(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6000770
(24)【登録日】2016年9月9日
(45)【発行日】2016年10月5日
(54)【発明の名称】セラミック回路基板の製造方法、およびパワーモジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/22 20060101AFI20160923BHJP
C23C 28/02 20060101ALI20160923BHJP
H05K 3/24 20060101ALI20160923BHJP
H05K 3/26 20060101ALI20160923BHJP
H01L 23/13 20060101ALI20160923BHJP
C22C 11/06 20060101ALN20160923BHJP
B23K 35/26 20060101ALN20160923BHJP
【FI】
H05K3/22 Z
C23C28/02
H05K3/24 A
H05K3/26 F
H01L23/12 C
!C22C11/06
!B23K35/26 310B
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-200637(P2012-200637)
(22)【出願日】2012年9月12日
(65)【公開番号】特開2014-56933(P2014-56933A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年2月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 康
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】松林 良
(72)【発明者】
【氏名】池田 康亮
【審査官】
井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−169150(JP,A)
【文献】
特開2002−137974(JP,A)
【文献】
特開2011−097038(JP,A)
【文献】
特開2010−238952(JP,A)
【文献】
特開2011−124585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/22
C23C 28/02
H01L 23/13
H05K 3/20
H05K 3/24
H05K 3/26
B23K 35/26
C22C 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック回路基板の製造方法であって、前記セラミック回路基板は、セラミック基板に銅パターンが直接接合されたDBC(Direct Bonding Copper)基板、または前記セラミック基板に銅パターンがろう材を介して接合されたAMC(Active Metal Brazed Copper)基板であり、
セラミック基板の少なくとも一方の面に直接またはろう材を介して接合された銅パターンを銅の再結晶温度以上に加熱する、加熱工程と、
前記加熱工程を経た銅パターンの表面の凹凸に沿って当該銅パターンを被覆するようにめっき層を形成する、めっき工程と、
を備えることを特徴とするセラミック回路基板の製造方法。
【請求項2】
セラミック基板の少なくとも一方の面に直接またはろう材を介して接合された銅パターンを銅の再結晶温度以上に加熱する、加熱工程と、
前記加熱工程を経た銅パターンの表面の凹凸に沿って当該銅パターンを被覆するようにめっき層を形成する、めっき工程と、
前記銅パターンが露出しないように前記めっき層の表面を研磨して平坦化する、研磨工程と、
を備えることを特徴とするセラミック回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記セラミック基板の両面に直接またはろう材を介して銅パターンが接合されており、前記加熱工程において、前記セラミック基板の両面の銅パターンを銅の再結晶温度以上に加熱することを特徴とする請求項1または2に記載のセラミック回路基板の製造方法。
【請求項4】
前記めっき層として、Niめっき層、Snめっき層またはAuめっき層を形成することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のセラミック回路基板の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載されたセラミック回路基板の製造方法により製造されたセラミック回路基板に対し、前記セラミック基板の一方の面に接合され前記めっき層で被覆された銅パターンにヒートシンクをはんだ付けすることを特徴とするパワーモジュールの製造方法。
【請求項6】
前記セラミック基板の他方の面に接合され前記めっき層で被覆された銅パターンに電子部品をはんだ付けすることを特徴とする請求項5に記載のパワーモジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック回路基板の製造方法、およびセラミック回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーモジュール用の回路基板として、セラミック基板上に銅(Cu)パターンを直接接合したDBC(Direct Bonding Copper)基板や、ろう材を介して接合したAMC(Active Metal Brazed Copper)基板が使用されている。
【0003】
近年、パワーモジュールの電気自動車などへの適用が進むにつれ、パワーモジュールの使用環境温度が高くなっている。これを受けて、パワーモジュールに対して各種の温度試験を行い、使用環境温度に対する耐性を確認している。このような温度試験として、例えば、(i)パワーモジュールを100℃以上800℃未満の高温にさらす高温放置試験、(ii)−60℃〜350℃の間を急激に温度変化させる熱衝撃試験、(iii)温度サイクル試験などがある。このように、温度試験において、銅パターンは銅の再結晶温度(200〜250℃)以上に加熱される。
【0004】
特許文献1には、セラミック回路基板に放熱板を固定する場合にPbフリーはんだを使用しても、はんだやセラミック基板にクラックが発生することを防止するために、ビッカース硬さが40〜60の銅(または銅合金)パターンを用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−199315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、銅パターンの腐食や酸化を防止し且つはんだ濡れ性を良くするために、セラミック回路基板の銅パターン上にはNiめっき層が形成されている。
図3(1)は、従来のセラミック回路基板100の断面図である。
図3(2)は、温度試験後のセラミック回路基板100の断面図である。
【0007】
セラミック回路基板100は、セラミック基板101と、セラミック基板101上に接合された銅パターン102と、銅パターン102上に形成されたNiめっき層103と、を有する。
【0008】
上記のセラミック回路基板100に対して、前述の温度試験が行った場合には銅パターン102が銅の再結晶温度以上に加熱されるため、銅パターン102を構成する銅の結晶粒が粗大化し、銅パターン102の表面の凹凸が大きくなる。その結果、
図3(2)に模式的に示すように、Niめっき層103にクラック104が生じてしまう。
図4は、実際に温度試験によってNiめっき層にクラックが発生したDBC基板のSEMによる断面図を示している。
【0009】
また、クラックが発生する問題の他、温度試験によって、銅パターンの硬度が低下するなど、熱伝導性、電気伝導性および硬度等の銅パターンの特性が変化してしまうという問題もある。
【0010】
本発明は、上記の技術的認識に基づいてなされたものであり、再結晶温度以上に加熱されても、銅パターンを被覆するめっき層にクラックが発生せず、かつ銅パターンの特性が変化しないセラミック回路基板を提供することを目的とする。
【0011】
なお、特許文献1は、上記Niめっき層のクラックについて課題としてすら認識していない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様に係るセラミック回路基板の製造方法は、
セラミック基板の少なくとも一方の面に直接またはろう材を介して接合された銅パターンを銅の再結晶温度以上に加熱する、加熱工程と、
前記加熱工程を経た銅パターンの表面の凹凸に沿って当該銅パターンを被覆するようにめっき層を形成する、めっき工程と、
を備えることを特徴とする。
【0013】
前記セラミック回路基板の製造方法において、
前記銅パターンが露出しないように前記めっき層の表面を研磨して平坦化する、研磨工程をさらに備えてもよい。
【0014】
本発明の別態様に係るセラミック回路基板の製造方法は、
セラミック基板の少なくとも一方の面に直接またはろう材を介して接合された銅パターンを、銅の再結晶温度以上に加熱する、加熱工程と、
前記加熱工程を経た銅パターンの表面の凹凸を研磨して当該銅パターンの表面を平坦化する、研磨工程と、
表面が平坦化された前記銅パターンを被覆するようにめっき層を形成する、めっき工程と、
を備えることを特徴とする。
【0015】
前記セラミック回路基板の製造方法において、
前記めっき層として、Niめっき層、Snめっき層またはAuめっき層を形成してもよい。
【0016】
本発明の一態様に係るセラミック回路基板は、
セラミック基板と、
前記セラミック基板の少なくとも一方の面に直接またはろう材を介して接合され、かつ表面に凹凸を有する、銅パターンと、
前記銅パターンの表面の凹凸に沿って前記銅パターンを被覆する、めっき層と、
を備えることを特徴とする。
【0017】
前記セラミック回路基板の前記銅パターンは、銅の再結晶温度以上に加熱されることにより生じたものであってもよい。
【0018】
本発明の別態様に係るセラミック回路基板は、
セラミック基板と、
前記セラミック基板の少なくとも一方の面に直接またはろう材を介して接合され、かつ表面が研磨により平坦化された、銅パターンと、
前記銅パターンの表面を被覆する、めっき層と、
を備えることを特徴とする。
【0019】
前記セラミック回路基板の前記銅パターンは、銅の再結晶温度以上に加熱する熱処理を経たものであってもよい。
【0020】
前記セラミック回路基板の前記めっき層は、Niめっき層、Snめっき層またはAuめっき層であってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様に係るセラミック回路基板の製造方法では、銅パターンを被覆するためのめっき処理を行う前に、再結晶温度以上の加熱処理を予め行う。これにより銅パターンの表面に再結晶化による凹凸を形成しておく。その後、銅パターンの凹凸に沿ってめっき層を形成する。このようにすることで、めっき層を形成した後にセラミック回路基板を再結晶温度以上の高温に加熱しても、銅パターンを構成する銅は既に再結晶化しているために銅パターンの表面に新たな凹凸は発生しない。よって、本発明によれば、めっき層にクラックが生じることを防止することができる。
【0022】
さらに、めっき処理前の加熱処理によって、熱伝導性、電気伝導性および硬度などの銅パターンの特性は既に変化済みであるため、温度試験や、高温環境下での使用により、銅パターンの特性が変化することはない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1の実施形態に係るセラミック回路基板の製造方法を説明するための工程断面図である。
【
図2】第2の実施形態に係るセラミック回路基板の製造方法を説明するための工程断面図である。
【
図4】従来のセラミック回路基板における、銅パターン、Niめっき層及びはんだ層の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同等の機能を有する構成要素には同一の符号を付し、同一符号の構成要素の詳しい説明は繰り返さない。
【0025】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るセラミック回路基板の製造方法について、
図1を用いて説明する。
図1は、第1の実施形態に係るセラミック回路基板の製造方法を説明するための工程断面図である。
【0026】
まず、
図1(1)に示すように、セラミック基板1の両面に直接またはろう材を介して接合された銅パターン2を、銅の再結晶温度(200〜250℃)以上に加熱する(加熱工程)。銅パターン2の厚さは、例えば0.1μm〜数mmである。なお、セラミック基板1の片面にのみ銅パターン2が接合されていてもよい。
【0027】
この加熱工程により、銅パターン2を構成する銅の結晶粒が粗大化するとともに、銅パターン2に蓄積していた残留応力が除去される。このため、
図1(2)に模式的に示すように、加熱工程を経た銅パターン2Aの表面には凹凸が生じている。
【0028】
次に、
図1(3)に示すように、加熱工程を経た銅パターン2Aの表面の凹凸に沿って銅パターン2Aを被覆するように、Niめっき層3を形成する(めっき工程)。Niめっき層3の厚さは、例えば2〜10μmである。
【0029】
このめっき工程により、Niめっき層3の表面には、銅パターン2Aの表面の凹凸に沿って凹凸が形成される。
【0030】
上記の工程を経て、本実施形態に係るセラミック回路基板10が得られる。セラミック回路基板10は、
図1(3)に示すように、セラミック基板1と、セラミック基板1の少なくとも一方の面に直接またはろう材を介して接合され、かつ表面に凹凸を有する銅パターン2Aと、銅パターン2Aの表面の凹凸に沿って銅パターン2Aを被覆するNiめっき層3と、を備えている。
【0031】
一例によるパワーモジュールの製造においては、上記のセラミック回路基板10を作製後、Niめっき層3で被覆された銅パターン2A(表面側)に、ベアチップ等の電子部品をはんだ付けする。そして、Niめっき層3で被覆された銅パターン2A(裏面側)にヒートシンクをはんだ付けする。電子部品およびヒートシンクのはんだ付けは、Pb−5Sn等の高温はんだを用いて行う。
【0032】
上記のように本実施形態の製造方法では、銅パターンを被覆するためのめっき処理を行う前に、再結晶温度以上の加熱処理を予め行うことで、銅パターンの表面に再結晶化による凹凸を意図的に形成しておく。その後、銅パターンの凹凸に沿ってめっき層を形成する。
【0033】
このようにすることで、めっき層を形成した後にセラミック回路基板を再結晶温度以上の高温に加熱しても、銅パターンを構成する銅は既に再結晶化しているために銅パターンの表面に新たな凹凸は発生しない。よって、本実施形態によれば、めっき層にクラックが生じることを防止することができる。
【0034】
さらに、めっき処理前の加熱処理によって、熱伝導性、電気伝導性および硬度などの銅パターンの特性は、既に変化済みである。このため、温度試験や、高温環境下での使用により、銅パターンの特性が変化することはない。
【0035】
また、表面に凹凸が形成された銅パターン上にめっき層を形成することで、いわゆるアンカー効果により、銅パターンとめっき層との密着性を高めることができる。また、
図1(3)に示すように、銅パターンの凹凸の影響を受けてめっき層の表面にも若干の凹凸が形成される。このめっき層の凹凸により、セラミック回路基板に電子部品等をはんだ付けする際に、めっき層とはんだとの密着性も高めることができる。
【0036】
なお、めっき工程で形成するめっき層は、Niめっき層に限らず、例えば、Ni合金めっき層(Ni−P等)、Sn(スズ)めっき層、Au(金)めっき層、又は、Ni−P/Auめっき層を形成することが可能である。このめっき層は、好ましくは、銅よりも再結晶温度の高い金属から構成される。
【0037】
また、めっき工程の後、銅パターン2Aが露出しないように、Niめっき層3の表面を研磨して平坦化する研磨工程を行ってもよい。
【0038】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るセラミック回路基板の製造方法について説明する。第2の実施形態と第1の実施形態の相違点の一つは、加熱工程後に銅パターンを研磨することである。
【0039】
以下、
図2を用いて、本実施形態に係るセラミック回路基板の製造方法について説明する。
【0040】
まず、セラミック基板1の両面に直接またはろう材を介して接合された銅パターン2を、銅の再結晶温度(200〜250℃)以上に加熱する(加熱工程)。銅パターン2は、後述のように研磨されることから、研磨後の厚みを確保すべく、第1の実施形態よりも厚いことが好ましい。なお、セラミック基板1の片面にのみ銅パターン2が接合されていてもよい。
【0041】
次に、
図2(1)に示すように、銅の再結晶温度以上に加熱する熱処理を経た銅パターン2Aの表面の凹凸を研磨して、銅パターン2Aの表面を平坦化する(研磨工程)。
次に、
図2(2)に示すように、表面が平坦化された銅パターン2Aを被覆するようにNiめっき層3を形成する(めっき工程)。銅パターン2Aの表面は研磨により平坦化されているため、Niめっき層3の表面も平坦である。
【0042】
上記の工程を経て、本実施形態に係るセラミック回路基板11が得られる。セラミック回路基板10は、
図1(3)に示すように、セラミック基板1と、セラミック基板1の少なくとも一方の面に直接またはろう材を介して接合され、かつ表面が研磨により平坦化された銅パターン2Aと、銅パターン2Aの表面を被覆するめっき層3と、を備えている。
【0043】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、めっき層を形成した後にセラミック回路基板を再結晶温度以上の高温に加熱しても、銅パターンを構成する銅は既に再結晶化しているために銅パターンの表面に新たな凹凸は発生しないため、めっき層にクラックが生じることを防止することができる。
【0044】
また、めっき処理前の加熱処理によって、熱伝導性、電気伝導性および硬度などの銅パターンの特性は既に変化済みであるため、温度試験や、高温環境下での使用により、銅パターンの特性が変化することはない。
【0045】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではない。異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 セラミック基板
2,2A 銅パターン
3 Niめっき層
10,11 セラミック回路基板
100 セラミック回路基板
101 セラミック基板
102 銅パターン
103 Niめっき層
104 クラック