特許第6000726号(P6000726)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000726
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】内燃機関の動弁装置
(51)【国際特許分類】
   F01L 9/02 20060101AFI20160923BHJP
【FI】
   F01L9/02 A
【請求項の数】4
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-170042(P2012-170042)
(22)【出願日】2012年7月31日
(65)【公開番号】特開2014-29138(P2014-29138A)
(43)【公開日】2014年2月13日
【審査請求日】2015年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000147903
【氏名又は名称】株式会社赤阪鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147500
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 雅啓
(74)【代理人】
【識別番号】100166235
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100179914
【弁理士】
【氏名又は名称】光永 和宏
(72)【発明者】
【氏名】川本 幸徳
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆明
【審査官】 今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−079311(JP,A)
【文献】 実開平05−010715(JP,U)
【文献】 特開2010−116797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L 1/34−1/356、9/02−9/04、13/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動するカムにより加圧される作動流体の流体圧によって内燃機関の弁を開弁するように駆動する内燃機関の動弁装置において、
カム駆動されることによって摺動する第一ピストンと、
前記作動流体を内部に含むと共に前記第一ピストンが摺動することによって容積が変動する第一流体室と、
内燃機関の弁に連結される第二ピストンと、
前記作動流体を内部に含むと共に前記第二ピストンが摺動することによって容積が変動する第二流体室と、
前記第一流体室を前記第二流体室に連通する連通路と、
前記第一流体室、前記連通路及び前記第二流体室によって形成される流体室内の前記作動流体を選択的に外部に放出可能な制御弁と
前記第二流体室及び前記連通路の間に設けられた緩衝室と、
前記緩衝室内に設けられ、前記第二流体室から前記連通路に向かう方向及びその反対方向に沿って摺動可能な緩衝ピストンと
を備え、
前記緩衝ピストンは、前記第二流体室を前記連通路に連通する連通穴を有し、
前記緩衝ピストンと前記第二ピストンとは互いに接触しない動弁装置。
【請求項2】
前記緩衝室は、前記第二ピストンの摺動方向に垂直な方向に、前記第二流体室よりも大きな断面を有すると共に、前記第二流体室側の前記第二流体室よりも広がった端部から延びて前記緩衝室を外部に連通する外部連通穴を有し、
前記緩衝ピストンは、前記緩衝室及び前記第二流体室にわたって延在すると共に、前記緩衝室の内周面に整合する形状の外周面及び前記第二流体室の内周面に整合する形状の外周面を有し、
前記制御弁は、前記第一流体室又は前記連通路に設けられる請求項に記載の動弁装置。
【請求項3】
前記流体室には、前記作動流体が供給される供給路が接続され、
前記供給路には、前記供給路から前記流体室への前記作動流体の流通は許容するが、前記流体室から前記供給路への前記作動流体の流通を阻止する逆止弁が設けられる請求項1または2に記載の動弁装置。
【請求項4】
前記第一ピストンを前記カムに向かって付勢する第一バネと、
前記弁を閉じる方向に、前記弁と共に前記第二ピストンを付勢する第二バネとをさらに備える請求項1〜のいずれか一項に記載の動弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は内燃機関の動弁装置に係り、特に作動流体の流体圧で駆動する動弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、内燃機関のカムが発生する流体圧を利用した液圧駆動式動弁装置が記載されている。液圧駆動式動弁装置は、カムで駆動される加圧ポンプの加圧室から圧送される油圧(液圧)によって駆動されるように構成されている。バルブスプリングによって常時閉弁するように付勢されている内燃機関の吸気弁(又は排気弁)は、吸気弁(又は排気弁)にロッカーアームを介して連結された駆動ピストン及び駆動ピストンを摺動可能に収容するシリンダを有する油圧式アクチュエータによって、開弁駆動される。
【0003】
この油圧式アクチュエータの駆動ピストンは、加圧ポンプの発生する油圧によって駆動されるように構成されている。加圧ポンプは、カムによって加圧室の内方へ押し込まれるように摺動する加圧ピストンと、加圧ピストンをカムに向けて弾性的に付勢するピストンスプリングとを、加圧ポンプのケーシング内に有している。加圧室は、油圧式アクチュエータの駆動ピストン及びシリンダによって形成されるチャンバ(下室)に連通している。さらに、加圧ポンプは、ケーシング内に、加圧室の内圧を受けて加圧室の容積を変化させるように動作する蓄圧ピストンと、蓄圧ピストンを加圧室の内方へ向けて弾性的に付勢する蓄圧スプリングとを有している。そして、加圧室内には、内燃機関の潤滑油が供給されるように構成されている。よって、カム駆動される加圧ピストンにより圧縮される加圧室内の潤滑油の圧力によって、駆動ピストンが駆動され、それにより、吸気弁(又は排気弁)が駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−106670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように内燃機関の機械式のカムを利用した液圧駆動式動弁装置では、吸排気弁の開閉時期と開弁期間とは、カムプロフィールによって機械的に決まる。一方、大気へ放出される排気ガスに含有する有害成分である窒素酸化物(NOx)を低減するために、圧縮比よりも膨張比を大きく取って熱効率を向上させる燃焼サイクルであるミラーサイクルが従来から利用されている。そして、このミラーサイクルを活用してNOxを低減する場合、特に4サイクル機関では吸気弁の閉じ時期を早める方法が採用されている。
【0006】
しかしながら、ミラーサイクルの燃焼サイクルに合わせた内燃機関に最適な吸気弁の早閉じ時期を固定して設定すると、内燃機関の低負荷低回転時には、吸気弁の開弁面積が少なくなり、内燃機関が要求する空気量が不足する。これにより、内燃機関の低負荷低回転時では、空気量不足によって内燃機関での燃焼状態が悪化するため、燃費が非常に悪化することに加え、特にディーゼル機関では黒煙が多量に発生するという問題がある。
よって、カムプロフィールによって吸排気弁の閉じ時期と開弁期間とが機械的に固定される内燃機関では、内燃機関の回転速度(回転数)や負荷に応じた最適な吸排気弁の開閉タイミングや期間が存在するにも関わらず、タイミングや期間を最適に制御することができないという問題もある。
【0007】
この発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、吸排気弁の開閉制御を可能にする、カムによって加圧される液圧(流体圧)駆動式の内燃機関の動弁装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の問題点を解決するために、この発明に係る内燃機関の動弁装置は、駆動するカムにより加圧される作動流体の流体圧によって内燃機関の弁を開弁するように駆動する内燃機関の動弁装置において、カム駆動されることによって摺動する第一ピストンと、作動流体を内部に含むと共に第一ピストンが摺動することによって容積が変動する第一流体室と、内燃機関の弁に連結される第二ピストンと、作動流体を内部に含むと共に第二ピストンが摺動することによって容積が変動する第二流体室と、第一流体室を第二流体室に連通する連通路と、第一流体室、連通路及び第二流体室によって形成される流体室内の作動流体を選択的に外部に放出可能な制御弁と、第二流体室及び連通路の間に設けられた緩衝室と、緩衝室内に設けられ、第二流体室から連通路に向かう方向及びその反対方向に沿って摺動可能な緩衝ピストンとを備え、緩衝ピストンは、第二流体室を連通路に連通する連通穴を有し、緩衝ピストンと第二ピストンとは互いに接触しない
【0009】
らに、緩衝室は、第二ピストンの摺動方向に垂直な方向に、第二流体室よりも大きな断面を有すると共に、第二流体室側の第二流体室よりも広がった端部から延びて緩衝室を外部に連通する外部連通穴を有し、緩衝ピストンは、緩衝室及び第二流体室にわたって延在すると共に、緩衝室の内周面に整合する形状の外周面及び第二流体室の内周面に整合する形状の外周面を有し、制御弁は、第一流体室又は連通路に設けられてもよい。
【0010】
また、流体室には、作動流体が供給される供給路が接続され、供給路には、供給路から流体室への作動流体の流通は許容するが、流体室から供給路への作動流体の流通を阻止する逆止弁が設けられてもよい。
また、上記動弁装置は、第一ピストンをカムに向かって付勢する第一バネと、上記弁を閉じる方向に、上記弁と共に第二ピストンを付勢する第二バネとをさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る内燃機関の動弁装置によれば、カムにより加圧される流体圧によって駆動する吸排気弁の開閉制御が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明の実施の形態1に係る内燃機関の動弁装置における吸気弁の着座時の構成を示す模式断面側面図である。
図2図1の動弁装置において、VVT(可変バルブタイミング)制御弁の非作動時における吸気弁の最大リフト時の状態を示す模式断面側面図である。
図3図1の動弁装置において、VVT制御弁の非作動時における吸気弁の最大リフト状態から着座状態に至る状態を示す模式断面側面図である。
図4図1の動弁装置において、VVT制御弁の作動時における吸気弁の最大リフト時の状態を示す模式断面側面図である。
図5図1の動弁装置において、VVT制御弁の作動時における吸気弁の最大リフト状態から着座状態に至る状態を示す模式断面側面図である。
図6図1の動弁装置において、VVT制御弁の非作動時における吸気弁の着座時の弁側動弁機構を拡大した模式断面側面図である。
図7図3の動弁装置において、VVT制御弁の非作動時における吸気弁のリフト状態の弁側動弁機構を拡大した模式断面側面図である。
図8図4の動弁装置において、VVT制御弁の作動時における吸気弁の最大リフト時の弁側動弁機構を拡大した模式断面側面図である。
図9】VVT制御弁の作動時及び非作動時における吸気弁のリフト状態及び油圧室の油圧の状態を示すグラフである。
図10】この発明の実施の形態2に係る内燃機関の動弁装置において、VVT制御弁の作動時における吸気弁の最大リフト時の状態を示す模式断面側面図である。
図11図10の動弁装置において、VVT制御弁の作動時における吸気弁の最大リフト状態から着座状態に至る状態を示す模式断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
まず、この発明の実施の形態1に係る内燃機関の動弁装置101の構成を説明する。なお、以下の実施の形態では、動弁装置は、内燃機関の燃焼室1の吸気ポート2を開閉する吸気弁3の動作を制御するものとして説明するが、燃焼室1の排気ポートを開閉する排気弁の動作を制御するように構成してもよい。さらに、以下の実施の形態における動弁装置は、作動流体として内燃機関の潤滑油を利用した油圧駆動式の動弁装置として説明する。
【0014】
図1を参照すると、動弁装置101は、内燃機関の燃焼室1の吸気ポート2に設けられた吸気弁3と、吸気弁3に機械的に連結された弁側動弁機構20と、内燃機関と共に回転する動弁カム4に当接するローラ式のタペット5に機械的に連結されたカム側動弁機構10とを備えている。
吸気弁3において、吸気ポート2を開閉する笠状の端部3aと反対側の端部3bには、皿状のリテーナ3cが取り付けられ、さらに、リテーナ3cと燃焼室1の上部部材1aとの間には、吸気弁3の周りを囲むようにしてバルブスプリング3dが取り付けられている。バルブスプリング3dは、リテーナ3cに対して上部部材1aから引き離すように弾性的に付勢し、それにより吸気ポート2を閉じるように吸気弁3を常に付勢する。
ここで、バルブスプリング3dは、第二バネを構成している。
【0015】
また、動弁カム4は、基礎円の一部が突出した形状の断面を有している。動弁カム4は、基礎円を構成するベースサークル部4aと、ベースサークル部4aよりもその径方向外側に向かって突出しているカム山部4bとによって構成されている。
タペット5は、タペット本体5aと、タペット本体5aの先端に回転自在に設けられたタペットローラ5bとを有し、タペットローラ5bを動弁カム4の周面であるカム面4dに当接させている。
ここで、紙面上で、動弁カム4からタペット5を経由してカム側動弁機構10に向かう方向、及び燃焼室1から吸気弁3を経由して弁側動弁機構20に向かう方向を上方と呼び、その反対方向を下方と呼ぶ。
【0016】
カム側動弁機構10は、有底円筒状をした第一油圧シリンダ11と、第一油圧シリンダ11内に同軸に形成された円筒状のシリンダ穴11c内に挿入されると共にシリンダ穴11c内を摺動可能な第一油圧ピストン12と、第一油圧ピストン12の周りを囲むようにして設けられた第一ピストン戻りバネ13とを有している。
ここで、第一油圧ピストン12は第一ピストンを構成し、第一ピストン戻りバネ13は第一バネを構成している。
【0017】
第一油圧シリンダ11は、円筒状の側壁11bと、側壁11bの一方の端部を閉鎖する端壁11aとを有している。そして、側壁11b及び端壁11aの内側にシリンダ穴11cが形成されている。よって、第一油圧ピストン12は、側壁11bの円筒軸方向に沿って摺動することができる。
【0018】
また、第一油圧シリンダ11は、端壁11aによって形成されるシリンダ穴11cの底部11caから端壁11aを貫通して延びて第一油圧シリンダ11の外部に開口する第一流体通路11dを有している。第一流体通路11dの内径は、シリンダ穴11cの内径よりも小さくなっている。
さらに、第一油圧シリンダ11は、第一流体通路11dの途中から第一流体通路11dと垂直な方向に分岐して延びる油供給通路11eを有している。油供給通路11eは、端壁11a内を通ったあと第一油圧シリンダ11の外部に開口し、この外部開口には、内燃機関の潤滑油の一部を油供給通路11eを介して第一流体通路11dに供給するための供給路である油供給管15が接続されている。そして、油供給管15と油供給通路11eとの間には、逆止弁16が設けられている。
【0019】
逆止弁16は、油供給通路11eから油供給管15に向かう流体の流通を阻止するが、油供給管15から油供給通路11eに向かう流体の流通を許容する。さらに、逆止弁16は、油供給管15内の流体の圧力(内燃機関の潤滑油の圧力の場合、作動油圧送圧と呼ぶ)が油供給通路11e内の流体の圧力よりも高くなると、弁を開放して油供給管15から油供給通路11eへ流体を流通させる。
【0020】
第一油圧ピストン12は、シリンダ穴11c内に配置されると共に外周がシリンダ穴11cの内周面に整合する形状を有する円柱状のピストンヘッド12aと、ピストンヘッド12aからシリンダ穴11cの外部に延びてタペット5のタペット本体5aに連結される略円柱状のピストンロッド12bとを有している。ピストンヘッド12aは、側壁11bとの間を液密に封止する。
【0021】
ピストンヘッド12aは、シリンダ穴11c内において、第一油圧シリンダ11の端壁11a及び側壁11bとの間に第一油圧室14を形成する。ここで、第一油圧室14は、第一流体室を構成している。
また、ピストンロッド12bにおけるタペット5側には、ピストンロッド12bの軸方向に垂直な方向に環状に突出するバネ座12cが一体に形成されている。そして、第一ピストン戻りバネ13は、第一油圧シリンダ11の側壁11bの端部とバネ座12cとの間に、ピストンロッド12bの周りを囲むようにして配置され、バネ座12cに対して第一油圧シリンダ11から引き離すように弾性的に付勢し、それにより常にタペットローラ5bを動弁カム4のカム面4dに当接させ押し付ける。
【0022】
弁側動弁機構20は、有底円筒状をした第二油圧シリンダ21と、第二油圧シリンダ21内に略同軸に形成された略円筒状のシリンダ穴21c内に挿入されると共にシリンダ穴21c内を摺動可能な第二油圧ピストン22とを有している。
ここで、第二油圧ピストン22は、第二ピストンを構成している。
【0023】
第二油圧シリンダ21は、円柱状の本体部21aと、本体部21aから同軸方向に延びる略円筒状の側壁21bとを有している。
シリンダ穴21cは、側壁21bの内側に形成されてその途中で内径が変化しており、本体部21aと反対側で開口している。そして、シリンダ穴21cは、開口している側に位置し且つ第二油圧ピストン22が内部を摺動する小径部21caと、本体部21a側に位置し且つ小径部21caよりも大きい内径を有する大径部21cbとを有している。
【0024】
また、第二油圧シリンダ21は、本体部21aによって形成される大径部21cbの底部21ccから本体部21a内を途中で方向を変えつつ延びて第二油圧シリンダ21の外部に開口する第二流体通路21dを有している。第二流体通路21dの内径は、シリンダ穴21cの小径部21caの内径よりも小さくなっている。さらに、第二油圧シリンダ21は、小径部21caと大径部21cbとの境界にできた拡径による段差部分である大径部21cbの端部21cdから延びる第一大気開放穴21eを有している。なお、端部21cdは、底部21ccと対向する部位である。そして、第一大気開放穴21eは、側壁21bを貫通して第二油圧シリンダ21の外部に開口している。
ここで、第一大気開放穴21eは、外部連通穴を構成している。
【0025】
第二油圧ピストン22は、シリンダ穴21cの小径部21ca内に配置されると共に外周が小径部21caにおける側壁21bの内周面に整合する形状を有する円柱状のピストンヘッド22aと、ピストンヘッド22aから小径部21caの外部に延びて吸気弁3におけるリテーナ3cから突出する端部3bに連結される円柱状のピストンロッド22bとを有している。ピストンヘッド22aは、側壁21bとの間を液密に封止する。
そして、シリンダ穴21c内におけるピストンヘッド22aと本体部21aとの間には、略円筒状をした緩衝ピストン23が設けられている。
緩衝ピストン23は、その途中で外径が変化する形状を有している。
【0026】
図6をあわせて参照すると、緩衝ピストン23は、小径部21caから大径部21cbにわたって位置し且つ小径部21caの内周面に整合する外周面を有する円筒状の小径筒部23aと、小径筒部23aに隣接して大径部21cb内に位置し且つ大径部21cbの内周面に整合する外周面を有する円筒状の大径筒部23bとによって構成されている。大径筒部23bの円筒軸方向の長さは、大径部21cbの円筒軸方向の長さよりも短くなっている。そして、緩衝ピストン23の小径筒部23aは、小径部21caにおいて、小径筒部23aと第二油圧ピストン22との間に円筒状の第二油圧室24を形成している。
ここで、大径部21cbは、緩衝室を構成し、第二油圧室24は、第二流体室を構成している。
【0027】
これにより、緩衝ピストン23は、シリンダ穴21c内を円筒軸方向に摺動することができる。また、緩衝ピストン23は、小径筒部23a及び大径筒部23bを円筒軸方向に貫通する連通穴23cを有している。連通穴23cは、第二流体通路21dと同等の内径を有している。
そして、図7に示すように、緩衝ピストン23が変位することによって、大径部21cbにおいて、緩衝ピストン23の大径筒部23bと大径部21cbの底部21ccとの間に円筒状の第三油圧室25が形成される。また、緩衝ピストン23の大径筒部23b及び小径筒部23aと大径部21cbの端部21cdとの間に輪状の第四油圧室26が形成される。第四油圧室26内は、緩衝ピストン23と側壁21bとの間から漏れた潤滑油で満たされている。また、第二油圧室24及び第三油圧室25は、連通穴23cを介して互いに連通する。
【0028】
図1に戻り、弁側動弁機構20は、第二油圧シリンダ21の本体部21a内に制御弁としてVVT(可変バルブタイミング)制御弁27を有している。
VVT制御弁27は、第二流体通路21dを挟んでシリンダ穴21cと反対側に配置されている。
【0029】
図6をあわせて参照すると、VVT制御弁27は、第二油圧シリンダ21の本体部21aの外周面21aaから本体部21aの内部途中まで円柱軸に垂直な方向に延びる円筒状の弁孔27aと、弁孔27a内に円筒軸方向に摺動可能に設けられた略円柱状のスプール弁体27bと、スプール弁体27bを摺動させる電動式アクチュエータ27cとを有している。アクチュエータ27cは、ECU(エンジンコントロールユニット)40と電気的に接続されている。そして、アクチュエータ27cは、ECU40の制御によって通電されると作動し、その伸縮ロッド27caを弁孔27a内に向かって伸長させ、通電停止により作動が停止すると伸縮ロッド27caを伸縮自在なフリーな状態とする。
【0030】
弁孔27aは、スプール弁体27bの外周面に整合する内周面を有する弁室部27aaと、弁孔27aにおいて弁室部27aaよりも本体部21a内部側の先端に位置し且つ弁室部27aaよりも内径が縮径された縮径部27abとによって構成されている。そして、弁室部27aaと縮径部27abとの境界に形成される段差は、スプール弁体27bのストッパ27acを構成している。よって、スプール弁体27bは、弁室部27aa内で摺動し、ストッパ27acに当接すると、それ以上、縮径部27abの方向に移動することができない。
【0031】
スプール弁体27bは、縮径部27ab側の端部から円筒軸方向に窪んだ凹部27baと、外周面の中央付近で周方向に沿って形成された環状の連通溝27bbとを有している。
スプール弁体27bは、凹部27baと反対側の端部から突出する突起を介して、弁孔27aの外部から弁室部27aa内に延びるアクチュエータ27cの伸縮ロッド27caに連結されている。これにより、スプール弁体27bは、アクチュエータ27cが伸縮ロッド27caを伸長させることによって、弁室部27aa内を縮径部27abに向かって円筒軸方向に摺動する。
また、弁孔27a内には、縮径部27abからスプール弁体27bの凹部27ba内にわたって延在する弁戻りバネ27dが設けられている。弁戻りバネ27dは、スプール弁体27bに対して縮径部27abから引き離すように弾性的に付勢する。
【0032】
また、第二油圧シリンダ21の本体部21a内には、弁孔27aの弁室部27aaを第二流体通路21dに連通する弁連通路21fが形成されている。弁連通路21fは、弁室部27aaの軸方向中央付近に接続し、第二流体通路21dよりも内径が小さくなっている。
さらに、弁室部27aaにおける弁連通路21fの接続部と縮径部27abとの間には、弁室部27aaの外径を部分的に拡径する拡径部27adが形成されている。拡径部27adは、弁室部27aaの外周を帯状に囲んで輪状に形成されている。
【0033】
そして、第二油圧シリンダ21の本体部21a内には、拡径部27adから延びて本体部21aの外部に開口する油逃がし穴27eが形成されている。さらにまた、本体部21a内では、弁孔27aの開口付近つまりアクチュエータ27c付近において、弁室部27aaから延びて本体部21aの外部に開口する第二大気開放穴27fが形成されている。
また、カム側動弁機構10と弁側動弁機構20との間には、第一流体通路11dを第二流体通路21dに連通する油連通管30が設けられている。なお、油連通管30の内径は、第一流体通路11d及び第二流体通路21dの内径と同等となっている。
ここで、第一油圧室14、第一流体通路11d、油連通管30、第二流体通路21d及び第二油圧室24は、閉鎖された1つの油圧室100を構成し、油圧室100は、流体室を構成している。また、第一流体通路11d、油連通管30及び第二流体通路21dは、連通路を構成している。そして、油圧室100には、内燃機関の潤滑油が充填されている。
【0034】
次に、この発明の実施の形態1に係る内燃機関の動弁装置101の動作を説明する。
まず、VVT制御弁27を作動しない場合の動弁装置101の動作を説明する。
図1を参照すると、弁側動弁機構20のVVT制御弁27において、ECU40によってアクチュエータ27cが作動されていないとき、弁戻りバネ27dの付勢力によってスプール弁体27bが縮径部27abから離れる方向に移動させられ、スプール弁体27bの連通溝27bbは、弁連通路21fに連通するが、拡径部27ad及び油逃がし穴27eに連通しない。
【0035】
そして、図1に示すように動弁カム4がベースサークル部4aのカム面4dをタペットローラ5bに当接させる状態にあるとき、カム側動弁機構10では、第一油圧ピストン12は、第一ピストン戻りバネ13の付勢力によって最下降位置まで下降している。つまり、第一油圧室14の容積が最大になっている。
【0036】
動弁カム4が紙面上の時計回りの方向である方向Pに回転され、そのカム山部4bのカム面4dがタペットローラ5bに当接するようになると、タペットローラ5bが、タペット本体5a及び第一油圧ピストン12と共に、カム山部4bのカム面4dの形状、つまりカム山部4b断面のリフト曲線に倣うようにして上方に押し上げられる。このとき、第一油圧室14の油圧が上昇し、上昇した油圧が逆止弁16を閉弁するため、潤滑油は、油供給管15への放出が阻止され、第一油圧室14から油連通管30を通じて弁側動弁機構20の第二油圧室24にわたる油圧室100内に閉じ込められる。
【0037】
よって、第一油圧室14内の上昇した油圧は、弁側動弁機構20の第二油圧室24内に作用し、これにより、第二油圧ピストン22をバルブスプリング3dの付勢力に抗して押し下げ、それに伴い吸気弁3がリフトされて吸気ポート2を開放する。
このとき、第二油圧ピストン22は、作用する油圧を介して動作することによって、第一油圧ピストン12の上方向の変位に連動して下方向に変位する。つまり、第二油圧ピストン22は、カム山部4bのカム面4dの起伏形状に沿うようにして下方に変位する。なお、第一油圧ピストン12の径と第二油圧ピストン22の径とを同一にすれば、互いの変位量は同等となり、第二油圧ピストン22の径の方をより小さくすれば、第二油圧ピストン22を、第一油圧ピストン12の変位に連動させつつ変位量を割り増したかたちで変位させることができる。
【0038】
そして、動弁カム4の回転中心軸4cから最も離れた最大リフト量の部分であるカム山部4bの頂部4baがタペットローラ5bに当接する状態となると、第一油圧ピストン12が最上昇位置になると共に、第二油圧ピストン22及び吸気弁3が最下降位置、つまり最大リフト位置となり、吸気ポート2の開口面積が最大になる。よって、図2に示す状態となり、第一油圧室14の容積が最小になると共に第二油圧室24の容積が最大になる。なお、本実施の形態1では、カム山部4bの頂部4baは、カム山部4bの中央付近に位置し、回転中心軸4cを中心とした円の一部を形成する断面をもつ周面を有している。
【0039】
さらに、動弁カム4が回転されると、タペットローラ5bと共に第一油圧ピストン12が下降し、それにより、第一油圧室14及び第二油圧室24内の油圧も低下する。このため、第二油圧ピストン22に作用する油圧よりも大きくなったバルブスプリング3dの付勢力によって、吸気弁3がリフト量を減少させると共に第二油圧ピストン22が上昇させられ、吸気ポート2の開口面積が減少していく。そして、動弁カム4のベースサークル部4aのカム面4dが再びタペットローラ5bに当接するようになると、第一油圧ピストン12が最下降位置となると共に、第二油圧ピストン22が最上昇位置となり、吸気弁3が吸気ポート2に着座してこれを閉鎖する。
【0040】
上述の過程において、油圧室100内の潤滑油の油圧が、油供給管15を介して内燃機関から圧送される潤滑油の圧力(作動油圧送圧)よりも低下すると、逆止弁16が開放され、潤滑油が油圧室100内に送り込まれる。つまり、図3に示す状態となる。
【0041】
なお、油圧室100内の油圧が作動油圧送圧よりも低下するのは、以下の理由による。
図1を参照すると、カム側動弁機構10において、吸気弁3のリフト時、第一油圧ピストン12が上昇すると、油圧室100内の油圧が上昇し、第一油圧ピストン12と第一油圧シリンダ11の側壁11bとの隙間から潤滑油が僅かに漏れる。一方、弁側動弁機構20では、上昇した油圧によって第二油圧ピストン22が下降するが、第二油圧ピストン22と第二油圧シリンダ21の側壁21bとの隙間からも潤滑油が僅かに漏れる。
【0042】
図2を参照すると、動弁カム4がカム山部4bの頂部4baをタペットローラ5bに当接させた状態からさらに方向Pに回転されると、作用していた油圧が低下するため、バルブスプリング3dの付勢力によって吸気弁3と共に第二油圧ピストン22が最上昇位置に戻り、この際、弁側動弁機構20の第二油圧室24及び第三油圧室25内の潤滑油が油連通管30を通じてカム側動弁機構10の第一油圧室14内に押し戻される。
【0043】
しかしながら、リフト時の潤滑油の漏れ量が多くなると、第二油圧ピストン22の上昇変位に対応させて第一油圧ピストン12を下降変位させるのに必要な第一油圧室14の潤滑油体積に対して、漏れ分による潤滑油の不足量が多くなる。一方、第一油圧ピストン12は、第一ピストン戻りバネ13の付勢力によって最下降位置に向かって強制的に戻されようとする。よって、第一油圧室14に負圧が発生することになるが、作動油圧送圧がこの負圧より大きいため、油供給管15内の潤滑油は、逆止弁16を開弁し第一油圧室14を含む油圧室100を作動油圧送圧状態にして充填する。
【0044】
上述の逆止弁16の作動によって、動弁カム4におけるタペットローラ5bと当接する部位がカム山部4bの頂部4baからベースサークル部4aに至る過程において、油圧室100の油圧が作動油圧送圧以上に保たれる。このため、第二油圧ピストン22及び吸気弁3は、タペット5及び第一油圧ピストン12と連動して、カム山部4bのカム面4dの形状、つまりカム山部4b断面のリフト曲線に沿った変位をする。
よって、吸気弁3は常に一定の弁リフト量と開閉タイミングを保持する事が可能となる。
【0045】
なお、緩衝ピストン23は、タペットローラ5bの当接部位がベースサークル部4aからカム山部4bに移る第一油圧ピストン12の上昇行程と、カム山部4bからベースサークル部4aに移る第一油圧ピストン12の下降行程において、吸気弁3が急激に開いたり、又は閉じたりして損傷しないようにするために設けられている。
【0046】
ここで、緩衝ピストン23の動作を説明する。
図1に示すように、動弁カム4がベースサークル部4aをタペットローラ5bに当接させているとき、緩衝ピストン23は、第二油圧シリンダ21のシリンダ穴21c内において、大径部21cbの底部21ccに極接近している。
方向Pに回転される動弁カム4がカム山部4bをタペットローラ5bに当接させるようになると、油圧室100内で上昇する油圧が、緩衝ピストン23と大径部21cbの底部21ccとの間、及び第二油圧室24に作用する。第四油圧室26が第一大気開放穴21eを介して大気圧状態の外部に開放されているため、緩衝ピストン23は、第四油圧室26内の潤滑油を第一大気開放穴21eから外部に押し出しつつ、直ちに大径部21cbの端部21cdに当接するまで下方に移動させられて、図2に示すように、底部21ccとの間に第三油圧室25を形成してその容積を最大にする。その後、第二油圧ピストン22が下方に移動させられ、吸気弁3が吸気ポート2を開放する。第二油圧ピストン22を移動させる直前に第三油圧室25が形成されることによって、第二油圧ピストン22に初期に作用する油圧が吸収、緩衝され、吸気弁3の急激な開放が抑えられる。
【0047】
動弁カム4がカム山部4bの頂部4baをタペットローラ5bに当接させ、さらに当接させている間、緩衝ピストン23は、大径部21cbの端部21cdに当接した状態を維持する。
動弁カム4がさらに方向Pに回転され、タペットローラ5bに当接するカム山部4bのリフト量が減少すると、バルブスプリング3dの付勢力により上方に向かって移動される第二油圧ピストン22によって、油圧室100内の油圧が上昇する。
【0048】
そして、図7に示すように、この上昇した油圧が、緩衝ピストン23を上方に移動させ、第三油圧室25内の潤滑油が圧縮を受けると共に、第四油圧室26が形成される。なお、第四油圧室26内では、第三油圧室25内の潤滑油が緩衝ピストン23と第二油圧シリンダ21の側壁21bとの間から漏れて侵入し、侵入した潤滑油で充填される。
また、第二流体通路21dよりも大きい断面を有しながらも容積が小さい第三油圧室25内では、潤滑油の油圧が急激に上昇するため、第三油圧室25内の潤滑油は、緩衝材として作用し、第二油圧ピストン22から受ける油圧の変化を緩衝する。さらに、緩衝ピストン23が、第二油圧ピストン22が上昇するに従って上昇して大径部21cbの底部21ccに極接近するまで、つまり、第二油圧ピストン22が最上昇位置に達するまで、第三油圧室25の潤滑油は、第二油圧ピストン22から受ける油圧の変化を緩衝する。よって、吸気弁3は、吸気ポート2にソフトに着座するほか、吸気ポート2の閉鎖開始時から吸気ポート2に着座して閉鎖完了するまでの間において、急激に動作することが抑えられる。
【0049】
また、上述のようにして、第二油圧ピストン22が上昇する過程では、第三油圧室25内の潤滑油は、急激に緩衝ピストン23によって圧縮され、その油圧は、スクイズ効果によって超高圧(例えば、200MPa〜300MPa程度)となる。この超高圧の油圧が発生することによって、緩衝ピストン23は、第二油圧シリンダ21の大径部21cbの底部21ccに接触せず、互いを損傷させない。
【0050】
次に、VVT制御弁27を作動する場合の動弁装置101の動作を説明する。
本実施の形態1では、VVT制御弁27は、吸気弁3で吸気ポート2を閉じる際に作動される。
このため、動弁カム4が、ベースサークル部4aをタペットローラ5bに当接させた状態から、カム山部4bをタペットローラ5bに当接させ、さらに、カム山部4bの頂部4baをタペットローラ5bに当接させる状態に至るまで、動弁装置101は、図1及び図2に示されるVVT制御弁27の非作動時と同様の動作を行う。
【0051】
図4及び図8をあわせて参照すると、動弁カム4のカム山部4bの頂部4baがタペットローラ5bに当接させている状態において吸気弁3の閉弁動作を開始するタイミングになると、ECU40は、VVT制御弁27のアクチュエータ27cを作動させて伸縮ロッド27caを伸長させる。例えば、ECU40は、内燃機関のクランク角度センサ50からクランク角度信号を取得し、予め設定したソフトウェアを使用して、最適なクランク角度のタイミングで電気信号をアクチュエータ27cに送り、アクチュエータ27cを作動させる。
伸縮ロッド27caが伸長されることによって、スプール弁体27bは、ストッパ27acに当接するまで、弁戻りバネ27dの付勢力に抗して弁室部27aa内を移動させられる。ECU40は、アクチュエータ27cを作動させ続けることによって、スプール弁体27bをストッパ27acに押し付けた状態に維持する。
【0052】
このとき、スプール弁体27bの連通溝27bbは、弁連通路21fを拡径部27adに連通する(この連通状態をスプール弁体27bの開弁状態と呼ぶ)。これにより、第二流体通路21dが、弁連通路21f、連通溝27bb、拡径部27ad及び油逃がし穴27eを介して、大気圧状態の外部に連通するため、第二流体通路21d内の潤滑油が外部に放出される。
【0053】
第二流体通路21d内から潤滑油が放出されることによって、第二油圧ピストン22に作用している油圧が減少するため、吸気弁3及び第二油圧ピストン22は、バルブスプリング3dの付勢力によって、上昇させられる。つまり、図5に示すように、動弁カム4のカム山部4bの頂部4baがタペットローラ5bに当接している間であっても、カム山部4b断面のリフト曲線の形状に関係なく、吸気弁3が閉弁を開始する、すなわち、吸気弁3の閉鎖開始時期が自在に制御される。なお、吸気弁3の閉弁過程において、上述したような逆止弁16の作用によって、油圧室100内の油圧は、作動油圧送圧以上の大きさに維持される。
【0054】
図5を参照すると、吸気弁3が吸気ポート2に着座する少し前に、ECU40は、アクチュエータ27cを停止する。これにより、弁戻りバネ27dの付勢力によって、スプール弁体27bがストッパ27ac(図7参照)から離れる方向に移動されて、スプール弁体27bの連通溝27bbと拡径部27adとの連通が遮断され、第二流体通路21d内の潤滑油の放出が停止される。このとき、スプール弁体27bのアクチュエータ27c側の空気が第二大気開放穴27fから外部に放出されるため、弁戻りバネ27dの付勢力を受けるスプール弁体27bは、低抵抗でスムーズに移動することができる。
なお、上述のように吸気弁3が着座する少し前にアクチュエータ27cを非通電として停止させることによって、油逃がし穴27eからの潤滑油の放出量が低減される。潤滑油が放出されると、油供給管15から油圧室100に潤滑油を補給する必要があるが、潤滑油の放出量が低減されることによって潤滑油を補給する作動油圧送ポンプの仕事量が低減され、内燃機関の負荷が低減されることになる。
【0055】
第二流体通路21d内の潤滑油の放出停止後、バルブスプリング3dの付勢力により上昇する第二油圧ピストン22によって油圧室100の油圧が上昇するため、第二油圧ピストン22は、その上昇速度を低下させながら最上昇位置に到達し、それにより、吸気弁3は、吸気ポート2にソフトに着座する。
【0056】
ここで、図9を参照すると、VVT制御弁27の作動時及び非作動時における吸気弁3のリフト状態と、油圧室100内の油圧の状態とが、グラフに示されている。
図9のグラフにおいて、横軸にクランク角度をとり、縦軸に吸気弁3のリフト量及び油圧室100内の油圧をとっている。さらに、クランク角度k1〜k2の間においてアクチュエータ27cが通電され、クランク角度k1〜k2よりもクランク角度dk1だけ遅れたクランク角度k3〜k4の間にスプール弁体27bが開弁、つまりVVT制御弁27が開弁されている。
【0057】
このとき、クランク角度k3よりもクランク角度dk2だけ遅れたクランク角度k5から、油圧室100内の油圧が低下し始め、それとほぼ同時に吸気弁3が最大リフト状態からリフト量を低減させ始める。
そして、VVT制御弁27が閉弁されるクランク角度k4よりもクランク角度dk3だけ遅れたクランク角度k6からは、吸気弁3に連結された第二油圧ピストン22に作用する油圧の上昇によって吸気弁3のリフト量の減少速度が低下する。
さらに、後述するように緩衝ピストン23(図7参照)の作用によって、吸気ポート2(図4参照)への着座直前における吸気弁3のリフト量の減少速度が漸次低下すると共に、油圧室100内の油圧の減少速度が漸次低下し、クランク角度k7で、吸気弁3のリフト量が0(零)になると共に、油圧室100内の油圧が作動油圧送圧に収束する。
【0058】
また、VVT制御弁27の非作動時は、クランク角度k5よりも遅れたクランク角度で油圧室100内の油圧が減少し始め、さらに僅かに遅れたクランク角度で吸気弁3のリフト量が減少し始める。そして、クランク角度k7よりも遅れたクランク角度k8で、吸気弁3のリフト量が0(零)になると共に、油圧室100内の油圧が作動油圧送圧に収束する。このとき、動弁装置101は、図3に示す状態となる。
また、吸気弁3のリフト開始時も、上述したように緩衝ピストン23(図1参照)の作用によって、吸気ポート2(図1参照)からの急激な吸気弁3のリフト、及び油圧室100内での急激な油圧の立ち上がりが抑えられている。
【0059】
また、VVT制御弁27の作動時の緩衝ピストン23の動作を説明する。
図4及び図8をあわせて参照すると、動弁カム4のカム山部4bの頂部4baがタペットローラ5bに当接する状態において、アクチュエータ27cが作動される直前及び直後は、緩衝ピストン23は、VVT制御弁27の非作動時と同様に下方に移動し、第二油圧シリンダ21のシリンダ穴21cにおける大径部21cbの端部21cdに当接している。
【0060】
アクチュエータ27cによってスプール弁体27bが開弁されると、第二流体通路21d内の潤滑油が弁連通路21fを通って外部に放出され、さらに、バルブスプリング3dの作用によって吸気弁3と共に第二油圧ピストン22が上昇する。このとき、弁連通路21fの内径が、第二流体通路21d及び緩衝ピストン23の連通穴23cの内径よりも小さいため、第二油圧室24、第三油圧室25及び第二流体通路21dには、油圧が残留する。上昇する第二油圧ピストン22が、油圧が残留する潤滑油を押し上げることによって、緩衝ピストン23も押し上げられ、緩衝ピストン23は図7に示す状態と同様の状態となる。このとき、緩衝ピストン23を介して第二油圧ピストン22から圧縮力を受ける第三油圧室25内の潤滑油は、第二油圧ピストン22から受ける油圧の変化を緩衝する。
【0061】
吸気弁3が吸気ポート2に近づくと、アクチュエータ27cが非通電とされてスプール弁体27bが閉弁され、第二流体通路21d内の潤滑油の放出が停止されるが、このとき緩衝ピストン23は大径部21cbの底部21ccに接近した状態にあり、圧縮を受ける第三油圧室25の潤滑油は、第二油圧ピストン22から受ける油圧の変化を緩衝する。よって、吸気弁3は、吸気ポート2にソフトに着座するほか、吸気ポート2の閉鎖開始時から吸気ポート2に着座して閉鎖完了するまでの間において、急激に動作することが抑えられる。
【0062】
また、本実施の形態1の動弁装置101では、VVT制御弁27は、内燃機関の始動時に一時的に断続的に開弁される。
図1を参照すると、内燃機関の停止後、油圧室100内には外部から空気が侵入することがある。空気が混入した潤滑油は、圧縮力を受けたときに体積を減少させて圧縮力を弾性的に吸収してしまうため、第一油圧ピストン12から受けた圧縮力を、時間的に遅れさせると共に低減して第二油圧ピストン22に伝達する。これにより、第二油圧ピストン22は、第一油圧ピストン12に対して遅れて変位すると共に、第一油圧ピストン12の変位量に対応する変位量よりも小さい変位量で変位する。
このため、内燃機関の始動直前(例えば、イグニッションON状態でのセルモータ始動前)に、ECU40は、VVT制御弁27を断続的に複数回、開弁状態にする。これにより、油圧室100内における上方の弁連通路21f近傍に上昇して溜まっている空気が、油逃がし穴27eから外部に放出される。そして、セルモータによって内燃機関が始動され、動弁カム4によって駆動される第一油圧ピストン12が油圧室100内の潤滑油を圧縮すると、潤滑油には油圧が即座に立ち上がり、立ち上がった油圧が低減することなく第二油圧ピストン22に作用して、吸気弁3を、第一油圧ピストン12の動作に対して延滞無く、且つ第一油圧ピストン12の変位量に対応する変位量を低減することなく駆動させる。
【0063】
このように、この発明の実施の形態1に係る内燃機関の動弁装置101は、駆動する動弁カム4により加圧される潤滑油の油圧によって内燃機関の吸気弁3を開弁するように駆動するものである。動弁装置101は、カム駆動されることによって摺動する第一油圧ピストン12と、潤滑油を内部に含むと共に第一油圧ピストン12が摺動することによって容積が変動する第一油圧室14と、内燃機関の吸気弁3に連結される第二油圧ピストン22と、潤滑油を内部に含むと共に第二油圧ピストン22が摺動することによって容積が変動する第二油圧室24と、第一油圧室14を第二油圧室24に連通する第一流体通路11d、油連通管30及び第二流体通路21dと、第一油圧室14、第一流体通路11d、油連通管30、第二流体通路21d及び第二油圧室24によって形成される油圧室100内の潤滑油を選択的に外部に放出可能なVVT制御弁27とを備える。
【0064】
このとき、動弁装置101では、第一油圧ピストン12は、動弁カム4のカム山部4bによってリフトされると、第一油圧室14内の潤滑油を加圧し、それにより、第二油圧室24内の潤滑油が加圧されて流動し、第二油圧ピストン22が第二油圧室24の容積を増大するように変位して吸気弁3が開弁される。吸気弁3の開弁中、第一油圧ピストン12が動弁カム4のカム山部4b上にリフトされている状態であっても、VVT制御弁27を開放することによって、油圧室100内の潤滑油が外部に放出され、内部の油圧が低下する。これにより、第二油圧ピストン22に作用する油圧が低下し、吸気弁3を閉鎖することができる。従って、動弁装置101は、吸気弁3の閉じ時期をVVT制御弁27によって自在に制御することができる。さらに、動弁カム4のカム山部4bによる第一油圧ピストン12のリフト時において、一時的にVVT制御弁27を開放して油圧室100内の油圧を制御することによって、吸気弁3の開放時期及びリフト量も調節することができる。よって、動弁装置101は、吸気弁3の開閉制御を可能にする。
【0065】
つまり、動弁装置101は、内燃機関の機関回転と負荷に応じた最適なミラーサイクルでの閉弁時期と開弁期間を得ることができ、窒素酸化物(NOx)を低減しつつ燃焼を良くすることを可能にする。さらに、ミラーサイクルの効き難い低回転低負荷時においては、動弁装置101の制御で閉弁時期を遅らせることによって、充分な空気量を確保することができるので、燃焼を良くすることが可能となる。よって、動弁装置101は、機関回転と負荷に応じた最適な吸気弁3の閉弁時期と開弁期間が得られるので、NOxを低減しつつ燃焼を良くすることが可能となり、燃費低減と排出ガスのクリーン化の両立を図ることができる。
【0066】
また、実施の形態1における動弁装置101は、第二油圧室24及び油連通管30の間に設けられた大径部21cbと、大径部21cb内に設けられ、第二油圧室24から油連通管30に向かう方向及びその反対方向に沿って摺動可能な緩衝ピストン23とを備えている。そして、緩衝ピストン23は、第二油圧室24を油連通管30に連通する連通穴23cを有している。このとき、吸気弁3を閉鎖する際に第二油圧ピストン22が加圧して流動させる潤滑油は、連通穴23cを流通しつつ緩衝ピストン23の端部に作用して流動方向に移動させる。これにより、吸気弁3の閉鎖時、緩衝ピストン23と大径部21cbとの間の第三油圧室25の潤滑油が移動する緩衝ピストン23によって圧縮されるため、この第三油圧室25の潤滑油が緩衝材として作用し、吸気弁3の吸気ポート2への急激な着座を防ぐことができる。よって、吸気ポート2での跳ね返り等を抑えた穏やかな吸気弁3の動作が可能となり、吸気弁3の着座時期を適切に制御することができる。さらに、吸気弁3の吸気ポート2への急激な着座による損傷を防ぐこともできる。
【0067】
さらに、実施の形態1の動弁装置101において、大径部21cbは、第二油圧ピストン22の摺動方向に垂直な方向に、第二油圧室24(小径部21ca)よりも大きな断面を有すると共に、第二油圧室24側の第二油圧室24よりも広がった端部21cdから延びて大径部21cbを外部に連通する第一大気開放穴21eを有している。そして、緩衝ピストン23は、大径部21cb及び第二油圧室24にわたって延在すると共に、大径部21cbの内周面に整合する形状の外周面及び第二油圧室24の内周面に整合する形状の外周面を有している。また、VVT制御弁27は、第一油圧室14、第一流体通路11d、油連通管30及び第二流体通路21dのいずれかに設けられている。
【0068】
このとき、緩衝ピストン23は、大径部21cbの内周面に整合する形状の外周面をもつ大径筒部23bと、第二油圧室24(小径部21ca)の内周面に整合する形状の外周面をもつ小径筒部23aとを有する。そして、吸気弁3を閉鎖する際に第二油圧ピストン22が加圧して流動させる潤滑油は、連通穴23cを流通しつつ小径筒部23aの端部に作用して、緩衝ピストン23を移動させる。よって、吸気弁3の閉鎖時、流動する潤滑油が小径筒部23aを押圧する面積よりも、大径筒部23bと大径部21cbとの間の第三油圧室25で潤滑油が圧縮を受ける圧縮面積の方が大きいため、この第三油圧室25の潤滑油の緩衝作用が増大する。
【0069】
さらに、吸気弁3を開放する際に加圧されて流動することによって第二油圧ピストン22に作用する潤滑油は、連通穴23cを流通しつつ流動方向に移動させるように緩衝ピストン23の大径筒部23bの端部に作用する。このとき、大径筒部23bと大径部21cbの端部21cdとの間の空間である第四油圧室26内の潤滑油は、第一大気開放穴21eから外部に放出されるため、緩衝ピストン23の移動が円滑になる。そして、緩衝ピストン23が移動することによって、大径筒部23bと大径部21cbの底部21ccとの間に第三油圧室25が形成されて大径筒部23b及び第二油圧ピストン22に作用する油圧が低減されるため、吸気弁3の急激な開放動作を防ぐことができる。よって、吸気弁3の穏やかな開放動作が可能となり、吸気弁3の開放時期を適切に制御することができる。
【0070】
また、実施の形態1の動弁装置101において、油圧室100には、潤滑油が供給される油供給管15が接続されている。さらに、油供給管15には、油供給管15から油圧室100への潤滑油の流通は許容するが、油圧室100から油供給管15への潤滑油の流通を阻止する逆止弁16が設けられている。このとき、VVT制御弁27の開放時に油圧室100内の油圧が、所定の圧力、例えば油供給管15内の潤滑油の圧送圧よりも低下すると逆止弁16が開放されて、油圧室100内に潤滑油が供給される。つまり、油圧室100内の油圧を、油供給管15内の潤滑油の圧送圧以上に保持することができる。これにより、VVT制御弁27の開放時に油圧室100内の油圧が低下し過ぎることによって、次の第一油圧ピストン12の動弁カム4によるリフト時に第二油圧ピストン22に作用する油圧の発生が遅れ、第二油圧ピストン22及び吸気弁3の動作が遅れることを防ぐことができる。
【0071】
また、実施の形態1における動弁装置101は、第一油圧ピストン12を動弁カム4に向かって付勢する第一ピストン戻りバネ13と、吸気弁3を閉じる方向に、吸気弁3と共に第二油圧ピストン22を付勢するバルブスプリング3dとを備えている。これによって、VVT制御弁27の非作動時における第一油圧ピストン12が最大リフト状態からリフト量を減少する時及びVVT制御弁27の作動時、油圧室100内の油圧に関係なく、バルブスプリング3dが吸気弁3を閉弁するように動作させると共に、第一ピストン戻りバネ13が、第一油圧ピストン12に連結されたタペット5を動弁カム4から離れないように押圧することができる。よって、吸気弁3を所定の閉じ動作で動作させることができる。
【0072】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る内燃機関の動弁装置201は、実施の形態1に係る動弁装置101の弁側動弁機構20において、第二油圧シリンダ21に緩衝ピストン23を設けないようにしたものである。
なお、実施の形態2において、前出した図における参照符号と同一の符号は、同一または同様な構成要素であるので、その詳細な説明は省略する。
【0073】
図10を参照して、実施の形態2に係る動弁装置201の構成を説明する。
動弁装置201は、実施の形態1の動弁装置101と同様のカム側動弁機構10と、実施の形態1の動弁装置101と異なる弁側動弁機構220とを備えている。
弁側動弁機構220は、有底円筒状の第二油圧シリンダ221と、第二油圧シリンダ221のシリンダ穴221c内に摺動可能に挿入される第二油圧ピストン22とを有している。
【0074】
シリンダ穴221cは、第二油圧シリンダ221の円柱状の本体部221aと、本体部221aから同軸方向に延びる円筒状の側壁221bとによって形成され、その形状は、その途中で内径が変化しない円筒形状となっている。
第二油圧ピストン22は、シリンダ穴221cから突出するピストンロッド22bで吸気弁3と連結されている。
シリンダ穴221c内では、第二油圧ピストン22のピストンヘッド22aと、ピストンヘッド22aに対向するシリンダ穴221cの底部221ccとの間に、円筒状の第二油圧室224が形成されている。
【0075】
第二油圧室224は、第二油圧シリンダ221に形成された第二流体通路21d、弁側動弁機構220及びカム側動弁機構10の間に設けられた油連通管30、並びにカム側動弁機構10の第一流体通路11dを順次介して、カム側動弁機構10の第一油圧シリンダ11の第一油圧室14に連通する。第二流体通路21dは、底部221ccで第二油圧室224に連通する。
【0076】
また、第二油圧シリンダ221の本体部221aには、実施の形態1の動弁装置101における第二油圧シリンダ21と同様にして、VVT制御弁27が設けられている。そして、VVT制御弁27の弁室部27aaは、弁連通路21fを介して第二流体通路21dに連通している。
また、この発明の実施の形態2に係る動弁装置201のその他の構成は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0077】
次に、実施の形態2に係る動弁装置201の動作を説明する。
図10を参照すると、VVT制御弁27を作動しない場合、動弁装置201は、実施の形態1の動弁装置101における緩衝ピストン23の動作を除いた動作と同様にして、動作する。
VVT制御弁27を作動させる場合について、VVT制御弁27は、実施の形態1と同様に、吸気弁3で吸気ポート2を閉じる際に作動される。
このため、動弁カム4が、ベースサークル部4aをタペットローラ5bに当接させた状態から、カム山部4bをタペットローラ5bに当接させ、さらに、カム山部4bの頂部4baをタペットローラ5bに当接させる状態に至るまで、動弁装置201は、VVT制御弁27の非作動時と同様の動作を行う。
【0078】
そして、動弁カム4のカム山部4bの頂部4baがタペットローラ5bに当接させている状態において吸気弁3の閉弁動作を開始するタイミングになると、ECU40は、VVT制御弁27に対して、アクチュエータ27cによってスプール弁体27bを移動させ、スプール弁体27bの連通溝27bbが弁連通路21fを油逃がし穴27eに連通する開弁状態にする。これにより、第二流体通路21d内の潤滑油が、弁連通路21f、連通溝27bb、拡径部27ad及び油逃がし穴27eを介して外部に放出され、第二油圧ピストン22に作用している油圧が減少するため、吸気弁3及び第二油圧ピストン22が、バルブスプリング3dによって上昇させられ、吸気弁3が閉弁を開始する。なお、吸気弁3の閉弁過程において、逆止弁16の作用によって、油圧室100内の油圧は、作動油圧送圧以上の大きさに維持される。
【0079】
吸気弁3の閉弁過程において、図11に示すように吸気弁3が吸気ポート2に着座する少し前の段階になると、ECU40は、アクチュエータ27cを停止する。これにより、弁戻りバネ27dの付勢力によってスプール弁体27bが移動させられ、スプール弁体27bの連通溝27bbが油逃がし穴27eに連通しない閉弁状態となり、第二流体通路21d内の潤滑油の放出が停止される。
【0080】
第二流体通路21d内の潤滑油の放出停止後、バルブスプリング3dの付勢力により上昇する第二油圧ピストン22が、第二油圧室224つまり油圧室100の油圧を上昇させるため、第二油圧室224内の潤滑油は、第二油圧ピストン22に対してクッションとして弾性的に作用する。つまり、第二油圧室224内の潤滑油は、第二油圧ピストン22の上昇に伴って体積を減少させつつ、第二油圧ピストン22に対して弾性的な反力を作用させて上昇速度を徐々に低下させ、吸気弁3を吸気ポート2にソフトに着座させる。
上述のように、緩衝ピストン23(図1参照)を有していない動弁装置201でも、吸気ポート2を閉じる過程において吸気弁3が吸気ポート2に着座する前にVVT制御弁27を閉弁することによって、吸気弁3の吸気ポート2への急激な着座を防ぐことができる。
【0081】
なお、本実施の形態2の動弁装置201でも、VVT制御弁27は、内燃機関の始動時に一時的に断続的に開弁され、油圧室100内の潤滑油に混入した空気を取り除く。
また、この発明の実施の形態2に係る動弁装置201のその他の動作は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
そして、実施の形態2における動弁装置201によれば、緩衝ピストン23(図1参照)による効果を除き、上記実施の形態1の動弁装置101と同様な効果が得られる。
【0082】
また、実施の形態1及び2の動弁装置101及び201では、VVT制御弁27の弁室部27aaは弁連通路21fを介して第二流体通路21dに連通していたが、これに限定されるものでない。弁室部27aaは、第一油圧室14、第一流体通路11d又は油連通管30に連通するように構成されてもよい。或いは、第二油圧シリンダ221のシリンダ穴221cに大径部21cbが形成されずに緩衝ピストン23が設けられない実施の形態2の場合、VVT制御弁27の弁室部27aaは、第二油圧室224に連通してもよい。
また、実施の形態1及び2の動弁装置101及び201では、VVT制御弁27は、吸気弁3の閉鎖時に動作して開弁するように構成されていたが、これに限定されるものでない。VVT制御弁27を、吸気弁3の開放時に動作させて開弁し吸気弁3のリフト量を調節するようにしてもよく、内燃機関の排気弁の開放又は閉鎖に適用してもよい。
【0083】
また、実施の形態1及び2の動弁装置101及び201では、VVT制御弁27のスプール弁体27bは、アクチュエータ27cの作動時にストッパ27acに当接して第二流体通路21dを油逃がし穴27eに連通し、アクチュエータ27cの非作動時に上記連通を遮断するON・OFFの動作を行っていたが、これに限定されるものでない。アクチュエータ27cによって、スプール弁体27bの連通溝27bbと、油逃がし穴27eに連通する拡径部27adとの間の連通部分の面積を調節することによって、油逃がし穴27eから放出される潤滑油の流量を調節してもよい。これにより、吸気弁3のリフト量、リフト速度、着座に向かう着座速度を調節することができる。
【0084】
また、実施の形態1及び2の動弁装置101及び201では、逆止弁16を有する油供給管15は、第一流体通路11dに連通していたが、これに限定されるものでない。油供給管15は、VVT制御弁27の弁室部27aaから延びる弁連通路21fが第二流体通路21dに接続する部位よりも、油圧室100において第一油圧シリンダ11側に連通していればよく、第一油圧室14、油連通管30又は第二流体通路21dに連通するように構成されてもよい。
【0085】
また、実施の形態1及び2の動弁装置101及び201では、カム側動弁機構10、弁側動弁機構20,220及びVVT制御弁27を、内燃機関の潤滑油を使用して動作させていたが、これに限定されるものでなく、その他の作動油、液体又は空気等の気体を使用して動作させてもよい。
また、実施の形態1及び2の動弁装置101及び201では、タペット5をローラ式としていたが、これに限定されるものでなく、シム式であってもよい。さらに、タペット5を第一油圧ピストン12に直接連結していたが、これに限定されるものでなく、ロッカーアームを介して連結してもよい。
【符号の説明】
【0086】
3 吸気弁、3d バルブスプリング(第二バネ)、4 動弁カム、11d 第一流体通路(連通路)、12 第一油圧ピストン(第一ピストン)、13 第一ピストン戻りバネ(第一バネ)、14 第一油圧室(第一流体室)、15 油供給管(供給路)、16 逆止弁、21cb 大径部(緩衝室)、21cd 端部(緩衝室の端部)、21d 第二流体通路(連通路)、21e 第一大気開放穴(外部連通穴)、22 第二油圧ピストン(第二ピストン)、23 緩衝ピストン、23c 連通穴、24,224 第二油圧室(第二流体室)、27 VVT制御弁(制御弁)、30 油連通管(連通路)、100 油圧室(流体室)、101,201 動弁装置。
図1
図2
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図11