特許第6000750号(P6000750)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000750
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】動的試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/34 20060101AFI20160923BHJP
【FI】
   G01N3/34 E
   G01N3/34 A
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-185721(P2012-185721)
(22)【出願日】2012年8月24日
(65)【公開番号】特開2014-44086(P2014-44086A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2015年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】岩苔 和広
(72)【発明者】
【氏名】國西 達也
(72)【発明者】
【氏名】小西 克文
(72)【発明者】
【氏名】坪田 裕至
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 淳
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 正徳
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩司
(72)【発明者】
【氏名】吉田 淳
【審査官】 福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−211442(JP,A)
【文献】 特開2008−241247(JP,A)
【文献】 特開2001−056276(JP,A)
【文献】 特許第3795721(JP,B2)
【文献】 特開2004−150985(JP,A)
【文献】 特開2009−192391(JP,A)
【文献】 特開2001−201446(JP,A)
【文献】 特開平10−104144(JP,A)
【文献】 実開昭64−030432(JP,U)
【文献】 米国特許第5739436(US,A)
【文献】 小松 順一 他,”軟岩不連続面のせん断強さの測定を目的とした一面せん断試験機の試作と測定結果”,地震工学ジャーナル,2011年 7月 1日,Vol.6,No.2,351〜360頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/34
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不連続面を備えた供試体に繰り返し圧縮力やせん断力を付加する動的試験装置であって、
前記不連続面より上側の供試体が配設される上側せん断箱と、
前記上側せん断箱に垂直方向の圧縮力の載荷と除荷との繰り返しが可能な垂直荷重載荷手段と、
前記垂直荷重載荷手段を制御可能な垂直荷重制御手段と、
前記不連続面より下側の供試体が配設される下側せん断箱と、
前記下側せん断箱にせん断力を繰り返し与えることが可能なせん断力付加手段と、
前記せん断力付加手段を制御可能なせん断力制御手段と、
前記下側せん断箱に対する前記上側せん断箱の垂直方向の変位を検出する垂直変位計測計と、
前記上側せん断箱に対する前記下側せん断箱のせん断変位を検出するせん断変位計測計と、
を備え、
前記垂直荷重制御手段により前記供試体に前記圧縮力を繰り返し付加する動的繰り返し垂直剛性試験と、前記せん断力制御手段により前記供試体に前記せん断力を繰り返し付加する動的繰り返し一面せん断試験と、前記垂直荷重制御手段および前記せん断力制御手段により前記供試体に前記圧縮力および前記せん断力を繰り返し付加する動的繰り返し一面せん断・垂直剛性試験とが選択可能である
ことを特徴とする動的試験装置。
【請求項2】
前記垂直荷重制御手段は、サーボ制御により地震動を想定して設定された任意の波形の圧縮力を付加する、ことを特徴とする請求項1に記載の動的試験装置。
【請求項3】
前記せん断力制御手段は、サーボ制御により地震動を想定して設定された任意の波形のせん断力を付加する、ことを特徴とする請求項1に記載の動的試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、岩盤不連続面の動的試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物などの構造物を建設する際には、建設地の地盤を考慮して安定性を評価する必要があり、特に高い安定性が要求される建造物は、岩盤上に建設されることがある。
【0003】
ところで、岩盤であっても、例えば、地下空洞を有する岩盤や岩盤斜面など一様ではない箇所における安定性の評価では、岩盤中に存在する割れ目などの不連続面から岩盤などが破壊される場合の強度が測定される。
【0004】
そこで、岩盤の不連続面のせん断強度を測定するせん断試験装置として、上側せん断箱と下側せん断箱との相対的な位置のズレを防止すると共に、せん断供試体への偏重荷重及び応力集中を防止することができる岩盤不連続面のせん断試験装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008―241247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、せん断供試体に上側せん断箱を介して垂直方向に一方向(下向き方向)の荷重を付加するとともに、下側せん断箱を介して水平方向に一方向のせん断力を付加する静的試験を行うものである。
【0007】
本願の発明者は、安定性の評価をより高精度に行うためには、上記のような静的試験に加えて、実際の地震動を想定して、垂直方向に付加する圧縮力や、水平方向に付加するせん断力を繰り返し付加する動的試験を行えば、より適切な安定性の評価を行うことができると考えた。
【0008】
そこで、この発明は、岩盤不連続面の安定性の評価のために、垂直方向に付加する圧縮力や、水平方向に付加するせん断力を繰り返し付加する動的試験を行うことが可能な動的試験装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、不連続面を備えた供試体に繰り返し圧縮力やせん断力を付加する動的試験装置であって、前記不連続面より上側の供試体が配設された上側せん断箱と、前記上側せん断箱に垂直方向の圧縮力の載荷と除荷との繰り返しが可能な垂直荷重載荷手段と、前記垂直荷重載荷手段を制御可能な垂直荷重制御手段と、前記不連続面より下側の供試体が配設された下側せん断箱と、前記下側せん断箱にせん断力を繰り返し与えることが可能なせん断力付加手段と、前記せん断力付加手段を制御可能なせん断力制御手段と、前記下側せん断箱に対する前記上側せん断箱の垂直方向の変位を検出する垂直変位計測計と、前記上側せん断箱に対する前記下側せん断箱のせん断変位を検出するせん断変位計測計と、を備え、前記垂直荷重制御手段により前記供試体に前記圧縮力を繰り返し付加する動的繰り返し垂直剛性試験と、前記せん断力制御手段により前記供試体に前記せん断力を繰り返し付加する動的繰り返し一面せん断試験と、前記垂直荷重制御手段および前記せん断力制御手段により前記供試体に前記圧縮力および前記せん断力を繰り返し付加する動的繰り返し一面せん断・垂直剛性試験とが選択可能である、ことを特徴とする動的試験装置である。
【0010】
この発明によれば、供試体の動的試験を行う際は、垂直荷重制御手段およびせん断力制御手段の少なくともいずれか一方によって、供試体に圧縮力やせん断力が繰り返し付加される。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の動的試験装置において、前記垂直荷重制御手段は、サーボ制御により地震動を想定して設定された任意の波形の圧縮力を付加する、ことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の動的試験装置において、前記せん断力制御手段は、サーボ制御により地震動を想定して設定された任意の波形のせん断力を付加する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、垂直荷重制御手段およびせん断力制御手段の少なくともいずれか一方によって、供試体に圧縮力やせん断力を繰り返し付加することができるので、供試体の動的試験を行うことができる。すなわち、実際の地震動を想定した条件下において動的試験を行うので、より適切な安定性の評価を行うことができる。このように、動的試験における垂直方向に付加する圧縮力や、水平方向に付加するせん断力の付加のされ方が実際の地震時による揺れに近いため、実際の現象に近い状態における安定性を評価することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、垂直荷重制御手段は、サーボ制御により任意の波形の圧縮力を付加することができるので、例えば、地震時の揺れなどを再現することができる。すなわち、実際の現象に近い状態における安定性を評価することができる。つまり、実際の地震動を想定した動的試験を容易に実施できる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、せん断力制御手段は、サーボ制御により任意の波形のせん断力を付加することができるので、例えば、地震時の揺れなどを再現することができる。すなわち、実際の現象に近い状態における安定性を評価することができる。つまり、実際の地震動を想定した動的試験を容易に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】この発明の実施の形態に係る動的試験装置を示す正面図である。
図2図1の動的試験装置を示す側面図である。
図3図1の動的試験装置を示す上面図である。
図4図1の動的試験装置のA−A面における断面図である。
図5図1の動的試験装置のB−B面における断面図である。
図6図1の動的試験装置の装置部を示す概略図である。
図7図6の動的試験装置のC−C面における断面図である。
図8図1の動的試験装置の装置部を示す概略断面図である。
図9図1の動的試験装置の制御部を示す概略ブロック図である。
図10図1の動的試験装置によって供試体に作用させる圧縮力の波形を示す図である。
図11図1の動的試験装置によって供試体に作用させるせん断力の波形を示す図である。
図12図1の動的試験装置によって供試体における変位の測定を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0018】
図1ないし図12は、この発明の実施の形態を示している。動的試験装置1は、岩盤不連続面の動的な試験に用いるものである。ここで、動的試験とは、供試体2に対して、垂直荷重(圧縮力)やせん断力を繰り返し付加した状態で、ひずみの変化を測定するものである。また、動的試験における圧縮力やせん断力の大きさは、供試体2が破壊されない、すなわち、圧縮力やせん断力を繰り返し付加できるように設定される。
【0019】
また、この実施の形態において、荷重とは後述する供試体2の不連続面21と略垂直方向に作用する圧縮力、または、不連続面21と略水平方向に作用するせん断力のことである。
【0020】
この動的試験において用いられる供試体2は、図12に示すように、不連続面21を境界にして、不連続面21より上側の供試体(上側供試体)22と、不連続面21より下側の供試体(下側供試体)23とを備えている。ここで、供試体2の不連続面21は、水平面と略平行となるように配設されている。上側供試体22は、具体的には、例えばセメントなどの固定材22Aによって上側せん断箱22Bに固定されており、圧縮力の載荷によってずれたりしないようになっている。この上側供試体22の変位(垂直変位)は、下側せん断箱23Bに対する上側せん断箱22Bの垂直方向の変位を検出することによって算出される。
【0021】
また、下側供試体23は、上側供試体22と同様に構成されており、具体的には、例えばセメントなどの固定材23Aによって下側せん断箱23Bに固定されており、圧縮力の載荷によってずれたりしないようになっている。この下側供試体23の変位(せん断変位)は、上側せん断箱22Bに対する下側せん断箱23Bの水平方向の変位を検出することによって算出される。
【0022】
このような上側せん断箱22Bと下側せん断箱23Bは、図2に示すように、供試体2をセットした状態でスライドし、側方から出し入れ自在となっており、垂直プレスフレーム6内に収容したり取り出したりできるようになっている。
【0023】
動的試験装置1は、図1に示すように、主として、垂直荷重用アクチュエータ(図示略)を構成する垂直荷重載荷手段としての垂直油圧シリンダ3とそれを制御する垂直荷重制御手段(図示略)と、垂直ローラ4と、垂直リニアガイド4Gと、垂直荷重ロードセル5と、垂直プレスフレーム6と、せん断力用アクチュエータ(図示略)を構成するせん断力付加手段としての水平油圧シリンダ7とそれを制御するせん断力制御手段(図示略)と、水平ローラ8と、水平リニアガイド8Gと、押し引きロードセル(せん断荷重ロードセル)9と、ベース10とを有している。
【0024】
垂直油圧シリンダ3は、上側せん断箱22Bに対して垂直方向(F1方向)の圧縮力の載荷と除荷との繰り返しが可能なものである。具体的には、図6に示すように垂直油圧シリンダ3は、後述する垂直プレスフレーム6を介して上側せん断箱22Bに圧縮力を付加するものである。この垂直油圧シリンダ3によって付加する圧縮力は、後述する垂直荷重制御手段としての制御部100によって制御されるようになっており、例えば図10に示すような波形となるように制御可能である。
【0025】
垂直ローラ4は、図1図3に示すように、後述する垂直プレスフレーム6の両側面に対向する位置に配設されており、垂直プレスフレーム6を上下方向に移動自在とするための複数のベアリングローラで構成されている。この垂直ローラ4は、垂直リニアガイド4Gによって、上下方向に移動するようにガイドされている。また、垂直リニアガイド4Gは、図1図8に示すように、上下方向に延びるレール部が形成された板状部材で構成されている。このようにして、垂直油圧シリンダ3による垂直方向の圧縮力の変化にともなって、垂直ローラ4が垂直リニアガイド4Gに沿って上下動することによって、垂直プレスフレーム6が上下方向に移動自在となっている。
【0026】
垂直荷重ロードセル5は、荷重計測のためのものであり、図1図2に示すように、垂直油圧シリンダ3と垂直プレスフレーム6の間に配設されており、垂直方向の圧縮力を測定するようになっている。この垂直荷重ロードセル5において測定された圧縮力は、後述する制御部100の垂直荷重制御部100Aの荷重検出器114に伝送されるようになっている。
【0027】
垂直変位計測計(図示略)は、図12に示すように、センサ(図示略)によって、下側せん断箱23Bに対する上側せん断箱22Bの微細な変位(垂直変位)を検出するようになっており、例えば、高精度接触式デジタルセンサなどで構成される。
【0028】
垂直プレスフレーム6は、図1図2に示すように、垂直荷重ロードセル5と上側せん断箱22Bとの間に配設されるものであり、垂直油圧シリンダ3に圧縮力が載荷されている状態において、その圧縮力によって供試体2を下側に押圧する機能を有している。
【0029】
水平油圧シリンダ7は、図1に示すように、下側せん断箱23Bに対してせん断方向(F2方向)の押し引きの繰り返しが可能なものである。具体的には、図5図7に示すように水平油圧シリンダ7は、押し引きすることによって、下側せん断箱23Bにせん断力を付加することができるものである。この水平油圧シリンダ7によって付加するせん断力は、後述するせん断力制御手段としての制御部100によって制御されるようになっており、例えば図11に示すような波形となる制御可能である。
【0030】
水平ローラ8は、図1図2図4に示すように、下側せん断箱23Bの底面に対向する位置に配設されており、下側せん断箱23Bを水平方向に移動自在とするための複数のベアリングローラで構成されている。この水平ローラ8は、水平リニアガイド8Gによって、水平方向に移動するようにガイドされるようになっている。また、水平リニアガイド8Gは、図1図2図4図8に示すように、水平方向に延びるレール部が形成された板状部材で構成されている。このようにして、水平油圧シリンダ7によるせん断力の変化にともなって、水平ローラ8が水平リニアガイド8Gに沿って左右に移動することによって、下側せん断箱23Bが左右方向に移動自在となっている。
【0031】
せん断荷重ロードセル9は、荷重計測のためのものであり、図1図5に示すように、水平油圧シリンダ7と下側せん断箱23Bの間に配設されており、水平方向のせん断力を測定するようになっている。このせん断荷重ロードセル9において測定されたせん断力は、後述する制御部100のせん断力制御部100Bの荷重検出器134に伝送されるようになっている。
【0032】
せん断変位計測計(図示略)は、図12に示すように、センサ(図示略)によって、上側せん断箱22Bに対する下側せん断箱23Bの微細な変位(せん断変位)を検出するようになっており、例えば、高精度接触式デジタルセンサなどで構成される。
【0033】
このような構成の動的試験装置1は、図1に示すように、ベース10に固定されており、さらにベース10は、ジャッキボルト11によって反力枠や床面などに固定されている。
【0034】
また、動的試験装置1は、垂直荷重制御手段およびせん断力制御手段としての制御部100を有している。制御部100は、図9に示すように、主として垂直荷重制御部100Aと、せん断力制御部100Bと、任意関数発生器101とを有しており、垂直油圧シリンダ3や水平油圧シリンダ7に対して位置、方位、姿勢などを制御量として、目標値に追従するように制御する機能を有している。
【0035】
任意関数発生器101は、垂直油圧シリンダ3や水平油圧シリンダ7に生じさせる圧縮力やせん断力のもととなる波形(関数)を発生させる装置である。これにより、圧縮力やせん断力は、例えば正弦波や三角波などの関数で示される波形で付加されるようになっている。波形は、実際の地震動を想定して設定されるようになっており、具体的には例えば、図10図11に示すような波形が設定される。
【0036】
ここで、垂直荷重制御部100Aは、次のように構成されている。
【0037】
サーボバルブ111は、垂直サーボバルブ設定部120からの制御信号にもとづいて垂直油圧シリンダ3の油量を制御するものであり、これにより垂直油圧シリンダ3の位置や方向、姿勢などが制御可能となっている。
【0038】
変位検出器112は、垂直油圧シリンダ3の変位を検出するものであり、検出した変位を変位増幅器113によって増幅して、垂直サーボバルブ設定部120のフィードバック選択器122に送信する。
【0039】
荷重検出器114は、垂直油圧シリンダ3における荷重を検出するものであり、検出した荷重を荷重増幅器115によって増幅して、フィードバック選択器122に送信する。
【0040】
加振振幅設定器121は、動的試験において所定の関数で示される波形の荷重を付加するために垂直油圧シリンダ3に与える振幅を設定するものである。
【0041】
フィードバック選択器122は、変位検出器112や荷重検出器114が検出した垂直油圧シリンダ3の変位や荷重に基づいて、変位や荷重を設定値にするための制御の要否(設定値とのずれの有無)を判定するものである。
【0042】
加振中心設定器123は、加振中心を設定するものである。
【0043】
ループゲイン設定器124は、加振振幅設定器121と加振中心設定器123からの入力値と、フィードバック選択器122による判定結果とにもとづいてゲインを設定するものである。
【0044】
サーボ増幅器125は、垂直油圧シリンダ3が所定の変位や荷重となるようにサーボへの制御信号を増幅して、サーボバルブ111へ伝送するものである。
【0045】
また、せん断力制御部100Bは、垂直荷重制御部100Aとほぼ同様に構成されているので説明を省略する。
【0046】
このようにして、制御部100によって、垂直油圧シリンダ3と水平油圧シリンダ7とにおいて、所定の波形の圧縮力やせん断力が作用するように制御することにより、供試体2に作用させる垂直方向に付加する圧縮力と、水平方向に付加するせん断力とをサーボ制御する。ここで、この制御部100によって、供試体2に作用させる垂直方向に付加する圧縮力と、水平方向に付加するせん断力の組み合わせは、動的試験の内容に応じて設定されるものであり、例えば次のような組み合わせがある。
(A)動的繰り返し一面せん断試験
岩盤不連続面のせん断方向の強度・変形特性を得るためのものであり、圧縮力を一定にした状態で、せん断方向に押し引きを繰り返すものである。つまり、例えば、図11に示すような波形となるようにせん断方向に押し引きを繰り返す。
(B)動的繰り返し垂直剛性試験
岩盤不連続面の垂直方向の変形特性を得る(強度はない)ためのものであり、圧縮力の載荷と除荷とを繰り返すものである。つまり、例えば、図10に示すような波形となるように圧縮力の載荷と除荷とを繰り返す。
(C)動的繰り返し一面せん断・垂直剛性試験
岩盤不連続面のせん断方向の強度・変形特性と垂直方向の変形特性を得るためのものであり、図10に示すような波形で圧縮力の載荷と除荷とを繰り返すとともに、図11に示すような波形でせん断方向に押し引きを繰り返すものである。
【0047】
次に、このような構成の動的試験装置1による供試体2の動的試験方法および作用について説明する。ここで、この実施の形態においては、圧縮力とせん断力の組み合わせ(B)について説明する。
【0048】
まず、動的試験を行う際の圧縮力の波形が策定される。これは、例えば、実際の地震時の揺れを再現するような波形が策定され、図10に示すような波形が策定される。
【0049】
そして、策定した波形が制御部100に入力、設定されると、垂直油圧シリンダ3によって図10に示すような波形となるように圧縮力がサーボ制御される。つまり、垂直油圧シリンダ3が制御されて圧縮力の載荷と除荷とが繰り返されるとともに、せん断力は作用していない、すなわち、せん断力制御部100Bによって水平油圧シリンダ7が動作しないように制御されている。
【0050】
そして、供試体2に対して、圧縮力の載荷と除荷とが繰り返される。垂直油圧シリンダ3による垂直方向の圧縮力の変化にともなって、垂直ローラ4が垂直リニアガイド4Gに沿って上下動することによって、垂直プレスフレーム6が上下方向に移動する。このとき、垂直油圧シリンダ3の変位と荷重と、供試体2の変位とが測定されている。
【0051】
そして、測定された垂直油圧シリンダ3の変位や荷重にもとづいて、圧縮力が図10に示すような波形となるようにサーボ制御される。
【0052】
そして、所定時間が経過したり、供試体2が破壊されたりするまで、動的試験が行われる。
【0053】
当該動的試験の終了後は、例えば、測定された変位などから応力・歪曲線を算出し、その変化を分析することで、当該動的試験における供試体2の特性が分析される。
【0054】
つづいて、他の波形の圧縮力で動的試験を行う場合は、供試体2を交換し、当該他の波形が制御部100に入力、設定されて、動的試験が開始される。
【0055】
このようにして、波形の異なる圧縮力における動的試験によって得られた応力・歪曲線を分析することで、供試体2の特性が分析される。
【0056】
以上のように、この動的試験装置1によれば、垂直荷重制御部100Aおよびせん断力制御部100Bの少なくともいずれか一方によって、供試体2に圧縮力やせん断力を繰り返し付加するので、供試体2の動的試験を行うことができる。すなわち、より適切な安定性の評価を行うことができる。また、動的試験における垂直方向に付加する圧縮力や、水平方向に付加するせん断力の付加のされ方は、制御部100によって地震時による揺れに近い波形に追従させることが可能であるため、実際の現象に近い状態における安定性を評価することができる。
【0057】
また、垂直荷重制御部100Aは、サーボ制御により任意の波形の圧縮力を付加するので、例えば、地震時の揺れなどを再現することができる。すなわち、実際の現象に近い状態における安定性を評価することができる。
【0058】
さらに、せん断力制御部100Bは、サーボ制御により任意の波形のせん断力を付加するので、例えば、地震時の揺れなどを容易に再現することができる。すなわち、実際の現象に近い状態における安定性を評価することができる。
【0059】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、これらの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、供試体2に作用させる垂直方向に付加する圧縮力または水平方向に付加するせん断力を変化させた場合における供試体2のひずみの変化を測定したが、ひずみを一定にした状態において、垂直方向に付加する圧縮力または水平方向に付加するせん断力を変化させて動的試験を行ってもよい。
【0060】
また、供試体2は、岩盤に限定されるものではなく、コンクリートなど他の材料であってもよいことはもちろんである。
【符号の説明】
【0061】
1 動的試験装置
2 供試体
21 不連続面
22 上側供試体
22B 上側せん断箱
23 下側供試体
23B 下側せん断箱
3 垂直油圧シリンダ(垂直荷重載荷手段)
4 垂直ローラ
4G 垂直リニアガイド
5 垂直荷重ロードセル
6 垂直プレスフレーム
7 水平油圧シリンダ(せん断力付加手段)
8 水平ローラ
8G 水平リニアガイド
9 せん断荷重ロードセル
10 ベース
11 ジャッキボルト
100 制御部(垂直荷重制御手段、せん断力制御手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12