特許第6000675号(P6000675)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000675
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】画像読取装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/00 20060101AFI20160923BHJP
   H04N 1/04 20060101ALI20160923BHJP
   B65H 7/12 20060101ALI20160923BHJP
【FI】
   H04N1/00 108J
   H04N1/00 108M
   H04N1/12 A
   B65H7/12
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-134936(P2012-134936)
(22)【出願日】2012年6月14日
(65)【公開番号】特開2013-258641(P2013-258641A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2015年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082337
【弁理士】
【氏名又は名称】近島 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100095991
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 善朗
(74)【代理人】
【識別番号】100141508
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 隆史
(72)【発明者】
【氏名】小田桐 眞人
【審査官】 豊田 好一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−266767(JP,A)
【文献】 特開2011−244089(JP,A)
【文献】 特開2011−111317(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
B65H 7/12
H04N 1/04−20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路内で原稿を搬送する搬送手段と、
前記搬送路内で搬送される原稿を読み取る読取手段と、
前記読取手段で読み取られた原稿を排出する排出手段と、
前記搬送路内で原稿の重送を検知する重送検知手段と、
前記重送検知手段の検知結果から求めた原稿の重送領域が前記排出手段を通過している間に、原稿の排出動作を停止させる制御手段と、を備え、
前記搬送路内を搬送される原稿の先端を検知する先端検知手段を有し、
前記制御手段は、前記先端検知手段により検知した原稿の先端と前記重送領域との間の非重送領域が前記排出手段を通過した後に、原稿の排出を停止させることを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記重送検知手段は、前記搬送路内を搬送される原稿の厚さ方向両側に配置された、超音波を発信する超音波発信手段と、前記超音波発信手段から発信された超音波を受信する超音波受信手段と、を有し、
前記制御手段は、前記超音波受信手段が受信した超音波が所定の閾値よりも減衰した領域を前記重送領域とする、
ことを特徴とする、請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
原稿の排出の停止を解除する解除部を有し、
前記制御手段は、前記重送検知手段が重送を検知した後でも、原稿の排出を停止させるまでは前記読取手段による原稿の読み取りを継続し、原稿の排出の停止に伴い前記読取手段による原稿の読み取りを中断し、前記解除部により原稿の排出の停止が解除された場合に、原稿の排出及び原稿の読み取りを再開する、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の画像読取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送路内を搬送される原稿の読み取りを行う画像読取装置に関し、特に、搬送路内で原稿が重送された場合の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、原稿の搬送路上に読取手段としての画像読取部を配置し、画像読取部で搬送される原稿の画像を読み取る画像読取装置が提案されている。このような画像読取装置として、例えば、給紙トレイに複数重ねて載置された1枚の原稿を給送ローラで搬送路内に搬送しつつ、分離ローラで他の原稿から分離する構造が知られている。但し、このような構造であっても、複数の原稿が重なって搬送路内に搬送される重送が生じる場合がある。そこで、このような重送を検知する構造が従来から知られている。
【0003】
また、重送を検知した場合に、原稿を排出するところで原稿の搬送を停止する構造が提案されている(特許文献1)。図16に示すように、重送状態の原稿90a、90bが排出手段としての排出ローラ12に挟持された状態で排出が停止されれば、重送状態の原稿90a、90bが、排紙トレイ13に排出されることを防止できる。重送した原稿は、再度、画像読取処理を行ったりする必要があるため、既に画像読取処理を正常に終了し、排紙トレイに載置された原稿と混在することは好ましくない。したがって、図16に示すように、重送状態の原稿90a、90bを排出ローラ12で停止できれば、重送状態の原稿90a、90bが、既に画像読取処理を正常に終了し、排紙トレイに載置された原稿と混在することを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-271537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、原稿が重送される場合、重送状態として様々な場合がある。例えば、図17(A)に示すように、原稿同士が重なっている重送領域91が大きい場合や、図17(B)に示すように、重送領域92が小さい場合がある。したがって、このような重送領域を考慮せずに、重送を検知した時に原稿の排出を停止した場合、重送領域によっては、図18に示すように、重送された原稿の一部(原稿90a)が排紙トレイ13に排出されてしまう可能性がある。そして、原稿90aが排出されてしまうと、既に画像読取処理を正常に終了し、排紙トレイ13に載置された原稿90cと混在してしまう。
【0006】
この場合、操作者は、画像読取装置が重送状態を検知し、処理を中断した時に、排紙トレイ13に載置された原稿について全て処理が完了しているか否かを確認しなければならず、作業効率を低下させる要因となっていた。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、重送状態に拘らず、重送した原稿の一部が排出されてしまうことを防止できる構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、搬送路内で原稿を搬送する搬送手段と、
前記搬送路内で搬送される原稿を読み取る読取手段と、
前記読取手段で読み取られた原稿を排出する排出手段と、
前記搬送路内で原稿の重送を検知する重送検知手段と、
前記重送検知手段の検知結果から求めた原稿の重送領域が前記排出手段を通過している間に、原稿の排出動作を停止させる制御手段と、
を備え、
前記搬送路内を搬送される原稿の先端を検知する先端検知手段を有し、
前記制御手段は、前記先端検知手段により検知した原稿の先端と前記重送領域との間の非重送領域が前記排出手段を通過した後に、原稿の排出を停止させることを特徴とする画像読取装置にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、原稿の重送領域が排出手段を通過している間に、原稿の排出を停止させるため、重送状態に拘らず、重送した原稿の一部が排出されてしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係る画像読取装置を模式的に示す斜視図。
図2】第1の実施形態に係る画像読取装置とホストコンピュータとの接続状態を模式的に示す斜視図。
図3】第1の実施形態に係る画像読取装置の概略構成断面図。
図4】第1の実施形態に係る画像読取装置の制御ブロック図。
図5】第1の実施形態に係るホストコンピュータの読取処理のシーケンス図。
図6】第1の実施形態に係る画像読取装置の読取処理のシーケンス図。
図7】第1の実施形態に係る画像読取装置の重送処理のシーケンス図。
図8】重送領域を示す模式図。
図9】本発明の第2の実施形態に係る画像読取装置の斜視図。
図10】第2の実施形態に係る画像読取装置を一部省略して示す概略構成断面図。
図11】第2の実施形態に係るホストコンピュータの読取処理のシーケンス図。
図12】第2の実施形態に係る画像読取装置の重送処理のシーケンス図。
図13】重送した原稿の排出が停止された状態を示す断面図。
図14】付箋紙が付された原稿の斜視図。
図15】第2の実施形態に係る画像読取装置の重送解除処理のシーケンス図。
図16】排出ローラで重送した原稿の排出が停止された状態を示す図。
図17】(A)重送領域が大きい状態を、(B)重送領域が小さい状態を、それぞれ示す模式図。
図18】重送した原稿の一部が排出されてしまった状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について、図1ないし図8を用いて説明する。まず、本実施形態の画像読取装置1の全体構成について、図1ないし図4を用いて説明する。
【0012】
[画像読取装置]
図1に示すように、画像読取装置1は、読取処理を行う原稿を載置するための原稿載置部としての給紙トレイ4、原稿を搬送する為の搬送路14、搬送路14から排出された原稿が載置される排紙トレイ13を有している。給紙トレイ4には、トレイ上に原稿が載置されているか否かを検知する原稿検知センサ4aを有する。このような画像読取装置1は、図2に示すように、ホストコンピュータ2と通信ケーブル3を介して接続されている。
【0013】
また、画像読取装置1は、図3に示すように、搬送路内に、給送ローラ5、分離ローラ6、搬送ローラ7、重送検知センサ8、レジストセンサ9、イメージセンサ10、11、排出ローラ12などを備える。
【0014】
給送ローラ5、搬送ローラ7などの原稿を搬送路14内で搬送する各種ローラが搬送手段に相当する。これら給送ローラ5、搬送ローラ7などの各種ローラは、駆動手段としてのモータMにより回転駆動される。
【0015】
重送検知センサ8は、搬送路14内で複数の原稿が重なって搬送される重送を検知する重送検知手段である。重送検知センサ8は、搬送路内を搬送される原稿の厚さ方向両側に配置された、超音波を発信する超音波発信手段としての超音波発信器8aと、超音波発信器8aから発信された超音波を受信する超音波受信手段としての超音波受信器8bとを有する。そして、原稿が1枚通過した場合と、複数の原稿が重なって搬送された場合との、超音波受信器8bが受信した信号(超音波)の違いから、重送を検知する。
【0016】
例えば、原稿が2枚重ねて重送された場合、原稿同士の間に空気層が存在する。このような空気層が存在すると、通過する超音波が減衰する。このため、超音波受信器8bが受信した信号(超音波)の違いから重送を検知できる。なお、重送を検知するセンサは、このような超音波を用いて構成以外に、例えば、光を用いた従来から知られている他の構成を使用することもできる。
【0017】
レジストセンサ9は、搬送路14内を搬送される原稿の先端を検知する先端検知手段である。レジストセンサ9は、例えば、搬送路内を搬送される原稿の厚さ方向両側に配置された、光を発する発光部と、発光部から発せられた光を受光する受光部とを備えたフォトセンサを使用できる。そして、搬送される原稿により発光部から発せられた光が遮られることにより、原稿の先端が通過したことを検知する。
【0018】
イメージセンサ10、11は、搬送路14内を搬送される原稿を読み取る読取手段である。イメージセンサ10は、原稿の表の情報を読み取る表用画像読取部で、イメージセンサ11は、原稿の裏の情報を読み取る裏用画像読取部である。イメージセンサ10、11は、例えば、CIS(Contact Image Sensor)などのセンサを使用する。
【0019】
排出ローラ12は、イメージセンサ10、11で読み取られた原稿を排出する排出手段である。この排出ローラ12は、上述の給送ローラ5などを駆動するモータMにより回転駆動される。即ち、給送ローラ5、搬送ローラ7などの各種ローラ、排出ローラ12は、1個のモータMにより同期して回転駆動される。なお、モータを複数配置して、何れかのモータと他のモータとを個別に制御しても良い。
【0020】
画像読取装置1は、ホストコンピュータ2で起動している不図示のキャプチャアプリケーションから画像読取の指示を受けると、給紙トレイ4に載置された複数の原稿を1枚ずつ分離ローラ6で分離しながら、給送ローラ5により搬送路内に搬送する。搬送路14内に搬送された原稿は、搬送ローラ7により更に搬送され、レジストセンサ9により先端が検知される。その後、原稿は、読取手段としてのイメージセンサ10、11を通過する際に、原稿の表又は裏の情報が読み取られ、排出手段としての排出ローラ12により、排紙トレイ13に排出される。
【0021】
ここで、レジストセンサ9とイメージセンサ10との搬送路上の距離をL1、原稿の搬送速度をvとすると、原稿の先端は、レジストセンサ9で検知されてから時間L1/v後にイメージセンサ10に到達する。したがって、画像読取装置1は、レジストセンサ9によって原稿の先端が通過したのを検知すると、不図示のタイマを用いて時間の測定を行う。そして、原稿の先端がレジストセンサ9を通過した時間からL1/v経過後に、イメージセンサ10により原稿の表画像(情報)の読取を行う。
【0022】
同様に、レジストセンサ9とイメージセンサ11との搬送路上の距離をL2、原稿の搬送速度をvとすると、原稿の先端は、レジストセンサ9で検知されてから時間L2/v後にイメージセンサ11に到達する。したがって、画像読取装置1は、レジストセンサ9によって原稿の先端が通過したのを検知すると、不図示のタイマを用いて時間の測定を行う。そして、原稿の先端がレジストセンサ9を通過した時間からL2/v経過後に、イメージセンサ11により原稿の裏画像(情報)の読取を行う。
【0023】
表画像、裏画像の読取を終えた画像読取装置1は、通信ケーブル3を介して画像データをホストコンピュータ2へ転送するとともに、原稿を排紙トレイ13に排紙する。
【0024】
このような画像読取装置1は、制御手段としてのCPU80により制御される。CPU80は、図4に示すように、給送手段81、搬送手段82、重送検知手段83、画像読取手段84を制御する。給送手段81は、上述した給紙トレイ4に載置されている原稿を搬送路14へ給送する為の給送ローラ5である。搬送手段82は、上述の搬送路14で原稿を搬送する搬送ローラ7などのローラである。重送検知手段83は、上述の重送検知センサ8である。画像読取手段84は、上述のイメージセンサ10、11である。このようなCPU80は、I/F85により、通信ケーブル3を介して接続されているホストコンピュータ2からの指示を受信、若しくは、画像読取装置1の状態をホストコンピュータ2へ転送する。
【0025】
[画像読取のシーケンス]
次に、上述の画像読取装置1の画像読取のシーケンスについて説明する。まず、図5を用いて、ホストコンピュータ2のシーケンスについて説明する。S1000において、操作者の指示により画像読取の開始処理を始めたホストコンピュータ2は、S1001において、画像読取装置1に対して読取指示を行う。そして、ホストコンピュータ2は、S1002において、画像読取装置1で読み取られた画像をI/F85を介して受信し、適正な処理を実行後、S1003において、処理を終了する。
【0026】
次に、図5のS1001で読取指示をされた画像読取装置1のシーケンスについて、図6を用いて説明する。ホストコンピュータ2から読取の指示をされた画像読取装置1のCPU80は、S2000において読取処理を開始する。CPU80は、S2001において、原稿検知センサ4aにより給紙トレイ4に原稿が載置されているか否かを検知する。原稿が載置されていなければ、CPU80は、S2007において、処理を終了する。
【0027】
一方、S2001において、給紙トレイ4に原稿が載置されていることを検知したCPU80は、S2002において、分離ローラ6で重送しないように1枚ずつ分離しながら給送ローラ5により搬送路14の搬送方向下流へ原稿の給送を行う。搬送路14へ原稿を給送したCPU80は、S2003において画像読取処理を行う。
【0028】
画像読取処理を開始したCPU80は、S2004において、重送検知センサ8を用いて、原稿が重送した状態で搬送されているか否かを検出する。S2004でCPU80が、原稿が重送した状態で搬送されていないと認識した場合は、S2005において、原稿が排紙トレイ13へ排出される事を監視する。なお、原稿が排紙トレイ13に排出されたか否かは、例えば、排出ローラ12の近傍に、フォトセンサなどの原稿を検知する原稿検知センサを配置し、原稿の後端が所定時間以内に原稿検知センサを通過したことを検知することにより行う。原稿の後端が所定時間以内に原稿検知センサを通過しなければ、ジャムが生じたと判断して、ジャム処理を行う。
【0029】
S2005において、原稿が排紙トレイ13に排出されたことを検知したCPU80は、読み取った画像データをI/F85を介してホストコンピュータ2に転送し、S2007において処理を終了する。
【0030】
一方、CPU80は、S2004において、原稿が重送した状態で搬送されている事を検知した場合は、S2006において、重送処理を行う。
【0031】
[重送処理]
次に、図6のS2006に置いて重送処理を開始した場合のシーケンスについて、図7及び図8を用いて説明する。S3000において、重送処理を開始したCPU80は、重送検知センサ8の検知結果からS3001において重送した原稿の重なり合った重送領域を求める。即ち、図8に示すように、原稿90aと原稿90bと重なった重送領域93を検出する。重送領域93の検出は、次のように行う。即ち、重送検知センサ8により重送状態が検知されたら、そのまま原稿の搬送を継続し、重送検知センサ8の超音波受信器8bが受信した信号(超音波)が所定の閾値よりも減衰した領域を重送領域93とする。ここで、所定の閾値とは、予め設定された、重送された場合とされていない場合とを判別するための超音波受信器8bが受信した信号の閾値である。
【0032】
前述したように、原稿が重送状態である場合、超音波受信器8bが受信した信号が、重送状態でない場合と比べて減衰されるため、所定の閾値を超えて減衰された領域を重送領域として求めることができる。本実施形態では、次述するように、重送領域93が排出ローラ12を通過している間に原稿の排出を停止すれば良いため、この重送領域93が厳密に求められなくても良い。言い換えれば、実際の重送領域の一部が検出でき、この検出された重送領域が排出ローラ12を通過している間に原稿の排出を停止すれば足りる。勿論、センサとして精度の高いものを使用し、原稿の情報などの他の条件を付加することにより、実際の重送領域とほぼ同じ領域を求めることができる場合には、正確に求めて次述する制御を行うこともできる。
【0033】
何れにしても、求めた重送領域93の搬送方向の長さを、図8に示すようにDとする。また、レジストセンサ9から原稿の先端を検知できることから、図8に示すように、原稿90aの先端と重送領域93との間の、原稿90aと原稿90bとが重なっていない非重送領域94を求めることができる。この非重送領域94の搬送方向の長さをd1とする。
【0034】
図7のS3001において重送領域93及び非重送領域94が求められたら、S3002において、CPU80は、重送領域93が排出ローラ12に到達したか否かを判断する。ここで、レジストセンサ9と排出ローラ12との搬送路上の距離をL3、原稿の搬送速度をvとすると、図8より非重送領域94の長さがd1なので、(L3+d1)/v後に重送領域93が排出ローラ12に到達することになる。
【0035】
したがって、CPU80は、レジストセンサ9によって原稿90aの先端が通過したのを検知したら、不図示のタイマを用いて時間の測定を行う。そして、原稿90aの先端がレジストセンサ9を通過した時間から(L3+d1)/v経過するまで、原稿90aと原稿90bの搬送を継続する。
【0036】
CPU80は、S3002において、レジストセンサ9によって原稿90aの先端が通過したのを検知してから、上述のように算出した時間(L3+d1)/vが経過されるのを待機する。そして、CPU80は、S3003において、この時間(L3+d1)/vが経過したら、原稿90aと原稿90bの排出及び搬送を停止する。即ち、非重送領域94が排出ローラ12を通過した後に、原稿の排出動作を停止する。これにより、重送領域93が排出ローラ12を通過している間に、原稿の排出動作を停止できる。言い換えれば、重送領域93が排出ローラ12に挟持された状態で排出が停止される。その後、CPU80は、S3004で処理を終了する。
【0037】
なお、CPU80が、レジストセンサ9によって原稿90aの先端が通過したのを検知してから待機する時間は、図8より重送領域93の長さDであることから、(L3+d1)/vから(L3+d1+D)/vまでの間であれば、何れでも良い。
【0038】
本実施形態の場合、このように重送領域93が排出ローラ12を通過している間に、原稿の排出を停止させるため、重送状態に拘らず、重送した原稿の一部が排出されてしまうことを防止できる。即ち、前述の図17(A)、(B)の何れの状態であっても、重送領域93を求め、この重送領域93が排出ローラ12を通過している間に原稿の排出を停止できる。このため、前述の図18に示したように、重送状態によって原稿の一部(原稿90b)が排紙トレイ13に排出されてしまうことを防止できる。この結果、重送された原稿と、正常に画像処理が行われて排紙トレイ13に排出された原稿とが混在することを防止でき、作業効率を向上させられる。また、重送状態の原稿を排出ローラ12のところまで搬送してから、原稿の搬送及び排出を停止しているため、重送状態の原稿を取り出し易い。
【0039】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について、図9ないし図15を用いて説明する。本実施形態の画像読取装置1Aは、図9に示すように、原稿を載置するための原稿載置部としての給紙トレイ4A、原稿を搬送する為の搬送路14Aが設けられている。このような本実施形態の場合、給紙トレイ4Aから搬送路14Aに搬送された原稿は、第1の実施形態のように、折り返されることなく排出される。また、本実施形態の画像読取装置1Aは、第1の実施形態のような排紙トレイ13を設けておらず、排出された原稿は、画像読取装置1Aが載置された部分に直接排出される。
【0040】
図10に示すように、このような本実施形態の画像読取装置1Aも、第1の実施形態と同様に、搬送路内に、搬送ローラ7、重送検知センサ8、レジストセンサ9、イメージセンサ10、11、排出ローラ12などを備える。これらに構成及び作用については、第1の実施形態の場合と同様である。また、本実施形態の場合も、画像読取装置1Aは、図2に示した場合と同様に、ホストコンピュータ2に接続される。更に、画像読取装置1Aは、図4に示した場合と同様に、CPU80を有し、CPU80は、給送手段81を除く各種手段を制御する。
【0041】
このような本実施形態の画像読取装置1Aは、第1の実施形態のように原稿の重送を検知して原稿の排出及び搬送を停止した後に、原稿の排出の停止が解除された場合、原稿の排出及び原稿の読み取りを再開する制御を行う。以下、具体的に説明する。
【0042】
まず、本実施形態におけるホストコンピュータ2のシーケンスについて、図11を用いて説明する。S7000において、画像読取の開始処理を始めたホストコンピュータ2は、S7001において、画像読取装置1Aに対して読取指示を行う。その後、ホストコンピュータ2は、S7002において、画像読取装置1Aによる原稿の給送状態を監視する。ホストコンピュータ2から読取の指示をされた画像読取装置1AのCPU80は、前述の図6に示した場合と同様に、読取処理を開始する。そして、図6のS2004において、原稿が重送していない状態で搬送されていることを検知した場合は、CPU80からホストコンピュータ2に対して、正常に搬送されていることを通知される。
【0043】
図11のS7002において、画像読取装置1Aが原稿を正常に搬送している旨の通知を受けたホストコンピュータ2は、S7005において、画像読取装置1Aから転送された画像データを受信し、適正な処理を実行する。
【0044】
一方、図6のS2004において、重送状態を検知した場合は、S2006において、重送処理を行う。本実施形態の場合、重送処理は、図12に示すシーケンスにより行う。図12のS5000において、重送処理を開始した画像読取装置1AのCPU80は、S5001において、第1の実施形態と同様に、重送領域93(図8参照)を検出する。
【0045】
S5002において、CPU80は、第1の実施形態と同様に、重送領域93が排出ローラ12に到達したか否かを判断する。次いで、S5002において、重送領域93が排出ローラ12に到達するまでの時間が経過されるのを待機したCPU80は、S5003において、原稿の排出及び搬送を停止する。この際、イメージセンサ10、11による原稿の読み取りを継続する。即ち、重送検知センサ8が原稿の重送を検知した後でも、原稿の排出を停止させるまではイメージセンサ10、11による原稿の読み取りを継続する。
【0046】
ここで、原稿の排出を停止した場合、図13に示すような位置で、原稿90aと原稿90bとが停止される場合がある。図13では、原稿90aと重なった原稿90bの後端部は、イメージセンサ10、11を通過していない。しかし、搬送した原稿は、図14に示すように、原稿90bに付箋紙95が付された原稿の可能性もある。言い換えれば、原稿90aが付箋紙95である場合もある。この場合、操作者が意図して付箋紙95を付している可能性があり、このような場合にも重送エラーと判定することは、操作者の意図に反する。そこで、本実施形態では、次のような処理を実行するようにしている。
【0047】
まず、CPU80は、S5003において原稿の排出及び搬送を停止すると共に、搬送速度の減速に合わせて、S5004において画像読取の中断を行う。次いで、CPU80は、S5005において、ホストコンピュータ2に対して重送状態が発生した旨を通知し、S5006において、発生した重送状態に対する処置が確定するのを監視する。
【0048】
一方、図11のS7002において、原稿が重送した状態で搬送されていることを検知したホストコンピュータ2は、S7003において、発生した重送状態を解除すべきか否か、操作者による指示を監視する。本実施形態では、ホストコンピュータ2が、原稿の排出の停止を解除する解除部に相当する。重送をエラーとして処理するように操作者から指示を受けたホストコンピュータ2は、画像読取装置1AのCPU80に対してその旨を通知した後、S7006で処理を終了する。
【0049】
これに対して、重送を解除する処理を行うように操作者から指示を受けたホストコンピュータ2は、S7004で、画像読取装置1AのCPU80に対して解除指示を行い、S7005で画像読取処理を再開する。
【0050】
図12のS5006において、重送状態に対する処置が確定したことを検知した画像読取装置1AのCPU80は、S5007で、確定した処置に従って処理を行う。確定した処理が、重送状態をエラーとして処理する指示であった場合、CPU80は、S5008において重送処理を終了する。一方、確定した処理が、重送状態の解除を行う指示であった場合、CPU80は、S5009において、重送解除処理を行う。
【0051】
重送解除処理は、図15に示すようなシーケンスで行われる。S6000において、重送解除処理を開始した画像読取装置1AのCPU80は、S6001において画像読取の再開指示をすると共に、S6002で原稿の排出及び搬送の再開を行い、搬送速度の加速に応じて画像読取の再開を行う。
【0052】
ここで、画像読取の再開を行う場合、画像の読み取り位置が搬送を停止させた位置からずれる可能性がある。このため、各種ローラを駆動するモータM(図1参照)がDCモータである場合には、モータの回転角度を検知するエンコーダを設け、このエンコーダからの信号に基づいて、読取再開時に、読取位置を補正することが好ましい。また、モータMがパルスモータである場合には、パルス数を監視して、読取再開時に、読取位置を補正することもできる。
【0053】
次いで、CPU80は、S6003において、原稿が排出されるのを監視する。S6003において、原稿が排出されたことを検出したCPU80は、S6004で搬送を停止させ、そして、S6005で重送解除処理を終了する。
【0054】
本実施形態の場合、重送により原稿の排出が停止された場合でも、操作者の指示により原稿の読み取りを再開できる。このため、操作者は、例えば、付箋紙が付された状態の原稿の画像読取を行うことが可能となり、作業効率を向上させられる。その他の構造及び作用は、上述の第1の実施形態と同様である。
【0055】
<その他の実施形態>
上述の各実施形態では、重送検知手段として超音波を用いたい構造について説明したが、例えば、光を用いて、光の透過量の差により重送を検知することもできる。この場合、透過量が低減された領域を重送領域とすれば、本発明のような制御が可能である。
【0056】
また、制御手段は、画像読取装置本体に有する以外に、ホストコンピュータなどの外部端末に設けても良い。また、上述の各実施形態では、原稿の排出の停止を解除する解除部をホストコンピュータとしたが、この解除部を画像読取装置本体に設けても良い。更に、画像読取開始などの指示についても、画像読取装置側で行うようにしても良い。
【符号の説明】
【0057】
1、1A・・・画像読取装置、2・・・ホストコンピュータ(解除部)、5・・・給送ローラ(搬送手段)、7・・・搬送ローラ(搬送手段)、8・・・重送検知センサ(重送検知手段)、8a・・・超音波発信器(超音波発信手段)、8b・・・超音波受信器(超音波受信手段)、9・・・レジストセンサ(先端検知手段)、イメージセンサ10、11(読取手段)、12・・・排出ローラ(排出手段)、14、14A・・・搬送路、80・・・CPU(制御手段)、90a、90b・・・原稿、93・・・重送領域、94・・・非重送領域、95・・・付箋紙
図1
図2
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