特許第6000669号(P6000669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000669
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】紙葉類繰出装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 3/06 20060101AFI20160923BHJP
   B65H 3/52 20060101ALI20160923BHJP
【FI】
   B65H3/06 330A
   B65H3/06 330E
   B65H3/06 330D
   B65H3/06 330G
   B65H3/06 340G
   B65H3/52 330J
【請求項の数】3
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-130971(P2012-130971)
(22)【出願日】2012年6月8日
(65)【公開番号】特開2013-252956(P2013-252956A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年5月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(72)【発明者】
【氏名】松 下 秀 彦
(72)【発明者】
【氏名】深 澤 雅 昭
(72)【発明者】
【氏名】古 賀 文 章
【審査官】 西本 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−058879(JP,A)
【文献】 特開平04−129935(JP,A)
【文献】 特開2010−173810(JP,A)
【文献】 特開2012−066902(JP,A)
【文献】 特開平11−208907(JP,A)
【文献】 特開平05−301646(JP,A)
【文献】 特開2002−053234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00 − 3/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積状態にある紙葉類を1枚ずつ繰り出すための紙葉類繰出装置であって、
紙葉類の繰り出しを行う際に回転し、外周面における周方向の一部に高摩擦部が設けられているとともに外周面における前記高摩擦部以外の箇所に前記高摩擦部よりも摩擦係数が小さい低摩擦部が設けられているフィードローラと、
前記フィードローラの外周面に圧接して設けられ、当該フィードローラにより繰り出される紙葉類を1枚ずつに分離するゲート部を構成するゲート部材と、
前記フィードローラの側方に設けられ、当該フィードローラの外径と略同一の大きさの外径の送りローラと、
前記送りローラの外周面に圧接して回転自在に設けられているピンチローラと、
前記送りローラは、紙葉類の繰り出しを行う際に回転し、外周面における周方向の一部に高摩擦部が設けられているとともに、当該高摩擦部の長さは、前記フィードローラの周方向における高摩擦部の長さよりも大きいことを特徴とする紙葉類繰出装置。
【請求項2】
前記フィードローラの外周の長さは、前記紙葉類繰出装置により繰り出されるべき紙葉類の繰り出し方向の長さよりも大きくなっている、請求項1記載の紙葉類繰出装置。
【請求項3】
前記フィードローラの周方向における前記高摩擦部の長さは、前記紙葉類繰出装置により繰り出されるべき紙葉類の繰り出し方向の最小の長さよりも小さくなっている、請求項1または2記載の紙葉類繰出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類収納部等に収納された複数の紙葉類を1枚ずつ外部に順次繰り出す紙葉類繰出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣計数機等に用いられる紙葉類繰出装置は、集積状態にある紙葉類(例えば紙幣等)を1枚ずつ順次繰り出して外部に搬出するようになっている。
【0003】
従来の紙葉類繰出装置の構成について図14および図15を用いて説明する。図14に示すような紙葉類繰出装置80は、フィードローラ82と、ゲートローラ84と、キッカローラ86とを備えている。このような紙葉類繰出装置80では、集積状態にある複数の紙葉類Pのうち最下層にある紙葉類Pをキッカローラ86が図14における右方向に蹴り出し、蹴り出された紙葉類Pを、フィードローラ82とゲートローラ84との間に形成されたゲート部83により1枚ずつ繰り出すようになっている。ここで、図14に示すような紙葉類繰出装置80では、フィードローラ82とゲートローラ84との間には紙葉類Pの1枚分の厚さに相当する間隙が設けられている。また、フィードローラ82は軸82aを中心として図14における時計回りの方向に回転するようになっており、このフィードローラ82の外周面における周方向の一部にはゴム部材82bが設けられている。一方、ゲートローラ84は軸84aを中心として図14における時計回りの方向に回転するようになっており、このゲートローラ84の外周面の全周にゴム部材84bが設けられている。また、キッカローラ86は軸86aを中心として図14における時計回りの方向に回転するようになっており、このキッカローラ86の外周面における周方向の一部にはゴム部材86bが設けられている。図14に示すような、フィードローラ82とゲートローラ84との間に間隙を設けた紙葉類繰出装置80は、例えば特許文献1や特許文献2等に開示されている。
【0004】
しかしながら、図14に示すような紙葉類繰出装置80では、様々な厚さやコシの強さを有する複数の種類の紙葉類Pを繰り出すときに、フィードローラ82とゲートローラ84との間に間隙が設けられているため、紙葉類Pを適切に繰り出すことができない場合があるという問題があった。このため、様々な国の紙幣に対して共通の紙葉類繰出装置80で対応することができなかった。このことにより、従来では、紙葉類繰出装置として、図15に示すような紙葉類繰出装置90が用いられる場合もある。
【0005】
図15に示すような紙葉類繰出装置90は、フィードローラ92と、ゲートローラ94と、キッカローラ96とを備えている。このような紙葉類繰出装置90では、集積状態にある複数の紙葉類Pのうち最下層にある紙葉類Pをキッカローラ96が図15における右方向に蹴り出し、蹴り出された紙葉類Pを、フィードローラ92とゲートローラ94との間に形成されたゲート部93により1枚ずつ繰り出すようになっている。図15に示すような紙葉類繰出装置90では、図14に示すような紙葉類繰出装置80とは異なり、ゲートローラ94はフィードローラ92に圧接するよう設けられている。フィードローラ92は軸92aを中心として図15における時計回りの方向に回転するようになっており、このフィードローラ92の外周面における全周にはゴム部材92bが設けられている。また、ゲートローラ94の外周面の全周にゴム部材94bが設けられている。ここで、ゲートローラ94と軸94aとの間にはトルクリミッタ(図示せず)が配設されており、このトルクリミッタは、ゲートローラ94に対して周方向に沿って設定トルク以上の力が加えられたときには軸94aに対するゲートローラ94の紙葉類Pの繰り出し方向への回転を許容するようになっている。また、キッカローラ96は軸96aを中心として図15における時計回りの方向に回転するようになっており、このキッカローラ96の外周面における周方向の一部にはゴム部材96bが設けられている。図15に示すような、フィードローラ92の外周面における全周にゴム部材92bが設けられるとともにゲートローラ94がフィードローラ92に圧接するよう設けられている紙葉類繰出装置90は、例えば特許文献3や特許文献4等に開示されている。
【0006】
しかしながら、図15に示すような紙葉類繰出装置90では、ゲートローラ94にトルクリミッタを設ける必要があるため、このようなトルクリミッタはコストが高くなる上に設置スペースが必要となってしまうという問題がある。また、図15に示すような紙葉類繰出装置90では、ゲートローラ94に設けられたトルクリミッタに打ち勝ってフィードローラ92を回転させる必要があるため、駆動用モータ、さらには装置全体の小型化を行うことが難しいという問題がある。
【0007】
また、図15に示すような紙葉類繰出装置90のように、フィードローラ92の外周面における全周にゴム部材92bが設けられている場合には、紙葉類繰出装置90を長時間使用することによりフィードローラ92のゴム部材92bが摩耗したときに、フィードローラ92の基体部を残しながらゴム部材92bだけを交換することができず、フィードローラ92自体を軸92aの延びる方向に取り外さなければならないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3703598号
【特許文献2】特許第4680302号
【特許文献3】特許第4846716号
【特許文献4】国際特許出願公開公報WO2008/072317
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、フィードローラの外周面における全周ではなく周方向の一部に高摩擦部を設けると共に、フィードローラの外周面にゲートローラを圧接して設け、トルクリミッタの設置を省略することによってコストダウンおよび小型化を図ることができ、しかも様々な厚さやコシの強さを有する複数の種類の紙葉類を適切に繰り出すことができる紙葉類繰出装置を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明の他の目的は、フィードローラの高摩擦部が、回転軸に固定されたフィードローラの基体部や回転軸自体に対して回転軸の延びる方向とは直交する方向から着脱自在となっていることにより、高摩擦部のメンテナンスを容易に行うことができるとともに保守費用を低減することができる紙葉類繰出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の紙葉類繰出装置は、集積状態にある紙葉類を1枚ずつ繰り出すための紙葉類繰出装置であって、紙葉類の繰り出しを行う際に回転し、外周面における周方向の一部に高摩擦部が設けられているとともに外周面における前記高摩擦部以外の箇所に前記高摩擦部よりも摩擦係数が小さい低摩擦部が設けられているフィードローラと、前記フィードローラの外周面に圧接して設けられ、当該フィードローラにより繰り出される紙葉類を1枚ずつに分離するゲート部を構成するゲート部材と、を備えている。
【0012】
上述のような紙葉類繰出装置においては、前記フィードローラの外周の長さは、前記紙葉類繰出装置により繰り出されるべき紙葉類の繰り出し方向の長さよりも大きくなっていてもよい。
【0013】
また、前記フィードローラの周方向における前記高摩擦部の長さは、前記紙葉類繰出装置により繰り出されるべき紙葉類の繰り出し方向の最小の長さよりも小さくなっていてもよい。
【0014】
上述のような紙葉類繰出装置においては、紙葉類の繰り出し方向における前記フィードローラよりも上流側に設けられ、集積状態にある複数の紙葉類のうち最前位にある紙葉類の表面に当接して当該紙葉類を前記ゲート部に送るための送り出し機構を更に備え、前記送り出し機構は、前記フィードローラの前記高摩擦部が前記ゲート部材に対向したときに紙葉類を前記ゲート部に送るようになっていてもよい。
【0015】
上述のような紙葉類繰出装置においては、前記フィードローラの側方において、当該フィードローラにおける前記高摩擦部と前記低摩擦部との間の境界の箇所に、前記フィードローラの回転中心からの距離が、前記低摩擦部から前記高摩擦部に向かうに従って前記低摩擦部から徐々に減少する、前記高摩擦部よりも摩擦係数が小さい傾斜部が設けられていてもよい。
【0016】
上述のような紙葉類繰出装置においては、前記ゲート部材は、外周面に摩擦部が形成されたゲートローラと、当該ゲートローラに設けられたワンウェイクラッチとを有しており、前記ワンウェイクラッチにより、前記ゲートローラは紙葉類の繰り出し方向と逆方向にのみ回転でき、前記フィードローラを紙葉類の繰り出し方向と逆方向に回転させることにより、前記ゲートローラは前記フィードローラに連れ回って紙葉類の繰り出し方向と逆方向に回転するようになっていてもよい。
【0017】
上述のような紙葉類繰出装置においては、前記フィードローラを回転可能に支持する回転軸を更に備え、前記フィードローラの前記高摩擦部は、前記回転軸に固定された前記フィードローラの基体部、または前記回転軸自体に対して前記回転軸の延びる方向とは直交する方向から着脱自在となっていてもよい。
【0018】
本発明の他の紙葉類繰出装置は、集積状態にある紙葉類を1枚ずつ繰り出すための紙葉類繰出装置であって、紙葉類の繰り出しを行う際に回転し、外周面における周方向の一部に高摩擦部が設けられているとともに外周面における前記高摩擦部以外の箇所に前記高摩擦部よりも摩擦係数が小さい低摩擦部が設けられているフィードローラと、前記フィードローラに対向して設けられ、当該フィードローラにより繰り出される紙葉類を1枚ずつに分離するゲート部を構成するゲート部材と、前記フィードローラを回転可能に支持する回転軸と、を備え、前記フィードローラの前記高摩擦部は、前記回転軸に固定された前記フィードローラの基体部に対して前記回転軸の延びる方向とは直交する方向から着脱自在となっている。
【0019】
上述のような紙葉類繰出装置においては、前記フィードローラの前記基体部に対して前記回転軸の延びる方向とは直交する方向から着脱自在となっている取り付け部材が設けられており、前記高摩擦部は前記取り付け部材に含まれていてもよい。
【0020】
この際に、前記取り付け部材は、前記高摩擦部を支持する支持部材を有しており、当該支持部材が前記フィードローラの前記基体部に対して前記回転軸の延びる方向とは直交する方向から着脱自在となっていてもよい。
【0021】
また、前記取り付け部材には、前記フィードローラの前記基体部に対して当該取り付け部材を着脱させる際に前記回転軸が通過するための溝部が設けられていてもよい。
【0022】
本発明の更に他の紙葉類繰出装置は、集積状態にある紙葉類を1枚ずつ繰り出すための紙葉類繰出装置であって、紙葉類の繰り出しを行う際に回転し、外周面における周方向の一部に高摩擦部が設けられているとともに外周面における前記高摩擦部以外の箇所に前記高摩擦部よりも摩擦係数が小さい低摩擦部が設けられているフィードローラと、前記フィードローラに対向して設けられ、前記フィードローラにより繰り出される紙葉類を1枚ずつに分離するゲート部を構成するゲート部材と、前記フィードローラを回転可能に支持する回転軸と、を備え、前記フィードローラの前記高摩擦部は、前記回転軸に対して当該回転軸の延びる方向とは直交する方向から着脱自在となっている。
【0023】
上述のような紙葉類繰出装置においては、前記回転軸に対して当該回転軸の延びる方向とは直交する方向から着脱自在となっている取り付け部材が設けられており、前記高摩擦部は前記取り付け部材に含まれていてもよい。
【0024】
この際に、前記取り付け部材は、前記高摩擦部を支持する支持部材を有しており、当該支持部材が前記回転軸に対して当該回転軸の延びる方向とは直交する方向から着脱自在となっていてもよい。
【0025】
また、前記取り付け部材には、前記回転軸に対して当該取り付け部材を着脱させる際に前記回転軸が通過するための溝部が設けられていてもよい。
【0026】
この場合、前記回転軸は、外周面の一部が切り落とされて断面がD字形状となっている部分を有しており、前記溝部には、前記回転軸の直径よりも小さい幅の箇所が設けられていてもよい。
【0027】
上述のような紙葉類繰出装置においては、前記溝部を塞ぐためのカバー部材が前記取り付け部材に対して着脱自在に設けられていてもよい。
【0028】
上述のような紙葉類繰出装置においては、前記フィードローラの側方に、当該フィードローラの外径と略同一の大きさの外径の送りローラが設けられているとともに、前記送りローラの外周面に圧接して回転自在のピンチローラが設けられており、前記送りローラは、紙葉類の繰り出しを行う際に回転し、外周面における周方向の一部に高摩擦部が設けられているとともに外周面における前記高摩擦部以外の箇所に前記高摩擦部よりも摩擦係数が小さい低摩擦部が設けられていてもよい。
【0029】
この際に、前記送りローラの周方向における高摩擦部の長さは、前記フィードローラの周方向における高摩擦部の長さよりも大きくなっていてもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明の紙葉類繰出装置によれば、トルクリミッタの設置を省略することによりコストダウンおよび小型化を図ることができ、しかも様々な厚さやコシの強さを有する複数の種類の紙葉類を適切に繰り出すことができる。
【0031】
本発明の他の紙葉類繰出装置によれば、高摩擦部のメンテナンスを容易に行うことができるとともに保守費用を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施の形態における紙葉類繰出装置の構成の概略を示す概略構成図である。
図2A図1に示す紙葉類繰出装置を上方から見たときの各ローラの位置関係を示す上面図である。
図2B図2Aに示す紙葉類繰出装置におけるフィードローラおよび送りローラの構成の概略を示す図である。
図3図1に示す紙葉類繰出装置により紙葉類の繰り出しを行う際の動作を示す説明図である。
図4図1に示す紙葉類繰出装置により紙葉類の繰り出しを行う際の動作を示す説明図であって、図3に示す状態から紙葉類がフィードローラにより繰り出されたときの状態を示す図である。
図5図1に示す紙葉類繰出装置により紙葉類の繰り出しを行う際の動作を示す説明図であって、図4に示す状態から紙葉類がフィードローラにより更に繰り出されたときの状態を示す図である。
図6】(a)〜(e)は、図1に示す紙葉類繰出装置におけるフィードローラの構成を示す構成図である。
図7図1に示す紙葉類繰出装置におけるフィードローラの構成を示す斜視図である。
図8図1に示す紙葉類繰出装置におけるフィードローラの構成を示す斜視図であって、図7に示す状態からカバー部材を取り外したときの状態を示す図である。
図9図1に示す紙葉類繰出装置におけるフィードローラを別の方向から見たときの斜視図である。
図10】本実施の形態の紙葉類繰出装置におけるフィードローラの他の構成を示す斜視図である。
図11】本実施の形態の紙葉類繰出装置におけるフィードローラの更に他の構成を示す斜視図である。
図12】本実施の形態の紙葉類繰出装置におけるフィードローラの更に他の構成を示す斜視図である。
図13】本実施の形態の紙葉類繰出装置におけるフィードローラの更に他の構成を示す斜視図である。
図14】(a)(b)は、従来の紙葉類繰出装置の構成を概略的に示す概略構成図である。
図15】(a)(b)は、従来の紙葉類繰出装置の他の構成を概略的に示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図9は、本実施の形態に係る紙葉類繰出装置の構成を示す図である。このうち、図1は、本実施の形態における紙葉類繰出装置の構成の概略を示す概略構成図であり、図2Aは、図1に示す紙葉類繰出装置を上方から見たときの各ローラの位置関係を示す上面図である。また、図2Bは、図2Aに示す紙葉類繰出装置におけるフィードローラおよび送りローラの構成の概略を示す図である。なお、図2Aにおいて紙葉類の繰り出し方向を矢印Pで示す。また、図3乃至図5は、図1に示す紙葉類繰出装置により紙葉類の繰り出しを行う際の動作を示す説明図である。また、図6(a)〜(e)は、図1に示す紙葉類繰出装置におけるフィードローラの構成を示す構成図である。また、図7乃至図9は、図1に示す紙葉類繰出装置におけるフィードローラを様々な方向から見たときの構成を示す斜視図である。
【0034】
図1に示すように、本実施の形態における紙葉類繰出装置1は、複数の紙葉類Pが集積状態で収納される収納スペース2と、収納スペース2において集積状態にある複数の紙葉類Pのうち最下層の紙葉類Pの蹴り出しを行うキッカローラ30と、キッカローラ30により蹴り出された紙葉類Pの繰り出しを行うフィードローラ10と、フィードローラ10に対して圧接して設けられこのフィードローラ10との間でゲート部28を形成するゲートローラ20とを備えている。また、収納スペース2における、集積状態にある複数の紙葉類Pの上方には押さえ部材70が設けられており、この押さえ部材70により、集積状態にある複数の紙葉類Pはキッカローラ30側に向かって押さえられるようになっている。
【0035】
また、図1に示すように、紙葉類繰出装置1には一対の案内部材72、74が設けられており、フィードローラ10により繰り出された紙葉類Pは一対の案内部材72、74の間の隙間を通って案内されるようになっている。さらに、これらの一対の案内部材72、74に沿って、第1搬送ローラ60、この第1搬送ローラ60に対向して設けられた第1対向ローラ62、第2搬送ローラ64、およびこの第2搬送ローラ64に対向して設けられた第2対向ローラ66がそれぞれ配設されている。そして、一対の案内部材72、74に沿って案内される紙葉類Pは、第1搬送ローラ60および第1対向ローラ62の間を通って搬送され、その後、第2搬送ローラ64および第2対向ローラ66の間を通って搬送されるようになる。また、第1搬送ローラ60および第2搬送ローラ64の間には紙葉類検出センサ68が設けられており、紙葉類繰出装置1から繰り出された紙葉類Pは紙葉類検出センサ68により検出されるようになっている。
【0036】
以下、このような紙葉類繰出装置1の各構成要素について更に詳しく説明する。
【0037】
キッカローラ30は、図1等に示すように、収納スペース2において集積状態にある複数の紙葉類Pのうち最下層の紙葉類Pの表面に当接するよう配設されており、紙葉類Pの繰り出し動作を行う際に軸32を中心として図1の矢印方向に回転するようになっている。また、キッカローラ30の外周面における周方向の一部にはゴム部材34が形成されており、このゴム部材34によりゲート部28に向かって紙葉類Pが蹴り出されるようになっている。図2Aに示すように、キッカローラ30は紙葉類Pの幅方向(図2Aにおける上下方向)に沿って並列に例えば3つ設けられている。
【0038】
紙葉類Pの繰り出し方向におけるキッカローラ30よりも上流側には補助搬送ローラ40が設けられている。この補助搬送ローラ40は、紙葉類Pの繰り出し動作を行う際に軸42を中心として図1の矢印方向に回転するようになっている。また、補助搬送ローラ40は例えばプラスチック製や金属製の略円板形状のものからなり、この補助搬送ローラ40にはゴム部材は設けられていない。この補助搬送ローラ40に対してはいわゆる「Dカット」が行われており、この補助搬送ローラ40の外周面における周方向の一部には平らな部分44が設けられている。そして、キッカローラ30がゲート部28に向かって紙葉類Pを蹴り出す際に、蹴り出されるべき紙葉類Pが補助搬送ローラ40の平らな部分44に接触または接近するようになっている。このことにより、蹴り出されるべき紙葉類Pにかかる、キッカローラ30による摩擦力を増加することができ、ゲート部28に向かう紙葉類Pの蹴り出しをより確実に行うことができるようになる。図2Aに示すように、補助搬送ローラ40は紙葉類Pの幅方向(図2Aにおける上下方向)に沿って並列に例えば2つ設けられている。
【0039】
フィードローラ10の構成について図6乃至図9を用いて説明する。図6(a)〜(e)は、図1に示す紙葉類繰出装置1におけるフィードローラの構成を示す構成図である。より詳細には、図6(a)は、フィードローラ10およびこのフィードローラ10に圧接して設けられたゲートローラ20の構成を示す図であり、図6(b)は、図6(a)に示すフィードローラ10およびゲートローラ20のA−A矢視図である。また、図6(c)は、図6(a)における二点鎖線Rで囲った部分を拡大して示す図である。また、図6(d)は、図6(a)等におけるフィードローラ10の第1フィードローラ部分14の構成を示す構成図であり、図6(e)は、図6(a)等におけるフィードローラ10の第2フィードローラ部分16の構成を示す構成図である。また、図7は、図1に示す紙葉類繰出装置1におけるフィードローラ10の構成を示す斜視図であり、図8は、図7に示す状態からカバーを取り外したときの状態を示す図である。また、図9は、図1に示す紙葉類繰出装置1におけるフィードローラ10を別の方向から見たときの斜視図である。
【0040】
図6乃至図9に示すように、フィードローラ10は、略円板形状の第1フィードローラ部分14および略円板形状の第2フィードローラ部分16を含んでおり、これらの第1フィードローラ部分14および第2フィードローラ部分16は隣接して配置されている(図6(b)参照)。ここで、第1フィードローラ部分14および第2フィードローラ部分16は同心円となっており、これらの第1フィードローラ部分14および第2フィードローラ部分16は一体的に軸12を中心として図1における矢印方向に回転するようになっている。なお、後述するように、第1フィードローラ部分14は軸12に対して着脱自在となっているが、第2フィードローラ部分16は軸12に固定されている。より詳細には、第1フィードローラ部分14はネジ17により軸12に着脱自在に取り付けられるようになっている。
【0041】
第1フィードローラ部分14の外周面における周方向の一部にはゴム部材14a(高摩擦部)が形成されており、ゲート部28に送られた紙葉類Pはゴム部材14aにより当該ゲート部28から繰り出されるようになっている。また、第1フィードローラ部分14におけるゴム部材14a以外の部分は、当該ゴム部材14aを支持する支持部材15として機能するようになっている。支持部材15は、例えばプラスチック製や金属製となっており、本実施の形態では、ゴム部材14a(高摩擦係数)よりも摩擦係数が小さい低摩擦部として扱われるようになっている。また、本実施の形態では、ゴム部材14aおよび支持部材15をまとめて、ゴム部材14aを軸12に着脱自在に取り付けるための取り付け部材として扱うようになっている。
【0042】
また、図6(d)等に示すように、第1フィードローラ部分14には第1の切欠部14b(溝部)および第2の切欠部14c(溝部)が設けられている。ここで、第1の切欠部14bは、第1フィードローラ部分14の中心部分から外周面にかけて延びるよう形成されており、第1フィードローラ部分14を軸12から取り外す際に当該軸12が通過するスペースとして第1の切欠部14bが用いられるようになっている。また、第2の切欠部14cは、ネジ17により第1フィードローラ部分14を軸12に固定する際に当該ネジ17が収容されるスペースとして使われるようになっている。また、第1フィードローラ部分14には、ネジ17により第1フィードローラ部分14を軸12に固定する際に当該ネジ17が挿入されるネジ穴14dが設けられている。
【0043】
本実施の形態の紙葉類繰出装置1では、フィードローラ10の第1フィードローラ部分14のゴム部材14aは、軸12に対して当該軸12の延びる方向とは直交する方向から着脱自在となっている。より詳細に説明すると、紙葉類繰出装置1を長時間使用することによりフィードローラ10の第1フィードローラ部分14のゴム部材14aが摩耗した場合には、このゴム部材14aの交換を行う必要があるが、本実施の形態では、ゴム部材14aの交換を行うにあたり、ネジ17を取り外して軸12に対する第1フィードローラ部分14の固定を解除し、その後、ゴム部材14aおよび支持部材15をまとめて軸12から取り外す。具体的には、図9に示すような状態において、軸12から支持部材15の中心をずらすことにより、第1の切欠部14bを軸12が通過するようにする。このことにより、軸12から第1フィードローラ部分14を取り外すことが可能となる。一方、ゴム部材14aが設けられた第1フィードローラ部分14を軸12に取り付ける際には、まず、第1の切欠部14bを通って軸12が支持部材15の中心に位置するようにする。その後、ネジ穴14dにネジ17を挿入することによって、当該ネジ17により第1フィードローラ部分14を軸12に固定する。
【0044】
以上に示すように、本実施の形態では、軸12の延びる方向とは直交する方向に支持部材15を移動させることにより、第1フィードローラ部分14を軸12から取り外したりこの軸12に取り付けたりすることができるようになる。なお、第1フィードローラ部分14を軸12に取り付けた際により正確に回転軸中心位置に取り付けるために、軸12における第1フィードローラ部分14が取り付けられるべき箇所の外周面の一部が切り落とされて断面がD字形状となっている(すなわち、軸12の外周面における周方向の一部には平らな部分が設けられている)ことが好ましい。このことにより、第1フィードローラ部分14を軸12から取り外したりこの軸12に取り付けたりする際に、軸12を回転させて当該軸12における平らな部分を第1の切欠部14bの縁部14e(図6(d)参照)に合わせることにより、第1フィードローラ部分14を軸12から取り外したりこの軸12に取り付けたりすることができるようになる。なお、第1の切欠部14bにおける縁部14eの箇所は、軸12の直径よりも小さい幅の箇所となっており、軸12のD字形状の断面における最小の長さの部分のみを第1の切欠部14bにおける縁部14eに通すことができるようになっている。
【0045】
また、図7に示すように、第1フィードローラ部分14には、支持部材15に対して着脱自在のカバー部材18が設けられており、このカバー部材18により第1フィードローラ部分14の第1の切欠部14bおよび第2の切欠部14cが覆われるようになっている。このことにより、操作者がフィードローラ10のメンテナンス等を行う際に、第1フィードローラ部分14の第1の切欠部14bや第2の切欠部14cに誤って指等を入れてしまい傷つけてしまうことを防止することができるようになる。ネジ17により第1フィードローラ部分14を軸12に固定する場合や、第1フィードローラ部分14を軸12から取り外す際には、図8に示すようにカバー部材18を支持部材15から取り外すことにより、第1の切欠部14bや第2の切欠部14cに操作者がアクセスすることができるようになる。
【0046】
第2フィードローラ部分16は、第1フィードローラ部分14のゴム部材14aよりも摩擦係数が小さい略円板形状の部材から形成されている。図6(e)に示すように、第2フィードローラ部分16は、径長さ(フィードローラ10の中心からの距離)が比較的大きな外周面である第1の外周部16aと、第1の外周部16aよりも径長さが小さい第2の外周部16bと、第1の外周部16aおよび第2の外周部16bの間に設けられた2つの傾斜部16cとを有している。ここで、図6に示すように、第2フィードローラ部分16の第2の外周部16bは、第1フィードローラ部分14のゴム部材14aに対応する位置に設けられており、第2フィードローラ部分16の2つの傾斜部16cは、第1フィードローラ部分14のゴム部材14aと支持部材15との間の境界に対応する位置に設けられている。このように、第2フィードローラ部分16では、傾斜部16cは、第1フィードローラ部分14の支持部材15からゴム部材14aに向かうに従って、フィードローラ10の回転中心からの距離が徐々に低下するようになる。すなわち、第2フィードローラ部分16の第1の外周部16aでは、第1フィードローラ部分14の支持部材15に対して径長さがほぼ同等か支持部材15よりも径長さが大きくなっているが、第2フィードローラ部分16の傾斜部16cでは径長さが徐々に小さくなり、第2フィードローラ部分16の第2の外周部16bでは、第1フィードローラ部分14のゴム部材14aに対して径長さが小さくなる。
【0047】
このようにして、図6(b)等に示すように、フィードローラ10において第2フィードローラ部分16の第1の外周部16aの径長さ(フィードローラ10の中心からの距離)は、第1フィードローラ部分14の支持部材15の径長さとほぼ同等か支持部材15よりも径長さが大きくなり、一方、第2フィードローラ部分16の傾斜部16cにおいて径長さが徐々に小さくなることにより、第2フィードローラ部分16の第2の外周部16bの径長さは、第1フィードローラ部分14のゴム部材14aの径長さよりも小さくなる。
【0048】
また、フィードローラ10の外周の長さは、紙葉類繰出装置1により繰り出されるべき紙葉類Pの繰り出し方向の最大の長さよりも大きくなっている。一方、フィードローラ10の第1フィードローラ部分14の周方向におけるゴム部材14aの長さは、紙葉類繰出装置1により繰り出されるべき紙葉類Pの繰り出し方向の最小の長さよりも小さくなっている。図2Aに示すように、フィードローラ10は紙葉類Pの幅方向(図2Aにおける上下方向)に沿って並列に例えば2つ設けられている。
【0049】
ゲートローラ20は、フィードローラ10に対して圧接するよう設けられている。より具体的には、ゲートローラ20はゲートローラ支持アーム27の先端部分において回転自在に支持されており、このゲートローラ支持アーム27の基端部分は軸27aにより軸支されている。また、ゲートローラ支持アーム27の軸27aにはねじりバネ(図示せず)が設けられており、このねじりバネによりゲートローラ支持アーム27には図1の矢印に示す方向に力が加えられるようになっている。このことにより、ゲートローラ支持アーム27により支持されたゲートローラ20には、常にフィードローラ10に向かうような力が加えられることとなり、ゲートローラ20はフィードローラ10に対して圧接するようになる。また、前述したように、ゲートローラ20とフィードローラ10との間にはゲート部28が設けられるようになっており、フィードローラ10により繰り出される紙葉類Pはゲート部28によって1枚ずつに分離されるようになっている。
【0050】
ゲートローラ20には軸22が設けられており、この軸22を中心としてゲートローラ20は回転可能となっている。また、図6(a)等に示すように、ゲートローラ20の外周面における全周にはゴム部材24が形成されている。また、ゲートローラ20にはワンウェイクラッチ26が設けられており、このワンウェイクラッチ26により、ゲートローラ20は紙葉類Pの繰り出し方向とは逆方向(図1における矢印方向)にのみ回転することができるようになっている。このことにより、フィードローラ10を紙葉類Pの繰り出し方向とは逆方向に回転させることにより、ゲートローラ20はフィードローラ10に連れ回って紙葉類Pの繰り出し方向と逆方向に回転するようになる。一方、紙葉類Pの繰り出し時においては、ワンウェイクラッチ26が設けられていることにより、ゲートローラ20は紙葉類Pの繰り出し方向への回転を行うことはない。図2Aに示すように、ゲートローラ20は紙葉類Pの幅方向(図2Aにおける上下方向)に沿って並列に、フィードローラ10に対向するよう例えば2つ設けられている。
【0051】
図2Aに示すように、各フィードローラ10の両側の側方にはそれぞれ送りローラ50が設けられている。すなわち、本実施の形態の紙葉類繰出装置1では合計4つの送りローラ50が設けられている。なお、図1では送りローラ50の図示を省略している。ここで、各送りローラ50の外径の大きさは、各フィードローラ10の外径の大きさと略同一となっている。また、各送りローラ50の外周面に圧接してピンチローラ51が各送りローラ50に対応するよう設けられている。各ピンチローラ51はベアリング等から構成されており回転自在となっている。これらのピンチローラ51は、各送りローラ50が回転したときに連れ回るようになっている。
【0052】
図2Bに示すように、各送りローラ50は、外周面における周方向の一部にゴム部材52(高摩擦部)が設けられているとともに、外周面におけるゴム部材52以外の箇所は、プラスチック製や金属製の基体部54(低摩擦部)となっている。ここで、各送りローラ50の周方向におけるゴム部材52の長さは、フィードローラ10の第1フィードローラ部分14の周方向におけるゴム部材14aの長さよりも大きくなっている。このことにより、フィードローラ10の第1フィードローラ部分14のゴム部材14aにより紙葉類Pを繰り出した後は送りローラ50のゴム部材52により、第1搬送ローラ60と第1対向ローラ62まで紙葉類Pを繰り出すことができ、繰り出した後の搬送を確実にできるようになる。
【0053】
次に、このような構成からなる紙葉類繰出装置1の動作、具体的には紙葉類繰出装置1による紙葉類Pの繰り出し方法について図3乃至図5を参照して説明する。
【0054】
まず、図1等に示すように複数の紙葉類Pが収納スペース2に集積状態で収納されているときに、キッカローラ30により最下層の紙葉類Pの蹴り出しが行われる。具体的には、図3に示すように、キッカローラ30に設けられたゴム部材34により、最下層の紙葉類Pがゲート部28に向かって蹴り出される。ここで、キッカローラ30がゲート部28に向かって紙葉類Pを蹴り出す際に、蹴り出されるべき紙葉類Pが補助搬送ローラ40の平らな部分44に接触または接近するようになっている。このことにより、蹴り出されるべき紙葉類Pにかかる、キッカローラ30による摩擦力を増加することができ、ゲート部28に向かう紙葉類Pの蹴り出しをより確実に行うことができるようになる。また、図3に示すように、キッカローラ30は、フィードローラ10の第1フィードローラ部分14のゴム部材14aがゲートローラ20に対向したときに紙葉類Pをゲート部28に蹴り出すようになっている。このことにより、ゲート部28に送られた紙葉類Pをフィードローラ10によりすぐに繰り出すことができるようになるとともに、ゲートローラ20のゴム部材24の摩耗を抑制することができる。
【0055】
図4に示すように、ゲート部28に送られた紙葉類Pは、フィードローラ10の第1フィードローラ部分14のゴム部材14aにより1枚ずつ繰り出される。この際に、ゲートローラ20は停止したままの状態となっている。そして、図5に示すように、紙葉類Pがフィードローラ10により完全に繰り出された後、所定の時間が経過したときに次の紙葉類Pがキッカローラ30によりゲート部28に向かって蹴り出されるようになる。
【0056】
本実施の形態では、フィードローラ10の第1フィードローラ部分14の外周面の全周ではなく周方向の一部にゴム部材14aが設けられているため、ゲートローラ20に対してトルクリミッタの設置を省略することができるようになる。すなわち、もし仮に、フィードローラ10の第1フィードローラ部分14の外周面の全周にゴム部材14aを設けた場合には、ゲートローラ20に対してトルクリミッタを設置しないと、ゲート部28に紙葉類Pが存在しないときにフィードローラ10が回転している場合でもゲートローラ20がフィードローラ10と連れ回らず停止した状態となるためゲートローラ20のゴム部材24における一部の箇所が集中的に摩耗してしまうという問題が生じる。これに対し、本実施の形態のように、フィードローラ10の第1フィードローラ部分14の外周面における周方向の一部にゴム部材14aを設けた場合には、紙葉類Pの繰り出しを行う際に、フィードローラ10の第1フィードローラ部分14のゴム部材14aとゲートローラ20のゴム部材24とが向き合うときには、これらのゴム部材14a、24の間にはフィードローラ10により繰り出される紙葉類Pが存在するようになるため、ゴム部材14a、24が直接接触することを極力防止することができるようになり、ゲートローラ20に対してトルクリミッタを設置しなくともこのゲートローラ20のゴム部材24が摩耗することを抑制することができる。
【0057】
また、本実施の形態では、前述したように、フィードローラ10の外周の長さは、紙葉類繰出装置1により繰り出されるべき紙葉類Pの繰り出し方向の最大の長さよりも大きくなっており、かつ、フィードローラ10の周方向における第1フィードローラ部分14のゴム部材14aは、紙葉類繰出装置1により繰り出されるべき紙葉類Pの繰り出し方向の最小の長さよりも小さくなっているため、ゴム部材14aによって2枚以上の紙葉類Pが連鎖状態や重送状態等で一度に繰り出されてしまうことを防止することができる。
【0058】
また、紙葉類繰出装置1を長時間使用したときには、フィードローラ10の第1フィードローラ部分14のゴム部材14aが摩耗するが、ゴム部材14aが摩耗して径長さ(フィードローラ10の中心からの距離)が第2フィードローラ部分16の第2の外周部16bや傾斜部16cの径長さよりも小さくなると、第2フィードローラ部分16とゲートローラ20との間にゲート部28が形成されるようになる。ここで、前述したように、傾斜部16cは、第1フィードローラ部分14の支持部材15からゴム部材14aに向かうに従って、フィードローラ10の回転中心からの距離が徐々に低下するようになっているため、フィードローラ10に対してゲートローラ20は滑らかに圧接するようになり、このゲートローラ20がバウンドすることを防止することができる。言い換えると、もし第2フィードローラ部分16が設けられていない場合には、第1フィードローラ部分14のゴム部材14aが摩耗したときに、第1フィードローラ部分14におけるゴム部材14aと支持部材15の外周との間に段差が生じてしまい、この段差の箇所においてフィードローラ10に対してゲートローラ20がバウンドしてしまい、紙葉類Pの繰り出し性能に悪影響を与えてしまうことがある。これに対し、第2フィードローラ部分16が設けられている場合には、第1フィードローラ部分14のゴム部材14aが摩耗し、第1フィードローラ部分14におけるゴム部材14aと支持部材15の外周との間に段差が生じてしまった場合でも、第2フィードローラ部分16の傾斜部16cによりこのような段差が補償されるため、フィードローラ10に対してゲートローラ20がバウンドしてしまうことはない。
【0059】
また、本実施の形態では、紙葉類繰出装置1による紙葉類Pの繰り出し動作が終了した後、紙葉類繰出装置1の待機時において、フィードローラ10を紙葉類Pの繰り出し方向とは逆方向に回転させることにより、ゲートローラ20もフィードローラ10と連れ回って紙葉類Pの繰り出し方向とは逆方向に回転する。このことにより、ゲートローラ20におけるフィードローラ10と当接する箇所を変えることができるようになるため、ゲートローラ20におけるゴム部材24の一部の箇所が集中的に摩耗してしまうこと(偏摩耗)を防止することができるようになる。
【0060】
以上のように本実施の形態の紙葉類繰出装置1によれば、フィードローラ10には、第1フィードローラ部分14の外周面における周方向の一部にゴム部材14aが設けられているとともに外周面におけるゴム部材14a以外の箇所にゴム部材14aよりも摩擦係数が小さい支持部材15と、第2フィードローラ部分16の第1の外周部16aとが設けられており、ゲートローラ20は、フィードローラ10の外周面に圧接して設けられている。このように、フィードローラ10の外周面の全周ではなく周方向の一部にゴム部材14aが設けられているため、ゲートローラ20に対してトルクリミッタの設置を省略することができるようになり、コストダウンおよび小型化を図ることができるようになる。しかも、ゲートローラ20は、フィードローラ10の外周面に圧接して設けられているため、様々な厚さやコシの強さを有する複数の種類の紙葉類Pを適切に繰り出すことができるようになる。
【0061】
また、本実施の形態の紙葉類繰出装置1によれば、フィードローラ10の第2フィードローラ部分16には、第1フィードローラ部分14におけるゴム部材14a(高摩擦部)と支持部材15(低摩擦部)との間の境界の箇所付近において傾斜部16cが設けられており、この傾斜部16cは、フィードローラ10の回転中心からの距離が、支持部材15からゴム部材14aに向かうに従って第1の外周部16aから徐々に減少するようになっている。このことにより、紙葉類繰出装置1を長時間使用することにより第1フィードローラ部分14におけるゴム部材14aが摩耗した場合でも、フィードローラ10に対してゲートローラ20がバウンドすることを防止することができる。
【0062】
また、本実施の形態の紙葉類繰出装置1によれば、フィードローラ10の第1フィードローラ部分14におけるゴム部材14aは、フィードローラ10の軸12に対して当該軸12の延びる方向とは直交する方向から着脱自在となっている。このことにより、紙葉類繰出装置1を長時間使用することにより第1フィードローラ部分14におけるゴム部材14aが摩耗した場合でも、このゴム部材14aの交換を容易に行うことができるようになる。すなわち、従来では、フィードローラの外周面に設けられたゴム部材が摩耗した場合には、フィードローラ自体を回転軸の軸方向に沿って移動することにより当該回転軸からフィードローラを取り外し、その後、新品のゴム部材が取り付けられたフィードローラを回転軸に取り付ける必要があったが、本実施の形態では、フィードローラ10自体を軸12の延びる方向に沿って当該軸12から取り外さなくても、ゴム部材14aの交換を行うことができるようになる。このことによって、ゴム部材14a(高摩擦部)のメンテナンスを容易に行うことができるとともに保守費用を低減することができる。
【0063】
なお、本実施の形態による紙葉類繰出装置は、上記の態様に限定されるものではなく、様々の変更を加えることができる。
【0064】
例えば、図1等に示す紙葉類繰出装置1では、フィードローラ10に対してゲートローラ20を圧接させることによりゲート部28を形成し、このようなゲート部28によって、フィードローラ10により繰り出される紙葉類Pを1枚ずつに分離しているが、ゲート部を形成するためのゲート部材としてはゲートローラ20に限定されることはない。ゲート部を形成するためのゲート部材として、ローラ以外の構成、具体的には例えばパッドを用いてもよい。
【0065】
また、フィードローラ10は、図6に示すような第1フィードローラ部分14および第2フィードローラ部分16からなる分割型のものに限定されることはない。フィードローラとして一体型のものが用いられてもよい。フィードローラとして一体型のものが用いられるときには、このフィードローラの外周面に設けられたゴム部材が摩耗した場合に、フィードローラ自体を回転軸の軸方向に沿って移動することにより当該回転軸からフィードローラを取り外し、その後、新品のゴム部材が取り付けられたフィードローラを回転軸に取り付けるようになる。
【0066】
また、フィードローラ10が分割型のものとなっている場合において、このフィードローラ10は、ゴム部材14aがフィードローラ10の軸12に対して当該軸12の延びる方向とは直交する方向から着脱自在となっているものに限定されることはない。フィードローラとして、ゴム部材(高摩擦部)が、回転軸に固定されたフィードローラの基体部に対して当該回転軸の延びる方向に沿って着脱自在となっていてもよい。
【0067】
以下、フィードローラが分割型のものとなっている場合における、様々なフィードローラの構成の例について図10乃至図13を用いて説明する。図10乃至図13は、それぞれ、本実施の形態の紙葉類繰出装置1におけるフィードローラの他の構成を示す斜視図である。
【0068】
図10に示すフィードローラ110では、軸112に対して、プラスチック製や金属製の略円板形状のものからなる基体部114が設けられている。また、この基体部114には、ゴム部材116が嵌合されるような切欠部114aが設けられている。そして、ゴム部材116はネジ118等により基体部114の切欠部114aに取り付けることができるようになっている。このように、図10に示すフィードローラ110では、ゴム部材116(高摩擦部)が、軸112に固定されたフィードローラ110の基体部114に対して当該軸112の延びる方向とは直交する方向から着脱自在となっている。
【0069】
図11に示すフィードローラ120では、軸122に対して、プラスチック製や金属製の略円板形状のものからなる基体部124が設けられている。また、この第1の基体部124には、図6における第2フィードローラ部分16と同様の構成の追加円板部134が接合されている。また、基体部124には、取り付け部材126が嵌合されるような切欠部124aが設けられている。取り付け部材126は、ゴム部材130と、このゴム部材130を支持する支持部材128とを有している。そして、取り付け部材126はネジ132等により基体部124の切欠部124aに取り付けることができるようになっている。このように、図11に示すフィードローラ120では、ゴム部材130(高摩擦部)が、軸122に固定されたフィードローラ120の基体部124に対して当該軸122の延びる方向とは直交する方向から着脱自在となっている。
【0070】
図12に示すフィードローラ140では、ゴム部材150と、このゴム部材150を支持する支持部材148とを有する取り付け部材146を、軸142に直接取り付けることができるようになっている。より詳細には、軸142には、取り付け部材146が嵌合する切欠部142aが設けられており、取り付け部材146は軸142の切欠部142aに取り付けることができるようになっている。また、軸142に対して、図6における第2フィードローラ部分16と同様の構成の追加円板部144が設けられている。このように、図12に示すフィードローラ140では、ゴム部材150(高摩擦部)が、軸142に対して当該軸142の延びる方向とは直交する方向から着脱自在となっている。
【0071】
図13に示すフィードローラ160でも、ゴム部材168と、このゴム部材168を支持する支持部材166とを有する取り付け部材164を、軸162に直接取り付けることができるようになっている。より詳細には、軸162にはネジ穴162aが設けられており、図示しないネジにより取り付け部材164を軸162におけるネジ穴162aの箇所に取り付けることができるようになっている。このように、図13に示すフィードローラ160では、ゴム部材168(高摩擦部)が、軸162に対して当該軸162の延びる方向とは直交する方向から着脱自在となっている。
【0072】
以上のように、図10乃至図13に示すような各フィードローラ110、120、140、160でも、フィードローラにおけるゴム部材は、フィードローラの軸やこの軸に設けられた基体部に対して当該軸の延びる方向とは直交する方向から着脱自在となっている。このことにより、紙葉類繰出装置1を長時間使用することによりフィードローラのゴム部材が摩耗した場合に、フィードローラ自体を軸の延びる方向に沿って当該軸から取り外さなくても、ゴム部材の交換を行うことができるようになる。このことによって、ゴム部材(高摩擦部)のメンテナンスを容易に行うことができるとともに保守費用を低減することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 紙葉類繰出装置
2 収納スペース
10 フィードローラ
12 軸
14 第1フィードローラ部分
14a ゴム部材
14b 第1の切欠部
14c 第2の切欠部
14d ネジ穴
14e 縁部
15 支持部材
16 第2フィードローラ部分
16a 第1の外周部
16b 第2の外周部
16c 傾斜部
17 ネジ
18 カバー部材
20 ゲートローラ
22 軸
24 ゴム部材
26 ワンウェイクラッチ
27 ゲートローラ支持アーム
27a 軸
28 ゲート部
30 キッカローラ
32 軸
34 ゴム部材
40 補助搬送ローラ
42 軸
44 平らな部分
50 送りローラ
51 ピンチローラ
52 ゴム部材
54 基体部
60 第1搬送ローラ
62 第1対向ローラ
64 第2搬送ローラ
66 第2対向ローラ
68 紙葉類検出センサ
70 押さえ部材
72、74 案内部材
110 フィードローラ
112 軸
114 基体部
114a 切欠部
116 ゴム部材
118 ネジ
120 フィードローラ
122 軸
124 基体部
124a 切欠部
126 取り付け部材
128 支持部材
130 ゴム部材
132 ネジ
134 追加円板部
140 フィードローラ
142 軸
142a 切欠部
144 追加円板部
146 取り付け部材
148 支持部材
150 ゴム部材
160 フィードローラ
162 軸
162a ネジ穴
164 取り付け部材
166 支持部材
168 ゴム部材
P 紙葉類
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15