特許第6000722号(P6000722)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000722
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】成形配線板ユニット
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/16 20060101AFI20160923BHJP
   H05K 1/18 20060101ALI20160923BHJP
   B60R 16/02 20060101ALN20160923BHJP
【FI】
   H02G3/16
   H05K1/18 U
   !B60R16/02 610Z
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-168274(P2012-168274)
(22)【出願日】2012年7月30日
(65)【公開番号】特開2014-27836(P2014-27836A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115142
【氏名又は名称】ユニオンマシナリ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076093
【弁理士】
【氏名又は名称】藤吉 繁
(72)【発明者】
【氏名】亀岡 亮
(72)【発明者】
【氏名】柏木 仁
(72)【発明者】
【氏名】萩原 昭生
(72)【発明者】
【氏名】佐野 永
(72)【発明者】
【氏名】加藤 武司
【審査官】 石坂 知樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−163553(JP,A)
【文献】 特開平05−054934(JP,A)
【文献】 特開2001−016745(JP,A)
【文献】 特開2002−095135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/16
H05K 1/18
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下及び側面が壁面によって囲われた中空の配線箱中の天井面に、所望の回路が形成された金属配線を固定し、該金属配線の途中に、屈曲した誤差吸収部を形成し、金属配線にフローティング機能を持たせると共に、外部の機器と接続する為に金属配線に形成されている外部入出力用の端子に、フローティング機能を有するフローティングコネクターを接続し、該フローティングコネクターの外部接続部を配線箱の壁面から外部に露出させ、該外部接続部に外部のコネクターを接続することにより、フローティングコネクターを介して外部の機器と配線箱中の金属配線とを電気的に接続する様にしたことを特徴とする成形配線板ユニット。
【請求項2】
配線箱中に、板状をなしたインナーモールドを上下に空隙が形成される様に間隔をあけて水平に収容し、該インナーモールドの裏面に金属配線を固定し、該金属配線の途中に、屈曲した誤差吸収部を形成し、金属配線にフローティング機能を持たせしたことを特徴とする請求項1記載の成形配線板ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、成形配線板ユニット、詳しくは、外殻に覆われた空間内における使用に適した成形配線板ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の変速機やエンジンあるいは各種産業機械など、外殻によって覆われた空間内に配置されたソレノイドや電磁バルブなどの電気機器に外部から電気信号を伝達しようとする場合には、複数の電線を束にしたワイヤーハーネスを該空間内の金属板上に配設し、その端末をコネクターで接続したものを用いるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】なし
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】なし
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電線を加工したワイヤーハーネスを全て金属板上に配設する場合は、部品が配置される全領域まで金属板を広げる必要があり、ハーネス加工費のほかに、金属板に関する費用も別途必要となる為、コストアップの要因となっていた。
【0006】
一方、原価を低く押さえる為に、金属板の使用範囲を極力限定し、固定箇所のみにした場合、可撓性を有し、自由度の大きいワイヤーハーネスの取付け作業の工数が多くなってしまい、しかも組込み時に電線噛み込み等のトラブルも発生しやすくなるという問題があった。
【0007】
この為、配線板をプラスチックモールドで囲み、成形配線板とすることで組立性を良好にし、組立作業時の不良品発生の低減化を図る試みもなされているが、自動車のエンジンや変速機など外殻によって覆われた空間内に成形配線板を配置しようとする場合、その固定箇所である空間内の鋳造部品の精度や取付け誤差の許容範囲が非常に狭いといった問題があった。
【0008】
又、これら外殻に覆われた空間内に配置する成形配線板の場合、その製造にはインサートモールド方式を採用することが多く、それに伴い、バリエーションの対応幅が小さくなり、多彩なバリエーション展開には向かないといった問題もあった。
【0009】
本発明者は、組立性の良さという成形配線板の長所を生かしつつ、取付け誤差の許容範囲が大きく、外部の機器との接続も容易で、多彩なバリエーション展開も可能な成形配線板を実現すべく研究を行った結果、成形配線板をユニット化することにより、これらの要求を満足させることに成功し、本発明としてここに提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上下及び側面が壁面によって囲われた中空の配線箱中の天井面に、所望の回路が形成された金属配線を固定し、該金属配線の途中に、屈曲した誤差吸収部を形成し、金属配線にフローティング機能を持たせると共に、外部の機器と接続する為に金属配線に形成されている外部入出力用の端子に、フローティング機能を有するフローティングコネクターを接続し、該フローティングコネクターの外部接続部を配線箱の壁面から外部に露出させ、該外部接続部に外部のコネクターを接続することにより、フローティングコネクターを介して外部の機器と配線箱中の金属配線とを電気的に接続する様にして上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0011】
自動車のエンジンや変速機、あるいは各種産業機械など、外殻によって覆われた空間内の鋳造部品などの内部構造物に配線箱を固定することにより、該空間内に位置せしめ、配線箱の上下面や側面から外部に露出しているフローティングコネクターの外部接続部に外部の機器から延設されたコネクターを挿入して、両者の電気的接続を行うものである。つまり、配線箱内の金属配線の端子はフローティングコネクターを介して外部のコネクターと結合されるので、配線箱が固定されている空間内の内部構造物と外部のコネクターが支持されている外殻との間で、取付け誤差が生じたとしても、そのズレはフローティングコネクターのフローティング機構が吸収し、両者の結合関係は確実に保持される。従って、外部のコネクター側にはズレ(誤差)を吸収する為の何らかの対策を別途施す必要はなく、コネクターをそのまま外側に露出しているフローティングコネクターの外部接続部に嵌合させるだけで、簡単に結合作業を行うことが出来、組立作業に関するコストを低減化することが可能で、組立作業の信頼性も向上する。
【0012】
又、金属配線はアッパーカバーの天井面やインナーモールドの裏面に固定されているので、変速機など外殻によって覆われた空間内において、配線箱内に油が侵入したとしても、油中に浮遊している金属粉などの金属異物(コンタミネーション)が金属配線に沈殿付着することはほとんどなく、金属異物の付着により電気接続の安定化が阻害される恐れもない。
【0013】
更に、配線箱内の金属配線には屈曲した誤差吸収部が形成されており、金属配線自体にフローティング機能が付与されているので、これによっても取付誤差の許容範囲は拡大され、良好な組立性がもたらされ、組立作業が容易になり、組立不良発生の危険性も減らすことが出来る。
【0014】
しかも、外部のコネクターと接続されるフローティングコネクターの外部接続部を標準化することでバリエーション展開が容易となり、成形配線板の利用範囲をより一層拡大させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明に係る成形配線板ユニットの実施例1の斜視図。
図2図1に示す成形配線板ユニットを下方から見た部分斜視図。
図3図1に示す配線板ユニットを各構成要素に分解して描いた分解斜視図。
図4】この発明に係る成形配線板ユニットの構成要素の一つであるフローティングコネクターをその本体部分と外部接続部とに分けて描いた分解斜視図。
図5】同じく、この発明に係る成形配線板ユニットの構成要素の一つである金属配線の要部の拡大斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上下面及び側面を有する中空の配線箱中の天井面に金属配線を固定し、この金属配線に屈曲した誤差吸収部を形成すると共に、金属配線に形成されている外部入出力用の端子に、フローティングコネクターを接続し、フローティングコネクターの外部接続部を配線箱の壁面から外部に露出させた点に最大の特徴が存する。
【実施例1】
【0017】
図1はこの発明に係る成形配線板ユニットの実施例1の斜視図、図3は成形配線板ユニ
ットを各構成要素に分解して描いた分解斜視図である。
【0018】
図中1は、この発明に係る成形配線板ユニットの構成要素の一つである配線箱であり、アッパーカバー2及びロアーカバー3とからなり、上下面4及び側面5によって囲われた中空のボックス状を呈しており、その内部空間には板状をなしたインナーモールド6が上下に空隙が形成される様に間隔をあけて水平に収容されている。
そして、アッパーカバー2の天井面及びインナーモールド6の裏面には、所望の回路を形成する金属配線7,8が固定されている。
又、図5に示す様に、金属配線7,8の側縁には、一対の固定用爪18,18が一体的に形成されており、これら固定用爪18,18をアッパーカバー2及びインナーモールド6に圧入することにより、この金属配線7,8はアッパーカバー2の天井面及びインナーモールド6の裏面に確実に固定されている。
【0019】
なお、この実施例においては、アッパーカバー2とロアーカバー3との間にインナーモールド6を介在させて、金属配線7,8を2層に分けて配設したが、インナーモールド6を設けずに、アッパーカバー2の天井面だけに金属配線7を配設したり、インナーモールド6を2個以上にして、金属配線を3層以上に配設しても良く、回路構成、用途、設置箇所などの要求に応じて適宜変更して良いことはもちろんである。
【0020】
又、金属配線7,8には、図5に示す様に、その回路途中に屈曲した誤差吸収部19が形成されており、金属配線7,8に伸縮性を持たせることにより、金属配線7,8自体にフローティング機能を付与している。更に、金属配線7,8の端末あるいは途中には、外部の機器と接続する為の外部入出力の端子20が上向きに立設又は下向きに垂設されており、これら外部入出力用の端子20にはフローティングコネクター10、14又は24のロケーター側の端子が嵌合されている。
【0021】
なお、フローティングコネクターとは、縦横方向の誤差を吸収する機構、つまりフローティング機構を搭載した電気接続具のことであり、フローティングコネクター10はインシュレーター11の下部にロケーター12が位置した縦形のものであり、インシュレーター11の上部には外部接続用端子21を有する外部接続部29が取付けられており、その下部には縦横方向のズレを吸収するフローティング機構13が設けられている。なお、インシュレーター11及びロケーター12の構成は既存のフローティングコネクターのものと基本的に同じである。
一方、フローティングコネクター14は横形のものであり、横長の柱状を呈した外部接続部29を兼ねたインシュレーター15の長手方向一端にロケーター16が設けられものであり、インシュレーター15のロケーター16寄りにはフローティング機構13が設けられており、ロケーター16の上面には、金属配線7,8の外部入出力用の端子20を挿入してロケーター16内部に位置している端子に嵌合させる為の挿入孔17が形成されている。
又、図中24もフローティングコネクターであり、前述のフローティングコネクター10とは逆に、外部接続部29を兼ねたインシュレーター15の上部にロケーター12が位置した倒立タイプのものであり、図2に示す様にロアーカバー3に形成された貫通孔22を通して下方から外部機器の端子を嵌合接続する様になっている。
又、これらフローティングコネクター10,14,24の外部接続部29はいずれも配線箱1の上下面4あるいは側面5から外部に露出しており、外部の接続コネクター(図示省略)と接続できる様になっている。
【0022】
なお、この実施例においては、縦形のフローティングコネクター10、横形のフローティングコネクター14、倒立形のフローティングコネクター24の3種のフローティングコネクターを用いたが、必ずしもこれらすべて用いる必要はなく、回路構成、用途、設置
箇所などに応じて適宜選択すれば良いことはもちろんである。
【0023】
この発明は上述の通りの構成を有するものであり、自動車のエンジンや変速機、あるいは各種産業機械など、外殻によって覆われた空間内の鋳造部品などの内部構造物に配線箱1を固定することにより、該空間内に位置せしめ、配線箱1の上下面4や側面5から外部に露出しているフローティングコネクター10,14,24の外部接続部29に外部の機器から延設されたコネクターを挿入して、両者の電気的接続を行うものである。つまり、配線箱1内の金属配線7,8の端子9はフローティングコネクター10,14,24を介して外部のコネクターと結合されるので、配線箱1が固定されている空間内の内部構造物と外部のコネクターが支持されている外殻との間で、取付け誤差が生じたとしても、そのズレはフローティングコネクター10のフローティング機構13が吸収し、両者の結合関係は確実に保持される。従って、外部のコネクター側にはズレ(誤差)を吸収する為の何らかの対策を別途施す必要はなく、外部のコネクターをそのままフローティングコネクター10の外側に露出している外部接続部29に嵌合させるだけで、簡単に結合作業を行うことが出来、組立作業に関するコストを低減化することが可能で、組立作業の信頼性も向上する。
又、金属配線7,8はアッパーカバー2の天井面やインナーモールド6の裏面に固定されているので、変速機など外殻によって覆われた空間内において、配線箱1内に油が侵入したとしても、油中に浮遊している金属粉などの金属異物(コンタミネーション)が金属配線7,8に沈殿付着することはほとんどなく、金属異物の付着により電気接続の安定化が阻害される恐れもない。
【0024】
更に、配線箱1内の金属配線7,8には屈曲した誤差吸収部19が形成されており、フローティング機能が付与されているので、これによっても取付誤差の許容範囲は拡大され、良好な組立性がもたらされ、組立作業が容易になり、組立不良発生の危険性も減らすことが出来る。
【0025】
しかも、外部のコネクターと接続されるフローティンコネクター10,14,24の外部接続部29を標準化することでバリエーション展開が容易となり、成形配線板の利用範囲をより一層拡大させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
自動車の変速機やエンジン内だけでなく、各種産業機器など広範囲にわたる電気的接続に用いることが出来る。
【符号の説明】
【0027】
1.配線箱
2.アッパーカバー
3.ロアーカバー
4.上下面
5.側面
6.インナーモールド
7.金属配線
8.金属配線
9.端子
10.フローティングコネクタ
11.インシュレーター
12.ロケーター
13.フローティング機構
14.フローティングコネクター
15.インシュレーター
16.ロケーター
17.挿入孔
18.固定用爪
19.誤差吸収部
20.外部入出力用の端子
21.外部接続用端子
22.貫通孔
24.フローティングコネクター
29.外部接続部
図1
図2
図3
図4
図5