(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000724
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】水晶振動素子
(51)【国際特許分類】
H03H 9/19 20060101AFI20160923BHJP
【FI】
H03H9/19 E
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-169836(P2012-169836)
(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公開番号】特開2014-30113(P2014-30113A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2015年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000104722
【氏名又は名称】京セラクリスタルデバイス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岩田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】笹岡 康平
(72)【発明者】
【氏名】白澤 仁
(72)【発明者】
【氏名】笠原 慧
【審査官】
橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−098712(JP,A)
【文献】
特開2005−094410(JP,A)
【文献】
特開2007−158486(JP,A)
【文献】
特開2011−205516(JP,A)
【文献】
特開2012−074860(JP,A)
【文献】
特開2009−135830(JP,A)
【文献】
特開2011−193292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H9/00−9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視矩形で、長辺が結晶軸であるX軸と平行であり、短辺が結晶軸であるZ´軸と平行であり、長辺側の側面に結晶面であるm面が形成されている平板状の水晶片と、
平面視楕円形状で、この楕円の短径側の縁が前記水晶片のm面にかからないように、平面中心を平面視における前記水晶片の投影面の中心に合わせて、前記水晶片の両主面に設けられている励振電極と、
この水晶片の一方の端部に設けられ、前記励振電極と接続する引き回しパターンとを備え、
前記水晶片の主面に楕円形状の凸部が設けられ、
前記励振電極が前記凸部全体を覆いつつ、前記励振電極の楕円の中心と前記凸部の楕円の中心とが一致しており、
楕円の長径と短径の長さ比率を長径/短径としたとき、
楕円形状の前記励振電極の長さ比率と楕円形状の前記凸部の長さ比率とが同じ比率で構成されることを特徴とする水晶振動素子。
【請求項2】
前記励振電極が、前記楕円形状の短径側を直線に形成した形状で構成されることを特徴とする請求項1に記載の水晶振動素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶デバイスに用いられる水晶振動素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、水晶デバイスには水晶片に金属膜からなる励振電極を設けて構成された水晶振動素子が用いられている。
この水晶片は、例えば、ATカットの水晶ウェハを従来周知のフォトリソグラフィ技術とエッチング技術を用いることで形成することができる。
このような水晶振動素子は、四角形に形成され主面に凸部が形成された水晶片と、この水晶片の両主面中央に設けられる四角形状の励振電極と、この励振電極と接続され水晶片の一方の端部に設けられる引き回しパターンとから構成されている。
ここで、水晶片の主面には四角形状の凸部が設けられており、この凸部の平面中心が水晶片の平面中心より水晶片の端部側に寄せて設けられていた。
また、励振電極は、水晶片に設けられた凸部を覆うように設けられており、平面中心を凸部の平面中心と一致させた位置に設けられていた。
この励振電極は、凸部からはみ出る部分の大きさが、長辺方向及び短辺方向で同じ大きさになっていた(例えば、特許文献1参照)。
なお、凸部と励振電極とが楕円形状となる水晶振動素子も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4506135号公報
【特許文献2】特開2012‐74860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水晶振動素子は、励振電極で振動エネルギーを最大にして、水晶片の縁付近で振動エネルギーを閉じ込めるのが理想状態となる。
しかしながら、従来の水晶振動素子は、四角形状に形成される凸部の角部分と、四角形状に形成される励振電極の角部分が尖っているため、水晶片の内面側から外周側まで環状に伝わる振動変位分布が歪んでしまい、CI値(クリスタルインピーダンス値)が高くなるという現象を起こしていた。
また、長手方向を縦方向とし、短手方向を横方向としたとき、従来の水晶振動素子は、凸部と励振電極との平面形状における縦方向と横方向の長さ比率が異なっていたため、凸部での振動変位分布と励振電極での振動変位分布とでズレが生じて歪んでしまい、CI値(クリスタルインピーダンス値)が高くなるという現象を起こしていた。
【0005】
そこで、本発明は、低いCI値を実現するために振動変位分布の歪みを軽減する水晶振動素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、水晶振動素子であって、
平面視矩形で、長辺が結晶軸であるX軸と平行であり、短辺が結晶軸であるZ´軸と平行であり、長辺側の側面に結晶面であるm面が形成されている平板状の水晶片と、
平面視楕円形状で、この楕円の短径側の縁が水晶片のm面にかからないように、平面中心を平面視における水晶片の投影面の中心に合わせて、水晶片の両主面に設けられている励振電極と、この水晶片の一方の端部に設けられ、前記励振電極と接続する引き回しパターンとを備え、前記水晶片の主面に楕円形状の凸部が設けられ、前記励振電極が前記凸部全体を覆いつつ、前記励振電極の楕円の中心と前記凸部の楕円の中心とが一致しており、楕円の長径と短径の長さ比率を長径/短径としたとき、楕円形状の前記励振電極の長さ比率と楕円形状の前記凸部の長さ比率とが同じ比率で構成されることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、前記励振電極が、前記楕円形状の短径側を直線に形成した形状で構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このような水晶振動素子では、水晶片の両主面に設けられる楕円形状の励振電極の長さ比率と、前記水晶片の主面に楕円形状の凸部の長さ比率とが同じ比率で構成されるので、凸部での振動変位分布と励振電極での振動変位分布とが近くなって歪みを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)は本発明の第一の実施形態に係る水晶振動素子の一例を示す模式図であり、(b)は(a)のA−A断面図である。
【
図2】(a)は本発明の第二の実施形態に係る水晶振動素子の一例を示す模式図であり、(b)は(a)のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための最良の形態(以下、「実施形態」という。)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各構成要素について、状態をわかりやすくするために、誇張して図示している。また、水晶片の主面という場合、水晶片に現れる平面のうち最も広い面とこの広い面と並行する面を主面とする。
【0011】
(第一の実施形態)
図1(a)及び(b)に示すように、本発明の第一の実施形態に係る水晶振動素子10は、四角形状の水晶片1とこの水晶片1の両主面に設けられる励振電極2と、この励振電極2と接続し水晶片1の一方の端部へ引き回されている引き回しパターン3とから構成されている。
【0012】
水晶片1は、例えばATカットの水晶ウェハから四角形状でかつ平板状に形成されており、長辺側の側面にm面1bが設けられている。
なお、この水晶片1は、長辺がX軸と平行であり、短辺がZ´軸と平行であり、厚みがY´軸方向と平行に形成されている。
また、この水晶片1の主面には、凸部1aが設けられている。この凸部1aの平面中心C2は、平面視における水晶片1の投影面の中心C1と一致させた状態で位置させている。なお、この凸部1aは、後述する励振電極2に覆われた状態となる。
【0013】
また、凸部1aは、楕円形状に形成されており、楕円の長径を水晶片10の長辺と平行となり、楕円の短径を水晶片10の短辺と平行となるように設けられる。
この水晶片1は、従来周知のフォトリソグラフィ技術とエッチング技術を用いて形成することができる。これにより設けられた水晶片1は、長辺側の側面にm面1bが形成された状態となる。つまり、m面1bは、水晶をエッチングしたときに側面側に生じる結晶面である。
なお、水晶片1は、引き回しパターン3が設けられる端部をX軸の+X方向とし、反対側の端部を−X方向としている。
【0014】
図1(a)に示すように、励振電極2は、楕円形状となっており、楕円の短径側の縁が水晶片1のm面1bにかからないように、平面中心C3を平面視における水晶片1の投影面の中心C1に合わせて設けられている。つまり、水晶片1を平面視で見たときの主面とm面1bとを含んだ平面の中心C1と励振電極2の平面中心C3とが一致した状態となっている。
水晶片1を平面視で見たときの主面とm面1bとを含んだ平面の中心とは、
図1(a)及び(b)に示すように、水晶片1の長辺の中心を通る中心線CL1と、水晶片1の平面視における短辺の中心を通る中心線CL2とが交差する点でもある。
また、励振電極2は、水晶片1の両主面に設けられ、それぞれ対向するように設けられている。
なお、励振電極2は、長辺を凸部1aの長辺と平行となり、短辺を凸部1aの短辺と平行となるように設けられる。
【0015】
引き回しパターン3は、水晶片1の一方の端部に設けられ、励振電極2と接続している。この引き回しパターン3は、水晶片1の主面の縁に沿って設けられている。
【0016】
例えば、引き回しパターン3は、2つ一対の接続パッド3aと引き回し配線3bとから構成されている。接続パッド3aは、水晶片1の両主面の角部に並んで設けられており、1つの接続パッド3aが一方の主面に設けられた励振電極2と引き回し配線3bを介して接続し、他の接続パッド3aが他方の主面に設けられた励振電極2と引き回し配線3bを介して接続している。
また、引き回し配線3bは、水晶片1の主面の縁に沿って直線で形成されており、励振電極2から接続パッド3aまで設けられている。
【0017】
ここで、楕円の長径と短径の長さ比率を長径/短径とする。
このとき、励振電極2は、
図1に示すように、楕円形状の凸部1aよりも大きい楕円形状であって、凸部の長さ比率Aと同じ長さ比率の楕円形状となっている。
言い換えると、楕円形状の前記励振電極の長さ比率は、楕円形状の前記凸部の長さ比率と同じ比率で構成されている。
【0018】
水晶振動素子は、励振電極で振動エネルギーを最大にして、水晶片1の縁付近で振動エネルギーを閉じ込めるのが理想状態となる。
このように、本発明の第一の実施形態に係る水晶振動素子10によると、楕円形状の前記励振電極の長さ比率と楕円形状の前記凸部の長さ比率と同じ比率で構成されているので、凸部1aでの振動変位分布と励振電極2での振動変位分布とが近くなって歪みを軽減することができる。したがって、振動エネルギーが水晶片1の端部側で閉じ込められやすくなり低いCI値となる水晶振動素子を実現することができる。
【0019】
(第二の実施形態)
図2(a)及び(b)に示すように、本発明の第一の実施形態に係る水晶振動素子11は、励振電極が前記楕円形状の短径側を直線に形成した形状で構成される点で第一の実施形態と異なる。
【0020】
図2(a)に示すように、励振電極2は、楕円形状の短径側を直線に形成した形状となっており、楕円の短径側の直線に形成された縁が水晶片1のm面1bにかからないように、平面中心C3を平面視における水晶片1の投影面の中心C1と一致させた状態で位置させている。
【0021】
このように、本発明の第二の実施形態に係る水晶振動素子11を構成しても第一の実施形態と同様の効果を奏する。
【0022】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態には限定されない。例えば、水晶片にm面が設けられていれば、ATカットに限定されず、種々のカットアングルの水晶片を用いることができる。
また、励振電極は、水晶片に形成されるm面にかかるように設けても良い。
【符号の説明】
【0023】
10,11 水晶振動素子
1 水晶片
1a 凸部
1b m面
2 励振電極
3 引き回しパターン
C1,C2,C3 中心