特許第6000720号(P6000720)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6000720-電気接続用のコネクター 図000002
  • 特許6000720-電気接続用のコネクター 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000720
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】電気接続用のコネクター
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20160923BHJP
【FI】
   H01R13/52 A
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-168272(P2012-168272)
(22)【出願日】2012年7月30日
(65)【公開番号】特開2014-26908(P2014-26908A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115142
【氏名又は名称】ユニオンマシナリ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076093
【弁理士】
【氏名又は名称】藤吉 繁
(72)【発明者】
【氏名】亀岡 亮
(72)【発明者】
【氏名】柏木 仁
(72)【発明者】
【氏名】萩原 昭生
(72)【発明者】
【氏名】佐野 永
(72)【発明者】
【氏名】加藤 武司
【審査官】 前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭56−025467(JP,U)
【文献】 特開2005−317385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性及び柔軟性を有する合成樹脂を素材とし、被挿入部を有する雌インシュレーターと、絶縁性及び柔軟性を有する合成樹脂を素材とし、前記被挿入部に挿入される挿入部を有する雄インシュレーターとからなる電気接続用のコネクターにおいて、雌インシュレーターの被挿入部を開口部寄りの拡径部分とその奥に位置した縮径部分とにより構成し、拡径部分の内径を前記雄インシュレーターの挿入部の外径より大きく、縮径部分の内径を雄インシュレーターの挿入部の外径より小さく設定すると共に、縮径部分の周壁の肉厚内に、雌インシュレーターの後端面に開口し、縮径部分の内周壁面と円心円状に、拡径部分近傍にまで達する、断面がスリット状を呈した空胴を、縮径部分を取り巻く様に形成し、縮径部分に円周方向へ弾性を付与し、雄インシュレーターの挿入時に生じる撓みの逃げとしたことを特徴とする電気接続用のコネクター。
【請求項2】
被挿入部及び挿入部が共に円筒状であることを特徴とする請求項1記載の電気接続用のコネクター。
【請求項3】
雌インシュレーターにはタイプのコンタクトピンが、インシュレーターにはタイプのコンタクトピンがそれぞれ取付けられていることを特徴とする請求項1記載の電気接続用のコネクター。
【請求項4】
雌インシュレーターには雌タイプのコンタクトピンが、雄インシュレーターには雄タイプのコンタクトピンがそれぞれ取付けられていることを特徴とする請求項1記載の電気接続用のコネクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気接続用のコネクター、詳しくは油中に浸漬された状態で使用しても、内部に金属粉などの異物が侵入しない電気接続用のコネクターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用の変速機の内部などの油が満たされている閉鎖空間内に、油に浸漬された状態で電気接続用のコネクターを配置しなければならない場合がある。
【0003】
例えば、自動車用の変速機内では、走行中はギアや金属ベルトなどの機械部品が駆動しており、これら金属部品の摺動により、金属粉などの異物(コンタミネーション)の発生は避けられず、これら異物が変速機内に満たされている油の流れに乗って変速機内を漂うことになるので、変速機内に電気接続用のコネクターが設置されていると、金属粉などの異物が油と共にコネクター内へ侵入し、電気接続の短絡などの好ましからざる事態を発生されることがある。特に、昨今の自動車においては、変速機は電気的に制御されているので、電気接続の短絡は、変速機の誤作動などの重大な障害を惹起させ、自動車の安全な走行に深刻な影響を与えることになるのは言うまでもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】なし
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】なし
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コネクター内部への金属粉などの異物の侵入による電気接続の短絡等の事態を防ぐ為には、コネクターの接合部分の加工精度を上げて、接合部分のすき間をなくすことが有効であるが、加工公差の制約上、接合部分からすき間を全になくすことは技術的に不可能であるので、コネクターの接合部分をシリコンゴム等で封止することなどが行われている。しかし、この様にするには、シリコンゴムの部品調達費用や組立費用が別途必要となる為、コストの大幅な上昇は避けられず、環境対応形の小型車の普及に伴う部品単価の更なる低下を求める自動車メーカーの強い要求とは相容れず、コネクター供給者としては、苦慮する処であった。
【0007】
本発明者は、変速機などの油の満たされた閉鎖空間内で使用される電気接続用のコネクターに関する上記従来の問題点を解決すべく研究を行った結果、部品点数を増やすことなく、安価で製造出来、組立も容易で、金属粉などの異物の侵入を効果的に阻止することが出来る新しいコネクターを開発することに成功し、本発明としてここに提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
絶縁性及び柔軟性を有する合成樹脂を素材とし、被挿入部を有する雌インシュレーターと、絶縁性及び柔軟性を有する合成樹脂を素材とし、前記被挿入部に挿入される挿入部を有する雄インシュレーターとからなる電気接続用のコネクターにおいて、雌インシュレーターの被挿入部を開口部寄りの拡径部分とその奥に位置した縮径部分とにより構成し、拡径部分の内径を前記雄インシュレーターの挿入部の外径より大きく、縮径部分の内径を雄インシュレーターの挿入部の外径より小さく設定すると共に、縮径部分の周壁の肉厚内に、雌インシュレーターの後端面に開口し、縮径部分の内周壁面と円心円状に、拡径部分近傍にまで達する、断面がスリット状を呈した空胴を、縮径部分を取り巻く様に形成し、縮径部分に円周方向へ弾性を付与することにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0009】
雌インシュレーターの被挿入部に雄インシュレーターの挿入部を挿入し、雌インシュレーターと雄インシュレーターにそれぞれ取付けられているコンタクトピンを結合させて、ケーブルと回路基板、モジュールと回路基板などの電気的な接続の用に供するものであるが、雌インシュレーターの被挿入部に形成されている縮径部分の内径は雄インシュレーターの挿入部の外径より小さいが、その周囲に形成されている空胴によって円周方向へ向かって弾性が付与されているので、挿入部の挿入の際に被挿入部の縮径部分に達した挿入部は縮径部分を弾性的に押し拡げながら被挿入部の奥まで進入し、挿入部の外周と縮径部分の周壁とは広い範囲に亘って面的かつ弾性的にピッタリと密着するので、雄インシュレーターと雌インシュレーターとを結合させた状態で油の満たされている変速機内などに設置したとしても、被挿入部と挿入部との接合箇所からこのコネクター内に油が侵入することはなく、油中を流動している金属粉などの異物(コンタミネーション)によって、コネクター内において電気回路の短絡等の好ましからざる事態発生することは阻止される。
従って、被挿入部と挿入部との接合箇所をシリコンゴム等で封止する必要がないので、封止に用いるシリコンゴムの部品調達費用やその為の組立費用は必要なく、低コストで異物(コンタミネーション)侵入対策を行うことが出来る効果を有し、すぐれた実用性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明に係る電気接続用のコネクターの実施例1の構成部材を分離して描いた縦断面図。
図2】同じく、その構成部材を結合した状態の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
雄インシュレーターと雌インシュレーターとからなるコネクターにおいて、雌インシュレーターに形成されている凹穿した被挿入部に縮径部分を形成し、この縮径部分の周壁の肉厚内に空胴を設け、縮径部分に円周方向へ弾性を付与し、雄インシュレーターの挿入部を挿入した際に発生する撓みの逃げとし、両者の接合箇所が広い面積に亘って弾性的に密着する様にした点に最大の特徴が存する。
【実施例1】
【0012】
図1はこの発明に係る電気接続用のコネクターの実施例1の構成部材を分離して描いた縦断面図、図2は同じくその構成部材を結合した状態の縦断面図である。
【0013】
この発明に係る電気接続用のコネクターは、図1に示す様に、雄インシュレーター1と雌インシュレーター2とにより構成されている。雄インシュレーター1は絶縁性及び柔軟性を有する合成樹脂を素材とし、円筒状をなした挿入部8の後方寄り(図1において左側)の端面の外縁に円板状のつば部3が一体的に形成された部材であり、内径側後部(図1において左側)からは前方側(図1において右側)に向かってコンタクトピン5aが取付けられている。なお、つば部3は必須の部材ではなく、省略しても良い。
【0014】
一方、雌インシュレーター2は、雄インシュレーター1と同様に、絶縁性及び柔軟性を有する合成樹脂を素材とした部材であり、前方側(図1において左側)の端面から後方側(図1において右側)に向かって、前記雄インシュレーター1の挿入部8を挿入させる凹穿した被挿入部7が形成されており、この被挿入部7の底面9からは、コンタクトピン5bが被挿入部7の開口部10の方向へ向かって植設されている。なお、この実施例においては、雄インシュレーター1、雌インシュレーター2は共に円筒状をなしているが、四角形状や他の形状であっても良い。又、コンタクトピン5は、突出した凸形状の接点を持った雄タイプのコンタクトピン5bと、前記凸形状の接点の挿入を受ける凹形状の接点を持った雌タイプのコンタクトピン5aとからなり、この実施例においては雄インシュレーター1には雌タイプのコンタクトピン5aが、雌インシュレーター2には雄タイプのコンタクトピン5bがそれぞれ取付けられているが、これとは逆に、雄インシュレーター1に雄タイプのコンタクトピン5bを、雌インシュレーター2に雌タイプのコンタクトピン5aを取付けても良い。
更に、雄インシュレーター1と雌インシュレーター2は、必ずしも図2に示す形状のものに限る必要はなく、要するに、雄インシュレーター1の挿入部8を雌インシュレーター2の被挿入部7に挿入出来る様な形状になっておれば良いのである。
【0015】
又、雌インシュレーター2の被挿入部7の開口部10寄りの部分は、その内径Aが雄インシュレーター1の挿入部8の外径Bよりわずかに大きくなる様に形成された円筒状の拡径部分14となっていると共に、それより奥の底面9寄りの部分は、その内径Cが雄インシュレーター1の挿入部8の外径Bより小さくなる様に形成された円筒状の縮径部分13となっており、これら拡径部分14と縮径部分13の境界箇所には斜面12が形成されている。
【0016】
更に、縮径部分13を囲う周壁15の肉厚内には、縮径部分13の内周壁面と同心円状に、拡径部分14近傍にまで達する円筒状の空胴16が形成されており、この空胴16によって縮径部分13には円周方向へ弾性が付与されている。なお、空胴16の後端(図1において右側)は、雌インシュレーター2の後端面18に開口しており、空胴16は断面がスリット状を呈し、外部に連通している。又、被挿入部7の開口端の内径側は、内側に向かって斜めに面取りされており、挿入部8の挿入の際の誘い込みを容易にする傾斜部17となっている。
【0017】
この発明は上記の通りの構成を有するものであり、雌インシュレーター2の被挿入部7に雄インシュレーター1の挿入部8を挿入し、雌インシュレーター2と雄インシュレーター1にそれぞれ取付けられているコンタクトピン5a,5bを結合させて、ケーブルと回路基板、モジュールと回路基板などの電気的な接続の用に供するものであるが、雌インシュレーター2の被挿入部7に形成されている縮径部分13の内径Cは雄インシュレーター1の挿入部8の外径Bより小さいが、その周囲に形成されている空胴16によって円周方向へ向かって弾性が付与されているので、挿入部8の挿入の際に被挿入部7の縮径部分13に達した挿入部8は縮径部分13を弾性的に押し拡げながら被挿入部7の奥まで進入し、挿入部8の外径Bと縮径部分13の周壁とは広い範囲に亘って面的にピッタリと密着する。従って、雄インシュレーター1と雌インシュレーター2とを結合させた状態で油の満たされている変速機内などに設置したとしても、被挿入部7と挿入部8との接合箇所からこのコネクター内に油が侵入することはなく、油中を流動している金属粉などの異物(コンタミネーション)によって、コネクター内において電気回路の短絡等の好ましからざる事態を発生することは阻止される。
【0018】
従って、被挿入部7と挿入部8との接合箇所をシリコンゴム等で封止する必要がないので、封止に用いるシリコンゴムの部品調達費用やその為の組立費用は必要なく、低コストでコンタミネーション対策を行うことが出来、すぐれた実用性を有する。
【産業上の利用可能性】
【0019】
自動車の変速機内に設置されるコネクターだけではなく、異物(コンタミネーション)対策が求められている各種コネクターに広く利用可能である。
【符号の説明】
【0020】
1.雄インシュレーター
2.雌インシュレーター
3.つば部
5.コンタクトピン
7.被挿入部
8.挿入部
9.底面
10.開口部
12.斜面
13.縮径部分
14.拡径部分
15.周壁
16.空胴
17.傾斜部
18.後端面
図1
図2