特許第6000687号(P6000687)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000687
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】帯電粒子発生装置
(51)【国際特許分類】
   H01T 23/00 20060101AFI20160923BHJP
   A61L 9/22 20060101ALI20160923BHJP
【FI】
   H01T23/00
   A61L9/22
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-143929(P2012-143929)
(22)【出願日】2012年6月27日
(65)【公開番号】特開2014-7125(P2014-7125A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西尾 達也
【審査官】 片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−161561(JP,A)
【文献】 特開2006−230706(JP,A)
【文献】 特開2004−081693(JP,A)
【文献】 特開2011−226348(JP,A)
【文献】 特開2009−195740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 23/00
A61L 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電によって帯電粒子を発生する帯電粒子発生部と、
前記帯電粒子を外部に吹き出すための吹出口と、
前記帯電粒子を前記吹出口に向けて搬送するための送風機と、
前記帯電粒子発生部および前記送風機に電力を供給する蓄電装置と、
前記帯電粒子発生部を駆動し、送風のための電力を前記蓄電装置から前記送風機へ供給する第1の運転モードと、前記帯電粒子発生部を駆動し、前記蓄電装置から前記送風機への電力の供給を停止する第2の運転モードとを切り替えるための切替装置と、
前記切替装置を制御する制御装置とを備え
前記制御装置は、前記第1の運転モードが所定時間継続したときに、前記第2の運転モードへ切り替えるように前記切替装置を制御する、帯電粒子発生装置。
【請求項2】
放電によって帯電粒子を発生する帯電粒子発生部と、
前記帯電粒子を外部に吹き出すための吹出口と、
前記帯電粒子を前記吹出口に向けて搬送するための送風機と、
前記帯電粒子発生部および前記送風機に電力を供給する蓄電装置と、
前記帯電粒子発生部を駆動し、送風のための電力を前記蓄電装置から前記送風機へ供給する第1の運転モードと、前記帯電粒子発生部を駆動し、前記蓄電装置から前記送風機への電力の供給を停止する第2の運転モードとを切り替えるための切替装置と、
前記切替装置を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記第1の運転モードと前記第2の運転モードとを交互に切り替えるように前記切替装置を制御する、帯電粒子発生装置。
【請求項3】
放電によって帯電粒子を発生する帯電粒子発生部と、
前記帯電粒子を外部に吹き出すための吹出口と、
前記帯電粒子を前記吹出口に向けて搬送するための送風機と、
前記帯電粒子発生部および前記送風機に電力を供給する蓄電装置と、
前記帯電粒子発生部を駆動し、送風のための電力を前記蓄電装置から前記送風機へ供給する第1の運転モードと、前記帯電粒子発生部を駆動し、前記蓄電装置から前記送風機への電力の供給を停止する第2の運転モードとを切り替えるための切替装置と、
前記切替装置を制御する制御装置と、
外部電源に接続され、前記外部電源からの電力を受ける受電部とを備え、
前記制御装置は、前記受電部によって前記外部電源から電力を受けているときに、前記第1の運転モードへ切り替えるように前記切替装置を制御する、帯電粒子発生装置。
【請求項4】
放電によって帯電粒子を発生する帯電粒子発生部と、
前記帯電粒子を外部に吹き出すための吹出口と、
前記帯電粒子を前記吹出口に向けて搬送するための送風機と、
前記帯電粒子発生部および前記送風機に電力を供給する蓄電装置と、
前記帯電粒子発生部を駆動し、送風のための電力を前記蓄電装置から前記送風機へ供給する第1の運転モードと、前記帯電粒子発生部を駆動し、前記蓄電装置から前記送風機への電力の供給を停止する第2の運転モードとを切り替えるための切替装置と、
前記切替装置を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記蓄電装置の充電状態を示す状態量が所定値よりも低下したときに、前記第2の運転モードへ切り替えるように前記切替装置を制御する、帯電粒子発生装置。
【請求項5】
利用者の操作を入力するための入力部をさらに備え、
前記制御装置は、前記入力部からの入力に基づいて、前記第1の運転モードと前記第2の運転モードとを切り替えるように前記切替装置を制御する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の帯電粒子発生装置。
【請求項6】
前記帯電粒子発生部は、針状の放電電極を含み、
前記針状の放電電極は、前記帯電粒子を外部に吹き出す方向に沿って伸びる、請求項1〜のいずれか1項に記載の帯電粒子発生装置。
【請求項7】
前記送風機は、前記蓄電装置から供給される電力が大きいほど風量が大きくなる、請求項1〜のいずれか1項に記載の帯電粒子発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、帯電粒子発生装置に関し、特に、蓄電装置を有する帯電粒子発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン発生装置が放電によって発生したイオンを外部の空間へ拡散する方法が知られている。
【0003】
たとえば、特開2011−226348号公報(特許文献1)は、イオンを発生する携帯型送風装置を開示している。この携帯型送風装置では、外気は、送風ファンの駆動によって吸込口から空気通路に流入し、吹出口から排出される。この空気通路には、イオンを発生するイオン発生装置が設けられている。このため、発生したイオンは、送風ファンが発生する風によって遠方かつ広範囲に拡散され、単位体積当たりのイオン濃度を上昇させることができる(特許文献1参照)。
【0004】
特開2009−195740号公報(特許文献2)は、マイナスイオンを放出する空気清浄活性器を開示している。この空気清浄活性器は、マイナスイオンの発生によって生成される電子風を利用しマイナスイオンを拡散し、電子風の方向がイオン放出口となる真下方向に向くように天井に設置される。これにより、送風ファンを用いることなくマイナスイオンを拡散することができる(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−226348号公報
【特許文献2】特開2009−195740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の携帯型送風装置は、イオンなどの帯電粒子を発生するための電力および送風ファンなどの送風機を駆動するための電力を供給するための蓄電装置を備える。蓄電装置の供給可能電力量は、送風機による電力消費によって低下する。これにより、帯電粒子を発生するための電力量が減少するため、帯電粒子を発生することができる時間が短くなる。
【0007】
一方、上記特許文献2に記載の空気清浄活性器では、送風機による電力消費は発生しないものの、電子風のみを用いるので帯電粒子を遠方かつ広範囲に拡散することができない場合がある。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、省電力化を図ることができる帯電粒子発生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明によれば、帯電粒子発生装置は、帯電粒子発生部と、吹出口と、送風機と、蓄電装置と、切替装置と、制御装置とを備える。帯電粒子発生部は、放電によって帯電粒子を発生する。吹出口は、帯電粒子を外部に吹き出すための吹出口である。送風機は、帯電粒子を吹出口に向けて搬送するための送風機である。蓄電装置は、帯電粒子発生部および送風機に電力を供給する。切替装置は、第1の運転モードと、第2の運転モードとを切り替える。第1の運転モードでは、帯電粒子発生部が駆動され、送風のための電力は、蓄電装置から送風機へ供給される。第2の運転モードでは、帯電粒子発生部が駆動され、蓄電装置から送風機への電力の供給が停止される。制御装置は、切替装置を制御する。
【0010】
好ましくは、帯電粒子発生装置は、入力部をさらに備える。入力部は、利用者の操作を入力するための入力部である。制御装置は、入力部からの入力に基づいて、第1の運転モードと第2の運転モードとを切り替えるように切替装置を制御する。
【0011】
好ましくは、制御装置は、第1の運転モードが所定時間継続したときに、第2の運転モードへ切り替えるように切替装置を制御する。
【0012】
好ましくは、制御装置は、第1の運転モードと第2の運転モードとを交互に切り替えるように切替装置を制御する。
【0013】
好ましくは、帯電粒子発生装置は、受電部をさらに備える。受電部は、外部電源に接続される。受電部は、外部電源からの電力を受ける。制御装置は、受電部によって外部電源から電力を受けているときに、第1の運転モードへ切り替えるように切替装置を制御する。
【0014】
好ましくは、制御装置は、蓄電装置の充電状態を示す状態量が所定値よりも低下したときに、第2の運転モードへ切り替えるように切替装置を制御する。
【0015】
好ましくは、帯電粒子発生部は、針状の放電電極を含む。針状の放電電極は、帯電粒子を外部に吹き出す方向に沿って伸びる。
【0016】
好ましくは、送風機は、蓄電装置から供給される電力が大きいほど風量が大きくなる。
【発明の効果】
【0017】
この発明においては、切替装置によって、第1の運転モードと、第2の運転モードとを切り替えることができる。第2の運転モードでは、蓄電装置から送風機への電力の供給が停止される。これにより、第2の運転モードでは、第1の運転モードよりも送風機の消費電力を抑制することができる。したがって、この発明によれば、省電力化を図ることができる帯電粒子発生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】この発明の実施の形態1によるイオン発生装置の分解斜視図である。
図2図1に示すイオン発生素子の斜視図である。
図3図1に示すイオン発生装置の構成を示すブロック図である。
図4】この発明の実施の形態2によるイオン発生装置の構成を示すブロック図である。
図5】この発明の実施の形態3によるイオン発生装置の構成を示すブロック図である。
図6】この発明の実施の形態4によるイオン発生装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0020】
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1によるイオン発生装置の分解斜視図である。図1を参照して、イオン発生装置100は、ケース1と、送風ファン3と、バッテリ7と、スイッチ8と、外部端子9と、イオン発生素子20とを備える。
【0021】
ケース1は、上側ケース1aと、下側ケース1bとを含む。上側ケース1aおよび下側ケース1bは、一体となって平面視略矩形の薄箱状のケース1を構成する。ケース1は、送風ファン3と、バッテリ7と、スイッチ8と、外部端子9と、イオン発生素子20とを収容する。ケース1の幅方向(Y方向)に垂直な側面1cには、外部の空気をケース1内に吸い込むための吸込口30が形成される。ケース1の長手方向(X方向)の一方端1dには、ケース内の空気を外部に吹き出すための吹出口40が形成される。ケース1の内部には、吸込口30と吹出口40とを連通する空気通路が形成される。
【0022】
送風ファン3は、開口3aから吸込んだ空気を開口3bから吹き出すことによって、上記空気通路を流れる空気流を発生する。開口3aは、送風ファン3の厚み方向(Z方向)に垂直な面に設けられる。開口3bは、送風ファン3の吹出口40に向いた面に設けられ、基板11と上側ケース1aの内表面との間の空間に空気を放出する。送風ファン3は、たとえば、遠心ファンやプロペラファンを含んで構成される。送風ファン3は、バッテリ7または外部端子9に接続される外部電源からの電力を用いて作動する。送風ファン3の作動によって、外部の空気は、吸込口30からケース1の内部に導入され、空気通路を通過した後、吹出口40から外部へ排出される。送風ファン3は、供給される電力が大きいほど風量が大きくなる。
【0023】
バッテリ7は、直流電源であり、たとえば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池を含んで構成される。バッテリ7は、送風ファン3およびイオン発生素子20に直流電力を供給する。バッテリ7は、外部端子9に接続された外部電源からの電力を用いて充電される。バッテリ7の電圧は、数V程度である。
【0024】
スイッチ8は、利用者の操作を入力するためのスイッチである。利用者は、スイッチ8を操作することによって、イオン発生装置100の運転モードを切り替えることができる。具体的には、利用者は、スイッチ8を操作することによって、イオン発生装置100の作動および停止を切り替える。さらに、利用者は、スイッチ8を操作することによって、イオン発生装置100が作動する場合において、送風ファン3の作動および停止を切り替える。
【0025】
外部端子9は、外部電源に接続される。イオン発生装置100は、外部端子9を介して外部電源から電力を受ける。外部電源から受けた電力は、送風ファン3、イオン発生素子20またはバッテリ7に供給される。外部電源としては、AC電源やAC/DCアダプタなどを用いることができる。イオン発生装置100は、外部端子9を介して外部機器と通信可能に構成されていてもよい。
【0026】
図2は、図1に示すイオン発生素子20の斜視図である。図1および図2を参照して、イオン発生素子20は、基板11と、基板11上に配置されたイオン発生制御部10およびイオン発生部15とを含む。
【0027】
イオン発生制御部10は、イオン発生部15での放電を制御するためのものであり、たとえば、パルス発生回路、コンデンサ、FET(Field Effect Transistor)などを含んで構成される。イオン発生制御部10は、バッテリ7と、イオン発生部15との間に接続される。イオン発生制御部10は、バッテリ7の電圧を10〜20Vに昇圧してイオン発生部15に出力する。また、イオン発生制御部10は、イオン発生部15の放電制御のためのパルス信号を生成し、イオン発生部15へ出力する。
【0028】
イオン発生部15は、高電圧発生部6と、正側整流素子5aと、負側整流素子5bと、正イオン放電部4aと、負イオン放電部4bとを有する。
【0029】
高電圧発生部6は、イオン発生制御部10から入力された信号に基づいて、2〜10kVの正負の高電圧を生成する。高電圧発生部6は、たとえば、トランスを含んで構成される。
【0030】
正側整流素子5aは、高電圧発生部6と正イオン放電部4aとの間に接続され、高電圧発生部6によって生成された正負の高電圧のうち正の高電圧のみを正イオン放電部4aへ通過させる。負側整流素子5bは、高電圧発生部6と負イオン放電部4bとの間に接続され、高電圧発生部6によって生成された正負の高電圧のうち負の高電圧のみを負イオン放電部4bへ通過させる。正側整流素子5aおよび負側整流素子5bは、たとえば、ダイオードを含んで構成される。
【0031】
正イオン放電部4aおよび負イオン放電部4bは、放電によってイオンを発生するための部分であり、先端が鋭利な針形状を有している。正イオン放電部4aおよび負イオン放電部4bは、高耐熱、高耐食性を有する金属であり、たとえば、インコネルで作られる。正イオン放電部4aの針形状の一方端(先端)は空気中に露出し、正イオン放電部4aの他方端は正側整流素子5aに接続されている。負イオン放電部4bの針形状の一方端(先端)は空気中に露出し、負イオン放電部4bの他方端は負側整流素子5bに接続されている。
【0032】
正イオン放電部4aおよび負イオン放電部4bは、発生したイオンを外部に吹き出す方向に沿って先端が吹出口40の向きに伸びる。正イオン放電部4aおよび負イオン放電部4bは、放電によってイオンを発生するときに、正イオン放電部4aおよび負イオン放電部4bの先端から吹出口40に向けて流れる電子風を発生する。すなわち、正イオン放電部4aおよび負イオン放電部4bが発生する電子風が流れる方向は、吹出口40から空気が吹き出す方向を示す矢印Aと同じ方向である。
【0033】
正イオン放電部4aおよび負イオン放電部4bにおいてイオンが発生する原理を説明する。正イオン放電部4aは、正の電圧を有する直流パルス電圧が供給される。負イオン放電部4bは、負の電圧を有する直流パルス電圧が供給される。正イオン放電部4aと接地電極との間に発生するコロナ放電によって、正イオン放電部4aおよび接地電極付近の空気が正イオン化する。電離によって発生した正イオンは、空気中の水分と結合して、主としてH+(H2O)m(mは任意の自然数である。)を含んで構成される電荷が正のクラスタイオンを形成する。負イオン放電部4bと接地電極との間に発生するコロナ放電によって、負イオン放電部4bおよび接地電極付近の空気が負イオン化する。電離によって発生した負イオンは、空気中の水分と結合して、主としてO2-(H2O)n(nは零または任意の自然数である。)を含んで構成される電荷が負のクラスタイオンを形成する。なお、発生するイオンの量(濃度)は、正イオン放電部4aおよび負イオン放電部4bに印加される電圧、パルス周期によって調整される。なお、負イオンのみを発生するように放電部を構成してもよい。
【0034】
基板11は送風ファン3と吹出口40との間に設けられ、基板11の表面に沿って空気通路が形成される。1枚の基板上にイオン発生制御部10およびイオン発生部15が設けられることによって、基板の枚数を削減して、コストダウンができる。なお、基板11にイオン発生部15が設けられ、他の基板にイオン発生制御部10が設けられる構成を採用してもよい。基板11には、少なくとも正イオン放電部4aおよび負イオン放電部4bが設けられることが好ましい。また、基板11には、イオン発生部15が設けられることがより好ましい。このように基板11上に高電圧が印加される部品を設けることによって、意図しない放電による消費電力の増加や周辺物の破損を防止することができる。
【0035】
なお、イオン発生素子20は、イオン発生部15などの高電圧が印加される部分を覆うように絶縁ケースが設けられてもよい。絶縁ケースの内部は、絶縁強度が高い材料で充填される。絶縁強度が高い材料としては、たとえば、エポキシが用いられる。このように絶縁ケースを設けることによって、高電圧が印加される部分での意図しない放電を防止することができる。
【0036】
以上の構成において、送風ファン3が作動すると、吸込口30から基板11と上側ケース1aとの間に形成された空気通路を通過して吹出口40へ流れる空気流が発生する。このとき、正イオン放電部4aおよび負イオン放電部4bで発生したイオンは、空気流および電子風によって、ケース1の外部に放出され、ケース1の周囲に拡散される。
【0037】
利用者がイオン発生装置100を携帯して使用する場合がある。この場合、イオン発生装置100は、バッテリ7の電力を使用する。
【0038】
しかしながら、外部端子9に外部電源が接続されておらずバッテリ7の電力のみを使用する場合、送風ファン3の作動によってバッテリ7の電力が消費されるため、イオン発生装置100の稼働時間が短くなってしまう場合がある。
【0039】
一方、送風ファン3が設けられない場合は、バッテリ7の電力消費は抑えられるものの、イオン発生装置100の遠方かつ広範囲にイオンを拡散させることができない場合がある。
【0040】
そこで、本実施の形態においては、送風ファン3を作動させた状態でイオンを放出する運転モード(第1の運転モード)と、送風ファン3を停止させた状態でイオンを放出する運転モード(第2の運転モード)とを切り替えるような制御を実行する。第1の運転モードでは、送風ファン3によってイオンを広範囲に拡散することができる。一方、第2の運転モードでは、送風ファン3の消費電力を抑制することができる。そのため、運転モードを切り替えることによって、イオン発生装置100の省電力化を図ることが可能になる。
【0041】
図3は、図1に示すイオン発生装置100の構成を示すブロック図である。図3を参照して、イオン発生装置100は、図1で説明したバッテリ7、スイッチ8およびイオン発生素子20に加えて、送風装置23と、制御装置60とをさらに備える。送風装置23は、送風ファン3と、切替装置13とを含む。
【0042】
バッテリ7は、イオン発生素子20および送風装置23へ電力を供給する。イオン発生素子20は、バッテリ7から電力を受けて、放電によってイオンを発生する。
【0043】
制御装置60は、スイッチ8から受けた信号に基づいて、送風ファン3の運転モードを制御する。具体的には、利用者がスイッチ8を操作することによって第1の運転モードを選択した場合は、制御装置60は、送風ファン3を作動させるための信号を切替装置13へ送信する。一方、利用者がスイッチ8を操作することによって第2の運転モードを選択した場合は、制御装置60は、送風ファン3を停止するための信号を切替装置13へ送信する。
【0044】
切替装置13は、制御装置60から受けた信号に基づいて、バッテリ7から送風ファン3への電力の供給と停止とを切り替える。具体的には、制御装置60から送風ファン3を作動させる信号を受けた場合は、切替装置13は、バッテリ7から送風ファン3へ電力を供給する。一方、制御装置60から送風ファン3を停止する信号を受けた場合は、切替装置13は、バッテリ7から送風ファン3への電力の供給を停止する。
【0045】
このように、利用者は、スイッチ8を操作することによって、送風ファン3の作動と停止とを切り替えることができる。
【0046】
なお、第2の運転モードが送風ファン3を停止する場合を説明したが、本発明はこれに限定されない。第2の運転モードは、送風ファン3が第1の運転モードよりも低い電力を受けて作動する運転モードであってもよい。
【0047】
以上のように、この実施の形態1においては、利用者の操作に基づいて切替装置13によって、第1の運転モードと、第2の運転モードとを切り替えることができる。第2の運転モードでは、バッテリ7から送風ファン3への電力の供給が停止される。これにより、第2の運転モードでは、第1の運転モードよりも送風ファン3の消費電力を抑制することができる。したがって、この実施の形態1によれば、利用者の意図に沿って省電力化を図ることができる。
【0048】
利用者は、スイッチ8を用いて、送風ファン3を停止して省電力化を優先するか、送風ファン3を作動させてイオンの拡散を優先するかを状況に応じて選択することができる。したがって、利用者の利便性を向上することができる。
【0049】
イオン発生部15がイオンを発生するときに生じる電子風の方向が、イオンを外部に吹き出す方向と一致しているので、送風ファン3を停止する場合においても、電子風によってイオンを吹出口40から外部へ放出することができる。したがって、利用者は、送風ファン3の作動および停止によらず、イオン発生装置100を利用することができる。
【0050】
[実施の形態2]
実施の形態1では、利用者の操作に基づいて、第1の運転モードと第2の運転モードとの切替を行う場合を説明した。これに対し、実施の形態2では、利用者の操作によらず自動的に、第1の運転モードと第2の運転モードとの切替を行う場合を説明する。具体的には、実施の形態2は、実施の形態1と比較して、制御装置が時間に基づいて送風ファン3の運転モードを切り替える点が異なる。
【0051】
図4は、この発明の実施の形態2によるイオン発生装置100aの構成を示すブロック図である。図4を参照して、イオン発生装置100aは、図3に示すスイッチ8および制御装置60に代えて、制御装置60aを備える。
【0052】
制御装置60aは、時間を計測するためのタイマを含む。まず、制御装置60aは、イオン発生装置100aの運転が開始されると、運転モードを第1の運転モードに設定し、タイマによる時間の計測を開始する。そして、制御装置60aは、第1の運転モードの作動時間が所定時間継続したか否かを判定する。制御装置60aは、第1の運転モードの作動時間が所定時間継続したと判定した場合、運転モードを第2の運転モードへ切り替えるように切替装置13を制御する。
【0053】
以上のように、この実施の形態2においては、制御装置60aは、第1の運転モードが所定時間継続したときに、第2の運転モードへ切り替えるように切替装置13を制御する。これにより、制御装置60aは、利用者の操作によらず運転モードを自動的に切り替えることができる。したがって、イオン発生装置100aの使用開始時におけるイオンの拡散を速やかに行なった後に、自動的に省電力化を図ることができる。
【0054】
また、制御装置60aは、第1の運転モードと第2の運転モードとを交互に切り替えるように切替装置13を制御してもよい。このように制御することによって、イオンの拡散の促進と省電力化とを自動的に繰り返すことができる。
【0055】
[実施の形態3]
実施の形態1では、イオン発生装置がバッテリからの電力のみによって作動する場合を説明した。これに対し、実施の形態3では、イオン発生装置が外部電源に接続される場合を説明する。イオン発生装置に外部電源から電力が供給される場合は、省電力化のために送風ファンを停止する必要がない。このため、外部電源からの電力供給の有無によって運転モードを切り替える。具体的には、実施の形態3は、実施の形態1と比較して、制御装置が外部電源から電力が供給されているか否かに基づいて送風ファンの運転モードを切り替える点が異なる。
【0056】
図5は、この発明の実施の形態3によるイオン発生装置100bの構成を示すブロック図である。図5を参照して、イオン発生装置100bは、図3に示すスイッチ8および制御装置60に代えて、外部端子9と、電源切替装置50と、制御装置60bとを備える。
【0057】
外部端子9には、コネクタ19が接続され、外部電源29からの電力が供給される。
電源切替装置50は、バッテリ7および外部端子9へ接続される。電源切替装置50は、外部電源29から外部端子9への電力供給に基づいて、イオン発生素子20および送風装置23への電力の供給経路を切り替える。具体的には、外部電源29から外部端子9へ電力が供給される場合は、電源切替装置50は、外部電源29の電力をイオン発生素子20および送風装置23へ供給する経路(第1の経路)に切り替える。一方、外部電源29から外部端子9へ電力が供給されない場合は、電源切替装置50は、バッテリ7の電力をイオン発生素子20および送風装置23へ供給する経路(第2の経路)に切り替える。電源切替装置50は、イオン発生素子20および送風装置23への電力の供給経路を示す信号を制御装置60bへ送信する。
【0058】
制御装置60bは、電源切替装置50から受けた信号に基づいて、送風ファン3の運転モードを制御する。具体的には、第1の経路が選択されている場合は、制御装置60bは、送風ファン3を作動させるための信号を切替装置13へ送信する。一方、第2の経路が選択されている場合は、制御装置60bは、送風ファン3を停止するための信号を切替装置13へ送信する。
【0059】
以上のように、この実施の形態3においては、イオン発生装置100bは、電力供給経路に応じて、送風ファン3の作動と停止とを切り替える。これにより、イオン発生装置100bがバッテリ7からの電力のみを使用するときに、自動的に省電力化を図ることができる。
【0060】
[実施の形態4]
実施の形態1では、利用者の操作に基づいて、第1の運転モードと第2の運転モードとの切替を行う場合を説明した。これに対し、実施の形態4では、バッテリの状態に応じて自動的に、第1の運転モードと第2の運転モードとの切替を行う場合を説明する。バッテリの状態に応じて運転モードを切り替えることによって、イオン発生装置の利用時間を延長することができる。具体的には、実施の形態4は、実施の形態1と比較して、制御装置がバッテリの充電状態に基づいて送風ファンの運転モードを切り替える点が異なる。
【0061】
図6は、この発明の実施の形態4によるイオン発生装置100cの構成を示すブロック図である。図6を参照して、イオン発生装置100cは、図3に示すスイッチ8および制御装置60に代えて、制御装置60cを備える。
【0062】
制御装置60cは、バッテリ7からバッテリ7の充電状態を示す信号SOC(State Of Charge)を受信する。なお、SOCは、バッテリ7の電圧および入出力電流などに基づいて、種々の公知の手法を用いて算出される。
【0063】
制御装置60cは、バッテリ7から受けたSOCに基づいて、送風ファン3の運転モードを制御する。具体的には、バッテリ7のSOCが所定値よりも大きいときは、制御装置60cは、送風ファン3を作動させるための信号を切替装置13へ送信する。一方、バッテリ7のSOCが所定値よりも低下したときは、制御装置60cは、送風ファン3を停止するための信号を切替装置13へ送信する。
【0064】
以上のように、この実施の形態4においては、制御装置60cは、バッテリ7のSOCが所定値よりも低下したときは、送風ファン3を停止して消費電力を低減する。これにより、バッテリ7のSOCに応じて、自動的に省電力化を優先して利用時間を延長することができる。
【0065】
上記の実施の形態では、本発明に係る帯電粒子発生装置の例として空気中の水分と結合したイオンを発生させるイオン発生装置について説明したが、本発明において発生させる帯電粒子は、たとえば、静電霧化装置によって生成されるラジカル成分を含む帯電微粒子水等も含む。具体的には、静電霧化装置においては、放電電極をペルチェ素子によって冷却するなどの方法で放電電極の表面に結露水を生じさせ、放電電極にマイナスの高電圧を印加することによって、結露水から帯電微粒子水が生成される。
【0066】
なお、上記の実施の形態では、内蔵電源としてバッテリ7を用いて説明したが、バッテリ7に代えて、キャパシタを用いてもよい。
【0067】
以上のように本発明の実施の形態について説明を行なったが、各実施の形態の構成を適宜組合せてもよい。
【0068】
なお、上記において、イオン発生装置100は、この発明における「帯電粒子発生装置」の一実施例に対応し、イオンは、この発明における「帯電粒子」の一実施例に対応する。また、イオン発生部15は、この発明における「帯電粒子発生部」の一実施例に対応し、送風ファン3は、この発明における「送風機」の一実施例に対応する。また、バッテリ7は、この発明における「蓄電装置」の一実施例に対応し、スイッチ8は、この発明における「入力部」の一実施例に対応する。また、外部端子9は、この発明における「受電部」の一実施例に対応し、正イオン放電部4aおよび負イオン放電部4bは、この発明における「放電電極」の一実施例に対応する。
【0069】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0070】
1 ケース、3 送風ファン、4a 正イオン放電部、4b 負イオン放電部、7 バッテリ、8 スイッチ、9 外部端子、10 イオン発生制御部、11 基板、13 切替装置、15 イオン発生部、20 イオン発生素子、23 送風装置、29 外部電源、30 吸込口、40 吹出口、50 電源切替装置、60 制御装置、100 イオン発生装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6