特許第6000733号(P6000733)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6000733-筆記具のクリップ構造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000733
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】筆記具のクリップ構造
(51)【国際特許分類】
   B43K 25/02 20060101AFI20160923BHJP
【FI】
   B43K25/00 H
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-174329(P2012-174329)
(22)【出願日】2012年8月6日
(65)【公開番号】特開2014-30990(P2014-30990A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2015年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108328
【氏名又は名称】ゼブラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】酒井 洋
(72)【発明者】
【氏名】山脇 巧
【審査官】 中澤 真吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−144785(JP,A)
【文献】 実開昭62−109989(JP,U)
【文献】 特開平10−6686(JP,A)
【文献】 実開昭62−109990(JP,U)
【文献】 実開昭61−40286(JP,U)
【文献】 実開昭59−87987(JP,U)
【文献】 実開昭57−27385(JP,U)
【文献】 実公平4−2077(JP,Y2)
【文献】 特開平9−295494(JP,A)
【文献】 実開昭58−123090(JP,U)
【文献】 特開2011−207139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリップ本体と、前記クリップ本体を支持するクリップ支持体との間で、被挟持物を前記クリップ本体のクリップ力により挟み込むようにした筆記具のクリップ構造であって、
長手方向に延在する前記クリップ本体と前記クリップ支持体との間に転動体が配置され、前記クリップ本体には、前記転動体を収容する転動体収容凹部が形成され、前記転動体収容凹部の前側の壁面には、後方上がりの傾斜面が設けられ、前記転動体は、前記転動体収容凹部内で前後方向に移動可能であることを特徴とする筆記具のクリップ構造。
【請求項2】
前記転動体には、表面摩擦抵抗部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の筆記具のクリップ構造。
【請求項3】
前記転動体に後方から当接させられるプッシュ部を、後方からバネ手段により付勢することを特徴とする請求項1又は2記載の筆記具のクリップ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具のキャップや軸筒に適用されるクリップ構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特開2002−144785号公報がある。この公報に記載された筆記具には、軸筒の後端から軸線方向に延在するクリップが開示されている。このクリップは、後端が軸筒に一体成形されていると共に、樹脂によって形成されているので、樹脂の弾性変形によってクリップ力を発生させている。そして、クリップの先端には玉部が一体的に形成され、玉部は軸筒の表面にクリップ力により圧着させられている。これによって高いクリップ力をもって、薄い紙や服のポケット(被挟持物)であっても、筆記具が外れ難くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−144785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の筆記具のクリップ構造にあっては、クリップの経年変化により、クリップの玉部と軸筒との間に隙間が生じると、筆記具が被挟持物から外れ易くなってしまう。また、クリップの玉部を軸筒の表面に強く圧着させるようにすると、高いクリップ力により薄い紙や服のポケット(被挟持物)から筆記具が脱落し難くなるが、厚い紙やファイルなどの厚い被挟持物をクリップで挟み難くしてしまうといった問題点がある。
【0005】
本発明は、厚い被挟持物であっても薄い被挟持物であっても確実に筆記具をクリップ留めできるようにした筆記具のクリップ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、クリップ本体と、クリップ本体を支持するクリップ支持体との間で、被挟持物をクリップ本体のクリップ力により挟み込むようにした筆記具のクリップ構造であって、
長手方向に延在するクリップ本体とクリップ支持体との間に転動体が配置され、クリップ本体には、転動体を収容する転動体収容凹部が形成され、転動体収容凹部の前側の壁面には、後方上がりの傾斜面が設けられ、転動体は、転動体収容凹部内で前後方向に移動可能であることを特徴とする。
【0007】
この筆記具のクリップ構造においては、長手方向に延在するクリップ本体とクリップ支持体との間に転動体が配置され、この転動体は、クリップ本体に形成された転動体収容凹部内に配置され、転動体収容凹部の前側の壁面に後方上がりの傾斜面が形成されている。そして、この転動体は、転動体収容凹部内で前後方向に移動可能であるから、クリップ本体とクリップ支持体との間に被挟持物が差し込まれると、転動体収容凹部内で転動体は後退しながら上方に持ち上げられた状態になる。これによって、クリップ本体とクリップ支持体との間に被挟持物をスムーズに差し込むことができる。この状態から、被挟持物を差込み方向と逆の方向に引き戻すと、被挟持物と一緒に転動体は自転しながら前進して、転動体が傾斜面に圧着される。これによって、転動体が傾斜面に係止させられ、その後、被挟持物を更に引き戻すように引くと、転動体が傾斜面に強く圧着され、その結果として、転動体が被挟持物に食い付くように強く圧着させられ、筆記具は被挟持物にクリップ留めされる。また、クリップ本体から被挟持物を外す場合、被挟持物を差込み方向に僅かに移動させると、転動体は転動体収容凹部内で自由になり、その後に、被挟持物を横に滑らせば、クリップ本体から被挟持物を外すことができる。また、被挟持物を横抜きできない場合でも、クリップ本体自体のクリップ力に抗してクリップ本体の先端を持ち上げることで、転動体が傾斜面に圧着されている状態を容易に解除することができ、その後、被挟持物を真っ直ぐ引くことで、クリップ本体から被挟持物を容易に外すことができる。このように、本発明では、クリップ本体自体がもっているクリップ力に加えて、そのクリップ力を補助するように、転動体でも係止力を発生させる構造になっているので、薄い被挟持物は勿論のこと、厚い被挟持物であっても筆記具を確実にクリップ留めすることができる。よって、従来のように、薄い被挟持物への適用を可能にするために、クリップ本体の玉部をクリップ支持体の表面に強く圧着させるような構造を必要とせず、クリップ本体の先端の玉部とクリップ支持体の表面との間の隙間が経年変化により変化する影響が極めて少なくなる。なお、被挟持物を移動させて、筆記具に被挟持物をクリップ留めする場合について、上述したが、筆記具を移動させて、筆記具を被挟持物にクリップ留めする場合も同様の作用効果を奏する。
【0008】
また、転動体には、表面摩擦抵抗部が設けられている。
このような構成によって、被挟持物によって転動体を確実に転動させることができ、しかも、傾斜面に対する転動体の係止力を高めて、被挟持物から筆記具が更に外れ難くなる。
【0009】
また、転動体に後方から当接させられるプッシュ部を、後方からバネ手段により付勢する。
バネ手段とプッシュ部との協働により、クリップ本体の非使用時において、転動体を傾斜面に常に当接させておくことができるので、転動体収容凹部内での転動体の遊びが無くなり、これによって、転動体のガタ付きが無くなる。さらに、転動体の前後方向の移動を確実に行わせることができるので、付勢力によって転動体を確実に傾斜面に圧着させることができ、このような構成によって、筆記具を確実にクリップ留めすることができる。特に、このような構成は、水平方向に筆記具をクリップ留めする場合に効果的である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、厚い被挟持物であっても薄い被挟持物であっても確実に筆記具をクリップ留めできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るクリップ構造が適用された筆記具の第1の実施形態を示す斜視図である。
図2図1に示されたクリップ構造の半断面図である。
図3】クリップ構造の要部拡大断面図である。
図4】転動体と被挟持物との関係を示す断面図である。
図5】本発明に係るクリップ構造の第2の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る筆記具のクリップ構造の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、ペン先側を「前方側」として以下説明する。
【0013】
[第1の実施形態]
図1及び図2に示されるように、筆記具1は、軸筒(クリップ支持体)2を有し、この軸筒2内には交換可能な中芯3が装填されている。そして、筆記具1には、長手方向(軸線Lの延在方向)に沿って延在するクリップ本体10と、クリップ本体10を支持する軸筒2との間で被挟持物(例えば、ファイル、本、雑誌、服のポケットなど)Hにクリップ留め可能なように構成されたクリップ構造が採用されている。
【0014】
樹脂又は金属からなるクリップ本体10は、その基端が軸筒2に一体に成形されて弾性変形可能であり、基端を中心とした撓みによってクリップ力が発生する。クリップ本体10の前部の裏面(軸筒2の表面に対面する面)10aには、円柱状の転動体11を収容するための転動体収容凹部Sが形成されている。これによって、クリップ本体10と軸筒2との間に転動体11が配置されることになる。
【0015】
転動体11は、転動体収容凹部S内で前後方向に移動することができ、金属からなる転動体11の中央には、全周に渡って延在するゴムリング11aが固定されている。このゴムリング11aは、表面摩擦抵抗部の一例であり、ゴムでなくても他の材質のものでもよく、転動体11の表面全体にゴムを融着させてもよい。また、転動体11は、円柱でなくても樽形であってもよい。転動体11の材質は、安定した転がりを達成させるために、比重の大きな例えば真鍮などが好適である。
【0016】
図3に示されるように、転動体収容凹部Sの前側の壁面には、後方上がりの平坦な傾斜面Rが設けられている。この傾斜面Rは、軸線Lに対して20度から45度の範囲が好適である。なお、この傾斜面Rは、凸状曲面、凹状曲面の何れであってもよい。転動体収容凹部Sの頂部には、開口部12が形成されている。この開口部12は、クリップ本体10の表面(裏面10aに対向する面)10bの前部に設けられている。この開口部12によって、転動体11の有無を確認でき、表面10bに大きな突出部を形成させなくても済むので、クリップ本体10の外観品質を良好にすることができる。
【0017】
次に、筆記具1のグリップ構造に関する動作について説明する。なお、被挟持物Hを移動させて、筆記具1に被挟持物Hをクリップ留めする場合について説明する。
【0018】
図4に示されるように、クリップ本体10と軸筒(クリップ支持体)2との間に被挟持物Hが矢印A方向に差し込まれると、転動体収容凹部S内で転動体11は後退しながら上方に持ち上げられた状態になる。これによって、クリップ本体10と軸筒2との間に被挟持物Hをスムーズに差し込むことができる。
【0019】
この状態から、被挟持物Hを差込み方向Aと逆の方向Bに引き戻すと、被挟持物Hと一緒に転動体11は矢印C方向に自転しながら前進して、転動体11が傾斜面Rに圧着される。これによって、転動体11が傾斜面Rに係止させられ、その後、被挟持物Hを更に矢印B方向に僅かに引くと、転動体11が傾斜面Rに強く圧着され、その結果として、転動体11が被挟持物Hに食い付くように強く圧着させられ、筆記具1は被挟持物Hに強固にクリップ留めされる。
【0020】
また、クリップ本体10から被挟持物Hを外す場合、被挟持物Hを差込み方向Aに僅かに移動させると、転動体11は転動体収容凹部S内で自由になり、その後に、被挟持物Hを横に滑らせば、クリップ本体10から被挟持物Hを外すことができる。
【0021】
また、被挟持物Hを横抜きできない場合でも、クリップ本体10自体のクリップ力(矢印D)に抗してクリップ本体10の先端を持ち上げることで、転動体11が傾斜面Rに圧着されている状態を容易に解除することができ、その後、被挟持物Hを矢印B方向に真っ直ぐ引くことで、クリップ本体10から被挟持物Hを容易に外すことができる。
【0022】
このように、前述した筆記具1では、クリップ本体10自体がもっているクリップ力(矢印D)に加えて、そのクリップ力を補助するように、転動体11でも係止力を発生させる構造になっているので、薄い被挟持物Hは勿論のこと、厚い被挟持物Hであっても筆記具1を確実にクリップ留めすることができる。よって、従来のように、薄い被挟持物Hへの適用を可能にするために、クリップ本体の玉部を軸筒の表面に強く圧着させるような構造を必要とせず、クリップ本体の先端の玉部と軸筒の表面との間の隙間が経年変化により変化する影響が極めて少なくなる。
【0023】
また、表面摩擦抵抗部11aの採用によって、被挟持物Hによって転動体11を確実に転動させることができ、しかも、傾斜面Rに対する転動体11の係止力を高めて、被挟持物Hから筆記具1が更に外れ難くなる。
【0024】
なお、被挟持物Hを移動させて、筆記具1に被挟持物Hをクリップ留めする場合について、上述したが、筆記具1を移動させて、筆記具1を被挟持物Hにクリップ留めする場合も同様の作用効果を奏する。
【0025】
[第2の実施形態]
図5に示されるように、筆記具23において、樹脂又は金属からなるクリップ本体20は、長手方向すなわち軸線L方向に延在すると共に、その基端が軸筒(クリップ支持体)22に一体に成形されて弾性変形可能であり、基端を中心とした撓みによってクリップ力(矢印D)が発生する。クリップ本体20の前部の裏面(軸筒22の表面に対面する面)20aには、球状の転動体21を収容するための転動体収容凹部Sが形成されている。これによって、クリップ本体20と軸筒22との間に転動体21が配置されることになる。
【0026】
転動体21は、転動体収容凹部S内で前後方向に移動することができ、金属からなる転動体21の表面には、表面摩擦抵抗部の一例であるゴム21aが融着されている。表面摩擦抵抗部は、ゴムでなくても他の材質のものでもよい。また、転動体21は、球でなくても円柱形又は樽形であってもよい。転動体21の材質は、安定した転がりを達成させるために、比重の大きな例えば真鍮などが好適である。
【0027】
転動体収容凹部Sの前側の壁面には、後方上がりの平坦な傾斜面Rが設けられている。この傾斜面Rは、軸線L(図1参照)に対して20度から45度の範囲が好適である。なお、この傾斜面Rは、凸状曲面、凹状曲面の何れであってもよい。クリップ本体20の裏面20aには、軸線L方向において、転動体収容凹部Sと連通するプッシュ部ガイド凹部S1と、プッシュ部ガイド凹部S1に連通するバネ収容凹部S2と、が形成されている。
【0028】
プッシュ部ガイド凹部S1内で軸線L方向に摺動する棒状のプッシュ部24の先端には、転動体21に面接触させるための湾曲面24aが形成されている。プッシュ部24の後端には、バネ受け部24bが設けられている。バネ収容凹部S2内には、プッシュ部24を軸線L方向に付勢するための圧縮コイルバネ(バネ手段)25が収容されている。圧縮コイルバネ25の一端は、プッシュ部24のバネ受け部24bで係止され、圧縮コイルバネ25の他端は、クリップ本体20の基端からバネ収容凹部S2内に突出するバネ支持凸部26の基端で支持されている。
【0029】
このような構成によって、転動体21に後方からプッシュ部24の先端が当接させられ、プッシュ部24が後方から圧縮コイルバネ25により付勢させられる。
【0030】
次に、筆記具23のグリップ構造に関する動作を説明する。なお、この筆記具23にあっては、転動体21がバネ付勢されている以外、筆記具1と同様の作用効果を奏するので、違いのみを以下述べる。
【0031】
圧縮コイルバネ25とプッシュ部24との協働により、クリップ本体20の非使用時において、転動体21を傾斜面Rに常に当接させておくことができるので、転動体収容凹部S内での転動体21の遊びが無くなり、これによって、転動体21のガタ付きが無くなる。さらに、転動体21の前後方向の移動を確実に行わせることができるので、付勢力によって転動体21を確実に傾斜面Rに圧着させることができ、このような構成によって、筆記具23を確実にクリップ留めすることができる。特に、このような構成は、水平方向に筆記具23をクリップ留めする場合に効果的である。
【0032】
本発明は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0033】
例えば、クリップ支持体2,22としては、ペン先の保護や乾きを防止するために着脱自在なキャップであってもよい。バネ手段としては、螺旋バネに限らず板バネであってもよい。
【符号の説明】
【0034】
1,23…筆記具 2,22…軸筒(クリップ支持体) 10,20…クリップ本体 11,21…転動体 11a…ゴムリング(表面摩擦抵抗部) 21a…ゴム(表面摩擦抵抗部) 24…プッシュ部 25…圧縮コイルバネ(バネ手段) D…クリップ力 H…被挟持物 L…軸線 R…傾斜面 S…転動体収容凹部
図1
図2
図3
図4
図5