特許第6000691号(P6000691)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000691
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】容器内部の陽圧化方法及び充填容器
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/46 20060101AFI20160923BHJP
【FI】
   B29C49/46
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-145408(P2012-145408)
(22)【出願日】2012年6月28日
(65)【公開番号】特開2014-8636(P2014-8636A)
(43)【公開日】2014年1月20日
【審査請求日】2015年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】奥山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】清水 一彦
【審査官】 辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−533290(JP,A)
【文献】 特開2010−173738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C49/00−49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧媒体として液体(L)を使用したブロー成形により容器(41)を成形し、該ブロー成形後に前記液体(L)が充填された状態で容器(41)の口部(42)を密封し、該密封後の容器(41)の周壁の後収縮による容積の減少により該容器(41)の内部を陽圧化して該容器(41)の座屈強度を50.6N以上、68.5N以下とすることを特徴とする容器内部の陽圧化方法。
【請求項2】
液体(L)の温度と、ブロー成形に用いる金型(1)の型温度の設定により陽圧化の程度を調整するようにした請求項1記載の容器内部の陽圧化方法。
【請求項3】
容器(41)をポリプロピレン系樹脂製とした請求項1または2記載の容器内部の陽圧化方法。
【請求項4】
容器(41)をポリエチレンテレフタレート樹脂製とした請求項1または2記載の容器内部の陽圧化方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の容器内部の陽圧化方法を用い、
口部(42)が密封された合成樹脂製の容器(41)と、該容器(41)に充填された液体(L)とを有し、該容器(41)の内部が陽圧化状態にあるとともに該容器(41)の座屈強度が50.6N以上、68.5N以下である、内部に液体を収納した充填容器を製造することを特徴とする充填容器の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を密封充填した容器の内部を陽圧化する方法、及び内部に液体を収納し、陽圧状態にある充填容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ブロー成形によるポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂製のペットボトル等の合成樹脂製容器が幅広く使用され、内容液を充填後、口部をキャップで密封した状態で、飲料等の液体を充填した製品として販売される。
(以降、上記のように容器に飲料等の液体を充填し、口部を密封した状態の製品を充填容器と総称する。)
この種の容器では、省資源、省エネルギーの観点からさらなる軽量化が求められており、軽量化には周壁を薄肉化する必要があり、充填容器の内部が特に減圧状態である場合には座屈強度が低下し、搬送時にかかる荷重により容器が変形したり、潰れてしまったりすると云う問題が生じる。
【0003】
特許文献1には、壜体状の容器中に内容液を充填し、キャップで密封するにあたって、容器内に液体窒素を滴下し、その蒸気圧により容器内を加圧状態、所謂、陽圧状態にし、上記のような容器の変形や潰れを防ぐ方法についての記載がある。
【0004】
一方、特許文献2には加圧媒体としてエアの替わりに液体を使用してプリフォームをブロー成形する方法に係る発明が記載されている。
このような成形方法では、液体として容器に最終的に充填される内容液を使用し、充填工程を省略することができ生産ラインを簡略化することが可能となる。
【0005】
図6は加圧流体として液体を使用してプリフォームをブロー成形する、ブロー成形装置の概略説明図である。
この装置の主部Aは金型101、ブローノズル104、ブローノズル104に挿通しプリフォームを縦延伸するための延伸ロッド108を有し、この主要部Aに隣接して加圧流体を供給するための付属設備として加圧液体供給部122と液体供給部123を配置している。
【0006】
加圧液体供給部122はプランジャーポンプ状で、加圧ポンプやコンプレッサー等の加圧装置121から配管P1を介して供給される加圧流体Fpを動力源として作動し、加圧した液体Lを配管P2、電磁バルブV102を介してブローノズル104を経て、ブローノズル104の先端部に密に外嵌するプリフォーム31の内部に供給することができる。
液体供給部123からは、所定の温度に調温した液体Lを配管R101を介して加圧液体供給部122へ供給する。
そして、延伸ロッド108による縦延伸と加圧した液体Lによる膨張状の延伸により、プリフォーム31を金型101のキャビティ102の形状に沿って賦形し、容器41を成形する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−264912号公報
【特許文献2】特開2000−43129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、引用文献1に記載のある、液体窒素を滴下して容器内部を陽圧化する方法では、液体と共に液体窒素を充填するための設備を配設する必要があり、設備が煩雑化する問題、液体窒素の購入費用の等の問題がある。
【0009】
そこで本発明は、液体窒素の滴下等の付加的な手段を使用することなく、従来の圧力媒体として液体を使用するブロー成形方法の中で、生産性を損なうことなく容器内部を陽圧化する方法を創出することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は液体を密封充填した容器内部の陽圧化方法、及び内部に液体を収納し、陽圧状態にある充填容器に関するものであるが、
以下、まず陽圧化方法について、次に充填容器について説明する。
まず、上記課題を解決するための、容器内部の陽圧化方法に係る本発明のうち、主たる構成は、
加圧媒体として液体を使用したブロー成形により容器を成形し、
このブロー成形後に液体が充填された状態で容器の口部を密封し、
密封後の容器の周壁の後収縮による容積の減少により容器の内部を陽圧化して該容器(41)の座屈強度を50.6N以上、68.5N以下とする、と云うものである。
【0011】
上記方法は、加圧媒体として、容器内に充填される内容液を使用したブロー成形方法を利用するものであり、
容器のブロー成形後に、内容液を充填した状態で容器の口部を密封することにより、密封後の容器の周壁の後収縮による容積の減少により容器の内部を陽圧化することが可能となる。
なお、従来の方法ではブロー成形後に、一旦成形された容器を保管し、改めて内容液を充填するため、容器の後収縮が飽和した段階で口部を密封することになり、上記のように容器の周壁の後収縮を陽圧化に利用することができない。
【0012】
ここで、陽圧化の程度は、使用する合成樹脂、使用する液体の温度、ブロー成形に使用する金型の型温、ブロー成形における縦横の延伸倍率、充填容器におけるヘッドスペースの量等の複数の要件を調整することにより決めることができる。
この中で、容器の後収縮の大きさは使用する合成樹脂と、ブロー成形条件により調整することができるが、一般的に、後収縮は成形直後に急速に進行し、そのあと長期間をかけて一定の大きさに飽和するため、この後収縮を陽圧化に最大限利用するためには、ブロー成形直後に口部を密封することが好ましい。
【0013】
また、使用する液体の温度を高くすると、密封後、温度の低下により容器内部が減圧化し、その分、容器の後収縮による陽圧化効果が減じることになるので、陽圧化の程度を大きくすると云う観点からは、液体の温度をなるべく低くすることが有利となる。
一方で、高温の液体の充填による殺菌の必要性や、ブロー成形性等も考慮する必要があり、液体の温度は必要とされる陽圧化の程度の他に、これら要因も考慮して決める必要がある。
【0014】
陽圧化方法に係る本発明の他の構成は、上記主たる構成において、
液体の温度とブロー成形に用いる金型の型温度の設定により陽圧化の程度を調整する、というものである。
【0015】
前述したように、陽圧化の程度はいくつかの要件によるものであるが、たとえば、容器の形状、使用する合成樹脂、ヘッドスペースの量等の他の要件が制約される場合にも、液体の温度とブロー成形に用いる金型の型温度は、ある程度の許容範囲で自由に変更することができ、陽圧化の程度を調整することができる。
なお、合成樹脂、特に結晶性合成樹脂の場合には金型温度を低めに設定すると、結晶化が十分に進行していない状態で成形が終了し、その後の時間経過による結晶化の進行により、後収縮を大きくすることが可能となる。
【0016】
陽圧化方法に係る本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、容器をポリプロピレン(PP)系樹脂製とする、と云うものであり、PP系樹脂は2軸延伸ブロー成形が可能で、またPP系樹脂の成形品では、成形後の後収縮が比較的大きく、また時間をかけて進行するため、容積の減少による陽圧化を十分に、また容易に達成することができる。
【0017】
ここで本発明で用いるPP系樹脂は特に限定されるものではないが、
収縮性を考慮すると結晶性ポリプロピレン系樹脂が好ましく、好ましく使用しうるポリプロピレン系樹脂の例として、結晶性プロピレン単独重合体、結晶性プロピレン/エチレンランダム共重合体、結晶性プロピレン/α−オレフィンランダム共重合体、プロピレンと、エチレン及び/又はα−オレフィンとの結晶性ブロック共重合体が挙げられる。上記α−オレフィンとしては、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等の炭素数4〜10のα−オレフィンが挙げられる。
【0018】
陽圧化方法に係る本発明のさらに他の構成は、上記主たる構成において、容器をポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂製とする、と云うものであり、
PET樹脂は2軸延伸ブロー成形性に優れ、延伸結晶化に伴う成形後の後収縮により、容積の減少による陽圧化を十分に、また容易に達成することができる。
【0019】
次に、本発明の充填容器の製造方法は前述した本発明の陽圧化方法により実現可能なものであり、その主たる構成は、
内部に液体を収納した充填容器を製造する充填容器の製造方法において、
口部(42)が密封された合成樹脂製の容器と、この容器に充填された液体とを有し、容器の内部が陽圧化状態にあるとともに該容器(41)の座屈強度が50.6N以上、68.5N以下である、充填容器を製造すると云うものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の容器内部の陽圧化方法は上記した構成となっており、
加圧媒体として、容器内に充填される内容液を使用したブロー成形方法を利用するものであり、成形と同時に内容液を充填することができ、そして成形後、特に成形直後に内容液を充填した状態で、容器の口部を密封することにより、液体窒素の滴下等の付加的な手段を使用することなく、従来の圧力媒体として液体を使用するブロー成形方法の中で、生産性を損なうことなく、密封後の成形後の容器の周壁の後収縮による容積の減少により容器の内部を陽圧化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】容器の一例を示す正面図である。
図2】加圧媒体を液体としたブロー成形装置の例を示す概略説明図である。
図3】本発明の陽圧化方法の工程を示す概略説明図である。
図4】時間経過による、収縮率と容器内圧力の推移を示すグラフである。
図5】時間経過による、容器内圧力の推移を示すグラフである。
図6】加圧媒体を液体としたブロー成形装置の他の例を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を実施例に沿って図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の容器内部の陽圧化方法において、ブロー成形された容器の一例を示す正面図である。
この容器1は、PP系樹脂のプロピレン/エチレンランダム共重合体樹脂(プライムポリマー社製J246M)製で、胴部の直径が73.5mm、公称容量が360ml、重量が5gの壜体である。
【0023】
図2は、本発明の容器内部の陽圧化方法に用いる、圧力媒体に液体を用いたブロー成形装置の一例を示す概略説明図であり、金型1にプリフォーム31を装着し、ブローノズル4の先端をこのプリフォーム31の口部32に嵌入した状態を示している。
使用するプリフォーム31の形状は全体として有底円筒の試験管状で、上端部に口部32を起立設したもので、この口部32の下端部にはネックリング33が配設されており、口部32を外部に(図2中では上方に)突出させた状態で金型1内に装着されている。
【0024】
この装置の主部は金型1、隔壁部材11、ブローノズル4を有し、付属設備として加圧装置21、加圧液体供給部22、液体供給部23を配置している。
隔壁部材11は、図2に示されるように金型1の上方に突出したプリフォーム31の口部32の外周面を、空間を介して囲繞するように金型1の上方に配設されている。
また隔壁部材11の下端をプリフォーム31のネックリング33に上方から密に当接させて、プリフォーム31の装着姿勢を保持するようにしている。
【0025】
ブローノズル4は全体として筒状で、嵌入筒片5と供給筒部6から構成されており、嵌入筒片5の円筒状の先端部がプリフォーム31の口部32に嵌入し、ブローノズル4と口部32が密に連通するようにしている。
【0026】
供給筒部6は全体として内部が円柱状の中空部を有する部材で、上端部に周壁を横方向に貫通して液体Lの導入路6aが配設されている。
また、供給筒部6の下端部の内周面には下方に向かって縮径状に傾斜したシール段部6sが周設されている。
【0027】
嵌入筒片5と供給筒部6から構成されるブローノズル4の中には、軸方向(図2中では上下方向)に細長い棒状のシール体9が挿通、配設されている。
ここで、シール体9は、細長い円筒棒状の軸体9aに液密状に摺動可能に細長い円柱状のロッド8を挿通したものであり、軸体9aの先端部には、短円筒状のシール筒片9tが同軸心状に嵌合組み付けされている。そして、このシール筒片9tの下端面の外周縁部は角取りしてテーパー縁部9taとなっている。
【0028】
また、ブローノズル4とこのシール体9によりブローノズル4内に、このブローノズル4の軸方向に沿って、プリフォーム31内に連通する円筒状の供給路Fsが形成され、
シール体9を下降変位させることにより図2に示されるようにシール筒片9tのテーパー縁部9taが供給筒部6の下端部の内周面に周設されるシール段部6sに当接して供給路Fsのプリフォーム内部への連通を閉状態とし、またシール体9を上昇変位させることにより開状態とすることができ、このテーパー縁部9taのシール段部6sへの当接と、脱当接によりバルブ機構Vmが構成される。
【0029】
また、ロッド8は後述するようにブロー成形に加圧流体として使用した液体Lを賦形と同時に内容液として充填した容器41におけるヘッドスペースを所定の量に制御する機能を発揮させるためのものである。
なお、ロッド8を、プリフォーム31を縦延伸するための延伸ロッドとして利用することもできる。
【0030】
次に、付属設備についてみると、
加圧装置21、加圧液体供給部22、液体供給部23が配設されているが、加圧装置21から配管P1を介して供給される加圧流体Fpが、加圧した液体Lを供給するプランジャーポンプ状の加圧液体供給部22の動力源となる。
また、液体供給部23からは、所定の温度に調整した液体Lが電磁バルブV1を介して加圧液体供給部22へ供給される。
そして加圧液体供給部22で加圧された液体Lは配管P2、電磁バルブV2を介してブローノズル4を経て、ブローノズル4の先端部に密に外嵌するプリフォーム31の内部に供給される。
【0031】
次に、図3は本発明の陽圧化方法の工程の一例を示す概略説明図であり、本発明の陽圧化方法は次の(1)〜(4)に記載した工程を順次、実施する。
ここで、図3(d)は本発明の充填容器の実施例に相当する。
(1)まず、図2に示すように、口部32を除く部分をブロー成形に適した温度に加熱したプリフォーム31を、口部32を上方に突出させた状態でブロー成形用の金型1に装着し、嵌合筒片5の先端部を口部32に嵌入した状態とする。
ここで、シール体9の先端部を構成するシール筒片9tのテーパー縁部9taを供給筒部6のシール段部6sに当接させて、バルブ機構Vmを閉状態とし、さらにロッド8を下降変位させてその先端部を所定の長さ分、プリフォーム31内に挿入した状態としている。
この際、バルブV1は開状態、V2は閉状態となっている。
【0032】
(2)次に、図2の状態から図3(a)に示されるようにシール体9を構成する軸体9aに伴ってシール筒片9tを上昇変位させてバルブ機構Vmを開状態とし、バルブV1を閉、バルブV2を開状態として(図3(a)、図3(b)ではバルブV1とバルブV2を図示省略している。)、加圧液体供給部22から加圧した液体Lを、供給路Fsと口部32を経てプリフォーム31の内部に供給し、プリフォーム31を膨張状に延伸し、金型1のキャビティ2に沿って容器41を賦形する。
【0033】
(3)次に、上記のように容器41が賦形され後に、図3(b)に示されるように軸体9aと共にシール筒片9tを下降変位させてバルブ機構Vmを閉状態とし、バルブV1を開、V2を閉状態としてロッド8の先端部を容器41内から脱挿入する。
ここで、ロッド8の先端部の脱挿入に伴って、バブル機構Vmより下方の供給路Fsに残存する液体Lは全て容器41内に流入し、さらに容器41内で液面Lsが下降し、ヘッドスペースHsを予め設定した量に調整することができる。
【0034】
(4)そして、図3(c)にあるように金型1から液体Lが充填した容器41を取り出した直後に、図3(d)に示されるように口部42をキャップ47で密封して充填容器とする。
【0035】
次に、液体Lとして水を使用し上記説明した陽圧化方法に沿って、ブロー成形し、成形直後にキャップ47で密封した実施例1、2、3の充填容器について、キャップ47で密封した後の時間経過による容器41内圧力(kPa)の推移を測定し、24時間経過後の座屈強度を測定した。
各実施例の成形条件は次のようである。
・実施例1;液体Lの温度20℃、金型温度20℃
・実施例2;液体Lの温度20℃、金型温度80℃
・実施例3;液体Lの温度70℃、金型温度20℃
【0036】
なお、実施例1、2、3の容器41のブロー成形において、プリフォームの予熱温度は120〜150℃とし、図3(b)における、液体Lの充填圧力は4MPaとし、ヘッドスペースHSの量は10mlとした。
また、実施例1の場合には、時間経過に沿って、圧力と共に胴部44の直径D(図3(d)参照)の収縮率も測定した。
また、容器内圧力、および座屈強度の測定は室温である23℃で実施し、それぞれの測定方法は次の通りである。
・容器内圧力の測定方法;容器41の内部の圧力の測定は、キャップ47の上部にシール機能を発揮するゴム栓を装着し、このゴム栓を介して、キャップ47の頂壁を貫通して圧力センサーを容器41内部に差込んで測定する。
・座屈強度の測定方法;24時間経過後、島津製作所製オートグラフ(AGS−X)を使用し、50mm/分の速度で、キャップ47で密封した状態で容器41の中心軸にそって圧縮させ、座屈変形した時点の荷重を座屈強度とする。
【0037】
図4は、実施例1の充填容器についての測定結果を、横軸を時間、縦軸を収縮率(%)および圧力(kPa)として示すグラフで、実線が容器内圧力、破線が収縮率である。
なお、容器内圧力は大気圧との差で示している。
また、収縮率(%)は、キャップ47で密封した直後の直径Dと、経過時間tにおける直径Dtから次の式に従って算出したものである。
(Dt−D)/D×100
このグラフから分かるように、胴部44の直径Dは最初急激に収縮し、6時間程度でほぼこの収縮が飽和し、−3.4%程度となる。
一方、容器内圧力は上記した直径Dの収縮挙動に対応するように、最初急激に上昇し、6時間程度でほぼ飽和して12kPa程度の値となり、容器41の成形後の後収縮により、容器内部を陽圧化できることが確認された。
【0038】
図5は、実施例1、2、3の容器41内圧力の変化を比較したもので、それぞれの変化を実線T1、破線T2、一点鎖線T3で示している。
T1とT2を比較すると、液体Lの温度を20℃とし、金型温度を20℃から80℃と高くすると、内圧は若干低下し、飽和した状態では12kPaから9.7kPa程度に低下する。PP系樹脂で金型温度を高くすると、結晶化がより進行した状態で、金型で冷却固化され、後収縮が小さくなり、その分、陽圧化の程度が小さくなったものと考えられる。
【0039】
一方、T1とT3を比較すると、金型温度を20℃として、液体Lの温度を20℃から70℃と高くすると、内圧は飽和した状態では12kPaから7.3kPa程度にまで低下する。これは液体Lの温度を高くすると、密封後の温度の低下に起因する減圧化効果が生じ、その分、容器41の後収縮による陽圧化の程度が減じられたものと考えられる。
これらT1、T2、T3の内圧力の測定結果により、ブロー成形の成形条件である、液体Lの温度と金型温度により、陽圧化の程度を調整できることが分かった。
【0040】
そして、実施例1、2、3の充填容器の座屈強度はそれぞれ、68.5(N)、59.3(N)、50.6(N)であり、座屈強度の大きさは、陽圧化の程度に対応している。
また、実施例1の充填容器において、成形後、液体Lを充填した状態で、キャップ47で密封することなく24時間放置し、その後キャップ47で密封した比較例の充填容器について同様に測定した座屈強度は44.6(N)であり、上記した実施例1、2、3程度の陽圧化により、液体Lを充填した充填容器の座屈強度を、陽圧化の程度に応じて高くできることが確認された。
【0041】
以上、実施例に沿って本発明の容器内部の陽圧化方法の実施形態について説明したが、勿論、本発明は上記した実施例に限定されるものではない。
図2に示したブロー成形装置はその一例として示したものであり、たとえばロッド8を、プリフォーム31を縦延伸するための延伸ロッドとして利用し、このロッド8による縦延伸と加圧した液体Lによる膨張状の延伸を合わせた2軸延伸ブロー成形とすることもできる。
また、図2の装置ではシール軸体9を配設し、プリフォーム内への液体Lの供給路Fsを開閉する構成としたが、この開閉機構についてもさまざまな態様の中から生産性、ヘッドスペースの量の精度等を考慮して選択することができる。
さらに、液体Lの温度を一定に保持するため、付属設備としてブローノズル4内の供給路Fsに滞留する液体Lを循環する液体循環装置を配設する等、必要に応じて付属設備を適宜付加、配設することもできる。
【0042】
また、上記実施例ではPP系樹脂製の容器を成形する例について説明したが、優れた2軸延伸ブロー成形性と十分な後収縮性を有するPET樹脂も本発明の陽圧化方法に適した合成樹脂の一つである。
また、PP系樹脂やPET樹脂の他にも、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリ乳酸(PLA)樹脂等、従来から2軸延伸ブロー成形に使用されている合成樹脂であれば、本発明の陽圧化方法に適した合成樹脂として使用することができる。
また、液体(L)の温度については充填容器に要求される殺菌のための温度等も考慮して適宜選択することができるものである。
また、金型温度は、必要とされる後収縮の大きさの他にも生産性や表面光沢等を考慮して適宜選択できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上説明したように、本発明の容器内の陽圧化方法は、液体窒素の滴下等の付加的な手段を使用することなく、従来の圧力媒体として液体を使用するブロー成形方法の中で、生産性を損なうことなく容器内部を陽圧化することができるものであり、容器への内容液の充填方法として幅広い利用展開が期待される。
【符号の説明】
【0044】
1 ;金型
2 ;キャビティ
4 ;ブローノズル
5 ;嵌入筒片
6 ;供給筒部
6a;導入路
6s;シール段部
8 ;ロッド
9 ;シール体
9a;軸体
9t;シール筒片
9ta;テーパー縁部
11;隔壁部材
21;加圧装置
22;加圧液体供給部
23;液体供給部
Fs;供給路
Hs;ヘッドスペース
L ;液体
Ls:液面
P1、P2;配管
R1;配管
V1、V2;バルブ
Vm;バルブ機構
31;プリフォーム
32;口部
33;ネックリング
41;容器
42;口部
44;胴部
45;底部
47;キャップ
101;金型
102;キャビティ
104;ブローノズル
108;ロッド
121;加圧装置
122;加圧液体供給部
123;液体供給部
R101;配管
V102;バルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6