特許第6000698号(P6000698)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電産サンキョー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6000698-カードリーダの制御方法 図000002
  • 特許6000698-カードリーダの制御方法 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000698
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】カードリーダの制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06K 13/06 20060101AFI20160923BHJP
   G06K 7/08 20060101ALI20160923BHJP
   G07D 9/00 20060101ALI20160923BHJP
【FI】
   G06K13/06 C
   G06K7/08
   G07D9/00 436Z
   G07D9/00 461Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-151268(P2012-151268)
(22)【出願日】2012年7月5日
(65)【公開番号】特開2014-13537(P2014-13537A)
(43)【公開日】2014年1月23日
【審査請求日】2015年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】北澤 康博
【審査官】 梅沢 俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−309857(JP,A)
【文献】 特許第3806271(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 13/06
G06K 7/08
G07D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードが挿入および排出されるカード挿入排出口が形成されるカード挿入排出部を備え、前記カードに記録された磁気データの読取および前記カードへの前記磁気データの記録の少なくともいずれか一方を行うカードリーダの制御方法において、
前記カード挿入排出口から前記カードリーダの外側へ前記カードの一部が突出してまたは前記カード挿入排出部で前記カードの一部が露出して前記カードリーダからの引抜きが可能な引抜き可能状態にある前記カードの引抜きが開始されたか否かを検知する引抜き開始検知ステップと、前記引抜き開始検知ステップで前記カードの引抜きが開始されたことが検知されると、前記カードリーダから引き抜かれる前記カードに接触して前記カードの引抜きを妨げるように前記カードに摩擦抵抗を与える抵抗付与機構が前記カードに摩擦抵抗を与え始める抵抗付与開始ステップと、前記抵抗付与開始ステップ後の所定時間内に前記カードリーダから前記カードが引き抜かれない場合に前記抵抗付与機構による前記カードへの摩擦抵抗の付与を停止するまたは前記抵抗付与機構による前記カードへの摩擦抵抗を弱める抵抗緩和ステップとを備え、
前記抵抗緩和ステップ後、前記引抜き開始検知ステップへ戻ることを特徴とするカードリーダの制御方法。
【請求項2】
前記抵抗付与機構は、前記引抜き可能状態となるまで前記カードリーダ内から前記カードを排出する方向へ前記カードを搬送する搬送ローラを備え、
前記抵抗付与開始ステップでは、前記搬送ローラが、前記カードリーダ内に前記カードを取り込む方向へ回転し始めることを特徴とする請求項記載のカードリーダの制御方法。
【請求項3】
前記抵抗付与開始ステップ後に前記カードリーダ内に前記カードが取り込まれたか否かを検知する取込み検知ステップと、前記取込み検知ステップで前記カードが取り込まれたことが検知されると前記カードの排出方向へ前記搬送ローラを回転させて前記引抜き可能状態になるまで前記カードの排出動作を行うカード排出ステップとを備え、
前記カード排出ステップ後、前記引抜き開始検知ステップへ戻ることを特徴とする請求項記載のカードリーダの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードに記録された磁気データの読取やカードへの磁気データの記録を行うカードリーダの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カードに記録された磁気データの読取やカードへの磁気データの記録を行うカードリーダが広く利用されており、カードリーダは、たとえば、金融機関等に設置される現金自動取引装置に搭載されている。カードリーダが利用される金融機関等の業界では、従来、犯罪者が現金自動取引装置等のカードの挿入部分に磁気ヘッドを取り付けて、この磁気ヘッドでカードの磁気データを不正に取得するいわゆるスキミングが大きな問題となっている。そこで、スキミング用の磁気ヘッド(以下、「スキミング用磁気ヘッド」とする。)での磁気データの不正取得を阻止するための構成を備えるカードリーダが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のカードリーダは、カードリーダ内にカードを取り込むとともにカードリーダ内からカードを排出するための取込みローラ対を備えている。このカードリーダでは、取込みローラ対によってカードリーダ内にカードを取り込む途中で、また、取込みローラ対によってカードリーダ内からカードを排出する途中で、取込みローラ対を停止させたり、取込みローラ対を逆転させたりしている。そのため、このカードリーダでは、カードの取込動作時およびカードの排出動作時にカードの搬送速度が大きく変動する。したがって、このカードリーダでは、カードの挿入部分にスキミング用磁気ヘッドが取り付けられても、カードの取込動作時およびカードの排出動作時に、スキミング用磁気ヘッドで有意な磁気データを取得することは困難である。すなわち、このカードリーダでは、カードの取込動作時およびカードの排出動作時におけるスキミングを阻止することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3806271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のカードリーダでは、取込みローラ対によるカードの排出動作が終わると、カードの後端側が取込みローラ対に挟まれた状態で、カードの先端側がカードスロット(カードの挿入排出口)からカードリーダの外側へ突出する。すなわち、このカードリーダでは、取込みローラ対によるカードの排出動作が終わると、カードリーダの外側へ突出するカードの先端側をユーザが掴んでカードリーダからカードを引抜くことが可能な状態になり、カードリーダからカードが引き抜かれるとカードリーダでのカードの処理が完了する。
【0006】
上述のように、特許文献1に記載のカードリーダでは、カードの挿入部分にスキミング用磁気ヘッドが取り付けられたとしても、カードの取込動作時およびカードの排出動作時におけるスキミングを阻止することが可能である。しかしながら、このカードリーダでは、カードの挿入部分にスキミング用磁気ヘッドが取り付けられると、ユーザによるカードの引抜き時におけるスキミングを阻止することはできない。
【0007】
そこで、本発明の課題は、ユーザによるカードリーダからのカードの引抜き時のスキミングを阻止することが可能になるカードリーダの制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
記の課題を解決するため、本発明のカードリーダの制御方法は、カードが挿入および排出されるカード挿入排出口が形成されるカード挿入排出部を備え、カードに記録された磁気データの読取およびカードへの磁気データの記録の少なくともいずれか一方を行うカードリーダの制御方法において、カード挿入排出口からカードリーダの外側へカードの一部が突出してまたはカード挿入排出部でカードの一部が露出してカードリーダからの引抜きが可能な引抜き可能状態にあるカードの引抜きが開始されたか否かを検知する引抜き開始検知ステップと、引抜き開始検知ステップでカードの引抜きが開始されたことが検知されると、カードリーダから引き抜かれるカードに接触してカードの引抜きを妨げるようにカードに摩擦抵抗を与える抵抗付与機構がカードに摩擦抵抗を与え始める抵抗付与開始ステップと、抵抗付与開始ステップ後の所定時間内にカードリーダからカードが引き抜かれない場合に抵抗付与機構によるカードへの摩擦抵抗の付与を停止するまたは抵抗付与機構によるカードへの摩擦抵抗を弱める抵抗緩和ステップとを備え、抵抗緩和ステップ後、引抜き開始検知ステップへ戻ることを特徴とする。
【0014】
本発明のカードリーダの制御方法では、カードリーダからの引抜きが可能な引抜き可能状態にあるカードの引抜きの開始が検知されると、カードリーダから引き抜かれるカードに接触してカードの引抜きを妨げるようにカードに摩擦抵抗を与える抵抗付与機構によってカードに摩擦抵抗を与えている。そのため、本発明では、抵抗付与機構によって付与される摩擦抵抗によって、ユーザによるカードの引抜き時のカードの引抜き速度を不均一にすることが可能になる。したがって、本発明では、カード挿入排出部の前方等にスキミング用磁気ヘッドが取り付けられても、ユーザによるカードの引抜き時に、スキミング用磁気ヘッドで有意な磁気データが取得されるのを阻止することが可能になり、その結果、ユーザによるカードリーダからのカードの引抜き時のスキミングを阻止することが可能になる。
【0015】
また、本発明のカードリーダの制御方法は、抵抗付与開始ステップ後の所定時間内にカードリーダからカードが引き抜かれない場合に抵抗付与機構によるカードへの摩擦抵抗の付与を停止するまたは抵抗付与機構によるカードへの摩擦抵抗を弱める抵抗緩和ステップとを備えているため、抵抗付与開始ステップ後に所定時間が経過すると、ユーザがカードを引き抜く際に必要とされるカードの引抜き力が一時的に弱まる。したがって、ユーザはカードを引抜きやすくなる。また、カードを引き抜く際に必要とされるカードの引抜き力が一時的に弱まるため、ユーザが一定の力でカードを引き抜いているのであれば、ユーザによるカードの引抜き時のカードの引抜き速度を不均一にしやすくなる。
【0016】
本発明において、抵抗付与機構は、引抜き可能状態となるまでカードリーダ内からカードを排出する方向へカードを搬送する搬送ローラを備え、抵抗付与開始ステップでは、搬送ローラが、カードリーダ内にカードを取り込む方向へ回転し始めることが好ましい。このように構成すると、カードの引抜きを妨げるようにカードに摩擦抵抗を与えるための機構を別途設けなくても、カードリーダの制御方法を変更するだけで、カードを搬送する搬送ローラを利用して、カードの引抜きを妨げるようにカードに摩擦抵抗を与えることができる。したがって、カードリーダの構成を簡素化することが可能になる。
【0017】
本発明のカードリーダの制御方法は、抵抗付与開始ステップ後にカードリーダ内にカードが取り込まれたか否かを検知する取込み検知ステップと、取込み検知ステップでカードが取り込まれたことが検知されるとカードの排出方向へ搬送ローラを回転させて引抜き可能状態になるまでカードの排出動作を行うカード排出ステップとを備え、カード排出ステップ後、引抜き開始検知ステップへ戻ることが好ましい。このように構成すると、引き抜かれるカードに摩擦抵抗を与えるために、カードリーダ内にカードを取り込む方向へ搬送ローラを回転させても、カードを引き抜く際のカードの掴み代を確保することが可能になる。また、このように構成すると、本来、ユーザによってカードリーダから引き抜かれるべきカードがカードリーダの内部に取り込まれてしまうのを防止することが可能になる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明のカードリーダの制御方法でカードリーダが制御されると、ユーザによるカードリーダからのカードの引抜き時のスキミングを阻止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施の形態にかかるカードリーダの概略構成を説明するための側面図であり、(A)はユーザによるカードリーダからのカードの引抜きが可能な引抜き可能状態を示す図、(B)はカードセンサによってカードが検知されている状態を示す図である。
図2図1に示すカードリーダにおいて、引抜き可能状態にあるカードをユーザが引抜く際のカードリーダの動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
(カードリーダの構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるカードリーダ1の概略構成を説明するための側面図であり、(A)はユーザによるカードリーダ1からのカード2の引抜きが可能な引抜き可能状態を示す図、(B)はカードセンサ15によってカード2が検知されている状態を示す図である。
【0022】
本形態のカードリーダ1は、カード2に記録された磁気データの読取および/またはカード2への磁気データの記録を行うための装置であり、たとえば、ATM(Automated Teller Machine)等の所定の上位装置に搭載されて使用される。このカードリーダ1は、図1に示すように、カード2が挿入されるとともに排出されるカード挿入排出口3が形成されるカード挿入排出部4と、磁気データの読取および/または磁気データの記録を行う磁気ヘッド(図示省略)が内部に配置される本体部5とを備えている。カード挿入排出部4および本体部5の内部には、カード2が搬送されるカード搬送路が形成されている。
【0023】
本形態では、図1に示すX方向にカード2が搬送される。すなわち、X方向は、カード2の搬送方向である。また、本形態では、図1に示すX1方向にカード2が挿入され、X2方向にカード2が排出される。すなわち、X1方向は、カード2の挿入方向であり、X2方向は、カード2の排出方向である。また、X2方向は、カードリーダ1からのカード2の引抜き方向でもある。なお、以下の説明では、X1方向側を「奥(後ろ)」側、X2方向側を「前」側とする。
【0024】
カード2は、たとえば、厚さが0.7〜0.8mm程度の矩形状の塩化ビニール製のカードである。このカード2の裏面には、磁気データが記録される磁気ストライプが形成されている。なお、カード2の内部に、ICチップや通信用のアンテナが内蔵されても良い。また、カード2は、厚さが0.18〜0.36mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)カードであっても良いし、所定の厚さの紙カード等であっても良い。
【0025】
本体部5の内部には、上述の磁気ヘッドに加え、カード2を搬送するための駆動ローラ8〜10およびパッドローラ11〜13が配置されている。磁気ヘッドは、そのギャップ部がカード搬送路に下側から臨むように配置されている。駆動ローラ8〜10は、カード搬送路に上側から臨むように配置されている。駆動ローラ8〜10は、前後方向において所定のピッチで配置されている。また、駆動ローラ8〜10は、本体部5の前側から奥側に向かってこの順番で配置されている。パッドローラ11〜13のそれぞれは、駆動ローラ8〜10のそれぞれに下側から対向しており、駆動ローラ8〜10のそれぞれに向かって付勢されている。
【0026】
駆動ローラ8〜10には、ベルトやプーリ等の動力伝達機構を介してモータ14が連結されている。駆動ローラ8〜10は、モータ14の動力によって、時計方向および反時計方向へ回転可能となっている。駆動ローラ8およびパッドローラ11のすぐ奥側には、カード2を検知するためのカードセンサ15が配置されている。カードセンサ15は、たとえば、カード搬送路を挟むように配置される発光素子と受光素子とを備える光学式のセンサであり、発光素子から受光素子へ向かう光がカード2によって遮られることで、カード2が検知される。
【0027】
カード挿入排出部4は、本体部5の前面に取り付けられている。カード挿入排出部4の内部には、カード挿入排出部4にカード2が挿入されたことを検知するための挿入検知機構18と、カード挿入排出口3から挿入されるカード2に磁気データが記録されていることを検知するための磁気ヘッド(プリヘッド)19と、カード搬送路を閉鎖するシャッタ部材20とが配置されている。プリヘッド19は、そのギャップ部がカード搬送路に下側から臨むように配置されている。
【0028】
挿入検知機構18は、カード2の搬送方向に直交するカード2の幅方向におけるカード2の端部を検知することで、カード挿入排出部4にカード2が挿入されたことを検知する幅検知機構であり、たとえば、カード2の幅方向の端面に接触して変位するレバー部材と、レバー部材の変位を検知する幅検知センサとを備えている。幅検知センサは、たとえば、発光素子と受光素子とを備える光学式のセンサである。レバー部材は、カード2の幅方向の端面が接触するカード接触部と、幅検知センサの発光素子と受光素子との間を遮る遮光部とを備えている。
【0029】
カード2がカード挿入排出部4に挿入されていないときには、レバー部材の遮光部が幅検知センサの発光素子と受光素子との間を遮っている。一方、所定の規格に適合するカード幅のカード2がカード挿入排出部4に挿入されると、カード接触部にカード2の幅方向の端面が接触し、幅検知センサの発光素子と受光素子との間から遮光部が外れて、カード挿入排出部4にカード2が挿入されことが検知される。なお、挿入検知機構18は、カード搬送路を挟むように配置される発光素子と受光素子とを備える光学式のセンサであっても良いし、カード2に接触するレバー部材と接点スイッチとを備えるマイクロスイッチであっても良い。
【0030】
シャッタ部材20は、挿入検知機構18およびプリヘッド19よりも奥側に配置されている。シャッタ部材20には、ソレノイド等の駆動源を有するシャッタ駆動機構(図示省略)が連結されており、シャッタ部材20は、駆動源の動力で、カード搬送路を塞ぐ閉位置と、カード搬送路を開放する開位置とに移動可能となっている。本形態では、カード挿入排出部4にカード2が挿入される前の待機状態では、シャッタ部材20は、閉位置にあってカード搬送路を塞いでいる。一方、カード挿入排出口3からカード2が挿入されて、挿入検知機構18でカード2が挿入されたことが検知されるとともに、プリヘッド19でカード2に磁気データが記録されていることが検知されると、シャッタ部材20は、閉位置から開位置へ移動してカード搬送路を開放する。
【0031】
モータ14、カードセンサ15、挿入検知機構18およびプリヘッド19は、カードリーダ1を制御する制御部22に電気的に接続されている。なお、シャッタ部材20の駆動源も制御部22に接続されている。
【0032】
本形態では、カードリーダ1の内部に取り込まれたカード2の磁気データの読取やカード2への磁気データの記録が終了すると、駆動ローラ8〜10およびパッドローラ11〜13によってカード2が前側へ搬送されて排出される。駆動ローラ8〜10およびパッドローラ11〜13によるカード2の排出動作は、前側に搬送されるカード2の奥端がカードセンサ15を抜けると完了する。
【0033】
カード2の排出動作が完了したときには、図1(A)に示すように、カード2の奥端側は、駆動ローラ8とパッドローラ11との間に挟まれている。また、このときには、カード2の前端側は、カード挿入排出口3からカードリーダ1の外側へ(具体的には、前側)へ突出しており、ユーザは、カード2の前端側部分を掴んでカードリーダ1からカード2を引き抜くことが可能となっている。すなわち、カード2の排出動作が完了すると、ユーザによるカードリーダ1からのカード2の引抜きが可能な引抜き可能状態となる。なお、引抜き可能状態では、プリヘッド19は、カード2の磁気ストライプに当接しており、また、挿入検知機構18は、カード2を検知している。
【0034】
以下、引抜き可能状態にあるカード2をユーザが引抜く際のカードリーダ1の動作の一例を説明する。
【0035】
(カード引抜き時のカードリーダの動作)
図2は、図1に示すカードリーダ1において、引抜き可能状態にあるカード2をユーザが引抜く際のカードリーダ1の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【0036】
駆動ローラ8〜10およびパッドローラ11〜13によるカード2の排出動作が完了して、引抜き可能状態になると、制御部22は、まず、ユーザによるカード2の引抜きが開始されたか否かを判断する(ステップS1)。上述のように、引抜き可能状態では、プリヘッド19がカード2の磁気ストライプに当接しているため、ステップS1では、プリヘッド19によって磁気データが検出されたか否かによって、制御部22は、ユーザによるカード2の引抜きが開始されたか否かを判断する。すなわち、プリヘッド19によってカード2の引抜きが開始されたか否かを検知する。
【0037】
プリヘッド19によって、引抜き可能状態にあるカード2の引抜きが開始されたことが検知されると(ステップS1において、“Yes”になると)、制御部22は、カード2の引抜きを妨げるようにカード2に摩擦抵抗を与える抵抗動作を開始する(ステップS2)。具体的には、ステップS2では、カード2の奥端側に当接する駆動ローラ8が、カードリーダ1内にカード2を取り込む方向へ回転するように(すなわち、図1の時計回りの方向(時計方向)へ回転するように)、制御部22がモータ14を駆動して、カード2の引抜きを妨げるようにカード2に摩擦抵抗を与え始める。
【0038】
その後、制御部22は、カードリーダ1内にカード2が取り込まれたか否かを判断する(ステップS3)。具体的には、ステップS3において、制御部22は、カードセンサ15によってカード2の奥端側が検出されたか否かを判断する。ユーザによるカード2の引抜き時に、時計方向に回転する駆動ローラ8によって、カードセンサ15でカード2の奥端側が検出されるまでカード2が奥側に取り込まれると、図1(B)に示すように、カード2の前端側の掴み代がなくなってユーザがカード2を引き抜きにくくなる。
【0039】
そのため、ステップS3において、カードセンサ15でカード2の奥端側が検出されると(ステップS3において“Yes”になると)、制御部22は、カードリーダ1内からカード2を排出する方向へ駆動ローラ8が回転するように(すなわち、図1の反時計回りの方向(反時計方向)へ回転するように)モータ14を駆動して、カード2の排出処理を行う(ステップS4)。具体的には、ステップS4では、反時計方向に回転する駆動ローラ8によって前側に搬送されるカード2の奥端がカードセンサ15を抜けるまで(すなわち、引抜き可能状態になるまで)、カード2を排出する。ステップS4において、カード2の排出処理が終わると、ステップS1へ戻って、再び、カード2の引抜きが開始されたか否かを判断する。
【0040】
一方、ステップS3において、カードセンサ15でカード2の奥端側が検出されない場合(ステップS3において“No”の場合)には、制御部22は、抵抗動作を開始してから所定時間が経過したか否かを判断する(ステップS5)。ステップS5で、所定時間が経過していない場合(ステップS5において“No”の場合)には、制御部22は、挿入検知機構18がカード2を検知しなくなったか否かを判断する(ステップS6)。すなわち、制御部22は、引き抜かれるカード2の奥端側が挿入検知機構18を抜けて、カード2の引抜きが完了したか否かを判断する。
【0041】
ステップS6において、挿入検知機構18がカード2を検知しなくなった場合(ステップS6において“Yes”場合)には、制御部22は、モータ14を停止する(ステップS7)。ステップS7で、モータ14が停止すると、カード2の引抜きが完了する。一方、ステップS6において、挿入検知機構18がカード2を検知している場合(ステップS6において“No”の場合)には、ステップS3に戻って、制御部22は、抵抗動作を継続する。
【0042】
また、ステップS5において、所定時間が経過している場合(ステップS5において“Yes”の場合)には、カード2の引抜きに必要な引抜き力が抵抗動作の影響で大きくなって、その結果、所定時間かけてもユーザがカード2を引き抜くことができず、カード2の引抜きをあきらめてしまうおそれがあるため、制御部22は、モータ14を停止する(ステップS8)。モータ14が停止すると、駆動ローラ8が停止するため、カード2の引抜きを妨げるように駆動ローラ8からカード2へ付与される摩擦抵抗が弱まる。また、ステップS8でモータ14が停止すると、ステップS1に戻って、再び、カード2の引抜きが開始されたか否かを判断する。なお、ステップS5における所定時間として、設計的には、ステップS3において、カードセンサ15によってカード2の奥端側が検出されない時間が設定されており、この所定時間は、たとえば、0.35秒である。
【0043】
本形態のプリヘッド19は、引抜き可能状態にあるカード2の引抜きを検知するための引抜き検知機構である。また、本形態の駆動ローラ8は、引抜き可能状態となるまでカードリーダ1内からカード2を排出する方向へカード2を搬送する搬送ローラである。また、本形態では、駆動ローラ8、モータ14および駆動ローラ8とモータ14とを連結する動力伝達機構等によって、カードリーダ1から引き抜かれるカード2に接触してカード2の引抜きを妨げるようにカード2に摩擦抵抗を与えるための抵抗付与機構が構成されている。
【0044】
また、本形態では、ステップS1は、引抜き可能状態にあるカード2の引抜きが開始されたか否かを検知する引抜き開始検知ステップである。ステップS2は、引抜き開始検知ステップであるステップS1でカード2の引抜きが開始されたことが検知されると抵抗付与機構がカード2に摩擦抵抗を与え始める抵抗付与開始ステップであり、ステップS2では、搬送ローラである駆動ローラ8が、カードリーダ1内にカード2を取り込む方向へ回転し始める。ステップS3は、抵抗付与開始ステップであるステップS2後にカードリーダ1内にカード2が取り込まれたか否かを検知する取込み検知ステップである。ステップS4は、取込み検知ステップであるステップS3で、カード2が取り込まれたことが検知されるとカード2の排出方向へ駆動ローラ8を回転させて引抜き可能状態になるまでカード2の排出動作を行うカード排出ステップである。ステップS8は、抵抗付与開始ステップであるステップS2後の所定時間内にカードリーダ1からカード2が引き抜かれない場合に駆動ローラ8によるカード2への摩擦抵抗を弱める抵抗緩和ステップである。
【0045】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、プリヘッド19によって引抜き可能状態にあるカード2の引抜きの開始が検知されると、駆動ローラ8が時計方向へ回転して、カード2の引抜きを妨げるようにカード2に摩擦抵抗を与えている。そのため、本形態では、駆動ローラ8によって付与される摩擦抵抗によって、ユーザによるカード2の引抜き時のカード2の引抜き速度を不均一にすることが可能になる。したがって、本形態では、カード挿入排出部4の前方等にスキミング用磁気ヘッドが取り付けられても、ユーザによるカード2の引抜き時に、スキミング用磁気ヘッドで有意な磁気データが取得されるのを阻止することが可能になり、その結果、カード2の引抜き時のスキミングを阻止することが可能になる。
【0046】
本形態では、駆動ローラ8を時計方向に回転させて、カード2の引抜きを妨げるようにカード2に摩擦抵抗を与えている。そのため、カード2を搬送するための駆動ローラ8を利用して、カード2の引抜きを妨げるようにカード2に摩擦抵抗を与えることができる。すなわち、カード2の引抜きを妨げるようにカード2に摩擦抵抗を与えるための機構を別途設けなくても、カードリーダ1の制御方法を変更するだけで、カード2の引抜きを妨げるようにカード2に摩擦抵抗を与えることができる。したがって、本形態では、カードリーダ1の構成を簡素化することが可能になる。また、本形態では、カード挿入排出口3から挿入されるカード2に磁気データが記録されていることを検知するためのプリヘッド19によってカード2の引抜きが開始されたか否かを検知しているため、カード2の引抜きが開始されたか否かを検知するための機構を別途設ける場合と比較して、カードリーダ1の構成を簡素化することが可能になる。
【0047】
本形態では、カード2の引抜きを妨げるようにカード2に摩擦抵抗を与え始めてから所定時間内にカードリーダ1からカード2が引き抜かれないと、ステップS8で、駆動ローラ8によるカード2への摩擦抵抗を弱めている。そのため、本形態では、カード2に摩擦抵抗を与え始めてから所定時間が経過すると、ユーザがカード2を引き抜く際に必要とされるカード2の引抜き力が一時的に弱まる。したがって、本形態では、ユーザはカード2を引き抜きやすくなる。また、カード2を引き抜く際に必要とされるカード2の引抜き力が一時的に弱まるため、ユーザが一定の力でカード2を引き抜いているのであれば、ユーザによるカード2の引抜き時のカード2の引抜き速度を不均一にしやすくなる。
【0048】
本形態では、ステップS3において、カードセンサ15でカード2の奥端側が検出されると、ステップS4において、カードリーダ1内からカード2を排出する方向へ駆動ローラ8を回転させて、カード2の排出処理を行っている。したがって、本形態では、引き抜かれるカード2に摩擦抵抗を与えるために駆動ローラ8を時計方向へ回転させても、カード2を引き抜く際のカード2の前端側の掴み代を確保することが可能になる。また、本来、ユーザによってカードリーダ1から引き抜かれるべきカード2がカードリーダ1の内部に取り込まれてしまうのを防止することが可能になる。
【0049】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0050】
上述した形態では、駆動ローラ8が、カードリーダ1から引き抜かれるカード2の引抜きを妨げるようにカード2に摩擦抵抗を与えている。この他にもたとえば、カード2の幅方向におけるカード2の端面やカード2の表面(すなわち、おもて面や裏面)に接触する接触部材と、この接触部材がカード2に接触可能な接触位置とカード2に接触しない退避位置との間で接触部材を移動させる移動機構とを備える抵抗付与機構が、カードリーダ1から引き抜かれるカード2の引抜きを妨げるようにカード2に摩擦抵抗を与えても良い。この場合には、移動機構は、プリヘッド19によって引抜き可能状態にあるカード2の引抜きの開始が検知されると、退避位置にある接触部材を接触位置へ移動させる。
【0051】
また、この場合には、上述のステップS8において、接触部材を退避位置へ移動させて抵抗付与機構によるカード2への摩擦抵抗の付与を停止しても良いし、接触部材とカード2との摩擦抵抗が小さくなるように、接触部材を移動させて抵抗付与機構によるカード2への摩擦抵抗の付与を弱めても良い。
【0052】
上述した形態では、プリヘッド19を用いて引抜き可能状態にあるカード2の引抜きが開始されたか否かを検知している。この他にもたとえば、プリヘッド19以外のセンサを用いて引抜き可能状態にあるカード2の引抜きが開始されたか否かを検知しても良い。
【0053】
上述した形態では、ステップS8でモータ14が停止した後に、ステップS1に戻っている。この他にもたとえば、ステップS8の後に、ステップS8でのモータ14の停止動作が所定回数を超えて行われたか否かを判断するステップを設け、ステップS8での停止動作が所定回数を超えて行われていない場合には、ステップS1へ戻り、ステップS8での停止動作が所定回数を超えて行われた場合には、そのまま、モータ14の停止状態を維持して、ユーザによるカード2の引抜きを待っても良い。この場合であっても、所定回数行われた抵抗動作によって、スキミング用磁気ヘッドで有意な磁気データが取得されることを阻止することが可能になる。
【0054】
上述した形態では、カードリーダ1は、本体部5の内部に駆動ローラ8〜10およびパッドローラ11〜13を備えているが、カード挿入排出部4の内部には駆動ローラおよびパッドローラを備えていない。この他にもたとえば、カードリーダ1は、カード挿入排出部4の内部に駆動ローラおよびパッドローラを備えていても良い。この場合には、カード挿入排出部4の内部に配置される駆動ローラによって、カードリーダ1から引き抜かれるカード2の引抜きを妨げるようにカード2に摩擦抵抗を付与することが可能になる。したがって、カード2の搬送方向におけるより広い範囲で、カード2に摩擦抵抗を付与することが可能になる。
【0055】
上述した形態では、カードリーダ1は、駆動ローラ8〜10およびパッドローラ11〜13を備えるカード搬送式のカードリーダであるが、本発明の構成が適用されるカードリーダは、ユーザが手動でカード2を移動させながら、磁気データの読取や記録を行う手動式のカードリーダであっても良い。たとえば、本発明の構成が適用されるカードリーダは、カードリーダ内へカード2を差し込む際、あるいは、カードリーダからカード2を引き抜く際に磁気データの読取や記録を行ういわゆるディップ式のカードリーダであっても良い。この場合には、たとえば、このカードリーダのカード挿入排出部に、ユーザがカード2の前端側を掴むための切欠き部が形成されており、この切欠き部においてカード2の前端側の一部が露出することで、カードリーダ1からのカード2の引抜きが可能な引抜き可能状態になる。
【符号の説明】
【0056】
1 カードリーダ
2 カード
3 カード挿入排出口
4 カード挿入排出部
8 駆動ローラ(搬送ローラ、抵抗付与機構の一部)
14 モータ(抵抗付与機構の一部)
19 プリヘッド(磁気ヘッド、引抜き検知機構)
S1 引抜き開始検知ステップ
S2 抵抗付与開始ステップ
S3 取込み検知ステップ
S4 カード排出ステップ
S8 抵抗緩和ステップ
X2 カードの引抜き方向
図1
図2