【文献】
横山晋也,清水雄一,佐井真也,詫間隆史,山城裕史,上田芳久,山口雅英,蓄電池併用形太陽光発電システム「パワーソーラーシステム」の開発,GS News Technical Report,日本,日本電池株式会社,2003年 6月25日,第62巻第1号,p.35-41
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明を繰返さない。
【0023】
図1は、この発明の実施の形態によるパワーコンディショナが適用される電力供給システムの全体の構成を概略的に示す図である。
【0024】
図1を参照して、電力供給システムは、直流電力源である太陽電池50および蓄電装置60と、これらの直流電力源および電力系統40に結合されるパワーコンディショナ100とから構成される。なお、太陽電池50は、電力系統40への逆潮流が許容される「第1の直流電力源」の代表例として示され、蓄電装置60は、電力系統40への逆潮流が禁止される「第2の直流電力源」の代表例として示される。
【0025】
パワーコンディショナ100は、電力系統40に連系して、直流負荷70に電力を供給する。具体的には、パワーコンディショナ100は、太陽電池50、蓄電装置60または電力系統40から供給される電力を、直流バス10,20を介して直流負荷70に供給する。直流負荷70は、一例として、家庭で使用される空調機、冷蔵庫、洗濯機、テレビ、照明装置またはパーソナルコンピュータのような電気機器である。あるいは、オフィスで使用されるコンピュータ、複写機またはファクシミリのような電気機器、または店舗で使用されるショーケースや照明装置のような電気機器であってもよい。
【0026】
なお、本実施の形態による電力供給システムにおいては、太陽電池50、蓄電装置60、電力系統40および直流負荷70をそれぞれ1個ずつ設ける場合について説明するが、これらの個数には制限がなく、1個でも複数個であってもよい。
【0027】
電力系統40は、代表的には、単相3線式の商用交流電力系統である。単相3線式の商用交流電力系統は、中性線が抵抗を介して接地されており、中性線以外の2線(R相線RLおよびT相線TL)を使用してAC200Vを供給する。
【0028】
蓄電装置60は、再充電可能な電力貯蔵要素であり、代表的にリチウムイオン電池やニッケル水素電池などの二次電池で構成される。蓄電装置60は、複数の電池セルを直列接続して構成されており、一例として、定格電圧380Vを有している。
【0029】
パワーコンディショナ100は、上記のように電力系統40から交流電力を受電(買電)する一方で、太陽電池50が発電した電力を電力系統40に逆潮流(売電)することも可能に構成されている。具体的には、パワーコンディショナ100は、直流バス10,20と、DC/DC変換器25と、双方向DC/AC変換器30と、接続端子32,34と、給電端子36とを備える。
【0030】
直流バス10は、太陽電池50からDC/DC変換器25を介して供給される直流電力を伝達するための電力線であり、本願発明における「第1の直流バス」に対応する。直流バス10は、電力線対である正母線PLおよび負母線NLで構成される。
【0031】
接続端子32は、太陽電池50を直流バス10に電気的に接続させるための「接続部」を構成する。接続端子32に太陽電池50が連結されることによって、太陽電池50で発電された電力が直流バス10に供給される。
【0032】
DC/DC変換器25は、太陽電池50および直流バス10の間に接続され、太陽電池50から受ける直流電力を電圧変換して直流バス10へ供給する。具体的には、DC/DC変換器25は、太陽電池50から最大の電力を取得できるような制御(最大電力追従制御)を行なう。なお、パワーコンディショナ100内部にDC/DC変換器25を設ける構成に代えて、太陽電池50およびDC/DC変換器25からなる太陽光発電システムが接続端子32に連結されてもよい。
【0033】
双方向DC/AC変換器30は、直流バス10および電力系統40の間に接続される。双方向DC/AC変換器30は、電力系統40から受電(買電)した交流電力を直流電力に変換して直流バス10へ供給する。また、双方向DC/AC変換器30は、直流バス10から受ける直流電力、すなわち、DC/DC変換器25により電圧変換された太陽電池50の発電電力を交流電力に変換して電力系統40に逆潮流させる。
【0034】
なお、
図1では、買電時に双方向DC/AC変換器30に流れる電流をIbuyと表記し、売電(逆潮流)時に双方向DC/AC変換器30に流れる電流をIsellと表記する。また、太陽電池50からDC/DC変換器24を介して直流バス10に供給される電力をPpvと表記し、直流バス10の電圧(双方向DC/AC変換器25の直流側電圧に相当)をVdc1と表記する。
【0035】
直流バス20は、蓄電装置60から供給される電力を伝達するための電力線であり、本願発明における「第2の直流バス」に対応する。
図1に示す構成において、蓄電装置60は、直流バス20に「直結」されており、直流バス20との間で電力の授受を行なう。ここで、「直結」とは、直流バス20と蓄電装置60との間に、DC/DC変換器のような電力変換器が介在していないことを意味する。したがって、直流バス20の電圧は、蓄電装置60の電源電圧とほぼ等しくなる。以下では、直流バス20の電圧(蓄電装置60の電源電圧に相当)をVdc2と表記する。
【0036】
図2は、蓄電装置60の残容量−電圧曲線を示す図である。
図2において、横軸は蓄電装置60の残容量(SOC:State of Charge)(%)、縦軸は蓄電装置60の電圧(V)を示している。なお、SOCは、満充電容量に対する現在の残容量を百分率(0〜100%)で示したものである。
図2を参照して、蓄電装置60は、空状態(SOCが0%)のときに340Vとなり、SOCが20%のときに360Vとなり、SOCが50%のときに380V(定格電圧)となり、SOCが80%のときに400Vとなり、満充電状態(SOCが100%)のときに420Vとなる。
【0037】
図2に示す特性において、蓄電装置60の電圧は、20%から80%までの広いSOCの範囲で、380±20Vの変動範囲が抑えられている。このように、SOCの変化に対して電圧の変化が比較的安定しているため、蓄電装置60は高い電圧安定化能力を有している。電圧を安定化できるSOCの範囲(たとえば20%〜80%)にSOCを維持させるように、蓄電装置60の充放電を制御することにより、蓄電装置60は直流バス20に対して安定した電圧を供給することができる。
【0038】
給電端子36は、直流バス20から直流負荷70に電力を供給するための「給電部」を構成する。給電端子36に直流負荷70が連結されることによって、直流バス20からの直流電力が直流負荷70に供給される。
【0039】
パワーコンディショナ100は、直流バス10および直流バス20の間に接続された単方向導通素子15をさらに備える。単方向導通素子15は、直流バス10から直流バス20へ電力を導通する一方で、直流バス20から直流バス10へ電力を非導通とするための素子である。単方向導通素子15は、代表的には、アノードが直流バス10に接続され、かつ、カソードが直流バス20に接続されたダイオードD0により構成される。ダイオードD0の整流作用により、直流バス10から直流バス20への方向にしか電流が流れない。これにより、蓄電装置60から放電される電力が直流バス20を経由して直流バス10へ流れるのが抑制される。
【0040】
このように、直流バス10から直流バス20への方向にしか電力を通過させない(直流バス20から直流バス10への方向には電力を通過させない)単方向導通素子15を配置したことにより、蓄電装置60の放電電力が直流バス10へ流れるのをハード的に遮断することができる。これにより、蓄電装置60からの逆潮流を防止するための放電電力の制御が不要となり、簡易な構成で蓄電装置60からの逆潮流を確実に防止できる。
【0041】
また、直流負荷70は直流バス20から電力を受ける構成となっているため、蓄電装置60からの逆潮流を防止しながら、直流負荷70に対しては電力を供給し続けることが可能となる。
【0042】
(双方向DC/AC変換器の構成)
上記のように、本実施の形態によるパワーコンディショナ100は、太陽電池50により発電された電力を、双方向DC/AC変換器30を経由して電力系統40に逆潮流させることができる。また、太陽電池50の発電電力を、直流バス10,20を経由して直流負荷70に供給することもできる。さらには、太陽電池50の発電電力から直流負荷70への供給電力を差し引いた電力を用いて蓄電装置60を充電することもできる。
【0043】
また、電力系統40に逆潮流できる電力についての許容値が電力会社等によって設定された場合には、パワーコンディショナ100は、この許容値を超えないように逆潮流する電力を制御する必要が生じる。
【0044】
このような太陽電池50の発電電力の融通は、双方向DC/AC変換器30により行なわれる。以下、双方向DC/AC変換器30の構成について説明する。
【0045】
図3は、
図1における双方向DC/AC変換器30の詳細な構成を示す回路図である。
図3を参照して、双方向DC/AC変換器30は、双方向インバータ300と、連系リアクトル310,312と、直流電圧検出部330と、交流電圧検出部332と、自経路電流検出部340と、制御部320とを含む。
【0046】
双方向インバータ300は、制御部320からのスイッチング制御信号S1〜S4に応じて、直流バス10および電力系統40の間で双方向の電力変換を行なう。具体的には、双方向インバータ300は、スイッチング素子であるトランジスタQ1〜Q4と、ダイオードD1〜D4とを含む。トランジスタQ1,Q2は、直流バス10を構成する正母線PLおよび負母線NLの間に直列に接続される。トランジスタQ1とトランジスタQ2との中間点はR相線RLに接続される。連系リアクトル310は、R相線RLに介挿接続される。
【0047】
トランジスタQ3,Q4は、正母線PLおよび負母線NLの間に直列に接続される。トランジスタQ3とトランジスタQ4との中間点はT相線TLに接続される。連系リアクトル312は、T相線TLに介挿接続される。
【0048】
なお、トランジスタQ1〜Q4として、たとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いることができる。または、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)等の電力スイッチング素子を用いてもよい。
【0049】
直流電圧検出部330は、正母線PLと負母線NLとの間に接続され、直流バス10と双方向インバータ300との間で授受される直流電力の電圧(直流バス10の電圧)Vdc1を検出し、その検出結果を制御部320へ出力する。交流電圧検出部332は、R相線RLとT相線TLとの間に接続され、双方向インバータ300と電力系統40との間で授受される交流電力の電圧Vacを検出し、その検出結果を制御部320へ出力する。
【0050】
自経路電流検出部340は、T相線TLに介挿され、双方向インバータ300と電力系統40との間で授受される交流電力の電流値(自経路電流)Isellを検出し、その検出結果を制御部320へ出力する。なお、上述のように、自経路電流には、買電時の電流Ibuyおよび売電(逆潮流)時の電流Isellが含まれるが、本実施の形態では、電力系統40へ逆潮流する場面における双方向DC/AC変換器30の電力変換動作について説明するため、自経路電流をIsellと表記する。
【0051】
制御部320は、直流電圧検出部330から受けた直流電圧Vdc1と、交流電圧検出部332から受けた交流電圧Vacと、自経路電流検出部340から受けた自経路電流Isellとに基づいて、後述する制御構造にしたがって、トランジスタQ1〜Q4のオン・オフを制御するためのスイッチング制御信号S1〜S4を生成し、双方向インバータ300を制御する。
【0052】
図4は、
図3における制御部320の制御構造を示す図である。
図4を参照して、制御部320は、制御目標値生成部400と、スイッチング制御信号生成部410とを含む。
【0053】
制御目標値生成部400は、双方向DC/AC変換器30の制御目標値として、売電(逆潮流)時の自経路電流Isellの電流目標値Isell*を設定する。この電流目標値Isell*は、たとえば日時に応じて異なる電流値となるように事前に設定し、図示しない記憶部に格納しておくことができる。あるいは、電力会社等と制御部320との間で通信を行なうことによって、電力系統40に逆潮流可能な最大電力である出力許容電力Pmaxと取得し、この取得した出力許容電力Pmaxに基づいて設定するようにしてもよい。なお、出力許容電力Pmaxに基づいて電流目標値Isell*を設定する場合、電流目標値Isell*は、出力許容電力Pmaxを交流電圧Vacで除算した値に設定される(Isell*=Pmax/Vac)。
【0054】
制御目標値生成部400は、さらに、直流バス10の電圧Vdc1の制御下限値Vdc1*を設定する。この制御下限値Vdc1*は、直流バス20の電圧Vdc2以下の電圧に設定される(Vdc1*≦Vdc2)。本実施の形態では、蓄電装置60が直流バス20に直結されるため、直流バス20の電圧Vdc2は、
図2に示す蓄電装置60の特性に従い、蓄電装置60のSOCに応じて340V〜420Vの電圧範囲で変動する。制御目標値生成部400は、制御下限値Vdc1*を、この電圧範囲の下限値である340Vに設定する。これにより、直流バス10の電圧Vdc1が制御下限値Vdc1*に一致するように双方向インバータ300における電力変換動作が制御されると、直流バス20の電圧Vdc2の変動にかかわらず、直流バス10と直流バス20との間には、Vdc1≦Vdc2の関係が成立する。
【0055】
そして、上記のように、直流バス10と直流バス20との間にVdc1≦Vdc2の関係が成立しているときには、単方向導通素子15(
図1)が非導通となることから、直流バス10に供給された太陽電池50の発電電力は、直流バス20には流れず、すべて双方向DC/AC変換器30に供給される。すなわち、太陽電池50の発電電力を全て逆潮流させることができる。これによれば、蓄電装置60からの電力によって直流負荷70を駆動させながら、太陽電池50の発電電力をすべて逆潮流(売電)することが可能となる。
【0056】
その一方で、上述した電流目標値Isell*に従った自経路電流制御の実行中において、直流バス10と直流バス20との間に、Vdc1>Vdc2の関係が成立しているときには、単方向導通素子15が導通する。これにより、DC/DC変換器25を介して太陽電池50から直流バス10に供給された電力を、直流バス20を経由して蓄電装置60および/または直流負荷70に供給することができる。
【0057】
ここで、
図1に示した電力供給システムにおいては、気象条件によって太陽電池50の発電電力Ppvが変動する。そのため、パワーコンディショナ100においては、太陽電池50の発電電力Ppvが出力許容電力Pmaxより小さくなる事態が生じ得る。このような事態において上述した電流目標値Isell*に従った自経路電流の制御を継続して行なうと、直流バス10の電圧Vdc1が低下し、制御下限値Vdc1*を下回る可能性がある。
【0058】
制御目標値生成部400は、上記のように直流バス10の電圧Vdc1が制御下限値Vdc1*を下回ったときには、電流目標値Isell*を低下させることによって、直流バス10の電圧Vdc1の低下を防止する。この電流目標値Isell*の低下は、出力許容電力Pmaxに基づいて設定された電流目標値Isell*(=Pmax/Vac)を初期値として、直流バス10の電圧Vdc1が制御下限値Vdc1*に一致するように、電流目標値Isell*を調整する。
【0059】
詳細には、電流目標値Isell*を低下させると、電力系統40に逆潮流する電力が減少するため、直流バス10の電圧Vdc1が増加する。このとき、直流バス10の電圧Vdc1が直流バス20の電圧Vdc2を超えると、単方向導通素子15が導通するため、太陽電池50の発電電力Ppvが直流バス20を経由して蓄電装置60および/または直流負荷70に供給されてしまう可能性がある。そのため、本実施の形態では、直流バス10の電圧Vdc1を制御下限値Vdc1*に一致させることによって、直流バス10と直流バス20との間にVdc1≦Vdc2の関係を成立させる。これにより、太陽電池50の発電電力Ppvが出力許容電力Pmaxより小さくなった場合において、太陽電池50の発電電力Ppvをすべて逆潮流させることができる。
【0060】
このようにして、制御目標値生成部400は、出力許容電力Pmaxに基づいて設定された電流目標値Isell*を初期値として、自経路電流制御の実行中における直流バス10の電圧Vdc1に応じて電流目標値Isell*を調整する。そして、制御目標値生成部400は、調整された電流目標値Isell*をスイッチング制御信号生成部410へ出力する。
【0061】
スイッチング制御信号生成部410は、制御信号生成部400から電流目標値Isell*を受けると、自経路電流Isellが電流目標値Isell*となるようにスイッチング制御信号S1〜S4を生成して、双方向インバータ300を制御する。
【0062】
具体的には、スイッチング制御信号生成部410は、少なくとも比例要素(P:proportional element)および積分要素(I:integral element)を含んで構成され、電流目標値Isell*に対する自経路電流Isellの偏差に応じて操作信号を生成する。そして、スイッチング制御信号生成部410は、この操作信号に基づいて双方向インバータ300のトランジスタQ1〜Q4のオンデューティーを規定するデューティー指令を生成すると、この生成したデューティー指令と搬送波とを比較することにより、スイッチング制御信号S1〜S4を生成する。
【0063】
なお、スイッチング制御信号生成部440は、スイッチング制御信号S1〜S4の生成において、電力系統40と双方向DC/AC変換器30との間で授受される交流電力(交流電圧Vac、交流電流(自経路電流)Isell)に対して、力率改善(Power Factor Correct)制御を実行する。具体的には、スイッチング制御信号生成部440は、交流電圧Vacの位相に交流電流Isellの位相を合わせるように、交流電流Isellの波形を補正することによって力率を改善する。
【0064】
図5は、本実施の形態によるパワーコンディショナにおける自経路電流制御を実現するための制御処理手順を示したフローチャートである。
図5に示すフローチャートによる処理は、一定の制御周期ごとに制御部320によって実行される。また、
図5に示した各ステップは、制御部320によるソフトウェア処理および/またはハードウェア処理によって実現されるものとする。
【0065】
図5を参照して、制御部320は、ステップS01により、自経路電流Isellの電流目標値Isell*を設定する。具体的には、制御部320は、電力会社等との間の通信により取得した出力許容電力Pmaxに基づいて設定した電流目標値Isell*を、電流目標値Isell*の初期値とする。あるいは、予め記憶部に格納された情報を参照することにより、図示しないタイマから送信される日時情報に基づいて電流目標値Isell*の初期値を設定する。
【0066】
また、制御部320は、ステップS02により、直流バス10の電圧Vdc1について制御下限値Vdc1*を設定する。上述したように、制御部320は、制御下限値Vdc1*を、直流バス20の電圧範囲の下限値(340V)に設定する。
【0067】
次に、制御部320は、自経路電流Isellが電流目標値Isell*となるようにスイッチング制御信号S1〜S4を生成して、双方向インバータ300を制御する。制御部320は、この自経路電流制御の実行中において、直流電圧検出部330により検出される直流バス10の電圧Vdc1を取得すると、この取得された直流バス10の電圧Vdc1と制御下限値Vdc1*とを比較し、その比較結果に応じて電流目標値Isell*を調整する。
【0068】
具体的には、制御部320は、ステップS03では、自経路電流検出部340により検出される自経路電流Isellと、電流目標値Isell*とを比較する。自経路電流Isellが電流目標値Isell*より小さい場合(ステップS03のYES判定時)には、制御部320は、ステップS04により、自経路電流Isellと電流目標値Isell*との電流偏差に基づいたスイッチング制御信号S1〜S4を生成する。このような制御を行なうことにより、自経路電流Isellが増加する。
【0069】
一方、自経路電流Isellが電流目標値Isell*以上となる場合(ステップS03のNO判定時)には、制御部320は、ステップS05により、自経路電流Isellと電流目標値Isell*との電流偏差に基づいたスイッチング制御信号S1〜S4を生成する。このような制御を行なうことにより、自経路電流Isellが増加する。
【0070】
制御部320は、上記S03〜S05に示した電流制御の実行中に、直流電圧検出部330から直流バス10の電圧Vdc1を取得する。そして、制御部320は、ステップS06により、直流バス10の電圧Vdc1が制御下限値Vdc1*以上であるか否かを判定する。直流バス10の電圧Vdc1が制御下限値Vdc1*より小さい場合(ステップS06のNO判定時)には、ステップS09に進み、電流目標値Isell*を所定量ΔIだけ減少させるように電流目標値Isell*を調整する。この所定量ΔIは、双方向DC/AC変換器30における電流制御の制御速度などを考慮して定められる。双方向DC/AC変換器30においては、調整後の電流目標値Isell*に従って電力変換動作が制御されることにより、電力系統40に逆潮流する電力が減少し、直流バス10の電圧Vdc1が増加する。
【0071】
これに対して、直流バス10の電圧Vdc1が制御下限値Vdc1以上である場合(ステップS06のYES判定時)には、制御部320は、さらにステップS07により、電流目標値Isell*がステップS01で設定されたIsell*の初期値より小さいか否かを判定する。電流目標値Isell*が初期値より小さい場合(ステップS07のYES判定時)には、制御部320は、電流目標値Isell*を初期値に戻すための復帰処理として、電流目標値Isell*を所定量ΔIだけ増加させる。
【0072】
一方、電流目標値Isell*が初期値と等しい場合(ステップS07のNO判定時)には、制御部320は、上述した復帰処理を行なわず、処理をステップS03に戻す。
【0073】
上記のステップS06〜S08に示した処理を行なうことにより、自経路電流制御の実行中に直流バス10の電圧Vdc1が制御下限値Vdc1*より低くなった場合、電流目標値Isell*を減少させることによって直流バス10の電圧Vdc1が増加する。そして、直流バス10の電圧Vdc1が制御下限値Vdc1*に到達すると、電流目標値Isell*を初期値に戻すために増加させる。なお、電流目標値Isell*を増加させることによって電圧Vdc1が制御下限値Vdc1*を下回ったときには、再び電流目標値Isell*を減少させる。このように、直流バス10の電圧Vdc1に応じて電流目標値Isell*を初期値に対して増減させることにより、電圧Vdc1を制御下限値Vdc1*に一致させる。
【0074】
このように、本実施の形態によるパワーコンディショナによれば、直流バス10および直流バス20の間に接続された単方向導通素子15(ダイオードD0)によって、蓄電装置60からの逆潮流をハード的に遮断しつつ、直流負荷70に対しては直流バス20から電力を供給し続けることができる。
【0075】
また、上記の特許文献1および2に記載されるように逆潮流防止制御を行なう構成では、負荷が急変した場合などにおいて制御の遅れが生じてしまい、蓄電装置からの逆潮流を確実に防止できなくなる虞がある。これに対して、本実施の形態によるパワーコンディショナによれば、蓄電装置からの逆潮流をハード的に遮断するため、確実に蓄電装置からの逆潮流を防止することができる。
【0076】
さらに、本実施の形態によるパワーコンディショナによれば、双方向DC/AC変換器30における電力変換動作によって直流バス10と直流バス20との間にVdc1≦Vdc2の関係を成立させることにより、単方向導通素子15を非導通にできる。これにより、直流バス10に供給された太陽電池50の発電電力を全て逆潮流させることができる。
【0077】
(パワーコンディショナの構成例)
上記の実施の形態では、電力系統40への逆潮流が許容される「第1の直流電力源」として太陽電池50を示すとともに、電力系統40への逆潮流が禁止される「第2の直流電力源」として蓄電装置60を示したが、これらの直流電力源は上述の例に限定されるものではない。たとえば、「第1の直流電力源」には風力発電装置も含まれる。また、「第2の直流電力源」には燃料電池も含まれる。
【0078】
また、上記の実施の形態では、「第2の直流電力源」である蓄電装置60を直流バス20に直結させる例を示したが、蓄電装置60と直流バス20との間にDC/DC変換器を接続した構成(
図5参照)についても、本発明を適用することができる。
【0079】
さらに、上記の実施の形態では、「第1の直流電力源」および「第2の直流電力源」をそれぞれ1個ずつ設ける例を示したが、
図5に示すように、複数個設けても同様の効果を得ることができる。
【0080】
図6は、本実施の形態の変更例によるパワーコンディショナの構成を概略的に示す図である。
【0081】
図6を参照して、本変更例によるパワーコンディショナ110は、
図1に示すパワーコンディショナ100において、直流バス10に対して並列に接続された複数(たとえば2個)のDC/DC変換器25と、直流バス20に対して並列に接続された複数(たとえば2個)のDC/DC変換器35とを設けたものである。
【0082】
DC/DC変換器25、双方向DC/AC変換器30、および単方向導通素子15の構成は、
図1と同様であるので詳細な説明は繰り返さない。複数のDC/DC変換器35はそれぞれ、対応する蓄電装置60と直流バス20との間で双方向の電圧変換を行なう。なお、
図1と同様に、DC/DC変換器35を介さずに個々の蓄電装置60を直流バス20に直結させる構成としてもよい。
【0083】
図6に示す構成においても、直流バス10および直流バス20の間に接続された単方向導通素子15(ダイオードD0)によって、複数の蓄電装置60からの逆潮流がハード的に遮断することができる。また、直流バス10の電圧Vdc1が直流バス20の電圧Vdc2よりも低くなるように、双方向DC/AC変換器30における電力変換を制御することにより、直流負荷70に対しては複数の蓄電装置60から電力を供給しつつ、複数の太陽電池50の発電電力をすべて電力系統40に逆潮流させることができる。さらには、電力会社等によって電力系統40に逆潮流する電力について許容値が設定された場合には、この許容値を超えない範囲で複数の太陽電池50によって発電された電力を逆潮流させることができる。
【0084】
(単方向導通素子の構成)
上記の実施の形態では、単方向導通素子15として、アノードが直流バス10に接続され、かつ、カソードが直流バス20に接続されたダイオードD0を用いる例を示したが、
図7に示すように、直流バス10および直流バス20の電気的接続および遮断が可能に構成されたスイッチSWを用いる構成としてもよい。
【0085】
詳細には、
図7を参照して、スイッチSWは、直流バス10および直流バス20の間に接続され、双方向DC/AC変換器30からの制御信号CNTに応じてオン・オフが制御される。双方向DC/AC変換器30では、制御部320(
図3)は、直流電圧検出部16により検出される直流バス20の電圧Vdc2と、直流電圧検出部330により検出される直流バスVdc1とを比較する。そして、電圧Vdc1≧電圧Vdc2のときには、制御部320は、スイッチSWをオンするための制御信号CNTを生成する。一方、電圧Vdc2<電圧Vdc1のときには、制御部320は、スイッチSWをオフするための制御信号CNTを生成する。これにより、直流バス10から直流バス20への方向にしか電力を通過させない(直流バス20から直流バス10への方向には電力を通過させない)という整流作用が実現される。
【0086】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。