としている)、重みは、「開始温度が20度時の差分X(基準値)/重み計算時の差分X」、差分Xは、(定格温度−開始温度)、差分Yは、(最高温度−最低温度)、差分Yの補正値は、差分Y*重みと、定義している。なお、基準値は、開始温度が20度のときに限らず、任意に設定可能である。
【0145】
演算手段5は、差分Yの補正値を用いて、各サーミスタ3a、3b、3c、3dごとの比率を演算する。制御部1は、演算手段5に演算された比率に応じてインク供給量を制御する。
【0146】
このように、サーマルヘッド2の製版開始温度に基づいて、インク供給量に所定の重み付けを行うので、インク供給量の調節をより正確に行うことができるという効果が得られる。
【0147】
なお、本実施形態では、インク分配器を用いて所定量のインク量を比率に応じてインクを分配して供給しているが、インク供給路は、独立した経路にして制御でもよい。この場合、比率を用いずに各サーミスタの温度変化にのみ依存して、温度変化に対応したインク供給を行ってもよい。
【0148】
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって開示された技術に限定されるものではないと考えるべきである。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載にしたがって解釈すべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれる。